JP2005146925A - エンジン部品、これを用いたエンジン、及びエンジン部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 低熱伝導率体によるコーティングの耐久性が高く信頼性が向上したエンジン部品、これを用いたエンジン、及びエンジン部品の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 シリンダヘッド1を、母材2の表面に、溶射によってセラミックス等の低熱伝導率体層3を形成した構成とする。母材2の表面のうち、円形の触火面Fを構成する領域に、溝11(凹部)を形成して、他の領域を、溝11に対して相対的に凸となる凸部12とする。溝11の幅を、母材2の表面側から母材2の内側に向かうに従って次第に狭める。
【選択図】 図2
【解決手段】 シリンダヘッド1を、母材2の表面に、溶射によってセラミックス等の低熱伝導率体層3を形成した構成とする。母材2の表面のうち、円形の触火面Fを構成する領域に、溝11(凹部)を形成して、他の領域を、溝11に対して相対的に凸となる凸部12とする。溝11の幅を、母材2の表面側から母材2の内側に向かうに従って次第に狭める。
【選択図】 図2
Description
本発明は、エンジン部品、これを用いたエンジン、及びエンジン部品の製造方法に関するものである。
現在、自動車等の移動体や施設の動力としては、主に、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン、ガスタービンエンジン等の内燃機関が使用されている。
内燃機関は、冷却が不要な構成または冷却が最小限で済む構成とすることでエネルギー効率が向上し、さらなる小型化を図ることができる。
内燃機関は、冷却が不要な構成または冷却が最小限で済む構成とすることでエネルギー効率が向上し、さらなる小型化を図ることができる。
このようにエンジンの冷却を不要または最小限で済ませるためには、エンジンをセラミックス等の耐熱材料を用いて作成する必要がある。
しかし、セラミックスは硬度が高い反面、靭性が無く欠けやすいので、エンジン全体をセラミックスによって作成することは困難である。
そこで、エンジンを金属で作成して、高い耐熱性が要求される部分に、低熱伝導率体によるコーティング(例えばセラミックスコーティング)を設けて耐熱性を向上させたエンジンが作成されている。
このようなエンジンとしては、後記の特許文献1に記載のものがある。
しかし、セラミックスは硬度が高い反面、靭性が無く欠けやすいので、エンジン全体をセラミックスによって作成することは困難である。
そこで、エンジンを金属で作成して、高い耐熱性が要求される部分に、低熱伝導率体によるコーティング(例えばセラミックスコーティング)を設けて耐熱性を向上させたエンジンが作成されている。
このようなエンジンとしては、後記の特許文献1に記載のものがある。
しかし、セラミックスコーティングは、コーティング処理の際に残った残留応力に加えて、さらにエンジンの振動や、燃焼、排気のサイクルに伴う繰り返しの温度変化による熱応力も受けるので、次第に微小な亀裂が生じてゆく。
このようにして微小な亀裂が増加してゆくと、複数の亀裂同士がつながって大きな亀裂が生じてしまい、セラミックス片の脱落が生じる恐れがある。
このようにして微小な亀裂が増加してゆくと、複数の亀裂同士がつながって大きな亀裂が生じてしまい、セラミックス片の脱落が生じる恐れがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、セラミックス等の低熱伝導率体によるコーティングの耐久性が高く信頼性が向上したエンジン部品、これを用いたエンジン、及びエンジン部品の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のエンジン部品、これを用いたエンジン、及びエンジン部品の製造方法は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるエンジン部品は、母材表面に溶射によって低熱伝導率体層を形成してなるエンジン部品であって、前記母材の表面のうち、少なくとも触火面には凹部と凸部とが形成されており、前記低熱伝導率体層は、前記凹部内に充填された低熱伝導率体によって構成されていることを特徴とする。
