JP2005154788A - 薄膜形成方法及び薄膜形成体 - Google Patents

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浩了 有田
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一良 工藤
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Abstract

【課題】 連続長期間の膜形成を行っも、均一性が高く、優れた撥水性、撥油性、インクの拭き取り性を有する防汚膜を安定形成できる薄膜形成方法を提供する。
【解決手段】 大気圧または大気圧近傍の圧力下で、互いに対向する第1電極及び第2電極から構成される放電空間に、薄膜形成ガスを導入し、電界を印加して該薄膜形成ガスを励起し、該励起した薄膜形成ガスに基材を晒すことにより、該基材上に薄膜を形成する薄膜形成方法において、該薄膜形成ガスは、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を含有し、該第2電極は、励起した薄膜形成ガスに直接晒されることを防止するクリーニングフィルムを有し、該クリーニングフィルムは、該第2電極の放電面に密着されながら搬送され、かつ、該基材は、該励起した薄膜形成ガスに晒される際に、該第1電極の放電面に密着されながら搬送されることを特徴とする薄膜形成方法。
【選択図】 図2

Description

本発明は、新規の防汚膜の薄膜形成方法と薄膜形成体に関し、詳しくは、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を含有する薄膜形成ガスを放電空間内で励起して基材を晒すことにより、高機能の防汚膜を形成する薄膜形成方法とそれにより得られる薄膜形成体に関する。
現在、人の手指が直接触れるタッチパネル、CRTや液晶ディスプレイなどの画像表示装置表面、めがね表面、レンズ表面、あるいは外気に晒されて塵埃等が付着しやすい太陽電池や窓ガラスなどの透明材料の表面には、その表面を保護し、視認性を損なう汚れや塵等の付着を防止したり、あるいは付着した汚れや塵等を簡単に取り去ることのできる防汚膜を、その表面に設けることが知られている。
従来、防汚膜の形成方法としては、防汚膜形成用の液体材料を、物品の表面に塗布する方法が広く知られており、また実用化されている(特許文献1参照。)。一例としては、液晶ディスプレイなどで用いる反射防止膜表面を、末端シラノール有機ポリシロキサンを、塗布方式により被覆して、表面上の防汚性を向上させる方法がある(特許文献2参照。)。
しかしながら、塗布方式による防汚膜の形成方法は、塗布液を構成する溶剤に対する化学的な耐性を必要とするため、用いることのできる基材の材質が制限を受けること、塗布後に乾燥工程を必要とするため製造工程にコスト上の負荷がかかること、対象とする基材表面が凹凸を有している場合には、塗布後の乾燥工程でレベリングを起こしたり、材質により塗布液の濡れ性が不適切となり、塗布ムラやはじき故障を引き起こし、均一の膜厚を有する防汚膜を形成することが難しいとの課題を抱えている。
上記の課題を踏まえて、大気圧プラズマCVDを用いて簡易に防汚膜を形成する方法が提案されている(特許文献3参照。)。この方法によれば、乾燥工程を必要とせず、凹凸の表面形状を有する基材であっても、均一な厚さからなる防汚膜を安定して形成することが可能となる。
特開2000−144097号公報 (特許請求の範囲) 特開平2−36921号公報 (特許請求の範囲) 特開2003−98303号公報 (特許請求の範囲)
しかしながら、上記方法では、連続して長期間の薄膜形成を行った場合、徐々に電極表面に汚れが付着し、その結果、不安定な放電状態となり、不均一な励起ガスの流れが生じる。特に、高い均一性が求められる防汚膜の形成では、比較的低出力の放電となるため、電極表面に付着した汚れにより部分的に放電が起こらなくなり、得られる防汚膜の性能低下や薄膜の不均一化が発生するという課題を抱えている。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、連続して長期間の薄膜形成を行っても、均一性が高く、優れた撥水性、撥油性、皮脂やインクの拭き取り性及びその繰り返し耐久性を有する防汚膜を安定して形成できる薄膜形成方法及びそれにより得られる薄膜形成体を提供することである。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
(請求項1)
大気圧または大気圧近傍の圧力下で、互いに対向する第1電極及び第2電極から構成される放電空間に、薄膜形成ガスを導入し、電界を印加して該薄膜形成ガスを励起し、該励起した薄膜形成ガスに基材を晒すことにより、該基材上に薄膜を形成する薄膜形成方法において、
該薄膜形成ガスは、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を含有し、
該第2電極は、励起した薄膜形成ガスに直接晒されることを防止するクリーニングフィルムを有し、該クリーニングフィルムは、該第2電極の放電面に密着されながら搬送され、かつ、該基材は、該励起した薄膜形成ガスに晒される際に、該第1電極の放電面に密着されながら搬送されることを特徴とする薄膜形成方法。
(請求項2)
前記フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
Figure 2005154788
〔式中、MはSi、Ti、Ge、ZrまたはSnを表し、R1〜R6は各々水素原子または一価の基を表し、R1〜R6で表される基の少なくとも1つは、フッ素原子を有する基である。jは0〜150の整数を表す。〕
(請求項3)
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項2に記載の薄膜形成方法。
一般式(2)
[Rf−X−(CH2kq−M(R10r(OR11t
〔式中、MはSi、Ti、Ge、ZrまたはSnを表し、Rfは水素原子の少なくとも1つがフッ素原子により置換されたアルキル基またはアルケニル基を表し、Xは単なる結合手または2価の基を表す。R10はアルキル基、アルケニル基を、またR11はアルキル基、アルケニル基、アリール基を表す。また、kは0〜50の整数を表し、q+r+t=4であり、q≧1、またt≧1である。また、r≧2の時2つのR10は連結して環を形成してもよい。〕
(請求項4)
前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項3に記載の薄膜形成方法。
一般式(3)
Rf−X−(CH2k−M(OR123
〔式中、MはSi、Ti、Ge、ZrまたはSnを表し、Rfは水素原子の少なくとも1つがフッ素原子により置換されたアルキル基またはアルケニル基を表し、Xは単なる結合手または2価の基を表す。R12は、アルキル基、アルケニル基、アリール基を表し、kは0〜50の整数を表す。〕
(請求項5)
前記フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物が、下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
Figure 2005154788
〔式中、MはSi、Ti、Ge、ZrまたはSnを表し、R1〜R6は各々水素原子または一価の基を表し、R1〜R6で表される基の少なくとも1つは、フッ素原子を有する基である。R7は、水素原子または置換もしくは非置換のアルキル基を表す。jは0〜150の整数を表す。〕
(請求項6)
前記フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物が、下記一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
一般式(5)
[Rf−X−(CH2k−Y]m−M(R8n(OR9p
〔式中、MはIn、Al、Sb、YまたはLaを表し、Rfは水素原子の少なくとも1つがフッ素原子により置換されたアルキル基またはアルケニル基を表す。Xは単なる結合手まはた2価の基を表し、Yは単なる結合手または酸素原子を表す。R8は置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基またはアリール基を表し、R9は置換もしくは非置換のアルキル基またはアルケニル基を表す。kは0〜50の整数を表し、m+n+p=3であり、mは少なくとも1であり、n、pはそれぞれ0〜2の整数を表す。〕
(請求項7)
前記フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物が、下記一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
一般式(6)
f1(OC36m1−O−(CF2n1−(CH2p1−Z−(CH2q1−Si−(R23
〔式中、Rf1は炭素数1〜16の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基、R2は加水分解基、Zは−OCONH−又は−O−を表し、m1は1〜50の整数、n1は0〜3の整数、p1は0〜3の整数、q1は1〜6の整数を表し、6≧n1+p1>0である。〕
(請求項8)
前記フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物が、下記一般式(7)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
Figure 2005154788
〔式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基、Xはヨウ素原子または水素原子、Yは水素原子または低級アルキル基、Zはフッ素原子またはトリフルオロメチル基、R21は加水分解可能な基、R22は水素原子または不活性な一価の有機基を表し、a、b、c、dはそれぞれ0〜200の整数、eは0または1、mおよびnは0〜2の整数、pは1〜10の整数を表す。〕
(請求項9)
前記放電空間が、前記対向する第1電極と第2電極間に高周波電界を印加することにより形成されたものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
(請求項10)
前記薄膜形成ガスが、希ガス及び/または窒素を50体積%以上含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
(請求項11)
前記薄膜形成ガスが、還元系ガスを0.01〜10体積%含有していることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
(請求項12)
前記還元系ガスの少なくとも1つが、水素ガスであることを特徴とする請求項11に記載の薄膜形成方法。
(請求項13)
前記薄膜形成ガスが、酸化系ガスを0.01〜10体積%含有していることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
(請求項14)
前記酸化系ガスの少なくとも1つが、酸素ガスであることを特徴とする請求項13に記載の薄膜形成方法。
