ところで、近年の低コスト化、小型化といった要請に基づき、電子写真方式の画像形成装置では、ベルト状部材である中間転写ベルトを感光体ドラムの回転により駆動するものが用いられている。このように感光体ドラムの回転により中間転写ベルトを駆動する構成の画像形成装置においては、中間転写ベルトを複数のロール部で張架すると共に、その外周の一部を感光体ドラムの周面を覆うように面接触させ、この面接触部分の接触摩擦力により感光体ドラムの回転力を中間転写ベルトの駆動力として用いている。従って、このような構成の画像形成装置においては、中間転写ベルトを感光体ドラムの周面(曲面)と面接触させるために、必然的に中間転写ベルトをゴム等の弾性部材で形成する必要がある。
そして、こうした弾性部材で形成された中間転写ベルト上の転写残トナーをクリーニングする際は、弾性ベルトに対するダメージを軽減するという観点から、クリーニングブレード等による機械的なクリーニング方式よりも、前述の特許文献に開示された先行技術のように、転写残トナーを帯電させて感光体ドラム上に逆転写させた後にクリーニングする静電的なクリーニング方式が好ましい。
しかしながら、前述の特許文献に開示された先行技術においては、いずれもDC成分にAC成分を重畳したクリーニングバイアスを印加しているので、電源回路等が複雑大型化し、コストアップするといった問題を生じていた。
一方、クリーニングバイアスとして、一定のDC成分を印加した場合には、クリーニング特性が経時的に変化し、良好なクリーニング性能が維持できないといった問題が生じていた。
特に、中間転写ベルトとして上述のような弾性ベルトを用いた場合には、クリーニング特性の経時的な変化が大きく、このような弾性ベルトに対してAC成分が重畳されたクリーニングバイアスが印加されると、当該AC成分によりベルト部材の劣化が促進されたり、弾性ベルトに振動が生じて色ズレや濃度ムラ等の画像欠陥が発生し易いといった問題が顕著に生じていた。
そこで、本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、クリーニングバイアスとして中間転写体にAC成分を印加することなく、転写残トナーの静電的なクリーニングを可能とする画像形成装置を簡易な構成で安価に提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、その表面に静電潜像が形成され、トナー像が担持される像担持体と、該像担持体に形成されたトナー像が転写される中間転写体と、該中間転写体上のトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、該中間転写体上の転写残トナーをクリーニングするクリーニング手段とを備え、前記クリーニング手段は、前記中間転写体上の転写残トナーを帯電して前記像担持体に逆転写させる直流クリーニングバイアスを印加すると共に、前記中間転写体の使用履歴に応じて該直流クリーニングバイアスの値を変更することを特徴とするものである。
一般に、クリーニングバイアスとして一定のDC成分のみを印加する場合、当該クリーニングバイアスには最適値があり、所定の電荷が不足するとクリーニング不良となり、電荷が過剰となると正規の一次転写を阻害して一次転写不良を引き起こしてしまう。
そして、このような直流クリーニングバイアスの最適値は、中間転写体の使用履歴に応じて経時的に変化することが本発明者らの研究の結果判明した。特に、中間転写体の使用履歴が新しいほど、この最適値の変化の割合は大きくなり、この変化の割合は、その後漸次減少していくことがわかった。そして、このような特性に基づいてクリーニングバイアスを印加することにより、AC成分を重畳することなくDC成分のみのクリーニングバイアスにて、経時的に十分なクリーニング性能を維持することができることが判明した。
そこで、上述のように構成した本発明の画像形成装置によれば、クリーニング手段が、中間転写体の使用履歴に基づいて直流クリーニングバイアスを変更するので、AC成分を重畳することなく、その寿命まで安定したクリーニング性能及び良好な画質を簡易な構成で維持することができる。
