JP2005152298A - マトリックスとその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ヒアルロン酸とコラーゲンのそれぞれの効果を相乗させることのできるマトリックスとその製造方法の提供。
【解決手段】ヒアルロン酸及び/又はその誘導体を溶解して調製した中性のヒアルロン酸水溶液及びアテロコラーゲンを溶解して調製した酸性のアテロコラーゲン水溶液を中性にしてゲル状にしたものとの混合液に、所定の熱処理を加え、凍結真空乾燥させて形成されたスポンジからなるマトリックス。特に、ヒアルロン酸水溶液とアテロコラーゲンのゲルを混合し、この混合液を熱処理したことを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】ヒアルロン酸及び/又はその誘導体を溶解して調製した中性のヒアルロン酸水溶液及びアテロコラーゲンを溶解して調製した酸性のアテロコラーゲン水溶液を中性にしてゲル状にしたものとの混合液に、所定の熱処理を加え、凍結真空乾燥させて形成されたスポンジからなるマトリックス。特に、ヒアルロン酸水溶液とアテロコラーゲンのゲルを混合し、この混合液を熱処理したことを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
この発明は、創傷被覆材に用いられるマトリックス及び培養真皮又は培養皮膚に用いられるマトリックスであって、ヒアルロン酸とアテロコラーゲンを原料として作製されるマトリックスの製造方法に関する。
特許文献1は、ヒアルロン酸又はその誘導体から実質的に構成される徐放性スポンジ物質を開示する。また、この特許文献1は、この徐放性スポンジ物質が、ヒアルロン酸又はその誘導体を含有する水溶液を温度0℃から−90℃で凍結させ、次いで−90℃から+60℃のプレート温度で加熱しながら凍結真空乾燥することによって作製されることを開示する。
特許文献2は、ヒアルロン酸の全部または部分エステル誘導体の一種又はそれらの混合物からなり、他の薬物学的活性物質を含む溶液と共に凍結真空乾燥されたスポンジ状材料からなる薬学的組成物を開示する。また、ヒアルロン酸の全部又は部分エステル誘導体の一種か又はそれらの混合物からなる出発材料を適当な溶剤に可溶化させ、凝固させ、凍結真空乾燥させてスポンジ状材料を作製し、これを活性成分溶液によって膨潤させ、再度、凍結真空乾燥させることによって作製されることを開示する。
特許文献3は、ヒアルロン酸又はその塩が、ハロメチルオキシラン化合物及びビスエポキシ化合物から選ばれた多官能性エポキシ化合物で架橋して得られ、架橋数がヒアルロン酸のグルクロン酸とN−アセチルグルコサミンからなる繰り返し二糖1,000個当り5〜20内に入るものであって、水溶性で曳糸性を有し、非ニュートン指数が0.5〜0.8であることを開示する。
特許文献4は、支持体と細胞外基質成分から作製されたスポンジからなる人工皮膚用基材を開示し、この細胞外基質成分が、コラーゲン、ゼラチン、ヒアルロン酸又はそれらの混合物であることを開示する。
特許文献5は、架橋ヒアルロン酸スポンジが、ヒアルロン酸及び/又はその誘導体の水溶液と架橋剤を混合、濃縮して、前記ヒアルロン酸及び/又はその誘導体の分子間架橋を得る工程、前記工程で得られた分子間架橋物を凍結真空乾燥させる工程、前記工程後、未反応の架橋剤を除去するために分子間架橋物をアルコールで洗浄した後、さらに、水で洗浄する工程、前記工程後、分子間架橋物を再び凍結真空乾燥して架橋ヒアルロン酸スポンジを得る工程によって作製されること開示する。また、前記架橋剤としては、具体的には、水溶性エポキシ化合物、グルタールアルデヒド等が用いられ、特に水溶性エポキシ化合物が用いられることを開示する。
特許文献6は、ヒアルロン酸及び/又はその誘導体の分子間架橋物を凍結真空乾燥させて得られる架橋ヒアルロン酸スポンジからなる二つの層と、前記架橋ヒアルロン酸スポンジ層の層間に積層されたポリマーメッシュ層とを含む架橋ヒアルロン酸スポンジ材料を開示する。
