従来、像担持体上に形成した現像剤像(トナー像)が転写材に転写されてそれを定着して画像形成物を得る画像形成装置において、転写材にトナー像が転写されるまでの工程にて、像担持体上のトナー像が中間転写体に転写される方式を採用した、転写装置としての中間転写体、特にベルト状の中間転写ベルトを使用した中間転写方式の画像形成装置が知られており、この方式はカラー画像情報や多色画像情報に基づく複数の成分色画像を順次転写、積層し、カラー画像や多色画像を合成再現した画像を得る構成のカラー画像形成装置や多色画像形成装置において有効である。
こうした中間転写方式の画像形成装置として、従来の中間転写ベルトを用いた画像形成装置の一例の概略を図9に示す。本画像形成装置は、中間転写ベルト6を有した電子写真方式のカラー画像形成装置(複写機やレーザビームプリンタ)として構成されている。この中間転写ベルト6には中抵抗の弾性体を使用している。
画像形成装置は、第1の像担持体としてドラム状の電子写真感光体(感光ドラム)1を備え、この感光ドラム1は矢印の方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。
感光ドラム1表面はこの回転過程において各画像形成工程が施され、先ず、帯電工程にて一次帯電器2により所定の極性・電位に一様に帯電処理され、次いで、潜像形成工程にて像露光手段3により像露光Lを受ける。これにより、所望のカラー画像に対応した静電潜像が、それぞれの色毎に順に形成される。
そして、第1の色成分像(例えばイエロー色成分像)に対応した静電潜像が形成され、現像工程にてその静電潜像が現像位置において、現像剤としてイエロートナーを収容した現像手段である第1の現像器(イエロー現像器)41により現像され、イエロー現像剤像(トナー像)として可視化される。このとき現像手段である第2〜第4の現像器、すなわちマゼンタ現像器42、シアン現像器43、ブラック現像器44は作動しておらず感光ドラム1には作用しないので、イエロートナー像は第2〜第4の現像器42〜44による作用を受けない。
尚、第1〜第4の現像器41〜44は支持体40に搭載して回転自在に設置され、感光ドラム1と対向した現像位置に順次移動される。
感光ドラム1上に形成されたイエロートナー像は、転写工程にて感光ドラム1と中間転写ベルト6との当接ニップ部である転写部tを通過する過程で、転写手段である一次転写ローラ5から中間転写ベルト6に印加した一次転写バイアスによって形成される一次転写電界により、中間転写ベルト6の外周面に順次転写されていく(一次転写)。
中間転写ベルト6への第1色のイエロートナー像の転写を終えた感光ドラム1は、表面に残留した一次転写残りの現像剤(トナー)をクリーニング装置7aが有するクリーニングブレード7により清掃、除去した後、一次帯電以下の画像形成工程(プロセス)に供せられる。
以下、同様にして、支持体40が回転して各現像器41〜44を順に感光ドラム1に対向させ、第2色のマゼンタトナー像、第3色のシアントナー像、第4色のブラックトナー像が形成され、中間転写ベルト6上の第1色のイエロートナー像の上に順次重ねて転写されて、目的のカラー画像に対応した合成カラー画像(トナー像)が中間転写ベルト6上に得られる。
ここで、中間転写ベルト6は、一次転写ローラ5とローラ61、62とに掛け廻され、感光ドラム1と当接した対向部で同方向に移動する向きに、感光ドラム1と同じ周速度で回転駆動される。感光ドラム1との当接部の中間転写ベルト6の内側位置には、転写動作を行う一次転写ローラ5が設置され、バイアス電源51からの一次帯電バイアスを一次転写ローラ5を介して中間転写ベルト6に印加するようになっている。一次転写バイアスはトナーと逆極性で、その印加電圧はたとえば+100V〜+2kVの範囲である。このような構成により、感光ドラム1上に形成されたトナー像が中間転写ベルト6に対向する位置に到来した時に、ベルト6に一次転写バイアスを印加することで、トナー像が感光ドラム1から中間転写ベルト6に転写される。
そして、中間転写ベルト6を支持するローラのうちローラ62は二次転写対向ローラで、このローラ62が配設された部位の中間転写ベルト6の外面位置に二次転写ローラ8が離接自在に設置され、転写手段である二次転写ローラ8にはバイアス電源81から二次帯電バイアスが印加されるようになっている。二次転写ローラ8は、第1色〜第3色のトナー像の一次転写工程時には、中間転写ベルト6から離間しておくことが可能である。
