JP2005152905A - ダイカスト鋳造方法、ダイカストマシンおよびダイカストマシン用プランジャ - Google Patents

ダイカスト鋳造方法、ダイカストマシンおよびダイカストマシン用プランジャ Download PDF

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靖 岩田
Yoshio Sugiyama
義雄 杉山
Jushin Tou
ジュシン トウ
Hiroaki Iwabori
弘昭 岩堀
Masafumi Nishida
雅文 西田
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Abstract

【課題】鋳造圧力が低圧でも、ポロシティ量を減少させ得るダイカストマシンのプランジャを提供する。
【解決手段】本発明のプランジャは、金型のキャビティに連通した筒状空間を有するスリーブ内に進退可能に嵌挿されたアウタチップ(11)と、スリーブの略中央部分でアウタチップに対して進退可能なインナチップ(12)と、アウタチップを弾性保持する弾性体(21)とからなる。このプランジャを用いると、金属溶湯がキャビティへ充填完了される直前に、弾性体が収縮しインナチップが前記アウタチップに対して突出して、スリーブ内の金属溶湯がさらに加圧され得る。
【選択図】図1

Description

本発明は、アルミニウム合金やマグネシウム合金等からなる鋳物を製造するためのダイカスト鋳造方法、ダイカストマシンおよびダイカストマシン用プランジャに関するものである。
最近、各種部材の軽量化やリサイクル性等が強く要求されており、使用される材質は鋳鉄や鉄鋼等からアルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽合金へ移行している。特に、形状の複雑な部材等は鋳造用のアルミニウム合金やマグネシウム合金を用いて、ダイカスト鋳造によって製造されることが多い。ダイカスト鋳造によれば、形状の複雑な部材であっても効率的に量産でき、得られたダイカスト鋳物の寸法精度や鋳肌等も優れたものとなる。
ところで、ダイカスト鋳造は、スリーブ内に注湯された金属溶湯をプランジャで圧送して、金型に形成されたキャビティへ金属溶湯を射出し、キャビティ内に充填された金属溶湯を冷却、凝固させて行われる。ここで、ダイカスト鋳造の生産性を向上させるためには鋳物1個当たりの鋳造時間を短縮する必要がある。このため、キャビティへ充填された金属溶湯の冷却速度を高め易いコールドチャンバー式のダイカストマシンが一般的に使用される。
特開平9−295119号公報 特開2000−263209号公報 実公平7−44367号公報
ところが、コールドチャンバー式のダイカストマシンを用いた場合、スリーブに注湯された高温の金属溶湯は、低温のスリーブやそのスリーブに連なるスプール、ランナー等によって冷却され、それらの内壁面近傍で晶出を始め、プランジャによる圧送中も金属溶湯の晶出は進行する。このような金属溶湯の晶出した凝固相は強度を発現するため、プランジャの動きを徐々に妨げるようになる。特に、キャビティへの金属溶湯の充填完了直前(または凝固末期)になると、スリーブ内等における凝固相が増えて固体金属として強い強度を発現するようになる。このため、プランジャに印加する押圧力(つまり、鋳造圧力や射出圧力)が小さいと、プランジャによる金属溶湯の圧送が困難となる。その結果、キャビティ各部への金属溶湯の補給、充填が不十分となったり、金属溶湯の内圧が不足して、ダイカスト鋳物中にひけ巣やガス巣(ポロシティ)を発生させることとなる。ダイカスト鋳物の品質低下や歩留まり低下を招くこととなる。このような鋳造欠陥は、プランジャ速度を制御して空気の巻込み等を抑止したとしても十分に解決できるものではない。
勿論、プランジャに大きな押圧力を印加して、強固な壁面近傍に晶出した凝固相を破壊しつつ、金属溶湯のキャビティへの補給やその加圧を行うことも考えられる。しかし、プランジャに印加できる押圧力には限度があり、その押圧力をあまり大きくすることは現実的ではない。なぜなら、ダイカストマシン各部の強度向上等が必要となり、その大型化や高価化を招くからである。また、プランジャ等の損傷も激しくなり、ダイカスト鋳物の製造コストも上昇してしまう。
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、プランジャに印加する押圧力を抑えつつも、ポロシティ等の鋳造欠陥を少なくすることができるダイカスト鋳造方法、ダイカストマシンおよびダイカストマシン用プランジャチップを提供することを目的とする。
なお、上述した特許文献について付言しておく。特許文献1には、中央部分が突出した凸状で下側に切欠部を有するプランジャチップが開示されている。このプランジャチップがスリーブ内を移動すると、スリーブ内壁面近傍にできた凝固相(チル相)は削り取られ、その切欠部に溜め込まれる。そして、鋳物中へそのチル相が混入するのが抑止される。しかし、この一体型のプランジャチップでは、結局、単に鋳物中へのチル相の混入を抑止しているに過ぎず、プランジャに大きな押圧力を印加しない限り、十分な金属溶湯の補給、充填、加圧を行うことができず、上記課題を解決するものではない。特許文献2では、インナチップとアウタチップの2重構造からなり、アウタチップを射出スリーブ断面の必要範囲にのみ設けたプランジャを開示している。そして、最初にインナチップを前進させ、その後にアウタチップをインナチップよりも少ない量だけ前進させている。これにより、特許文献1の場合と同様に、チル相の鋳物中への混入を抑止してダイカスト鋳物の品質向上を図ると共に、金属溶湯の歩留り向上をも図っている。
