JP2005144938A - 緊張材用被覆物および緊張材 - Google Patents

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Abstract

【課題】現場での作業を軽減できて、緊張材とコンクリートとの一体化や緊張材の防食を図ることができるとともに、緊張材の緊張可能期間および硬化性樹脂の硬化期間を確実に管理できる緊張材用被覆物および緊張材を提供すること。
【解決手段】緊張材用被覆物1は、緊張材100の表面を被覆する第1層110と、第1層110の外側に設けられる第2層120と、第2層120の外側に設けられる第3層130とを備える。第1層110は、硬化性樹脂であるエポキシ樹脂粉体により形成されている。第2層120は、エポキシ樹脂と、ケチミン化合物と、硫酸マグネシウム・7水和物と、酸化カルシウムとを含む。第3層130は、JIS Z0208に準拠する透湿度が5g/m・24のポリプロピレンを含む。
【選択図】 図1

Description

本発明は、緊張材用被覆物および緊張材に関する。
従来、プレストレストコンクリートのポストテンション工法では、まず、コンクリート打設用の型枠内にシースを埋設し、このシースにPC鋼材等の緊張材を挿入した後、コンクリートを打設する。次に、打設したコンクリートが硬化した後に緊張材を緊張させ、この状態でシースと緊張材との間にセメントミルク等のグラウト材を注入する。かかる工法により、緊張材とコンクリートとの一体化を図れるとともに、緊張材の防食を行うことができる。
しかしながら、緊張材をシースに挿入したり、シースにグラウト材を注入することは、非常に繁雑な作業であり、施工現場において多くの時間と労力とが必要であった。さらに、シース内へのグラウト材の注入が不完全になりやすいため、この不完全な箇所に水分や塩分等が入りこむことにより、緊張材が腐食するという問題もあった。
このような問題を解決するために、特許文献1には、以下のような技術が開発されている。すなわち、予め、工場等で、シースと緊張材との間に、通常状態では液状であるが常温で徐々に硬化する硬化性組成物(緊張材用被覆物)を注入した緊張部材を製造しておく。次に、この緊張部材を現場に搬入して、コンクリート打設用型枠内の所定位置に配置した後、型枠内にコンクリートを打設し、コンクリート硬化後であって液状の緊張材用被覆物が硬化する前に緊張材を緊張させる。その後、常温下で緊張材用被覆物が徐々に硬化するため、最終的には、緊張材とコンクリートとが一体化することになる。従って、施工現場におけるグラウト材の注入作業を不要にできる。また、予め工場内でシースと緊張材との間に緊張材用被覆物を注入するので、シース内に不完全箇所が生じにくいから、不完全な箇所からの水分等の侵入による緊張材の腐食を防ぐこともできる。
しかしながら、コンクリートは、硬化時の発熱(水和熱)により100℃近くの高温に達する場合がある。このような高温下では、前記緊張材用被覆物は、硬化反応が急速に進むため、コンクリートが所定の硬さとなる前に、緊張材用被覆物が既に硬化してしまう可能性があり、この場合には、緊張材の緊張ができず、コンクリートにプレストレスをかけることができない。
一方、緊張材用被覆物を構成する硬化剤や硬化促進剤等の添加率を少なくすれば、高温時における急速な硬化反応の進行を防止できる。しかし、この場合には、緊張材用被覆物が完全に硬化するまでの期間が長期間になりすぎて、未硬化部分にある緊張材に対して水等が触れやすくなって、緊張材の防食が十分に図れないことになる。
なお、本発明では、緊張材用被覆物が流体状態である期間のことを、「緊張材の緊張可能期間」と称し、また、緊張材用被覆物が完全に硬化するまでの期間のことを、「硬化期間」と称する。
