以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施の形態におけるプレス装置は、ガラスや樹脂のような材料から成る成形品を成形するのに適したものであり、主として、ガラス素材や樹脂素材を成形用の金型装置に投入して加熱し、軟化させた後、押圧成形するために使用されるものであるが、いかなる材料から成る成形品を成形するために使用されてもよい。すなわち、ガラスや樹脂の他に、例えば、金属、セラミクス、紙、繊維等の各種材料、又は、これらの材料を適宜混合した材料から成る成形品を成形するのに使用することができる。本実施の形態においては、説明の都合上、ガラスから成る成形品を成形する場合について説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態におけるプレス装置の構成を示す概略図である。
図において、10はプレス装置、11bは該プレス装置10のフレーム11の一部としてのベースフレーム、11aは前記プレス装置10のフレーム11の一部としてのガイドフレームである。ここで、該ガイドフレーム11aは、全体として立設する筒体の形状を有し、下端部がベースフレーム11bの上面に取り付けられている。なお、前記ベースフレーム11b及びガイドフレーム11aを統合的に説明する場合には、フレーム11として説明する。
そして、前記ガイドフレーム11aの内部において、ベースフレーム11bの上面には可動テーブル装置取り付け部材12が取り付けられ、該可動テーブル装置取り付け部材12の取り付け面としての上面には金型位置調整装置としての可動テーブル装置13が取り付けられている。該可動テーブル装置13は、例えば、X−Yテーブル装置であり、水平面(ガイドフレーム11aの長軸に垂直な面)内において移動可能な移動テーブルを備え、該移動テーブルの上面に下金型取り付け部材14が取り付けられている。さらに、該下金型取り付け部材14の上面には、金型装置における一方の金型、すなわち、固定金型としての下金型21が取り付けられている。ここで、該下金型21の上面には、後述される平面状の金型合わせ面21a、及び、成形品のほぼ下半分を形成するような形状の面から成るキャビティ21bが形成されている。
また、前記ガイドフレーム11aの内部における上部には、金型駆動部材としての上金型キャリッジ15が上下方向(ガイドフレーム11aの長軸方向)に移動可能に取り付けられている。ここで、前記上金型キャリッジ15は、循環式のボール等を備えるリニアガイド機構等から成るガイド機構16によってガイドされ、前記ガイドフレーム11aの内面に沿って、移動軌跡が水平方向にぶれることがなく、スムーズに移動することができる。また、前記上金型キャリッジ15の外面とガイドフレーム11aの内面とが常に平行に保たれ、前記上金型キャリッジ15が傾斜することもないようになっている。なお、前記ガイド機構16は、上金型キャリッジ15の外面とガイドフレーム11aの内面との間に圧力流体を注入する静圧軸受装置であってもよい。
そして、前記上金型キャリッジ15の上方には、可動金型駆動源としての駆動装置17が配設されている。なお、該駆動装置17は、図示されない取り付け部材を介して、前記ガイドフレーム11aに固定されている。また、前記駆動装置17のコネクティングロッド17aが下方に突出し、該コネクティングロッド17aの下端部には前記上金型キャリッジ15が取り付けられている。ここで、前記駆動装置17は、例えば、高圧の圧力流体によって駆動されるピストンを備えるシリンダ装置である。この場合、前記ピストンに取り付けられたピストンロッドの下端部が、前記コネクティングロッド17aの上端部に連結される。そして、シリンダ装置に供給される圧力流体の流れを切り替えることによって、前記ピストンが上方向又は下方向に駆動され、これにより、前記コネクティングロッド17a及び上金型キャリッジ15が上方向又は下方向に移動させられる。ここで、前記圧力流体は、例えば、空気であるが、窒素ガス等の他の気体であってもよいし、油等の液体であってもよい。
また、前記駆動装置17は、シリンダ装置でなく、電動モータであってもよく、例えば、リニアモータであってもよい。この場合、ロータとしての往復動部材(スライダ)の下端部が、前記コネクティングロッド17aの上端部に連結される。そして、リニアモータに供給される電流を切り替えることによって、前記スライダがステータとしての固定部材に対して上方向又は下方向に駆動され、これにより、前記コネクティングロッド17a及び上金型キャリッジ15が上方向又は下方向に移動させられる。なお、前記駆動装置17は、サーボモータ等の回転式の電動モータであってもよく、この場合、回転軸の回転は、ボールねじナット等の運動方向変換装置によって、往復動に変換されて、前記コネクティングロッド17aに伝達される。
そして、前記上金型キャリッジ15の下面に上金型取り付け部材18が取り付けられ、該上金型取り付け部材18の下面には、金型装置における他方の金型、すなわち、可動金型としての上金型22が取り付けられている。ここで、該上金型22の下面には、後述される平面状の金型合わせ面22a、及び、成形品のほぼ上半分を形成するような形状の面から成るキャビティ22bが形成されている。
また、図において、26はハンドリング装置であり、搬送アーム27a及び該搬送アーム27aの先端に取り付けられた保持装置としてのハンド装置27bを有する。なお、28は成形用の素材であり、ハンド装置27bに保持されている。前述したように、本実施の形態においては、説明の都合上、ガラスから成る成形品を成形する場合について説明するので、前記素材28はガラス素材としての硝材である。また、成形品は、レンズ、プリズム、フィルタ、ミラー等の光学素子である。
そして、前記搬送アーム27a及びハンド装置27bは、図示されない駆動装置によって駆動され、ガイドフレーム11aの側面に形成された開口11cを通って、前記ガイドフレーム11aの内部に進入し、前記素材28を型開された状態における金型装置の下金型21のキャビティ21b上に載置するようになっている。素材28が下金型21のキャビティ21b上に載置されると、前記下金型21の上方に位置している上金型22は、前記上金型キャリッジ15が下方向に移動させられることによって、下方向に移動して下金型21に接近する。続いて、上金型22の金型合わせ面22aが下金型21の金型合わせ面21aに接触して型閉が行われ、さらに、上金型22が下金型21に押圧されて型締が行われるようになっている。この場合、型閉が行われると、前記上金型22及び下金型21は、組み合わせられて一体となり、前記キャビティ22bとキャビティ21bとによって形成されるキャビティ空間内に素材28を挟み込むようになっている。なお、前記素材28は、硝材である場合、一般的に、300〜500〔℃〕程度の高温にまで加熱され、軟化した状態である。