このように構成されるエンジン部品では、触火面に凹部と凸部とが形成されている。この凹部内には、低熱伝導率体が充填されていて、この低熱伝導率体によって、触火面とそれ以外の領域との間での断熱を行う低熱伝導率体層が構成されている。
ここで、母材の触火面とは、実際にエンジン内の火炎に接触する部分だけでなく、低熱伝導率体層が無ければエンジン内の火炎に接触するであろう部分も含んでいる。
低熱伝導率体層は、周囲を母材の凸部によって囲まれている。凸部は、その周囲を凹部によって囲まれているので、弾性変形が可能である。
ここで、母材の触火面とは、実際にエンジン内の火炎に接触する部分だけでなく、低熱伝導率体層が無ければエンジン内の火炎に接触するであろう部分も含んでいる。
低熱伝導率体層は、周囲を母材の凸部によって囲まれている。凸部は、その周囲を凹部によって囲まれているので、弾性変形が可能である。
このため、低熱伝導率体層に、その熱膨張等に由来する応力が生じた場合には、凸部が弾性変形することで、低熱伝導率体層に生じた応力が逃がされて、亀裂の発生が防止される。
また、低熱伝導率体層の一部に微小な亀裂が生じたとしても、母材においてこの凹部を囲む凸部によって亀裂の拡大が遮られて、亀裂が周囲に広がりにくい。
このように、このエンジン部品では、微小な亀裂の成長や微小な亀裂の成長による低熱伝導率体層の剥離はもちろん、微小な亀裂の発生自体が生じにくい。
また、低熱伝導率体層の一部に微小な亀裂が生じたとしても、母材においてこの凹部を囲む凸部によって亀裂の拡大が遮られて、亀裂が周囲に広がりにくい。
このように、このエンジン部品では、微小な亀裂の成長や微小な亀裂の成長による低熱伝導率体層の剥離はもちろん、微小な亀裂の発生自体が生じにくい。
本発明にかかるエンジン部品は、請求項1に記載のエンジン部品であって、低熱伝導率体層は、前記凸部上も覆っていることを特徴とする。
このように、低熱伝導率体層を、凹部内にのみ設けるのではなく、触火面全体に設けた場合にも、低熱伝導率体層において凹部間に位置する領域(すなわち凸部上に形成される領域)の厚みが薄いので、低熱伝導率体層に応力が加わっても、凸部上に形成される領域が容易に弾性変形して応力を逃がすことができ、同様に亀裂が生じにくい。
本発明にかかるエンジン部品は、請求項1または2に記載のエンジン部品であって、前記凹部の幅が、前記母材表面側から前記母材内側に向かうに従って次第に狭められていることを特徴とする。
このように構成されるエンジン部品は、触火面の表面側(低熱伝導率体層表面側)では、母材の構成材料が占める割合よりも低熱伝導率体が占める割合の方が多く、母材内側に向かうに従って、次第に母材の構成材料の占める割合が増加してゆく。
すなわち、マクロ的に見れば、エンジン部品の触火面は、二種類の材料の含有比率が厚み方向に連続的に変化する傾斜機能材料とほぼ同様の物性を示すこととなり、これら材料間の熱膨張率の差が緩和されて、亀裂が生じにくい。
また、このように、触火面の熱膨張率その他の物性は、母材表面側から母材内側に向かうに従って徐々に変化していて、急激な組成の変化がないので、局所的に応力が作用しにくく、亀裂等が生じにくい。
すなわち、マクロ的に見れば、エンジン部品の触火面は、二種類の材料の含有比率が厚み方向に連続的に変化する傾斜機能材料とほぼ同様の物性を示すこととなり、これら材料間の熱膨張率の差が緩和されて、亀裂が生じにくい。
また、このように、触火面の熱膨張率その他の物性は、母材表面側から母材内側に向かうに従って徐々に変化していて、急激な組成の変化がないので、局所的に応力が作用しにくく、亀裂等が生じにくい。
本発明にかかるエンジンは、母材表面に溶射によって低熱伝導率体層を形成してなるエンジン部品を用いるエンジンであって、前記エンジン部品として、請求項1から3のいずれかに記載のエンジン部品を用いていることを特徴とする。
このように構成されるエンジンは、エンジン部品として、低熱伝導率体層の亀裂の発生や剥離の生じにくい本発明にかかるエンジン部品を用いているので、耐久性及び信頼性が高い。