また、前記中間転写体は、弾性ベルトであり、前記像担持体と面接触して、該像担持体に従動して回転してもよい。
このように構成した場合には、AC印加による画像欠陥等の発生がより大きな問題となる、弾性ベルト部材を像担持体に面接触させて像担持体の回転により該ベルト部材を駆動する装置構成において、上記画像欠陥の発生を未然に防止することができる画像形成装置を簡易な構成でより好適に実現することができる。
さらに、前記クリーニング手段は、前記中間転写体の累積回転数に基づいて前記直流クリーニングバイアスの値を変更してもよい。
一般に、中間転写体の回転数は、像担持体の回転数に対して所定の比率で設定されているので、中間転写体の累積回転数は、既設の像担持体の回転数カウンタを流用して計測可能となる。
そこで、このように構成した場合には、クリーニングバイアスの経時変化と相関を有する中間転写体の累積回転数に基づいて、印加される直流クリーニングバイアスの値が変更されるので、AC成分を重畳することなく、最適な直流クリーニングバイアスの変更制御を、新たなセンサを付加することなく実現可能として装置の小型化・コストダウンに寄与することができる。
さらにまた、前記クリーニング手段は、前記使用履歴に基づいて変更する前記直流クリーニングバイアス値の変更の割合を、経時的に減少させてもよい。
このように構成した場合には、初期使用状態における経時変化の割合が最も大きく、その後、変化の割合が減少していく中間転写体、特に、弾性部材で形成された中間転写ベルトの経時的な特性変化に好適な直流クリーニングバイアスを設定することができる。
以上において、前記クリーニングバイアスを印加するクリーニング手段は、ブラシロールであってもよい。
このように、クリーニング手段としてブラシロールを用いた場合には、ブレード等を用いた場合に比し、中間転写体に対する機械的接触による磨耗、傷の発生に伴う画質の劣化や、摺動抵抗による中間転写体の局所的な伸縮に伴う画質の劣化を効果的に抑制することができる。また、ゴムロール等に比し、転写残トナーに対するより効率的な帯電が可能となり、中間転写体からの逆転写を促進して中間転写体のクリーニング性能の向上に寄与することができる。
本発明によれば、クリーニングバイアスとして中間転写体にAC成分を印加することなく、転写残トナーの静電的なクリーニングを可能とする画像形成装置を簡易な構成で安価に実現することができる。
以下に、本発明に係る実施の形態を図面を参照して説明する。
まず、本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の概略構成について、図1を参照して説明する。
本実施の形態に係る画像形成装置は、例えば、いわゆる回転式(ロータリー)現像装置を用いたデジタルカラープリンタであり、図1に示されるように、画像形成装置本体1に、静電潜像を形成してトナー像を担持させる像担持体である感光体ドラム11、帯電ロール等を用いて感光体ドラム11に電荷を与えて帯電させる帯電器12、図示しない画像処理装置(IPS)からの画像信号に基づいて、帯電された感光体ドラム11を露光部にて、例えばROS(Raster Output Scanner)を用いて露光する露光装置13、露光装置13によって感光体ドラム11上に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置14等を備えている。
