JP2005158620A - 積層型光電変換装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 変換効率を高めるとともに光劣化等の問題を大幅に軽減する優れた積層型光電変換装置を提供すること。
【解決手段】 一方主面側から光を入射させる透光性基板11の他方主面上に、光電変換を行なう非単結晶の半導体層を有する薄膜光電変換体2と、薄膜光電変換体2を透過した光を吸収する色素の増感作用により光電変換を行なう色素増感型光電変換体3とが、この順で積層されている積層型光電変換装置とする。これにより、薄膜光電変換体2で短波長光がよく光電変換され、色素増感型光電変換体3で長波長光(透過してしまった短波長光も含む)がよく光電変換され、両光電変換体の変換効率を合わせた変換効率が得られる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、高い光電変換効率が期待でき、耐候性に優れ、しかも低コスト化が図れる積層型光電変換装置に関する。
バルク型結晶系シリコン太陽電池は、耐候性に優れ20年以上の耐久性を有することから急速に市場を拡大している。このバルク型結晶系シリコン太陽電池は、高純度の単一材料から成る厚いシリコン半導体基板(約300μm)にpn半導体接合を形成し光電変換を行なっている。太陽光や可視光は広い波長スペクトルからなるが、半導体のバンドギャップによって光エネルギーの吸収と発電には波長制限があり、単一材料からなる光電変換装置では光電変換効率に限界が生じる。また、厚いシリコン基板は高い材料コストとなる。このため、太陽電池の一般家庭への普及には現在の半額以下の生産コストが切望されている。
また、薄膜アモルファスシリコン系太陽電池は、薄いシリコン膜(約0.3μm)で済み低コストで生産が可能である。また、光劣化の問題についても解消されつつある。しかし、変換効率が低いために市場拡大に至っていない。
また、アモルファスシリコン系光電変換装置と微結晶シリコン系光電変換装置とを薄膜で積層した構成の積層型薄膜シリコン系太陽電池が知られている。同じシリコンでもアモルファスと微結晶では異なるバンドギャップを持つので、これら2つの光電変換装置を積層することで、より広く太陽光スペクトルをカバーして変換効率を上げたもので、積極的な開発とともに量産され始めている。この積層型薄膜シリコン系太陽電池では、アモルファスシリコン光電変換装置の膜厚は0.2μm程度で薄いが、微結晶シリコン光電変換装置の膜厚は2μm程度で厚い。従って、微結晶シリコン光電変換装置の製造コストが薄膜アモルファスシリコン系太陽電池よりはるかに高いので、急速な市場拡大に至っていない。
また、色素増感型太陽電池は、高温処理や真空装置を必要としないことから低コスト化に有利であると考えられ、近年急速に研究開発が進められている。この色素増感型太陽電池は、導電性ガラス基板上に構築した粒径数10nmの微粒子を焼結して得られる多孔質の酸化チタン層の粒子表面に、有機色素を単分子吸着させた電極を光作用極として用い、白金をスパッタした導電性ガラス対極との間に、ヨウ素/ヨウ化物レドックス対を含む電解質溶液を満たし、この電解質溶液を封止した構造である。このような多孔質化により、光作用極の表面積を1000倍以上に高めて、吸着色素による光吸収を効率よく行っており、研究レベルで最大10%程度、再現レベルでは7%前後の光電変換効率が知られている。このため、市場投入には更なる光電変換効率の向上が必要とされている。
色素増感型太陽電池の変換効率を向上させる方法として、多孔質の酸化物半導体の導電性を向上させる方法や色素の増感能力を高める方法(分光感度の長波長化や波長の広幅化など)が研究されている。このなかで酸化物半導体の導電性を向上させる方法として、酸化物半導体の形状を針状やナノチューブとしたり、粒状であれば焼結を強固にしたり、酸化物半導体の物性をより導電性としたりする研究がなされている。また、色素増感型太陽電池では色素を二酸化チタンなどに担持しているため、紫外線や短波長光によって色素の光劣化が生じることが懸念されている。このため、まず室内用途であるパソコンや携帯電話などの電源として実用化することが検討されている。強い照度の太陽光下では、光入射側に紫外線吸収フィルムなどを挿入して、色素の光劣化を抑制することが考えられているが、この手法で光劣化が完全に抑制されるかどうかは未だ疑問であり、紫外線吸収フィルムなどの挿入は可視光の吸収も生じてしまい光電変換効率の低下を生じる。
ここで、色素増感型太陽電池の光電変換効率を向上させたとする複合型太陽電池の従来例について説明する。特許文献1に開示された複合型太陽電池によれば、太陽光に面した側に色素増感型太陽電池を配し、この色素増感型太陽電池の後側に結晶系シリコン太陽電池を配して、複合型太陽電池を形成している。ルテニウム錯体を用いた色素増感型太陽電池では、波長600nm以下の太陽光を有効に利用することができるとしている。色素には、ルテニウム錯体のほか、キサンテン系色素を用いることができるとしている。そして、波長600nm以上の太陽光で発電する太陽電池として、単結晶シリコン及び多結晶シリコンを用いた結晶系シリコン太陽電池に注目し、これがシリコンのpn接合によってバンドの勾配が形成され、太陽光のうち波長400nm〜1100nmの光により生成した電子と正孔が内部電界によって分離され、起電力が発生するとしている。すなわち、この従来例の複合型太陽電池では、太陽光に面した側に、ルテニウム錯体を用いた色素増感型太陽電池を配して、波長300nm〜600nmの光で発電を行い、一方、該色素増感型太陽電池の後側に結晶系シリコン太陽電池を配して、前記色素増感型太陽電池を透過した光のうち波長400nm〜1100nmで発電を行なうように構成されている。