本発明にかかるエンジン部品の製造方法は、母材表面に溶射によって低熱伝導率体層を形成してなるエンジン部品の製造方法であって、前記母材の表面のうち、少なくとも触火面に、凹部と凸部とを形成し、前記凹部内に前記低熱伝導率体を溶射して充填することによって前記低熱伝導率体層を形成し、該低熱伝導率体層に、後熱処理を行うことを特徴とする。
例えば、低熱伝導率体がセラミックスであって母材が金属である場合には、低熱伝導率体の熱膨張率は母材の熱膨張率よりも小さく、また耐熱温度も高い。
本発明にかかるエンジン部品の製造方法では、母材上に低熱伝導率体層を形成した後に、低熱伝導率体層に後熱処理を行う。
このような熱処理を施すことで、低熱伝導率体層が軟化しない状態で金属製の母材だけが軟化して塑性変形が容易になるので、母材が低熱伝導率体層に合わせて適宜塑性変形して低熱伝導率体層になじむ。このため、溶射後の冷却時に低熱伝導率体層と母材との間に蓄積されたひずみや残留応力が解消され、低熱伝導率体層に亀裂が生じにくくなる。
本発明にかかるエンジン部品の製造方法では、母材上に低熱伝導率体層を形成した後に、低熱伝導率体層に後熱処理を行う。
このような熱処理を施すことで、低熱伝導率体層が軟化しない状態で金属製の母材だけが軟化して塑性変形が容易になるので、母材が低熱伝導率体層に合わせて適宜塑性変形して低熱伝導率体層になじむ。このため、溶射後の冷却時に低熱伝導率体層と母材との間に蓄積されたひずみや残留応力が解消され、低熱伝導率体層に亀裂が生じにくくなる。
本発明にかかるエンジン部品の製造方法は、母材表面に溶射によって低熱伝導率体層を形成してなるエンジン部品の製造方法であって、前記母材の表面のうち、少なくとも触火面に、凹部と凸部とを形成し、前記母材を予熱した状態で、前記凹部内に前記低熱伝導率体を溶射して充填することによって前記低熱伝導率体層を形成することを特徴とする。
このエンジンの製造方法では、母材を予熱した状態で溶射を行うので、溶射した低熱伝導率体が母材表面で急激に冷却されることがない。
これにより、低熱伝導率体層を急冷した場合に生じやすい残留応力(引張り力)の発生が防止され、低熱伝導率体層に亀裂が生じにくくなる。
これにより、低熱伝導率体層を急冷した場合に生じやすい残留応力(引張り力)の発生が防止され、低熱伝導率体層に亀裂が生じにくくなる。
本発明にかかるエンジン部品の製造方法は、請求項6記載のエンジン部品の製造方法であって、前記低熱伝導率体層を形成した後に、該低熱伝導率体層に、後熱処理を行うことを特徴とする。
このエンジンの製造方法では、母材を予熱した状態で溶射を行い、さらに、低熱伝導率体層に後熱処理を施す。
これにより、溶射後の冷却時に低熱伝導率体層に生じるひずみや残留応力が最小限に抑えられて、低熱伝導率体層の亀裂の発生が抑止される。
これにより、溶射後の冷却時に低熱伝導率体層に生じるひずみや残留応力が最小限に抑えられて、低熱伝導率体層の亀裂の発生が抑止される。
本発明にかかるエンジン部品は、微小な亀裂の成長や微小な亀裂の成長による低熱伝導率体層の剥離はもちろん、微小な亀裂の発生自体が生じにくいので、低熱伝導率体層の耐久性が高く信頼性が高い。
また、本発明にかかるエンジンによれば、低熱伝導率体層の耐久性が高く信頼性が高いエンジン部品を用いているので、耐久性及び信頼性が高い。
また、本発明にかかるエンジン部品の製造方法によれば、低熱伝導率体層の亀裂の発生が抑止されるので、低熱伝導率体層の耐久性が高く信頼性が高いエンジン部品を得ることができる。
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態にかかるエンジンは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン、またはガスタービンなど、給排気等による温度変化を伴うエンジン全般を含むものであって、エンジン部品として、本発明にかかるエンジン部品を用いたものである。
本実施形態にかかるエンジンは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン、またはガスタービンなど、給排気等による温度変化を伴うエンジン全般を含むものであって、エンジン部品として、本発明にかかるエンジン部品を用いたものである。