中間転写ベルト6上に4色が重畳転写されたトナー像が中間転写ベルト6の回動で二次転写部位の直近に至るタイミングで、二次転写ローラ8にバイアス電源81から二次転写バイアスが印加され、同時に二次転写ローラ8が中間転写ベルト6に当接される。更にその当接部に、第2の像担持体としての紙や樹脂シート等の記録媒体としての転写材Pが給紙ローラ12により所定のタイミングで送り出され、ガイド13を経て給紙される。
中間転写ベルト6上の4色のトナー像は一括して、中間転写ベルト6と二次転写ローラ8との当接ニップ部を通過する過程で、二次転写ローラ8から中間転写ベルト6に印加した二次転写バイアスによって形成される二次転写電界により、転写材Pの表面に転写されていく(二次転写)。トナー像が二次転写された転写材Pは定着器11に導入され、定着工程にて加熱および加圧することにより4色のトナーが溶融混色して転写材Pに固定され、所望画像である画像形成物、ここではフルカラーのプリント画像に形成される。
中間転写ベルト6の表面に残留した二次転写残のトナーは、中間転写体クリーニング手段であるベルトクリーナ9により感光ドラム1とは逆極性に帯電される。ベルトクリーナ9は中間転写ベルト6の外面に離接自在に設置されたローラから形成され、ベルトクリーナ9を中間転写ベルト6の表面に当接し、中間転写ベルト6の内側に配置した接地された導電ローラ91を対向極として、バイアス電源92によりベルトクリーナ9に所定の極性のクリーニングバイアスを印加することにより、二次転写残トナーを所定の極性に帯電するものである。本例では、感光ドラム1は負極性帯電なので、二次転写残トナーは正極性に帯電される。ベルトクリーナ9は、第1色〜第3色のトナー像の一次転写工程時には、中間転写ベルト6から離間しておくことが可能である。
中間転写ベルト6上の逆極性に帯電された二次転写残トナーは、中間転写ベルト6の感光ドラム1との当接部及びその近傍で、感光ドラム1に静電的に吸引されて転移し、中間転写ベルト6から除去される。
上記のように、像担持体と近接対向して移動する転写装置として中間転写ベルト等の中間転写体を有して、中間転写方式を採用したカラー画像形成装置は、転写装置としての転写ドラム上に転写材を貼り付けまたは吸着して担持し、その転写材に感光ドラムから各色のトナー像を転写してカラー画像を得る構成をとる、例えば特許文献1に記載されたカラー画像形成装置と比較すると、転写材に何らの制御、例えば転写ドラムのグリッパに転写材を把持する、転写ドラムの表面に転写材を吸着する、転写ドラムの表面に沿うように曲率を持たせる等の制御を必要とせずに、中間転写体から転写材にトナー像を転写できるので、封筒、葉書、ラベル紙など、40g/m2程度の薄い紙から200g/m2程度の厚い紙まで、幅の広狭や長さの長短に関わらず、トナー像を転写してカラー画像を得ることができるという利点を有している。このような利点があるため、すでに中間転写ベルトを用いたカラー画像形成装置が、カラー複写機、カラープリンタ等として既に市場で稼動している。
更に、中間転写体をベルト形状とすることで、中間転写ドラムのような剛体のシリンダーを用いる場合と比較して、画像形成装置内部に配置する際の自由度が増して、スペースの有効利用による装置本体の小型化やコストダウンを行うことが出来るメリットもある。
しかしながら、製品開発の流れの中で、中間転写方式のカラー画像形成装置において、以下に説明するような第一、第二、第三のニーズが発生し、それに応える画像形成装置が求められるようになった。
第一のニーズは、画像形成装置の高速化である。近年、前述の従来技術とは異なり、高速化対応を可能とするため、像担持体と近接対向する転写装置としての転写材搬送体上に複数のトナー像形成部(転写部)を配置させ、転写材搬送体に担持された転写材に直接トナー像を順次転写させていく方式(インライン転写方式)が提案されている。
又、更に、高速化だけでなく、メディアフレキシビリティー(はがきから厚紙や大サイズ紙など広範囲な転写材に対応可能なこと)に富んだ画像形成装置として、転写装置として第二の像担持体である中間転写体上に、複数のトナー像形成部を配置させ、順次トナー像を一次転写させ、中間転写体から転写材へ一括転写(二次転写)する方式(インライン中間転写方式)が提案されている。
