JP2005151862A - 食害防御用保護材 - Google Patents

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Abstract

【課題】 軽くて持ち運びに便利であり、樹木への取り付けの作業性がよく、植物の成長を物理的に押さえつけることもなく、比較的長期にわたり、動物忌避作用が有効に発揮される、有害動物による食害の防御用保護材を提供する。
【解決手段】 有害動物用の忌避剤と生分解性樹脂からなる樹脂組成物が、繊維又はプラスチックからなるシート状物、繊維又はプラスチックからなる紐状物から選ばれた基材表面に固着されている食害防御用保護材。
【選択図】 図1

Description

本発明は、樹木、果実、その他野菜類などの植物を食する有害動物による、植物の食害の防御用保護材に関する。
近年、人工的な土地開発などにより、鳥獣類の居住領域が狭められ、森林においては、鹿、猿、猪、野鼠、野兎などの哺乳類、あるいは鳥類による樹木、果実、その他の植物の食害が極めて深刻な問題となってきている。
食害とは、上述したような有害動物による樹木の樹皮、芯芽(樹木の上方向に向かう生長に最も影響のある芽)、新芽、新葉、果実などの樹木類やその他の野菜や果物などに対する食害を総称して、植物の食害と称している。また、有害動物とは、上述したような哺乳類あるいは鳥類を対象としている。
(1)樹木の樹皮の食害の問題
具体的には、鹿などの獣による、樹木の樹皮の食害が極めて深刻な問題となってきている。例えば50年から100年あまりもかけて育ってきた樹木でさえ樹皮の食害により、またたくまに枯れてしまい、その被害は極めて甚大である。特に、鳥獣保護区などの指定を受けた地域においては、鹿などが数が急激に増加しはじめ、樹木の立ち枯れにより、森林が明るくなっていくと言う現象さえ見られる。
(2)幼齢木・苗木の芯芽及び新芽などの食害
また、幼齢木・苗木の芯芽及び新芽などの食害については、例えば、檜や杉の苗木はおおよそ40cmから60cm位の高さで、植樹後約3年で約140cm〜160cmに成長し、ここまで成長すると最上部のほぼ中心にある芯芽を鹿などに食べられる恐れが無くなるが、近年鹿などの数が増え植樹した苗木の芯芽や新芽が食べられる被害が多発している。今まで取られてきた防御処置は金属ネットやパネルで苗木全体を囲ったり包み込む方法が取られて来た。これらの方法は費用や手問がかかり、又風雪や動物により倒されたりして結局、芯芽などを食べられてしまう。いったん芯芽を食べられるとその苗木の上方向に向かう成長が止まり植樹の意味が無くなる。このように林業などにおいて当初の目的が果されない食害による被害が頻繁に生じている。
(3)梅ノ木などの新芽、新枝、新葉の食害の問題
次に、梅ノ木などは剪定後新しい枝が成長し2〜3年後その枝に梅の実が生る。近年その新しい枝に茂る新葉を食べる被害が多発しており、鹿などは新葉を食べるため枝を折ってしまうので梅の実の収穫量が梅の木一本につき20〜50%位減ってしまうと言う甚大な被害となっている。梅ノ木は収穫しやすくする為に木の高さを低くしており又足場(地面)もよく整備されている為、鹿などにとっては大変好ましい環境である。以前は極僅かであった被害が近年の鹿の頭数の増加で急速に大きな問題となっており有効な対策が無い状態になっているのが現状である。
(4)柿、桃、梨、林檎等の実の生る木などの果実の食害の問題
柿、桃、梨、林檎等の果実の生る木に対する果実の食害も多発しており、主に鹿、猿、猪、野鼠、野兎、等の食害が多く報告されている。猪は果実に届かない場合に、比較的細めの樹木の場合には、樹木をなぎ倒したり、折ったりして果実を食べることも多く、農家にとっての被害は極めて甚大となってきている。
(5)芋、大根、人参などの野菜類、スイカ、メロン、瓜などの地表近辺に形成される果物の食害の問題
主に鹿、猿、猪、野鼠、野兎、等による耕作地の食害が多く報告されている。
しかして、樹木における樹皮の食害を防止するため、金網の様なネット状物を、樹木の幹の鹿などの樹皮を食する動物の口が届く範囲に巻き付けて固定し、物理的に噛み切れないようにして、樹皮の食害を防止することが近年行われている。
幼齢木・苗木の芯芽及び新芽などの食害については、上述したように金属ネットやパネルで苗木全体を囲ったり包み込む方法が取られて来た。
一方、食害防御用保護材そのものではないが、有害動物忌避剤として、カプサイシン類などの辛味成分などを合成樹脂フィルムなどに含有させたものが、犬、猫、ネズミなどの有害動物忌避材料として使用できることも、知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開平9−169401号公報
しかし、このような食害防御用保護材として金網の様なネット状物を用いる場合には、少数の樹木が保護の対象であればそれほど問題にならないが、現実には、山林などにおいては、極めて多数本の樹木を保護の対象にしなければならず、その場合に、持ち運ぶ際の重量が大きくなり少しずつしか持ち運べず、作業効率が極めて悪いと言う問題がある。特に、自然林や山林の中は、自動車による自由な運搬ができないし、山林などでは、急な斜面を重量が大きな金網ネット状物を持って登るのも大変である。しかも、若い樹木に施した場合には、金網の太いものでは樹木の成長を押さえ込むと言うような問題もある。また、その取り外し・処分などにも多大な労力を必要としている。
また、幼齢木・苗木の芯芽及び新芽などの食害については、上述したように今まで取られてきた防御処置は金属ネットやパネルで苗木全体を囲ったり包み込む方法が取られて来た。これらの方法は費用や上述したような手問がかかり、又風雪や動物により倒されたりして結局、芯芽などを食べられてしまう。
梅ノ木などの新芽、新枝、新葉の食害の問題、柿、桃、梨、等の実の生る木などの果実の食害の問題は、現状ではあまり有効な対策が見当たっていない。
また、野菜類や地表近辺に形成される果物類については、金網による柵を耕作地の周囲に張り巡らして有害動物の侵入を物理的に防いでいるが、忌避剤が使用されていない場合には、忌避する臭いもないので、猪などの大きな動物には破壊されてしまったり、小さな野ねずみなどの動物には何らかの隙間から耕作地内に入り込まれてしまうことが多い。
また、通常の非生分解性の樹脂に動物の忌避剤を混合した樹脂組成物からなる忌避材料は、樹脂が生分解しないため、樹脂組成物の表面から忌避剤が揮発ないし蒸発してしまった場合に、表面部分に忌避剤が少なくなっているか、存在しなくなっている。そのため、まず、動物が舌でなめただけでは、表面に忌避剤が少ないか存在しないので、次に、噛んで破ってから忌避剤が含有されていることに気づくことになり、少なくとも忌避材料の一部が噛まれて破壊され、破壊された部分から食害が広がるという問題もある。