そこで、以上の問題を解決するために、特許文献2では、前記緊張材用被覆物として、水分(水蒸気)と反応して硬化を開始する湿気硬化型エポキシ樹脂を採用し、100℃近くの高温下での急速な硬化反応を防止し、緊張材の緊張可能期間を延長できる技術が提案されている。すなわち、本技術では、シースを介して、コンクリート硬化時に生じた水分を湿気硬化型エポキシ樹脂内に取り込むことにより、湿気硬化型エポキシ樹脂の硬化を開始させる。このように、コンクリートの硬化開始に伴って、湿気硬化型エポキシ樹脂の硬化が開始するため、コンクリート硬化時に生じる水分量等を考慮して緊張材用被覆物の組成を調整することにより、緊張材の緊張可能期間および硬化期間を管理できることになる。
特公平5−69939号公報 特開2002−60465号公報
しかしながら、コンクリート硬化時に生じる水分の量は、コンクリート中の水セメント比や、コンクリートの温度、コンクリートの厚さ、環境温度・湿度等の様々な要因により大きく左右されるため、施工現場ごとに条件が変化し、緊張材用被覆物が予定より早く硬化してしまったり、予定期間をすぎても硬化しない等の事態が生じる可能性があった。特に、シースを介して水分を取り込むため、梅雨時等の高湿度下に当該緊張部材を置いていた場合には、現場へ搬入する前に、湿気硬化型エポキシ樹脂の硬化が既に開始してしまう可能性があった。また、逆に乾燥期で大気中の湿分が少ない場合や、シースの透水性や透湿性がよくない場合には、緊張材用被覆物がいつまでたっても硬化しないという問題もあった。以上より、緊張材の緊張可能期間および硬化期間の管理が非常に困難であるという問題があった。
本発明の目的は、現場での作業を軽減できて、緊張材とコンクリートとの一体化や緊張材の防食を図ることができるとともに、緊張材の緊張可能期間および硬化性樹脂の硬化期間を確実に管理できる緊張材用被覆物および緊張材を提供することにある。
本発明は、プレストレストコンクリートを構成する緊張材の表面を被覆する緊張材用被覆物であって、前記緊張材の表面を被覆し、硬化性樹脂を含んで構成される第1層と、この第1層の外側に設けられ、硬化性樹脂、湿気硬化型硬化剤、および結晶水含有化合物を含んで構成される第2層と、この第2層の外側に設けられ、実質的に非透水性かつ非透湿性の合成樹脂を含んで構成される第3層とを備えることを特徴とする。
前記緊張材とは、プレストレストコンクリート構造物用の鋼材(PC鋼材)である。この緊張材には、鋼棒や鋼線、鋼撚線等が含まれる。鋼棒には、例えば、JIS G3109に規定されたもの等が含まれる。鋼線には、例えば、JIS G3536に規定されたもの等が含まれる。鋼撚線は、前記鋼線を撚ったものである。
緊張材の腐食を確実に防ぐために、前記第1層の硬化性樹脂は、工場等で緊張材に硬化性樹脂を施す工程から現場に敷設して緊張させるまでに硬化していることが好ましく、コンクリートの打設前に硬化していることがより好ましい。要するに、第1層の硬化性樹脂は、できるだけ早期に硬化していることが好ましい。
このため、例えば、硬化性樹脂の粉体を緊張材の表面に静電粉体塗装加工等してから冷却し、これにより、第1層を構成する硬化性樹脂を工場内で硬化させることができる。
また、第1層の硬化性樹脂に対して各種の硬化剤を適量添加して、前記硬化性樹脂の硬化期間を調整することもできる。この硬化剤としては、例えば、脂肪族アミンや芳香族アミン、脂環族アミン等のアミン系硬化剤や、ポリアミド系硬化剤、潜在性硬化剤、後述するケチミン化合物等の湿気硬化型硬化剤等を採用できる。
また、第1層の硬化性樹脂に硬化促進剤や潜在性硬化剤等の硬化助剤を添加して、前記硬化性樹脂の硬化期間を調整することもできる。
前記第1層の硬化性樹脂としては、緊張材の表面を被覆して、少なくとも10年、好ましくは20年以上の防食性を有し、かつ緊張材との接着性の高い樹脂が好ましく、例えば、エポキシ樹脂や、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂を採用できる。この中でも、第1層の硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂がより好ましい。
