JP2005145896A - 金属フタロシアニンの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 金属フタロシアニンの結晶成長を抑制し、均一で微細な金属フタロシアニンを短時間に製造する。
【解決手段】 一般式(1)
【化1】
Figure 2005145896

(一般式(1)中の環Aは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン基の置換基を有してもよいベンゼン環又はナフタレン環を示す。)で示されるフタロニトリル化合物を多価アルコールと反応させてイソインドリン化合物を合成する第一工程と、金属塩を多価アルコールに加熱溶解させる第二工程と、第一工程で得られた多価アルコール溶液と第二工程で得られた多価アルコール溶液の混合溶液を得る第三工程と、該混合溶液を加熱して固形の反応生成物を得る第四工程と、該反応生成物をさらに加熱して金属フタロシアニンに転位させる第五工程により、金属フタロシアニンを製造する。
【選択図】 図1

Description

本発明は金属フタロシアニンの合成方法に関し、さらに詳しくは、オルトフタロニトリルなどのフタロニトリル化合物と塩化銅(II)などの金属塩を反応させることにより金属フタロシアニン微粒子を製造する方法に関する。
フタロシアニン化合物は印刷インキや塗料、プラスチック着色剤などに用いられる顔料として重要な有機化合物であり、その分子中に金属原子を含む金属フタロシアニン、なかでも銅を含む銅フタロシアニンは極めて重要な有機顔料である。金属フタロシアニンの合成方法の一つにフタロニトリル化合物とハロゲン化金属などを原料とする方法が知られており、例えばオルトフタロニトリルと塩化銅(II)を1−ペンタノールなどのアルコール系有機溶媒やn−ブチルエーテルなどのエーテル系有機溶媒中で数時間反応させることにより、銅フタロシアニンを合成できることが知られている。
ここで実用上は収率向上や反応速度の増大を図るために、金属アルコキシドや1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデック−7−エン(以下、DBUと略す)などの有機塩基などが使用されたり、あるいは特定の化合物などが加えられることがある(例えば、特許文献1参照)。
従来、上述のフタロニトリル化合物と金属塩、少量のDBUなどを一括してバッチ式の反応容器に投入し、150℃から200℃程度の温度で数時間反応させることにより、金属フタロシアニンが製造されてきた。
しかしながら、このような合成方法で得られた金属フタロシアニンは反応中に結晶成長し、その長径の長さが10μmから200μmにも達する針状の結晶となり、これを印刷インキなどの着色材として使用するには合成工程後にこの結晶を微細化する顔料化工程を必要としていた。
この顔料化工程では、硫酸を晶析溶媒とするアシッドペースティング法やキシレンなどの有機溶媒中で顔料を微細化するソルベントミリング法などが用いられるが、金属フタロシアニンの粒子径を20nmから200nmの微細で均一な微粒子に整えるのに多大の負荷がかかり、製造コストの面で問題となっていた。また溶媒を使用することによって環境問題となる場合もある。
金属フタロシアニンの合成工程において、該金属フタロシアニンの結晶成長を抑制するためにスルホン化金属フタロシアニンなどの金属フタロシアニン誘導体を添加するなどの方法もあるが、金属フタロシアニン誘導体の添加は製造コストの面で問題となる場合もあった(例えば、特許文献2参照)。
特開2002−226482号公報(段落[0006]−[0008]) 特開2002−155219号公報(段落[0026]−[0030])
本発明が解決しようとする課題は、金属フタロシアニンの合成方法において、該金属フタロシアニンの結晶成長を抑制し、均一で微細な金属フタロシアニンを短時間に製造し、合成工程後の顔料化工程の負荷を大幅に低減する方法の提供、または顔料化工程無しで印刷インキの着色剤などに好適な金属フタロシアニンの製造方法の提供にある。