本発明は、食害防御用保護材としての忌避機能にも優れ、しかも、軽くて持ち運びに便利であり、持ち運びの際に、金網などより一層コンパクトに収納することも可能で、且つ取り付けの際の作業が金網などに比べてより楽にでき、植物の成長を物理的に押さえつけることもなく、しかも比較的長期にわたり、動物忌避作用が有効に発揮できる、優れた食害防御用保護材を提供することを目的とする。
更に本発明の、好ましい態様においては、上記の目的に加え、取り付けがより簡単な食害防御用保護材を提供することを目的とする。
また、本発明の、好ましい態様においては、更に、食害防御の対象となる有害動物や、目的とする植物などへの悪影響が少なく、地球環境の汚染も少ない優れた食害防御用保護材を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明の食害防御用保護材は、有害動物用の忌避剤と生分解性樹脂からなる樹脂組成物が、繊維又はプラスチックからなるシート状物、繊維又はプラスチックからなる紐状物から選ばれた基材表面に固着されていることを特徴とする。
本発明の食害防御用保護材は、忌避剤と生分解性樹脂からなる樹脂組成物が、繊維又はプラスチックからなるシート状物、繊維又はプラスチックからなる紐状物から選ばれた基材表面に固着されている。従って、生分解性樹脂成分が少しずつ表面側から生分解していくので、生分解性樹脂中に混合されている動物用の忌避剤が徐々に樹脂組成物層の表面に露出する。従って、非生分解性樹脂を用いた場合に比べて、動物用の忌避剤が表面に露出しやすくなる。よって、動物が臭いを嗅いだり、舌でなめるだけでも忌避効果を発揮でき、食害防御用保護材が噛まれて破られることをより少なくできる。
しかも本発明の食害防御用保護材は、軽くて持ち運びに便利であり、持ち運びの際に、取り付けるために所定の大きさに切断する前の連続シート状、あるいは大面積のシート状のような大きなものでも折りたたんで、金網などより一層コンパクトに収納することも可能で、且つ取り付けの際の作業が、剛性があり重みのある金網などに比べてより容易であり作業性がよく、また、不要になった場合には簡単に取り外すことができ、有害動物による食害防御用保護材としては画期的な優れた食害防御用保護材を提供できる。
更に本発明の、好ましい態様においては、上記の目的に加え、取り付けがより簡単な食害防御用保護材を提供出来る。
また、本発明の、好ましい態様においては、更に、食害防御の対象となる動物や、目的とする植物などへの悪影響が少なく、地球環境の汚染も少ない優れた食害防御用保護材を提供できる。特に、基材の素材も生分解性樹脂からなる基材を用いた場合には、その場に放置するか土中に埋めるかすると自然に分解することから、処理の手間が無く環境にも影響を与えない画期的な優れた食害防御用保護材を提供できる。
上記、本発明の食害防御用保護材において、基材が繊維又はプラスチックからなるシート状物であって、食害防御用保護材の形状がシート状である態様のものは、シート状物を樹木の樹皮を食する動物の口が届く範囲の樹木の幹などの太さなどのサイズにあわせて適宜その場でカットするなどして、樹木の幹や太い枝などに巻き付けて固定して用い、樹皮の食害を防止する場合などに好ましく使用できる。
上記、本発明の食害防御用保護材において、基材が繊維又はプラスチックからなるシート状物が、ネット状物からなるシート状物であることが好ましい。
シート状物が通常の布類(不織布、編物、織物)やプラスチックフィルムのようにネット状物に比べて網目などの隙間がないか小さいものは、通常、紫外線はかなり透過するが、紫外線以外の太陽光や、空気、水分、などの透過性が小さくなるが、ネット状物とすると、太陽光や、空気、水分、などの透過性をより必要とする場合にも容易に適用でき極めて好ましい。
上記、本発明の食害防御用保護材において、基材が繊維又はプラスチックからなるシート状物(ネット状物も含む)であって、形状が長い帯状である態様のものは、成長した樹木の果実の猿や鳥類による食害防御などに特に有効な態様であり好ましい。
上記、本発明の食害防御用保護材において、基材が繊維又はプラスチックからなるシート状物(ネット状物も含む)であって、形状が小片シート状である態様のもの、あるいは更にこれに吊り下げ用又は固定用の紐が取り付けられている態様のものは、梅ノ木などの剪定後、成長して伸びた新しい枝あるいはその近辺の元枝などに紐でぶら下げるなど簡単に取り付けることが出来、樹木の新芽、新枝、新葉の食害防御などに特に有効な態様であり好ましい。この場合には、基材シート状物として、通常の布類(不織布、編物、織物)やプラスチックフィルムのような網目の大きくないもの、網目のないものも有効に使用でき、ネット状物に比べてはるかにコストを削減でき、特に不織布やプラスチックフィルムを基材とする場合には極めてコストを安くすることができ好ましい。
上記、本発明の食害防御用保護材において、基材が繊維又はプラスチックからなるシート状物(ネット状物も含む)からなり、形状が筒状に形成されている態様のものは、上記と同様に剪定後、成長して伸びた新しい枝などに差し込んで使用したり、紐でぶら下げるなど簡単に取り付けることが出来、樹木の新芽、新枝、新葉の食害防御などに特に有効な態様であり好ましい。また、幼齢木・苗木の芯芽などの食害防御などにも有効に用いることができる。尚、剪定後、成長して伸びた新しい枝などに筒状の保護材を差し込んで使用する場合には、基材シートがネット状物からなるものを使用することが好ましい。
上記、本発明の食害防御用保護材において、基材が繊維又はプラスチックからなるシート状物(ネット状物も含む)からなり、形状が中空の略円錐台状に形成されている態様のものは、幼齢木・苗木の芯芽などの食害防御などに特に有効な態様であり好ましい。尚、この幼齢木・苗木の芯芽などの食害防御の用途に適用する場合には、シート状物がネット状物からなるものを使用することが太陽光の透過性が良好になるので特に好ましい。
なお、上記において、それぞれの態様が、どのような用途に好ましいか言及しているが、その用途のみに限定されるものではない。
上記、本発明の食害防御用保護材においては、基材の材質が、生分解性樹脂からなることが好ましい。
また、本発明の食害防御用保護材においては、基材シート状物が繊維からなるネット状物であることが好ましい。
また、本発明の食害防御用保護材においては、基材シート状物が繊維編物からなるネット状物であることが好ましい。
また、本発明の食害防御用保護材においては、基材シート状物がネット状物であって、ネットの目の大きさが4〜36メッシュ/(2.54cm)2のネット状物であることが好ましい。
また、本発明の食害防御用保護材においては、生分解性樹脂が、脂肪族ポリエステル系重合体又は脂肪族ポリエステルアミド系共重合体であることが好ましい。
また、本発明の食害防御用保護材においては、生分解性樹脂が、ポリ乳酸、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート/アジペート共重合体、ポリヒドロキシブチレート/バリレート共重合体、ポリ−β−ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、カプロラクトンと他のヒドロキシカルボン酸との共重合体から選ばれた生分解性樹脂からなることが好ましい。