第二に、画質の安定化である。画像安定性については、日々鋭意検討がなされており、例えば、現像手段や、感光体、帯電装置などを所持する画像形成部(プロセスステーション)の新品状態から、寿命を迎えるまでにおける耐久による画質の安定性や、周囲の環境(温度、湿度)の変化に対する安定性については、様々な提案がなされている。環境変動については、濃度制御、例えば感光ドラム等の像担持体上に形成したトナー像の濃度を光学的に検出し、現像バイアスや、帯電電位などのフィードバックをかける制御等の実行により、ある程度は改善が可能である。しかしながら、耐久安定性に関しては、特に、現像手段に収容された現像剤(トナー)の劣化防止に関しては、難易度は非常に高く、劣化したトナーは、選択的に現像されず、現像手段内に、少しずつ蓄積し、用紙への転写不良の要因となり、画像品位を低下させていく。このような不具合への策として、定期的または、不定期にトナーを排出することが有効である。
第三に装置の小型化である。上記に述べた第一のニーズである高速化を推し進めるためのインライン方式は、複数の像担持体を有し、像担持体毎に画像形成部を備え、複数の画像形成部を並列配置させるため、従来のモノクロ装置と比較すると、かなり大型化しているのが現状である。又、これらのトナー像を順次転写する転写手段を有し、複数の転写手段と画像形成部との対向ニップを通過移動する転写装置としての転写材搬送体や中間転写体は、通常、これらの表面に残留したトナーをクリーニングする手段を有しており、このクリーニングしたトナーを貯める廃トナー容器を配置させる空間を確保しなければならない。従って、先に説明した第二のニーズを満たすためにトナー劣化時の排出されたトナーはできるだけ、これら表面へ転写させないことが必要となる。廃トナー容器へ送り込まれる排出トナーの量Mは、式1にて表され、このトナー量Mの分だけ、中間転写体や転写材搬送体等の転写装置の廃トナー容器の容量を増やさなければならない。これにより、廃トナー容器の容量をこの分、増やすことにより、装置自体が大きくなってしまうという課題が生じた。通常、画像形成部におけるそれぞれの画像形成手段の寿命に対し、中間転写体や転写材搬送体等の転写装置の寿命は、非常に長いため、いかに排出トナーを転写装置上へ転写させないか、即ち、式1における排出トナーの転写効率ηをどれだけ下げるかが重要となる。尚、本明細書では、複数の画像形成部における転写部を構成して、その転写部を通過して移動する中間転写体や転写材搬送体を「転写装置」と総称することとする。
M=m×n×η×LFT/i (式1)
m:一回に排出されるトナー量
n:現像色の数 イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色
η:排出トナーの転写効率
LFT:転写装置の寿命
i:画像形成部のトナー排出枚数間隔
特開昭63−301960号公報
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
実施例1
図1は、本発明を適用した画像形成装置の一例である、本実施例の電子写真プロセスを利用したカラーレーザプリンタの概略断面図である。
図1に示すカラーレーザプリンタは、複数の第一の像担持体である感光ドラム1、ここでは4個の感光ドラム1(1y、1m、1c、1k)を有し、順次、転写装置としての第2の像担持体であるベルト状の中間転写体(中間転写ベルト)6に連続的に多重転写し、フルカラープリント画像を得る、高速化に有効な構成である4連ドラム方式のインライン中間転写方式を採用したプリンタである。尚、本実施例では感光ドラム1は外径24mmの有機光半導体である。
図1に示すように、無端状の中間転写ベルト6は、駆動ローラ61、二次転写対向ローラ62及びテンションローラ63に懸架され、図中矢印の方向に回転している。テンションローラ63による荷重は、片側2.0kgfのばねで両側からテンションをかけたものである。本実施例で使用されている中間転写ベルト6は、周長640mmであり、軸方向である長手方向の長さは220mmである。
そして、感光ドラム1は、中間転写ベルト6を巻架する二次転写対向ローラ62と駆動ローラ61との間で形成された中間転写ベルト面Xに沿って中間転写ベルト6の移動方向に、直列に各色に対応し4個配置されている。そして、それぞれの色毎に、各画像形成工程を実施する画像形成手段、つまり帯電手段である一次帯電ローラ2(2y、2m、2c、2k)、現像手段である現像器4(4y、4m、4c、4k)、及び感光ドラムクリーニング手段であるクリーニングブレード7(7y、7m、7c、7k)と共にイエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックKの画像形成部(プロセスステーション)を構成して、中間転写ベルト6に沿って並べて配置されている。