しかし、インナチップで金属溶湯の実質的な圧送を行った後にアウタチップを充填完了直前に前進させるには、強固な凝固相の存在により相当大きな押圧力を必要とし、現実的には困難である。また、この特許文献2の場合でも特許文献1の場合と同様に、上記課題が解決されるものではない。特許文献3にもダブルプランジャチップが開示されているが、この場合も、先ずインナチップを駆動した後にアウタチップを駆動しており、特許文献2の場合と同様に上記課題が解決されるものではない。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、インナチップとアウタチップとからなる(ダブル)プランジャで金属溶湯を圧送してキャビティに充填する際に、従来のダイカスト鋳造方法とは異なり、少なくともアウタチップを最初に駆動して金属溶湯を押圧し、その後、インナチップのみをさらに前進させて金属溶湯を加圧することを思いつき、本発明を完成るに至った。
(ダイキャスト鋳造方法)
すなわち、本発明のダイキャスト鋳造方法は、キャビティを有する金型と、該キャビティに連通した筒状空間を有するスリーブと、該スリーブ内に進退可能に嵌挿されたアウタチップと該スリーブの略中央部分で該アウタチップに対して進退可能なインナチップとを有してなり該スリーブ内にある金属溶湯を該キャビティへ圧送するプランジャと、を備えるダイカストマシンを用いて、前記スリーブ内に金属溶湯を注湯する注湯工程と、該注湯工程後に該スリーブ内の金属溶湯を前記プランジャで圧送して前記キャビティへ充填する圧送充填工程とを行うダイカスト鋳造方法であって、
前記圧送充填工程は、少なくとも前記金属溶湯の前記キャビティへの充填完了直前に、前記インナチップを前記アウタチップに対して進行させ該スリーブ内の金属溶湯を押動して該キャビティ内に充填された金属溶湯をさらに加圧する加圧工程を備えることを特徴とする。
本発明のダイキャスト鋳造方法は、プランジャが後退してスリーブ内に形成された筒状空間に金属溶湯が注入される注湯工程と、注入されたスリーブ内の金属溶湯をプランジャで圧送してキャビティに充填する圧送充填工程とからなる。本発明のダイカスト鋳造方法が従来のものと異なるのは、圧送充填工程の末期に金属溶湯をさらに加圧する加圧工程を備える点である。この加圧工程によれば、プランジャに過大な押圧力を印加するまでもなく、充填完了直前(または凝固末期)であっても金属溶湯をさらに圧送して加圧できる。その結果、キャビティの末端等にも金属溶湯を十分に補給、充填することが可能となり、ひけ巣の発生を抑制できる。また、キャビティ内に充填された金属溶湯の内圧も高まり、金属溶湯中に含まれていた空気等は高圧縮されて押し潰され、ガス巣(ポロシティ)の生成が抑制される。つまり、プランジャに過大な押圧力を印加するまでもなく、鋳巣の少ない高品質のダイカスト鋳物が得られる。
また、圧送充填工程の末期に金属溶湯がインナチップでさらに押圧されるため、金属溶湯の歩留りも向上する。さらに、プランジャに印加する押圧力の低減は、ダイカストマシンの小型化、プランジャの長寿命化、生産性の向上等にもつながる。従って、本発明のダイカスト鋳造方法によれば、鋳巣等の鋳造欠陥の少ない良好なダイカスト鋳物が低コストで生産できるようになる。
ところで本発明の加圧工程をインナチップによる金属溶湯の押動によって行うこととしたのは次の理由による。
コールドチャンバー式のダイカストマシンを用いた場合、スリーブ内に注湯された金属溶湯は、スリーブの内壁近傍やランナー内壁近傍から晶出を開始する。つまり、金属溶湯は、スリーブ等の外周部から中央部にかけて順次凝固していく。もっとも、金属溶湯をスリーブへ注湯した後暫くの間は、スリーブの内壁近傍に生成した凝固相(チル相)は容易に剥離し得る。このため、この初期段階でプランジャ(またはアウタチップ)を前進させることは容易であり、その際に必要となるプランジャの駆動力は小さい。そして、プランジャが前進するにつれてスリーブ内は金属溶湯で充たされ、金属溶湯はキャビティへ順次圧送充填されていく。なお、この初期段階で、アウタチップのみを進行させて金属溶湯を圧送しても良いが、アウタチップとインナチップとの両方を進行させて金属溶湯を圧送すると効率的である。具体的には、プランジャの先端面が平坦状か中央部が前方に多少突出した状態でプランジャが進行する方が良い。
次に、キャビティへの金属溶湯の充填完了(金属溶湯の凝固末期でもある)が近づくと、プランジャの移動に必要となる押圧力も高まる。キャビティに充填された金属溶湯の圧力が高まることに加えて、スリーブやランナー等の内壁部から中央部にかけて強固な凝固相が増大するからである。特に、この凝固相がプランジャの進行に対して大きな抵抗となる。
ところが、インナチップの存在するスリーブの略中央部では、金属溶湯の凝固は未だ完了しておらず、インナチップの移動を拘束する強固な凝固相が殆ど存在しない。すなわち、金属溶湯の凝固が進んだ充填完了直前でも、その中央部付近の金属溶湯は液相または固液共存状態にあり流動性を有している。従って、その部分の金属溶湯ならインナチップで比較的容易に押動することが可能である。そして、インナチップでその流動性を有する金属溶湯を押圧すると、その金属溶湯はキャビティの細部にまで補給、充填されると共に金属溶湯の内圧が高まる。こうして、プランジャに印加する押圧力を過度に高めなくても、ひけ巣やガス巣等の鋳造欠陥の少ない高品質なダイカスト鋳物が容易に得られるようになった。