特許文献7は、ヒアルロン酸及び/又はその誘導体を主体としたヒアルロン酸スポンジと、前記ヒアルロン酸スポンジの少なくとも片面に生体由来の高分子材料からなるスポンジを積層させた細胞接着部とを備えた組織再生基材を開示する。また、その組織再生基材は、架橋剤を添加したヒアルロン酸及び/又はその誘導体の水溶液を濃縮することによりヒアルロン酸及び/又はその誘導体の分子間架橋物を得る架橋工程と、前記分子間架橋物を凍結真空乾燥することによりヒアルロン酸スポンジを得るスポンジ工程と、前記ヒアルロン酸スポンジの少なくとも片面から生体由来の高分子材料の水溶液を吸収させたあと凍結真空乾燥することにより前記細胞接着部を形成する積層工程とによって作製されることを開示する。
特許文献8は、ポリウレタンフィルム層、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系重合体からなる粘着剤層、エポキシ化合物で架橋された架橋ヒアルロン酸及び架橋アルギン酸を含むスポンジ層を順に積層してなる創傷被覆材を開示する。
特許文献9は、コラーゲン繊維からなる不織布層とコラーゲンからなるスポンジ層を有する積層構造物の表面に、ゼラチン又はヒアルロン酸を含む被覆層を有する縫合可能な組織再生誘導型癒着防止膜を開示する。また、ゼラチン又はヒアルロン酸を含む被覆層が、スポンジ状若しくはフィルム状である。さらには、ゼラチン又はヒアルロン酸を含む被覆層が、架橋されたゼラチンまたはヒアルロン酸の層であることを開示する。
特許文献10は、ヒアルロン酸及び/又はその誘導体の分子間架橋物を凍結真空乾燥させて得られる架橋ヒアルロン酸スポンジ層を有する架橋ヒアルロン酸スポンジ材料と生理活性物質とを含む創傷被覆材を開示する。また、この創傷被覆材は、ヒアルロン酸及び/又はその誘導体の水溶液に架橋剤を混合し、得られる混合物を濃縮して、前記ヒアルロン酸及び/又はその誘導体の分子間架橋物を得る工程、この工程で得られた分子間架橋物を凍結真空乾燥させる工程、この工程後の分子間架橋物をアルコールで洗浄した後、さらに水で洗浄する工程、この工程後の分子間架橋物を再び凍結真空乾燥して架橋ヒアルロン酸スポンジを得る工程によって作製されることが開示される。さらに、架橋剤としては、水溶性エポキシ化合物が開示される。尚、生理活性物質は臨床使用する際に架橋ヒアルロン酸スポンジに混合する。いわゆる、用事混合の方法で使用することを開示する。
特開平5−255124号公報
特表平8−506497号公報
特許第2501551号公報
特開平11−319068号公報
特開平11−322807号公報
特開平11−322808号公報
WO 02/45767 A1
特開2001−212224号公報
特開2000−210376号公報
特開平11−319066号公報
上述した特許文献等から、従来の創傷被覆材及び培養皮膚用基材としては、創傷面の線維芽細胞の活性化を促し、創傷治癒を促進することから、コラーゲンや、ヒアルロン酸が用いられることが開示されている。
ヒアルロン酸は、二糖繰り返し構造を有するムコ多糖の一種であり、主として動物の関節液、眼球硝子体、臍体や真皮層などの結合組織などに存在する物質であり、多量の水と結合する性質がある。損傷を受けた結合組織が修復する時には、ヒアルロン酸は組織再構築における細胞の移動を促進する作用を発現する。コラーゲンは、三重螺旋構造を有する繊維状タンパクであり、結合組織の構造を保持する物質である。結合組織の修復時には、コラーゲン及びコラーゲン由来のポリペプチドは線維芽細胞に対して走化性因子として作用する。このように、ヒアルロン酸及びコラーゲンは、創傷被覆材のマトリックス及び培養真皮又は培養皮膚のマトリックスに用いるのに大変有効な成分である。
