JP4742758B2 - 薄膜抵抗体及びその製造方法 - Google Patents

薄膜抵抗体及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、薄膜抵抗体及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、高比抵抗で低抵抗温度係数を有し、かつ使用時の加熱による抵抗値の変化率が小さい高耐熱性の薄膜抵抗体とその製造方法に関する。
従来より、薄膜抵抗体は、薄膜チップ抵抗器、混成集積回路等に用いられている。このような薄膜抵抗体には、高い比抵抗と小さな抵抗温度係数が求められ、高比抵抗材料が用いられている。例えば、薄膜チップ抵抗器は以下の方法により得られる。まず、100〜150μΩ・cmの比抵抗を有するNi−Cr系(ニクロム)合金、窒化タンタル、最大300μΩ・cmの比抵抗が得られるクロム(Cr)−ケイ素(Si)系合金等の抵抗率が高い高比抵抗材料を、セラミック基板上にスパッタリング、真空蒸着等により成膜して合金化した皮膜を形成する。これをフォトリソグラフィー等により所要の形状に加工して薄膜チップ抵抗器として利用される。
ところで、従来の薄膜チップ抵抗器においては、特に300μΩ・cm以下の比抵抗を有する材料を用いて得られた抵抗器は、抵抗器精度が満足されるとともに、良好な熱的安定性を示す低い抵抗温度係数等の特性が得られ、高精度チップ抵抗器として広く各種電子機器に用いられている。しかしながら、これらの材料を用いた薄膜抵抗体は抵抗値が低いので、高比抵抗領域では抵抗温度係数の小さい特性を有する抵抗体を作製することが難しいという問題があった。すなわち、薄膜抵抗材料としてニクロム合金又は窒化タンタルを用いて、絶対値が50ppm/℃以下の抵抗温度係数を有し、かつ150μΩ・cm以上の比抵抗を有する抵抗体を形成することは困難であった。また、Cr−Si系合金を用いた場合にも、例えば、比抵抗が300μΩ・cm程度の膜を作製することができるが、このとき絶対値が50ppm/℃以下の抵抗温度係数がものを安定して得ることは困難であった。
これらの解決策として、熱的安定性の向上のためCr−Si系合金にチタン(Ti)を添加含有させたもの(例えば、特許文献1参照。)、Cr−Si系合金にジルコニウム(Zr)を添加含有させたもの(例えば、特許文献2参照。)、Cr−Si系合金にモリブデン(Mo)を添加含有させたもの(例えば、特許文献3参照。)、及びケイ素品位が47〜57重量%になるように、Cr−Si系合金にアルミニウム(Al)を添加含有させたもの(例えば、特許文献4参照。)が提案されている。このように、高比抵抗材料としてクロムとケイ素との合金を用い、さらに第3元素を添加することによって、比較的高比抵抗であって熱的安定性について改善された薄膜抵抗体が得られているが、使用時の耐熱性に関しては近年の使用環境の高温化からすると、薄膜抵抗体の熱的安定性はまだ不十分であり、さらに高い耐熱性が求められている。すなわち、後工程で熱が加わった場合でも初期抵抗値からの変化率が低い抵抗体が望まれる。また、さらに高い、例えば300μΩ・cm以上の比抵抗を有する高比抵抗領域で好適に用いられる材料が望まれている。
特開平2−71501号公報(第1頁、第2頁) 特開昭57−4102号公報(第1頁) 特開昭57−7102号公報(第1頁) 特許第3000763号(第1頁、第2頁)
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、高比抵抗で低抵抗温度係数を有し、かつ使用時の加熱による抵抗値の変化率が小さい高耐熱性の薄膜抵抗体及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために、クロム(Cr)−アルミニウム(Al)−ケイ素(Si)系三元合金からなる薄膜抵抗体について、鋭意研究を重ねた結果、Cr−Al−Si系三元合金において特定の組成割合を選ぶことによって得られた薄膜を特定の条件で熱処理したところ、高い比抵抗を保持したまま低い抵抗温度係数(TCR)が得られ、使用時の加熱による抵抗値の変化率が小さい高耐熱性の薄膜抵抗体が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、電気的絶縁性を有する素材からなる基板、又は電気的絶縁性を有する素材を表面に備えた基板の表面上に形成された、クロム(Cr)−アルミニウム(Al)−ケイ素(Si)系三元合金からなる薄膜抵抗体であって、