(ダイカストマシン)
本発明は、上記ダイカスト鋳造方法に限らず、それを実施するのに適したダイカストマシンとしても把握できる。
すなわち、本発明は、キャビティを有する金型と、該キャビティに連通した筒状空間を有するスリーブと、該スリーブ内に進退可能に嵌挿されたアウタチップと該スリーブの略中央部分で該アウタチップに対して進退可能なインナチップとを有してなり該スリーブ内にある金属溶湯を該キャビティへ圧送するプランジャと、を備えるダイカストマシンであって、前記プランジャは、少なくとも前記金属溶湯の前記キャビティへの充填完了直前に、前記インナチップを前記アウタチップに対して進行させるインナチップ進行手段を備え、該インナチップ進行手段による該インナチップの進行により前記スリーブ内の金属溶湯が押動されて前記キャビティ内に充填された金属溶湯がさらに加圧され得ることを特徴とするダイカストマシンとしても良い。
(ダイカストマシン用プランジャ)
本発明は、さらに、上記ダイカストマシン等への使用に適したダイカストマシン用プランジャとしても把握できる。
すなわち、本発明は、金型のキャビティに連通した筒状空間を有するスリーブ内に進退可能に嵌挿されたアウタチップと、該スリーブの略中央部分で該アウタチップに対して進退可能なインナチップとを備えてなり該スリーブ内にある金属溶湯を該キャビティへ圧送するダイカストマシン用プランジャであって、
さらに、前記アウタチップを弾性保持する弾性体を備えてなり、少なくとも前記キャビティへの金属溶湯の充填完了直前に、該弾性体が収縮して前記インナチップが前記アウタチップに対して進行して前記スリーブ内の金属溶湯が押動され該キャビティ内に充填された金属溶湯がさらに加圧され得ることを特徴とするダイカストマシン用プランジャとしても良い。
なお、本明細書でいうプランジャやインナチップ等の進行とは、スリーブ内の金属溶湯をキャビティへ圧送する方向にプランジャが進むことつまり前進することを意味し、プランジャの後退とは、それと逆方向にプランジャが進むことつまり後進することを意味する。
発明の実施形態を挙げて、本発明をより詳しく説明する。なお、以下の実施形態を含め、本明細書で説明する内容は、本発明に係るダイカスト鋳造方法のみならず、ダイカストマシンやダイカストマシン用プランジャにも、適宜適用できるものである。また、いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なることを断っておく。
(1)ダイカストマシンおよびそのプランジャ
本発明のダイカストマシンは、金型、スリーブ、プランジャ等を備えるが、それらの配置は問わず、縦型ダイカストマシンでも横型ダイカストマシンでも良い。
金型のキャビティ(製品部)は、単品取りできるものでも良いし複数品取りできるものでも良く、製品部の形状等は問わない。スリーブは、キャビティ容量に応じて必要となる金属溶湯を一時的に蓄えられる容量の筒状空間(円筒状に限らない)を有し、プランジャのアウタチップを内装し得る筒状体である。スリーブとして独立した部材である必要は必ずしもなく、金型やフレーム等へ直接的に筒状空間を形成したものでも良い。
プランジャは、スリーブ内を進退するプランジャチップを備え、プランジャチップはプランジャロッド等を介して駆動源である油圧機器等により駆動される。プランジャチップがスリーブ内を進退することで、スリーブ内へ金属溶湯が注湯されたり、その注湯された金属溶湯がキャビティへ圧送されたりする。プランジャチップは、スリーブ内に嵌装されているため、当然、その外形状はスリーブ内形状に沿ったものであり、通常は円柱状部材である。ここで本発明のプランジャは、単なる円柱状部材ではなく、アウタチップおよびインナチップを備えたいわゆるダブルプランジャチップである。アウタチップとインナチップとのサイズや寸法比(外径比)等は、ダイカストの鋳造条件、ダイカストマシンの仕様、使用する金属溶湯の組成や量、プランジャに印加できる押圧力、金型のキャビティ形状等によって変化し得る。
本発明では、少なくとも充填完了直前に金属溶湯をインナチップで押動できるものであれば足る。インナチップの外径があまりに大きいと、インナチップの外周側がスリーブ内壁側から発達した凝固相に当接して、インナチップの移動が妨げられ、インナチップの進行に大きな押圧力(駆動力)を必要とする。逆に、インナチップの外径があまりに小さいと、金属溶湯を十分に加圧するためには長いストロークを必要とし、充填完了直前の短時間内に本発明の加圧工程を行うことが難しい。また、インナチップの外径があまり小さいと、強度、耐久性、寿命等を確保し難くなる。従って、鋳造条件やダイカストマシンの仕様等に応じて、アウタチップおよびインナチップの寸法比等は適切に選択するのが良い。
なお、本発明のプランジャチップは、アウタチップとインナチップとが同心円状である必要はない。例えば、前述した特許文献2にもあるように、横型ダイカストマシンの場合であれば、インナチップは、横断面形状が「ひ」の字型で、上部がスリーブに内接しアウタチップの一部を兼ねたものでも良い。