特開2002−231324号公報
バルク型結晶系シリコン太陽電池は、シリコンの厚みが約300μmもあって資源の問題と材料コストの問題を抱えている。また結晶化に1000℃以上の高温処理が必要でありプロセスコストがかかる。また、発電セルである基板サイズ(約15cm角)に限界があるので、発電セルからモジュール化(メートルサイズ)に要するアセンブルコストがかかる。
薄膜アモルファスシリコン系太陽電池は、薄いシリコン膜厚(約0.3μm)と低温プロセス(約300℃)、そして自由サイズの大きな基板を供することにより、前記問題がほとんど解消できる。しかしながら、アモルファスシリコンはバンドギャップが大きいため、約700nm以下の短波長光しか吸収できないので、光電変換効率が低いという問題を抱えている。
積層型薄膜シリコン系太陽電池は、変換効率を高めるためにアモルファスシリコン系光電変換装置と微結晶シリコン系光電変換装置を積層した構成であり、いずれも薄膜であり低コスト化太陽電池の候補と考えられている。しかしながら、実際には微結晶シリコン光電変換装置の膜厚がアモルファスシリコン光電変換装置の膜厚に対し約10倍であり、これらの製造装置はほぼ同じ高価な大型真空設備(PCVDなど)を用いており、アモルファスシリコン光電変換装置に比べ微結晶シリコン光電変換装置の製造コストが膜厚に比例する傾向があるので、低コスト化できないという問題を抱えている。
色素増感型太陽電池は、高温処理や真空装置を必要としないことから最も低コストで製造が可能な太陽電池と考えられている。しかしながら、変換効率が低く、バルク型結晶系シリコン太陽電池や積層型薄膜シリコン系太陽電池に及ばない。また色素増感型太陽電池では紫外線や短波長光によって色素の光劣化が生じることが懸念されている。また、太陽光の熱によって色素の光劣化は加速される。現在、最初に室内用途での実用化が検討されているが、これでは真の太陽電池といえない。紫外線吸収フィルムなどの挿入は可視光の吸収も生じ光電変換効率の低下となるので積極的には使えない。こうして色素増感型太陽電池は色素の光劣化や熱劣化の不安がまだ解消されておらず、耐候性に問題がある。
色素増感型太陽電池の光電変換効率を向上させたとする複合型太陽電池の従来例では、太陽光に面した側に色素増感型太陽電池を配し、該色素増感型太陽電池の後側に結晶系シリコン太陽電池とを配して、複合型太陽電池を形成している。この複合太陽電池では、色素増感型太陽電池を太陽光に面した側に配しており、前記のように色素の光劣化や熱劣化の不安がまだ解消されておらず、耐候性の問題を抱えたままである。さらには、光入射側の後側には前記のようなバルク型結晶系シリコン太陽電池を配して高い光電変換効率を得ようとしている。しかしながら、上述したように、バルク型結晶系シリコン太陽電池はシリコンの厚みが約300μmもあって資源の問題と材料コストの問題を抱えている。また、結晶化に1000℃以上の高温処理が必要でありプロセスコストがかかる。また発電セルである基板サイズに限界があって発電セルからモジュール化に要するアセンブルコストがかかる。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされ、変換効率を高めるとともに、低コスト化が可能で、しかも耐候性(光劣化や熱劣化)の問題を大幅に軽減し解消する優れた積層型光電変換装置を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明の積層型光電変換装置は、1)一方主面側から光を入射させる透光性基板の他方主面上に、光電変換を行なう非単結晶の半導体層を有する薄膜光電変換体と、該薄膜光電変換体を透過した光を吸収する色素を有し該色素の増感作用により光電変換を行なう色素増感型光電変換体とが、この順で積層されていることを特徴とする。
また、2)上記1)において、前記色素の分光感度のピーク波長が前記半導体層の分光感度のピーク波長より長波長側にあることを特徴とする。
さらに、3)上記1)において、前記半導体層はi型の非晶質シリコン層を備えたpin構造を有していることを特徴とする。
本発明の積層型光電変換装置は、例えば、透光性基板上に、光の入射側より第1の透明導電層、一導電型シリコン系半導体層、実質的に真性である非晶質シリコン系半導体層、逆導電型シリコン系半導体層、第2の透明導電層、多孔質の一導電型輸送体、逆多孔質(前記多孔質を埋める態様)の逆導電型輸送体、および導電性シートを順次積層して成るとともに、前記二つの輸送体における界面に色素を配した構造とする。また、前記色素の分光感度のピーク波長が700nm以上であることとする。さらに、前記色素が金属錯体色素、有機色素、無機色素、有機顔料、無機顔料、無機系半導体の少なくとも1種から成り、且つこの色素が分子、超薄膜、微粒子、超微粒子、量子ドットの少なくとも1種から成ることとする。