(請求項15)
前記基材を放電空間または励起した放電ガスに晒して前処理を行った後、前記励起した薄膜形成ガスに基材を晒して、該基材上に薄膜を形成することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
(請求項16)
前記薄膜を形成する基材表面が、無機化合物を含むことを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
(請求項17)
前記薄膜を形成する基材表面の主成分が、金属酸化物であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
(請求項18)
前記クリーニングフィルムは、前記第2電極の放電面に達するまでの搬送方向の上流側で段階的あるいは連続的に加熱され、かつ該放電面と、該放電面に連続する該放電面以外の電極対表面の少なくとも一部とに密着されながら搬送されることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
(請求項19)
請求項1〜18のいずれか1項に記載の薄膜形成方法により得られたことを特徴とする薄膜形成体。
(請求項20)
請求項1〜18のいずれか1項に記載の薄膜形成方法により得られた薄膜形成体であって、基材上に形成された薄膜表面の表面比抵抗値が、23℃、55%RH条件下で1×1012Ω/□以下であることを特徴とする薄膜形成体。
本発明によれば、連続して長期間の薄膜形成を行っても、均一性が高く、かつ優れた撥水性、撥油性、皮脂やインクの拭き取り性及びその繰り返し耐久性を有する防汚膜を安定して形成できる薄膜形成方法及びそれにより得られる薄膜形成体を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の薄膜形成方法は、大気圧または大気圧近傍の圧力下で、互いに対向する第1電極及び第2電極から構成される放電空間に、薄膜形成ガスを導入し、電界を印加して該薄膜形成ガスを励起し、該励起した薄膜形成ガスに基材を晒すことにより、該基材上に薄膜を形成する薄膜形成方法において、該薄膜形成ガスは、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を含有し、該第2電極は、励起した薄膜形成ガスに直接晒されることを防止するクリーニングフィルムを有し、該クリーニングフィルムは、該第2電極の放電面に密着されながら搬送され、かつ、該基材は、該励起した薄膜形成ガスに晒される際に、該第1電極の放電面に密着されながら搬送されることを特徴とする。
はじめに、本発明に係る薄膜形成ガスに含有されるフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物について、その詳細を説明する。
本発明に係るフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物において、フッ素原子を有する有機基としては、フッ素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アリール基等を含有する有機基が挙げられるが、本発明において用いられるフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物は、これらのフッ素原子を有する有機基が、金属原子、例えば、珪素、チタン、ゲルマニウム、ジルコニウム、スズ、アルミニウム、インジウム、アンチモン、イットリウム、ランタニウム、鉄、ネオジウム、銅、ガリウム、ハーフニューム等の金属に直接結合した有機金属化合物である。これらの金属のうちでは、珪素、チタン、ゲルマニウム、ジルコニウム、スズ等が好ましく、更に好ましいのは珪素、チタンである。これらのフッ素を有する有機基は、金属化合物にいかなる形で結合していてもよく、例えば、シロキサン等複数の金属原子を有する化合物が、これらの有機基を有する場合、少なくとも1つの金属原子がフッ素を有する有機基を有していれば良く、またその位置も問わない。
本発明の薄膜形成方法によると、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物が、シリカやガラス等の基板と結合を形成し易く、本発明の優れた効果を奏することができると推定している。
本発明において用いられるフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物としては、前記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
前記一般式(1)において、MはSi、Ti、Ge、ZrまたはSnを表す。また、R1〜R6は各々水素原子または一価の基を表し、R1〜R6で表される基の少なくとも1つは、フッ素原子を有する有機基であり、例えば、フッ素原子を有するアルキル基、アルケニル基またはアリール基を含有する有機基が好ましく、フッ素原子を有するアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、4,4,3,3,2,2,1,1−オクタフルオロブチル基等の基が、フッ素原子を有するアルケニル基としては、例えば、3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル基等の基が、また、フッ素原子を有するアリール基としては、例えば、ペンタフルオロフェニル基等の基が挙げられる。また、これらフッ素原子を有するアルキル基、アルケニル基、またアリール基から形成されるアルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基等なども用いることができる。
また、フッ素原子は、前記アルキル基、アルケニル基、アリール基等においては、骨格中の炭素原子のどの位置に任意の数結合していてもよいが、少なくとも1個以上結合していることが好ましい。また、アルキル基、アルケニル基骨格中の炭素原子は、例えば、酸素、窒素、硫黄等他の原子、また、酸素、窒素、硫黄等を含む2価の基、例えば、カルボニル基、チオカルボニル基等の基で置換されていてもよい。
1〜R6で表される基のうち、前記フッ素原子を有する有機基以外は、水素原子または1価の基を表し、1価の基としては、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、イソシアネート基、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基等の基が挙げられるが、これに限定されない。jは0〜150の整数を表し、好ましくは0〜50、更に好ましいのはjが0〜20の範囲である。
前記1価の基のうち、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。また、前記1価の基である前記アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基のうち、好ましいのは、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基である。
また、Mで表される金属原子のうち、好ましいのは、Si、Tiである。
前記1価の基は、更にその他の基で置換されていてもよく、特に限定されないが、好ましい置換基としては、アミノ基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、フェニル基等のアリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルカンアミド基、アリールアミド基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、シリル基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基等の基が挙げられる。
また、前記フッ素原子を有する有機基、またはそれ以外のこれらR1〜R6で表される基は、R123M−(Mは、前記金属原子を表し、R1、R2、R3はそれぞれ1価の基を表し、1価の基としては前記フッ素原子を有する有機基またはR1〜R6として挙げられた前記フッ素原子を有する有機基以外の基を表す。)で表される基によって更に置換された複数の金属原子を有する構造であっても良い。これらの金属原子としては、Si、Tiなどが挙げられ、例えば、シリル基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。
前記R1〜R6において挙げられたフッ素原子を有する基であるアルキル基、アルケニル基、またこれらから形成されるアルコキシ基、アルケニルオキシ基におけるアルキル基、アルケニル基としては、下記一般式(F)で表される基が好ましい。
一般式(F)
Rf−X−(CH2k
ここにおいてRfは、水素の少なくとも1つがフッ素原子により置換されたアルキル基、アルケニル基を表し、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロオクチル基、ヘプタフルオロプロピル基のようなパーフルオロアルキル基等の基、また、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,3,3,2,2,1,1−オクタフルオロブチル基等の基、また、1,1,1−トリフルオロ−2−クロルプロペニル基等のようなフッ素原子により置換されたアルケニル基が好ましく、中でも、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロオクチル基、ヘプタフルオロプロピル基等の基、また、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,3,3,2,2,1,1−オクタフルオロブチル基等の少なくとも2つ以上のフッ素原子有するアルキル基が好ましい。
また、Xは単なる結合手または2価の基である、2価の基としては−O−、−S−、−NR−(Rは水素原子またはアルキル基を表す)等の基、−CO−、−CO−O−、−CONH−、−SO2NH−、−SO2−O−、−OCONH−、
Figure 2005154788
等の基を表す。
kは0〜50、好ましくは0〜30の整数を表す。
Rf中にはフッ素原子のほか、他の置換基が置換されていてもよく、置換可能な基としては、前記R1〜R6において置換基として挙げられた基と同様の基が挙げられる。また、Rf中の骨格炭素原子が他の原子、例えば、−O−、−S−、−NR0−(R0は水素原子または置換もしくは非置換のアルキル基を表し、また前記一般式(F)で表される基であってもよい)、カルボニル基、−NHCO−、−CO−O−、−SO2NH−等の基によって一部置換されていてもよい。
前記一般式(1)で表される化合物のうち、好ましいのは下記一般式(2)で表される化合物である。
一般式(2)
[Rf−X−(CH2kq−M(R10r(OR11t
一般式(2)において、Mは前記一般式(1)と同様の金属原子を表し、Rf、Xは前記一般式(F)におけるRf、Xと同様の基を表し、kについても同じ整数を表す。R10はアルキル基、アルケニル基を、またR11はアルキル基、アルケニル基、アリール基を表し、それぞれ、前記一般式(1)のR1〜R6の置換基として挙げた基と同様の基により置換されていてもよいが、好ましくは、非置換のアルキル基、アルケニル基を表す。また、q+r+t=4であり、q≧1、またt≧1である。また、r≧2の時2つのR10は連結して環を形成してもよい。