また、本発明の食害防御用保護材においては、忌避剤の含有割合が忌避剤と生分解性樹脂からなる樹脂組成物の重量に基づき忌避剤0.001〜5重量%(固形分換算)であることが好ましい。
また、本発明の食害防御用保護材においては、動物用の忌避剤が、唐辛子、わさび、芥子、胡椒、又はこれらの辛味成分から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
また、本発明の食害防御用保護材においては、動物用の忌避剤が、カプサイシン類であることが好ましい。
また、本発明の食害防御用保護材においては、忌避剤と生分解性樹脂からなる樹脂組成物が、忌避剤のエマルションと生分解性樹脂エマルションとを混合して得られた樹脂組成物であることが好ましい。
本発明の食害防御用保護材は、有害動物用の忌避剤が、前述したように、前記忌避剤を含有する生分解性樹脂組成物層の表面層の生分解性樹脂成分が徐々に生分解されることにより、内部に埋もれている忌避剤が前記生分解性樹脂組成物層の表面に次々と露出してくることになる。本発明の食害防御用保護材は、保護材を取り付けて比較的短時間で、食害防御効果を発揮することができ、しかも、かかる忌避剤のみを基材表面に塗布しただけでは、風雨、日光、気温変化などにより、比較的短期間で忌避剤が分解したり、蒸発などにより消失したりするが、忌避剤が生分解性樹脂と混合されていて、徐々に、生分解性樹脂が分解してくるので、生分解性樹脂組成物層の内部に混合されている忌避剤も、生分解性樹脂の分解に応じて、表面に露出するなどの作用により、比較的長期間にわたって有効に有害動物による食害に対する防御効果を発揮することができると言う優れた機能を発揮できる。忌避剤は、直接、強烈な辛味その他の味で食害を防ぐだけでなく、動物は臭いにも敏感なので、臭いによっても当該樹木に近寄るのを避ける効果も発揮される。
しかも、本発明の食害防御用保護材は、基材として繊維又はプラスチックからなるシート状物(ネット状物も含む)、繊維又はプラスチックからなる紐状物からなるので、従来の金網ネット状物に比べて、はるかに軽くて持ち運びに便利であり、持ち運びの際に、柔らかいので、金網などより一層コンパクトにたたんで収納することも可能で、従って一度により多く持ち運ぶことができ、また樹木などの植物への取り付けの際の作業が金網ほど力を必要とせず、金網などに比べてより楽にでき、金網ほど強度が強すぎることもなく樹木の成長を物理的に押さえつけて拘束することもないと言う優れた特徴を有する。しかもネット状物や紐状物を用いた場合には、日光や、空気、雨水などが遮断されることもなく、植物への悪影響も防止できる。ネット状物以外のシート状物を用いた場合でも繊維又はプラスチックからなるシート状物なので、紫外線などは比較的透過し易い。プラスチックフィルムなどは透明ないし半透明の物が多く、織物や編物は通常それほど厚くないので紫外線を透過しやすく、不織布は必要に応じて光が一部透過するような目付けのやや小さめのもので強度も考慮したものも適宜選定できる。
シート状物(ネット状物を含む)の場合で樹皮の食害を防ぐ目的の場合には、シート状物(ネット状物を含む)を樹皮を食する動物の口が届く範囲の樹木の幹などに巻き付けて固定して用いるのが一般的である。この場合には、ネット状物を用いることが、日光や、空気、雨水などが遮断されることが少ないので好ましい。一方、紐状物の場合には、樹木を食する動物の口が届く範囲の樹木にスパイラル状にぐるぐると巻き付けて使用する使い方が一般的であるが、その時の巻き付け間隔、すなわち樹皮が露出する間隔については、樹皮を食する動物の口が入らない程度にするとよいし、例えば、右螺旋状に巻いた上に反対の角度で左螺旋状に巻き重ねて、見た目が、格子状になるように巻き付けて使用してもよい。特に、1〜2年目の若くて、細く、まだ成長が十分でない背丈の低い幼齢木や苗木などには紐状物が適用しやすい。また、成長した大きな樹木でも食害を受けやすい低い位置の細い枝などにも紐状物が適用しやすい。太い幹などにはネット状物の方が、より取り付けが簡便で、取り付け時間も少なくなる点でより好ましい。
繊維又はプラスチックからなるシート状物(ネット状物を含む)又は紐状物を構成する素材としては、特に限定されず、繊維素材としては、木綿、毛、絹、麻などの天然繊維;レーヨン、アセテートなどの再生ないし半合成繊維;ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド繊維;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの熱可塑性ポリエステル繊維;ビニロン繊維;アクリル繊維;ポリプロピレン繊維;ポリエチレン繊維などの合成繊維、プラスチックとしては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)ないしポリブチレンテレフタレート(PBT)などの熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC);ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド樹脂(PA)などが用いられるが、特に、基材自体も生分解性樹脂繊維又は生分解性プラスチックからなるネット状物又は紐状物を用いると、本発明の保護材を樹木に取り付けて放置したままでも生分解し、また、本発明の保護材を取り替える際の廃棄する保護材の処理においても廃棄や焼却の際に環境汚染が少なく好ましい。
生分解性樹脂としては、脂肪族ポリエステル系重合体又は脂肪族ポリエステルアミド系共重合体からなる生分解性樹脂が好ましく、ポリ乳酸、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート/アジペート共重合体、ポリヒドロキシブチレート/バリレート共重合体、ポリ−β−ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、カプロラクトンと他のヒドロキシカルボン酸との共重合体が好ましい。これらの生分解性樹脂は、生分解性樹脂のなかでは、比較的強度の大きい基材を作成することができ好ましい。
繊維又はプラスチックからなるシート状物としては、上記のような素材を用いた、布類(不織布、織物、編物)やフィルム、ネット状物などが挙げられ、ネット状物としては、いわゆるプラスチックネットと称される(蜜柑の小売りの際の袋状ネット状物などに用いられている)回転口金から溶融ポリマーを押し出しながら直接製網して得られるネット状物、基材が繊維からなり、繊維を織ってないしは編んでネット状物とした物などが使用され、基材が繊維からなるネット状物であるものが強度の上からも好ましく、特に繊維編物からなるネット状物は、伸縮性が大きいので、携帯する場合にはコンパクトに収納でき、嵩張らず、樹木などに取り付ける場合には、伸縮性が大きいので引っ掛かった場合などにおいても破けにくく、動物が噛んだ場合も、伸縮性があるので、伸縮性のないものに比べて噛み切りにくいので好ましい。ネット状物を構成する糸の太さは、食害防御用保護材をどのような形態とし、どのような目的で使用するかなど、食害防御用保護材の形態や使用態様によって異なるが、33〜1100dtexが好ましく、83〜330dtexがより好ましい。
