JP2005156419A - ワイヤロープの磁気探傷装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 測定しようとするワイヤロープの経時変化の影響を排除する。
【解決手段】 長手方向に移動するワイヤロープ1を励磁して磁気飽和状態にし、前記ワイヤロープ1の周囲に配置した磁気センサ4が漏洩磁束Φを検知することによって前記ワイヤロープ1の損傷を検出する磁気探傷装置2であって、前記磁気センサ4はワイヤロープ1の長手方向に2列設けられており、各列の磁気センサ4は円周方向に等間隔に同数設けられ、かつ、各列の対応する磁気センサ4は一方の磁気センサ4がワイヤロープ1の山部1aと対峙している瞬間に、他方の磁気センサ4がワイヤロープの谷部1bと対峙するように配置されている。
【選択図】 図1
【解決手段】 長手方向に移動するワイヤロープ1を励磁して磁気飽和状態にし、前記ワイヤロープ1の周囲に配置した磁気センサ4が漏洩磁束Φを検知することによって前記ワイヤロープ1の損傷を検出する磁気探傷装置2であって、前記磁気センサ4はワイヤロープ1の長手方向に2列設けられており、各列の磁気センサ4は円周方向に等間隔に同数設けられ、かつ、各列の対応する磁気センサ4は一方の磁気センサ4がワイヤロープ1の山部1aと対峙している瞬間に、他方の磁気センサ4がワイヤロープの谷部1bと対峙するように配置されている。
【選択図】 図1
Description
本発明は、磁力を利用してワイヤロープの断線や錆などの損傷を検出するワイヤロープの磁気探傷装置に関するものである。
エレベータ、リフト、ケーブルカー、クレーンなどに使用されているワイヤロープは、疲労や腐食などによって生じる断線や錆などの損傷は目視による外観検査が行なわれており、断線に関してはストランド毎に目視でカウントし、内部断線に関してはノギスで外径を計測してその変化から検出している。ただし、ワイヤロープの全長にわたって検査するには時間がかかりすぎるため、検査する人のノウハウにより部分的にサンプリングを行なって全長を推定している。腐食に関しても同様に外形変化および錆などの発生状況を目視で検査している。
しかし、目視による検査では、検査する人のノウハウにより部分的にサンプリングして行なっているので、個人的にばらつきがあり、検査精度が十分でない。そこで近年、磁気センサを用いた磁気探傷装置が開発され、傷の程度を定量的に計測するようになってきている。
この磁気探傷装置としては、たとえば、特許文献1に示されるような構造となっている。図8ないし図10は特許文献1に示された鋼索用磁気探傷装置の説明図である。
図8(A)は特許文献1に示された磁気探傷装置の構成概略図である。図8(B)は漏洩磁束検出器の拡大縦断面図である。図9は回路図である。図10は測定結果を示す波形図である。これらの図において、磁気探傷装置aは、被測定物であるワイヤロープbを励磁するための励磁器cと、ワイヤロープbの損傷によって生じる漏洩磁束を検出する漏洩磁束検出器dとを備えた探傷装置本体eが電源装置fに接続され、漏洩磁束検出器dには、制御回路g、制御回路gからの検出信号を増幅する増幅器h、増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器i、そしてデジタル信号を入力してデータ解析を行なうコンピュータjが順に接続されている。
励磁器cは、探傷装置本体eの長手方向の両端に配置した複数の永久磁石の積層体からなり、この積層体を構成する永久磁石としては、たとえば、サマリウム、セリウム、プラセオジミウムなどの希土類元素と、コバルトなどの遷移元素などの合金からなる極めて強力な磁力を発揮する、いわゆる希土類遷移元素磁石を用いることができる。そして、積層体は、先端の磁極部k、kの一方がN極、他方がS極となっており、ワイヤロープbを均等、かつ、迅速に磁化させることができる。
また、漏洩磁束検出器dは、両磁極k、kの間に位置するワイヤロープbの全周を囲うように設置され、漏洩磁束検出器dの内面には、図8(B)に示すように、複数の磁気センサmが、適宜の周間隔を有して配置されている。磁気センサmとしては、通常、ホール素子が用いられる。
そして、これらの磁気センサmからのアナログ検出信号は、図9に示すように、個々に増幅器hによって増幅され、さらにA/D変換器iによってそれぞれデジタル信号に変換されて、コンピュータjで解析される。