前記クロム(Cr)−アルミニウム(Al)−ケイ素(Si)系三元合金中の各元素の組成割合は、Cr−Al−Si三元系組成図上において、下記に示す組成点(A)、(B)及び(C)を頂点とする三角形の内部に相当する数値範囲を有し、かつ、薄膜抵抗体の比抵抗は、500μΩ・cm以上、抵抗温度係数の絶対値は、50ppm/℃以下、さらに155℃で1000時間保持後の抵抗変化率は、0.05%以下であることを特徴とする薄膜抵抗体が提供される。
組成点(A):Cr、Al及びSiの組成は各々55、40、及び5重量%
組成点(B):Cr、Al及びSiの組成は各々50、10、及び40重量%
組成点(C):Cr、Al及びSiの組成は各々75、5、及び20重量%
また、本発明の第2の発明によれば、電気的絶縁性を有する素材からなる基板、又は電気的絶縁性を有する素材を表面に備えた基板の表面上に、ターゲットを用いてアルゴンガス雰囲気下にスパッタリングすることにより、各元素の組成割合が、Cr−Al−Si三元系組成図上において、下記に示す組成点(A)、(B)及び(C)を頂点とする三角形の内部に相当する数値範囲を有する三元合金薄膜を形成し、その後、酸素を含む雰囲気下、400〜530℃の温度で1分〜10時間熱処理を行うことを特徴とする第1の発明の薄膜抵抗体の製造方法が提供される。
組成点(A):Cr、Al及びSiの組成は各々55、40、及び5重量%
組成点(B):Cr、Al及びSiの組成は各々50、10、及び40重量%
組成点(C):Cr、Al及びSiの組成は各々75、5、及び20重量%
また、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、前記ターゲットは、クロム、アルミニウム及びケイ素からなる合金であって、前記三元合金薄膜に相当する組成割合を有することを特徴とする薄膜抵抗体の製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第2の発明において、前記ターゲットは、クロム、アルミニウム及びケイ素からなる混合物であって、前記三元合金薄膜に相当する組成割合を有することを特徴とする薄膜抵抗体の製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第2の発明において、クロム、アルミニウム又はケイ素の各金属からなるターゲットを前記三元合金薄膜に相当する組成割合になるように複数個組合せて用いることを特徴とする薄膜抵抗体の製造方法が提供される
また、本発明の第6の発明によれば、第2の発明において、前記ターゲットは、クロム−アルミニウム合金とケイ素を前記三元合金薄膜に相当する組成割合になるように複数の区分に分けた複合物であることを特徴とする薄膜抵抗体の製造方法が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第2の発明において、前記ターゲットは、クロム−アルミニウム合金ターゲットとケイ素ターゲットであり、これらを用いて同時スパッタリングすることを特徴とする薄膜抵抗体の製造方法が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第2の発明において、前記熱処理に先だって、三元合金薄膜の表面に電極を形成することを特徴とする薄膜抵抗体の製造方法が提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第8の発明において、前記電極は、パラジウム、白金、ロジウム、又はルテニウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする薄膜抵抗体の製造方法が提供される。
本発明の薄膜抵抗体は、高比抵抗で低抵抗温度係数を有し、かつ使用時の加熱による抵抗値の変化率が小さい高耐熱性の薄膜抵抗体であり、薄膜チップ抵抗器、混成集積回路等に用いられる高比抵抗抵抗体であるので、その工業的価値は極めて大きい。また、本発明の製造方法は、本発明の薄膜抵抗体を安定的にかつ効率的に製造することができるのでより有利である。