本実施の形態における現像装置14は、回転式(ロータリー)現像装置であり、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のトナー像を形成するために、回転軸14oを中心に回転自在に形成されたロータリー内に各色のトナーを含んだ4つの現像ユニット14Y,14M,14C,14Kを備えている。この現像ユニット14Y〜14Kは、二成分現像剤を担持する現像剤担持体である現像ロール14Ya〜14Ka、現像ロール14Ya〜14Kaと感光体ドラム11との距離を一定に保つための位置決め部材である不図示のトラッキングロール、現像ロール14Ya〜14Kaに供給される現像剤を撹拌する不図示のサプライオーガ及びアドミックスオーガ等を各々備えている。また、各現像ロール14Ya〜14Kaは、現像装置14の周上に設けられていると共に、内部に配設されたマグネットロールによって、現像剤中に含まれるキャリアを磁力で吸着し、この現像ロール14Ya〜14Kaの表面に現像剤の磁気ブラシを形成して、キャリアに吸着したトナーを感光体ドラム11の現像領域へと搬送するようになっている。
そして、このように構成した現像装置14においては、回転軸14oを中心として、ロータリーを90度ずつ回動させることで所望の現像ユニット14Y〜14Kが備える現像ロール14Ya〜14Kaを感光体ドラム11に対向させるようになっている。すなわち、1つのプリント画像を出力する際には、例えば、Y,M,C,Kの現像ユニット14Y〜14Kを、この順に感光体ドラム11に対峙させ、フルカラーのプリント画像を形成するようになっている。また、各々の現像ユニット14Y〜14Kは、中心軸14o近傍に配置された不図示のコイルスプリングによって法線上に押圧され、位置決めのためのトラッキングロールが感光体ドラム11に確実に当接できるように構成されている。さらに、感光体ドラム11は、図の矢印方向(本例では、時計回り方向)に回動する金属製ドラムの表面に有機感光材料、アモルファスセレン系感光材料、アモルファスシリコン系感光材料等からなる感光体層が形成されたものであり、現像装置14は、感光体ドラム11の回動(時計回り方向)とは接線方向の動きが同じになるように、反時計回り方向に回動するようになっている。
また、感光体ドラム11上における現像装置14の下流側には、現像ユニット14Y〜14Kによって現像されて感光体ドラム11上に形成されたトナー像を一旦保持する無端ベルト状の中間転写体である中間転写ベルト15、中間転写ベルト15上に重畳されて形成されたトナー像を記録媒体に転写する二次転写部材である二次転写ロール16、記録媒体上に形成されたトナー像を加熱および押圧して定着する定着装置17等が配設されている。さらに、感光体ドラム11の周りには、中間転写ベルト15への一次転写の後に感光体ドラム11上に残ったトナー(残留トナー)を掻き取る感光体クリーニングブレード18、この感光体クリーニングブレード18より掻き取られたトナーを蓄積して回収する廃トナーボックス19が設けられている。なお、現像装置14と中間転写ベルト15との間には、現像ユニット14Y〜14Kによって供給されたトナーの濃度を測定するための反射型センサである不図示の濃度センサが設けられている。
本実施の形態において、中間転写ベルト15は、複数のロール間に張架され略三角形の軌道を描くように形成されており、さらに、感光体ドラム11に対して所定範囲だけ巻きつくように、感光体ドラム11の一部表面とラップ状に接触(当接)し、いわゆるラップ転写が可能な構成となっている。具体的には、感光体ドラム11近傍の中間転写ベルト15の内側に、感光体ドラム11に形成されたトナー像を所定の電界により中間転写ベルト15上に転写させる一次転写ロール22、この一次転写ロール22の上流側にて中間転写ベルト15のラップ位置を特定するラップインロール21及び下流側にて中間転写ベルト15のラップ位置を特定するラップアウトロール23が配設されている。そして、このラップインロール21及びラップアウトロール23により、中間転写ベルト15を所定のラップ範囲で感光体ドラム11を覆うように接触させると共に、感光体ドラム11のふらつき等による中間転写ベルト15の挟み込みを防止して中間転写ベルト15に対するダメージを抑制している。
また、本実施の形態に係る画像形成装置1においては、中間転写ベルト15自身に駆動源を設けず、中間転写ベルト15の循環移動は、感光体ドラム11の回転により駆動されるようになっている。具体的には、本実施の形態に係る中間転写ベルト15は、感光体ドラム11とのラップ状の接触を利用して感光体ドラム11の回転に従動するようになっており、接触部分の回転方向が同じとなるように反時計方向に回動(進行)するように構成されている。