本発明の積層型光電変換装置は、一方主面側から光を入射させる透光性基板の他方主面上に、光電変換を行なう非単結晶の半導体層を有する薄膜光電変換体と、この薄膜光電変換体を透過した光を吸収する色素を有し該色素の増感作用により光電変換を行なう色素増感型光電変換体とが、この順で積層されているので、薄膜光電変換体で短波長光がよく光電変換され、色素増感型光電変換体で長波長光(透過してしまった短波長光も含む)がよく光電変換され、両光電変換体の変換効率を合わせた変換効率が得られる。
また、薄膜光電変換体も色素増感型光電変換体もそれぞれが低温プロセスで作製できるので、積層構成をとっても従来の太陽電池より簡便容易にかつ低コストで製造可能である。さらに、光の入射側に薄膜光電変換体を配し、その後側に色素増感型光電変換体を配したことにより、後側の色素増感型光電変換体が太陽光などの強い光を直接受けることがない。しかも、光入射側の薄膜光電変換体ではよりよく短波長光を吸収し長波長光をほとんど透過する。よって、後側に配置された色素増感型光電変換体は、太陽光などの強い光を直接受けることがなく、紫外線が無く短波長光が激減するので色素の光劣化が大幅に軽減し解消できる。また強い光を直接受けることがなく、背面側より容易に色素増感型光電変換体を冷却することにより温度上昇が抑制できて、色素の熱劣化を抑制できる。
また、本発明の積層型光電変換装置は、色素の分光感度のピーク波長が薄膜光電変換体の半導体層の分光感度のピーク波長より長波長側にあることにより、それぞれ異なった波長域の光を光電変換できて、高い光電変換効率が得られる。
また、本発明の積層型光電変換装置は、例えば、光入射側より、透光性基板上に、第1の透明導電層、一導電型シリコン系半導体層、実質的に真性である非晶質シリコン系半導体層、逆導電型シリコン系半導体層、第2の透明導電層、多孔質の一導電型輸送体、逆多孔質で逆導電型輸送体、導電性シートを連続積層して成るとともに、該両輸送体の界面に(該非晶質シリコン系半導体より長波長側にピーク感度を有する)色素を配したことにより、まず、透明導電膜が2層から1層になり、支持基板が2枚から1枚に減り、積層構成がシンプルになって低コスト化が図れる。また実質的に真性である非晶質シリコン系半導体を用いたことで、約700nm以下の短波長光を吸収・発電し、約700nm以上の長波長光を透過してしまうので、後側にも充分な波長域の光が透過できて発電に使うことができる。太陽光の波長域は310nm〜2000nmであり、強度が大きい波長域は400nm〜1200nmである。したがって、後側の色素増感光電変換装置に、700nm〜1200nmあるいは700nm〜2000nmに感度を有する色素を用いることにより、充分な光電変換効率が得られる。このことから、色素は充分に広い波長域に感度を有するのがよいが、少なくとも非単結晶薄膜より分光感度のピーク波長が長波長側にあることが好ましい。
また、本発明の積層型光電変換装置は、該色素の分光感度のピーク波長が700nm以上であることにより、薄膜光電変換体を通過した長波長光を色素増感型光電変換体にて効果的に光電変換することができる。
また、本発明の積層型光電変換装置は、色素増感型光電変換体の色素材が金属錯体色素、有機色素、無機色素、有機顔料、無機顔料、無機系半導体の少なくとも1種から成り、且つ該色素の形状が分子、超薄膜、微粒子、超微粒子、量子ドットの少なくとも1種から成ることにより、薄膜光電変換体を通過した長波長光を良く光電変換することができる。また、色素の形状が超微粒子、量子ドットとなることにより、より小さいバンドギャップの半導体材料が使用できて材料の選択性が向上する。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照にしつつ詳細に説明する。本発明の積層型光電変換装置の断面模式図を図1、図2に示す。図中の矢印は光の入射側を示す。また、図1と図2の相違は、多孔質の一導電型輸送体15とこの多孔質を埋めるように形成した逆多孔質で逆導電型輸送体17との構成が光入射方向に対して反対向きになっている点である。
図1、図2に示す一実施形態によれば、一方主面側から光を入射させる透光性基板の他方主面上に、薄膜形成法により作製し、光電変換を行なう非単結晶の半導体層を有する薄膜光電変換体である非単結晶光電変換装置2、この非単結晶光電変換装置より長波長側にピーク感度を有し、非単結晶光電変換装置2を透過した光を吸収する色素の増感作用により光電変換を行なう色素増感型光電変換体である色素増感型光電変換装置3を積層して成る。
非単結晶光電変換装置2は透光性基板11上に順次形成された第1の透明導電層12、非単結晶光電変換層13、第2の透明導電層14から成る。この非単結晶光電変換層13としては、シリコン系の非単結晶の薄膜pin接合層でもよく、CIGS(CuInGaSe)などの化合物半導体系の薄膜接合層でもよい。また、これらの接合層はpin接合型、pn接合型、ショットキー接合型、ヘテロ接合型など内部電界を生じるものがよい。シリコン系の非単結晶としては、アモルファスシリコン系、ナノサイズ結晶を含むアモルファスシリコン系、微結晶シリコン系などがよく、特に短波長感度を有するアモルファスシリコン系や光劣化が抑制されるナノサイズ結晶を含むアモルファスシリコン系がよい。ここでアモルファスシリコン系とはアモルファスシリコンカーバイト、アモルファスシリコンナイトライドなどの合金系を含む。