しかしながら、従来のマトリックスにおいては、ヒアルロン酸及び/若しくはその誘導体の単独スポンジあるいはコラーゲンの単独スポンジから構成されているものが主流である。これに対して、両成分の有効性を同時に発現する目的で、両者のスポンジを2層合わせた構造のマトリックスがある(特許文献7)。この2層構造のマトリックスにおいては、両者のスポンジ層が含水時に剥離しないような物理的な工夫が考案されている。この理由は、ヒアルロン酸のスポンジは含水状態では膨潤する性質があり、一方、コラーゲンのスポンジは含水状態では収縮する性質があり、両スポンジ層が容易に剥離するからである。しかしながら、この物理的な結合を付与するためには、製造工程が複雑になる欠点がある。
このため、本発明は、ヒアルロン酸とコラーゲンを分子レベルで均一に混合した後、凍結真空乾燥により新規のマトリックスを製造する方法を提供するものである。
したがって、この発明のマトリックスは、ヒアルロン酸及び/若しくはその誘導体を溶解して調製したヒアルロン酸水溶液及びアテロコラーゲンを一旦水に溶解した後ゲル状に調製したアテロコラーゲンゲルとの混合液に、所定の熱処理を加え、凍結真空乾燥して形成されたスポンジからなることを特徴とする。特に、ヒアルロン酸水溶液とアテロコラーゲンゲルを混合して所定の熱処理を行い、均一な水溶液を調製することを特徴とする。単にヒアルロン酸水溶液とアテロコラーゲン水溶液とを混合した場合、負荷電の官能基(カルボキシル基)をもつヒアルロン酸分子と正荷電の官能基(アミノ基)を側鎖にもつアミノ酸を含むコラーゲン分子が塩結合することにより、一部不溶性となり、均一水溶液を形成することができないが、前記混合液を所定の温度で所定時間熱処理を行うことによってコラーゲンの三重螺旋構造が崩壊してポリペプチド分子鎖(熱変性コラーゲン)になるため均一水溶液を得ることができるものである。
本願発明のマトリックスの製造方法は、ヒアルロン酸水溶液を調製するヒアルロン酸水溶液調製工程;アテロコラーゲン水溶液を調製するアテロコラーゲン水溶液調製工程;前記アテロコラーゲン水溶液をゲル化させるアテロコラーゲンゲル調製工程;ヒアルロン酸水溶液にアテロコラーゲンゲルを混合し、所定の熱処理を行い、均一水溶液を調製する均一水溶液調製工程;前記均一水溶液を凍結真空乾燥してスポンジを作製するスポンジ作製工程;及び該スポンジに仕上げ処理を行う仕上げ処理工程;によって少なくとも構成される。
前記仕上げ処理工程は、前記スポンジの両面に紫外線を所定時間照射する工程及び紫外線が所定時間照射されたスポンジに乾熱滅菌処理を行う工程によって少なくとも構成される。
また、前記均一水溶液調製工程と前記仕上げ処理工程の間に、前記均一水溶液に架橋剤を添加する架橋剤添加工程と分子間架橋反応工程が終了した後、前記水溶液を凍結真空乾燥してスポンジを作製し、その後、未反応の架橋剤を不活性化して除去する洗浄脱水工程と前記洗浄脱水されたスポンジに所定量の蒸留水を含ませて、再度凍結真空乾燥させてスポンジを作製する工程とを具備する。
前記架橋剤は、水溶性エポキシ化合物であることが望ましい。
また、前記洗浄脱水工程の後に、洗浄脱水されたスポンジを、前記アテロコラーゲン水溶液に浸漬した後、急速凍結し、さらに凍結真空乾燥して、前記スポンジにアテロコラーゲンのスポンジ層を形成するアテロコラーゲンスポンジ層形成工程を具備する。
また、前記分子間架橋スポンジ製造工程後、前記仕上げ処理工程により得られたマトリックスに、濾過滅菌した酸性のアテロコラーゲン水溶液を吸収させ、中性領域に移行させてアテロコラーゲンのゲル層を形成するアテロコラーゲンゲル層形成工程を具備する。
このように、本願発明のマトリックスの基本構造は、ヒアルロン酸分子に熱変性コラーゲン分子が均一に配合されたスポンジからなる。さらには、水溶性エポキシ化合物によって分子間架橋されたスポンジからなる。そして、さらには、基本構造の表面に紫外線照射によって分子間架橋されたアテロコラーゲンのスポンジ層が複合されたスポンジからなる。さらに、この他に、基本構造の表面にアテロコラーゲンのゲル層が複合されたスポンジからなる。