イエロー現像器4yを有するイエロープロセスステーションY内の感光ドラム1yは回転過程で、一次帯電ローラ2yにより所定の極性・電位に一様に帯電処理され(帯電工程)、次いで不図示の画像露光手段(カラー原稿画像の色分解・結像露光光学系、画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザビームLを出力するレーザスキャンによる走査露光系等)による画像露光Lを受けることにより目的のカラー画像の第1の色成分像(イエロー成分像)に対応した静電潜像が形成される(潜像形成工程)。
次いで、その静電潜像が第1現像器4y(イエロー現像器)により第1色であるイエロー現像剤(トナー)により現像され、感光ドラム1y表面には、イエロー現像剤像(トナー像)が形成される。
この時の本実施例における画像形成条件を説明すると、感光ドラム1y上の暗電位(一次帯電による非画像部電位)Vd=−420Vであり、明電位(レーザ露光Lによる画像部電位)Vl=−50Vであり、現像器4yによる現像方法は、一成分接触現像方式であり、現像バイアスは、直流電圧Vdc=−220Vと交流電圧Vac=1800Vpp、周波数=2300Hzの重畳バイアスである。
そして、ここまでの画像形成速度となる感光ドラム1yの回転速度、つまりプロセススピードは、87mm/secである。
他のプロセスステーションM、C、Kにおいても同様の画像形成工程が実施され、それぞれの感光ドラム1表面には、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像が形成される。
それぞれのプロセスステーションY、M、C、Kの感光ドラム1上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナー像は、それぞれのステーションにおける中間転写ベルト6との一次転写ニップ部である転写部t(ty、tm、tc、tk)へ進入する。転写部tでは、中間転写ベルト6の裏側にそれぞれのステーションY、M、C、Kにおける転写手段である電圧印加部材の一次転写ローラ5(5y、5m、5c、5k)を接触当接させている。
一次転写ローラ5には各ステーションY、M、C、Kで独立にバイアス印加可能とするため、不図示の一次転写バイアス源を有している。中間転写ベルト6は1色目のステーションでまずイエローを転写し、次いで先述した工程を経た、各色に対応する感光ドラム1より順次マゼンタ、シアン、ブラックの各色を各ステーションで順次転写する(転写工程)。感光ドラム1上に残されたトナーは、感光ドラム1に当接されたクリーニングブレード7により、クリーニングされ,クリーニングされたトナーは、不図示の廃トナー容器に回収される。
ここで、一次転写ローラ5は、導電性ローラで、外径6mmのステンレス性軸にEPDM発泡フォームを覆った外径14mmのローラであり、抵抗値は、下記に図2を用いて説明する方法で求めた結果(R)が1×106Ω以下のローラを使用した。ローラ硬度は、Asker cで30度である。又、ローラ5の押圧に関しては、マゼンタ、シアンは、両端からそれぞれ350gつまり350gf×2のバネを配置させ、イエロー、ブラックは、両端からそれぞれ450gつまり450gf×2のバネを配置させ、中間転写ベルト6を介して感光ドラム1に押圧した。
尚、抵抗値は、図2に示すように、ローラ5に対し、両端からそれぞれ500gつまり500g×2の荷重14をかけて、外径30mmのアルミシリンダ15に圧接させて、アルミシリンダ15を回転駆動して、ローラ5に50Vを印加し、アルミシリンダ15に接続した抵抗100Ωの測定用テスタ16にて、そこに流れる電圧電圧Vを測定し、抵抗Rを式2にて算出したものである。
抵抗R=50×100/V (式2)
中間転写ベルト6には、ポリイミドの単層ベルトを使用し、その物性値は以下である。
厚み:75μm
抵抗値:体積抵抗値109Ωcm
尚、上記抵抗値は、三菱油化株式会社製のHIRESTA(登録商標)を用いて測定し、100V印加での測定結果である。このベルト6は、カーボンを分散することにより抵抗調整をおこなっている。
中間転写ベルト6上で形成された4色フルカラー画像は、次いで二次転写ローラ8により、転写材Pに一括転写される(転写工程)。二次転写時に、中間転写ベルト6上に残留したトナーは、中間転写体クリーニング手段9内のクリーニングブレード9aにより、かきとられ、不図示のトナー搬送手段により、廃トナー容器10へ搬送される。廃トナー容器10は、後に詳しく説明するように本実施例では中間転写ベルト6の寿命である転写装置寿命10万枚分の廃トナーが収納させるように設計されている。
4色の合成トナー像が転写された転写材Pは、定着装置11によってトナー像が溶融定着され、画像形成物であるカラープリント画像が得られる(定着工程)。