ネット状物の場合には、ネットの目の大きさ(網目)も、食害防御用保護材をどのような形態とし、どのような目的で使用するかなど、食害防御用保護材の形態や使用態様によって異なるが、樹木の幹に巻きつけたり、円筒状物を枝に差し込んだり、形状が中空の略円錐台状である態様の保護材を幼齢木・苗木にかぶせて使用するような場合には、4〜36メッシュ/(2.54cm)2であることが好ましい。(2.54cm)2は1平方インチを意味しており、1平方インチ当たり、つまり2.54cm×2.54cmの面積中に何個の網目が存在するかを示した値であり、数値が小さいほど1個の網目の広さ(面積)が大きく、数値が大きいほど網目が小さくなる。このメッシュ/(2.54cm)2の数値は、通常の状態で測定する。通常の状態は、製造したネット状の保護材に特にテンションなどがかかっていない状態である。ネット状物が意図的に網目を縮めて保存されているような場合には、通常の状態に戻した状態で測定する。あまりにネット状物の網目が小さい場合には、生分解性樹脂からなるバインダーを塗布する場合に網目がふさがれてしまうおそれがあり、日光や、空気、水などの透過性が低下するおそれがある。あまりに編み目が大きすぎる場合には、編み目の開口部から、樹皮をかじりとられるおそれがある。ネットの目の大きさが、4〜36メッシュ/(2.54cm)2の範囲では、日光や、空気、水などの透過性が低下することもなく、樹皮をかじりとられるおそれもなく極めて安全な範囲であり好ましい。特に限定するものではないが、ネット状物1m2当たりの重量で(いわゆる「目付け」に相当)30〜500g/m2のものが好ましく、40〜60g/m2のものがより好ましい。尚、ネット状物の形状が小片シート状である態様のものや、略円筒状である態様のものを紐などで樹木の枝などに吊り下げて使用する態様の場合には、日光や、空気、水などの透過性はあまり問題にならないので、上記の場合より更に細かい網目のネット状物を使用することも出来る。尚、ここでのネット状物の単位面積1m2とは網目の空間も含めた面積であり、ネット状物に張力などがかかっていない状態でのネット状物の網目の空間も含めた面積1m2である。以下、「ネット状物1m2」とは、特に断らない限り同様である。
また、ネット状物におけるネットの目の形は、6角形、4角形、その他の多角形など本発明の目的が達成しうる限り任意である。
シート状物として不織布などを用いる場合には、特に限定するものではないが、1.3〜166dtex、好ましくは3.3〜22dtexの繊維を用いた不織布が好ましく、目付けは目的に応じて適宜選定すればよく、好ましくは30〜300g/m2、より好ましくは50〜100g/m2のものが好ましい。
紐状物を用いる場合には、その太さとしては特に限定するものではないが、直径で1〜20mmの範囲が好ましい。尚、扁平な紐状物の場合には、それを丸めた状態で太さを測定すればよい。紐状物としては、撚り紐、組み紐、編み紐、織り紐、スリットフィルム状物からなる紐、ガット状の紐などが挙げられる。
かかる基材に有害動物用の忌避剤と生分解性樹脂からなる樹脂組成物を固着するが、樹脂組成物に使用する生分解性樹脂としては、前記基材の素材のところで説明したと同様の生分解性樹脂が好ましく用いられる。
基材に前記生分解性樹脂組成物を固着するには、特に限定するものではないが、前記生分解性樹脂組成物の水性エマルションを作成し、基材に塗布し乾燥することが好ましい。基材に前記生分解性樹脂組成物の水性エマルションを塗布する方法としては、特に限定するものではないが、通常、適宜の濃度に調整した生分解性樹脂組成物の水性エマルション中に基材を浸し引き上げる、いわゆるディッピング法で容易に塗布可能であるが、これに限定されるものではなく、基材に前記生分解性樹脂組成物を塗布できる方法であれば、吹き付け、ローラー塗布、刷毛塗り、その他特に限定されない。ディッピング法の場合などは、適宜マングルなどを通して絞り、生分解性樹脂組成物の水性エマルションの付着量を調整することもできる。
上記忌避剤と生分解性樹脂からなる樹脂組成物の水性エマルションは、例えば、忌避剤の水性エマルションを作成し、それと生分解性樹脂の水性エマルションとを混合して製造することが好ましい。
忌避剤と生分解性樹脂からなる樹脂組成物中の忌避剤の配合割合としては、忌避剤と生分解性樹脂からなる樹脂組成物の重量(固形分換算)に対し、忌避剤の重量(固形分換算)が0.001〜5重量%が好ましく、より好ましくは、0.005〜2重量%、更に好ましくは、0.01〜1重量%に調整して使用することが好ましい。
忌避剤の配合割合は、上記の範囲とすることにより、忌避剤の割合が少なすぎて、動物を忌避する機能が低下しすぎたり、忌避剤の割合が多すぎて樹脂組成物の強度が低下しすぎるなどの問題もなく、好適である。
忌避剤と混合する生分解性樹脂の水性エマルションの濃度も、生分解性樹脂の種類や、基材への付着量などによっても異なるが、含有固形分濃度で30〜70重量%に調整して使用することが好ましい。生分解性樹脂の水性エマルションとして上記範囲の濃度のエマルションを用いることにより、あまりにも濃度が高すぎて、忌避剤との混合がしにくくなったり、基材への塗布がしにくくなるとか、あまりにも濃度が低すぎて、基材への付着量が十分な範囲にしにくいなどの問題もなく好ましい。通常、かかる、生分解性樹脂の水性エマルションは、市販されているので、入手可能である。尚、必要に応じて、生分解性樹脂の可塑剤、その他の添加剤などを添加してもよい。
動物用の忌避剤は、種類によっても異なるので、特に限定するものではないが、そのままかあるいは適宜の溶媒で希釈されたものを同様にエマルションにして生分解性樹脂の水性エマルションと混合することが好ましい。すなわち特に限定するものではないが、動物用の忌避剤も水性エマルションの状態で生分解性樹脂の水性エマルションと混合することが特に好ましい。
動物用の忌避剤をエマルションにする場合に用いる界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、非イオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤が好適に使用可能である。
非イオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類などが挙げられ、アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホサクシネートナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム類などが挙げられる。