色素増感型光電変換装置3は第2の透明導電層14上に形成された多孔質の一導電型輸送体15、該多孔質を埋めるように形成した逆多孔質で逆導電型輸送体17、導電性シート18から成るともに、該両輸送体の界面に色素16を配した構成から成る。
非単結晶光電変換層2からの第1の出力と、色素増感型光電変換装置3からの第2の出力とは、それぞれ独立して出力しても、接続して出力してもよい。本発明のように、積層型光電変換装置の場合、第1の出力の電流と第2の出力の電流とが同じになるように両光電変換装置の性能を合わせてやれば、第2の透明電極層から外部に出力を取り出す必要がなく集積化などの電極配線構造がシンプルになって具合がよい。両光電流を合わせるにはそれぞれの膜厚や感度などを調整すればよい。
図3に非単結晶光電変換層2をより詳しく示した本発明の積層型光電変換装置の断面模式図を示す。図3に示す構造は、光が入射される透光性基板11上に、順次、第1の透明導電層12、一導電型シリコン系半導体層13a、実質的に真性である非晶質シリコン系半導体層13b、逆導電型シリコン系半導体層13c、第2の透明導電層14、多孔質の一導電型輸送体15、この多孔質を埋めるように形成した逆多孔質で逆導電型輸送体17、導電性シート18を積層して成るとともに、該両輸送体の界面に(該非晶質シリコン系半導体より長波長側にピーク感度を有する)色素16を配して成る。
<透光性基板>
透光性基板11として、鉄成分の少ない白板ガラスが高い透過率で機械的強度もあり最もよい。他に、青板ガラス、硼珪酸ガラス、ソーダガラス、セラミック、サファイアなどの透明無機質基板、ポリカーボネートなどの透明有機樹脂基板などでもよい。また透光性基板11は両面が平坦なものでよいが入射光の波長オーダーの凹凸を有する表面の方が光閉じ込め効果があってなおよい。透光性基板の厚みは材料や基板サイズや用途によるが0.05mm〜6mmがよく、ガラスでメートルサイズの屋根置き用途であれば強度や重量の関係から3mm〜4mmが望ましい。
<第1の透明導電層>
第1の透明導電層12として、熱CVD法やスプレー熱分解法で作製したフッ素ドープの二酸化スズ膜(SnO:F膜)が低コストでシート抵抗も小さく最もよい。他に、スパッタ法で作製したスズドープ酸化インジウム膜(ITO膜)、溶液成長法で作製した不純物ドープの酸化亜鉛膜(ZnO膜)、などを用いてもよく、これらを積層して用いてもよい。これらの膜成長によって入射光の波長オーダーの表面凹凸を形成すると光閉じ込め効果があってなおよい。他に、不純物ドープの酸化インジウム膜(In膜)などが使用可能である。また、ディップコート法、ゾル・ゲル法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、等で形成できる。
<非単結晶光電変換層>
非単結晶光電変換層13として、プラズマCVD法によって連続堆積したpin接合の水素化アモルファスシリコン系半導体膜がよい。第1の透光性導電膜側にp型半導体膜を設けたpin接合としたが、逆接合のnip接合でも構わない。ここで、一導電型シリコン系半導体層13aと逆導電型シリコン系半導体層13cとはそれぞれp型半導体とn型半導体もしくはn型半導体とp型半導体を意味する。また実質的に真性である非晶質シリコン系半導体層13bはi型半導体を意味する。
ここで、i型半導体膜が非晶質であれば、p型半導体膜とn型半導体膜は少なくともいずれかが微結晶でも構わない。また水素化アモルファスシリコン合金系の膜でも構わない。例えば、光入射側のp膜は水素化アモルファスシリコンカーバイドが透光性を高めて光の侵入ロスが少なくより好ましい。他の堆積法として触媒CVD法などで堆積してもよい。プラズマCVD法と触媒CVD法を組み合わせると光劣化が抑制できて信頼性が高まる。これらのシリコン系半導体層13a,13b,13cは、化学気相成長法によりそれぞれの製膜条件で連続堆積できるので具合がよい。
より詳しく説明すると、例えば、p型a−Si:H膜の場合、原料ガスとしてSiH、Hガス、B(Hで500ppmに希釈したもの)を用い、これらのガスの流量をそれぞれ最適化し、膜厚は50Å〜200Åの範囲がよく、好適には80Å〜120Åがよく、薄いと内部電界が形成できず厚いと光量損失が増える。続いてi型a−Si:Hの原料ガスとしてSiH、Hガスを用い、これらのガスの流量を最適化し、膜厚は500Å〜5000Å(0.05μm〜0.5μm)の範囲がよく、好適には1500Å〜2500Å(0.15μm〜0.25μm)、なぜなら薄いと充分な光電流が得られず、厚いと後の色素増感型光電変換装置に光を透過できないからである。続いてn型a−Si:H膜の場合、原料ガスとしてSiH、Hガス、PH(Hで1000ppmに希釈したもの)を用い、これらのガスの流量をそれぞれ最適化し、膜厚は50Å〜200Åの範囲がよく、好適には80Å〜120Åがよく、薄いと内部電界が形成できず厚いと光量損失が増える。基板温度は、pin膜の何れも150℃〜300℃の範囲がよく、好適には180℃〜240℃がよく、低くても高くてもよい光半導体が得られない。
