JP2005154884A - 抵抗薄膜材料およびこれを用いた抵抗薄膜の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 Ni−Cr−Al−Si系合金でも実現することができなかった高温安定性を得ることと、抵抗温度係数をほぼ0とすることとを、同時に実現する抵抗薄膜を提供する。
【解決手段】
Al:1〜15質量%、希土類元素:0.01〜0.5質量%を含み、残部が実質的にCr/Ni比が質量で0.15〜1.1となるCrおよびNiからなる抵抗薄膜材料から得たターゲットを用いて、スパッタ法により、絶縁材料基板上に、Ni−Cr−Al−希土類元素合金からなる抵抗薄膜を生成させ、その後、該薄膜を形成した基板を、大気中において、温度200℃〜500℃で、1〜10時間、熱処理を行うことにより、薄膜抵抗器用抵抗薄膜を得る。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電子部品に用いられる抵抗薄膜材料、抵抗薄膜形成用のスパッタリングターゲット、およびこのスパッタリングターゲットを用いた抵抗薄膜の製造方法に関する。
チップ抵抗器、精密抵抗器、ネットワーク抵抗器、高圧抵抗器などの抵抗器、測温抵抗体、感温抵抗器などの温度センサ、および、ハイブリットICとその複合モジュール製品などの電子部品には、抵抗薄膜を使用した薄膜抵抗器が用いられている。
この薄膜抵抗器においては、多くの場合、抵抗薄膜材料としてTa金属、TaN化合物、Ni−Cr合金が用いられており、中でもNi−Cr合金が最も一般的に用いられている。
薄膜抵抗材料を含むすべての抵抗材料では、その使用にあたって、高温(155℃程度)において抵抗変化率が小さく非常に安定であること、すなわち、高温安定性と抵抗温度係数(TCR)とが重要な特性となる。一般に、NiおよびCrのみからなる2元系合金の場合は、Ni/Crの比を変え、高温安定性と抵抗温度係数(TCR)の制御を行う。しかし、高温において抵抗値が安定であることと抵抗温度係数(TCR)がほぼ0であることを同時に実現することは困難である。そのため、特許第2542504号公報、特開平6−20803号公報に記載されるように、Ni−Cr−Al−Si合金とすることにより特性の改善が検討されてきた。
しかしながら、近年、自動車などに搭載される薄膜抵抗器では、使用環境温度の上昇に伴い、抵抗特性、特に高温安定性に対する要求がさらにレベルアップしてきている。従来よりさらに使用温度が高い175℃程度において抵抗変化率が小さく、同時に抵抗温度係数(TCR)がほぼ0であることが要求されるようになってきたが、前述の薄膜抵抗材料でも、このように厳格な要求に応えることができていない。
特許第2542504号公報
特開平6−20803号公報
本発明は、これまでのNi−Cr系合金の中でも優れた高温安定性を有するとされていたNi−Cr−Al−Si系合金よりもさらに優れた高温安定性を得ることと、抵抗温度係数(TCR)をほぼ0とすることとを、同時に実現する抵抗薄膜材料を提供することを目的とする。
また、かかる抵抗薄膜材料を用いた抵抗薄膜形成用のスパッタリングターゲット、このスパッタリングターゲットを用いた抵抗薄膜およびその製造方法を提供する。
本発明の抵抗薄膜材料は、Al:1〜15質量%、希土類元素:0.01〜0.5質量%を含み、残部が実質的にCr/Ni比が質量で0.15〜1.1となるCrおよびNiからなることを特徴とする。本発明における希土類元素としては、Yおよびランタノイド(典型的にはランタン、セリウム)があげられるが、これらの中から1種または2種以上を選び、添加することができる。また、セリウム族希土類元素の混合物であるミッシュメタルを使用することもできる。
上記の抵抗薄膜材料から薄膜抵抗器用の抵抗薄膜を得るには、Ni−Cr−Al−希土類元素合金スパッタリングターゲットを使用する。その組成は、前記抵抗薄膜材料と実質的に同じである。
かかるスパッタリングターゲットを用いて、スパッタ法により、絶縁材料基板上に、Ni−Cr−Al−希土類元素合金からなる抵抗薄膜を生成させる。なお、その組成は、前記抵抗薄膜材料と実質的に同じである。その後、該抵抗薄膜が形成された基板を、大気中において、温度200℃〜500℃で、1〜10時間、熱処理を行うことにより抵抗薄膜を完成する。かかる抵抗薄膜を用いることで、高温での抵抗変化率が小さく、同時に抵抗温度係数(TCR)がほぼ0である薄膜抵抗器を得ることができる。
本発明の組成範囲において真空中で成膜されたままの抵抗薄膜は、抵抗温度係数が負に大きく、また高温における抵抗安定性が不十分である。しかしながら、本発明に係る熱処理を行うことにより、当該抵抗薄膜の抵抗温度係数を安定的に±10ppm以内とすることができる。また、薄膜表面に緻密な酸化膜が形成され、高温で安定な抵抗薄膜が得られる。かかる抵抗薄膜を用いた薄膜抵抗器は、従来のNi−Cr−Al−Si系合金でも実現することができなかった抵抗特性が得られ、その結果、厳しい高温環境下で使用される電子部品に適するという顕著な効果が得られる。
本発明の抵抗薄膜材料は、Cr/Ni比が質量で0.15〜1.1であるNi−Cr合金に、Alを1〜15質量%、希土類元素を0.01〜0.5質量%、それぞれ添加したものである。