一般式(2)のうち、更に好ましいものものは下記一般式(3)で表される化合物である。
一般式(3)
Rf−X−(CH2k−M(OR123
ここにおいて、Rf、Xまたkは、前記一般式(2)におけるものと同義である。また、R12も、前記一般式(2)におけるR11と同義である。また、Mも前記一般式(2)におけるMと同様であるが、特に、Si、Tiが好ましく、最も好ましいのはSiである。
本発明において、フッ素原子を有する有機金属化合物の他の好ましい例は、前記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
前記一般式(4)において、R1〜R6は、前記一般式(1)におけるR1〜R6と同義である。ここにおいても、R1〜R6の少なくとも1つは、前記フッ素原子を有する有機基であり、前記一般式(F)で表される基が好ましい。R7は水素原子、または置換もしくは非置換のアルキル基を表す。また、jは0〜100の整数を表し、好ましくは0〜50、最も好ましいのはjが0〜20の範囲である。
本発明において用いられる他の好ましいフッ素原子を有する化合物として、前記一般式(5)で表されるフッ素原子を有する有機金属化合物がある。
一般式(5)
[Rf−X−(CH2k−Y]m−M(R8n(OR9p
一般式(5)において、MはIn、Al、Sb、YまたはLaを表す。Rf、Xは前記一般式(F)におけるRf、Xと同様の基を表し、Yは単なる結合手または酸素を表す。kについても同じく0〜50の整数を表し、好ましくは30以下の整数である。R9はアルキル基またはアルケニル基を、またR8はアルキル基、アルケニル基またはアリール基を表し、それぞれ、前記一般式(1)のR1〜R6の置換基として挙げた基と同様の基により置換されていてもよい。また、一般式(5)において、m+n+p=3であり、mは少なくとも1であり、nは0〜2を、またpも0〜2の整数を表す。m+p=3、即ちn=0であることが好ましい。
本発明において用いられる他の好ましいフッ素原子を有する化合物として、下記一般式(6)で表されるフッ素原子を有する有機金属化合物がある。
一般式(6)
f1(OC36m1−O−(CF2n1−(CH2p1−Z−(CH2q1−Si−(R23
一般式(6)において、Rf1は炭素数1〜16の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基、R2は加水分解基、Zは−OCONH−又は−O−を表し、m1は1〜50の整数、n1は0〜3の整数、p1は0〜3の整数、q1は1〜6の整数を表し、6≧n1+p1>0である。
f1に導入しうる直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基の炭素数は、1〜16がより好ましく、1〜3が最も好ましい。従って、Rf1としては、−CF3、−C25、−C37等が好ましい。
2に導入しうる加水分解基としては、−Cl、−Br、−I、−OR11、−OCOR11、−CO(R11)C=C(R122、−ON=C(R112、−ON=CR13、−N(R122、−R12NOCR11などが好ましい。R11はアルキル基などの炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を、またはフェニル基などの炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表し、R12は水素原子またはアルキル基などの炭素数1〜5の脂肪族炭化水素を表し、R13はアルキリデン基などの炭素数3〜6の二価の脂肪族炭化水素基を表す。これらの加水分解基の中でも、−OCH3、−OC25、−OC37、−OCOCH3及び−NH2が好ましい。
上記一般式(6)におけるm1は1〜30あることがより好ましく、5〜20であることが更に好ましい。n1は1または2であることがより好ましく、p1は1または2であることがより好ましい。また、q1は1〜3であることがより好ましい。
本発明において用いられる他の好ましいフッ素原子を有する化合物として、前記一般式(7)で表されるフッ素原子を有する有機金属化合物がある。
前記一般式(7)において、Rfは炭素数1〜16の直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基、Xはヨウ素原子または水素原子、Yは水素原子または低級アルキル基、Zはフッ素原子またはトリフルオロメチル基、R21は加水分解可能な基、R22は水素原子または不活性な一価の有機基を表し、a、b、c、dはそれぞれ0〜200の整数、eは0または1、mおよびnは0〜2の整数、pは1〜10の整数を表す。
前記一般式(7)において、Rfは、通常、炭素数1〜16の直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基であり、好ましくは、CF3基、C25基、C37基である。Yにおける低級アルキル基としては、通常、炭素数1〜5のものが挙げられる。
21の加水分解可能な基としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、R23O基、R23COO基、(R242C=C(R23)CO基、(R232C=NO基、R25C=NO基、(R242N基、及びR23CONR24基が好ましい。ここで、R23はアルキル基等の通常は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基またはフェニル基等の通常は炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、R24は水素原子またはアルキル基等の通常は炭素数1〜5の低級脂肪族炭化水素基、R25はアルキリデン基等の通常は炭素数3〜6の二価の脂肪族炭化水素基である。さらに好ましくは、塩素原子、CH3O基、C25O基、C37O基である。
22は水素原子または不活性な一価の有機基であり、好ましくは、アルキル基等の通常は炭素数1〜4の一価の炭化水素基である。a、b、c、dは0〜200の整数であり、好ましくは1〜50である。mおよびnは、0〜2の整数であり、好ましくは0である。pは1または2以上の整数であり、好ましくは1〜10の整数であり、さらに好ましくは1〜5の整数である。また、数平均分子量は5×102〜1×105であり、好ましくは1×103〜1×104である。
また、前記一般式(7)で表されるシラン化合物の好ましい構造のものとして、RfがC37基であり、aが1〜50の整数であり、b、c及びdが0であり、eが1であり、Zがフッ素原子であり、nが0である化合物である。
本発明において、フッ素原子を有するシラン化合物として好ましく用いられるフッ素を有する有機基を有する有機金属化合物、及び前記一般式(1)〜(7)で表される化合物の代表的化合物を以下に挙げるが、本発明ではこれらの化合物に限定されるものではない。
1:(CF3CH2CH24Si
2:(CF3CH2CH22(CH32Si
3:(C817CH2CH2)Si(OC253
4:CH2=CH2Si(CF33
5:(CH2=CH2COO)Si(CF33
6:(CF3CH2CH22SiCl(CH3
7:C817CH2CH2Si(Cl)3
8:(C817CH2CH22Si(OC252
9:CF3CH2CH2Si(OCH33
10:CF3CH2CH2SiCl3
11:CF3(CF23CH2CH2SiCl3
12:CF3(CF25CH2CH2SiCl3
13:CF3(CF25CH2CH2Si(OCH33
14:CF3(CF27CH2CH2SiCl3
15:CF3(CF27CH2CH2Si(OCH33
16:CF3(CF28CH2Si(OC253
17:CF3(CH22Si(OC253
18:CF3(CH22Si(OC373
19:CF3(CH22Si(OC493
20:CF3(CF25(CH22Si(OC253
21:CF3(CF25(CH22Si(OC373
22:CF3(CF27(CH22Si(OC253
23:CF3(CF27(CH22Si(OC373
24:CF3(CF27(CH22Si(OCH3)(OC372
25:CF3(CF27(CH22Si(OCH32OC37
26:CF3(CF27(CH22SiCH3(OCH32
27:CF3(CF27(CH22SiCH3(OC252
28:CF3(CF27(CH22SiCH3(OC372
29:(CF32CF(CF28(CH22Si(OCH33
30:C715CONH(CH23Si(OC253
31:C817SO2NH(CH23Si(OC253
32:C817(CH22OCONH(CH23Si(OCH33
33:CF3(CF27(CH22Si(CH3)(OCH32
34:CF3(CF27(CH22Si(CH3)(OC252
35:CF3(CF27(CH22Si(CH3)(OC372
36:CF3(CF27(CH22Si(C25)(OCH32
37:CF3(CF27(CH22Si(C25)(OC372
38:CF3(CH22Si(CH3)(OCH32
39:CF3(CH22Si(CH3)(OC252
40:CF3(CH22Si(CH3)(OC372
41:CF3(CF25(CH22Si(CH3)(OCH32
42:CF3(CF25(CH22Si(CH3)(OC372
43:CF3(CF22O(CF23(CH22Si(OC373
44:C715CH2O(CH23Si(OC253
45:C817SO2O(CH23Si(OC253
46:C817(CH22OCHO(CH23Si(OCH33
47:CF3(CF25CH(C49)CH2Si(OCH33
48:CF3(CF23CH(C49)CH2Si(OCH33
49:(CF32(p−CH3−C65)COCH2CH2CH2Si(OCH33
50:CF3CO−O−CH2CH2CH2Si(OCH33
51:CF3(CF23CH2CH2Si(CH3)Cl
52:CF3CH2CH2(CH3)Si(OCH32
53:CF3CO−O−Si(CH33
54:CF3CH2CH2Si(CH3)Cl2
55:(CF32(p−CH3−C65)COCH2CH2Si(OCH33
56:(CF32(p−CH3−C65)COCH2CH2Si(OC653
57:(CF324)(CH32Si−O−Si(CH33
58:(CF324)(CH32Si−O−Si(CF324)(CH32
59:CF3(OC3624−O−(CF22−CH2−O−CH2Si(OCH33
60:CF3O(CF(CF3)CF2O)mCF2CONHC36Si(OC253 (m=11〜30)、
61:(C25O)3SiC36NHCOCF2O(CF2O)n(CF2CF2O)pCF2CONHC36Si(OC253 (n/p=約0.5、数平均分子量=約3000)
62:C37−(OCF2CF2CF2)q−O−(CF22−[CH2CH{Si−(OCH33}]9−H (q=約10)
63:F(CF(CF3)CF2O)15CF(CF3)CONHCH2CH2CH2Si(OC253