一方、本実施例のプリンタでは、上記のフルカラー画像を形成するフルカラー画像形成モードと、中間転写ベルト6上にブラックステーションKで形成したトナー像から画像形成物を得るモノクロモードが実施される。
モノクロモード時は、先に説明したイエロー、マゼンタ、シアンのプロセスステーションY、M、Cに対向する一次転写ローラ5y、5m、5cが、プロセスステーションY、M、Cから離間し、図1に点線部X1で示すように、各ステーションY、M、C、Kの一次転写部tが配置されるベルト面XのプロセスステーションY、M、C、K側の盛り上がりを無くすように、ここでは右方向へと移動する。その結果、中間転写ベルト6は、イエロー、マゼンタ、シアンの感光ドラム1y、1m、1cと離間する。
そして、プロセスステーションKのみにおいて、上記の画像形成工程が実施され、中間転写ベルト6には、ブラックトナー像のみ形成され、二次転写工程、定着工程を経て、転写材Pにモノクロ画像が形成される。
ここで、一次転写ローラ5を移動することにより中間転写ベルト6を感光ドラム1から離間する機構について説明する。本画像形成装置では、イエロー、マゼンタ、シアンのプロセスステーションY、M、Cは、中間転写ベルト6の移動方向で、ブラックのプロセスステーションKの上流に並んで配置され、ブラックのプロセスステーションKは、ベルト6移動方向でベルト面Xの最下流に配置される。そして、イエロー、マゼンタ、シアンの一次転写部ty、tm、tcとブラックの一次転写部tkは、それぞれ、ベルト面Xにおいてベルト6移動方向の上流と下流で、環状の中間転写ベルト6の内側で図1に示すように分割されている。即ち、ベルト面Xにおけるベルト6移動方向上流部分で、3台のカラーステーションY、M、Cにおける一次転写ローラ5y、5m、5cは、カラー一次転写ユニットZとして互い並列して位置が固定され、一体化している。カラー一次転写ユニットZは、フルカラーモードにおいては、ブラックの一次転写ローラ5kと直線に並列し、共にベルト面Xを盛り上げている状態であるが、モノカラーモードに替わる時に、カラー一次転写部Zは、ブラック一次転写部tkに最も近い端部Qを回転中心として、カム50により、中間転写ベルト6内側方向に向かうように回転し、当接離間可能な構成となっている。
このカム50は、カラー一次転写ユニットZの回転中心Qの反対側の端部において、ベルト6移動方向最上流のイエロー一次転写ローラ5y付近であり、中間転写ベルト6内側に配置される。又、カラー一次転写ユニットZは中間転写ベルト6の内側方向に付勢されている。フルカラーモード時は、カム50が横長状態になるように回転し、そのカム50の端部に押されてカラー一次転写ユニットZ端部を持ち上げ、イエロー、マゼンタ、シアンの一次転写部ty、tm、tcは、感光ドラム1y、1m、1cに当接する。
又、モノカラーモード時は、このカム50は、図1の矢印の方向へ回動して縦長状態となり、そのことによって、カラー一次転写ユニットZ端部は付勢によって中間転写ベルト6内側に移動し、中間転写ベルト6のベルト面Xは、感光ドラム1から離間し、図1では、ベルト面X1の状態となる。
上記の離間動作が好適に行われるため、上記に記載したように、通常のフルカラープリント時は、一次転写ローラ5が中間転写ベルト6を持ち上げるように、ローラ61とローラ62との断面における中間転写ベルト6外側接線を結ぶ直線(図3ではX3)より浮き上がらせて配置され、中間転写ベルト6と感光ドラム1を圧接させている。そして、図3に示すように、駆動ローラ61の断面において、ベルト面X側から鉛直方向に延びる接線方向X3を基準として、ベルト6接点からベルト面Xが持ち上がる角度θを持ち上げ角と定義し、θ=3度とした。
モノクロモード時は、中間転写ベルト6との接触を絶たれた図1に示すイエロー、マゼンタ、シアンのプロセスステーションY、M、C内の感光ドラム1、現像器4、帯電ローラ2は、回転を停止している。そして、ブラックのみ画像形成を行い、前述した画像形成工程を実施し、モノクロプリント画像を得る。モノクロモード時に、感光ドラム1y、1m、1cと中間転写ベルト6を離間し、感光ドラム1y、1m、1c、現像器4y、4m、4c、帯電ローラ2y、2m、2cの回転を停止させることにより、クリーニングブレード9aによる感光体削れは発生しないため、高寿命化が図れる。
又、本実施例における画像形成装置は、従来例にて発生した第二のニーズである画質の安定化を達成するために、上記の所望の画像形成物を得るための画像形成工程が行われる通常画像形成を中止した非画像形成時に、適当なタイミングで現像器4よりトナーの排出を行う排出モードを実施することで、現像器4内に劣化トナーが蓄積しないようにする対策がなされている。