エンジン部品としては、シリンダブロック、ピストン、ライナー、バルブ等があるが、本実施の形態では、本発明の構成を採用したエンジン部品のうち、シリンダヘッド1を例にとって示す。
図1に示すように、シリンダヘッド1は、例えば母材2の表面に、溶射によってセラミックス等の低熱伝導率体層3を形成したものである。
ここで、図1において、符号4は吸気バルブや排気バルブが設置されるポートであり、符号5は、燃料供給口である。
図1に示すように、シリンダヘッド1は、例えば母材2の表面に、溶射によってセラミックス等の低熱伝導率体層3を形成したものである。
ここで、図1において、符号4は吸気バルブや排気バルブが設置されるポートであり、符号5は、燃料供給口である。
母材2は、例えばダクタイル鋳鉄(FCD)等の金属によって作成される。
また、低熱伝導率体層3は、セラミックス等の低熱伝導率体を母材2上に溶射することで形成される。
また、低熱伝導率体層3は、セラミックス等の低熱伝導率体を母材2上に溶射することで形成される。
母材2の表面のうち、円形の触火面Fを構成する領域には、溝11(凹部)が形成されている。ここで、母材2の表面のうち、溝11が形成されていない領域は、溝部11に対して相対的に凸となる凸部12を構成している。この溝11の深さDは、0.5mm以上3mm以下に設定される。
溝11内には、低熱伝導率体13が充填されており、この低熱伝導率体13によって低熱伝導率体層3が構成されている。低熱伝導率体13としては、例えば、ジルコニアを基剤として、イットリア、カルシア(カルシウムオキサイドまたは酸化カルシウム)、マグネシア(マグネシウムオキサイドまたは酸化マグネシウム)等の希土類元素の酸化物からなる安定化剤を添加したセラミックスが用いられる。
ここで、母材2の触火面とは、実際にエンジン内の火炎に接触する部分だけでなく、低熱伝導率体層が無ければエンジン内の火炎に接触するであろう部分も含んでいる。
溝11内には、低熱伝導率体13が充填されており、この低熱伝導率体13によって低熱伝導率体層3が構成されている。低熱伝導率体13としては、例えば、ジルコニアを基剤として、イットリア、カルシア(カルシウムオキサイドまたは酸化カルシウム)、マグネシア(マグネシウムオキサイドまたは酸化マグネシウム)等の希土類元素の酸化物からなる安定化剤を添加したセラミックスが用いられる。
ここで、母材2の触火面とは、実際にエンジン内の火炎に接触する部分だけでなく、低熱伝導率体層が無ければエンジン内の火炎に接触するであろう部分も含んでいる。
溝11は、触火面F全体に形成されていればその形状は任意である。ここで、例えば溝11を触火面Fと同心にして複数設けたり、触火面Fと同心の渦巻き状とした場合には、溝加工が容易となる。
本実施の形態では、図1に示すように、溝11は、触火面Fと同心の溝11を径方向に隣接させて複数設けられている。
本実施の形態では、図1に示すように、溝11は、触火面Fと同心の溝11を径方向に隣接させて複数設けられている。
また、溝11は、図2の断面図に示すように、その幅が、母材2の表面側から母材2の内側に向かうに従って次第に狭められている。言い換えれば、溝11間に位置する凸部12は、母材2の表面側から母材2の内側に向かうに従って次第にその幅が広められている。本実施の形態では、溝11をV字溝とされており、また、この溝11の幅Wは、例えば溝11の深さDの1〜2倍に設定されている。
以下、このように構成されるシリンダヘッド1の製造方法について説明する。
まず、母材2の触火面Fに、溝11を形成する。溝11は、フライス加工等の機械加工によって形成してもよく、またエッチング等のその他の加工によって形成してもよい。
さらに、母材2に対する低熱伝導率体層3の接触面積を大きくして付着強度を向上させるために、溝11の内面を含む触火面Fの表面を、面粗度Rmax=100μm程度に荒くしておく。この粗面加工は、ブラスト加工によって行われるものであって、例えば直径1mm以下のアルミナを触火面Fに吹き付けることによって行われる。
まず、母材2の触火面Fに、溝11を形成する。溝11は、フライス加工等の機械加工によって形成してもよく、またエッチング等のその他の加工によって形成してもよい。