本発明の薄膜抵抗体は、電気的絶縁性を有する素材からなる基板、又は電気的絶縁性を有する素材を表面に備えた基板の表面上に形成された、クロム(Cr)−アルミニウム(Al)−ケイ素(Si)系三元合金からなる薄膜抵抗体であって、前記クロム(Cr)−アルミニウム(Al)−ケイ素(Si)系三元合金中の各元素の組成割合は、Cr−Al−Si三元系組成図上において、下記に示す組成点(A)、(B)及び(C)を頂点とする三角形の内部に相当する数値範囲を有し、かつ、薄膜抵抗体の比抵抗は、500μΩ・cm以上、抵抗温度係数の絶対値は、50ppm/℃以下、さらに155℃で1000時間保持後の抵抗変化率は、0.05%以下であることを特徴とする。
組成点(A):Cr、Al及びSiの組成は各々55、40、及び5重量%
組成点(B):Cr、Al及びSiの組成は各々50、10、及び40重量%
組成点(C):Cr、Al及びSiの組成は各々75、5、及び20重量%
図1は、本発明のクロム(Cr)−アルミニウム(Al)−ケイ素(Si)系三元合金からなる薄膜抵抗体の組成範囲を表すCr−Al−Si三元系組成図である。図1において、本発明の薄膜抵抗体の組成範囲は、各辺を重量%で表示しているCr−Al−Si三元系組成図上の組成点(A)、(B)及び(C)を頂点として形作られる三角形の内部に相当する数値範囲である。
すなわち、本発明の薄膜抵抗体の製造方法は、電気的絶縁性を有する素材からなる基板、又は電気的絶縁性を有する素材を表面に備えた基板の表面上に、ターゲットを用いてアルゴンガス雰囲気下にスパッタリングすることにより、各元素の組成割合が、Cr−Al−Si三元系組成図上において、下記に示す組成点(A)、(B)及び(C)を頂点とする三角形の内部に相当する数値範囲を有する三元合金薄膜を形成し、その後、酸素を含む雰囲気下、400〜530℃の温度で1分〜10時間熱処理を行うことを特徴とする。
組成点(A):Cr、Al及びSiの組成は各々55、40、及び5重量%
組成点(B):Cr、Al及びSiの組成は各々50、10、及び40重量%
組成点(C):Cr、Al及びSiの組成は各々75、5、及び20重量%
本発明の製造方法において、形成される三元合金薄膜の組成が所定の数値範囲を有することと、その後三元合金薄膜を所定の雰囲気及び温度で所定の時間熱処理することが重要である。これによって、比抵抗が500μΩ・cm以上であり、抵抗温度係数の絶対値が50ppm/℃以下であり、かつ155℃で1000時間保持後の抵抗変化率が0.05%以下である薄膜抵抗体が得られる。
以下に、組成割合が組成点(A)、(B)及び(C)を頂点とする三角形の内部に相当する数値範囲を有するクロム−アルミニウム−ケイ素系三元合金からなる薄膜抵抗体の抵抗特性に関して、詳しく説明する。従来用いられているCr−Si系合金は、比較的高抵抗な金属間化合物を含むものであり、いくつかの化学量論組成の相構造のものが知られている。この中で、比抵抗が高いCrSiに対応する組成のものは、熱的な安定性に乏しいという課題があった。その理由のひとつとしては、使用時の加熱によって合金薄膜中のアモルファス相が結晶化し、そのため抵抗値が大幅に変化することがあげられている。一般に、結晶相はアモルファス相に比べて抵抗値がずっと低く、また結晶相はアモルファス相に比べて大きな正の抵抗温度係数をもつ。そこで、熱処理に伴う相変化により、急激に抵抗特性が変化してしまうので実用材料としては大きな問題がある。したがって、モル比でSi/Crを2に調整して安定な結晶性の金属間化合物を得ようとする試みがなされているが、得られる薄膜抵抗体は結晶質であるので抵抗率は比較的低いものに留まる。
これに対して、本発明の上記組成を有するクロム−アルミニウム−ケイ素系三元合金からなる薄膜抵抗体は、比抵抗が500μΩ・cm以上であり、抵抗温度係数の絶対値が50ppm/℃以下であり、かつ155℃で1000時間保持後の抵抗変化率が0.05%以下であり、高比抵抗領域において絶対値が低い抵抗温度係数と低い抵抗変化率という好適な抵抗特性を有するものである。