そして、本実施の形態に係る中間転写ベルト15は、耐油性および耐候性に優れているクロロプレンや、耐候性に優れているEPDM等の弾性部材により形成されている。
さらに、中間転写ベルト15の進行方向に沿って、感光体ドラム11の下流側には、中間転写ベルト15の略三角形の軌道の下端を形成する下部支持ロール29が配設されており、この下部支持ロール29の下流側には、中間転写ベルト15の略三角形の軌道の側端(本例では、図中、右側端)近傍にて、中間転写ベルト15と接離可能に形成され、所定の電界により記録媒体への二次転写を行う二次転写ロール16及び、この二次転写ロール16と中間転写ベルト15を介して対向配置されたバックアップロール24が配設されている。さらに、二次転写ロール16の下流側には、中間転写ベルト15の略三角形の軌道の上端を形成する上部支持ロール27が配設されている。
本実施の形態において、二次転写ロール16は、そのシャフト表面に例えば、単層ECO発泡や、単層ウレタン発泡ゴムからなる弾性層が形成されており、かつ、その配置が、中間転写ベルト15の支持ロール29を介して感光体ドラム11と反対側となるように、中間転写ベルト15に対して接離可能に配置されている。すなわち、二次転写ロール16と感光体ドラム11とが、中間転写ベルト15、支持ロール29を介して離れた位置に配設されているので、中間転写ベルト15の弾性材質と相俟って、二次転写ロール16が中間転写ベルト15に当接接触する際の衝撃・振動が、感光体ドラム11に伝わり難い構成となっている。このように、本実施の形態に係る画像形成装置においては、二次転写ロール16が当接することによる画像乱れ等の影響を排除し、露光装置13による感光体ドラム11への露光タイミングを考慮せずに、二次転写ロール16の中間転写ベルト15との当接タイミングを設定できるようになっている。すなわち、露光装置13により感光体ドラム11への書き込みが行われている間でも、画像乱れ等を生じさせることなく二次転写ロール16が中間転写ベルト15に当接可能な構成となっている。
さらに、二次転写ロール16とバックアップロール24とで形成される二次転写部の下流側には、二次転写後に中間転写ベルト15上の残留トナーを取り除く中間転写体清掃手段としての中間転写体クリーニングユニット30が設けられている。この中間転写体クリーニングユニット30は、二次転写後に中間転写ベルト15上に付着残留した残トナーの一部を摺接除去すると共に、当該残トナーを逆帯電させるブラシロール25を備えている。そして、中間転写ベルト15を介してブラシロール25の反対側には、ブラシロール25によるクリーニング作業を助けるクリーニングバックアップロール26が配設されている。
なお、ブラシロール25にて逆帯電された残トナーは、その後、一次転写ロール22にて、感光体ドラム11に逆転写され、感光体クリーニングブレード18にて回収されるようになっている。
記録媒体搬送系としては、記録用紙やOHPシートなどの各種記録媒体を収容する給紙カセット31、この給紙カセット31から記録用紙を繰り出して給紙するフィードロール32、給紙される記録用紙を1枚ずつ捌くリタードロール33、給紙カセット31からフィードロール32等を介して搬送された記録用紙に対して転写のためのタイミングをとる(位置合わせをする)レジロール34等が配設されている。
また、定着装置17は、例えば、ヒートロール方式であり、記録用紙上に形成されたトナー像を熱するヒートロール35、ヒートロール35に対向して設けられ加熱に際して記録用紙を押圧するプレッシャロール36、定着後の記録用紙を機外に排出する一対の排出ロール37等を備えている。
このように構成した本実施の形態に係る画像形成装置においては、縦方向の記録用紙搬送パスで二次転写を可能としており、また、記録用紙搬送パスを非常に短くすることによって、部品点数を少なくすることによるコストダウンを可能とし、併せて記録用紙搬送に対する信頼性の向上を実現している。