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基と呼ばれる反応基を持つ樹脂状物質であり、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、環式脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル系樹脂、グリシジルアミン系樹脂、複素環式エポキシ樹脂のいずれでもよい。エポキシ樹脂には、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、テトラグリシジルアミンジフェニルメタン等が含まれる。特に、低コストである点で、ビスフェノールAジグリシジルエーテルや、ビスフェノールFジグリシジルエーテルが適している。
以上の緊張材用被覆物において、前記第1層は、前記緊張材の表面を被覆する内層と、この内層の外側で、かつ前記第2層の内側に設けられる外層とを備え、前記内層は、硬化性樹脂と、硬化促進剤および潜在性硬化剤の少なくともいずれか1つとを含み、前記外層は、実質的に非透水性かつ非透湿性の合成樹脂を含んで構成されることとすることができる。
ここで、前記内層を構成する硬化性樹脂には、前記第1層を構成する硬化性樹脂と同様のものを採用できる。
前記内層は、潜在性硬化剤および硬化促進剤の少なくともいずれかを含んで構成すればよく、前述したように、コンクリートの打設前等のできるだけ早期に、前記内層の硬化性樹脂が硬化するように、潜在性硬化剤や硬化促進剤の種類、添加量等を決めればよい。潜在性硬化剤や硬化促進剤の添加量としては、例えば、硬化性樹脂に対して10重量%以下とすることができる。
前記潜在性硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミドおよびその誘導体や、アジピン酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類、ジアミノマレオニトリルおよびその誘導体、アミンアダクト類、硬化剤を被膜したマイクロカプセル等を採用できる。
また、前記硬化促進剤としては、例えば、2,4,6−トリス(ジアミノメチル)フェノールや、ベンジルジメチルアミン等の第3級アミン化合物や、イミダゾール化合物、BF錯体等を採用できる。
このように第1層の硬化性樹脂が早期に硬化するため、緊張材が外部環境の影響を受けにくくなるから、外部からの水分等の侵入による緊張材の腐食を確実に防止できる。
以上の緊張材用被覆物において、前記外層を構成するとともに、実質的に非透湿性かつ非透水性の合成樹脂としては、JIS Z0208に準拠する透湿度が、温度40℃、相対湿度90%、厚さ40μmで50g/m・24h以下のものにできる。
JIS Z0208に準拠する透湿度とは、温度40℃、相対湿度90%の条件下で、厚さ40μmのフィルム1mに対して24時間の間に通過する水蒸気のg数を示すものである。この透湿度の単位は、g/m・24hで表される。
透湿度が50g/m・24h以下の合成樹脂とは、透湿性が比較的小さいことを示すため、実質的に非透湿性かつ非透水性の合成樹脂と考えることができる。つまり、外層の合成樹脂は、外部からの透水および透湿を防止できる。逆に、透湿度が50g/m・24hより大きい合成樹脂は、外部からの透水および透湿を十分に防止できない可能性がある。
透湿度50g/m・24h以下の合成樹脂としては、ポリエチレンや、ポリプロピレン等が含まれるが、これには限定されない。具体的に、高密度ポリエチレンの透湿度は20g/m・24hであり、ポリプロピレンの透湿度は5g/m・24hである。このため、前記外層を構成する合成樹脂としては、ポリプロピレンであることが好ましい。
前記透湿度は、外層の厚みによって変化する、つまり、外層が厚くなればなるほど、透湿度が小さくなる。従って、緊張材用被覆物の厚みは、0.6mm以上であることが好ましく、より好ましくは、1.0mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上である。外層の厚みを0.6mm未満とした場合には、透湿度の条件は満たすものの、強度等が低下するおそれがある。なお、外層を構成する樹脂としては、コンクリートのアルカリに対抗するために、耐アルカリ性を有するものが好ましい。