64:F(CF24[CH2CH(Si(OCH33)]2.02OCH3
65:(C25O)3SiC36NHCO−[CF2(OC2410(OCF26OCF2]−CONHC36Si(OC253
66:C37(OC3624O(CF22CH2OCH2Si(OCH33
67:CF3(CF23(C64)C24Si(OCH33
68:(CF32CF(CF26CH2CH2SiCH3(OCH32
69:CF3(CF23(C64)C24SiCH3(OCH32
70:CF3(CF25(C64)C24Si(OC253
71:CF3(CF2324Si(NCO)3
72:CF3(CF2524Si(NCO)3
73:C919CONH(CH23Si(OC253
74:C919CONH(CH23SiCl3
75:C919CONH(CH23Si(OC253
76:C37O(CF(CF3)CF2O)2−CF(CF3)−CONH(CH2)Si(OC253
77:CF3O(CF(CF3)CF2O)6CF2CONH(CH23SiOSi(OC252(CH23NHCOCF2(OCF2CF(CF3))6OCF3
78:C37COOCH2Si(CH32OSi(CH32CH2OCOC37
79:CF3(CF27CH2CH2O(CH23Si(CH32OSi(CH32(CH23OCH2CH2(CF27CF3
80:CF3(CF25CH2CH2O(CH22Si(CH32OSi(CH32(OC25
81:CF3(CF25CH2CH2O(CH22Si(CH32OSi(CH3)(OC252
82:CF3(CF25CH2CH2O(CH22Si(CH32OSi(CH32OSi(CH32(OC25
上記例示した化合物の他には、フッ素置換アルコキシシランとして、
83:(パーフルオロプロピルオキシ)ジメチルシラン
84:トリス(パーフルオロプロピルオキシ)メチルシラン
85:ジメチルビス(ノナフルオロブトキシ)シラン
86:メチルトリス(ノナフルオロブトキシ)シラン
87:ビス(パーフルオロプロピルオキシ)ジフェニルシラン
88:ビス(パーフルオロプロピルオキシ)メチルビニルシラン
89:ビス(1,1,1,3,3,4,4,4−オクタフルオロブトキシ)ジメチルシラン
90:ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロポキシ)ジメチルシラン
91:トリス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロポキシ)メチルシラン
92:テトラキス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロポキシ)シラン
93:ジメチルビス(ノナフルオロ−t−ブトキシ)シラン
94:ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロポキシ)ジフェニルシラン
95:テトラキス(1,1,3,3−テトラフルオロイソプロポキシ)シラン
96:ビス〔1,1−ビス(トリフルオロメチル)エトキシ〕ジメチルシラン
97:ビス(1,1,1,3,3,4,4,4−オクタフルオロ−2−ブトキシ)ジメチルシラン
98:メチルトリス〔2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1,1−ビス(トリフルオロメチル)プロポキシ〕シラン
99:ジフェニルビス〔2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)−1−トリルエトキシ〕シラン
等の化合物や、以下の化合物、
100:(CF3CH23Si(CH2−NH2
101:(CF3CH23Si−N(CH32
Figure 2005154788
更に、
Figure 2005154788
等のシラザン類や、
106:CF3CH2−CH2TiCl3
107:CF3(CF23CH2CH2TiCl3
108:CF3(CF25CH2CH2Ti(OCH33
109:CF3(CF27CH2CH2TiCl3
110:Ti(OC374
111:(CF3CH2−CH2O)3TiCl3
112:(CF324)(CH32Ti−O−Ti(CH33
等のフッ素を有する有機チタン化合物、また、以下のようなフッ素含有有機金属化合物を例として挙げることができる。
113:CF3(CF23CH2CH2O(CH23GeCl
114:CF3(CF23CH2CH2OCH2Ge(OCH33
115:(C37O)2Ge(OCH32
116:[(CF32CHO]4Ge
117:[(CF32CHO]4Zr
118:(C37CH2CH22Sn(OC252
119:(C37CH2CH2)Sn(OC253
120:Sn(OC374
121:CF3CH2CH2In(OCH32
122:In(OCH2CH2OC373
123:Al(OCH2CH2OC373
124:Al(OC373
125:Sb(OC373
126:Fe(OC373
127:Cu(OCH2CH2OC372
128:C37(OC3624O(CF22CH2OCH2Si(OCH33
Figure 2005154788
これら具体例で挙げられた各化合物等は、東レ・ダウコーニングシリコーン(株)、信越化学工業(株)、ダイキン工業(株)(例えば、オプツールDSX)また、Gelest Inc.、ソルベイ ソレクシス(株)等により上市されており、容易に入手することができる他、例えば、J.Fluorine Chem.,79(1).87(1996)、材料技術,16(5),209(1998)、Collect.Czech.Chem.Commun.,44巻,750〜755頁、J.Amer.Chem.Soc.1990年,112巻,2341〜2348頁、Inorg.Chem.,10巻,889〜892頁,1971年、米国特許第3,668,233号明細書等、また、特開昭58−122979号、特開平7−242675号、特開平9−61605号、同11−29585号、特開2000−64348号、同2000−144097号公報等に記載の合成方法、あるいはこれに準じた合成方法により製造することができる。
次に、薄膜形成ガスを構成する他の要素について説明する。
本発明に係る薄膜形成ガスにおいては、上記説明したフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物と共に、放電を起こすことのできる放電ガスとして、希ガス及び/または窒素を50体積%以上含有することが好ましい。希ガスとしては、周期表の第18族元素、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等を挙げることができる。また、添加ガスとして、還元系ガスまたは酸化系ガスを0.01〜10体積%の範囲で含有することが好ましく、更に好ましくは、還元系ガスとして水素ガスを用いること、あるいは酸化系ガスとして酸素ガスを用いるである。更に、放電ガスとして、必要に応じて、例えば、空気などを混合して用いてもかまわない。
また、本発明に係る薄膜形成ガスにおいては、前述のフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物の含有量としては、0.001〜30.0体積%の範囲であることが好ましい。
本発明に係る薄膜形成方法で処理される基材の材質は、特に限定はなく、金属酸化物、プラスチック、金属、陶器、紙、木材、不織布、ガラス板、セラミック、建築材料等を挙げることができ、特に、基材表面が、無機化合物を含む表面、あるいは有機化合物を含む表面で構成されていることが、本発明の目的効果を発揮する観点から好ましいが、その中でも、更に好ましくはシリカ、チタニア等の金属酸化物を主成分とする表面の基材である。また、基材の形態は、シート状でも成型品でもよく、ガラスとしては板ガラスやレンズ等、プラスチックとしては、プラスチックレンズ、プラスチックフィルム、プラスチックシート、あるいはプラスチック成型品等が挙げられる。基材が、このようなプラスチックを支持体とする場合には、その表面に金属酸化物膜を形成したものが好ましい。
次いで、本発明の薄膜形成方法で用いる薄膜形成装置について説明する。
前述のように、本発明の薄膜形成方法は、大気圧または大気圧近傍の圧力下で、互いに対向する第1電極及び第2電極から構成される放電空間に、薄膜形成ガスを導入し、電界を印加して該薄膜形成ガスを励起し、該励起した薄膜形成ガスに基材を晒すことにより、該基材上に薄膜を形成する薄膜形成方法において、該薄膜形成ガスは、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を含有し、該第2電極は、励起した薄膜形成ガスに直接晒されることを防止するクリーニングフィルムを有し、該クリーニングフィルムは、該第2電極の放電面に密着されながら搬送され、かつ、該基材は、該励起した薄膜形成ガスに晒される際に、該第1電極の放電面に密着されながら搬送されることにより、該基材上に薄膜を形成するものである。
本発明において、放電空間とは、所定の距離を有して対向配置された電極対により挟まれ、かつ前記電極対間へ薄膜形成ガスを導入して電圧印加することにより放電を起こす空間である。
放電空間の形態は、特に制限はなく、例えば、対向する平板電極対により形成されるスリット状であっても、あるいは2つの円筒電極間に円周状に形成された空間であっても良い。
本発明でいう大気圧又は大気圧近傍の圧力下とは、20kPa〜200kPaの圧力下である。本発明において、電圧を印加する電極間のさらに好ましい圧力は、70kPa〜140kPaである。
図1は、従来の薄膜形成方法で用いる対向する第1電極及び第2電極から構成される放電空間の一例を示す断面図である。
プラズマ放電処理装置100には、薄膜形成ガス流路を形成する様に、間隙を挟んで1対の第2電極101、102と、第2電極に対向する位置に、基材Fの支持体である第1電極104とが配置され、この第1電極と第2電極間に電界を印加して薄膜形成ガスGの放電空間Aを形成する。また、そのほかには、薄膜形成ガスを放電空間Aに導入して基材Fまで供給するガスノズル(図示省略)とが設けられている。
すなわち、この薄膜形成用のプラズマ放電処理装置100では、第1電極104に支持された基材Fに対して、ガスノズルから薄膜形成ガスGを噴射しながら高周波電源5より第2電極101、102と、第1電極104間に電界を印加して放電空間Aを形成し、この放電空間Aで発生した励起した薄膜形成ガスG′に基材を晒して、基材F上に薄膜を形成することができる。
しかしながら、上記のプラズマ放電処理装置100において、第1電極はその上に支持している基材により、放電空間A内で放電プラズマにより励起した薄膜形成ガスG′によって生じる汚れ等の付着は起こらないが、放電空間Aを形成する第2電極101、102の放電面101a、102aでは、励起した薄膜形成ガスG′、特に、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を含有する励起した薄膜形成ガスG′によって汚染が発生しやすくなる。放電面が汚染されると、安定した放電が行えなくなるために、品質の低下を誘発してしまう。