上記薄膜抵抗体の詳細な相構造及びそれらの相構造が形成される機構は、まだ不明な部分が多いが、熱処理後の薄膜抵抗体のX線回折結果は、わずかにCrSiのブロードなピークが観察されたのみで実質的にアモルファス相と見られ、以下のよう推論される。すなわち、その組成割合が、Cr−Al−Si三元系組成図上において、組成点(A)、(B)及び(C)を頂点とする三角形の内部に相当する数値範囲を有する三元合金薄膜においては、その組成が金属間化合物の化学量論組成からはずれており、かつ比較的多くのアルミニウムを含有しているため、上記熱処理に際して、一部結晶化が進行しようとするが結局は高抵抗性を示すアモルファス構造が安定化され、適切な熱処理により、高比抵抗で低抵抗温度係数を有し、かつ使用時の加熱による抵抗変化率が小さい高耐熱性の薄膜抵抗体が得られる。
本発明の製造方法に用いる基板としては、電気的絶縁性を有する素材からなる基板、又は電気的絶縁性を有する素材を表面に備えた基板が選ばれるが、その中で、アルミナ、石英、表面酸化したシリコン基板等が挙げられるが、他に絶縁表面を持つ各種の基板が用途及び目的によって選択されることができる。
上記製造方法に用いる成膜方法としては、高抵抗を示すアモルファス相を形成することができるスパッタリングが好適であり、特に高温成膜ではアモルファス相が形成されないので、アルゴンガス雰囲気下にターゲットを用いてスパッタリングする方法が好ましい。
なお、スパッタ法は一般に薄膜抵抗体の製造に用いられている手法であり、マグネトロンスパッタリングなど通常の方法及び装置を用いることができる。
上記製造方法に用いるターゲットとしては、特に限定されるものではなく、所定の組成の合金又は混合物からなるターゲット、複数の金属ターゲットの組合せ、区分に分けられた複合ターゲット等、使用する装置の特徴にあわせて選択することができる。例えば、
(イ)クロム、アルミニウム及びケイ素からなる合金のターゲットであって、上記三元合金薄膜に相当する組成割合を有するターゲットを単独又は複数個用いる。ここで、合金ターゲットは組成均一性がよく得られる薄膜抵抗体の特性が安定しているが、ターゲットの抵抗が高いのでRFスパッタ法を用いるのが望ましい。
(ロ)クロム、アルミニウム及びケイ素からなる混合物のターゲットであって、上記三元合金薄膜に相当する組成割合を有するターゲットを単独又は複数個用いる。ここで、混合ターゲットはターゲット抵抗が低いので、直流スパッタも容易であるが、製造方法によっては特性のばらつきを生じやすい。
(ハ)クロム、アルミニウム又はケイ素の各金属からなるターゲットを上記三元合金薄膜に相当する組成割合になるように複数個組合せて用いる。このようなターゲットは、組成の変更が簡便に行える。
(ニ)クロム−アルミニウム合金ターゲットとケイ素ターゲットを上記三元合金薄膜に相当する組成割合になるように複数の区分に分けた複合物ターゲットを用いる。
(ホ)クロム−アルミニウム合金ターゲットとケイ素ターゲットを用いて、上記三元合金薄膜に相当する組成割合になるように同時スパッタリングを行なう。
上記製造方法における熱処理は、形成された三元合金薄膜に直接行なうか,或は三元合金薄膜の表面に電極を形成した後かのいずれの方法で行なえる。すなわち、前者の場合には、三元合金薄膜を熱処理してその抵抗特性を調整した薄膜抵抗体を用いてその表面上に該熱処理よりも低い温度で電極を形成することが行なわれる。また、後者の場合には、熱処理に先だって、三元合金薄膜の表面に電極を形成する。いずれの場合にも、同様の熱処理条件を用いて行なうことができるが、三元合金薄膜の表面上に電極を形成した後に熱処理を行うのが工程上簡便である。
上記製造方法に用いる熱処理の温度としては、400〜530℃、好ましくは450〜500℃である。これによって、上記三元合金薄膜の抵抗特性を調整する。成膜後の三元合金薄膜は負の抵抗温度係数を示すが、熱処理により、絶対値が50ppm/℃以下、より好ましくは25ppm/℃以下の抵抗温度係数を得ることができる。すなわち、三元合金薄膜の組成によって、最適な熱処理温度は異なるが、温度が400℃未満では、抵抗温度係数が大きな負となる。一方、温度が530℃を超えると、結晶化が進み抵抗温度係数が大きな正となるとともに、抵抗値が大きく低下する。ここで、精密な温度制御が可能な電気炉を用いて所定の条件に制御することにより、50ppm/℃以下といった高精度の薄膜抵抗体を得ることができる。