本発明者は、オルトフタロニトリルなどのフタロニトリル化合物と金属塩を原料とする金属フタロシアニン化合物の合成方法において、フタロニトリル化合物をエチレングリコールなどのα−グリコールやグリセリンなどのその分子構造中の炭素骨格に結合している水酸基が隣接している多価アルコールに溶解させながら反応させて、イソインドリン化合物を合成した後、アンモニアもしくはDBUなどの有機塩基の存在下または非存在下で塩化銅(II)などの金属塩の多価アルコール溶液と混合し、しかる後、所定の温度範囲内で加熱することにより、イソインドリン化合物と該金属塩由来の金属イオンが反応して、金属フタロシアニン化合物ではない固体の反応生成物が得られ、これをさらに加熱して所定の温度以上に昇温することにより、該固体反応生成物が均一で微細な金属フタロシアニンに転位することを見いだし、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明は、一般式(1)
Figure 2005145896
(一般式(1)中の環Aは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン基の置換基を有してもよいベンゼン環又はナフタレン環を示す。)
で示されるフタロニトリル化合物と金属塩とを反応させて金属フタロシアニンを製造する方法であって、
(1)該フタロニトリル化合物をα−グリコール類又はグリセリンである多価アルコールとを反応させてイソインドリン化合物を合成する第一工程と、
(2)該金属塩をα−グリコール類又はグリセリンである多価アルコールに加熱溶解させる第二工程と、
(3)該第一工程で得られた該イソインドリン化合物を含む該多価アルコール溶液と、該第二工程で得られた該金属塩を含む該多価アルコール溶液とを混合して混合溶液を得る第三工程と、
(4)該混合溶液を加熱して該イソインドリン化合物と該金属塩由来の金属イオンとを反応させて固形の反応生成物を得る第四工程と、
(5)該反応生成物をさらに加熱して金属フタロシアニンに転位させる第五工程と、
を含むことを特徴とする金属フタロシアニンの製造方法を提供するものである。
本発明の方法により、結晶成長が抑制された均一で微細な金属フタロシアニン化合物を高収率、かつ、短時間に合成することができる。本発明の方法は従来技術に比べて顔料化工程の負荷が大幅に低減でき、また、顔料化工程を経ることなく印刷インキや塗料用の着色剤などとして用いることもできる。
本発明の製造方法による金属フタロシアニンは、その分子構造の中心に銅、鉄、ニッケル、亜鉛、マグネシウムなどの金属原子を含むフタロシアニンであって、その分子構造中の4つのベンゼン環に置換基を有しないような金属フタロシアニンや、ベンゼン環またはナフタレン環の一部がハロゲン化やアルキル化するなどして置換基が導入された金属フタロシアニン化合物又は金属ナフタロシアニン化合物などを含み、以下、これらを総称して金属フタロシアニンという。
本発明で用いることができるフタロニトリル化合物は、オルトフタロニトリルをはじめ、ベンゼン環またはナフタレン環のオルト位に−CN基を2つ有するものをいい、例えば、下記一般式(1)
Figure 2005145896
(一般式(1)中の環Aは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン基の置換基を有していてもよいベンゼン環又はナフタレン環を示す。)
の環Aがベンゼン環である場合に、その他の部位にハロゲン原子やアルキル基などの官能基が導入されているものでもよい。
本発明で用いることができる多価アルコールはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオールなどのα−グリコール類およびグリセリンであり、その分子構造中の2つもしくは3つの水酸基が結合している炭素原子が隣接しているものに限定される。