また、本実施の形態が適用される画像形成装置は、中間転写ベルト15に隣接して設けられ中間転写ベルト15上に形成された不図示のポジションマークを検出する、例えば反射型フォトセンサである不図示の位置検出センサを備えており、この位置検出センサによってポジションマークが検出されたところから所定のタイミングで露光することで、Y,M,C,Kの各色の位置合わせが可能となるように構成されている。
次に、図1に示す画像形成装置を用いた画像形成プロセスの概要について説明する。本画像形成装置では、例えば、外部接続されたPC(パーソナルコンピュータ)や画像読取装置等からの出力要求を受け画像形成プロセスが開始される。フルカラーのプリント画像を出力する場合には、現像装置14は、まず、イエロー(Y)の現像ユニット14Yを感光体ドラム11に対峙させるように回動する。最初に、イエローのトナー像を形成する際、時計方向に回動する感光体ドラム11は、帯電器12による電荷形成プロセスである帯電部にて帯電された後、露光装置13からの例えばレーザ光によって、露光部にてイエローに対応する画像情報に基づく露光が行なわれ静電潜像が形成される。その後、現像ロール14Yaによって現像が実行された後、ラップ状の接触範囲(以下、ラップ領域とも称する)に配置された一次転写ロール22にて中間転写ベルト15にイエローのトナー像が転写される。このとき、二次転写ロール16、ブラシロール25は中間転写ベルト15から離間しており、これらによって中間転写ベルト15上のトナー像が掻き取られないようになっている。
一次転写を終えた感光体ドラム11の表面は、感光体クリーニングブレード18によって残トナーが掻き取られ、次のトナー像形成のために帯電器12による帯電部へ移動する。また、所定の現像タイミングに基づき、現像装置14が回動してマゼンタの現像ユニット14Mが感光体ドラム11に対峙する。露光装置13によってマゼンタの画像情報に基づく露光が行なわれた潜像から、順に、マゼンタのトナー像が形成されて中間転写ベルト15に重畳される。同様にして、シアン、ブラックのトナー像が、順次、中間転写ベルト15上に重畳されて一次転写が終了する。
一方、給紙カセット31からは、所定のタイミングでフィードロール32が駆動され、順次、記録用紙が取り出されると共に、リタードロール33により1枚ずつに捌かれ、レジロール34へ到達する。レジロール34は、二次転写部における二次転写のタイミングに合わせて回転し、所定のタイミングで記録用紙を二次転写部へ送り出すようになっている。
そして、一次転写により各色のトナーが中間転写ベルト15上に重畳して形成されたカラー画像は、二次転写部にて記録用紙に一括して二次転写され、その後、定着装置17にて定着処理が施される。また、二次転写の際に、記録用紙に転写されずに中間転写ベルト15上に付着残留した転写残トナーは、中間転写体クリーニングユニット30により除去される。以上のようにして、一枚のカラープリント画像を出力する際の画像形成プロセスが終了する。
ここで、上述のようなラップ領域における面接触により中間転写ベルト15を感光体ドラム11に従動回転させる装置構成においては、中間転写ベルト15は、必然的に弾性部材で形成する必要が生じる。
そして、中間転写ベルト15をゴム等の弾性部材で形成した場合に、中間転写ベルト15上の二次転写残トナーをクリーニングする際には、中間転写ベルト15に対するダメージを低減するという観点から、ブレード等の機械的なクリーニング手段を用いるよりも、残トナーを逆帯電させて感光体ドラム11上に逆転写させる静電的なクリーニング手段を用いることが好ましい。
しかしながら、このような静電的(電気的)なクリーニング手段を用いた場合でも、本実施の形態のような弾性部材で形成された中間転写ベルト15に対して、印加されるクリーニングバイアスにAC成分が重畳されていると、このAC成分により弾性部材が劣化したり、弾性ベルトが振動し色ズレや濃度ムラいった画像欠陥が生じてしまう。