上記熱処理の時間は、熱処理炉の種類と三元合金薄膜の大きさによるが、1〜10時間とする。すなわち、熱処理の時間が1未満では、安定した特性を得るのが困難である。一方、熱処理時間を長くすると耐熱性が向上するが、10時間を越えて行っても大きな改善は見られず、効率的でない。
上記熱処理に用いる雰囲気としては、真空下又はアルゴン、窒素とすることもできるが本発明では、大気のような酸素を含むガス雰囲気で行う。ここで、三元合金薄膜の表面上に電極を形成した後に熱処理を行う場合には、熱処理雰囲気の選択は、主に電極材質によって選択すればよいが、酸素を含有する雰囲気で熱処理することにより薄膜抵抗体表面に安定な保護酸化膜が形成することができる。
以下に、熱処理条件と抵抗特性の関係を具体例で詳細に説明する。
アルバック製のマグネトロンスパッタリング装置に市販の純度96%のアルミナ基板を取り付け、系内を2.0×10−3Pa以下の真空度にした後、アルゴンガス(純度:99.999%)を2.5sccmの流量で導入した。本発明の薄膜抵抗体の組成範囲である合金ターゲット(55重量%Cr−21重量%Al−24重量%Si)を用いて、出力90Wで20分成膜し、130nmの厚みの膜を得た。ただし、基板上に薄膜をスパッタリングで成膜する前に、シャッターを閉じた状態で10分以上プレスパッタした。所定の時間スパッタしたらシャッターを閉じ、30分以上冷却してチャンバー内から成膜した基板を取り出した。
次に、薄膜抵抗体の熱処理を行なった。得られた薄膜抵抗体試料を管状炉にいれ、大気中、200〜550℃の温度範囲で各温度で3時間の熱処理を行った。昇温速度は各熱処理温度の10℃手前まで10℃/分として、その温度から、熱処理する温度まで1℃/分とした。その後、炉から取り出した試料について、比抵抗と抵抗温度係数(TCR)を求めた。結果を表1に示す。
Figure 0004742758
表1より、熱処理の温度として400〜500℃とすることにより、±50ppm/℃のTCRが得られ、450℃〜500℃とすることにより、1400μΩcmの比抵抗および±10ppm/℃のTCRが得られ、高精度高抵抗の薄膜抵抗材料であることが分かる。なお、X線回折では、わずかにCrSiのブロードなピークが観察されたのみで、実質的にアモルファス相と見られた。一方、550℃の熱処理では急激にTCRが増大し、精密抵抗体としては不適当である。
さらに、炉から取り出した試料について、155℃での耐熱試験を行った。なお、155℃に保持された恒温槽中に1000時間まで保持し、途中取り出して室温での抵抗を測定し抵抗変化率を調べた。結果を図2に示す。図2は、155℃での保持時間と抵抗変化率の関係を表す。図2より、熱処理温度が450℃と500℃の試料は1000時間後の抵抗変化率が0.01〜0.02%と小さく、耐熱性に優れていることが分かる。一方、熱処理温度が300℃の試料は、1000時間後の抵抗変化率が0.16%と大きくなっており、耐熱性に劣ることが分かる。
上記製造方法で用いる電極としては、特に限定されるものではなく、一般に金、Ni−Cu合金等が用いられるが、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、又はルテニウム(Ru)から選ばれる少なくとも1種が好ましい。例えば、特に金電極はNi−Cu合金電極に比べ安定であり、大気中熱処理でも酸化することがない優れた特性を有する。しかしながら、金電極は上記薄膜抵抗体中のケイ素と反応しやすいので、熱処理温度が高い場合には電極と薄膜抵抗体が合金化して抵抗特性が変化してしまう恐れがある。これに対して、パラジウム、白金、ロジウム、及びルテニウムは上記薄膜抵抗体と反応しにくく、かつ大気中の熱処理でも安定した電極特性を示し好適である。これらのうちの1種を用いてもよいし、必要に応じて2種以上を含有したり、さらに他元素を含む物も用いることができる。