また、前記上金型22及び下金型21の材質は、例えば、タングステン合金、ステンレス合金、超硬合金等であるが、いかなる材質であってもよい。また、前記素材28が硝材である場合、少なくとも前記キャビティ22b及びキャビティ21b上には、硝材の付着を防止するために、一層又は二層以上の薄膜が形成されていることが望ましい。該薄膜の材質は、例えば、水素化アモルファスカーボン、ダイヤモンド、窒化チタン、窒化タンタル、白金イリジウム、白金シリコン等であるが、いかなる材質であってもよい。
続いて、上金型22が下金型21に対して押圧されて型締が行われる。これにより、前記上金型22及び下金型21は、組み合わせられて一体となり、前記上金型22と下金型21との間に形成されるキャビティ空間内に挟み込まれた素材28としての硝材は、上下から押圧され、前記キャビティ空間の形状を有するガラス成形品が成形される。加圧成形終了後、前記硝材の温度がガラス転移点温度以下になるまで冷却する。この間、キャビティ空間内の硝材を上下から成形力より小さな力で押圧し続ける。そして、前記硝材の温度がガラス転移点温度以下になると、駆動装置17が作動を停止するので、前記硝材の押圧が終了する。
そして、成形品が成形されると、駆動装置17が作動し、前記上金型キャリッジ15が上方向に移動させられることによって、上金型22が上方向に移動して下金型21から離れて型開が行われ、成形品が金型装置から取り出される。なお、成形品の取り出しは、前記ハンドリング装置26によって行うこともできるし、他の装置又はオペレータの手作業によって行うこともできる。
ここで、前記可動テーブル装置13の移動テーブルの上面には、下側取り付け部材23を介して、計測光としてのレーザ光を発光する発光装置31が取り付けられている。なお、前記下側取り付け部材23は、下金型取り付け部材14に取り付けられていてもよいが、本実施の形態においては、前記移動テーブルの上面に取り付けられているものとする。また、前記上金型キャリッジ15の下面には、上側取り付け部材24を介して、前記発光装置31からのレーザ光を受光する受光装置32が取り付けられている。なお、前記上側取り付け部材24は、上金型取り付け部材18に取り付けられていてもよいが、本実施の形態においては、前記上金型キャリッジ15の下面に取り付けられているものとする。さらに、下金型21の側面には下側光路変換部材33が取り付けられ、上金型22の側面には上側光路変換部材34が取り付けられている。
そして、上金型22と下金型21との位置にズレがない状態において、前記発光装置31が発光したレーザ光は、水平光路31aを通って下側光路変換部材33に入射し、該下側光路変換部材33によって向きを上向きに変換されて上側光路変換部材34に入射し、該上側光路変換部材34によって向きを横向きに変換され、水平光路32aを通って受光装置32に入射して受光される。本実施の形態においては、該受光装置32の受光量の変化に基づいて、上金型22と下金型21との軸心ズレ量としての位置ズレ量を計測するようになっている。すなわち、前記発光装置31及び受光装置32は、前記位置ズレ量を計測する位置センサ装置の一部として機能する。
さらに、前記プレス装置10は、CPU、MPU等の演算手段、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶手段、キーボード、ジョイスティック、タッチパネル等の入力手段、CRT、液晶ディスプレイ等の表示手段、入出力インターフェイス等を備えるプレス装置用制御装置25を有する。該プレス装置用制御装置25は、一種のコンピュータであり、前記受光装置32の出力信号を受信し、可動テーブル装置13、駆動装置17、ハンドリング装置26及び発光装置31の動作を含むプレス装置10のすべての動作を制御する。
次に、下側光路変換部材33及び上側光路変換部材34の取り付け位置について説明する。
図2は本発明の第1の実施の形態における下側光路変換部材及び上側光路変換部材が取り付けられた金型装置を示す図、図3は本発明の第1の実施の形態における下側光路変換部材の構成を示す図である。なお、図2(a)は金型装置の正面図、図2(b)は図2(a)のA矢視図であり下金型の金型合わせ面を示す図、図3(a)は下側光路変換部材の側断面図、図3(b)は下側光路変換部材の正面図である。
図3(a)及び(b)に示されるように、下側光路変換部材33は、全体として四角筒状の形状を有し、上端面は微少な開口である絞り孔(あな)33aが形成された天井板によって塞(ふさ)がれ、下端側面に開口33cを備え、かつ、下端部に反射鏡33bが取り付けられている。該反射鏡33bは、図3(a)に示されるように、鏡面が下側光路変換部材33の軸方向に対して45度傾斜した状態となるように取り付けられている。これにより、前記開口33cから入射した横向きのレーザ光は、前記反射鏡33bによって反射されて下側光路変換部材33の軸方向に沿った上向きになり、絞り孔33aを通って上方向に射出される。なお、前記絞り孔33aは、下金型21とともに二次元平面であるX−Y平面内においてX−Y方向に移動する移動側の絞りとして機能する。
また、上側光路変換部材34は、前記下側光路変換部材33と同一の構成を有するものを上下逆さまにしたものである。そのため、前記上側光路変換部材34の下端面の絞り孔を通過して入射した上向きのレーザ光は、上端部に取り付けられた反射鏡によって反射されて横向きとなって射出される。なお、前記上側光路変換部材34の下端面の絞り孔は、上金型22とともにX−Y平面において静止している静止側の絞りとして機能する。
そして、図2(a)に示されるように、下側光路変換部材33は下金型21の側面に取り付けられ、上側光路変換部材34は上金型22の側面に取り付けられる。この場合、下側光路変換部材33及び上側光路変換部材34は、それぞれの軸が、下金型21及び上金型22の中心軸、すなわち、軸心の方向(図2(a)における上下方向)としてのZ軸方向に延在するように取り付けられている。
ここで、上金型22と下金型21とが正確に位置合わせされた状態、すなわち、上金型22の上下方向に延在する軸心と下金型21の上下方向に延在する軸心とが一致した状態において、下側光路変換部材33のZ軸方向に延在する中心軸と、上側光路変換部材34のZ軸方向に延在する中心軸とが一致するようになっている。これにより、上金型22と下金型21とが正確に位置合わせされた状態においては、下側光路変換部材33の上端面の絞り孔33aを通って上方向に射出されたレーザ光は、上側光路変換部材34の下端面の絞り孔を通過して上側光路変換部材34内に入射する。また、上金型22と下金型21との位置にズレが生じた場合、すなわち、軸心ズレが生じた場合には、下側光路変換部材33の上端面の絞り孔33aを通って上方向に射出されたレーザ光が、上側光路変換部材34の下端面の絞り孔を通過する際に減少することになり、上側光路変換部材34内に入射する光量も減少することになる。