本発明で用いることができる金属塩としては、金属フタロシアニンの中心金属となり得るすべての金属の塩を挙げることができ、具体的には鉄、ニッケル、亜鉛、銅などの塩類であり、例えばハロゲン化物や硫酸塩などを挙げることができる。例えば銅塩の場合は塩化銅(II)や硫酸銅(II)が本発明の方法で銅フタロシアニンを製造するのに好ましい塩として挙げることができる。
本発明の方法で合成できる均一で微細な金属フタロシアニンは、少なくともフタロニトリル化合物と金属塩とを溶媒中で反応させることにより得られるものであって、少なくとも反応が終了して金属フタロシアニンが生成した段階では溶媒に不溶の固体微粒子状であり、例えば銅フタロシアニンや亜鉛フタロシアニンなどを挙げることができるが、これらの金属フタロシアニンは従来の方法においては粗大な結晶に成長するものであった。
本発明の金属フタロシアニンの製造方法では図1に示すように、まず、第一工程で金属塩の非存在下でオルトフタロニトリルなどのフタロニトリル化合物をα−グリコールまたはグリセリンなどの多価アルコールに加熱溶解させながら、DBUなどの有機塩基や金属アルコキシドの存在下または非存在下で反応させ、該多価アルコールに可溶なフタロニトリル化合物と該多価アルコール反応生成物を合成する。
該反応生成物の構造は、オルトフタロニトリルとエチレングリコールとを反応させた化合物の分析を実施することにより明らかにすることができた。具体的にはオルトフタロニトリルとエチレングリコールとを100℃で90分反応させた後、大過剰の蒸留水を加えて反応生成物を析出させ、該反応生成物のIRスペクトル、H−NMRおよびC13−NMRスペクトル、マススペクトルを測定し、さらに元素分析を実施した。
その結果、IRスペクトル、H−NMRおよびC13−NMRスペクトルから「Maeda、et al、Journal of Porphyrins and Phthalocyanines,2002;6 、p649〜660、Fig.7」に記載の化合物と同種の化合物であると推定され、その構造として下記一般式(2)
Figure 2005145896
(オルトフタロニトリルとエチレングリコールを反応させた場合、Aはベンゼンを表し、このときの分子量は190である。)
で示されるイソインドリン化合物の単量体か、あるいは、下記一般式(3)
Figure 2005145896
(オルトフタロニトリルとエチレングリコールを反応させた場合、Aはベンゼンを表し、このときの分子量は363である。)
で示されるイソインドリン化合物の2量体、もしくは一般式(3)の同位体である下記一般式(4)
Figure 2005145896
(オルトフタロニトリルとエチレングリコールを反応させた場合、Aはベンゼンを表し、このときの分子量は363である。)
で示される化合物であると考えられる。
なお、一般式(3)で示される化合物又は一般式(4)で示される化合物を、以下、イソインドリン化合物の2量体と称する。
続いて上記反応生成物のマススペクトル測定を行ったところ分子量362のピークが確認されたことから、上記したイソインドリン化合物の2量体を含んでいることが示唆された。
また、該反応生成物の元素分析結果からも、上記したイソインドリン化合物の2量体を含んでいるものと推定される。
Figure 2005145896
ここで理論比に対して若干の誤差が認められるが、これは該反応生成物を溶媒から分離する際などにエチレンジオキシ基が加水分解して脱離し、カルボニル基などに変化したために炭素原子の比率が低下し、相対的に窒素原子の比率が増大したためであると考えられる。
なお、該反応生成物が単量体を含んでいる場合、イミノ基は加水分解されて一般式(5)記載のカルボニル基を含む化合物に転移するので、単量体の元素分析の理論値は、下記一般式(5)
Figure 2005145896
(オルトフタロニトリルとエチレングリコールを反応させた場合、Aはベンゼンを表し、このときの分子量は191である。)
で示される化合物の構造を基準とした。