また、前記第2層を構成する硬化性樹脂は、前記第1層の硬化性樹脂と同様に考えることができ、例えば、エポキシ樹脂や、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂を採用でき、好ましくはエポキシ樹脂である。このエポキシ樹脂も前記同様に考えることができる。
前記第2層の湿気硬化型硬化剤とは、水分と反応して硬化剤を生成し、この硬化剤により硬化性樹脂の硬化反応を開始させるものである。この湿気硬化型硬化剤としては、ケチミン化合物が好ましい。ケチミン化合物とは、カルボニル化合物とアミン化合物との脱水縮合反応により誘導され、ケチミン結合を有する化合物である。この脱水縮合反応は、例えば、アミン化合物に対して理論反応量以上のカルボニル化合物を添加し、反応生成水を除去することにより進行させることができる。なお、ケチミン結合は下記式で表すことができる(化1参照)。
Figure 2005144938
前記化1において、RおよびRは、水素原子またはアルキル基、シクロヘキシル基、アリール基等の一価の炭化水素基を示す。
カルボニル化合物は、アミン化合物をケチミン化するものであり、ケトン類およびアルデヒド類を含む。ケトン類には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、アセトフェノンやベンゾフェノン等の芳香族ケトン等が含まれる。アルデヒド類には、例えば、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等の鎖式アルデヒド、ベンズアルデヒド等の芳香族アルデヒド等が含まれる。
アミン化合物としては、脂肪族系、脂環式系、芳香族系のいずれも採用でき、また、モノアミン、ポリアミン、ポリアミドのいずれでもよい。アミン化合物には、例えば、メチルアミン、エチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、アルコキシプロピルアミン、アリルアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノシクロヘキサン等が含まれる。
前記第2層の結晶水含有化合物としては、コンクリート打設時の発熱を起点として結晶水を放出することが好ましい。このような構成とすれば、コンクリート打設前に硬化性樹脂が硬化を開始することがなく、あくまで、コンクリート打設時を基準として硬化性樹脂が硬化を開始するので、緊張材の緊張可能期間や硬化性樹脂の硬化期間を確実に管理できる。なお、工場等において前記第2層を形成する場合には、例えば、第3層の合成樹脂が200℃近くの高温で溶融状態となる場合があり、このため、第2層を構成する結晶水含有化合物が高温にさらされ結晶水を放出する可能性がある。しかしながら、第3層の合成樹脂を硬化するために外層が急冷されるため、前記結晶水の放出によって第2層の硬化性樹脂が硬化を開始してしまうという影響はほとんどない。
また、結晶水含有化合物は、100℃以下の温度で結晶水を放出することが好ましい。このような結晶水含有化合物としては、ピロリン酸ソーダ・10水和物、硫酸アンモニウム・アルミニウム・24水和物、カリウムミョウバン、硫酸アルミニウム・18水和物、硫酸マグネシウム・7水和物、硫酸鉄(II)・7水和物(硫酸第一鉄・7水和物)、塩化マンガン・4水和物、硝酸カルシウム・4水和物、チオ硫酸ナトリウム・5水和物等を採用できる。ただし、結晶水の数は、前記には限定されない。各結晶水含有化合物の結晶水放出温度は、ピロリン酸ソーダ・10水和物が100℃、硫酸アンモニウム・アルミニウム・24水和物が93.5℃、カリウムミョウバンが92.5℃、硫酸アルミニウム・18水和物が86.5℃、硫酸マグネシウム・7水和物が70℃、硫酸鉄(II)・7水和物(硫酸第一鉄・7水和物)が64℃、塩化マンガン・4水和物が58℃、硝酸カルシウム・4水和物が45℃、チオ硫酸ナトリウム・5水和物が33℃である。また、一般的な我が国の気温とコンクリート打設温度等を考慮すれば、結晶水含有化合物は、90℃以下の温度で結晶水を放出することが好ましく、80℃以下の温度で結晶水を放出することがより好ましい。