そのため、図2(a)に示されるように、発光装置31が発光したレーザ光が下側光路変換部材33の開口33cに入射するように、発光装置31と下側光路変換部材33との位置関係をあらかじめ調整し、さらに、上側光路変換部材34の開口から射出したレーザ光が受光装置32に入射するように、受光装置32と上側光路変換部材34との位置関係をあらかじめ調整しておくことによって、受光装置32の受光量の変化に基づいて、上金型22と下金型21との軸心ズレ量としての位置ズレ量を計測することができる。つまり、上金型22と下金型21との位置にズレが生じた場合、すなわち、軸心ズレが生じた場合、発光装置31から水平光路31a、下側光路変換部材33、上側光路変換部材34及び水平光路32aを通って受光装置32に入射するレーザ光の光量が減少するので、受光装置32の受光量の変化に基づいて、上金型22と下金型21との軸心ズレ量としての位置ズレ量を計測することができる。この場合、発光装置31、受光装置32及び絞りが位置センサ装置を構成する。
なお、前記受光装置32は、図2(a)に示されるように、レンズ等から成る光学系32b及び受光したレーザ光を検出する受光素子32cを有する。前記光学系32bは、例えば、テレセントリック光学系であるが、いかなる種類のものであってもよい。そして、前記受光素子32cは、例えば、PD(Photo Diode)、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等から成る素子であるが、いかなる種類のものであってもよい。また、前記発光装置31は、図示されないレーザ光源及び光学系を有し、水平光路31aを形成するように収束されたレーザ光を射出する。なお、前記レーザ光源は、He−Neレーザ光源であるが、いかなる種類のものであってもよい。
また、図2(b)に示されるように、下側光路変換部材33は下金型21の側面の2箇所に取り付けられている。この場合、それぞれの下側光路変換部材33と下金型21の中心とを結ぶ直線が互いに直交するようになっている。図2(b)に示される例においては、X軸及びY軸が下金型21の側面と交差する位置に、2つの下側光路変換部材33がそれぞれ取り付けられている。なお、下側光路変換部材33は、2つ以上であれば、いくつであってもよく、例えば、図2(b)に示される例において、X軸及びY軸が下金型21の側面と交差する4箇所すべてに、取り付けられていてもよい。また、上側光路変換部材34は、上金型22の側面の前記下側光路変換部材33と対応する位置に、それぞれ取り付けられている。さらに、発光装置31及び受光装置32も下側光路変換部材33及び上側光路変換部材34のそれぞれに対応する位置に配設される。すなわち、下側光路変換部材33及び上側光路変換部材34がそれぞれ2つであれば、発光装置31及び受光装置32も2つずつ配設される。
これにより、X−Y平面内におけるX軸方向及びY軸方向に関する上金型22と下金型21との位置ズレ量を計測することができる。すなわち、X軸上の下側光路変換部材33及び上側光路変換部材34を通るレーザ光の光量の変化によってX軸方向に関する上金型22と下金型21との位置ズレ量を計測することができ、Y軸上の下側光路変換部材33及び上側光路変換部材34を通るレーザ光の光量の変化によってY軸方向に関する上金型22と下金型21との位置ズレ量を計測することができる。そして、2つの受光装置32のそれぞれによって計測された上金型22と下金型21とのX軸方向及びY軸方向に関する位置ズレ量に基づいて、上金型22及び下金型21のうちの一方が他方に対して、どちらのズレ方向にどの程度の位置ズレ量だけ移動したかを演算することができる。そのため、ズレが生じた場合、下方の金型をズレ方向と反対の方向に位置ズレ量だけ移動させることによって、位置ズレを修正することができる。
次に、前記構成のプレス装置10において金型の軸心ズレとしての位置ズレを修正するための動作について説明する。
図4は本発明の第1の実施の形態における位置ズレを修正するための制御装置の構成を示す図、図5は本発明の第1の実施の形態における位置ズレ量と受光素子の受光面積との関係を示す図である。
本実施の形態においては、図4に示されるように、プレス装置用制御装置25が、受光装置32の出力信号を信号線25bを介して取得し、前記出力信号に基づいて軸心ズレ量としての位置ズレ量及びズレ方向を演算するようになっている。ここで、前記プレス装置用制御装置25は、X軸方向に関する上金型22と下金型21との位置ズレ量を演算するX方向位置ズレ量演算部25ax、及び、Y軸方向に関する上金型22と下金型21との位置ズレ量を演算するY方向位置ズレ量演算部25ayを有する。そして、X方向位置ズレ量演算部25axは、X軸上の下側光路変換部材33及び上側光路変換部材34を通るレーザ光を受光する受光装置32の出力信号を受信して、X軸方向に関する上金型22と下金型21との位置ズレ量を演算し、該位置ズレ量だけ下金型21をズレ方向と反対の方向に移動させるための制御信号を出力する。また、Y方向位置ズレ量演算部25ayは、Y軸上の下側光路変換部材33及び上側光路変換部材34を通るレーザ光を受光する受光装置32の出力信号を受信して、Y軸方向に関する上金型22と下金型21との位置ズレ量を演算し、該位置ズレ量だけ下金型21をズレ方向と反対の方向に移動させるための制御信号を出力する。なお、受光装置32の出力信号は、受光量に比例するアナログ電圧信号である。
ここで、可動テーブル装置13は、移動テーブルをX軸方向に移動させるX方向駆動装置13ax、及び、移動テーブルをY軸方向に移動させるY方向駆動装置13ayを有する。そして、前記X方向駆動装置13axは、X方向位置ズレ量演算部25axの出力する制御信号を信号線25cを介して取得し、前記制御信号に応じた量だけ移動テーブルを移動させる。前記X方向駆動装置13ax及びY方向駆動装置13ayは、例えば、サーボモータ等の回転式の電動モータを備え、該電動モータの回転軸の回転がボールねじナット等の運動方向変換装置によって、往復動に変換されて、前記移動テーブルに伝達されるようになっているが、いかなる種類のものであってもよい。