Cr/Ni比が質量で0.15未満であると、抵抗温度係数が大きくなってしまう。一方、1.1を超えると、175℃における抵抗変化率が高くなり、高温安定性を損なってしまう。
Alは、主として抵抗温度係数(TCR)を改善するために添加する。その添加量が1質量%未満であるか、または15質量%を超えると、抵抗温度係数(TCR)は負に大きくなってしまい、高温安定性も悪化してしまう。
希土類元素は、本明細書では、Yとランタノイドを意味し、主として高温安定性を改善するために添加する。その添加量が0.01質量%未満であると、高温安定性の改善に寄与しない。一方、0.5質量%を超えても、高温安定性に格別の効果増大が期待できず、コストアップとなるので、好ましくない。
本発明に係る抵抗薄膜は、次のようにして製造する。Ni−Cr−Al−希土類元素を特定の組成範囲内で調整して作製したスパッタリングターゲットを用いて、スパッタ法により、絶縁材料基板上に抵抗薄膜を成膜し、その後、この基板を大気中において、温度200℃〜500℃で、1〜10時間、熱処理を行う。
熱処理温度が、200℃未満であると、抵抗温度係数(TCR)が安定しない。一方、500℃を超えると、抵抗温度係数(TCR)が大きくなってしまう。
また、熱処理時間が、1時間未満であると、抵抗温度係数(TCR)が安定しない。一方、10時間を超えても、抵抗安定性に対する効果の増大はみられず、コストアップとなり好ましくない。
(実施例1〜24、比較例1〜13)
まず、電気ニッケル、電解クロム、アルミニウムメタルショット、Yメタル(試薬)、Laメタル(試薬)、Ceメタル(試薬)、ミッシュメタル(試薬)、金属シリコン塊(試薬)を原料とし、表1および表2に示す組成となるようにそれぞれ秤量して、真空溶解炉により、約2kgのNi−Cr−Al−希土類合金およびNi−Cr−Al−Si合金のインゴットを作製した。
次に、抵抗薄膜を製造するために、それぞれのインゴットを、均質化処理の後、ワイヤカットで厚さ5mm、直径150mmの丸板を切り出し、上下面を研削してターゲットとした。
成膜工程は、カソードスパッタ法によって、以下のように行った。真空室にアルミナ基板を装入し、1×10-4Paに排気した後、純度99.9995%のアルゴンガスを導入して0.3Paの圧力に保ち、スパッタパワー0.3kWで、膜厚が500Åとなるように前記基板上に成膜を行った。
得られた抵抗薄膜の両側に、膜厚5000ÅのAu電極を、同様にカソードスパッタ法により成膜し、アルミナ基板上に抵抗薄膜およびAu電極が形成された薄膜抵抗器を得た。その後、大気中、300℃で、3時間の熱処理を行うことにより、それぞれの薄膜抵抗器を完成した。
なお、成膜法としては、カソードスパッタ法の他に、電子ビームや抵抗加熱式蒸着法などを用いることもできる。
このようにして作製した実施例1〜24および比較例1〜13の薄膜抵抗器について、抵抗温度係数(TCR)を評価するため、恒温槽で昇温しながら抵抗測定を行い、25℃と125℃における抵抗温度係数(TCR)を測定した。また、高温安定性は、次のように評価した。それぞれの薄膜抵抗器を、175℃の恒温槽内に、2000時間保持し、その保持の前後で抵抗値を測定し、抵抗変化率を測定した。その結果を表1および表2に示す。
実施例1〜24の薄膜抵抗器は、いずれも抵抗温度係数(TCR)ほぼ0で、±25ppm/℃の範囲にあり、良好な抵抗温度係数(TCR)を示した。また、実施例1〜24の薄膜抵抗器は、いずれも175℃における抵抗変化率が0.10%未満であり、主な従来技術のNi−Cr−Al−Si合金である比較例13と比較しても、きわめて高い高温安定性を示した。
図1に、実施例5、比較例3、5、13の抵抗薄膜から製造した薄膜抵抗器の抵抗変化率の推移を、図2に、実施例17および比較例13の抵抗薄膜から製造した薄膜抵抗器の抵抗変化率の推移をグラフで示した。
Figure 2005154884
Figure 2005154884
実施例5、比較例3、5、13の抵抗薄膜から製造した薄膜抵抗器の抵抗変化率の推移を示したグラフである。 実施例17および比較例13の抵抗薄膜から製造した薄膜抵抗器の抵抗変化率の推移を示したグラフである。

Claims (4)

  1. Al:1〜15質量%、希土類元素:0.01〜0.5質量%を含み、残部が実質的にCr/Ni比が質量で0.15〜1.1となるCrおよびNiからなる抵抗薄膜材料。
  2. Al:1〜15質量%、希土類元素:0.01〜0.5質量%を含み、残部が実質的にCr/Ni比が質量で0.15〜1.1となるCrおよびNiからなり、請求項1に記載の抵抗薄膜材料から抵抗薄膜を得るためのスパッタリングターゲット。
  3. Al:1〜15質量%、希土類元素:0.01〜0.5質量%を含み、残部が実質的にCr/Ni比が質量で0.15〜1.1となるCrおよびNiからなり、かつ、大気中において、温度200℃〜500℃で、1〜10時間、熱処理されたことを特徴とする抵抗薄膜。
  4. 請求項2に記載のスパッタリングターゲットを用いて、スパッタ法により、絶縁材料基板上に、Ni−Cr−Al−希土類元素合金からなる薄膜を生成させ、その後、該抵抗薄膜が形成された基板を、大気中において、温度200℃〜500℃で、1〜10時間、熱処理を行うことを特徴とする抵抗薄膜の製造方法。
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