ただし、道路現場等の夏場では、外部環境の温度が35℃位になるため、結晶水含有化合物は、40℃以上の温度で結晶水を放出することがより好ましい。結晶水含有化合物としては、結晶水放出温度が、想定される外部環境温度、例えば25℃等、よりも確実に高いが、あまりに高すぎないものとして、硫酸マグネシウム水和物または硫酸鉄(II)水和物がより好ましい。
また、前記第2層は、前記原料に加えて更に発熱剤を含んで構成してもよく、この際、前記発熱剤としては、酸化カルシウムであることが好ましい。発熱剤とは、水と反応して熱を発するものであり、例えば、酸化カルシウムや、塩化アルミニウム水和物等が含まれる。ここで、結晶水含有物から結晶水を放出するためには、各化合物固有の融解熱が必要である。従って、コンクリート硬化時に発生する熱量が、結晶水を放出する熱量よりも大きい場合には、特に、発熱剤等を添加しなくても、結晶水含有物から結晶水が放出される。しかしながら、熱量が不十分となる場合等には、十分な熱量を確保すべく発熱剤を添加する必要である。
前記第2層では、コンクリートの水セメント比や、コンクリートの発熱による温度、気温、湿度等の環境条件に応じて、湿気硬化型硬化剤や結晶水含有化合物の種類、配合量を調節することにより、緊張材の緊張可能期間や硬化性樹脂の硬化期間を調整する。このため、前記第2層には、緊張材の緊張可能期間や硬化期間を調整するなどのために、前述した硬化促進剤や潜在性硬化剤等の硬化助剤を添加できる。例えば、外部環境の温度が23℃以下で、かつコンクリートの発熱による温度が75℃以下、さらには、65℃以下の比較的低温の場合には、湿気硬化型硬化剤だけでは、硬化期間が長くなりすぎるおそれがあるため、この場合には、潜在性硬化剤等を添加できる。
また、前記第3層は、最外層として緊張材の外形を形成するとともに、内部を保護し、第2層が未硬化の流動状態にある場合の保護膜として機能する。第3層の合成樹脂には、前記第1層を内層と外層との2層構成とした場合における外層と同様の合成樹脂、例えば、ポリプロピレンを採用できる。第3層を構成する合成樹脂としては、前述同様に、コンクリートのアルカリに対抗するために、耐アルカリ性を有するものが好ましい。
本発明において、第2層では、コンクリートが硬化を開始した時の発熱によって、結晶水含有物が結晶水を放出し、この放出された水分と湿気硬化型硬化剤とが加水分解反応を起こして硬化剤が生成され、この生成された硬化剤により硬化性樹脂の硬化が開始する。なお、第2層に発熱剤を添加した場合には、この発熱剤が結晶水含有物からの結晶水の放出を助ける働きをする。つまり、コンクリート硬化時の発熱により結晶水含有化合物の結晶水の一部が放出され、その水分により発熱剤が発熱して他の結晶水も放出され、前記同様の加水分解反応が進行する。
また、第3層を、実質的に非透水性かつ非透湿性の合成樹脂で構成したので、前記加水分解反応は、第2層内の密閉系の中で進行する。このため、仮に、当該緊張材用被覆物が高湿度下に置かれていたとしても、外部環境の影響をほとんど受けないので、工場等から現場への搬送時、すなわち、コンクリート打設前に硬化性樹脂が硬化しはじめてしまうおそれがない。
以上のように、本発明によれば、コンクリートの打設後、コンクリートが硬化しはじめる際に発生する熱によって、第2層の硬化性樹脂が硬化を開始するため、コンクリート打設前に、第2層の硬化性樹脂が硬化し始めることがないから、緊張材の緊張可能期間を確実に管理できる。なお、緊張材の緊張可能期間としては、作業性等を考慮して、コンクリートの打設から0.5年(6月)以内が好ましい。
また、コンクリートの打設時を基準として第2層の組成を調整することにより、第2層の硬化性樹脂は、所定の期間で確実に硬化するように調整できる。このため、緊張材とコンクリートとの一体化を図ることができるうえ、第2層の硬化性樹脂の硬化期間を確実に管理できる。従って、緊張材用被覆物の未硬化によって緊張材が腐食するのを確実に防止できる。なお、第2層の硬化期間は、コンクリートの打設から3年以内が好ましく、1.5年以内がより好ましい。