本発明の合成方法では極めて短時間に微細な金属フタロシアニン化合物が得られるが、これはフタロニトリル化合物とα−グリコールまたはグリセリンなどの多価アルコールが反応した際に生じるイソインドリン化合物が上述した2量体を含んでいるため、この2量体2分子と金属イオン1分子が反応して金属フタロシアニン化合物1分子を生じるので、従来技術のごとく、フタロニトリル化合物4分子と金属イオン1分子が集まって金属フタロシアニン化合物1分子を生じるよりも迅速に金属フタロシアニン化合物を生じるためと考えられる。
また上述したように本発明で用いることができる多価アルコールがα−グリコールやグリセリンに限られる理由は、一般式(2)〜(4)で示される化合物と同種のイソインドリン化合物を形成し得るのは、その分子構造中の炭素骨格に結合している水酸基が隣接している該多価アルコールに限定されるためで、例えば1,4−ブチレングリコールなどはその分子構造中に2つの水酸基が隣接していないため、イソインドリン化合物を形成し得ず、本発明の多価アルコールとして用いることができない。
フタロニトリル化合物とα−グリコールやグリセリンなどの本発明で用いることができる多価アルコールの反応温度は有機塩基や金属アルコキシドを添加しない場合、80℃以上ならば問題ないが、高い温度では無金属フタロシアニン化合物を生じるので、濾過などの工程が必要になり好ましくない。また温度が低い場合は反応が長時間化する場合もあるので、実用上は100℃から130℃の範囲で15分から8時間反応させることが好ましく、さらに好ましくは1時間から3時間反応させるとよい。得られたイソインドリン化合物を含む溶液は反応終了後、直ちに80℃以下に冷却し、それ以上の反応の進行を停止させることが好ましい。また反応中は窒素雰囲気下に置くなど、大気中の水分の混入を避けることが好ましく、該多価アルコールもあらかじめ脱水しておくことが好ましい。
DBUなどの有機塩基を添加してフタロニトリル化合物と多価アルコールを反応させる場合は、該有機塩基を用いない場合に比べてより低い温度で反応させることができ、無金属フタロシアニン化合物の生成を抑制する上でも都合がよい。具体的には30℃から100℃の範囲で10分から2時間で反応させるとよい。
フタロニトリル化合物とα−グリコールまたはグリセリンなどの多価アルコールとを反応させる際の重量比に関しては特に限定はないものの、フタロニトリル化合物の濃度が2%よりも低い場合は、後に金属フタロシアニン化合物を合成する際の生産性が低くなり、40%よりも高い場合は得られた溶液の粘度が著しく高くなり、かつ、無金属フタロシアニン化合物の生成量が多くなる場合もあるため、フタロニトリル化合物の濃度が2重量%から40重量%、特に5重量%から20重量%の範囲とすることが好ましい。
続いて上述のフタロニトリル化合物と多価アルコールの反応とは別に、第二工程として、金属塩を多価アルコールに加熱溶解させる。このとき用いる多価アルコールは上述のイソインドリン化合物を合成した際と同種の多価アルコールを用いることが製造コスト上好ましい。
金属塩の多価アルコール溶液の濃度については特に限定はないものの、濃度が2重量%よりも低い場合は後の金属フタロシアニン化合物を合成する工程の生産性が低くなり、50重量%よりも高い場合は金属塩を溶解するのに多大の時間を要したり、溶液粘度が著しく高くなる場合もあるため、金属塩濃度が2重量%から50重量%、特に5重量%から20重量%の範囲とすることが好ましい。
続いて第三工程により、上述のイソインドリン化合物および金属塩の多価アルコール溶液を混合し、十分攪拌することにより、均一な混合溶液を得る。このとき、温度が80℃よりも高い場合は混合が不十分な段階で一部に不均一な形状のフタロシアニン化合物が生成したり、収率が低下したりする場合もあるため、温度は80℃以下で行うことが好ましい。
該イソインドリン化合物と金属塩の混合比に関しては、化学量論的な観点から原料のフタロニトリル化合物4モルに対して金属イオンが1モルになるように調整することが好ましい。また、合成する金属フタロシアニン化合物の収率を向上させるために金属塩を等量に対して過剰に加えてもよい。