そこで、次に、トナー排出について、説明する。
トナーは、プリント枚数の増加にともない、現像器4内でストレスを受け、その結果、一部のトナーでは、トナー電荷量や、物理付着力を制御している外添剤が、トナー樹脂内に埋没してしまう現象が発生する。これは、転写効率を低下させ、画像濃度の低下や、ハーフトン画像ががさついてしまうなど、画質の低下を引き起こす。
この現象は、特に低印字プリントで顕著である。その結果を図4を用いて説明する。図4に示すグラフは、印字比率と濃度低下の関係を、プリントの経過とともに、調査したものであり、縦軸は、反射濃度を示しており、本発明者らは、1.20以上を画像上問題ないレベルとした。又、横軸は、A4用紙のプリント枚数を示す。尚、このデータは、マゼンタステーションMで30℃、80%RH環境下のデータである。他の色や、他の環境においても傾向は変わらないため、本データで説明する。中間転写ベルト6の寿命とする、5%の印字比率で、A4で8000枚を目標とした。
このグラフから、5%の印字比率では、濃度低下は、問題ないものの、3%以下の印字比率では、寿命である8000枚に満たぬ枚数で目標である1.20より、低下してしまっている。
排出モードを設定し、非画像形成時にトナー排出を実施することで、この濃度低下を防止できる。この効果を図4に示すグラフでもっとも低下の著しい印字比率1%の条件で説明する。尚、その他の条件は同じである。排出モードの実行間隔は、以下のようにした。
本実施例に使用した装置は、さまざまな市場調査により、一日のプリント数量予測として、月間2000枚を想定しており、実働20日とすると、一日のプリント数量は、100程度であろうと予測した。
このことから、100枚に一回の排出モードであれば、大人数でネットワークプリンタとして、共有するであろう本装置においては、あまり問題にならないであろうと考えた。従って、排出モードの実行間隔を、100枚とした。
そして、排出モード時における、トナー排出方法として、具体的には、ベタパターンを感光ドラム1上に形成して排出する。ベタパターンは、長手は、現像保証領域である210mmとし、幅は、一回に排出するトナー量に応じて、調整した。例えば、0.06gであれば、排出するトナー量は、単位面積あたり、0.6mg/cm2であるため、47.6mmとなる。
図5の排出トナー量と濃度低下の関係を示すグラフから判るように、100枚に一回、0.06gのトナー排出を実施することにより、濃度低下が防止できることが判った。
以上に説明したような、本実施例の画像形成装置は、従来例にて説明した第一のニーズである高速化及び第二のニーズである画質の安定化を達成するために、インライン方式を採用し、排出モードを設定して現像器4からトナーを排出する廃トナー容器10を設けた画像形成装置であるが、このような画像形成装置においては、装置の大型化が問題となった。
上記の構成にて、本実施例では中間転写ベルト6である転写装置の寿命である10万枚の通常画像形成工程において、各画像形成部毎に100枚毎に実施される排出モードによって排出されたトナーの総量Mは、以下の式3により求められる。
M=m×n×η×LFT/i (式3)
m:1回に排出されるトナー量0.06g
n:現像色の数 イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色
η:排出トナーの転写効率 一次転写バイアス0V時 0.6
LFT:転写装置寿命 100000枚
i:画像形成部のトナー排出枚数間隔 100枚
式3に数値を代入することにより、10万枚の印刷する間における、排出モードのみによるトナー排出量は144gとなる。この量は、容積に換算すると、トナー密度は、0.5g/ccであるので、288CCの容積となる。従来は、図8に示す、トナー排出後の中間転写ベルト6の側面図から理解できるように、各色のベタパターンは転写部tにバイアスを印加することによって、感光ドラム1から中間転写ベルト6表面に、それぞれの色毎に重ねずに別々の部分に転写された、つまり中間転写ベルト6表面に排出されていたので、排出トナーは、全て廃トナー容器10に収容されていた。
一方、本装置の通常画像形成工程にて発生する廃トナー容器10の容量は、印字比率、モノクロモードとカラーモードの比率、二次転写効率(クリーニングされる残トナー量)、JAM率、から決定され、下記の式4〜6の計算により求められた。
ここで下記の式4〜6の計算値は、市場調査予測より、印字比率は、5%とし、カラーとモノクロの使用比率は、6:4とした。二次転写効率は、最悪値で80%とした。JAM率については、1000枚に一回として求められたものである。