磁気探傷装置aを用いたワイヤロープbの探傷手順は、次のとおりである。まず、探傷装置本体eに、被測定物となるワイヤロープbを通し、電源装置fのスイッチを入れて励磁器cを作動させてワイヤロープbを飽和状態になるまで磁化させる。次に、電源装置fから直流電流を制御回路gに流し、漏洩磁束検出器dを作動させる。ワイヤロープbに断線などのような損傷個所があれば漏洩磁束が発生するので、漏洩磁束検出器dに取り付けられた磁気センサmがそれを検出し、電圧を発生させる。こうして発生した電圧による検出信号を、各磁気センサm毎にそれぞれ増幅器hで増幅し、さらにA/D変換器iでデジタル信号に変換して、コンピュータjに入力する。その後、コンピュータjの演算装置によって、検出信号から形成された、図10(B)に示す波形から、図10(A)に示すあらかじめ測定してある基線振幅a1を取り除いて、図10(C)に示すように、ワイヤロープbの損傷部から得られた損傷波形b1、b2のみを算出して表示させる。
このように、磁気センサmによって基線振幅a1が検出されるのは、図11に示すように、正常なワイヤロープbであっても、飽和状態に磁気されたワイヤロープbから漏洩する磁束Φは、ワイヤロープbの周囲でむらがあり、ワイヤロープbの山部b3では小さく谷部b4では大きい。これを磁気センサmで検知するので、ワイヤロープbの長手方向の移動により、図10(A)に示すように、周期的な波形a1が現れる。
基線振幅a1は、被測定物であるワイヤロープbの大きさや撚り具合および励磁器cの励磁力や磁気センサmの取り付け位置など、さまざまな測定緒元によって異なるので、所定の測定緒元にしたがってあらかじめ測定を行ない、基線振幅a1の波形をコンピュータjに記憶させておく。
以上のようにして、測定波形から基線振幅a1を除去することによって、基線振幅a1の中に隠れて検出できない、図10(B)の損傷波形b1、b2のような波形が検出可能となる。
以上述べたように、特許文献1に開示された発明では、検出信号から形成された波形からあらかじめ測定してある基線振幅a1を取り除いて損傷部から得られる損傷信号(損傷波形b1、b2)のみを算出し、表示されている。しかし、ワイヤロープiは、使用中に伸びや摩耗によって形状が常に変化しており、図11示すようなワイヤロープbの山部b3と谷部b4から漏洩する磁束Φの値も変化する。
したがって、検出信号から形成された波形からワイヤロープの使用当初にあらかじめ測定してコンピュータ内に記憶してある基線振幅a1を取り除いたとしても、損傷部から得られる損傷信号b1、b2のみを算出することは困難である。
本発明は従来技術のかかる問題点に鑑みて案出されたもので、磁気検出器内の磁気センサの配置を工夫することにより、磁気センサで検出してしまうノイズを除去した状態の損傷信号を検出することにより、ワイヤロープの有効径を推定し、その変化から欠陥を検出することができる磁気探傷装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の磁気探傷装置は長手方向に移動するワイヤロープを励磁して磁気飽和状態にし、前記ワイヤロープの周囲に配置した磁気センサが漏洩磁束を検知することによって前記ワイヤロープの損傷を検出する磁気探傷装置であって、前記磁気センサはワイヤロープの長手方向に2列設けられており、各列の磁気センサは円周方向に等間隔に同数設けられ、かつ、各列の対応する磁気センサは一方の磁気センサがワイヤロープの山部と対峙している瞬間に、他方の磁気センサがワイヤロープの谷部と対峙するように配置されている。
各列の磁気センサの数はワイヤロープのストランド数との間に公約数がない数(互いに素)であるのが好ましい。
次に本発明の作用を説明する。ワイヤロープのストランドはワイヤロープの長手方向にスパイラル状に形成されており、図11に示すようにワイヤロープの山部では漏洩磁束が小さく、谷部では漏洩磁束が大きいので、各磁気センサからはそれぞれ図10(A)で示すような周期的な波形の出力(基線振幅)が発信される。この周期的な波は損傷波形の検出には邪魔なので、この影響をできるだけ小さくする必要がある。
本発明では磁気センサをワイヤロープの長手方向に2列設けており、各列の対応する磁気センサは、一方の磁気センサがワイヤロープの山部と対峙している瞬間には、他方の磁気センサがワイヤロープの谷部と対峙するような配置となっている。たとえば、対応する磁気センサの円周方向の位置(基準点からの角度)が同じである場合に、ストランド数が3であるとすると、2つの磁気センサの長手方向の距離は、P/6(Pはストランドの1ピッチの長さ)またはその奇数倍であればよい。