本発明のプランジャチップでは、少なくとも充填完了直前にインナチップがアウタチップに対して進行するが、これは充填完了直前にインナチップの先端がアウタチップの先端よりも必ずしも前方に突出することを意味しない。例えば、アウタチップの先端が凹状であり、その内部にインナチップが配設されているような場合、インナチップの先端が充填完了直前にアウタチップの先端凹状部内で前進するだけでも良い。この場合でも、スリーブの略中央部分にある金属溶湯をインナチップで押圧できることに変わりない。勿論、金属溶湯の圧送効率や金属溶湯の歩留まりを考えれば、プランジャチップの先端は平坦面か前方に突出している方が好ましい。さらに、プランジャチップの先端が前述した特許文献1にあるような形状をしている場合、圧送充填工程の初期段階で削り取られた凝固相(チル相)は凹部に溜められるため、チル相の鋳物中への混入が抑止される。
ところで、少なくとも充填完了直前になされるインナチップによる金属溶湯の押動は、例えば、本発明のインナチップ進行手段によってなされる。ダイカストマシンがアウタチップとインナチップとを別々に独立して進退させることができる2系統の駆動源を備える場合、インナチップ進行手段はそのインナチップ側の駆動源からなる。しかし、独立した2系統の駆動源を備えるのは、ダイカストマシンの複雑化、高価格化等につながり好ましくない。そこで本発明者は、そのような欠点がなく、従来のダイカストマシンにも容易に適用できるインナチップ進行手段を新たに開発した。
このインナチップ進行手段は、駆動源と、該駆動源からインナチップおよびアウタチップに押圧力を伝達するプランジャベースと、このプランジャベースとアウタチップとの間に介装されアウタチップをプランジャベースに対して進退可能に弾性保持する弾性体とを有してなり、少なくとも前記充填完了直前に弾性体を収縮させてインナチップをアウタチップに対して進行させるものである。この弾性体は、例えば、インナチップよりも進退方向の剛性が低い低剛性体またはプランジャベースに対してアウタチップを進行方向へ付勢し得るバネ等からなる。このインナチップ進行手段について、以下に詳しく説明する。
圧送充填工程の進行につれて、金属溶湯の内圧や金属溶湯の凝固相による抵抗力が後退方向への反力としてアウタチップに作用するようになる。ここでアウタチップは、弾性体によって弾性保持された状態にあるため、その反力に応じて弾性体は収縮し、プランジャベースとアウタチップとの間隔は徐々に短縮される。そして本発明のプランジャではインナチップがアウタチップに対して進退可能であるので、プランジャベースとアウタチップとの間隔が短縮されると、相対的にインナチップがアウタチップに対して進行(つまり前方に突出)することとなる。
ここで、インナチップの相対的な進行量は、弾性体の収縮量に影響される。この収縮量は、弾性体の剛性またはバネ定数等にも依るが、圧送充填工程の初期段階ではアウタチップに作用する反力が小さいため、殆ど零か非常に小さい。しかし、圧送充填工程の末期に近づくほどその反力は大きくなり、特に、圧送充填工程の末期(つまり、充填完了直前)ではアウタチップに作用する反力が急激に大きくなり、弾性体の収縮量は急激に増加する。従って、少なくとも充填完了直前には、インナチップがアウタチップに対して相当進行して、スリーブの略中央部にある金属溶湯を十分に押動することが可能となる。
次に、本発明のインナチップ進行手段の具体的な実施形態を挙げて説明する。
図1にインナチップ進行手段の第1実施形態であるプランジャ装置100を示した。プランジャ装置100は、スリーブS内に嵌装されたプランジャPと、油圧ラム等の駆動源とからなる。ここでプランジャPは、金属溶湯を注湯する円筒状空間の一端面を形成するアウタチップ11と、インナチップ12と、プランジャベース13と、プランジャロッド14と、弾性体21とからなる。
アウタチップ11は円筒状部材であってスリーブSに往復摺動可能に内嵌されている。インナチップ12は円柱状部材であって、その先端側(図右側)はアウタチップ11の内周側に嵌装されている。そして、アウタチップ11はインナチップ12に対して相対移動可能となっている。また、アウタチップ11とインナチップ12との先端面は平坦面であり、金属溶湯の圧送前は両者の先端面は面一になっている。プランジャベース13も円柱状部材であってスリーブSに往復摺動可能に内嵌されている。このプランジャベース13の前端面(図右側の面)はインナチップ12の後端面と連結され、プランジャベース13の後端面(図左側の面)はプランジャロッド14の前端面と連結されている。
弾性体21は円筒状のシリコンゴム塊(低剛性体)からなる。この弾性体21はインナチップ12に挿着されており、その前後両端面はアウタチップ11の後端面およびプランジャベース13の前端面に当接し得る。こうして、アウタチップ11はプランジャベース13に対して弾性体21によって弾性保持されている。なお、この弾性体21が縦方向(図の左右方向)に収縮すると、弾性体21のポアソン比に応じて横方向(図の上下方向)に変形する。この横方向の変形が完全に拘束されてしまうと、弾性体21の縦方向の収縮が規制されてしまい、それ以上収縮させることが難しくなる。そこで本実施形態では、弾性体21とインナチップ12の間および弾性体21とスリーブSとの間に、予想される弾性体21の変形量を見込んだ円筒状のクリアランスを設定してある。
なお、本実施形態のプランジャPでは、便宜上、インナチップ12、プランジャベース13およびプランジャロッド14をそれぞれ別部材として説明したが、例えば、インナチップ12とプランジャベース13とは一体であっても良いし、プランジャベース13とプランジャロッド14とが一体であっても良い。さらには、それら全てをネジで締結したり溶接したりして一体とすることも可能である。但し、損傷を受け易いアウタチップ11やインナチップ12は容易に小単位で交換できるようにしておくのが好ましい。