さらに、母材2に対する低熱伝導率体層3の接触面積を大きくして付着強度を向上させるために、溝11の内面を含む触火面Fの表面を、面粗度Rmax=100μm程度に荒くしておく。この粗面加工は、ブラスト加工によって行われるものであって、例えば直径1mm以下のアルミナを触火面Fに吹き付けることによって行われる。
続いて、このように溝11を形成した母材2を予熱した状態で、その触火面Fに、溶射によって低熱伝導率体層3を形成する。
具体的には、母材2を500°C〜600°C程度に予熱し、この状態で、加熱により溶融もしくは軟化した微粒子状の低熱伝導率体13をノズルNから吹き付けて、低熱伝導率体13を触火面F上に凝固・堆積させる(図3(a)参照)。
そして、図3(b)に示すように、触火面F全体に、溝11及び凸部12が完全に埋まる厚みまで、低熱伝導率体層3を成長させる。
ここで、母材2は予熱されているので、溶射された低熱伝導率体13が母材2表面で急激に冷却されることがなく、得られる低熱伝導率体層3に残留応力(引張り力)が発生しにくい。
そして、図3(b)に示すように、触火面F全体に、溝11及び凸部12が完全に埋まる厚みまで、低熱伝導率体層3を成長させる。
ここで、母材2は予熱されているので、溶射された低熱伝導率体13が母材2表面で急激に冷却されることがなく、得られる低熱伝導率体層3に残留応力(引張り力)が発生しにくい。
さらに、この溶射処理の後、シリンダヘッド1に後熱処理を行い、母材2と低熱伝導率体層3とをなじませる。
この熱処理では、シリンダヘッド1を、低熱伝導率体(セラミックス)が軟化しない温度以下でかつダクタイル鋳鉄製の母材2が軟化する温度以上に保持する。
これにより、母材2が適宜塑性変形して低熱伝導率体層3になじみ、溶射後の冷却時に低熱伝導率体層3と母材2との間に蓄積されたひずみや残留応力が解消される。
本実施形態では、シリンダヘッド1には、電気炉等の熱処理炉によって、500°C〜600°Cで60分間の熱処理が施される。
この熱処理では、シリンダヘッド1を、低熱伝導率体(セラミックス)が軟化しない温度以下でかつダクタイル鋳鉄製の母材2が軟化する温度以上に保持する。
これにより、母材2が適宜塑性変形して低熱伝導率体層3になじみ、溶射後の冷却時に低熱伝導率体層3と母材2との間に蓄積されたひずみや残留応力が解消される。
本実施形態では、シリンダヘッド1には、電気炉等の熱処理炉によって、500°C〜600°Cで60分間の熱処理が施される。
最後に、図3(c)に示すように、低熱伝導率体層3のうち、凸部12の先端よりも上方に形成された領域を除去して、触下面Fを所望の面粗度に加工し、適切な形状精度のシリンダヘッド1を得る。この低熱伝導率体層3の除去(整形)作業は、フライス加工等の切削加工、もしくはバフやダイヤモンド砥石等を用いた研削加工等によって行われる。
このように構成されるシリンダヘッド1では、低熱伝導率体層3は、周囲を母材の凸部12によって囲まれている。凸部12は、その周囲を溝11によって囲まれているので、弾性変形が可能である。
このため、低熱伝導率体層3に、その熱膨張等に由来する応力が生じた場合には、凸部12が弾性変形することで、低熱伝導率体層3に生じた応力が逃がされて、亀裂の発生が防止される。
また、低熱伝導率体層3の一部に微小な亀裂が生じたとしても、低熱伝導率体層3において亀裂が生じた領域を囲む凸部12によって亀裂の拡大が遮られて、亀裂が周囲に広がりにくい。
このように、このシリンダヘッド1では、微小な亀裂の成長や微小な亀裂の成長による低熱伝導率体層3の剥離はもちろん、微小な亀裂の発生自体が生じにくい。
また、低熱伝導率体層3の一部に微小な亀裂が生じたとしても、低熱伝導率体層3において亀裂が生じた領域を囲む凸部12によって亀裂の拡大が遮られて、亀裂が周囲に広がりにくい。
このように、このシリンダヘッド1では、微小な亀裂の成長や微小な亀裂の成長による低熱伝導率体層3の剥離はもちろん、微小な亀裂の発生自体が生じにくい。
また、このシリンダヘッド1では、溝11の幅Wが、母材2の表面側から母材2内側に向かうに従って次第に狭められている。
これにより、触火面Fの表面側(低熱伝導率体層表面側)では、母材2の構成材料が占める割合よりも低熱伝導率体13が占める割合の方が多く、母材2内側に向かうに従って、次第に母材2の構成材料の占める割合が増加してゆく。