先に述べたように漏洩磁束はワイヤロープの山部で最も小さく、ワイヤロープの谷部で最も大きいので、それらを足し合わせた場合の和は一定になる。また、ワイヤロープが移動している間にも一方が山部から谷部へ向かう間に他方は谷部から山部に向かうのでその間についても和はほぼ一定であるといえる。
さらにワイヤロープが1ピッチ分進行するときに、磁気センサとワイヤロープのストランドとの相対関係が同一になる回数は磁気センサの数とワイヤロープのストランド数の積を最大公約数で割った値になるが、この数が多い方が好ましい。たとえば、ストランド数が3で磁気センサの数が2である場合には、相対関係が同一になる回数は6である。この回数が多いほど良い理由は磁気センサがノイズとして検知する山または谷の個数が増加しその分山と谷の高さの差が小さくなるからである。
このように本発明の磁気センサの配置によれば、ノイズの影響が小さい状態で、損傷波形のみを算出して表示することができる。また、損傷により発生する全漏洩磁束はワイヤロープの有効断面積に反比例するので全漏洩磁束の大きさが分かれば、ワイヤロープの有効断面積または有効径が分かり、ワイヤロープの交換時期などの評価をすることができる。また、本発明ではどのストランドに損傷が発生したかは分からないものの、特許文献1の発明のように基線振幅を使用しないのでワイヤロープ形状の経時変化の影響を受けない。
以下本発明の1実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1(A)は本発明の磁気探傷装置(プローブ部)の側面断面図であり、図1(B)は正面図である。図において、1はワイヤロープで、ストランドの数は7(ロープ芯を含む)である。2は磁気探傷装置(プローブ部)である。3は励磁器で、ワイヤロープ1を囲繞する内面がS極の磁石3aと、ワイヤロープ1を囲繞する内面がN極の磁石3bと、それらを繋ぐ中空円筒状の保持器5からなる。磁石3 aと磁石3bとはそれぞれ円筒状で、ワイヤロープ1が挿通する丸孔3cが穿設されている。励磁器3はワイヤロープ1を挿通させることを容易にするため、図1(B)に示すように2つ割になっており、ヒンジ3dで開放可能になっている。3eはヒンジ3dと反対側に取り付けられたフランジであり、ワイヤロープ1を挿通させた後、ボルト・ナットにより締結する。4は保持器5の内面に取り付けられた磁気センサであり、ホール素子やMI素子を使用する。6はワイヤロープ1のリフトオフを一定に保ちノイズを低減するためのワイヤロープガイドである。
図2はワイヤロープ1の断面図であり、(A)は健全なワイヤロープ、(B)は内部のストランドが断線した状態、(C)は外部のストランドが断線した状態を示している。図4はプローブ2からの信号の処理装置12の説明図である。本図において、7は磁気センサ4からの信号を増幅する増幅器、8はノイズを除去するフィルタ、9はアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器、10は診断部であり、たとえば、信号の値を所要のしきい値と比較し、それより大きい場合に警報を発したり、その回数をカウントしたりする機能を有するものであってもよい。11は信号の記録装置である。処理装置12は、図9に示すように、それぞれの磁気センサ4に一対一で対応するものであっても良いし、磁気センサ4全体を1個の処理装置12に連結し、磁気センサ4からの信号を加算したものを処理するようにしてもよい。
図5はワイヤロープ1と磁気センサ4の配置の関係を示す説明図であり、図5(A)はワイヤロープ1の断面図、図5(B)はワイヤロープ1と磁気センサ4との関係を示す斜視図である。Aはワイヤロープ1の移動方向示す矢印である。図6はワイヤロープ1と磁気センサ4の位置関係を示す説明図である。これらの図に示すように磁気センサ4はワイヤロープ1の移動方向の上流側と下流側に各1列設けられている。磁気センサ4は、上流側の磁気センサ4aがワイヤロープ1の谷部1bと対峙している瞬間には、下流側の磁気センサ4bはワイヤロープ1の山部1aと対峙するような位置関係になっている。たとえば、ワイヤロープ1のストランドの数が3で、磁気センサ4aと磁気センサ4bの円周方向の位置が同一である場合に、ストランドのピッチをPとすると磁気センサ4aと磁気センサ4bとの距離はP/6、または、その奇数倍であればよい。