以上のことから、本願発明のマトリックス製法によれば、ヒアルロン酸分子にアテロコラーゲン由来のポリペプチド分子が分子レベルで均一に複合化され、さらに、分子間架橋反応を行った場合には、ヒアルロン酸分子間、ヒアルロン酸分子とポリペプチド分子との間、ポリペプチド分子間において各々分子間架橋が導入されることから、含水時に双方の成分が分離することのない安定した構造を保持することができる。該マトリックスを生体に適用した場合には、生体内分解速度を十分にコントロールすることができる。そして、さらには、アテロコラーゲンスポンジ層あるいはアテロコラーゲンゲル層を複合化する場合には、ヒアルロン酸スポンジ内にポリペプチドが複合化されているため、アテロコラーゲンのスポンジ層あるいはゲル層とポリペプチドとの親和性が増して安定なマトリックスを提供することができる。
以下、この発明の実施例について図面により説明する。
本願発明の実施例1に係るマトリックス1は、図5(a)に示すもので、ヒアルロン酸水溶液及びアテロコラーゲンゲルの混合液を熱処理し、凍結真空乾燥させて形成されたものであり、共有結合による化学的な分子間架橋がないマトリックスである。
以下、図5(a)で示すマトリックス1の製造方法の一例を図1に示すフローチャート図に従って説明する。
ステップ100及び110において、最初に、所定の濃度のヒアルロン酸水溶液を800ml(HA水溶液)及び所定の濃度のアテロコラーゲン水溶液200ml(Col水溶液)を調製する。ここで、ヒアルロン酸水溶液pH7の条件で調製する。一方、アテロコラーゲン水溶液はpH3の条件で調製する。
ステップ120において前記酸性条件で調製したアテロコラーゲン水溶液は、pH7に調整してゲル状にする。
そして、ステップ130で、前記HA水溶液に前記Col水溶液をゲル状にしたものを混合して一部白濁した混合液を調製し、ステップ140で、この混合液をオートクレーブ内において、所定の条件(例えば、90℃〜120℃の温度で2分〜8分間)で熱処理する。そして、これによって得られた均一水溶液を室温にもどす。通常、負荷電のヒアルロン酸分子と正荷電のコラーゲン分子が塩結合することによって一部不溶性となるが、熱処理を行うことによって、コラーゲンの三重螺旋構造が崩壊されてポリペプチド分子(熱変性コラーゲン)になるため、均一水溶液を得ることができる。
その後、ステップ210において、4℃に冷却した後、さらに、-60℃のフリーザーに静置して急速凍結し、さらに凍結した混合液を凍結真空乾燥させることによってスポンジ1Aを作製する。
尚、ステップ220では、前記スポンジ1Aの両面に、紫外線を照射して熱変性コラーゲン分子間に架橋を導入するが、この実施例1ではこのステップ220は省略しても良い。
そして、ステップ230において示されるように、得られたスポンジ1Aを滅菌袋に入れ、120℃で2時間、乾熱滅菌器内に静置して滅菌し、本願発明のマトリックス1が得られるものである。このマトリックス1は、架橋剤による分子間架橋は導入されないため、創傷面において早期に分解吸収される目的の創傷被覆材のマトリックスとして使用できる。例えば、美容外科領域で行われるケミカルピーリング(軽度な化学熱傷の一種)及びレーザー治療(軽度な熱傷の一種)のような浅達性熱傷の治療を目的とした創傷被覆材として有効である。
図5(b)で示すマトリックス2は、上記スポンジ1Aのヒアルロン酸と熱変性アテロコラーゲンに分子間架橋を導入したものである。
したがって、図2に示すように、マトリックス2の製造方法は、実施例1で示された製造方法のステップ140による熱処理の後、水溶性エポキシ化合物により分子間架橋反応を行う。ステップ150で、水溶性エポキシ化合物の水溶液を調製して所定の温度に冷却する。そして、ステップ160で、前記熱処理して得られた均一水溶液を撹拌しながら、水溶性エポキシ化合物の水溶液を添加して、所定の大きさのプラスチック容器に注入し、所定の条件で乾燥機に静置して濃縮と分子間架橋反応を行う。