すなわち、マクロ的に見れば、エンジン部品の触火面は、二種類の材料の含有比率が厚み方向に連続的に変化する傾斜機能材料とほぼ同様の物性を示すこととなり、これら材料間の熱膨張率の差が緩和されて、亀裂が生じにくい。
また、このように、触火面Fの熱膨張率その他の物性は、母材2の表面側から母材2の内側に向かうに従って徐々に変化していて、急激な組成の変化がないので、局所的に応力が作用しにくく、亀裂等が生じにくい。
これにより、触火面Fの表面側(低熱伝導率体層表面側)では、母材2の構成材料が占める割合よりも低熱伝導率体13が占める割合の方が多く、母材2内側に向かうに従って、次第に母材2の構成材料の占める割合が増加してゆく。
すなわち、マクロ的に見れば、エンジン部品の触火面は、二種類の材料の含有比率が厚み方向に連続的に変化する傾斜機能材料とほぼ同様の物性を示すこととなり、これら材料間の熱膨張率の差が緩和されて、亀裂が生じにくい。
また、このように、触火面Fの熱膨張率その他の物性は、母材2の表面側から母材2の内側に向かうに従って徐々に変化していて、急激な組成の変化がないので、局所的に応力が作用しにくく、亀裂等が生じにくい。
さらに、このシリンダヘッド1は、低熱伝導率体層3を溶射によって形成する際に、母材2を予熱しており、低熱伝導率体層3と母材2との間に歪みや残留応力が生じにくい。
また、このシリンダヘッド1には、溶射後に後熱処理が施されるので、低熱伝導率体層3と母材2との間にひずみや残留応力が生じていたとしても、これらが解消される。
これにより、このシリンダヘッド1の低熱伝導率体層3には、亀裂自体が生じにくい。
また、このシリンダヘッド1には、溶射後に後熱処理が施されるので、低熱伝導率体層3と母材2との間にひずみや残留応力が生じていたとしても、これらが解消される。
これにより、このシリンダヘッド1の低熱伝導率体層3には、亀裂自体が生じにくい。
本実施形態にかかるエンジンは、低熱伝導率体層3の耐久性が高く信頼性が高いシリンダヘッド1を用いているので、耐久性及び信頼性が高い。
本実施の形態では、シリンダヘッドの母材を予熱した状態で溶射を行った例を示したが、通常の溶射と同じく、予熱を行わずに溶射を行ってもよい。
また、本実施の形態では、溶射後のシリンダヘッドに後熱処理を施した例を示したが、一般的な溶射処理製品と同様に、後熱処理を施さなくてもよい。
また、本実施の形態では、溶射後のシリンダヘッドに後熱処理を施した例を示したが、一般的な溶射処理製品と同様に、後熱処理を施さなくてもよい。
また、本実施の形態では、低熱伝導率体層3は、溝11内にのみ設けた例を示したが、これに限られることなく、図4に示すように、触火面F全体に連続させて設けられていてもよい。このような構成は、図3(b)に示すように低熱伝導率体層3を形成したのち、凸部12上にも低熱伝導率層3を残し、低熱伝導率体層3の表面を所望の面粗度に加工することで得られる。
この場合にも、低熱伝導率体層3において溝11間に位置する領域C(すなわち凸部12上に形成される領域)の厚みが薄いので、低熱伝導率体層3に応力が加わっても、凸部12上に形成される領域Cが容易に弾性変形して応力を逃がすことができ、同様に亀裂が生じにくい。
この場合にも、低熱伝導率体層3において溝11間に位置する領域C(すなわち凸部12上に形成される領域)の厚みが薄いので、低熱伝導率体層3に応力が加わっても、凸部12上に形成される領域Cが容易に弾性変形して応力を逃がすことができ、同様に亀裂が生じにくい。
また、本実施の形態では、溝11をV字溝とした例を示したが、溝11の形状は任意である。また、溝11の壁面は必ずしも滑らかでなくてもよく、例えば、溝11の壁面が階段状に形成されていてもよい。
1 シリンダヘッド(エンジン部品)
2 母材
3 低熱伝導率体層
11 溝(凹部)
12 凸部
13 低熱伝導率体
F 触火面
2 母材
3 低熱伝導率体層
11 溝(凹部)
12 凸部
13 低熱伝導率体
F 触火面
Claims (7)
- 母材表面に溶射によって低熱伝導率体層を形成してなるエンジン部品であって、