動物用の忌避剤の水性エマルションの濃度は、忌避剤の種類や混合する生分解性樹脂の種類やその水性エマルションの濃度などに応じて、適宜調整すればよく、特に限定するものではないが、忌避剤(固形分換算)の濃度で好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.3〜1重量%の範囲である。
また、用いられる有害動物用の忌避剤としては、唐辛子、わさび、芥子、胡椒、などの香辛料又はこれらの辛味成分(抽出物や、合成品)など天然植物由来のものが、有害動物に無害であり、地球環境を汚染する恐れもなく好ましく、唐辛子中に含まれる辛味成分のカプサイシン類は、きわめて辛味が強く、臭いも強めであり、有害動物に無害であり、地球環境を汚染する恐れもなく特に好ましい。カプサイシン類などの辛味成分は、化学的に合成されたものも、動物や環境に悪影響を与えないものであれば用いることが可能である。通常は、これらの香辛料の辛味成分の抽出物やその化学合成品が好適に用いられる。これらは、必要に応じて、適宜、溶媒で希釈して用いてもよい。希釈溶媒としては、例えば、エチルアルコール、メチルアルコール、へキサン、キシレン、プロピオン酸エステルなどが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
そしてこれらを上述したように水性エマルションにして用いることが好ましい。水性エマルションの水性媒体としては、水が好適である。
かくして得られた動物の忌避剤と前記生分解性樹脂からなる生分解性樹脂組成物の基材への固着量は特に限定するものではなく、基材の種類、太さ、ネット状物の場合には、ネットの目の大きさ(網目の大きさ)、忌避剤の種類や含有割合などによって異なるので、本発明の目的が達成できる範囲で任意に選定すればよい。ネット状物の場合には具体的には、乾燥後の生分解性樹脂組成物が基材1m2当たりで5〜150g/m2が好ましく、10〜50g/m2がより好ましい。尚、ここで言う1m2当たりの固着量は、ネット状物の場合には、ネット状物にテンションがかかっていない状態でネット状物の網目の空間を含めた単位面積1m2当たりの、忌避剤と前記生分解性樹脂からなる生分解性樹脂組成物の基材への固着量である。ネット状物以外のシート状物の場合にも、完全にシート状物表面をバインダーで覆い尽くすことは必ずしも必要ではなく、一部未塗布の部分があってもよい。尚、このようにネット状物以外のシート状物の場合における生分解性樹脂バインダーの塗布量は、生分解性樹脂バインダー固形分で25〜300g/m2が好ましく、40〜130g/m2がより好ましい。また、基材が紐状物の場合には、紐状物の太さや種類、使用の仕方(用途)などによってかなり異なるが、具体的には、乾燥後の生分解性樹脂組成物で1〜50g/mが好ましく、3〜40g/mがより好ましい(紐状物の場合には、紐状物の長さ当たりの生分解性樹脂バインダー固形分付着量とした)。
生分解性樹脂樹脂組成物の固着量は、どの程度の期間の忌避効果が要求されるかによってその最低限に必要な量以上を調整すればよく、また、あまりに生分解性樹脂組成物の固着量が多すぎて、保護材が剛直になり過ぎて折りたたんだり巻き取ったりする際に取り扱いにくくなったり、ネット状物を基材に用いた場合にネットの網目が詰まってしまったりするほど無理に塗布する必要性やメリットも特にない。
しかして、本発明の食害防御用保護材においては、前記動物用の忌避剤を含有する生分解性樹脂組成物層の表面に露出している忌避剤は、風雨、日光、気温変化などにより、比較的短期間で忌避剤有効成分が分解したり、雨で流されたり、あるいは蒸発などにより消失した場合でも、徐々に、生分解性樹脂成分が分解していくので、生分解性樹脂組成物層の内部に含有されている忌避剤が次々と表面側に現れることになり、約1〜3年もしくはそれ以上の比較的長期間にわたって食害防御効果を発揮することができ好ましい。
また、忌避剤の種類によって異なるが、カプサイシンからなる忌避剤に注目した場合に、忌避剤の量に換算すると、基材への忌避剤の付着量は基材1m2あたり、1〜20g程度が好ましく、より好ましくは2〜8g程度となるようにすることが好適である。
上記、本発明の食害防御用保護材において、基材が繊維又はプラスチックからなるシート状物(ネット状物を含む)であって、形状がシート状である態様のものは、シート状物(ネット状物を含む)を樹木の樹皮を食する動物の口が届く範囲の樹木の幹などに巻き付けて固定して用いることができる。この場合に、シート状物(ネット状物を含む)の大きさは、それぞれの樹木の幹の太さによって、当該樹木の幹を一周する程度の大きさにカットして用いる。高さは、鹿などの樹皮を食する動物の口が届く範囲より少し高めになるような大きさとすればよい。シート状物がネット状物からなるシート状物は、太陽光や、空気、水分、などの透過性が優れており極めて好ましい。樹木の幹への固定の方法は任意であるが、通常、当該シート状物(ネット状物を含む)を樹木の幹に巻き付けて、当該シート状物の一方の縁と他方の縁同士を適宜の紐や糸状物によって絡めて固定(縫合する場合も含む)する方法が好適であるが、幹に巻きつけたシート状物(ネット状物を含む)の上から、適宜の紐状物を巻きつけて縛って取り付けてもよい。
次に、幼齢木・苗木の芯芽などの食害防御用保護材に好適な態様を、図1〜図2を用いて説明する。
図1が、基材が繊維又はプラスチックからなるネット状物からなり形状が中空の略円錐台状に形成されている態様の食害防御用保護材の斜視図であり、図2は、それを幼齢木又は苗木に取り付けた状態を示しており、図2(a)が40cmから60cm位の高さの幼齢木又は苗木を植樹した段階、図2(b)が当該幼齢木又は苗木が約140cm〜160cmに成長した段階を示している。
図1、図2において、1が基材が繊維又はプラスチックからなるネット状物からなり形状が中空の略円錐台状に形成されている態様の食害防御用保護材であり、2が樹木に固定するための取り付け用の紐を示している。4が幼齢木又は苗木、6は地面である。5が幼齢木又は苗木4の芯芽のある部分である。図2(a)に示すように40cmから60cm位の高さの幼齢木又は苗木4を植樹した段階で、中空の略円錐台状の食害防御用保護材1の上方の開口部3のところに、芯芽5が位置するように、食害防御用保護材1を幼齢木又は苗木4にかぶせて固定用の紐2などで適宜の枝などに結びつけて固定しておく。こうすることによって新芽を部動物に食べられることなく図2(b)に示されるように樹木が成長し、約140cm〜160cmに成長した段階で、鹿などが届かなくなるまで芯芽が守られて成長することができる。