そして、ステップ170において、プラスチック容器に入った混合液を所定の温度に冷却した後、フリーザーに静置して急速凍結させ、さらに、凍結真空乾燥させることによってスポンジ2Aを作製する。
ステップ180では、前記スポンジにグリシン処理を行う。具体的には、前記のスポンジをグリシン水溶液に室温で所定時間浸漬して未反応のエポキシ基を不活性化する。
そして、ステップ190において、洗浄・脱水処理を行う。具体的には、前記スポンジ2Aを蒸留水に室温で所定時間浸漬し、未反応の水溶性エポキシ化合物及びグリシンを洗い出す。この実施例では、この洗浄処理を、少なくとも3回繰り返した後、スポンジ2Aを取り出して脱水する。
その後、脱水したスポンジ2Aをプラスチック容器に入れて所定量の蒸留水を加え、ステップ210において、4℃に冷却した後、さらに、-60℃のフリーザーに静置して急速凍結し、凍結真空乾燥させることによって分子間架橋スポンジ2Aを作製する。
そして、ステップ220で、前記のスポンジ2の両面に、所定時間紫外線を照射して熱変性アテロコラーゲンの分子間に架橋を導入する。
そして、ステップ230において示されるように、得られたスポンジ2Aを滅菌袋に入れ、所定の条件で乾熱滅菌器内に静置して滅菌し、本願発明のマトリックス2が得られるものである。このマトリックス2は、架橋剤による分子間架橋が導入されているため、創傷面において時間をかけて分解吸収される目的の創傷被覆材のマトリックスとして使用できる。例えば、重症熱傷の壊死組織を切除した全層皮膚欠損創への適用を目的とした創傷被覆材のマトリックスとして有効である。
図5(c)で示すマトリックス3は、上記マトリックス2にアテロコラーゲンのスポンジ層3Aを付加したことを特徴とするものである。
したがって、図3に示すように、マトリックス3の製造方法は、実施例2で示された製造方法のステップ190による洗浄脱水工程の後、ステップ200のアテロコラーゲン水溶液を吸収させる工程を設け、スポンジ2Aにアテロコラーゲンのスポンジ層を形成するようにしたものである。
具体的には、ステップ200において、所定の大きさのプラスチック容器に、前記ステップ110で調製された所定量のアテロコラーゲン水溶液(pH3)を入れ、そこに上記の脱水したスポンジ2Aを静置し、アテロコラーゲン水溶液を均一にスポンジ2Aに吸収させる。
その後、ステップ210において示されるように、4℃に冷却した後、フリーザーに静置して急速凍結し、さらに凍結真空乾燥させることによりアテロコラーゲンのスポンジ層3Aをスポンジ2Aの表面に形成することができるものである。その後、ステップ220及び230において仕上げ処理を行う。このマトリックス3は培養真皮及び培養皮膚のマトリックスとして使用される。即ち、アテロコラーゲンのスポンジ層3Aは線維芽細胞や角化細胞の足場として有効である。一般に、アテロコラーゲンの単独スポンジ層に線維芽細胞を播種するとスポンジは収縮する傾向が強い。これは、増殖中の線維芽細胞が適切な足場を確保するために含水したコラーゲン繊維を手繰り寄せる結果として生じる現象である。しかしながら、マトリックスの基本構造はヒアルロン酸を多量に含むため、ヒアルロン酸特有の含水時に膨潤する現象と相殺され、サイズが安定したマトリックスとして有用である。
図5(d)で示すマトリックス4は、上記マトリックス2にアテロコラーゲンのゲル層を付加したことを特徴とするものである。