インナチップ12の先端側の外径が均一であると、プランジャPを後退させるときに、アウタチップ11がインナチップ12から容易に脱落するおそれがある。そこで、適宜、インナチップ12またはアウタチップ11の先端部分等に抜け止めを設けるのが良い。
弾性体21には、シリコンゴムを用いた場合を説明したが、フッ化ゴム、チタン合金、鉛−スズ合金、スズ−銅合金、ビスマス、ナイロン、カドミウム、鉛、ポリエチレン、ポリスチレン、木材、Mg合金、カーボン等の高弾性材料(例えば、ヤング率Eが70GPa以下)を使用しても良い。要するに、弾性体21は、充填完了直前にインナチップ12を突出させたい分だけ収縮するものであれば良い。その弾性体21を繰返し使用することを考えれば、その収縮量が弾性体21の弾性域内であるようにすれば良い。ここで、収縮量λは、弾性体21に加わる力をF、全長L、ヤング率E、横断面積Aとすると、λ=(F・L)/(E・A)となる。さらに歪みεとすると、ε=F/(E・A)、λ=ε・Lとなる。従って、歪みεが弾性域となるように、F、EおよびAを決定し、望むインナチップ12の進行量(突出量)に応じてLを決定すれば良い。
また、インナチップ12の突出量は、インナチップ12の縦方向の剛性にも影響されるが、通常、インナチップ12は高剛性体であるためその影響は小さく、実質的には低剛性体である弾性体21の剛性によって決定される。インナチップ12(アウタチップ11も同様)には、通常、鋳鉄、特殊合金鋼、窒化鋼、ベリリウム銅合金、窒化ケイ素等の無機材料などの高剛性材料が使用され、そのヤング率Eは100GPa以上であることが多い。
図2にインナチップ進行手段の第2実施形態であるプランジャ装置200(プランジャ部分のみ)を示した。このプランジャ装置200は、プランジャ装置100の弾性体21をコイルバネ22に変更したものである。なお、プランジャ装置100と同様の部材には同じ符号を付して示してある。コイルバネ22の線形、巻数、外径等を調整することで、所望の見かけのバネ定数kを設定することができる。要求されるバネ定数kは、使用するプランジャ径(アウタチップ11の外径)、プランジャPに印加する押圧力、所望するインナチップ12の突出量等によっても異なるが、通常、バネ定数kが1〜100000N/mm内となるように適宜調整すれば良い。さらに、コイルバネ22は、皿バネを複数連結したものでも良い。この場合のバネ定数kは見かけのバネ定数となり、その見かけのバネ定数を上記範囲内とすれば良い。
図3にインナチップ進行手段の第3実施形態であるプランジャ装置300(プランジャ部分のみ)を示した。このプランジャ装置300は、プランジャ装置200のコイルバネ22を複数本のコイルバネ23に変更したものである。全体的なバネ定数kはプランジャ装置200の場合と同様に決定すれば良い。この場合も、プランジャ装置100と同様の部材には同じ符号を付して示してある。
また、図3には、アウタチップ31およびインナチップ32に抜止部を設けた場合を示した。この抜止部により、アウタチップ31がコイルバネ23により付勢された状態にあっても、または、プランジャPを後退させるときでも、アウタチップ31がインナチップ32から抜けることがない。なお、図3には、アウタチップ31の先端側に設けた環状の凹部31aとインナチップ32の先端側に設けた円板状の凸部32aとからなる抜止部を示したが、これに限られるものではない。但し、抜止部の形態はインナチップ32で金属溶湯を十分に押動できるように、その形状(例えば、凸部32aの先端面積、厚み等)や強度等を考慮する必要がある。
図4にインナチップ進行手段の第4実施形態であるプランジャ装置400(プランジャ部分のみ)を示した。この場合も、プランジャ装置300と同様の部材には同じ符号を付してある。このプランジャ装置400は、プランジャベース13とインナチップ32との間にクリアランスΔを設けたものである。詳細は図示していないが、このプランジャ装置400の場合も他のプランジャ装置と同様に、プランジャPを後退させる場合等でも、アウタチップ31やインナチップ32がプランジャベース13に追随するようにサポートしてある。
このプランジャ装置400の場合、コイルバネ23がクリアランスΔ分だけ収縮したときにインナチップ32がプランジャベース13に当接して、そこからインナチップ32がアウタチップ31に対して突出を始める。従って、コイルバネ23のバネ定数kおよびクリアランスΔを調整することにより、所望の位置やタイミングでインナチップ32による金属溶湯の押動を開始させることができる。
次に、図1に示したプランジャ装置100を用いて金属溶湯を製品部のキャビティへ圧送、充填する様子を図5(a)の(i)〜(iii)に順次示した。また、同図(b)の(i)〜(iii)に従来のプランジャ装置によって金属溶湯を製品部のキャビティへ圧送、充填する様子を示した。
図5に示すように、ダイカスト鋳造を行う場合、スリーブS内に注湯された金属溶湯は、圧送充填中にスリーブS等の内壁側から晶出して凝固相を形成する。この凝固相は、強度を発現するために、プランジャチップの進行を妨げる。従って、図5(b)のように従来のプランジャチップであれば、内部中央付近に未凝固の金属溶湯が残存しているにも拘わらず、凝固相によってプランジャチップ全体の進行が阻害されて、その未凝固の金属溶湯が金型の製品部のキャビティへ十分に圧送されない。この金属溶湯をさらに圧送しようとすると、プランジャチップに凝固相を破壊する大きな押圧力を印加することが必要となる。