単色ベタプリント時、中間転写ベルト6上のトナー量を0.6mg/cm2とすると、A4用紙、単色ベタプリントした場合の中間転写ベルト6表面のトナー量は、式4の計算から356.18mgとなる。
0.6×29.1×20.4=356.18mg (式4)
単色プリント、平均印字比率5%、二次転写効率80%の場合、A4用紙1ページプリント時の廃トナー回収量は、式4により求められた単色ベタプリントによる中間転写ベルト6表面のトナー量を採用した式5の計算から1ページあたり3.56mgと求められる。
356.18×0.05×0.2=3.56mg/ページ (式5)
又、フルカラーとモノクロのプリント比率を6:4とすると、A4用紙1ページ当たりの廃トナー量は、式6から1ページあたり平均9.96mgとなる。
4×3.56×0.6+3.56×0.4=9.96mg/ページ (式6)
一方、1000枚に一回のJAM率の分も加えると、約10mg/ページとなる。
ここで、各画像形成手段の寿命を10万枚とすると、この10万枚までの間に通常画像形成工程にて中間転写ベルト6に排出するトナーを収容するには、式7より廃トナー容器10は、ロスも考慮して1000gのトナーの収納を可能としなければならない。トナー密度は0.5g/ccであるので、廃トナー容量は、2000CCとなる。
100000×(9.96×1/1000)=996 (式7)
そして、本装置では、ここにマージン10%を見込み、廃トナー容器10の必要収納量は、2200CCとなる。
ここで、前述した排出モード時のトナー容量288CCを加えると、2200CCの廃トナー容器10の容量を超えてしまう。実際に、廃トナー容器10の容量を2200CCとした時、上記のような条件で、10万枚プリントテストした結果、約9万枚で廃トナー容器10は満杯となってしまった。
そこで、本発明においては、この排出トナーが、中間転写ベルト6表面へ転移しないよう100枚に1回、非画像形成時に実施される排出モード実施時は、カラーの一次転写部ty、tm、tcを離間するようなシーケンスに変更し、廃トナー容器10の大型化を回避することで、装置の大型化を回避した。
排出モード実施時は、前述したように、モノクロモード実施時にカラー一次転写ユニットZを離間させるのと同じ方法で一次転写部tを感光ドラム1から離間させ、イエロー、マゼンタ、シアンの画像形成部における画像形成手段は駆動させ、通常の画像形成工程と同様に、感光ドラム1表面に潜像形成し、現像させ、トナー排出を実施し、感光ドラム1表面へ排出されたトナーは、画像形成部における不図示のクリーニング容器へ収納される。一方、ブラック画像形成部Kでは、感光ドラム1kへトナー排出され、一次転写部tkで、そのときの一次転写部tkに印加されるバイアスは、その装置における最小値とする。本実施例では最小値の0V印加であるものの、60%程度は、中間転写ベルト6表面へ転写する。しかし、中間転写ベルト6用の廃トナー容器10への影響は、カラーを離間しない場合と比較し、1/4で済む。
又、排出モード実行時に転写部tにはバイアスは印加されなくとも良く、電気的接続を切っても良い。
このように、排出モード実行時は、カラーの一次転写部tは離間するよう制御変更し、A4用紙を10万枚、カラーとモノクロプリントの比率を6:4、印字比率5%で実施した。
その結果、10万枚プリント終了後も、廃トナー容器10に収納されたトナーは約2100gであり、廃トナー容器10の容量を超えることは無いことが確認できた。
本実施例によって、画像安定化のための排出モード実施において、一次転写部を離間することにより、排出トナーの中間転写ベルト上へ転写を防止することが可能となり、廃トナー容器の容量の大容量化が不必要となった。この効果は、複数の画像形成部における像担持体と近接対向して転写部を構成しながら移動する転写装置が中間転写体であるインライン中間転写方式に限らず、像担持体からトナー像が転写される転写材を担持搬送する転写材搬送体を転写装置として有するインライン転写方式においても同様の効果が得られることは言うまでもない。
以上の結果より、インライン方式により、高速化が可能となり、排出モードの実施により、画像安定性にすぐれた画像形成装置で、更に装置の大型化を回避したコンパクトな画像形成装置の実現が可能となった。
尚、排出モード実施時に転写装置から離間される画像形成部は、上記の色や数に限らず、転写装置に対向して転写部を構成する画像形成部の少なくともひとつ以上であり、全部転写装置から離間しても良い。又、離間方法も上記に限られるものではない。