<第2の透明導電層>
第2の透明導電層14として、低温成長のスパッタ法や低温スプレー熱分解法で作製したスズドープ酸化インジウム膜(ITO膜)がよい。他に、溶液成長法で作製した不純物ドープの酸化亜鉛膜(ZnO膜)、熱CVD法で形成したフッ素ドープの二酸化スズ膜(SnO:F膜)などがよい。他に、不純物ドープの酸化インジウム膜(In膜)などが使える。他の製膜法として、真空蒸着法、イオンプレーティング法、ディップコート法、ゾル・ゲル法、等がある。これらの膜成長によって入射光の波長オーダーの表面凹凸を形成すると光閉じ込め効果があってなおよい。
<多孔質の一導電型輸送体>
多孔質の一導電型輸送体15として、多孔質の二酸化チタンなどの電子輸送体(n型金属酸化物半導体)が特によい。
図1の場合は導電性シート18上にこの多孔質の一導電型輸送体15を形成するが、図2の場合には第2の透明導電層14上に形成する。
電子輸送体15は、通常、n型金属酸化物半導体が用いられ、好適には粒状体または線状体(針状体、チューブ状体、柱状体、など)の複数が集合して成る。
電子輸送体15を多孔質体等とすることにより、この接合面積が拡がり、色素を担持する表面積が増えて、光電変換効率を高めることができる。
金属酸化物半導体の材料や組成としては、酸化チタン(TiO)が最適であり、他の材料や組成としては、チタン(Ti),亜鉛(Zn),スズ(Sn),ニオブ(Nb),インジウム(In),イットリウム(Y),ランタン(La),ジルコニウム(Zr),タンタル(Ta),ハフニウム(Hf),ストロンチウム(Sr),バリウム(Ba),カルシウム(Ca),バナジウム(V)などの金属元素の少なくとも1種以上から成る酸化物半導体がよく、また窒素(N),炭素(C),弗素(F),硫黄(S),塩素(Cl),リン(P)などの非金属元素の1種以上を含有させてもよい。いずれも電子エネルギーバンドギャップが可視光のエネルギーより大きい2eV〜5eVの範囲にあり、且つ電子エネルギー準位において金属酸化物半導体の伝導帯が色素の伝導帯より低いn型半導体がよい。
この金属酸化物半導体は空孔率が20%〜80%、より好適には40%〜60%の多孔質体状がよい。この理由は、この程度の空孔率の多孔質化により光作用極の表面積を1000倍以上に高めることができて、光吸収と発電と電子伝導を効率よく行うことができるからである。多孔質体の形状は、その表面積が大きくなり且つ電気抵抗が小さい形状がよく、通常は、微細粒子もしくは微細線状から成るのがよく、その平均粒径もしくは平均線径は5nm〜500nmとするのがよく、より好適には10nm〜200nmとする。ここで、平均線径は5nm〜500nmにおける下限値は、これ以下になると材料の微細化ができず、上限値は、これ以上になると接合面積が小さくなり光電流が著しく小さくなるからである。
また、金属酸化物半導体の膜厚は0.1μm〜50μmがよく、より好適には1μm〜20μmとする。ここで、0.1μm〜50μmにおける下限値は、これより膜厚が小さくなると光電変換作用が著しく小さくなって実使用できず、上限値は、これ以上膜厚が厚くなると光が透過しなくなって光が入射しなくなるからである。
チタン酸化物半導体の製造方法は、まず、TiOのアナターゼ粉末にアセチルアセトンを添加した後、脱イオン水とともに混練し、界面活性剤で安定化させた酸化チタンのペーストを作製する。作製したペーストをドクターブレード法で透光性導電膜が形成されている面上に、一定の速度で塗布し、大気中において300℃〜600℃、好適には400℃〜500℃で、10分〜60分、好適には20分〜40分処理することにより、多孔質体の金属酸化物半導体を作製する。この手法は簡便であり、図1のように、耐熱性の導電性シートに予め形成できる場合に有効である。
図2のように、第2の透明導電層上に直接形成する場合、低温成長法が前記非単結晶光電変換装置への悪影響がなく好都合である。
このような金属酸化物半導体の低温成長法として、電析法、泳動電着法、水熱合成法などがよく、後処理としてマイクロ波処理、CVD/UV処理などがよい。金属酸化物半導体の材料としては、電析法による多孔質ZnO、泳動電着法による多孔質TiOなどがよい。
<色素>
色素16としては、入射光に対する光電流効率(Incident Photon to Current Efficiency;IPCE)いわゆる感度が前記非単結晶光電変換装置2の吸収限界波長より長波長側へ伸びている特性を有する色素であれば有効である。また、実質的に真性である非晶質シリコン系半導体13bより長波長側へ伸びている特性を有する色素であれば有効である。