中空の略円錐台状である態様の食害防御用保護材1の大きさは、幼齢木又は苗木4の大きさに適合する大きさにすればよい。特に限定するものではないが、例えば幅13〜20cm、長さ25〜40cmぐらいのシート状のネット状物から、図1に示すような中空の略円錐台状の食害防御用保護材1を形成する。基材としては上述したネット状物が好ましいが、布類(不織布、編物、織物)や光を透過しやすい透明又は半透明なプラスチックフィルムとすることも可能である。不織布としては必要に応じて太陽光がある程度透過する薄手のもので強度も考慮して厚み(目付け)を適宜選定するとよい。この点を考慮した場合の不織布の目付けとしては、50g/m2〜100g/m2の範囲が特に好ましい。
次に、幼齢木・苗木の芯芽などの食害防御用保護材に別の態様を、図3〜図4を用いて説明する。
図3が、基材が繊維又はプラスチックからなるネット状物からなり形状が筒状(この例では略円筒状)に形成されている態様の食害防御用保護材の斜視図であり、図4は、それを幼齢木又は苗木に取り付けた状態を示している。
図3、図4において、10が基材が繊維又はプラスチックからなるネット状物からなり形状が略円筒状である態様の食害防御用保護材であり、2が樹木に固定するための取り付け用の紐を示している。
図3、図4に示した態様は、図1、図2に比べて、若干小さめの略円筒状の食害防御用保護材10として、幼齢木又は苗木4の主に芯芽部分のみ保護しようとする態様である。その他の点は、図1、図2の態様とほぼ同様であるので重複説明は省略した。前述した様に、いったん芯芽を食べられるとその苗木の上方向に向かう成長が止まるが、成長過程の芯芽を鹿などの口が届かなくなるまでの約3年くらいの間、芯芽を食害防御用保護材10の忌避作用により守る。芯芽以外の側面の新芽は多少食べられても木の成長にはあまり影響を及ぼさないので、図3、図4に示した態様も、幼齢木・苗木の芯芽の食害防御用保護材として有用である。
略円筒状の食害防御用保護材10の大きさも、幼齢木又は苗木4の芯芽のある部分の大きさに適合する大きさにすればよい。尚、基材としては上述したネット状物が好ましいが、布類(不織布、編物、織物)や光を透過しやすい透明又は半透明なプラスチックフィルムとすることも可能である。不織布としては太陽光がある程度透過する薄手のもので強度も考慮して上記の如く厚み(目付け)を適宜選定するとよい。
次に、梅ノ木などは枝の剪定後、新しい枝が成長し2〜3年後その枝に梅の実が生るが、新しい枝に茂る新葉を食べる被害、ならびに、鹿などは新葉を食べるために枝を折ってしまう被害を防止するのに好適な態様の一例を、図5、図6、図7を用いて説明する。
図5は、かかる食害防御用保護材の一実施の形態例の正面図である。図5に示した食害防御用保護材11は基材が繊維又はプラスチックからなるシート状物(図示したものはこの場合ネット状物)からなり、形状が短冊形(長方形)のものである。12は、枝に吊り下げるための紐状物である。食害防御用保護材11の形状は、図示したものに限られるものではなく小片シート状であれば、他の任意の形状(他の形状の多角形、丸型、楕円型、その他)であってもよい。また、素材シートもネット状物である必要はなく、布類(不織布、編物、織物)やプラスチックフィルムのものを用いてもよく、特にこの場合には、不織布やプラスチックフィルムがコストを安くでき好ましい。
かかる食害防御用保護材11は、図7に示すように、紐12で鹿などの動物が届きそうな梅の木などの樹木15の適宜の枝16などに吊り下げられて使用される。例として1本の梅の木に15cm×10cmの大きさの短冊型の保護材を5〜10枚吊り下げると鹿などを寄せ付けない忌避効果が認められる。
図6は、上記と同様な樹木15に使用する場合の食害防御用保護材の別の一実施の形態例の斜視図である。この食害防御用保護材は、基材がネット状物で形状が筒状(この例では略円筒形状)に形成されている食害防御用保護材13であり、図7に示すように枝16などから更に発生する小枝17などに差し込んで使用することもできる。尚、元枝16に差し込んで使用できる場合には使用してもよい。元枝16には、シート状の保護材を元枝16に巻きつけてからその両側の縁を結合して枝上で直接筒状に形成してもよい。尚、基材としては上述したネット状物が好ましいが、布類(不織布、編物、織物)や光を透過しやすい透明又は半透明なプラスチックフィルムとすることも可能である。不織布としては太陽光がある程度透過する薄手のもので強度も考慮して前述の如く厚み(目付け)を適宜選定するとよい。
また、図示していないが、円筒状物に紐をつけて短冊形保護材11と同様に適宜の枝にぶら下げて使用してもよい。この場合には、日光や、空気、雨水などの透過性などを考慮する必要がないので、基材として、コストの安い各種の不織布やプラスチックフィルムを使用することもできる。
図8に本発明の食害防御用保護材において、基材が繊維又はプラスチックからなるネット状物であって、形状が長い帯状である態様の食害防御用保護材の使用態様を示した。成長した樹木(柿、桃、梨、林檎等)の果実などを猿や鳥類による食害を防ぐ場合に好適に用いられる態様の一つである。
図8において、20が基材が繊維又はプラスチックからなるネット状物からなる本発明の長い帯状の形態の食害防御用保護材である。6は地面、21が果実などの生る樹木を示している。
図8に示したように、果実などの生っている成長した樹木21の枝から枝に帯状の食害防御用保護材20を樹木の枝外側を巻くように張り巡らせて、適宜の部位で紐(図示せず)などで枝に結び付けて取り付けたものである。このような態様とすることにより、長い帯状のネット状物に含まれる忌避材の臭いにより、猿や鳥類が近づくのを防止することが出来、果実を猿や鳥類による食害から防止しようとする態様である。
帯状のネット状物の幅は、樹木の大きさなどによっても異なり、特に限定するものではないが、通常、8〜30cm程度が好ましく、より好ましくは10〜20cm程度である。尚、基材としては上述したネット状物が好ましいが、布類(不織布、編物、織物)や光を透過しやすい透明又は半透明なプラスチックフィルムとすることも可能である。不織布としては不織布太陽光がある程度透過する薄手のもので強度も考慮して前述の如く厚み(目付け)を適宜選定するとよい。
また図8において、22で示したように円筒状のネット状物からなる本発明の食害防御用保護材22を更に幹の下の方に取り付けておいても良い。この円筒状のネット状物22は、野ネズミやイノシシなど比較的背丈の小さい動物を忌避する上で有効である。この場合も、基材としては上述したネット状物が好ましいが、布類(不織布、編物、織物)や光を透過しやすい透明又は半透明なプラスチックフィルムとすることも可能である。不織布としては太陽光がある程度透過する薄手のもので強度も考慮して前述の如く厚み(目付け)を適宜選定するとよい。
また、上記で説明した本発明の保護材の各種の態様のものを適宜組合せて使用することもできる。