本発明の薄膜形成方法においては、上記課題を解決するため、第1電極部にクリーニングフィルムを設け、第1電極を構成する電極、例えば1つの電極で構成されている場合には、それぞれの放電面に対して、クリーニングフィルムの搬送方向の上流側で、クリーニングフィルムを放電面に達するまでに段階的あるいは連続的に加熱し、かつクリーニングフィルムを、放電面と、放電面に連続する放電面以外の電極対表面の少なくとも一部とに密着させて搬送することにより、特に放電面の電極部における励起した薄膜形成ガス、特に、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を含有する励起した薄膜形成ガスによる汚れを効率よく防止し、連続して長期間の薄膜形成を行っも、均一性が高く、かつ優れた撥水性、撥油性、皮脂やインクの拭き取り性及びその繰り返し耐久性を有する防汚膜を安定して形成できる薄膜形成方法を実現するものである。
本発明の薄膜形成方法で用いる薄膜形成装置においては、電極に対する汚れの付着を防止するクリーニングフィルムを、電極の表面に密着させて搬送するクリーニングフィルム用搬送機構を備えている。
本発明に係るクリーニングフィルム用搬送機構は、クリーニングフィルムを電極の表面に密着させて搬送するので、電極の表面はクリーニングフィルムによって覆われ、その結果、電極表面が、励起した薄膜形成ガスによって汚染されることを防止できる。
また、クリーニングフィルムは、クリーニングフィルム用搬送機構によって搬送されるので、電極の表面に密着するクリーニングフィルムを新たなものに連続して交換することができ、電極表面を長期にわたってメンテナンスフリーとすることができる。
本発明の薄膜形成方法においては、クリーニングフィルムを電極の放電面と、放電面に連続する放電面以外の電極表面の少なくとも一部とに密着させて搬送することを特徴としている。電極の放電面に位置したクリーニングフィルムに皺やツレが発生していると、放電空間内の気流の均一性が乱れてしまい、不均一な製膜となってしまう。この皺やツレが発生する原因は、放電空間に支えのない状態で進入することにより、熱等の影響を受けて収縮してしまうことにある。しかしながら、本発明に係る構成においては、クリーニングフィルムが、電極の放電面と、放電面に連続する放電面以外の電極表面に密着されているために、放電面以外の表面によって支えられた状態で放電空間に進入する。これにより、クリーニングフィルムが熱影響を受けたとしてもクリーニングフィルム面が均一に保たれ、皺やツレが発生することを防止できる。したがって、プラズマ空間内の均一性を維持することができ、高品質な薄膜の形成が可能となる。
本発明の薄膜形成方法においては、電極の放電面に対して、クリーニングフィルムの搬送方向の上流側に、クリーニングフィルムが放電面に達するまでに段階的あるいは連続的に加熱機構を有していることが、特徴の1つである。
上記で規定した加熱機構を設けることにより、電極の放電面における上流側で加熱機構がクリーニングフィルムを加熱するので、電極の放電面に接触する以前にクリーニングフィルムを加熱することができる。このため、放電空間にクリーニングフィルムが進入したとしても急激かつ過剰に熱影響を受けることを防止でき、放電プラズマの熱による収縮を抑えることができる。したがって、クリーニングフィルムに皺やツレが発生することを、さらに防止することができる。
本発明の薄膜形成方法においては、クリーニングフィルムの全幅は、電極の放電面よりも大きくなるように設定されていることが好ましい。クリーニングフィルムの全幅を、電極の放電面よりも大きくなるように設定することにより、電極はクリーニングフィルムによって放電面以上の範囲が覆われることになる。このため励起した薄膜形成ガスに晒されることを更に抑制し、電極に対する汚れを防止できる。更に、クリーニングフィルムエッジが放電空間内に侵入しないために、放電集中によるアーク放電を防止できる。
本発明の薄膜形成方法においては、フィルム用搬送機構は、クリーニングフィルムを薄膜形成ガス供給部の少なくとも一部に接触させてから、ガス流路を形成する電極の表面まで搬送することが好ましい。すなわち、クリーニングフィルムが、薄膜形成ガス供給部の少なくとも一部に接触されてから、流路を形成する電極の表面まで搬送されることにより、薄膜形成ガス供給部から流路までの空間は、クリーニングフィルムによって仕切られることになって、薄膜形成ガスが流路外に流れることを防止できる。
以下、本発明の薄膜形成方法において用いるクリーニングフィルムを備えた薄膜形成装置について、図を用いて説明するが、本発明の実施の態様はこれらの図のみに制限されるものではない。
図2は、本発明の薄膜形成方法に用いる第2電極にクリーニングフィルムを備え、互いに対向する位置に配置された第1電極及び第2電極から構成される放電空間の一例を示す断面図である。
図2において、プラズマ放電処理装置200には、基材Fを乗せた第1電極104の周面に間隔aを空けて対向する一対の第2電極101、102が配置されている。また、これら一対の第2電極101、102は、互いに隙間bを空けて配置されている。この隙間bを経て薄膜形成ガスが供給され、第1電極104と対向する一対の第2電極101、102間で放電空間Aが形成され、放電空間Aを構成する第2電極の101、102の下部面をそれぞれ放電面101a、102aとする。
第1電極104は、導電性の金属母材の表面に誘電体が被覆された平板状電極である。また、第2電極101、102は、導電性の金属母材の表面に誘電体が被覆された四角柱状電極である。この第2電極101、102の角部215は円弧状に形成されている。すなわち、第2電極101、102の四面は角部215を介して連続していることから、放電面101a、102a及び放電面101a、102a以外の表面も連続することになる。
プラズマ放電処理装置200には、図2に示すように、第2電極101、102の隙間bに向けてガスを導入するガス供給部(混合ガス供給部)124が、隙間bに対向するように配置されている。すなわち、隙間bがガス供給部124から供給されたガスを、第2電極104上の基材Fまで誘導する流路として機能するようになっている。ガス供給部124には、内部にガス流路が形成されたノズル本体部125と、ノズル本体部125から流路に向けて突出し、ガス流路に連通してガスを噴出するガス噴出部126とが設けられている。
プラズマ放電処理装置200には、第2電極101、102の汚れを防止するクリーニングフィルム127を、第2電極101、102に密着させながら連続的、あるいは間欠的に搬送するクリーニングフィルム用搬送機構130が、第2電極101、102に応じてそれぞれ設けられている。このクリーニングフィルム用搬送機構130には、ガス供給部124の近傍で、クリーニングフィルム127を案内する第1フィルム用ガイドローラ131が設けられている。この第1フィルム用ガイドローラ131の上流側には、図示しないクリーニングフィルム127の巻き出しローラ若しくはクリーニングフィルム127の元巻が設けられている。
また、ガス供給部124に対して、第1フィルム用ガイドローラ131よりも遠方には、第2フィルム用ガイドローラ132を介してクリーニングフィルム127を巻き取る巻取部(不図示)が設けられている。
また、プラズマ放電処理装置200には、クリーニングフィルム127が放電面101a、102aに接触する際に生じるツレや皺を防止するために、第2電極101、102の放電面101a、102aに対して、クリーニングフィルム127の搬送方向の上流側に、クリーニングフィルム127を加熱する加熱部材128が設けられている。
すなわち、プラズマ放電処理装置200には、クリーニングフィルム127を、クリーニングフィルム用搬送機構130によって、巻出ローラから引き出された後、第1フィルム用ガイドローラ131に案内されて、ガス供給部124のノズル本体部125の周縁に接触した後に、加熱部材128の表面に接触して加熱されてから、第2電極101、102の角部215を介して放電面101a、102aに接触し、その後、第2フィルム用ガイドローラ132に案内されて、巻取部で巻き取られるようになっている。この際、角部215が円弧状に形成されているので、クリーニングフィルム127が放電面101a、102a以外の表面(角部215表面)から放電面101a、102aまで移動する際に引っかかることを防止でき、スムーズに搬送させることができる。なお、本説明では、第2電極101、102の放電面101a、102aが平面であるが、この放電面101a、102aを、他方の放電面101a、102aに向かって凸となる曲面に形成してもよい。こうした場合、第2電極101、102の放電面101a、102aとクリーニングフィルム127との密着性をさらに高めることができる。
そして、上記のように、クリーニングフィルム127とノズル本体部125とが接触しているので、ガス供給部124から放電空間Aまでの空間は、クリーニングフィルム127によって仕切られることになって、ガスが流路外に流れることを防止できる。
ここで、クリーニングフィルム127が第2電極101、102に密着していない場合においては、上記のように第2電極101、102の表面が放電面101a、102aとなるが、クリーニングフィルム127が第2電極101、102に密着している場合には、放電面101a、102aに密着するクリーニングフィルム127の表面が放電面になる。したがって、クリーニングフィルム127が第2電極101、102に密着している場合には、放電空間Aはクリーニングフィルム127の表面より形成されることになる。
第2電極101、102は、金属母材と誘電体で構成され、該金属母材をライニングすることにより無機質的性質の誘電体を被覆する組み合わせにより、また、金属母材に対しセラミックス溶射した後、無機質的性質の物質により封孔処理した誘電体を被覆する組み合わせにより構成されていてもよい。金属母材としてはチタン、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属が使える。また、誘電体のライニング材としては、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラス等を用いることができ、この中でもホウ酸塩系ガラスが加工し易く好ましい。また、誘電体の溶射に用いるセラミックスとしては、アルミナが良く、酸化珪素等封孔材が好ましい。またアルコキシラン系封孔材をゾルゲル反応させて無機化させることもできる。
また、図2では一対の第2電極101、102のように角柱型電極を用いてあるが、一方もしくは双方の電極を円柱型電極あるいはローラ状回転電極としてもよい。この一対の第2電極101、102に高周波電源5が接続され、他方の第1電極104は、アース6により接地され、第1電極と第2電極間に電界を印加できるように構成されている。
本発明に係るクリーニングフィルム127としては、例えば、樹脂フィルム、紙、布、不織布等から形成されている。樹脂としては、例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートのようなセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールコポリマー、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリメチルアクリレート、アクリレートコポリマー等が挙げられ、好ましくは、安価で生産性に優れるポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)及びPETを主体とする樹脂フィルムである。また、本発明に用いられるクリーニングフィルムは、厚みが10〜1000μm、より好ましくは20〜100μmのフイルム状のものが使用されている。また、また材質に求められる性質としては、大気圧プラズマ処理を行っている最中は非常に高温となるために、耐熱性すなわち熱的寸法安定性に優れたものがよい。更に、熱的寸法安定性を向上させるために、アニール処理等を施したものがより好ましい。