実質的に真性である非晶質シリコン系半導体の吸収限界波長は約700nmであり、この場合は約700nm以上にIPCEを示す色素であれば有効である。従って好ましくは、できるだけ長波長感度を有する色素、前記非単結晶光電変換装置2のピーク感度より長波長側にピーク感度を有する色素、前記実質的に真性である非晶質シリコン系半導体のピーク感度より長波長側にピーク感度を有する色素、実質的に真性である非晶質シリコン系半導体の吸収限界波長の約700nmより長波長側にピーク感度を有する色素が有効である。そのような色素として、ビス型スクアリリウムシアニン色素はIPCEのピーク波長が800nm近くにあり有効である。他に、波長700nm以上に高い感度(IPCE)をもつアズレニウム塩化合物、スクワリン酸誘導体、トリアリルピラゾリン、ヒドラゾン誘導体、ビフェニルジアミン誘導体、トリ−p−トリルアミン(TPTA)、トリスアゾ顔料、τ型無金属フタロシアニン、チタニルフタロシアニン、スクアリリウムシアニン、ブラック・ダイ、クマリン、βジケトナート、Re錯体、Os錯体、Ni錯体、Pd錯体、Pt錯体などの色素が有効である。
多孔質体の金属酸化物半導体に色素を吸着させる方法としては、金属酸化物半導体を形成した基板を、色素を溶解した溶液に浸漬する方法が挙げられる。多孔質体の金属酸化物半導体を形成した基体を、色素を溶解した溶液に浸漬する際、溶液及び雰囲気の温度は特に限定されるものではなく、例えば、大気圧下、室温が挙げられ、浸漬時間は色素,溶媒の種類,溶液の濃度等により適宜調整することができる。これにより色素を多孔質体の金属酸化物半導体に吸着させることができる。
色素を溶解させるために用いる溶媒は、エタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル等のエーテル類、アセトニトリル等の窒素化合物等を1種または2種以上混合したものが挙げられる。
また、溶液中の色素濃度は5×10−5〜2×10−3mol/l程度が好ましい。
色素材の他の例として、金属錯体色素や有機色素や有機顔料の他に、無機色素、無機顔
料、無機系半導体などでもよく、また該色素の形状が分子、超薄膜、微粒子、超微粒子、量子ドットの少なくとも一種からなってもよい。特に、超微粒子半導体の場合、もはやバンドギャップは材料固有の値で無くなりサイズに依るようになり、バンドギャップがかなり小さい材料(1eV以下)でも、ナノサイズ化でバンドギャップを大きくできるので、吸収波長が選択できて感度の長波長化もしやすい。超微粒子半導体として、CdS、CdSe、PbS、PbSe、CdTe、Bi、InP、Siなどがある。
<逆導電型輸送体>
逆多孔質で逆導電型輸送体17として、ゲル電解質などの正孔輸送体(p型半導体、液体電解質、固体電解質、電解塩など)が特によい。逆多孔質体とは前記多孔質を埋めるように形成することであり、電解液が最もよいキャリア移動を示すが液漏れなどの問題があるのでゲル化や固体化が好まれる。
図1の場合、非単結晶光電変換装置2と、導電性シート18上に色素16を担持した多孔質の金属酸化物半導体15とを積層した構造としているが、図2の場合には第2の透明導電層14、色素16を担持した多孔質の金属酸化物半導体15上に直接形成する。
正孔輸送層の材料としては、透明導電性酸化物,電解質溶液,ゲル電解質や固体電解質などの電解質、有機正孔輸送剤、極薄膜金属などが挙げられる。透明導電性酸化物としては、一価の銅を含む化合物半導体やGaP,NiO,CoO,FeO,Bi,MoO,Crなどがよく、中でも一価の銅を含む半導体がよい。本発明によい化合物半導体としてはCuI,CuInSe,CuO,CuSCN,CuS,CuInS,CuAlSeなどがよく、この中ではCuIおよびCuSCNがよく、CuIが製造しやすく最も望ましい。
電解質溶液としては第4級アンモニウム塩やLi塩などを用いる。電解質溶液の組成としては例えば、炭酸エチレン、アセトニトリル、またはメトキシプロピオニトリルなどに、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム、ヨウ化リチウム、ヨウ素などを混合し調製したものを用いることができる。
ゲル電解質は、大別して化学ゲルと物理ゲルに分けられる。化学ゲルは架橋反応などにより化学結合でゲルを形成しているものであり、物理ゲルは、物理的な相互作用により室温付近でゲル化しているものである。ゲル電解質としては、アセトニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、またはそれらの混合物に対し、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなどのホストポリマーを混入して重合させたゲル電解質が好ましい。なお、ゲル電解質や固体電解質を使用する場合、低粘度の前駆体を酸化物半導体層に含有させ、加熱,紫外線照射,電子線照射などの手段で二次元,三次元の架橋反応をおこさせることによってゲル化または固体化できる。
イオン伝導性の固体電解質としては、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイドもしくはポリエチレンなどの高分子鎖にスルホンイミダゾリウム塩、テトラシアノキノジメタン塩、ジシアノキノジイミン塩などの塩をもつ固体電解質が好ましい。ヨウ化物の溶融塩としてはイミダゾリウム塩、第4級アンモニウム塩、イソオキサゾリジニウム塩、イソチアゾリジニウム塩、ピラゾリジウム塩、ピロリジニウム塩、ピリジニウム塩などのヨウ化物を用いることができる。