基材として、165dtexのポリ乳酸からなる生分解性樹脂の糸でネット状物を編み(ネットの目の大きさ:16メッシュ/(2.54cm)2、目付け約55g/m2)このネット状物をポリ乳酸からなる生分解性樹脂の水性エマルション(固形分50重量%)65.8重量部(固形分換算で32.9重量部)、とカプサイシン水性エマルション(固形分0.5重量%)34.2重量部(固形分換算で0.17重量部)との混合物からなる生分解性樹脂組成物バインダーに浸漬して、ネット状物1m2当たり前記エマルションを約55g/m2(従って、生分解性樹脂組成物の付着量は、固形分で約14.1g/m2)塗布してネットの表面を被覆し、次いで乾燥させた。
尚、カプサイシンの水性エマルションは、カプサイシン原液20重量%(但し、原液中、カプサイシン固形分は2.5重量%)、界面活性剤5重量%(非イオン系界面活性剤4.5重量%、アニオン系界面活性剤0.5重量%)及び水75重量%を用いて調整した。ここで用いた界面活性剤の詳細組成は次のとおりである。
非イオン系界面活性剤
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(第一工業製薬株式会社製“ノイゲン ET-149”):2.5重量%
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(第一工業製薬株式会社製“ノイゲン ET-189”):1重量%
ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル(第一工業製薬株式会社製“ノイゲン EA-89”):1重量%
アニオン系界面活性剤
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(第一工業製薬株式会社製“ネオゲン T”):0.5重量%
以上の条件で生産された本発明の食害防御用保護材(樹皮保護ネット)は、樹木の幹に取り付け作業をする人間には苦痛を感じるレベルではないが、鹿等の動物には臭覚・味覚の上で忌避効果は非常に大きい。
生産性は非常によく、最終製品の重量も約74g/m2前後であり非常に軽く、植林地での足場の悪いところでも作業性が非常によい。また、はさみ等で簡単にカットできるので、木の太さによりその場で必要量をカットして使用でき無駄が無く効率的である。
基材として、550dtexの生分解性ポリ乳酸長繊維多数本からなるロープ状に仕上げた太さ(直径)10mmの撚り紐を用い、この撚り紐をポリ乳酸からなる生分解性樹脂の水性エマルション(固形分50重量%)57重量部(固形分換算で28.5重量部)、とカプサイシン水性エマルション(固形分20重量%)34.2重量部(固形分換算で6.8重量部)との混合物からなる生分解性樹脂組成物バインダーに浸漬して、前記エマルションを約10g/m(従って、生分解性樹脂組成物の付着量は、乾燥状態で約2.5g/m)、塗布して撚り紐の表面を被覆し、乾燥させた。
以上の条件で生産された本発明の食害防御用保護材(樹木保護紐)は、樹木の枝などや幹に取り付け作業をする人間には苦痛を感じるレベルではないが、鹿等の動物には臭覚・味覚の上で忌避効果は非常に大きい。
生産性は非常によく、最終製品の重量も約10g/m前後であり非常に軽く、植林地での足場の悪いところでも作業性が非常によい。この紐状物は、目的とする樹木に3〜5cmの間隔を開けてスパイラル状に巻き付けて使用した。はさみ等で簡単にカットできるので、巻き付けた後、その場でカットして使用でき無駄が無く効率的である。
かかる紐状物の場合には、太い樹木の幹に対して巻き付けて使用することもできるが、特に、若くて、比較的細く、まだ成長が十分でない低い樹木などや、また、成長した大きな樹木でも食害を受けやすい低い位置の比較的細い枝などには枝が曲がっていることもあり、紐状物が適用しやすかった。
実施例1で得られたシート状のネット状食害防御用保護材を幅15cm長さ30cmの長方形状にし、これを用いて、図1で説明したような中空の略円錐台状である態様の食害防御用保護材1の形状に仕上げ、図2に示したと同様にして、食害防御用保護材1の上方の開口部3のところに、芯芽5が位置するように50cmほどの檜の幼齢木に被せ、固定用の紐2で枝に結びつけて固定して使用した。取り付け作業は簡単で、植林地での足場の悪いところでも作業性が非常によかった。
本発明の上記食害防御用保護材は、樹木に取り付け作業をする人間には苦痛を感じるレベルではないが、鹿等の動物には臭覚・味覚の上で忌避効果は非常に大きい。
実施例1で得られたシート状のネット状食害防御用保護材を幅10cm長さ15cmの短冊状(長方形状)にし、図5に示したようにこれにぶら下げ用の紐12を取り付けて図5で説明したような食害防御用保護材11の態様に仕上げた。また、図6に示したように前記幅10cm長さ15cmの短冊状(長方形状)の保護材を用いて丸めて、重なった部分を止めることにより略円筒状物の食害防御用保護材13の形状にしたものも用意した。図7に示したと同様にして、短冊状(長方形状)の食害防御用保護材11を紐12で鹿などの動物が届きそうな梅の木の樹木15の枝16に吊り下げた。また、略円筒状物の食害防御用保護材13も枝16から更に発生している小枝17に差し込んで使用した。
取り付け作業は簡単で、作業性が非常によかった。本発明の上記食害防御用保護材は、樹木に取り付け作業をする人間には苦痛を感じるレベルではないが、鹿等の動物には臭覚・味覚の上で忌避効果は非常に大きい。
実施例1で得られたシート状のネット状食害防御用保護材を図8に示したように15cm幅の長い帯状の形状の食害防御用保護材20とし、図8に示したように、柿の実が生っている樹木21の枝から枝に帯状の食害防御用保護材20を樹木の枝外側を巻くように張り巡らせて、ところどころ紐(図示せず)で枝に結び付けて取り付けた。
取り付け作業は比較的簡単で、作業性が非常によかった。本発明の上記食害防御用保護材は、樹木に取り付け作業をする人間には苦痛を感じるレベルではないが、猿や鳥類等の動物には臭覚・味覚の上で忌避効果は非常に大きい。
実施例1で得られたシート状のネット状食害防御用保護材を幅10cm長さ15cmの長方形状にカットし、これを用いて、図3で説明したような略円筒状である態様の食害防御用保護材10の形状に仕上げ、図4に示したと同様にして、食害防御用保護材10を50cmほどの杉の苗木に、その芯芽5が存在する位置を囲むように差込み、固定用の紐2で幹に結びつけて固定して使用した。取り付け作業は簡単で、植林地での足場の悪いところでも作業性が非常によかった。
本発明の上記食害防御用保護材は、樹木に取り付け作業をする人間には苦痛を感じるレベルではないが、鹿等の動物には臭覚・味覚の上で忌避効果は非常に大きい。
基材として、3.3〜10dtexのポリ乳酸からなる生分解性繊維(前記太さの短繊維混合物)からなる不織布(目付け約50g/m2)を実施例1で調整したと同じポリ乳酸からなる生分解性樹脂の水性エマルションとカプサイシン水性エマルションとの混合物からなる生分解性樹脂組成物バインダーに浸漬して、マングルで絞り、不織布1m2当たり前記エマルション混合物を約100g/m2(従って、生分解性樹脂組成物の付着量は、固形分で約26g/m2)塗布して不織布の表面を被覆し、次いで乾燥させた。