該イソインドリン化合物および金属塩の多価アルコール溶液を80℃以下の温度で混合して混合溶液を得た後、第四工程においてこの混合溶液を攪拌しながら加熱することによりイソインドリン化合物と金属塩由来の金属イオンとを反応させて固形の反応生成物を得る。
さらに第五工程において、この得られた反応生成物をさらに加熱すると金属フタロシアニンに転移させることができ、均一で微細な金属フタロシアニンが得られる。
また上述のイソインドリン化合物と金属塩を含む混合溶液を得る第三工程においてアンモニアまたはDBUなどの水を含まないアルカリ性物質を添加すると、添加しない場合に比べてより微細な金属フタロシアニンが得られるので好ましい。
アルカリ性物質を添加する場合は、イソインドリン化合物の合成後であって、かつ、金属塩と混合して加熱する前であればよく、またその添加量は特に限定はないが、添加量が0.1重量%以下の場合には金属フタロシアニン化合物の微細化効果が低下し、20重量%よりも多い場合は製造コストが大きくなるなどの問題が生じる場合があるので、イソインドリン化合物と金属塩を含む溶液に対して、0.1重量%から20重量%の範囲で添加することが好ましい。
また、アルカリ性物質としてアンモニアを用いる場合は、その形態はガス状で金属塩の多価アルコール溶液やイソインドリン化合物及び金属塩を含む多価アルコール溶液に通気して供給してもよいし、メタノール性アンモニアなどの水以外の液体に溶解してあるものを添加してもよい。
本発明の方法により、結晶成長が抑制された、均一で微細な金属フタロシアニンの微粒子が得られる機構に関しては必ずしも明確ではないが、従来の方法とは異なり、イソインドリン化合物および金属塩の多価アルコール溶液を混合後、所定の温度範囲内で一定時間加熱することにより、金属フタロシアニンが生成する前段階で固体状の反応生成物を経由し、この固体反応生成物が金属フタロシアニンに転位するために、固体反応生成物からなる固相中で生成する金属フタロシアニンの結晶成長が大幅に抑制されたためであると推測できる。
実際、上述のオルトフタロニトリルとグリセリンからイソインドリン化合物を合成し、ついで塩化銅(II)と混合して反応させた場合に、温度が100℃に達した付近から反応液は緑色を呈した。その一部を採取して顕微鏡で観察したところ、銅フタロシアニンではない緑色の微細な固体反応生成物が確認された。
その後も加熱を継続したところ、温度が120℃を超えた付近から反応液は青色を呈するようになり、温度が150℃に達した時点でその一部を採取して顕微鏡で観察したところ、青色の微細な微粒子が得られることが確認できた。その後のマススペクトル分析でこれが銅フタロシアニンであることが判明した。
この銅フタロシアニン生成過程で見られた緑色の微細な固体反応生成物に関しては必ずしも明確ではないが、少なくとも一部は上述したようにフタロニトリル化合物とα−グリコールもしくはグリセリンなどの多価アルコールが反応して生成した2量体を含むイソインドリン化合物と金属イオンが結合した錯体もしくは塩またはこれらの混合物であると考えられる。
加熱を継続することにより、イソインドリン化合物中の多価アルコール由来の部位が脱離してフタロシアニン環を形成するに至るものと推測できる。例えば、エチレングリコールを用いてイソインドリン化合物を合成した場合は、イソインドリン化合物のエチレンジオキシ基が脱離するものと考えられる。
したがって、従来技術による金属フタロシアニン合成では見られない固体の反応生成物を経由して金属フタロシアニンの生成に至るため、固体反応生成物からなる固相中で転移する金属フタロシアニンの結晶成長が大幅に抑制されて、極めて微細な金属フタロシアニンが得られるものと考えられる。
本発明の結晶成長が抑制された微細な金属フタロシアニン化合物を合成するには上述のごとく、金属塩の非存在下でα−グリコールまたはグリセリンなどの多価アルコールと反応したイソインドリン化合物の溶液と金属塩の多価アルコール溶液とを別々に得た後、この両溶液を混合して加熱することが必要である。