前述したように、上金型22と下金型21とが正確に位置合わせされた状態において、発光装置31が発光したレーザ光は、水平光路31a、下側光路変換部材33、該下側光路変換部材33の上端面の絞り孔33a、上側光路変換部材34の下端面の絞り孔、前記上側光路変換部材34及び水平光路32aを通って受光装置32に入射する。すなわち、本実施の形態において、発光装置31が発光したレーザ光は、光路の途中に配設された移動側の絞りと静止側の絞りを通って受光装置32の受光素子32cの受光面に到達するようになっている。そのため、上金型22と下金型21との位置ズレ量が小さくなるにつれ、X−Y平面における移動側の絞りと静止側の絞りのズレ量が小さくなり、2つの絞りを通るレーザ光の光量が増加し、位置ズレ量が0になると前記受光素子32cの受光量が最大になる。
ところで、上金型22と下金型21とのX軸方向及びY軸方向の位置ズレ量は、上側光路変換部材34の下端面の絞り孔、すなわち、静止側の絞りと、下側光路変換部材33の上端面の絞り孔33a、すなわち、移動側の絞りとのX軸方向及びY軸方向の相対距離として表すことができる。また、前記受光素子32cの受光量は、前記受光素子32cにおけるレーザ光の受光面積として表すことができる。そのため、前記X方向位置ズレ量演算部25ax及びY方向位置ズレ量演算部25ayは、移動側の絞りと静止側の絞りとの相対距離と前記受光素子32cにおけるレーザ光の受光面積との相対関係に基づいて、上金型22と下金型21とのX軸方向及びY軸方向の位置ズレ量を演算するようになっている。
本実施の形態において、受光素子32cにおけるレーザ光の最大受光面積に対する受光面積と、絞り径に対する移動側の絞りと静止側の絞りとの相対距離との関係は、図5に示されるようになっている。なお、上側光路変換部材34の下端面の絞り孔及び下側光路変換部材33の上端面の絞り孔33aは、同一の直径を有する円形の孔である。そして、前記受光装置32の出力信号が受光量、すなわち、受光面積に比例するアナログ電圧信号であるので、前記X方向位置ズレ量演算部25ax及びY方向位置ズレ量演算部25ayは、図5に示されるような関係を利用して、前記受光装置32の出力信号に基づいて位置ズレ量を演算することができる。なお、前記移動側の絞り及び静止側の絞りの形状が円形であるので、どの方向に関しても、図5に示されるような関係を利用して、位置ズレ量を演算することができる。
また、本実施の形態において、下金型21は、可動テーブル装置13を作動させることによって水平面内において移動させることができるのに対し、上金型22は、上金型キャリッジ15によって上下方向に移動させることができても、水平面内において移動させることができないようになっている。そこで、本実施の形態においては、上金型22の位置を基準とし、上金型22と下金型21との位置にズレが生じたことが計測された場合、下金型21を移動させることによって、金型の軸心ズレとしての位置ズレを修正するようになっている。
ところで、受光装置32の出力信号が含む情報には、位置ズレ量は含まれていても、ズレ方向が含まれていない。すなわち、受光装置32の出力信号は、下金型21が上金型22に対してX軸方向及びY軸方向に関して正の方向にズレているのか負の方向にズレているのかを示していない。そこで、本実施の形態においては、下金型21をX軸方向及びY軸方向に関してそれぞれ正及び負の方向にスキャンさせながら位置ズレ量の変化を検出し、位置ズレ量が減少する方向を見出すようになっている。そして、見出された方向に前記位置ズレ量だけ移動テーブルを移動させる。これにより、下金型21をズレ方向と反対の方向に位置ズレ量だけ移動させることができる。具体的には、X方向位置ズレ量演算部25ax及びY方向位置ズレ量演算部25ayは、X方向駆動装置13ax及びY方向駆動装置13ayを駆動させて、下金型21をX軸方向及びY軸方向に関してそれぞれ正及び負の方向にスキャンさせながら、受光装置32の出力信号を受信して、位置ズレ量が減少する方向を見出す。続いて、前記X方向位置ズレ量演算部25ax及びY方向位置ズレ量演算部25ayは、見出された方向に下金型21が移動するようにX方向駆動装置13ax及びY方向駆動装置13ayを駆動させ、受光装置32の出力信号を受信して、位置ズレ量が0となるようにフィードバック制御を行う。これにより、上金型22と下金型21とのX軸方向及びY軸方向の位置ズレ量を0とすることができる。
このように、前記プレス装置用制御装置25は、可動テーブル装置13の動作を制御して、受光装置32の出力信号に基づいて演算した位置ズレ量及びズレ方向に基づいて、下金型21をズレ方向と反対の方向に位置ズレ量だけ移動させる。これにより、上金型22と下金型21との位置ズレを容易に、正確に、短時間で自動的に修正することができる。そのため、上金型22又は下金型21が損傷することを防止したり、上金型22を上下方向に移動させる上金型キャリッジ15、駆動装置17等にかかる負荷を低減することができる。さらに、下金型21のキャビティ21bと上金型22のキャビティ22bとによって形成されるキャビティ空間の形状を正確に再現することができるので、正確な外形を有する高品質の成形品を高い再現性で成形することができる。本実施の形態においては、例えば、位置ズレ量の誤差を±1.0〔μm〕以下にすることができる。そのため、上金型22と下金型21との位置ズレ量を1.0〔μm〕以下にすることができ、上金型22又は下金型21が損傷することを防止したり、上金型22を上下方向に移動させる上金型キャリッジ15、駆動装置17等にかかる負荷を低減することができる。さらに、正確な外形を有する高品質の成形品を、誤差±1.0〔μm〕以下の高い再現性で成形することができる。
なお、本実施の形態において、位置ズレ量の計測及び位置ズレの修正は、図2(a)に示されるように、上金型22の金型合わせ面22aと下金型21の金型合わせ面21aとの間がわずかに開いた状態において行われるようになっている。そして、位置ズレ量の計測及び位置ズレの修正は、成形工程の途中に行ってもよいし、成形工程の開始前又は成形工程の終了後に行ってもよい。また、位置ズレ量の計測及び位置ズレの修正を行う頻度も適宜設定することができ、例えば、各成形工程毎に行ってもよいし、所定数の成形工程毎に行ってもよいし、所定期間又は所定時間経過毎に行ってもよい。
次に、ハンドリング装置26の動作について説明する。
図6は本発明の第1の実施の形態におけるハンドリング装置のハンド装置と金型装置とを示す図である。なお、図6(a)は側面図であり、図6(b)は図6(a)のB矢視図でありハンド装置の下面図である。