上記電極の作製方法としては、特に限定されるものではなく、薄膜抵抗体を形成した後にスパッタリングにより行うことができるが、これらの材料を含むペーストなどを印刷し、乾燥・焼成する方法でも作製することができる。
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた金属の分析、抵抗特性(比抵抗、抵抗温度係数、抵抗変化率)の評価方法は、以下の通りである。
(1)金属の分析:ICP発光分析法で行った。
(2)比抵抗の測定:試料の膜厚、長さ、線幅、及び直流四端子法により抵抗R(Ω)を測定し、比抵抗を求めた。
(3)抵抗温度係数(TCR)の測定:試料を恒温槽に入れ、25℃での抵抗値R25(Ω)と125℃での抵抗値R125(Ω)を測定し、抵抗温度係数を求めた。
(4)抵抗変化率の測定:155℃に制御された恒温槽中に1000時間保持した後、取り出して室温での抵抗値を測定し抵抗変化率を求めた。
また、実施例及び比較例で用いたターゲットは下記の方法で作製したものを用いた。
[ターゲットの作製]
純度99.99%以上の金属原料を用い、プラズマ溶解により作製したインゴットからワイヤカットで直径75mm、厚さ5mmの円板を切り出し、表面を研削してターゲットとした。
また、実施例及び比較例で用いた成膜方法は、以下の通りである。
[成膜方法]
市販の純度96%のアルミナ基板を用いた。アルバック製のマグネトロンスパッタリング装置に基板を取り付け、系内を2.0×10−3Pa以下の真空度にした後、アルゴンガス(純度:99.999%)を2.5mL/min(標準状態)の流量で導入して、それぞれのターゲットに適した電源を用いて、基板上にスパッタリングにより薄膜を成膜した。
また、実施例及び比較例で用いた熱処理方法は、以下の通りである。
[熱処理方法]
成膜した基板をを管状炉にいれ、大気中、200〜600℃の温度範囲で各温度で3時間の熱処理を行った。昇温速度は各熱処理温度の10℃手前まで10℃/分として、その温度から、熱処理する温度まで1℃/分とした。
(実施例1)
上記方法で作製した三元合金ターゲット(55重量%Cr−21重量%Al−24重量%Si)を用いて上記成膜方法により成膜した基板を、上記方法に従って50℃刻みに熱処理し、最もTCRの絶対値が小さくなる温度を最適熱処理温度とし、そのときの膜組成と抵抗特性を評価した。結果を各々表2、表3に示す。
(実施例2〜6、比較例1〜10)
上記方法で作製したクロム、アルミニウム及びケイ素の各ターゲットを用いて上記成膜方法により3元同時スパッタリングを行ない、種々の組成の薄膜抵抗体を作製した。得られた成膜した基板を、上記方法に従って50℃刻みに熱処理し、最もTCRの絶対値が小さくなる温度を最適熱処理温度とし、そのときの膜組成と抵抗特性を評価した。結果を各々表2、表3に示す。なお、実施例2〜6では、表2の膜組成に示すように、その組成割合が、Cr−Al−Si三元系組成図上において、組成点(A)、(B)及び(C)を頂点とする三角形の内部に相当する数値範囲を有する三元合金薄膜が形成されている。一方、表2の膜組成に示すように、比較例1、4、7では、その組成割合が上記三角形の各辺の近傍外側に相当する数値であり、また、比較例2、3では、その組成割合が組成点(A)の近傍外側に相当する数値であり、また、比較例5、6では、その組成割合が組成点(C)の近傍外側に相当する数値であり、また、比較例8、9では、その組成割合が組成点(B)の近傍外側に相当する数値である三元合金薄膜が形成されている。また、比較例10では、ケイ素品位が47〜57重量%に相当する数値である三元合金薄膜が形成されている。
(実施例7)
上記方法で作製したクロム−アルミニウム合金ターゲット(80重量%Cr−20重量%Al)とケイ素ターゲットを用いて上記成膜方法により同時スパッタリングを行ない、得られた成膜した基板を、上記方法に従って50℃刻みに熱処理し、最もTCRの絶対値が小さくなる温度を最適熱処理温度とし、そのときの膜組成と抵抗特性を評価した。結果を各々表2、表3に示す。
Figure 0004742758
Figure 0004742758