次いで、本発明の薄膜形成方法に用いる大気圧プラズマ放電処理装置、大気圧プラズマ放電処理方法及び大気圧プラズマ放電処理装置用の電極システムについて、以下にその実施の形態を図を用いて説明するが、本発明はこれに限定されない。また、以下の説明には、用語等に対し断定的な表現が含まれている場合があるが、本発明の好ましい例を示すものであって、本発明の用語の意義や技術的な範囲を限定するものではない。
次いで、本発明の薄膜形成方法に用いる大気圧プラズマ放電処理装置、大気圧プラズマ放電処理方法及び大気圧プラズマ放電処理装置用の電極システムについて、以下にその実施の形態を図を用いて説明するが、本発明はこれに限定されない。
図3は、本発明に係る大気圧もしくはその近傍の圧力下でのプラズマ放電処理装置の一例を示す図である。
この大気圧プラズマ放電処理装置は、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で、放電プラズマを発生させることによって薄膜形成ガスを励起し、その励起した薄膜形成ガスに基材を晒して、基材上に薄膜を形成する薄膜形成装置である。薄膜形成装置には、図3に示すように、シート状の基材Fをその周面に密着させて搬送するローラ型の第1電極104が回転自在に設けられている。
第1電極104と、第2電極101、102の間には、高周波電源5によって、高周波電界を印加できるようになっている。
第1電極104の内部には、表面温度を調節するため、例えば、水やシリコンオイル等の温度調節用の媒体が循環できるようになっており、この循環部分には、図3に示すように、配管3を介して温度調節装置4が接続されている。また、第1電極104の周縁には、基材Fを第1電極104の周面に密着させて搬送するために基材用搬送機構15と、図2に示した様な基材F上に薄膜を形成するためのクリーニングフィルム127を装備した複数の薄膜放電処理装置200が設けられている。
基材用搬送機構15には、基材Fを第1電源104の周面に案内する第1ガイドローラ16及びニップローラ17と、前記周面に密着した基材Fを剥がして、次工程まで案内する第2ガイドローラ18と、第1ガイドローラ16、第2ガイドローラ18及び第1電極104を連動するように回転させる駆動源(不図示)とが設けられている。
また、プラズマ放電処理装置200には、図2に示したように、第2電極101、102の隙間に向けて薄膜形成ガスを噴出するガス供給部(混合ガス供給部)124が、隙間に対向するように配置されている。つまり、隙間がガス供給部124から供給された薄膜形成ガスを、第1電極104上の基材Fまで案内する流路として機能するようになっている。ガス供給部124には、内部にガス流路が形成されたノズル本体部と、ノズル本体部(不図示)から流路に向けて突出し、ガス流路に連通してガスを噴出するガス噴出部(不図示)とが設けられている。
また、プラズマ放電処理装置200には、第2電極101、102の汚れを防止するクリーニングフィルム127を第2電極101、102に密着させながら連続的若しくは間欠的に搬送するクリーニングフィルム用搬送機構130が、各第2電極101、102に応じて設けられている。このクリーニングフィルム用搬送機構130には、ガス供給部124の近傍で、クリーニングフィルム127を案内する第1フィルム用ガイドローラが設けられている。この第1フィルム用ガイドローラの上流側には、図示しないクリーニングフィルム127の巻き出しローラ若しくはクリーニングフィルム127の元巻が設けられている。
図4は、例えば、図3で用いた角柱型電極である第2電極101、102の一例を表す斜視図であり、第2電極101、102は導電性の金属質母材211の表面に誘電体212が被覆された四角柱状電極である。この第2電極101、102の角部215は円弧状に形成されている。つまり、第2電極101、102の四面は角部215を介して連続していることから、放電面101a、102a及び放電面101a、102a以外の表面も連続することになる。第2電極101、102は内部が中空となっており、この中空部分213には、図3に示すように、配管5を介して温度調節装置6が接続されている。中空部分213に温度調節用の媒体を流すことにより、電極表面の温度調節ができるようになっている。
図5は、上記図3で用いた第1電極であるローラ回転電極の一例を示す斜視図である。図5において、第1電極であるローラ回転電極23の構成は、金属の導電性を有する金属母材21に対しセラミックス溶射後、無機質物質により封孔処理した誘電体22を被覆した組み合わせでなっている。また誘電体はライニングによるものでもよい。
本発明に係るプラズマ放電処理装置においては、電圧印加手段は高周波電源5より、それぞれの電極の金属の導電性を有する金属母材に電圧を印加する。本発明に係る防汚膜を形成させるための対向電極に電圧を印加する高周波電源としては、特に限定はないが、好ましくは比較的ローパワーの電源である。また、2電源以上を同時に印加してもよい。
本発明に用いる高周波電源としては、例えば、神鋼電機製高周波電源(3kHz)、神鋼電機製高周波電源(5kHz)、神鋼電機製高周波電源(15kHz)、神鋼電機製高周波電源(50kHz)、ハイデン研究所製高周波電源(連続モード使用、100kHz)、パール工業製高周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源(800kHz)、パール工業製高周波電源(2MHz)、日本電子製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(27MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)等を使用できる。また、433MHz、800MHz、1.3GHz、1.5GHz、1.9GHz、2.45GHz、5.2GHz、10GHzを発振する電源を用いてもよい。
本発明に係る大気圧もしくはその近傍の圧力下で薄膜形成ガス雰囲気内でプラズマ放電処理する方法あるいは条件等について説明する。
本発明に係る防汚膜を形成するする場合の対向電極間に印加する高周波電界の周波数としては、特に限定はないが、高周波電源として0.5kHz以上、200kHz以下が好ましく、更に好ましくは0.5kHz以上、80kHz以下である。また、対向電極間に供給する電力は、好ましくは0.05W/cm2以上、10W/cm2以下である。尚、対向電極における電圧の印加面積(cm2)は、放電が起こる範囲の面積のことを指す。対向電極間に印加する高周波電圧は、断続的なパルス波であっても、連続したサイン波であっても構わない。
本発明において、対向電極間の距離(図2におけるb)は、電極の金属母材上の誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定される。上記電極の一方に誘電体を設置した場合の誘電体と電極の最短距離、上記電極の双方に誘電体を設置した場合の誘電体同士の距離を電極間の距離として、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1mm〜20mmが好ましく、0.2〜10mmがより好ましい。
本発明において、大気圧もしくはその近傍の圧力とは、20〜200kPaの圧力を表すが、本発明に記載の効果を好ましく得るためには90〜110kPa、特に93〜104kPaが好ましい。
本発明に係る薄膜形成前、基材を別途設けた放電空間に晒して薄膜形成を施しても良い。また、薄膜形成前に、予め基材表面の除電処理を行い、更にゴミ除去を行っても良い。除電手段及び除電処理後のゴミ除去手段としては、通常のブロアー式や接触式以外に、複数の正負のイオン生成用除電電極と基材を挟むようにイオン吸引電極を対向させた除電装置とその後に正負の直流式除電装置を設けた高密度除電システム(特開平7−263173号)を用いてもよい。また、除電処理後のゴミ除去手段としては、非接触式のジェット風式減圧型ゴミ除去装置(特開平7−60211号)等を挙げることが出来好ましく用いることも出来るが、これらに限定されない。
本発明の薄膜形成方法においては、基材を放電空間、または励起放電ガスに晒して前処理を行った後、前記励起した薄膜形成ガスに基材を晒すこともできる。
本発明に係る薄膜形成前、基材を放電空間に晒して薄膜形成する前処理に用いる大気圧プラズマ放電装置としては、前述の図1で示した大気圧プラズマ放電装置等を用いることができる。
また、薄膜形成前、基材を放電空間に晒して薄膜形成する前処理に用いる他の大気圧プラズマ放電装置としては、図6に記載の大気圧プラズマ放電装置を用いることができる。
図6においては、高周波電源5により、一対の電極101、102間に電界を印加し、放電空間Aは、電極101と電極102との間に形成される方法である。
また、本発明の薄膜形成方法においては、薄膜を形成する基材表面が、無機化合物を含むこと、あるいは基材表面の主成分が、金属酸化物であることが好ましい。
本発明でいう基材表面が無機化合物を含む、基材表面の主成分が金属酸化物であるとは、本発明に係る防汚層を形成する前の基材が、無機化合物あるいは金属酸化物を含む、例えば、反射防止膜、防眩膜等の機能性薄膜が既に形成されていることを意味する。
無機化合物あるいは金属酸化物としては、例えば、二酸化チタン(例えば、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化珪素等が挙げられる。
本発明において、基材表面に上記構成物を含む層を設ける他の方法の1つとして、大気圧プラズマ放電装置を用いることができる。
図7は、本発明に係る基材の表面処理に用いる大気圧プラズマ放電装置の他の一例を示す概略図である。
図7において、プラズマ放電処理装置300は、プラズマ放電処理容器170、ガス供給手段150、電圧印加手段140、及び電極温度調節手段160から構成されている。ローラ回転電極135と角筒型固定電極群136として、基材Fをプラズマ放電処理をするものである。ローラ回転電極(第1電極)135と角筒型固定電極群(第2電極)136との間の放電空間(対向電極間)Aに、ローラ回転電極(第1電極)135には第1電源141から周波数ω1であって高周波電圧V1を、また角筒型固定電極群(第2電極)136には第2電源142から周波数ω2であって高周波電圧V2をかけるようになっている。
ローラ回転電極(第1電極)135と第1電源141との間には、第1電源141からの電流がローラ回転電極(第1電極)135に向かって流れるように第1フィルター143が設置されている。該第1フィルターは第1電源141からの電流をアース側へと通過しにくくし、第2電源142からの電流をアース側へと通過し易くするように設計されている。また、角筒型固定電極群(第2電極)136と第2電源142との間には、第2電源からの電流が第2電極に向かって流れるように第2フィルター144が設置されている。第2フィルター144は、第2電源142からの電流をアース側へと通過しにくくし、第1電源141からの電流をアース側へと通過し易くするように設計されている。