実施例2
実施例1において、一次転写部tを離間する方式では、通常画像形成動作から非画像形成時の排出モードに移る時、又、排出モードから通常画像形成動作へ移る際の時間が、一次転写部tの離間に必要な時間だけ長くかかってしまうといった不都合があった。
なぜなら、一次転写部tの離間は、実施例1で説明したようにカム50の動作により制御しているため、約6secのその分多くの時間がかかってしまうからである。
本発明者らは、この不都合を解決するために、吐き出し時の各色のベタパターンを実施例1に示した中間転写ベルト6上に重ねることで、トータルとして中間転写ベルト6表面へ転移するトナー量を減らすことを試みた。
従来は、前記に説明したように、図8に示す、トナー排出後の中間転写ベルト6の側面図から理解できるように、各色のベタパターンは転写部tにバイアスを印加することによって、感光ドラム1から中間転写ベルト6表面に、それぞれの色毎に重ねずに別々の部分に転写された、つまり中間転写ベルト6表面に排出されていたので、排出トナーは、全て廃トナー容器10に収容されていた。
つまり、従来はそれぞれの色毎の転写部tにおいて、形成されたべたパターンがバイアス0Vを印加した場合、転写効率として60%程度転写してしまう。これは、中間転写ベルト6として、電荷減衰系の中抵抗ベルトを使用しているため、比較的、低バイアスで転写が可能なこと、そして、感光ドラム6表面のトナー層電位で形成される電位や、誘導電荷の影響によるものと考えられる。つまり、図8に示されるような従来の排出モードでは、全ての画像形成部における排出トナーの60%が中間転写ベルト6に転写されてしまう。
しかしながら、本実施例のように、中間転写ベルト6に転写される排出トナーのベタパターンが多重層となると、ベタパターンのトナー層が厚くなることで、トナー層内の電界が弱められるので、一次転写バイアスを0Vでは、転写できない。
このことは、図6に示すグラフから判明される。図6は、それぞれのステーションY、M、C、Kにおける吐き出し時のベタパターンを重ねて転写する時の転写電圧に対する1次色転写効率、2次色転写効率、3次色転写効率、4次色転写効率を示したグラフである。このように、転写部に印加されるバイアスを下げていくほど、3次色、4次色が急激に転写効率が下がり、転写電圧をV=0Vとすると、3次色、4次色はほとんど転写されていないことがわかる。
そして、本実施例においては、このときに、ベタパターン形成時に印加するバイアスを装置の最小値である0Vとしていることで、1次色であるイエローのみが60%程度転写され、2次色、3次色、4次色と画像を重ねるにしたがって転写効率は急激に下がり、2次色では20〜40%程度まで下がり、3次色、4次色はほとんど中間転写ベルト6上へ転写されることは無かった。
ここでも、ベタパターンを中間転写ベルト6に転写するために印加するバイアスは装置における最小値であることが望ましく、電気的接触を切っても良い。
実際に用いたパターンを図7で説明する。図7で示すように、排出されたトナーによるベタパターンは、4色重ねてあるが、実際は、第3次色シアン、第4次色ブラックのトナー層は非常に薄いか、ほとんど無い状態である。パターンの大きさは、第一の実施例で示したように1色あたりの排出トナー量が0.06gとなるよう、パターンの大きさは210mm×47.6mmとした。
このように、排出モード実行時は、排出トナーを4色重ねるよう変更し、A4用紙を10万枚、カラーとモノクロプリントの比率を6:4、印字比率5%で確認した。
その結果、10万枚プリント終了後も、廃トナー容器10に収納されたトナーは約2050gであり、廃トナー容器10の容量をオーバーすることは無いことが確認できた。又、実施例1のように、一次転写部tを離間せずに排出モードを実施できるため、一次転写部tの離間に必要な時間を省くことが可能となり、ユーザのプリント待ち時間を減らすことが可能となった。
本実施例によって、画像安定化のための排出モード実施においても、排出トナーを中間転写ベルト上に各色重ねることにより、排出トナーの中間転写ベルト上へ転写を防止することが可能となり、廃トナー容器の容量の大容量化が不必要となった。又、これにより、一次転写部の離間に伴う時間を省略することが可能となり、排出モード実施時の待ち時間を少なくすることができた。
この効果は、インライン中間転写方式に限らず、インライン転写方式においても同様の効果が得られることは言うまでもない。
以上の結果より、インライン方式により、高速化が可能となり、排出モードの実施により、画像安定性にすぐれた、コンパクトな画像形成装置の実現が可能となった。