これに対し、図5(a)のように本発明のプランジャチップであれば、凝固相によってアウタチップ11の進行が阻害されるとしても、インナチップ12の前方にある凝固相は僅かであり、インナチップ12の進行を阻害する程の強度を発現していない。このため、インナチップ12をアウタチップ11よりもさらに進行させることは容易である。このインナチップ12の進行によって、スリーブSの中央付近にある未凝固の金属溶湯は金属溶湯を金型の製品部のキャビティへ圧送され、金属溶湯は加圧される。従って、プランジャチップに過大な押圧力を印加するまでもなく、キャビティ各部に金属溶湯が補給、充填されてひけ巣の発生が抑止されると共に金属溶湯の内圧が高められ気泡が押し潰されてポロシティの発生が抑止される。こうして、鋳造欠陥の少ない高品質のダイカスト鋳物が容易に得られる。
(2)ダイカスト鋳造方法
本発明のダイカスト鋳造方法は、主に注湯工程と圧送充填工程とからなる。注湯工程により、毎回適量の金属溶湯がスリーブ内に注湯される。この注湯はプランジャによる吸込みにより行っても良いし、チャンバーからスリーブへ連通する通路に設けたバルブの開閉によって行っても良い。金属溶湯は、アルミニウムやマグネシウムを主成分とする鋳造合金が一般に用いられるが、その組成は問わない。また、金属溶湯は、完全な液相状態であっても良いし固液共存状態であっても良い。圧送充填工程で、スリーブ内の金属溶湯はランナー等を経由して金型の製品部のキャビティへ圧送され、キャビティ内部が金属溶湯で充填される。この圧送充填工程は射出工程といっても良い。
ところで、本発明の圧送充填工程は、前述した加圧工程を備えるため、ガス巣等の少ない(つまり、ポロシティ量の少ない)良質のダイカスト鋳物が得られるが、そのポロシティ量をさらに低減するには、圧送充填工程で空気の金属溶湯中への巻き込みを可能な限り抑制することが好ましい。このために、空気を巻き込み易い圧送充填工程の初期段階では、プランジャを低速で移動させた後、鋳造時間の短縮を図るために、プランジャを高速で移動させることが行われる。そこで本発明の圧送充填工程は、少なくとも、スリーブ内の金属溶湯をプランジャで低速圧送してキャビティへ充填する低速圧送充填工程と、低速圧送充填工程後にスリーブ内の金属溶湯をプランジャで高速圧送してキャビティへ充填する高速圧送充填工程とを備える多段階射出工程であり、加圧工程をこの高速圧送工程の末期に行うものとすると好適である。なお、低速圧送充填工程および高速圧送充填工程の「低速」および「高速」は相互間の相対的な速度差を示しているに過ぎない。
図1に示したプランジャ装置100を用いて、低速圧送充填工程と高速圧送充填工程の切替を金属溶湯がランナ内に流入したときに行った場合の鋳造圧力波形の一例を図6に示した。なお、鋳造圧力は金属溶湯の実際の圧力を示すものではなく、プランジャに印加した押圧力から換算したものである。また、低速圧送充填工程と高速圧送充填工程の切替ポイントは、スリーブ等を含めた全キャビティ容量、注湯した金属溶湯量およびプランジャの移動速度に基づいて算出したものである。勿論、金属溶湯の通路にタッチセンサ等を設けて測定することも可能である。
図6に示した圧力波形から解るように、プランジャの移動速度を切替えた際に多少鋳造圧力が高くなるとしても、殆ど零に近い状態である。従って、この段階では、アウタチップ11およびインナチップ12は一体的に移動し、インナチップ12はアウタチップ11に対して殆ど突出していない状態である。しかし、金属溶湯の充填完了が近づくにつれて鋳造圧力は急上昇する。そして、アウタチップ11が凝固相によってその移動が規制され始めると、インナチップ12が突出し始める。そして、インナチップ12による金属溶湯の押動がさらに行われる。こうして、インナチップ12を介することで、プランジャに印加された押圧力が有効に活用され、金属溶湯の圧送充填が凝固末期まで行われ、金属溶湯の内圧の実質的な向上が図られる。
ちなみに、図6には鋳造圧力が比較的高い場合を示したが、鋳造圧力が50MPa以下、40MPa以下、30MPaさらには20MPa以下であっても、類似の圧力波形が得られ、良好なダイカスト鋳物を製造することができる。
(3)用途
本発明のダイカスト鋳造方法は、種々の製品に利用できるが、例えば、以下のような製品をダイカスト鋳造する場合に好適である。すなわち、エンジンのシリンダヘッド、ピストン、シリンダブロック、カムハウジング、オイルパン、ヘッドカバー又はサスペンションアーム、サスペンションメンバー若しくはロア・アッパアーム等の足回り部品又はAピラー、Bピラー若しくはCピラー等のボディ部品又はドアインナー、ミッションケース等である。
実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
(第1実施例)
図1に示したプランジャ装置100を組み込んだ横型ダイカストマシンを用いてダイカスト鋳造を行った。弾性体21には円筒形状のシリコンゴム(高強度タイプ(KE1300T)、信越化学工業社製)を用いた。金型の製品部のキャビティ形状は、210x130x5mmの板状とした。金属溶湯はアルミニウム合金(JIS:AD12.1)で調製した。使用したダイカストマシンの仕様は次の通りである。型締力350ton、プランジャ径φ70mm、インナチップ径φ30mmで、インナチップの突出量5mmであった。
また、鋳造条件は次の通りである。
溶湯温度:640℃、
鋳造圧力:20MPa、50MPaおよび60MPa、
プランジャの移動速度:低速時が0.2m/s、高速時が1.6m/s、