尚、ローラ回転電極135を第2電極、また角筒型固定電極群136を第1電極としてもよい。何れにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。第1電源は第2電源より大きな高周波電圧(V1>V2)を印加できる能力を有しており、周波数はω1<ω2となる能力を有している。また、第1電源、第2電源は必ずしも両方とも使用する必要はなく、どちらか一方だけを使用することもでき、放電ガスが窒素ガスの時は、第1電源と第2電源の双方を使用することが好ましく、放電ガスがヘリウムやアルゴンのような希ガスの場合には、いずれか一方の電源だけを使用しても良い。
基材Fは、ガイドローラ164を経てニップローラ165で基材に同伴してくる空気等を遮断し、ローラ回転電極135に接触したまま巻き回されながら角筒型固定電極群136との間を移送され、ニップローラ166、ガイドローラ167を経て、次工程である本発明に係る薄膜形成工程に移送する。処理ガスはガス供給手段150であるガス発生装置151で発生させた処理ガスHを、流量制御して給気口152より対向電極間(ここが放電空間になる)Aのプラズマ放電処理容器170内に入れ、該プラズマ放電処理容器170内を処理ガスで充填し、放電処理が行われた処理排ガスH′を排気口153より排出するようにする。
ローラ回転電極135及び角筒型固定電極群136を電極温度調節手段160を用いて媒体を加熱または冷却し電極に送液する。電極温度調節手段160で温度を調節した媒体を送液ポンプPで配管161を経てローラ回転電極135及び角筒型固定電極群136内側から温度を調節する。プラズマ放電処理の際、基材の温度によって得られる薄膜の物性や組成は変化することがあり、これに対して適宜制御することが好ましい。媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での基材の温度ムラを出来るだけ生じさせないようにローラ回転電極135の内部の温度を制御することが望ましい。尚、168及び169はプラズマ放電処理容器170と外界を仕切る仕切板である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
《薄膜形成体試料の作製》
〔基材の作製〕
(帯電防止層の形成)
厚さ80μmのセルローストリアセテートフィルム(コニカ社製、商品名:コニカタックKC80UVSF)の一方の面に、下記組成の帯電防止層1の塗布組成物を乾燥膜厚で0.2μmとなるようにダイコートし、80℃、5分間乾燥して、帯電防止層を設けた。
〈帯電防止層の塗布組成物〉
ダイヤナール(BR−88 三菱レーヨン社製) 0.5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 60質量部
メチルエチルケトン 15質量部
乳酸エチル 6質量部
メタノール 8質量部
導電性ポリマー樹脂
IP−16(特開平9−203810号公報記載) 0.5質量部
(ハードコート層の形成)
上記帯電防止層を形成したフィルムに、下記ハードコート層組成物を、乾燥膜厚が3.5μmとなるように塗布し、80℃にて5分間乾燥した。次に80W/cm高圧水銀灯を12cmの距離から4秒間照射して硬化させ、ハードコート層を有するハードコートフィルムを作製した。ハードコート層の屈折率は1.50であった。
〈ハードコート層組成物〉
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20質量部
ジエトキシベンゾフェノン(UV光開始剤) 2質量部
メチルエチルケトン 50質量部
酢酸エチル 50質量部
イソプロピルアルコール 50質量部
上記組成物を撹拌しながら溶解した。
(バックコート層の塗設)
前記ハードコート層を塗設した面の反対面に、下記のバックコート層塗布組成物を、ウェット膜厚14μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、乾燥温度85℃にて乾燥させてバックコート層を塗設した。
〈バックコート層塗布組成物〉
アセトン 30質量部
酢酸エチル 45質量部
イソプロピルアルコール 10質量部
セルロースジアセテート 0.5質量部
アエロジル200V 0.1質量部
(反射防止層の形成)
図7に示した大気圧プラズマ放電処理装置を4基接続し、それぞれの装置の2個の電極の電極間隙を1mmとし、各装置の放電空間に下記ガスをそれぞれ供給し、上記作製したハードコート層上に、順次薄膜を形成した。各装置の第1電極に第1の高周波電源として、神鋼電機社製(50kHz)の高周波電源を使用し、高周波電圧10kV/mm及び出力密度1W/cm2で、また、第2電極に第2の高周波電源として、パール工業社製(13.56MHz)の高周波電源を使用し、高周波電圧0.8kV/mm及び出力密度5.0W/cm2で印加し、プラズマ放電を行って酸化チタンを主成分とする薄膜及び酸化珪素を主成分とする反射防止層を形成した。このときの各装置の放電空間における窒素ガスの放電開始電圧は3.7kV/mmであった。なお、下記薄膜形成ガスは窒素ガス中で気化器によって蒸気とし、加温しながら放電空間に供給した。また、ローラ電極はドライブを用いてセルロースエステルフィルムの搬送を同期して回転させた。両電極を80℃になるように調節保温して行った。
〈酸化チタン層形成用ガス組成〉
放電ガス:窒素 97.9体積%
薄膜形成ガス:テトライソプロポキシチタン 0.1体積%
添加ガス:水素 2.0体積%
〈酸化珪素層形成用ガス組成〉
放電ガス:窒素 98.9体積%
薄膜形成ガス:テトラエトキシシラン 0.1体積%
添加ガス:酸素 1.0体積%
前記ハードコート層の上に、順に酸化チタン層、酸化珪素層、酸化チタン層、酸化珪素層を設け、帯電防止層、ハードコート層及び反射防止層を有する基材(表1には、これをTACと記す)を作製した。なお、反射防止層を構成するそれぞれの層は、順に屈折率2.1(膜厚15nm)、屈折率1.46(膜厚33nm)、屈折率2.1(膜厚120nm)、屈折率1.46(膜厚76nm)であった。
〔試料1の作製〕
上記作製したハードコート層及び反射防止層を有する基材上に、図2及び図3に示すクリーニングフィルムを備えた大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、神鋼電機社製の高周波電源(周波数:5kHz)により1.0W/cm2の放電電力を印加した放電空間に、下記の組成からなる薄膜形成ガスを導入し、薄膜である防汚膜の形成を行って試料1を得た。
〈薄膜形成ガス組成〉
放電ガス:窒素 98.3体積%
有機金属化合物:例示化合物15 0.2体積%
(エステック社製気化器により、窒素ガス中に例示化合物15を気化)
添加ガス:水素 1.5体積%
〔試料2〜11の作製〕
上記試料1の作製において、有機金属化合物である例示化合物15を、表1に記載の各例示化合物に変更した以外は同様にして、試料2〜11を作製した。
〔試料12の作製〕
上記試料1の作製において、防汚膜を形成する前に、基材表面に下記の前処理Aを施した以外は同様にして、試料12を作製した。
前処理A:基材上に防汚膜を形成する前に、図6に記載の装置を用い、窒素:酸素=99:1(体積%)の放電ガスを流入して励起させ、基材を励起した放電ガスに3秒間晒した。なお、高周波電源として、神鋼電機社製の高周波電源(周波数:50kHZ)、放電出力は5W/cm2に設定して行った。
〔試料13の作製〕
上記試料1の作製において、防汚膜を形成する前に、基材表面に下記の前処理Bを施した以外は同様にして、試料13を作製した。
前処理B:基材上に防汚膜を形成する前に、図1に記載の装置を用い、窒素:酸素=99:1(体積%)の放電ガスを流入して励起させ、基材を励起した放電ガスに3秒間晒した。なお、高周波電源として、神鋼電機社製の高周波電源(周波数:50kHZ)、放電出力は5W/cm2に設定して行った。
〔試料14の作製〕
前記試料1の作製において、基材をセルロースエステルフィルムに代えて、ガラス板(製品名:日本板硝子社製 0.5tソーダライムガラス 片面研磨品)を用いた以外は同様にして、試料14を作製した。
〔試料15の作製〕
上記試料1の作製において、放電ガスを窒素に代えて、アルゴンを用いた以外は同様にして、試料15を作製した。
〔試料16の作製〕
上記試料1の作製において、防汚膜の形成に用いた装置を、図2に記載の装置に代えて、クリーニングフィルムを備えていない図1に記載の装置を用いた以外は同様にして試料16を作製した。
〔試料17〜20の作製〕
上記試料16の作製において、有機金属化合物である例示化合物15を、表1に記載の各例示化合物に変更した以外は同様にして、試料17〜20を作製した。
〔試料21の作製〕
上記試料1の作製において、有機金属化合物である例示化合物15を、ソルベイ ソレクシス(株)製のFluorolink S10に変更した以外は同様にして、試料21を作製した。
〔試料22の作製〕
上記試料1の作製において、添加ガスとして水素に代えて、酸素を用いた以外は同様にして、試料22を作製した。
〔試料23の作製〕
上記試料1の作製において、放電ガスを窒素(98.3体積%)に代えて、窒素が50.0体積%、アルゴンが48.3体積%からなるガス組成に変更した以外は同様にして、試料23を作製した。
《各試料の特性値の測定及び評価》
上記各薄膜形成方法で作製した試料1〜23について、薄膜形成直後の試料と、連続して薄膜形成を行った3時間後の試料とを採取し、それぞれの試料について下記の各測定及び評価を行った。
〔接触角の測定〕
各試料について、協和界面科学社製接触角計CA−Wを用いて、23℃、55%の環境下で、防汚膜表面の水に対する接触角とヘキサデカンに対する接触角を測定した。なお、測定はランダムに10カ所について行い、その平均値を求めた。
〔油性インク拭き取り性の評価〕
油性インク(ゼブラ社製 マッキー極細黒 MO−120−MC−BK)を用いて、試料表面を3mmφ塗りつぶした後、柔らかい布(旭化成社製 BEMCOT M−3 250mm×250mm)で油性インク画像を拭き取り、この操作を同一位置で20回繰り返して行い、20回拭き取り後における油性インクの残り状況を目視観察し、下記の基準に則り油性インクの拭き取り性の評価を行った。
◎:油性インクが、完全に拭き取れた
○:油性インクが、ほぼ拭き取れた
×:油性インクが、一部で拭き取られず残っている
〔表面比抵抗の測定〕
本発明の試料について、下記の方法に従って表面比抵抗値を測定した結果、全て1×1012Ω/□以下であった。
(表面比抵抗の測定方法)
試料を、23℃、55%RHの環境下で24時間調湿した後、川口電機社製のテラオームメーターモデルVE−30を用いて測定した。測定に用いた電極は、2本の電極(試料と接触する部分が1cm×5cm)を1cmの間隔で配置し、電極に試料を接触させて測定し、測定値を5倍にした値を表面比抵抗値(Ω/□)とした。
以上により得られた表面比抵抗を除く結果を、表1に示す。