加熱に際しては、固体の反応生成物が得られる温度が80℃から105℃程度であるので、この範囲に少なくとも1分以上、好ましくは3分以上とどまるように加熱し、まず固体反応生成物を合成し、さらに加熱を継続して金属フタロシアニン化合物に転移させるとよい。
ここで固体反応生成物から金属フタロシアニンに転移する温度は110℃以上であることが確認されており、固体反応生成物を合成後、さらに昇温を継続することで、本発明の結晶成長が抑制された均一で微細な金属フタロシアニンを合成することができる。
さらに第六工程として、上述の方法で得た微細な金属フタロシアニンを含む多価アルコール溶液に酸性水溶液を添加し、濾過後、メタノールなどの有機溶剤やアルカリ水溶液で洗浄することにより、副生物が除去されて高純度の金属フタロシアニンを得ることができる。
本発明の方法では金属フタロシアニンの生成に至るまでに固体の反応生成物を経るが、加熱が不十分であった場合などは反応生成物が金属フタロシアニンに転位せず、結果として副生物を生じる場合もあるため、この副生物の生成を防止するために、酸性水溶液を接触させることが好ましいのである。
なお、この副生物はメタノールやアルカリ水溶液に可溶で、IRスペクトル、H−NMRおよびC13−NMRスペクトル測定、さらに元素分析からフタルイミドであることが判明した。
ここで添加する酸性水溶液に種類には特に限定はなく、塩酸水溶液、硫酸水溶液、硝酸水溶液、蟻酸水溶液など公知の酸性水溶液を用いることができ、また、その濃度は0.1重量%以上であれば特に限定はないが、実用上は20重量%以下が好ましい。
副生物を除去した金属フタロシアニンは、乾燥や造粒するなどして印刷インキや塗料用の着色剤などとして用いることができる。本発明の方法で製造した金属フタロシアニンは均一な微細粒子であるため、そのままでも印刷インキや塗料の着色剤などとして用いることもできるが、必要に応じて粉砕することにより、さらに微細化することもできる。
(実施例1)
オルトフタロニトリル(和光純薬工業(株)社製)1.0gとグリセリン(和光純薬工業(株)社製)19.0gとを容量50mlの丸底フラスコに投入し、ついで攪拌しながら110℃に調節したオイルバスで90分間かけてオルトフタロニトリルを加熱溶解させて、イソインドリン化合物の溶液を調整した(第一工程)。なお、この溶液は黄色で未溶解のオルトフタロニトリルは見られなかった。
一方、塩化銅(II)(和光純薬工業(株)製)1.0gとグリセリン(和光純薬工業(株)社製19.0gとを容量50mlの丸底フラスコに投入し、ついで攪拌しながら100℃に調節したオイルバスで60分間かけて塩化銅(II)を加熱溶解させて、硫酸銅(II)のグリセリン溶液を調整した(第二工程)。
次に、第二工程で得られた硫酸銅(II)のグリセリン溶液を6.0g分取し、第一工程で得られたイソインドリン化合物溶液を含む丸底フラスコに投入し、60〜70℃の温度範囲で10分間攪拌して均一の混合溶液を得た(第三工程)。
その後、オイルバス中で毎分5℃の昇温速度で該混合溶液を加熱し(第四工程)、150℃に到達後、その温度のまま15分間反応を継続した(第五工程)。なお、この間に、溶液は温度が100℃前後から緑色を呈し、さらに120℃前後を境に緑色から濃い青色に変化した。
反応終了後、80℃以下に冷却して1Nの塩酸水溶液20gを投入し、30分間攪拌した(第六工程)。
その後、内容物を0.1μmのメンブレンフィルターで濾過して、濃度が5重量%の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、ついでメタノールで洗浄して濾残を80℃で2時間乾燥し、青色固形物を得た(収率:50.5%)。
ここで得られた固形物のマススペクトル測定から銅フタロシアニンであることが確認され、X線回折スペクトル(理学電機(株)製 RINT−ULTIMA+)から、その結晶形はα型であることが判明した。また透過型電子顕微鏡による観察からその一次粒子は長径が200nm以下、短径は50nm前後の微細な粒子であった(図2)。
(実施例2)