プランジャの高速−低速切替ポイント:
(i)金属溶湯の先端がランナ内にあるとき、
(ii)ゲート部に到達したとき、
(iii)キャビティ内の金属溶湯がキャビティ容量の1/3に到達したとき、
冷却方法:金型内部に冷却管を配置して、そこに水を流すことで金型を冷却
なお、ここで鋳造圧力とは、プランジャを移動させる力(プランジャ圧入力)を意味し、プランジャを動かす圧入シリンダの油圧力により測定した。また、プランジャの高速−低速切替ポイントは、スリーブ、ランナおよびキャビティの容量、注湯した金属溶湯量およびプランジャ速度等に基づいて算出したものである。
各条件で得られたダイカスト鋳物の内部欠陥量(ポロシティ量)を測定した。この測定は、ダイカスト鋳物の質量(M)および体積(V)と、使用した合金の真密度(ρ0)とから求めた。つまり、(V−M/ρ0)によりポロシティの体積が求まる。これをダイカスト鋳物100g当たりに換算したものを図7に示した。
(第2実施例)
図2に示したプランジャ装置200を組み込んだ横型ダイカストマシンを用いてダイカスト鋳造を行った。キャビティ形状、鋳造条件等は第1実施例の場合と同様である。また、得られたダイカスト鋳物のポロシティ量も第1実施例と同様の方法で測定した。その結果を図8に示した。なお、プランジャ装置200のバネ22として、コイルバネではなく、同一の皿バネ10個を連結して作製したバネを使用した。その皿バネ一つの諸元は、材質:バネ鋼、外径:70mm、板厚:4.0mm、たわみ量:1.6mmである。
(比較例)
通常のシングルプランジャチップを組み込んだ横型ダイカストマシンを用いてダイカスト鋳造を行った。キャビティ形状、鋳造条件等は第1実施例の場合と同様である。また、得られたダイカスト鋳物のポロシティ量も第1実施例と同様の方法で測定した。その結果を図9に示した。
(評価)
先ず、図9に示したグラフから次のことがわかる。通常のシングルプランジャチップを用いてダイカスト鋳造した場合でも、プランジャの速度切替ポイントをランナ内→ゲート部→キャビティ内1/3と、順次遅らせる程、ダイカスト鋳物内に含まれるポロシティ量は減少していく。これは、プランジャを低速で移動させつつ金属溶湯をキャビティへ穏やかに充填することで、金属溶湯の乱れが減少して、金属溶湯内に取り込まれるガス量が減少するためと考えられる。従って、キャビティ内等に存在するガスを起因としたダイカスト鋳物中のポロシティ量は、プランジャ速度を調整することで減少させることができる。
もっとも、プランジャ速度を調整したとしても、多かれ少なかれ金属溶湯内にガスは取り込まれる。そこで、金属溶湯に鋳造圧力を印加して、金属溶湯中に取り込まれたガスを押し潰せば、ポロシティの生成は抑制される。このことは図9からも明らかである。つまり、プランジャ速度の切替ポイントに拘わらず、鋳造圧力が60MPaや50MPaの高圧であればポロシティ量は少ないのに対して、鋳造圧力が20MPaの低圧では、ポロシティ量が増加している。特に、プランジャ速度の切替ポイントがキャビティ内1/3のときに鋳造圧力を20MPaとすると、ポロシティ量は急増している。これは、プランジャによる低速充填領域を長くしたために、溶湯充填途中からスリーブ等の壁面から金属溶湯の晶出、凝固が進行したためと考えられる。つまり、鋳造圧力20MPa程度の押圧力をプランジャに印加しただけでは、その凝固相を破壊できず、その凝固相によってプランジャの移動が拘束されてガス巣を十分に押し潰すまでには金属溶湯を加圧できないためと考えられる。図10に、鋳造圧力:20MPa、切替ポイント:キャビティ内1/3の場合に得られた比較例のダイカスト鋳物のX線透過写真を示した。これから、比較例のダイカ
スト鋳物中にはガス巣が点在しているのが明らかである。
次に、上述した図9のグラフと対比しつつ、図7および図8のグラフを観ると、次のことがわかる。本発明に係るプランジャを用いてダイカスト鋳造を行うと、ほぼ全体的にポロシティ量が減少しており、鋳造圧力が20MPaのときのポロシティ量の減少量が大きい。特に、プランジャ速度の切替ポイントがキャビティ内1/3のときのポロシティ量は、著しく減少している。
これは、従来のプランジャなら、印加される押圧力(鋳造圧力)が低くてスリーブの内壁等に形成された凝固相を破壊できず、金属溶湯が巧く加圧されなかった場合でも、本発明のプランジャを使用すれば、金属溶湯への加圧が巧く行われるようになったことを意味する。すなわち、従来のプランジャではガス巣を押し潰せなかったような鋳造圧力でも、本発明のプランジャではガス巣を押し潰せ、良好なダイカスト鋳物が得られたと考えられる。図11に、鋳造圧力:20MPa、切替ポイント:キャビティ内1/3の場合に得られた第1実施例のダイカスト鋳物のX線透過写真を示す。図10と図11とを比較すれば
明らかなように、本発明に係るダイカスト鋳物では、ガス巣が大幅に減少していることがわかる。
なお、図7および図8から、本発明のプランジャ装置は弾性体の種類に拘わらず、ダイカスト鋳物のポロシティ量について同じ傾向を示すこともわかった。
(第3実施例)
プランジャ装置200のバネ22(皿バネを複数個連結したバネ)の見かけのバネ定数と連結数を種々変更して、第2実施例の場合と同様にダイカスト鋳物を製造した。鋳造圧力:20MPa、プランジャ速度の切替ポイント:キャビティ内1/3とした。
得られた各ダイカスト鋳物のポロシティ量を測定した。第2実施例と同程度の場合を○、比較例と同程度まで増加した場合をXとして、各バネ定数と共に表1に示した。なお、バネ定数は、線径、巻き数、外径を変更して調整した。