図7はワイヤロープ1のストランド数が3で、各列の磁気センサ4の数が2である場合に、ワイヤロープ1のストランドと磁気センサ4の相対的位置関係が同一になる状態を示す図である。図に示すように、ワイヤロープ1のストランドが60°の倍数だけ移動したときに相対的位置関係が同じになる。すなわち、ワイヤロープ1のストランドが1ピッチ(360°)進む間に、相対的位置関係が同じになる回数は6回である。同じになる回数が多いほどストランドノイズが小さくなると考えられ、その回数はストランドの数と磁気センサ4の数の最小公倍数に一致する。
表1はワイヤロープ1の外部ストランドの数と検出素子(磁気センサ)数が与えられたときに、それらに対する最小公倍数を示す表である。
外部ストランドの数はJISにより3、6、8、18と決まっているので、それとの組合せにおいて、最小公倍数が大きくなる検出素子の数を選べばよい。最小公倍数は2つの数の積を最大公約数で割った数なので、2つの数の間に公約数がないような組合せ(2つの数は互いに素である)とし、物理的に配置できる最大数にすればよい。たとえば、ワイヤロープ1直径が30mmであるとし、検出素子の幅を6mm(通常3〜6mm)、ワイヤロープ1と検出素子の距離を5mm、検出素子間の距離を6mmとすると、配置可能な検出素子数は10以下となる。
以下本実施形態の作用を説明する。上流側の磁気センサ4aがワイヤロープ1の谷部1bと対峙している瞬間には、下流側の磁気センサ4bがワイヤロープ1の山部1aと対峙するような位置関係になっている。漏洩磁束はワイヤロープ1谷部で最も大きく、ワイヤロープ1の山部で最も小さいので、図6に示すように2つの磁気センサ4a、4bの出力を足し合わせるようにすると、その和はほぼ一定になる。また、ワイヤロープ1が移動している間も、一方が山部1aから谷部1bに向かう間に他方は谷部1bから山部1aに向かうので、その間についても和はほぼ一定であるといえる。また、1列あたりの磁気センサ4の数とワイヤロープ1の外部ストランドの数との間に公約数がないような関係にしたので最小公倍数が最大となり、さらにストランドノイズが低減する。
磁気センサ4からの信号を処理して、ワイヤロープ1の有効径を算出するのは次のような手順で行う。全漏洩磁束Φは次の数1によって得られる。
上記数1においてΦは全漏洩磁束、Aは磁気センサの表面積、Biは各磁気センサが検出する磁束密度、Nは磁気センサの全個数である。
ワイヤロープ1の有効断面積Sは全漏洩磁束Φに反比例する。すなわち、S=1/Φである。したがって、有効半径rは、r=√(S/π)で与えられる。
図3は本発明の磁気探傷装置で測定した全漏洩磁束Φとワイヤロープ1の有効径(2r)の変化を示すグラフである。ワイヤロープ1に断線があった場合には全漏洩磁束Φが図に示すように急激に増加する。図2(C)に示すように外部ストランドが断線している場合にはいずれか1個の磁気センサ4の出力が急激に増加するのに対し、図2(B)に示すように内部のストランドが断線している場合には、全部の磁気センサの出力が増加するが、急激な増加はない。したがって、有効径も外部のストランドの断線の場合に減少率が大きいのに対し、内部のストランドの断線の場合には減少率が小さい。図中「注意箇所」と示されているのは内部断線だと考えられる。
本発明は以上述べた実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
1 ワイヤロープ
1a ワイヤロープの山部
1b ワイヤロープの谷部
2 磁気探傷装置(プローブ部)
3 励磁器
4 磁気センサ
1a ワイヤロープの山部
1b ワイヤロープの谷部
2 磁気探傷装置(プローブ部)
3 励磁器
4 磁気センサ
Claims (2)
- 長手方向に移動するワイヤロープを励磁して磁気飽和状態にし、前記ワイヤロープの周囲に配置した磁気センサが漏洩磁束を検知することによって前記ワイヤロープの損傷を検出する磁気探傷装置であって、前記磁気センサはワイヤロープの長手方向に2列設けられており、各列の磁気センサは円周方向に等間隔に同数設けられ、かつ、各列の対応する磁気センサは一方の磁気センサがワイヤロープの山部と対峙している瞬間に、他方の磁気センサがワイヤロープの谷部と対峙するように配置されていることを特徴とする磁気探傷装置。
- 各列の磁気センサの数とワイヤロープの外部ストランド数とは互いに素である請求項1記載の磁気探傷装置。
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