そこで、本発明に係る画像形成装置においては、次のようにして、中間転写ベルト15の転写残トナーをクリーニングする際に、クリーニングバイアスにAC成分を重畳することなく静電的なクリーニングを簡易な構成で可能としている。
以下に、本実施の形態における中間転写ベルト15上の残トナーのクリーニング方式について、図2を参照して説明する。
まず、本実施の形態において、感光体ドラム11はマイナス電位に帯電されており、現像剤中のトナーも正規の状態でマイナス帯電されているものとする。そして、露光装置13により露光された感光体ドラム11との電位ギャップにより、現像装置14からマイナス帯電されたトナーが感光体ドラム11に転移し、感光体ドラム11上にトナー像が形成(現像)される。
二次転写後の中間転写ベルト15上の二次転写残トナーは、一次転写、二次転写工程にてプラス電荷を与えられ、マイナス帯電トナーとプラス帯電トナーとが混在した状態になっている(図中、A部参照)。この状態で、中間転写体クリーニングユニット30のブラシロール25に直流成分(本例では、プラス)のクリーニングバイアスを印加して転写残トナーにプラス電荷を付与すると、マイナス帯電トナーの一部は、ブラシロール25により機械的・電気的に吸着除去されると共に、残余の転写残トナーは、全てプラス帯電トナーとなる。すなわち、ブラシロール25通過後の中間転写ベルト15上の二次転写残トナーは、全てプラス帯電トナー(図中、B部参照)となり、一次転写部にて所定のタイミングで転写電界を印加することにより、マイナス電位に帯電している感光体ドラム11に中間転写ベルト15から逆転写される。その後、感光体ドラム11上に逆転写された二次転写残トナーは、感光体クリーニングブレード18によりクリーニングされる。
なお、中間転写ベルト15上の転写残トナーを感光体ドラム11に逆転写させる際は、必ずしも一次転写電界を印加する必要はないが、このように逆転写の際に、一次転写部にて転写電界を印加することにより、中間転写ベルト15上の転写残トナーの感光体ドラム11への逆転写と、感光体ドラム11から中間転写ベルト15への一次転写とを同時に行うことが可能となる。
また、このように、クリーニング手段としてブラシロール25を用いることにより、ブレード等を用いた場合に比し、中間転写ベルト15に対する機械的接触による磨耗、傷の発生に伴う画質の劣化や、摺動抵抗による中間転写ベルト15の局所的な伸縮に伴う画質の劣化を効果的に抑制することができる。また、ゴムロール等に比し、転写残トナーに対するより効率的な帯電が可能となり、中間転写体からの逆転写を促進して中間転写体のクリーニング性能の向上に寄与することができる。
ところで、クリーニングバイアスとして一定のDC成分のみを印加した場合、プラス電荷が不足するとクリーニング不良となり、プラス電荷が過剰となると正規の一次転写を阻害して一次転写不良を引き起こしてしまう。
すなわち、上記直流クリーニングバイアスには最適値があり、このような最適値は、中間転写ベルト15の使用履歴に応じて経時的に変化することが本発明者らの研究の結果判明した。具体的には、中間転写ベルト15自身の抵抗値の経時変化、ブラシロール25自身の抵抗値の経時変化、現像剤に含まれる外添剤の付着による中間転写ベルト15の抵抗値の経時変化、二次転写残トナーの付着によるブラシロール25の抵抗値の経時変化等によりクリーニングバイアスの最適値は変化してしまい、特に、中間転写ベルト15の使用履歴が新しいほど、最適値の変化の割合は大きくなり、この変化の割合は、その後漸次減少していくことがわかった。そして、このような特性に基づいてクリーニングバイアスを印加することにより、AC成分を重畳することなくDC成分のみのクリーニングバイアスにて、経時的に十分なクリーニング性能を維持できることが判明した。
そこで、本実施の形態に係る画像形成装置では、中間転写ベルト15の使用履歴に基づいてクリーニングバイアスを経時的に補正することにより、AC成分を重畳することなくDC成分のみで、クリーニングバイアスの最適状態の維持を可能としている。