ところで、高い精度で成形品の成形を行うためには、素材28を下金型21のキャビティ21b上の所定位置に正確に載置することが必要である。素材28が載置される位置が不正確であると、正確な外形を有する高品質の成形品を成形することができなくなってしまう。そこで、本実施の形態においては、素材28を下金型21のキャビティ21b上に載置する際のハンドリング装置26の保持装置としてのハンド装置27bと下金型21との位置ズレ量を計測し、ハンド装置27bを移動させて位置ズレを修正するようになっている。なお、前記素材28は、図6に示されるように、ハンド装置27bの下面に形成された凹部27c内に保持される。ここで、該凹部27cの径は、キャビティ21bと同一であるとする。
また、前記ハンド装置27bの下面には、受光装置32が取り付けられている。該受光装置32は、上金型キャリッジ15の下面に取り付けられた受光装置32と同様の構成及び機能を有するものであるが、下端面に絞りとしての図示されない絞り孔を備え、レーザ光が前記絞り孔を通って受光される点において相違する。本実施の形態においては、前記絞り孔が移動側の絞りとして機能し、下側光路変換部材33の上端面の絞り孔33aが静止側の絞りとして機能する。
そして、ハンド装置27bと下金型21とが正確に位置合わせされた状態において、下側光路変換部材33の上端面の絞り孔33aを通って上方向に射出されたレーザ光は、受光装置32の下端面の絞り孔を通過して受光装置32内に入射する。また、ハンド装置27bと下金型21との位置にズレが生じた場合、すなわち、軸心ズレが生じた場合には、下側光路変換部材33の上端面の絞り孔33aを通って上方向に射出されたレーザ光が、受光装置32の下端面の絞り孔を通過する際に減少することになり、受光装置32内に入射する光量も減少することになる。そのため、ハンド装置27bと下金型21との位置にズレが生じた場合、発光装置31から水平光路31a、下側光路変換部材33を通って受光装置32に入射するレーザ光の光量が減少するので、受光装置32の受光量の変化に基づいて、ハンド装置27bと下金型21との軸心ズレ量としての位置ズレ量を計測することができる。
また、図6(b)に示されるように、受光装置32は、それぞれが下側光路変換部材33と対応する位置に、2つ取り付けられている。この場合、それぞれの受光装置32とハンド装置27bの中心とを結ぶ直線が互いに直交するようになっている。図6(b)に示される例においては、X軸及びY軸がハンド装置27bの側面と交差する位置に、2つの受光装置32がそれぞれ取り付けられている。なお、受光装置32は、2つ以上であれば、いくつであってもよく、例えば、下側光路変換部材33が4箇所に取り付けられている場合には、すべての下側光路変換部材33にそれぞれ対応する位置に取り付けられていてもよい。なお、発光装置31も下側光路変換部材33及び受光装置32のそれぞれに対応する位置に配設される。すなわち、下側光路変換部材33及び受光装置32がそれぞれ2つであれば、発光装置31も2つ配設される。
これにより、水平面内におけるX軸方向及びY軸方向に関するハンド装置27bと下金型21との位置ズレ量を計測することができる。すなわち、前述された上金型22と下金型21との位置ズレを修正する場合と同様に、2つの受光装置32の出力信号を受信して、X軸方向及びY軸方向に関するハンド装置27bと下金型21との位置ズレ量を演算し、該位置ズレ量に基づいて、ハンド装置27bが下金型21に対して、どの程度の位置ズレ量だけズレが生じているかを演算することができる。また、ハンド装置27bをX軸方向及びY軸方向に関してそれぞれ正及び負の方向にスキャンさせながら位置ズレ量の変化を検出し、位置ズレ量が減少する方向を見出すことができる。なお、可動テーブル装置13は作動させず、下金型21を静止状態に維持するようになっている。そして、ハンド装置27bを位置ズレ量が減少する方向に位置ズレ量だけ移動させることによって、位置ズレを修正することができる。そのため、素材28を正確に位置決めして下金型21のキャビティ21b上に載置することができる。
ところで、ハンド装置27bをX軸方向及びY軸方向だけでなく、回転させる、すなわち、θ方向にも移動させることができる図示されないXYθ方向駆動装置をハンドリング装置26が有する場合には、素材28を下金型21のキャビティ21b上に載置する際に、素材28をより正確に位置決めすることができる。次に、XYθ方向駆動装置によって、素材28を高精度に位置決めする動作について説明する。
図7は本発明の第1の実施の形態における素材を高精度に位置決めする動作の手順を示す図である。
ここでは、プレス装置用制御装置25によって制御され、素材28を下金型21のキャビティ21b上の所定位置に正確に載置するハンドリング装置26の動作全体について説明する。すなわち、発光装置31、受光装置32及び絞りをそれぞれ備える一対の位置センサ装置によって一対の部材としての下金型21とハンド装置27bとの位置決めを行う位置決め方法であって、一方の部材を前記一対の部材の軸心に垂直な平面内においてX−Y方向に移動させ、一方の受光装置32の受光量が最大となる前記一方の部材の位置を見つけ出し、前記一方の受光装置32の受光量が最大となる状態を維持しながら、前記一方の部材を前記平面内においてθ方向に回転させ、他方の受光装置32の受光量が最大となる前記一方の部材の位置を見つけ出して位置決めを行う位置決め方法について説明する。なお、一方の部材を前記一対の部材の軸心に垂直な平面内においてθ方向に回転させ、一方の受光装置32の受光量が最大となる前記一方の部材の位置を見つけ出し、前記一方の受光装置32の受光量が最大となる状態を維持しながら、前記一方の部材を前記平面内においてX−Y方向に移動させ、他方の受光装置32の受光量が最大となる前記一方の部材の位置を見つけ出して位置決めを行うようにしてもよい。
具体的には、まず、プレス装置用制御装置25に制御されてハンドリング装置26が作動し、ハンド装置27bが素材28の準備位置にまで移動する。なお、前記素材28は、プレス装置10の外側における図示されない準備位置に、あらかじめ高温にまで加熱された状態で載置されているものとする。そして、ハンド装置27bは、例えば、吸着手段によって吸着したり、把持手段によって把持したりすることによって、準備位置に載置されている素材28を凹部27c内に保持する。
続いて、ハンド装置27bは、素材28を保持したまま、下金型21のキャビティ21b上の位置にまで移動させられる。この場合、プレス装置用制御装置25は、PTP(Point to Point)制御によってハンド装置27bを移動させる。また、プレス装置用制御装置25は、受光装置32の出力信号に基づいて、ハンド装置27bが受光装置32の計測可能範囲に入った(IN)か否(OFF)かを監視する。そして、計測可能範囲に入っていない場合、プレス装置用制御装置25は、引き続き、PTP制御によってハンド装置27bを下金型21のキャビティ21b上の位置にまで移動させる。