Figure 2005154788
表1より明らかなように、第2電極にクリーニングフィルムを備えた大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を含有した薄膜形成ガスを用いて防汚膜を形成した本発明の試料は、比較例に対し、形成された防汚膜の撥水性、油性インクの拭き取り性に優れ、かつ連続薄膜形成を行った後の試料においても、その効果が低下することなく十分に維持されていることが分かる。
従来の薄膜形成方法で用いる対向する第1電極及び第2電極から構成される放電空間の一例を示す断面図である。 本発明の薄膜形成方法に用いる第2電極にクリーニングフィルムを備え、互いに対向する位置に配置された第1電極及び第2電極から構成される放電空間の一例を示す断面図である。 本発明に係る大気圧もしくはその近傍の圧力下でのプラズマ放電処理装置の一例を示す図である。 角柱型電極の一例を示す斜視図である。 ローラ回転電極の一例を示す斜視図である。 本発明に係る薄膜形成前、基材を放電空間に晒して薄膜形成する前処理に用いる大気圧プラズマ放電装置の一例を示す概略図である。 本発明に係る基材の表面処理に用いる大気圧プラズマ放電装置の他の一例を示す概略図である。
符号の説明
3、5 配管
4 温度調節装置
5 高周波電源
6 アース
15 基材用搬送機構
16 第1ガイドローラ
17、165、166 ニップローラ
18 第2ガイドローラ
21、211 金属母材
22、212 誘電体
23、135 ローラ回転電極
100、200、300 プラズマ放電処理装置
101、102 第2電極
101a、102a 放電面
104 第1電極
124 ガス供給部
125 ノズル本体部
126 ガス噴出部
127 クリーニングフィルム
128 加熱部材
130 クリーニングフィルム用搬送機構
131 第1フィルム用ガイドローラ
132 第2フィルム用ガイドローラ
136 角筒型固定電極群
140 印加手段
141 第1電源
142 第2電源
143 第1フィルター
144 第2フィルター
150 ガス供給手段
152 給気口
160 電極温度調節手段
164、167 ガイドローラ
170 プラズマ放電処理容器
213 中空部分
215 角部
A 放電空間
G 薄膜形成ガス
G′ 励起した薄膜形成ガス
F 基材
H 処理ガス
H′ 処理排ガス
P 送液ポンプ

Claims (20)

  1. 大気圧または大気圧近傍の圧力下で、互いに対向する第1電極及び第2電極から構成される放電空間に、薄膜形成ガスを導入し、電界を印加して該薄膜形成ガスを励起し、該励起した薄膜形成ガスに基材を晒すことにより、該基材上に薄膜を形成する薄膜形成方法において、
    該薄膜形成ガスは、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を含有し、
    該第2電極は、励起した薄膜形成ガスに直接晒されることを防止するクリーニングフィルムを有し、該クリーニングフィルムは、該第2電極の放電面に密着されながら搬送され、かつ、該基材は、該励起した薄膜形成ガスに晒される際に、該第1電極の放電面に密着されながら搬送されることを特徴とする薄膜形成方法。
  2. 前記フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
    Figure 2005154788
    〔式中、MはSi、Ti、Ge、ZrまたはSnを表し、R1〜R6は各々水素原子または一価の基を表し、R1〜R6で表される基の少なくとも1つは、フッ素原子を有する基である。jは0〜150の整数を表す。〕
  3. 前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項2に記載の薄膜形成方法。
    一般式(2)
    [Rf−X−(CH2kq−M(R10r(OR11t
    〔式中、MはSi、Ti、Ge、ZrまたはSnを表し、Rfは水素原子の少なくとも1つがフッ素原子により置換されたアルキル基またはアルケニル基を表し、Xは単なる結合手または2価の基を表す。R10はアルキル基、アルケニル基を、またR11はアルキル基、アルケニル基、アリール基を表す。また、kは0〜50の整数を表し、q+r+t=4であり、q≧1、またt≧1である。また、r≧2の時2つのR10は連結して環を形成してもよい。〕
  4. 前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項3に記載の薄膜形成方法。
    一般式(3)
    Rf−X−(CH2k−M(OR123
    〔式中、MはSi、Ti、Ge、ZrまたはSnを表し、Rfは水素原子の少なくとも1つがフッ素原子により置換されたアルキル基またはアルケニル基を表し、Xは単なる結合手または2価の基を表す。R12は、アルキル基、アルケニル基、アリール基を表し、kは0〜50の整数を表す。〕
  5. 前記フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物が、下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
    Figure 2005154788
    〔式中、MはSi、Ti、Ge、ZrまたはSnを表し、R1〜R6は各々水素原子または一価の基を表し、R1〜R6で表される基の少なくとも1つは、フッ素原子を有する基である。R7は、水素原子または置換もしくは非置換のアルキル基を表す。jは0〜150の整数を表す。〕
  6. 前記フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物が、下記一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
    一般式(5)
    [Rf−X−(CH2k−Y]m−M(R8n(OR9p
    〔式中、MはIn、Al、Sb、YまたはLaを表し、Rfは水素原子の少なくとも1つがフッ素原子により置換されたアルキル基またはアルケニル基を表す。Xは単なる結合手まはた2価の基を表し、Yは単なる結合手または酸素原子を表す。R8は置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基またはアリール基を表し、R9は置換もしくは非置換のアルキル基またはアルケニル基を表す。kは0〜50の整数を表し、m+n+p=3であり、mは少なくとも1であり、n、pはそれぞれ0〜2の整数を表す。〕
  7. 前記フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物が、下記一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
    一般式(6)
    f1(OC36m1−O−(CF2n1−(CH2p1−Z−(CH2q1−Si−(R23
    〔式中、Rf1は炭素数1〜16の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基、R2は加水分解基、Zは−OCONH−又は−O−を表し、m1は1〜50の整数、n1は0〜3の整数、p1は0〜3の整数、q1は1〜6の整数を表し、6≧n1+p1>0である。〕
  8. 前記フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物が、下記一般式(7)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
    Figure 2005154788
    〔式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基、Xはヨウ素原子または水素原子、Yは水素原子または低級アルキル基、Zはフッ素原子またはトリフルオロメチル基、R21は加水分解可能な基、R22は水素原子または不活性な一価の有機基を表し、a、b、c、dはそれぞれ0〜200の整数、eは0または1、mおよびnは0〜2の整数、pは1〜10の整数を表す。〕
  9. 前記放電空間が、前記対向する第1電極と第2電極間に高周波電界を印加することにより形成されたものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
  10. 前記薄膜形成ガスが、希ガス及び/または窒素を50体積%以上含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
  11. 前記薄膜形成ガスが、還元系ガスを0.01〜10体積%含有していることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
  12. 前記還元系ガスの少なくとも1つが、水素ガスであることを特徴とする請求項11に記載の薄膜形成方法。
  13. 前記薄膜形成ガスが、酸化系ガスを0.01〜10体積%含有していることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
  14. 前記酸化系ガスの少なくとも1つが、酸素ガスであることを特徴とする請求項13に記載の薄膜形成方法。
  15. 前記基材を放電空間または励起した放電ガスに晒して前処理を行った後、前記励起した薄膜形成ガスに基材を晒して、該基材上に薄膜を形成することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
  16. 前記薄膜を形成する基材表面が、無機化合物を含むことを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
  17. 前記薄膜を形成する基材表面の主成分が、金属酸化物であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
  18. 前記クリーニングフィルムは、前記第2電極の放電面に達するまでの搬送方向の上流側で段階的あるいは連続的に加熱され、かつ該放電面と、該放電面に連続する該放電面以外の電極対表面の少なくとも一部とに密着されながら搬送されることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
  19. 請求項1〜18のいずれか1項に記載の薄膜形成方法により得られたことを特徴とする薄膜形成体。
  20. 請求項1〜18のいずれか1項に記載の薄膜形成方法により得られた薄膜形成体であって、基材上に形成された薄膜表面の表面比抵抗値が、23℃、55%RH条件下で1×1012Ω/□以下であることを特徴とする薄膜形成体。
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JP2007017667A (ja) * 2005-07-07 2007-01-25 Konica Minolta Holdings Inc 光学フィルムとそれを用いた画像表示素子
JP2017176927A (ja) * 2016-03-28 2017-10-05 春日電機株式会社 表面処理装置

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