また、緊張材の表面を被覆する第1層を備え、この第1層の硬化性樹脂がコンクリート打設前に硬化するように調整することにより、コンクリート打設後に生ずる水分が緊張材へと伝わるのを確実に防止でき、緊張材の腐食をより一層確実に防止できる。
また、緊張材用被覆物によって被覆された緊張材を、予め、工場等で形成することにより、現場でのグラウト剤注入作業が不要になるので、現場での作業を軽減できる。
本発明の緊張材は、以上のような緊張材用被覆物により表面が被覆されていることを特徴とする。
本発明の緊張材用被覆物および緊張材によれば、現場での作業を軽減できて、緊張材とコンクリートとの一体化や緊張材の防食を図ることができるとともに、緊張材の緊張可能期間および硬化性樹脂の硬化期間を確実に管理できるという効果がある。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る緊張材用被覆物を図面に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態に係る緊張材用被覆物1を示す断面図である。図1に示すように、緊張材用被覆物1は、プレストレストコンクリート(図示略)を構成する緊張材100の表面を被覆するものである。緊張材用被覆物1は、芯材となる緊張材100の表面を被覆する第1層110と、この第1層110の外側に設けられる第2層120と、この第2層120の外側に設けられる第3層130とを備えて構成される。
緊張材100は、プレストレストコンクリート構造物用の鋼線を撚った鋼撚線である。
第1層110は、硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を含んで構成されている。第1層110は、エポキシ樹脂の粉体物を静電粉体塗装加工により、緊張材100の表面に付着させた後、これを冷却して完全に硬化させたものであり、例えば、厚さ1.0mmとして形成されている。従って、第1層110は、緊張材用被覆物1の製造段階、すなわち、現場へ搬入する前に既に硬化している。
第2層120は、硬化性樹脂であるエポキシ樹脂と、湿気硬化型硬化剤であるケチミン化合物と、結晶水含有化合物である硫酸マグネシウム・7水和物と、発熱剤である酸化カルシウムとを含んで構成されている。なお、硫酸マグネシウム・7水和物は、70℃で結晶水を放出する。つまり、硫酸マグネシウム・7水和物は、例えば、25℃等の一般的な外部環境の温度では結晶水を放出しないが、この外部環境の温度よりも高い温度で結晶水を放出することになる。
第2層120を構成する各材料の配合量や配合比は、緊張材の緊張可能期間がコンクリートの打設から0.5年(6月)以内であり、かつ硬化期間がコンクリートの打設から1.5年以内となるように調整しておく。このように調整するために、例えば、コンクリートの水セメント比や、コンクリートの発熱による温度、気温、湿度等の環境条件を考慮して、硬化促進剤や潜在性硬化剤等の硬化助剤を第2層120内に添加できる。
前述したように、硬化促進剤としては、例えば、2,4,6−トリス(ジアミノメチル)フェノールや、ベンジルジメチルアミン等の第3級アミン化合物や、イミダゾール化合物、BF錯体等を挙げることができる。また、潜在性硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミドおよびその誘導体や、アジピン酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類、ジアミノマレオニトリルおよびその誘導体、アミンアダクト類、硬化剤を被膜したマイクロカプセル等を挙げることができる。
具体的には、本実施形態における第2層120の組成としては、エポキシ樹脂を100部、ケチミン化合物2部、硫酸マグネシウム・7水和物6部、酸化カルシウム5部、潜在性硬化剤であるジシアンジアミドを0.2部とすることができる。
第3層130は、ポリプロピレンにより、厚み2.0mmで構成されている。このポリプロピレンは、JIS Z0208に準拠する透湿度が、温度40℃、相対湿度90%、厚さ40μmで、5g/m・24hであるため、実質的に非透水性かつ非透湿性の合成樹脂である。なお、第3層130を構成する合成樹脂としては、前記ポリプロピレンには限定されず、実質的に非透水性かつ非透湿性の合成樹脂、例えば、透湿度が50g/m・24h以下の合成樹脂を採用できる。