続いて、PTP制御によってハンド装置27bが下金型21のキャビティ21b上の位置にまで到達すると、受光装置32の計測可能範囲に入るので、プレス装置用制御装置25は、受光装置32の出力信号に基づいて、XYθ方向駆動装置によってハンド装置27bを移動させ、位置ズレを修正する。この場合、ハンド装置27bの凹部27cと下金型21のキャビティ21bとの位置合わせを行うようになっている。
ここで、ハンド装置27bの凹部27cと下金型21のキャビティ21bとの位置関係が、図7(a)に示されるようになっているものとする。なお、図においてC及びDは、下金型21に取り付けられた2つの下側光路変換部材33の絞り孔33a、すなわち、静止側の絞りをそれぞれ示し、C’及びD’は、前記下側光路変換部材33に対応する2つの受光装置32の絞り孔、すなわち、移動側の絞りをそれぞれ示している。まず、プレス装置用制御装置25は、XYθ方向駆動装置を作動させ、ハンド装置27bをX軸方向及びY軸方向に関してそれぞれ正及び負の方向にスキャンさせながらCとC’との位置ズレ量の変化を検出し、ハンド装置27bを位置ズレ量が減少する方向に位置ズレ量だけ移動させることによって、CとC’との位置ズレを修正する。これにより、図7(b)に示されるように、CとC’との位置が一致する。
続いて、プレス装置用制御装置25は、XYθ方向駆動装置を作動させ、ハンド装置27bをC’を中心にしてθ方向に関してそれぞれ正及び負の方向にスキャンさせながらDとD’との位置ズレ量の変化を検出し、ハンド装置27bを位置ズレ量が減少する方向に位置ズレ量だけ回転させることによって、DとD’との位置ズレを修正する。これにより、図7(c)に示されるように、DとD’との位置が一致する。その結果、ハンド装置27bの凹部27cと下金型21のキャビティ21bとの位置合わせが正確に行われる。
これにより、素材28は、下金型21のキャビティ21b上の所定位置に正確に載置される。なお、前述したような、ハンドリング装置26によって素材28を下金型21のキャビティ21b上の所定位置に載置する動作は、上金型22が上昇させられて、金型装置が型開された状態において行われる。
なお、ハンド装置27bの凹部27cと下金型21のキャビティ21bとの位置関係が、図7(a)に示されるようになっている場合、ハンド装置27bをθ方向にスキャンさせた後に、ハンド装置27bをX軸方向及びY軸方向にスキャンさせて位置ズレを修正することもできる。
このように、本実施の形態においては、可動テーブル装置13の移動テーブルの上面に下金型21とともに取り付けられた発光装置31が発光したレーザ光が、光路の途中に配設された2つの絞りを通って、上金型キャリッジ15の下面に上金型22とともに取り付けられた受光装置32によって受光され、該受光装置32の受光量を計測することによって上金型22と下金型21との軸心ズレ量としての位置ズレ量を計測するようになっている。そのため、上金型22と下金型21との位置ズレ量を正確に計測することができるので、軸心ズレとしての位置ズレを容易に、正確に、短時間で自動的に修正することができる。これにより、上金型22又は下金型21が損傷することを防止したり、上金型22を上下方向に移動させる上金型キャリッジ15、駆動装置17等にかかる負荷を低減することができる。さらに、下金型21のキャビティ21bと上金型22のキャビティ22bとによって形成されるキャビティ空間の形状を正確に再現することができるので、正確な外形を有する高品質の成形品を高い再現性で成形することができる。
また、X軸上に位置する絞りを通るレーザ光及びY軸上に位置する絞りを通るレーザ光の受光量を計測して、X軸方向及びY軸方向に関する上金型22と下金型21との位置ズレ量を計測するようになっている。そのため、上金型22及び下金型21のうちの一方が他方に対して、どちらのズレ方向にどの程度の位置ズレ量だけ移動したかを演算することができる。さらに、下金型21をX軸方向及びY軸方向に関してそれぞれ正及び負の方向にスキャンさせながら位置ズレ量の変化を検出し、位置ズレ量が減少する方向を見出すようになっている。そして、可動テーブル装置13の動作を制御して、前記位置ズレ量及びズレ方向に基づいて、下金型21をズレ方向と反対の方向に位置ズレ量だけ移動させることによって、位置ズレを確実に修正することができる。
さらに、受光装置32をハンド装置27bに取り付けることによって、素材28を下金型21のキャビティ21b上に載置する際のハンドリング装置26のハンド装置27bと下金型21との位置ズレ量を計測し、ハンド装置27bを移動させて素材28を載置する位置を修正するようになっている。そのため、素材28を下金型21のキャビティ21b上の所定位置に正確に載置することができ、高い精度で成形品の成形を行うことができる。この場合、XYθ方向駆動装置によってハンド装置27bをX軸方向、Y軸方向及びθ方向に移動させることによって、より正確に位置決めすることができる。
なお、本実施の形態においては、発光装置31が下金型21の側に取り付けられ、受光装置32が上金型22の側に取り付けられた例について説明したが、発光装置31を上金型22の側に取り付け、受光装置32を下金型21の側に取り付けることもできる。同様に、発光装置31をハンド装置27bの側に取り付け、受光装置32を下金型21の側に取り付けることもできる。すなわち、本実施の形態において、前記発光装置31は一方の金型又は該金型に連結された部材に取り付けられ、受光装置32は他方の金型又は該金型に連結された部材に取り付けられ、絞りは前記発光装置31から受光装置31までの光路の途中に配設されている。望ましくは、前記発光装置31及び受光装置32がそれぞれ複数であり、前記光路が軸心に垂直な平面を複数箇所で横切るようになっている。
また、絞りが下側光路変換部材33及び上側光路変換部材34又は受光装置32に配設された例について説明したが、レーザ光の光路の途中であれば、絞りをどこに配設してもよい。さらに、絞りが移動側の絞りと静止側の絞りの2つである例について説明したが、移動側の絞り又は静止側の絞りのいずれか1つであってもよい。もっとも、絞りは複数であることが望ましく、前記絞りの少なくとも1つが前記一方の金型又は該金型に連結された部材に取り付けられ、他の絞りの少なくとも1つが他方の金型又は該金型に連結された部材に取り付けられることが望ましい。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構成を有するものについては、同じ符号を付与することにより、その説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