オルトフタロニトリル1.0g、エチレングリコール19.0g、DBU3滴とを容量50mlの丸底フラスコに投入し、ついで攪拌しながら60℃に調節したオイルバスで60分間かけてオルトフタロニトリルを加熱溶解させて、イソインドリン化合物の溶液を調整した(第一工程)。なお、この溶液は黄色で未溶解のオルトフタロニトリルは見られなかった。
一方、塩化銅(II)1.0gとエチレングリコール19.0gとを容量50mlの丸底フラスコに投入し、ついで攪拌しながら100℃に調節したオイルバスで60分間かけて塩化銅(II)を加熱溶解させて、塩化銅(II)のエチレングリコール溶液を調整した(第二工程)。
次に、第二工程で得られた塩化銅(II)のエチレングリコール溶液に0.75gのメタノール性アンモニア溶液(和光純薬工業(株)社製)を添加し、よく攪拌したのち、第一工程で得られたイソインドリン化合物を含む溶液と混合した(第三工程)。
その後、最終的な反応温度が180℃である以外は実施例1と同様にして反応させ(第四工程、第五工程)、塩酸水溶液を添加し(第六工程)、アルカリ洗浄、メタノール洗浄、濾過、乾燥を実施して、青色固形物を得た(収率:56.0%)。
その後、実施例1と同様にしてマススペクトル測定、X線回折スペクトル測定を実施したところ、α型の銅フタロシアニンであることが判明し、その一次粒子は長径が120nm以下、短径は10〜15nm程度で極めて微細な粒子であった(図3)。
(比較例1)
オルトフタロニトリル1.0g、塩化銅(II)0.3g、エチレングリコール19.0gを丸底フラスコに投入し、攪拌しながら150℃で2時間反応させて銅フタロシアニンを得た(収率:55.0%)。
なお、得られた銅フタロシアニンは明らかに粒子径が大きかったのでマイクロスコープVH−8000(キーエンス(株)社製)で観察した。その形状は長径の長さが10〜30μm程度の針状であり、結晶成長して粗大化していることが確認された(図4)。
本発明の金属フタロシアニンを製造する工程の一例を示す工程フロー図。 実施例1で得られた銅フタロシアニンの透過電子顕微鏡写真。 実施例2で得られた銅フタロシアニンの透過電子顕微鏡写真。 比較例1で得られた銅フタロシアニンのマイクロスコープ写真。

Claims (4)

  1. 一般式(1)
    Figure 2005145896
    (一般式(1)中の環Aは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン基の置換基を有してもよいベンゼン環又はナフタレン環を示す。)
    で示されるフタロニトリル化合物と金属塩とを反応させて金属フタロシアニンを製造する方法であって、
    (1)該フタロニトリル化合物をα−グリコール類又はグリセリンである多価アルコールとを反応させてイソインドリン化合物を合成する第一工程と、
    (2)該金属塩をα−グリコール類又はグリセリンである多価アルコールに加熱溶解させる第二工程と、
    (3)該第一工程で得られた該イソインドリン化合物を含む該多価アルコール溶液と、該第二工程で得られた該金属塩を含む該多価アルコール溶液とを混合して混合溶液を得る第三工程と、
    (4)該混合溶液を加熱して該イソインドリン化合物と該金属塩由来の金属イオンとを反応させて固形の反応生成物を得る第四工程と、
    (5)該反応生成物をさらに加熱して金属フタロシアニンに転位させる第五工程と、
    を含むことを特徴とする金属フタロシアニンの製造方法。
  2. 該第三工程において、アンモニア又は有機塩基を添加する請求項1に記載の金属フタロシアニンの製造方法。
  3. 該金属フタロシアニンを含む該多価アルコール溶液に酸性水溶液を接触させる第六工程をさらに含む請求項1又は2に記載の金属フタロシアニンの製造方法。
  4. 該金属塩が銅塩である請求項1から3のいずれかに記載の金属フタロシアニンの製造方法。



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