上述のヨウ化物の溶融塩としては、例えば、1,1−ジメチルイミダゾリウムアイオダイド、1,メチル−3−エチルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−イソペンチルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムアイオダイド、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムアイオダイド、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾールアイオダイド、1−エチル−3−イソプロピルイミダゾリウムアイオダイド、ピロリジニウムアイオダイド等を挙げることができる。
有機正孔輸送剤としては、トリフェニルジアミン(TPD1,TPD2,TPD3)やOMeTADなどが挙げられる。
<導電性シート>
導電性シート18として、図1及び図2の場合、薄い金属シートが単独でよく、チタン、ステンレス、アルミニウム、銀、銅などがよい。またカーボンや金属の微粒子や微細線を含浸した樹脂シートなどがよい。また金属薄膜のチタン、ステンレス、アルミニウム、銀、銅など、透明導電膜のITO、SnO:F、ZnO:Alなど、積層のTi/ITO/Tiなどの導電膜18b付き絶縁シート18aなどがよい。絶縁シート18aとしては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリイミド、ポリカーボネートなどの樹脂シートやソーダガラス、硼珪酸ガラス、セラミックなどの無機質シート、有機無機ハイブリッドシートがよい。
導電性シート18に光反射性を持たせると、透過光を反射させて再利用することができる。金属シートの場合、銀やアルミニウムなどがよい。また、導電膜18bの場合、銀(Ag)、密着層付きTi/Ag/Tiの積層膜などがよく、真空蒸着法,イオンプレーティング法,スパッタリング法,電解析出法などで形成するのがよい。導電性シートの厚みは0.01mm〜5mm、好ましくは0.01mm〜0.5mmがよい。
<下地層>
下地層として、図示しなかったが、図1の場合、導電性シート18と多孔質の一導電型輸送体15との間に多孔質の一導電型輸送体の薄い緻密層を挿入すると逆電流が流れなくなってよい。
また図2の場合、図示しなかったが、第2の透明導電層14と多孔質の一導電型輸送体15との間に多孔質の一導電型輸送体の薄い緻密層を挿入すると逆電流が流れなくなってよい。
<触媒層>
触媒層として、図示しなかったが、図1の場合、第2の透明導電層14と逆多孔質で逆導電型輸送体17との間に白金あるいはカーボンなどの極薄膜を挿入すると正孔の移動がよく具合がよい。
また図2の場合、図示しなかったが、導電性シート18と逆多孔質で逆導電型輸送体17との間に白金あるいはカーボンなどの極薄膜を挿入すると正孔の移動がよく具合がよい。
第1の透明導電層、第2の透明導電層、および導電性シートに集電極を設けて、電気抵抗を小さくするとよい。
かくして、本発明の積層型光電変換装置は、光が入射される透光性基板上に、光電変換を行なう非単結晶の半導体層を有する薄膜光電変換体と、前記半導体層を透過した光を吸収する色素の増感作用により光電変換を行なう色素増感型光電変換体とが、この順で積層されているので、薄膜光電変換体で短波長光がよく光電変換され、色素増感型光電変換体で長波長光(透過してしまった短波長光も含む)がよく光電変換され、両光電変換体の変換効率を合わせた変換効率が得られる。
また、薄膜光電変換体も色素増感型光電変換体もそれぞれが低温プロセスで作製できるので、積層構成をとっても従来の太陽電池より簡便容易にかつ低コストで製造可能である。さらに、光の入射側に薄膜光電変換体を配し、その後側に色素増感型光電変換体を配したことにより、後側の色素増感型光電変換体が太陽光などの強い光を直接受けることがない。しかも、光入射側の薄膜光電変換体ではよりよく短波長光を吸収し長波長光をほとんど透過する。よって、後側に配置された色素増感型光電変換体は、太陽光などの強い光を直接受けることがなく、紫外線が無く短波長光が激減するので色素の光劣化が大幅に軽減し解消できる。また強い光を直接受けることがなく、背面側より容易に色素増感型光電変換体を冷却することにより温度上昇が抑制できて、色素の熱劣化を抑制できる。
また、本発明の積層型光電変換装置は、色素の分光感度のピーク波長が薄膜光電変換体の半導体層の分光感度のピーク波長より長波長側にあることにより、それぞれ異なった波長域の光を光電変換できて、高い光電変換効率が得られる。
また、本発明の積層型光電変換装置は、例えば、光入射側より、透光性基板上に、第1の透明導電層、一導電型シリコン系半導体層、実質的に真性である非晶質シリコン系半導体層、逆導電型シリコン系半導体層、第2の透明導電層、多孔質の一導電型輸送体、逆多孔質で逆導電型輸送体、導電性シートを連続積層して成るとともに、該両輸送体の界面に(該非晶質シリコン系半導体より長波長側にピーク感度を有する)色素を配したことにより、まず、透明導電膜が2層から1層になり、支持基板が2枚から1枚に減り、積層構成がシンプルになって低コスト化が図れる。また実質的に真性である非晶質シリコン系半導体を用いたことで、約700nm以下の短波長光を吸収・発電し、約700nm以上の長波長光を透過してしまうので、後側にも充分な波長域の光が透過できて発電に使うことができる。太陽光の波長域は310nm〜2000nmであり、強度が大きい波長域は400nm〜1200nmである。したがって、後側の色素増感光電変換装置に、700nm〜1200nmあるいは700nm〜2000nmに感度を有する色素を用いることにより、充分な光電変換効率が得られる。このことから、色素は充分に広い波長域に感度を有するのがよいが、少なくとも非単結晶薄膜より分光感度のピーク波長が長波長側にあることが好ましい。