図8は本発明の第2の実施の形態における位置ズレを修正するための第1の動作を示す図、図9は本発明の第2の実施の形態における位置ズレ量と受光素子の受光面積との関係を示す図である。
前記第1の実施の形態においては、2つの絞りの形状が円形である場合について説明したが、本実施の形態においては、2つの絞りの形状が矩(く)形、すなわち、長方形である場合について説明する。図8(a)において、41は移動側の絞りとしての第1絞りであり、42は静止側の絞りとしての第2絞りである。そして、第1絞り41及び第2絞り42は同一の形状及び寸法を有し、Y軸方向の寸法である長さがa、X軸方向の寸法である幅がbの長方形である。なお、第1絞り41及び第2絞り42のY軸方向の位置は互いに等しくなっている。
ここで、受光装置32における受光面積と、幅bに対する第1絞り41と第2絞り42との相対距離の関係は、図9における直線44で示されるようになっている。ここで、前記受光面積は、図8(b)に示される第1絞り41と第2絞り42のオーバーラップ部43の面積に対応する。なお、該オーバーラップ部43の面積は、2つの絞りを通過するレーザ光の通過面積に等しい。そのため、第1絞り41をX軸方向に沿って矢印Eで示される方向に移動させて、図8(b)に示されるように第2絞り42とオーバーラップさせると、受光装置32における受光面積は、直線44のように変化する。そのため、受光面積に比例する受光装置32の出力信号の大きさによって第1絞り41と第2絞り42との位置ズレ量を検出することができる。そして、第1絞り41をX軸方向に移動させて前記受光面積が最大となる位置、すなわち、受光装置32の出力信号が最大となる位置で停止させると、位置ズレ量が0になる。
ここで、前記第1絞り41及び第2絞り42の長さを2倍にすると、すなわち、2aとすると、受光装置32における受光面積は直線45のように変化する。このことから、2つの絞りの形状を移動側の絞りの移動方向に直交する方向に長くすると、受光装置32の出力ゲインが大きくなることが分かる。したがって、受光装置32の感度が低い場合であっても、2つの絞りの形状を移動側の絞りの移動方向に直交する方向に長くすることによって、位置ズレ量の計測精度を向上させることができる。
ところで、図8に示される例は、第1絞り41及び第2絞り42のY軸方向の位置が互いに等しいことを前提として、第1絞り41をX軸方向に移動させるようになっている。そのため、第1絞り41及び第2絞り42のY軸方向の位置が互いに等しくない場合には、第1絞り41をさらにY軸方向に移動させる必要がある。次に、第1絞り41及び第2絞り42の相対的位置が、X軸方向及びY軸方向にズレていると考えられる場合に位置ズレを修正する動作について説明する。
図10は本発明の第2の実施の形態における位置ズレを修正するための第2の動作を示す図である。
図10(a)に示されるように、第1絞り41が第2絞り42に対してX軸方向及びY軸方向にズレている場合、まず、第1絞り41をX軸方向に関してそれぞれ正及び負の方向にスキャンさせながら位置ズレ量の変化を検出し、位置ズレ量が減少する方向を見出すようになっている。そして、受光装置32の出力信号が最大となる位置、すなわち、X軸方向に関して位置ズレ量が0となる位置で第1絞り41停止させる。これにより、図10(b)に示されるように、第1絞り41が第2絞り42に対してY軸方向にのみズレている状態となる。
続いて、第1絞り41をY軸方向に関してそれぞれ正及び負の方向にスキャンさせながら位置ズレ量の変化を検出し、位置ズレ量が減少する方向を見出し、Y軸方向に関して位置ズレ量が0となる位置で第1絞り41停止させる。これにより、図10(c)に示されるように、第1絞り41と第2絞り42との位置が一致し、オーバーラップ部43の面積が第1絞り41及び第2絞り42の面積と等しくなる。
ところで、図10に示される例は、第1絞り41及び第2絞り42の角度が互いに等しいことを前提として、第1絞り41をX軸方向及びY軸方向に移動させるようになっている。そのため、第1絞り41及び第2絞り42の角度が互いに等しくない場合には、第1絞り41をさらに回転させる必要がある。次に、第1絞り41及び第2絞り42の相対的位置が、X軸方向、Y軸方向及びθ方向にズレていると考えられる場合に位置ズレを修正する動作について説明する。
図11は本発明の第2の実施の形態における位置ズレを修正するための第3の動作を示す図である。
図11(a)に示されるように、第1絞り41が第2絞り42に対してX軸方向、Y軸方向及びθ方向にズレている場合、まず、第1絞り41をX軸方向に関してそれぞれ正及び負の方向にスキャンさせながら位置ズレ量の変化を検出し、位置ズレ量が減少する方向を見出すようになっている。そして、受光装置32の出力信号が最大となる位置、すなわち、X軸方向に関して位置ズレ量が0となる位置で第1絞り41停止させる。これにより、図11(b)に示されるように、第1絞り41が第2絞り42に対してY軸方向及びθ方向にズレている状態となる。
続いて、第1絞り41をY軸方向に関してそれぞれ正及び負の方向にスキャンさせながら位置ズレ量の変化を検出し、位置ズレ量が減少する方向を見出し、Y軸方向に関して位置ズレ量が0となる位置で第1絞り41停止させる。これにより、図11(c)に示されるように、第1絞り41が第2絞り42に対してθ方向にのみズレている状態となる。
続いて、第1絞り41を、該第1絞り41の重心Pを中心として、回転させながら、すなわち、θ方向に関してそれぞれ正及び負の方向にスキャンさせながら位置ズレ量の変化を検出し、位置ズレ量が減少する方向を見出し、θ方向に関して位置ズレ量が0となる位置で第1絞り41停止させる。これにより、図11(d)に示されるように、第1絞り41と第2絞り42との位置が一致し、オーバーラップ部43の面積が第1絞り41及び第2絞り42の面積と等しくなる。
このように、本実施の形態においては、第1絞り41及び第2絞り42、すなわち、移動側及び静止側の絞りが長方形となっている。そのため、絞りを長くすることによって、位置ズレ量の計測精度を向上させることができる。
また、移動側の絞りをX軸方向、Y軸方向及びθ方向に移動させることによって、2つの絞りの位置を正確に一致させることができるので、レーザ光の光路を1本にすることができる。すなわち、前記第1の実施の形態においては、X軸上に位置する絞りを通るレーザ光及びY軸上に位置する絞りを通るレーザ光の受光量を計測して、X軸方向及びY軸方向に関する上金型22と下金型21との位置ズレ量を計測するようになっているので、レーザ光の光路が2本となり、発光装置31、受光装置32、絞り等が2組必要である。これに対し、本実施の形態においては、レーザ光の光路を1本にすることができるので、発光装置31、受光装置32、絞り等が1組あれば、位置ズレを確実に修正することができる。また、ハンドリング装置26のハンド装置27bと下金型21との位置ズレを修正する場合も同様である。