表2、3より、実施例1〜7では、薄膜抵抗体の組成と熱処理温度で、本発明の方法に従って行われたので、比抵抗が500μΩ・cm以上、TCRの絶対値が50ppm/℃以下で、155℃1000hr保持後の抵抗変化率が0.05%以下である薄膜抵抗体が得られることが分かる。これに対して、比較例1〜10では、薄膜抵抗体の組成がこれらの条件に合わないので、抵抗変化率及びTCRで満足すべき結果が得られないことが分かる。
以上より明らかなように、本発明の薄膜抵抗体及びその製造方法は、高比抵抗で低抵抗温度係数を有し、かつ使用時の加熱による抵抗値の変化率が小さい高耐熱性の薄膜抵抗体とその製造方法であり、薄膜チップ抵抗器、混成集積回路等において、特に高抵抗領域の薄膜抵抗体として好適である。
本発明のクロム(Cr)−アルミニウム(Al)−ケイ素(Si)系三元合金からなる薄膜抵抗体の組成範囲を表すCr−Al−Si三元系組成図である。 155℃での保持時間と抵抗変化率の関係を表す図である。

Claims (9)

  1. 電気的絶縁性を有する素材からなる基板、又は電気的絶縁性を有する素材を表面に備えた基板の表面上に形成された、クロム(Cr)−アルミニウム(Al)−ケイ素(Si)系三元合金からなる薄膜抵抗体であって、
    前記クロム(Cr)−アルミニウム(Al)−ケイ素(Si)系三元合金中の各元素の組成割合は、Cr−Al−Si三元系組成図上において、下記に示す組成点(A)、(B)及び(C)を頂点とする三角形の内部に相当する数値範囲を有し、かつ、薄膜抵抗体の比抵抗は、500μΩ・cm以上、抵抗温度係数の絶対値は、50ppm/℃以下、さらに155℃で1000時間保持後の抵抗変化率は、0.05%以下であることを特徴とする薄膜抵抗体。
    組成点(A):Cr、Al及びSiの組成は各々55、40、及び5重量%
    組成点(B):Cr、Al及びSiの組成は各々50、10、及び40重量%
    組成点(C):Cr、Al及びSiの組成は各々75、5、及び20重量%
  2. 電気的絶縁性を有する素材からなる基板、又は電気的絶縁性を有する素材を表面に備えた基板の表面上に、ターゲットを用いてアルゴンガス雰囲気下にスパッタリングすることにより、各元素の組成割合が、Cr−Al−Si三元系組成図上において、下記に示す組成点(A)、(B)及び(C)を頂点とする三角形の内部に相当する数値範囲を有する三元合金薄膜を形成し、その後、酸素を含む雰囲気下、400〜530℃の温度で1分〜10時間熱処理を行なうことを特徴とする請求項1に記載の薄膜抵抗体の製造方法。
    組成点(A):Cr、Al及びSiの組成は各々55、40、及び5重量%
    組成点(B):Cr、Al及びSiの組成は各々50、10、及び40重量%
    組成点(C):Cr、Al及びSiの組成は各々75、5、及び20重量%
  3. 前記ターゲットは、クロム、アルミニウム及びケイ素からなる合金であって、前記三元合金薄膜に相当する組成割合を有することを特徴とする請求項2に記載の薄膜抵抗体の製造方法。
  4. 前記ターゲットは、クロム、アルミニウム及びケイ素からなる混合物であって、前記三元合金薄膜に相当する組成割合を有することを特徴とする請求項2に記載の薄膜抵抗体の製造方法。
  5. クロム、アルミニウム又はケイ素の各金属からなるターゲットを前記三元合金薄膜に相当する組成割合になるように複数個組合せて用いることを特徴とする請求項2記載の薄膜抵抗体の製造方法。
  6. 前記ターゲットは、クロム−アルミニウム合金とケイ素を前記三元合金薄膜に相当する組成割合になるように複数の区分に分けた複合物であることを特徴とする請求項2記載の薄膜抵抗体の製造方法。
  7. 前記ターゲットは、クロム−アルミニウム合金ターゲットとケイ素ターゲットであり、これらを用いて同時スパッタリングすることを特徴とする請求項2記載の薄膜抵抗体の製造方法。
  8. 前記熱処理に先だって、三元合金薄膜の表面に電極を形成することを特徴とする請求項2に記載の薄膜抵抗体の製造方法。
  9. 前記電極は、パラジウム、白金、ロジウム、又はルテニウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項8に記載の薄膜抵抗体の製造方法。
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