また、本発明の積層型光電変換装置は、該色素の分光感度のピーク波長が700nm以上であることにより、薄膜光電変換体を通過した長波長光を色素増感型光電変換体にて効果的に光電変換することができる。
また、本発明の積層型光電変換装置は、色素増感型光電変換体の色素材が金属錯体色素、有機色素、無機色素、有機顔料、無機顔料、無機系半導体の少なくとも1種から成り、且つ該色素の形状が分子、超薄膜、微粒子、超微粒子、量子ドットの少なくとも1種から成ることにより、薄膜光電変換体を通過した長波長光を良く光電変換することができる。また、色素の形状が超微粒子、量子ドットとなることにより、より小さいバンドギャップの半導体材料が使用できて材料の選択性が向上し具合がよい。
以下、本発明をより具体的に示す実施例について説明する。透明導電膜(SnO:F、シート抵抗10Ω/□)付きガラス基板(サイズ1cm×2cm)上に、まずプラズマCVD装置にて、p型a−Si:H膜、i型a−Si:H膜、n型a−Si:H膜を順次連続して真空中で堆積した。
p型a−Si:H膜の原料ガスとしてSiH、Hガス、B(Hで500ppmに希釈したもの)を用い、これらのガスの流量をそれぞれ3sccm、10sccm、2sccmとし、膜厚で90Å(0.009μm)堆積させた。
続いてi型a−Si:H膜の原料ガスとしてSiH、Hガスを用い、これらのガスの流量をそれぞれ30sccm、80sccmとし、膜厚で1700Å堆積させた。
続いてn型a−Si:H膜の原料ガスとしてSiH、Hガス、PH(Hで1000ppmに希釈したもの)を用い、これらのガスの流量をそれぞれ3sccm、30sccm、6sccmとして、膜厚で100Å堆積させた。基板温度はpin膜の何れも220℃とした。
次に、スパッタ装置でITO膜を厚み0.3μm堆積した。
他方、導電性シートとして、厚みが0.1mmのチタンシート(サイズ1cm×2cm)に多孔質の二酸化チタンを形成した。電子輸送体である二酸化チタンの製造方法は、まず、TiOのアナターゼ粉末にアセチルアセトンを添加した後、脱イオン水とともに混練し、界面活性剤で安定化させた酸化チタンのペーストを作製した。作製したペーストをドクターブレード法で透光性導電膜が形成されている面上に、一定の速度で塗布し、大気中において450℃で20分焼成した。
色素としては、N719色素を用い、色素を溶解させるために用いる溶媒としては、アセトニトリルとt−ブタノール(容積で1:1)を用い、金属酸化物半導体層を形成した支持基体を、色素を溶解した溶液に浸漬して色素を金属酸化物半導体に担持した。
前記FTO付ガラス基板に第1の透明導電層、pin型アモルファスシリコン層、第2の透明導電層を積層した基板に、色素を担持した多孔質二酸化チタン被膜のチタンシートに下記電解液を添加して軽く貼り合わせ、特性を評価した。
ここで正孔輸送体として、ゲル電解質もしくは固体電解質が好ましいが、本実施例では液体電解質である沃素(I)と沃化リチウム(LiI)とアセトニトリル溶液を調整して用いた。
こうして得られた積層型光電変換装置は、AM1.5下、100mW/cmで高い変換効率(10.1%)を示した。
以上のように、この実施例において、本発明の積層型光電変換装置が簡便容易に作製でき、しかも高い光電変換効率を実現することができた。
本発明の積層型光電変換装置の実施形態の一例を示す断面図である。 本発明の積層型光電変換装置の実施形態の他の例を示す断面図である。 本発明の積層型光電変換装置の実施形態のさらに他の例を示す断面図である。
符号の説明
1:積層型光電変換装置
2:非単結晶光電変換装置(薄膜光電変換体)
3:色素増感型光電変換装置(色素増感型光電変換体)
11:透光性基板
12:第1の透明導電層
13:非単結晶光電変換層
14:透明導電層
15:金属酸化物半導体
16:色素
17:逆導電型輸送体
18:導電性シート

Claims (3)

  1. 一方主面側から光を入射させる透光性基板の他方主面上に、光電変換を行なう非単結晶の半導体層を有する薄膜光電変換体と、該薄膜光電変換体を透過した光を吸収する色素を有し該色素の増感作用により光電変換を行なう色素増感型光電変換体とが、この順で積層されていることを特徴とする積層型光電変換装置。
  2. 前記色素の分光感度のピーク波長が前記半導体層の分光感度のピーク波長より長波長側にあることを特徴とする請求項1に記載の積層型光電変換装置。
  3. 前記半導体層はi型の非晶質シリコン層を備えたpin構造を有していることを特徴とする請求項1に記載の積層型光電変換装置。
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