本実施の形態では、図3に示すように、中間転写ベルト15の経時変化と相関を示す指標として、中間転写ベルト15の累積回転数Nを用い、この累積回転数Nに基づいて中間転写体クリーニングユニット30のブラシロール25のブラシ電流Iを経時的に補正している。具体的には、感光体ドラム11と同等の寿命となる中間転写ベルト15の累積回転数(例えば、200,000回)をN4とし、0〜N4までの累積回転数を5つの区間(本例では、N1:20,000回、N2:40,000回、N3:100,000回、N4:200,000回)に分け、0〜N4区間をそれぞれ傾きa1から傾きa4の直線で近似し、それぞれの区間を線形的に補正している。
一般に、中間転写ベルト15の回転数は、感光体ドラム11の回転数に対して所定の比率で設定されているので、中間転写ベルト15の累積回転数は、既設の感光体ドラム11の回転数カウンタを用いて一義的に計測(決定)可能となる。
そこで、このように、クリーニングバイアスの経時変化と相関を有する中間転写体の累積回転数に基づいて直流クリーニングバイアスを変更することにより、AC成分を重畳することなく直流クリーニングバイアスの最適値の変更制御を、新たなセンサを何ら設けずに簡易に実現可能とし、装置の小型化・コストダウンに寄与することができる。
なお、累積回転数N4以降は、一定のクリーニングバイアス(本例では、ブラシ電流I4)となるが、累積回転数N4を感光体ドラム11の寿命と同等となるように設定しておくことにより、感光体ドラム11の寿命と同期させて中間転写ベルト15と感光体ドラム11との一体交換を可能とし、保守性の向上を図ることができる。
また、本実施の形態において、各区間の補正直線の傾きa1〜a4は、a1>a2>a3>a4となるように設定されている。すなわち、クリーニングバイアスの変化の割合(補正直線の傾き)は、経時的に減少するように設定されている。これにより、使用履歴が新しい(累積回転数Nが小さい)ほどクリーニングバイアスの最適値の変化が大きくなるという、弾性部材で形成された中間転写ベルト15の特性に基づく使用状態に応じた補正を可能としている。
また、本実施の形態では、中間転写ベルト15の累積回転数Nに基づいて、クリーニングバイアスを制御したが、中間転写ベルト15の経時変化と相関を有する要因であれば、任意に選定可能であり、例えば、累積プリント枚数といった使用履歴に基づいて、クリーニングバイアスを変更制御してもよい。
さらに、クリーニングバイアスと累積回転数との相関が、予め所定の関数として設定可能であれば、当然に、この相関関係を用いて、適宜クリーニングバイアスを算出してもよいが、制御をより簡素化するという観点からは、図3に例示したような、その傾きが経時的に減少していくような直線(線形関係)に基づいて、クリーニングバイアスを設定することが好ましい。
また、精度は劣るもののバイアス制御をより簡素化するという観点からは、例えば、図4に示すように、区間(0〜N1,N1〜N2,N2〜N3,N3〜N4)ごとのブラシ電流の平均値(I0’〜I4’)を用いた定数によりクリーニングバイアスを設定してもよい。
なお、区間数については、当然に一定の区間数(本例では、5区間)に限定されるものではなく任意に設定可能であるが、上述したように、経時的に徐々にその傾きが小さくなるような直線にて近似可能となるように各区間を設定することが好ましい。また、ブラシロール25に印加するクリーニングバイアスに関しても、当然に電流のみならず電圧でも差し支えない。
1:画像形成装置、11:感光体ドラム、12:帯電器、13:露光装置、14Y-14K:現像ユニット、14Ya-14Ka:現像ロール、15:中間転写ベルト、16:二次転写ロール、17:定着装置、18:感光体クリーニングブレード、19:廃トナーボックス、21:ラップインロール、22:一次転写ロール、23:ラップアウトロール、24:バックアップロール、25:ブラシロール、26:クリーニングバックアップロール、27:上部支持ロール、29:下部支持ロール、30:中間転写体クリーニングユニット