したがって、図4に示すように、マトリックス4の製造方法は、実施例2で示された製造方法のステップ230により作製された滅菌スポンジ2Aを滅菌したプラスチック容器に入れ、所定量の培養液を加える。その後、濾過滅菌した酸性のアテロコラーゲン水溶液をスポンジ上に滴下しながら所定量加える。スポンジ内に吸収された培養液によりアテロコラーゲン水溶液のpHが中性領域に移行することにより、アテロコラーゲンの水溶液はゲル状となる(ゲル層4A)。この工程により、マトリックス4が形成される。
本発明によるマトリックスは、創傷治癒を促進する特性をもつヒアルロン酸及びコラーゲンが適当に配合されたものであるから、創傷被覆材のマトリックスとして有効であり、また、培養真皮や培養皮膚のマトリックスとしても有用である。
1,2,3,4 マトリックス
1A マトリックス1を作製する過程のスポンジ
2A マトリックス2を作製する過程のスポンジ
3A マトリックス3を作製する過程のアテロコラーゲンのスポンジ層
4A マトリックス4を作製する過程のアテロコラーゲンのゲル層
1A マトリックス1を作製する過程のスポンジ
2A マトリックス2を作製する過程のスポンジ
3A マトリックス3を作製する過程のアテロコラーゲンのスポンジ層
4A マトリックス4を作製する過程のアテロコラーゲンのゲル層
Claims (9)
- ヒアルロン酸及び/若しくはその誘導体を溶解して調製したヒアルロン酸水溶液とアテロコラーゲンを水に溶解して調製したアテロコラーゲンゲルとの混合液に、所定の熱処理を加えた後、急速凍結及び凍結真空乾燥工程を経て形成されたスポンジからなることを特徴とするマトリックス。
- 前記熱処理された混合液中のヒアルロン酸及び/若しくはその誘導体の分子とアテロコラーゲン分子は、さらに架橋剤によって分子間架橋されることを特徴とする請求項1記載のマトリックス。
- 前記スポンジは、さらにアテロコラーゲン水溶液に浸漬され、急速凍結及び凍結真空乾燥工程を経てさらにアテロコラーゲンスポンジ層との複合体になることを特徴とする請求項2記載のマトリックス。
- 前記スポンジは、さらにアテロコラーゲン水溶液に浸漬され、ゲル化工程を経てさらにアテロコラーゲンゲル層との複合体を形成することを特徴とする請求項2記載のマトリックス。
- ヒアルロン酸水溶液を調製するヒアルロン酸水溶液調製工程;
アテロコラーゲン水溶液を調製するアテロコラーゲン水溶液調製工程;
アテロコラーゲン水溶液をゲル化させるアテロコラーゲンゲル調製工程;
ヒアルロン酸水溶液にアテロコラーゲンゲルを混合し、所定の熱処理を行い、均一水溶液を調製する均一水溶液調製工程;
前記均一水溶液を急速凍結及び凍結真空乾燥してスポンジを作製するスポンジ作製工程;及び
該スポンジに仕上げ処理を行う仕上げ処理工程;
によって少なくとも構成されるマトリックスの製造方法。 - 前記仕上げ処理工程は、前記スポンジの両面に紫外線を所定時間照射する工程及び該スポンジに乾熱滅菌処理を行う工程によって少なくとも構成されることを特徴とする請求項5記載の製造方法。
- 前記均一水溶液調製工程と前記仕上げ処理工程の間に、前記均一水溶液に架橋剤を添加する架橋剤添加工程と分子間架橋反応工程が終了した後、前記水溶液を凍結真空乾燥してスポンジを作製し、その後、未反応の架橋剤を不活性化して除去する洗浄脱水工程と前記洗浄脱水されたスポンジに所定量の蒸留水を含ませて、再度凍結真空乾燥させてスポンジを作製する工程とを具備する請求項5又は6記載の製造方法。
- 前記洗浄脱水工程の後に、洗浄脱水されたスポンジを、前記アテロコラーゲン水溶液に浸漬した後、急速凍結し、さらに凍結真空乾燥して、前記スポンジにアテロコラーゲンスポンジ層を形成するコラーゲンスポンジ層形成工程を具備することを特徴とする請求項7記載の製造方法。
- 前記滅菌処理した架橋スポンジに濾過滅菌したアテロコラーゲン水溶液を含浸させてゲル化して、前記スポンジにアテロコラーゲンゲル層を形成するコラーゲンゲル層形成工程を具備することを特徴とする請求項7記載の製造方法。
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