なお、第1絞り41及び第2絞り42の形状は、長軸方向と短軸方向の長さが相違する形状であれば、長方形以外の形状であってもよく、例えば、楕(だ)円形、三角形等であってもよく、いかなる形状であってもよい。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構成を有するものについては、同じ符号を付与することにより、その説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
図12は本発明の第3の実施の形態における発光装置、絞り及び受光装置の取り付け位置を示す第1の図、図13は本発明の第3の実施の形態における発光装置、絞り及び受光装置の取り付け位置を示す第2の図、図14は本発明の第3の実施の形態における発光装置、絞り及び受光装置の取り付け位置を示す第3の図、図15は本発明の第3の実施の形態における発光装置、絞り及び受光装置の取り付け位置を示す第4の図である。
本実施の形態においては、発光装置31、絞り及び受光装置32の取り付け位置が前記第1及び第2の実施の形態と相違する。なお、その他の点については、前記第1及び第2の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
まず、図12には、本実施の形態における第1の例が示されている。この場合、発光装置31が下金型21の側面に取り付けられ、受光装置32が上金型22の側面に取り付けられている。そして、上金型22と下金型21とが正確に位置合わせされた状態において、発光装置31から射出されたレーザ光は、上下方向に延在する光路49を通って受光装置32に入射する。さらに、絞りとしての絞り孔48aが形成された絞り部材48が、前記絞り孔48aが前記光路49上に位置するように、上金型22及び下金型21の側面にそれぞれ取り付けられる。
次に、図13には、本実施の形態における第2の例が示されている。この場合、発光装置31が下金型取り付け部材14の上面に取り付けられ、受光装置32が上金型取り付け部材18の下面に取り付けられている。そして、上金型22と下金型21とが正確に位置合わせされた状態において、発光装置31から射出されたレーザ光は、上下方向に延在する光路49を通って受光装置32に入射する。さらに、絞り孔48aが形成された絞り部材48が、前記絞り孔48aが前記光路49上に位置するように、上金型22及び下金型21の側面にそれぞれ取り付けられる。
次に、図14には、本実施の形態における第3の例が示されている。この場合、発光装置31及び下側光路変換部材51が下金型取り付け部材14の上面に取り付けられ、受光装置32及び上側光路変換部材52が上金型取り付け部材18の下面に取り付けられている。そして、上金型22と下金型21とが正確に位置合わせされた状態において、発光装置31から射出されたレーザ光は、水平光路31aを通って下側光路変換部材51の反射鏡51bによって反射されて上向きになり、上下方向に延在する光路49を通って上側光路変換部材52の反射鏡52bによって反射されて水平になり、水平光路32aを通って受光装置32に入射する。さらに、絞り孔48aが形成された絞り部材48が、絞り孔48aが前記光路49上に位置するように、下側光路変換部材51及び上側光路変換部材52にそれぞれ取り付けられる。
次に、図15には、本実施の形態における第4の例として、ハンドリング装置26のハンド装置27bと下金型21との位置ズレ量を計測するための例が示されている。この場合、発光装置31がハンド装置27bの側面に取り付けられ、下側光路変換部材51が下金型21の側面に取り付けられ、受光装置32が下金型取り付け部材14の上面に取り付けられている。そして、上金型22と下金型21とが正確に位置合わせされた状態において、発光装置31から射出されたレーザ光は、上下方向に延在する光路49を通って下側光路変換部材51の反射鏡51bによって反射されて水平になり、水平光路32aを通って受光装置32に入射する。さらに、絞り孔48aが形成された絞り部材48が、前記絞り孔48aが前記光路49上に位置するように、下側光路変換部材51に取り付けられる。
このように、本実施の形態において、発光装置31、絞り及び受光装置32は、上金型22及び下金型21又はハンド装置27bに直接取り付けることもできるし、上金型22及び下金型21又はハンド装置27bに連結され上金型22及び下金型21又はハンド装置27bとともに移動する部材に取り付けることもできる。また、発光装置31から受光装置32までのレーザ光の光路は、いかなる形態の経路を辿(たど)ってもよく、絞りは前記光路のどの部分に配設されてもよい。さらに、絞りは1つであってもよい。
ところで、前記第1〜第3の実施の形態においては、上金型22の位置を基準とし、上金型22と下金型21との位置にズレが生じたことが計測された場合、下金型21をズレ方向と反対の方向に位置ズレ量だけ移動させることによって位置ズレを修正する例について説明したが、下金型21の位置を基準として、上金型22をズレ方向と反対の方向に位置ズレ量だけ移動させることによって位置ズレを修正するようにすることもできる。さらに、下金型21を上下方向に移動させるようにすることもできる。
また、前記第1〜第3の実施の形態においては、上金型22が上下方向(垂直方向)に移動する縦置型のプレス装置について説明したが、上金型22又は下金型21が横方向(水平方向)に移動する横置型のプレス装置にも適用することができる。さらに、上金型22又は下金型21の片方のみが移動するプレス装置だけでなく、上金型22及び下金型21の両方が移動するプレス装置にも適用することができる。
さらに、前記第1〜第3の実施の形態においては、ガラスから成る成形品を成形する場合について説明したが、ガラスや樹脂のような材料から成る成形品の成形においては、成形直前に素材28を加熱したり、所定の雰囲気、例えば、不活性ガス雰囲気内においたり、また、成形直後に成形品を冷却したりする場合がある。このような場合、前記プレス装置10の周辺に加熱装置、冷却装置、不活性ガス供給装置等を配設することができる。これにより、前記素材28や成形品を不活性ガス雰囲気内で直接加熱したり冷却したり、また、下金型21上に載置されたり、上金型22と下金型21との間に形成されるキャビティ空間内に挟み込まれた素材28や成形品を加熱したり冷却したりすることが可能となる。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。