前記母材の表面のうち、少なくとも触火面には凹部と凸部とが形成されており、
前記低熱伝導率体層は、前記凹部内に充填された低熱伝導率体によって構成されていることを特徴とするエンジン部品。 - 前記低熱伝導率体層は、前記凸部上も覆っていることを特徴とする請求項1記載のエンジン部品。
- 前記凹部の幅が、前記母材表面側から前記母材内側に向かうに従って次第に狭められていることを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン部品。
- 母材表面に溶射によって低熱伝導率体層を形成してなるエンジン部品を用いるエンジンであって、
前記エンジン部品として、請求項1から3のいずれかに記載のエンジン部品を用いていることを特徴とするエンジン。 - 母材表面に溶射によって低熱伝導率体層を形成してなるエンジン部品の製造方法であって、
前記母材の表面のうち、少なくとも触火面に、凹部と凸部とを形成し、
前記凹部内に前記低熱伝導率体を溶射して充填することによって前記低熱伝導率体層を形成し、
該低熱伝導率体層に、後熱処理を行うことを特徴とするエンジン部品の製造方法。 - 母材表面に溶射によって低熱伝導率体層を形成してなるエンジン部品の製造方法であって、
前記母材の表面のうち、少なくとも触火面に、凹部と凸部とを形成し、
前記母材を予熱した状態で、前記凹部内に前記低熱伝導率体を溶射して充填することによって前記低熱伝導率体層を形成することを特徴とするエンジン部品の製造方法。 - 前記低熱伝導率体層を形成した後に、
該低熱伝導率体層に、後熱処理を行うことを特徴とする請求項6記載のエンジン部品の製造方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2003382984A JP2005146925A (ja) | 2003-11-12 | 2003-11-12 | エンジン部品、これを用いたエンジン、及びエンジン部品の製造方法 |
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JP2003382984A JP2005146925A (ja) | 2003-11-12 | 2003-11-12 | エンジン部品、これを用いたエンジン、及びエンジン部品の製造方法 |
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ID=34691885
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JP (1) | JP2005146925A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP2436898A1 (en) | 2010-09-30 | 2012-04-04 | Mazda Motor Corporation | Heat-insulting structure |
RU2539251C2 (ru) * | 2013-02-28 | 2015-01-20 | Павел Игнатьевич Загуменнов | Теплообменная металлическая поверхность и двухтактный двигатель внутреннего сгорания с теплообменной металлической поверхностью (варианты). |
JP2015183283A (ja) * | 2014-03-26 | 2015-10-22 | 株式会社栗本鐵工所 | 溶射下地の形成方法 |
CN105089840A (zh) * | 2014-05-08 | 2015-11-25 | 北京汽车动力总成有限公司 | 一种内燃机的汽缸套结构、制造方法及汽车 |
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2003
- 2003-11-12 JP JP2003382984A patent/JP2005146925A/ja active Pending
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