得られたシート状の食害防御用保護材を幅10cm長さ15cmの短冊状(長方形状)にし、図5に示したネット状物に代えて、図7に示した態様で使用した。即ち、図5に示した短冊状ネット状物の場合と同様に、この短冊状物にぶら下げ用の紐12を取り付けて図5で説明したような食害防御用保護材11とほぼ同様の態様に仕上げた。
図7に示したと同様にして、短冊状(長方形状)の食害防御用保護材を紐12で鹿などの動物が届きそうな梅の木の樹木15の枝16に吊り下げた。また、その他、柿木などの果実のなる木の枝にもぶら下げて使用した。
取り付け作業は簡単で、作業性が非常によかった。本発明の上記の食害防御用保護材は、樹木に取り付け作業をする人間には苦痛を感じるレベルではないが、鹿、猿、鳥等の動物には臭覚・味覚の上で忌避効果は非常に大きい。
本発明の食害防御用保護材は、食害防御用保護材としての機能にも優れ、しかも、軽くて持ち運びに便利であり、持ち運びの際に、金網などに比べてより一層コンパクトに収納することも可能で、且つ取り付けの際の作業が金網などに比べてより容易であり作業性がよく、樹木などの植物の成長を物理的に押さえつけることもなく、しかも生分解性樹脂が表面側から徐々に生分解されることによって生分解性樹脂組成物層の内部に存在している動物の忌避剤が、順次生分解性樹脂組成物層の表面に現れることになり、比較的長期にわたり、動物忌避作用が発揮され、また、不要になった場合には簡単に取り外すことができ、有害動物による食害防御用保護手段としてはまさに画期的な優れた食害防御用保護材を提供できる。
更に本発明の、好ましい態様においては、上記の機能に加え、取り付けがより簡単な食害防御用保護材を提供出来る。
また、本発明の、好ましい態様においては、更に、食害防御の対象となる動物や、保護対象とする植物などへの悪影響が少なく、地球環境の汚染も少ない優れた食害防御用保護材を提供できる。特に、基材の素材も生分解性樹脂からなる基材を用いた場合には、その場に放置するか土中に埋めるかすると自然に分解することから 処理の手間が無く環境にも影響を与えない画期的な優れた食害防御用保護材を提供できる。
したがって、本発明の食害防御用保護材は、林業、農業分野や、山林、国立公園などの樹木、野菜、果物などに対する有害動物による食害防御用保護材として有効に用いられる。
基材が繊維又はプラスチックからなるネット状物からなり形状が中空の略円錐台状に形成されている態様の食害防御用保護材の斜視図。 図1の食害防御用保護材を幼齢木又は苗木に取り付けた状態を示す図。 基材が繊維又はプラスチックからなるネット状物からなり形状が略円筒状に形成されている態様の食害防御用保護材の斜視図。 図3の食害防御用保護材を幼齢木又は苗木に取り付けた状態を示す図。 本発明の食害防御用保護材の別の一実施の形態例の正面図。 本発明の食害防御用保護材の更に別の一実施の形態例の斜視図。 図5、図6の食害防御用保護材を樹木に取り付けた状態を示す図。 基材が繊維又はプラスチックからなるネット状物であって、形状が長い帯状である態様の食害防御用保護材の使用態様を示した図。
符号の説明
1 形状が中空の略円錐台状である態様の食害防御用保護材
2 紐
3 中空の略円錐台状の食害防御用保護材1の上方の開口部
4 幼齢木又は苗木
5 芯芽
6 地面
10 形状が略円筒状である態様の食害防御用保護材
11 食害防御用保護材
12 紐
13 略円筒形状の食害防御用保護材
15 樹木
16 枝
17 小枝
20 長い帯状の形態の食害防御用保護材
21 果実などの生る樹木
22 円筒状のネット状物からなる本発明の食害防御用保護材

Claims (17)

  1. 有害動物用の忌避剤と生分解性樹脂からなる樹脂組成物が、繊維又はプラスチックからなるシート状物、繊維又はプラスチックからなる紐状物から選ばれた基材表面に固着されていることを特徴とする有害動物による食害防御用保護材。
  2. 基材が繊維又はプラスチックからなるシート状物であって、前記シート状物がネット状物からなるシート状物である請求項1記載の食害防御用保護材。
  3. 基材が繊維又はプラスチックからなるシート状物からなり、形状が長い帯状である請求項1又は2に記載の食害防御用保護材。
  4. 基材が繊維又はプラスチックからなるシート状物からなり、形状が小片シート状である請求項1又は2に記載の食害防御用保護材。
  5. 更に吊り下げ用又は固定用の紐が取り付けられている請求項4記載の食害防御用保護材。
  6. 基材が繊維又はプラスチックからなるシート状物からなり、形状が筒状に形成されている請求項1又は2記載の食害防御用保護材。
  7. 基材が繊維又はプラスチックからなるシート状物からなり、形状が中空の略円錐台状に形成されている請求項1又は2記載の食害防御用保護材。
  8. 基材の材質が、生分解性樹脂からなる請求項1〜7のいずれかに記載の食害防御用保護材。
  9. ネット状物が繊維からなるネット状物である請求項2に記載の食害防御用保護材。
  10. ネット状物が繊維編物からなるネット状物である請求項2に記載の食害防御用保護材。
  11. ネット状物が、ネットの目の大きさが4〜36メッシュ/(2.54cm)2のネット状物である請求項2に記載の食害防御用保護材。
  12. 生分解性樹脂が、脂肪族ポリエステル系重合体又は脂肪族ポリエステルアミド系共重合体である請求項1〜11のいずれかに記載の食害防御用保護材。
  13. 生分解性樹脂が、ポリ乳酸、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネート/アジペート共重合体、ポリヒドロキシブチレート/バリレート共重合体、ポリ−β−ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、カプロラクトンと他のヒドロキシカルボン酸との共重合体から選ばれた生分解性樹脂からなる請求項1〜12のいずれかに記載の食害防御用保護材。
  14. 忌避剤の含有割合が忌避剤と生分解性樹脂からなる樹脂組成物の重量に基づき忌避剤0.001〜5重量%(固形分換算)である請求項1〜13のいずれかに記載の食害防御用保護材。
  15. 動物用の忌避剤が、唐辛子、わさび、芥子、胡椒、又はこれらの辛味成分から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜14のいずれかに記載の食害防御用保護材。
  16. 動物用の忌避剤が、カプサイシン類である請求項1〜14のいずれかに記載の食害防御用保護材。
  17. 忌避剤と生分解性樹脂からなる樹脂組成物が、忌避剤のエマルションと生分解性樹脂エマルションとを混合して得られた樹脂組成物である請求項1〜16のいずれかに記載の食害防御用保護材。
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