Figure 2005152905
表1の結果からわかるように、バネ定数が過小でも過大でも、良好な結果は得られなかった。バネ定数が過小な場合、プランジャの移動途中にインナチップがアウタチップに対して突出し過ぎるため、良好な結果が得られなかったと考えられる。逆に、バネ定数が過大な場合、コイルバネの収縮量が僅かとなり、充填完了直前でも金属溶湯がインナチップによって実質的に押圧されず、やはり良好な結果が得られなかったと考えられる。
本発明の第1実施形態であるプランジャ装置を示す要部断面図である。 本発明の第2実施形態であるプランジャ装置を示す要部断面図である。 本発明の第3実施形態であるプランジャ装置を示す要部断面図である。 本発明の第4実施形態であるプランジャ装置を示す要部断面図である。 金属溶湯の圧送充填工程を示す模式図であり、同図(a)は本発明のプランジャ装置(ダブルプランジャチップ)を用いた場合であり、同図(b)は従来のプランジャ装置(シングルプランジャチップ)を用いた場合である。 本発明のダイカスト鋳造方法を用いたときの鋳造圧力の変化を示すグラフである。 本発明の第1実施例に係るダイカスト鋳物のポロシティ量を示す棒グラフである。 本発明の第2実施例に係るダイカスト鋳物のポロシティ量を示す棒グラフである。 比較例に係るダイカスト鋳物のポロシティ量を示す棒グラフである。 比較例に係るダイカスト鋳物のX線透過写真(0.5倍)である。 第1実施例に係るダイカスト鋳物のX線透過写真(0.5倍)である。
符号の説明
11 アウタチップ
12 インナチップ
13 プランジャベース
14 プランジャロッド
21 弾性体(低剛性体)
100 プランジャ装置
S スリーブ
P プランジャ

Claims (7)

  1. キャビティを有する金型と、該キャビティに連通した筒状空間を有するスリーブと、該スリーブ内に進退可能に嵌挿されたアウタチップと該スリーブの略中央部分で該アウタチップに対して進退可能なインナチップとを有してなり該スリーブ内にある金属溶湯を該キャビティへ圧送するプランジャと、を備えるダイカストマシンを用いて、
    前記スリーブ内に金属溶湯を注湯する注湯工程と、該注湯工程後に該スリーブ内の金属溶湯を前記プランジャで圧送して前記キャビティへ充填する圧送充填工程とを行うダイカスト鋳造方法であって、
    前記圧送充填工程は、少なくとも前記金属溶湯の前記キャビティへの充填完了直前に、前記インナチップを前記アウタチップに対して進行させ該スリーブ内の金属溶湯を押動して該キャビティ内に充填された金属溶湯をさらに加圧する加圧工程を備えることを特徴とするダイカスト鋳造方法。
  2. 前記圧送充填工程は、少なくとも、前記スリーブ内の金属溶湯を前記プランジャで低速圧送して前記キャビティへ充填する低速圧送充填工程と、該低速圧送充填工程後に該スリーブ内の金属溶湯を該プランジャで高速圧送して該キャビティへ充填する高速圧送充填工程とを備える多段階射出工程であり、
    前記加圧工程は、該高速圧送工程の末期になされる請求項1に記載のダイカスト鋳造方法。
  3. キャビティを有する金型と、
    該キャビティに連通した筒状空間を有するスリーブと、
    該スリーブ内に進退可能に嵌挿されたアウタチップと該スリーブの略中央部分で該アウタチップに対して進退可能なインナチップとを有してなり該スリーブ内にある金属溶湯を該キャビティへ圧送するプランジャと、を備えるダイカストマシンであって、
    前記プランジャは、少なくとも前記金属溶湯の前記キャビティへの充填完了直前に、前記インナチップを前記アウタチップに対して進行させるインナチップ進行手段を備え、
    該インナチップ進行手段による該インナチップの進行により前記スリーブ内の金属溶湯が押動されて前記キャビティ内に充填された金属溶湯がさらに加圧され得ることを特徴とするダイカストマシン。
  4. 前記インナチップ進行手段は、駆動源と、該駆動源から前記インナチップおよび前記アウタチップに押圧力を伝達するプランジャベースと、該プランジャベースと該アウタチップとの間に介装され該アウタチップを該プランジャベースに対して進退可能に弾性保持する弾性体とを有してなり、
    少なくとも前記充填完了直前に該弾性体を収縮させて該インナチップを該アウタチップに対して進行させるものである請求項3に記載のダイカストマシン。
  5. 前記弾性体は、前記インナチップよりも進退方向の剛性が低い低剛性体からなる請求項4に記載のダイカストマシン。
  6. 前記弾性体は、前記プランジャベースに対して前記アウタチップを進行方向へ付勢し得るバネからなる請求項4に記載のダイカストマシン。
  7. 金型のキャビティに連通した筒状空間を有するスリーブ内に進退可能に嵌挿されたアウタチップと、
    該スリーブの略中央部分で該アウタチップに対して進退可能なインナチップとを備えてなり該スリーブ内にある金属溶湯を該キャビティへ圧送するダイカストマシン用プランジャであって、
    さらに、前記アウタチップを弾性保持する弾性体を備えてなり、
    少なくとも前記キャビティへの金属溶湯の充填完了直前に、該弾性体が収縮して前記インナチップが前記アウタチップに対して進行して前記スリーブ内の金属溶湯が押動され該キャビティ内に充填された金属溶湯がさらに加圧され得ることを特徴とするダイカストマシン用プランジャ。
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