次に、緊張材用被覆物1を用いて、ポストテンション工法により、プレストレストコンクリート構造物を施工する手順を説明する。
まず、コンクリート打設用の型枠を組み、緊張材用被覆物1が被覆された緊張材100を前記型枠内の所定位置に配置する。次に、型枠内にコンクリートを打設して、所定の硬さとなるまで待機する。
ここで、コンクリートが硬化を開始しはじめると、コンクリートは、水和熱を生じて100℃近くの高温に達する。そして、この水和熱が、第2層120の硫酸マグネシウム・7水和物に伝わると、硫酸マグネシウム・7水和物は、結晶水の一部を放出し、この結晶水が酸化カルシウムと反応して、第2層120内は、より一層高温となる。このため、硫酸マグネシウム・7水和物が残りの結晶水も全て放出し、この放出された結晶水がケチミン化合物と反応して硬化剤が生成され、この生成された硬化剤によりエポキシ樹脂の硬化反応が開始する。
次に、コンクリートが所定の硬さとなった後で、緊張材の緊張可能期間内であるコンクリート打設から6月以内に、緊張材100を緊張させて、コンクリートにプレストレスをかける。その後、コンクリートの打設から1.5年以内には、第2層120のエポキシ樹脂が完全に硬化するため、これにより、緊張材100の防食が図られ、プレストレストコンクリート構造物の施工が完了する。
第1実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)コンクリートの打設後、コンクリートが硬化を開始する際に発生する熱によって、第2層120のエポキシ樹脂が硬化を開始するため、コンクリートの打設前に第2層120のエポキシ樹脂が硬化し始めることがないから、緊張材100の緊張可能期間を確実に管理できる。具体的には、緊張材100の緊張可能期間を、コンクリートの打設から0.5年以内として確実に管理できる。
(2)また、第3層130を、実質的に非透水性かつ非透湿性のポリプロピレンで構成したので、例えば、緊張材用被覆物1が高湿度下に置かれていたとしても、外部環境の影響をほとんど受けないから、コンクリート打設前に、第2層120のエポキシ樹脂が硬化を開始してしまうことを防止できる。
(3)コンクリートの打設時を基準として第2層120の組成を調整することにより、第2層120のエポキシ樹脂が所定期間で確実に硬化するから、緊張材100とコンクリートとの一体化を図ることができるうえ、エポキシ樹脂の硬化期間を確実に管理できる。このため、緊張材用被覆物1の未硬化による、緊張材100の腐食を確実に防止できる。具体的には、硬化期間を、コンクリートの打設から1.5年として確実に管理できる。
(4)緊張材100の表面を被覆する第1層110のエポキシ樹脂がコンクリート打設前に硬化するようにしたので、緊張材100に対してコンクリート打設に伴う水分等が侵入することを確実に防止でき、緊張材100の腐食をより一層確実に防止できる。
(5)緊張材用被覆物1によって被覆された緊張材100を、予め工場等で形成することにより、現場でのグラウト剤注入作業が不要になるので、現場での作業を軽減できる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る緊張材用被覆物を図面に基づいて説明する。
なお、前記第1実施形態と同一または相当する構成部分には同じ符号を付し、説明を省略または簡略化する。
図2は、第2実施形態に係る緊張材用被覆物2を示す断面図である。
図2に示すように、緊張材用被覆物2は、緊張材100の表面を被覆する第1層210と、この第1層210の外側に設けられた前記第2層120と、第2層120の外側に設けられた前記第3層130とを備えて構成され、一般的な押出成形機で製造される。
図2に示すように、第1層210は、緊張材100の表面を被覆する内層211と、この内層211の外側に設けられる外層212とを備えて構成される。従って、緊張材用被覆物2は、内層211、外層212、第2層120、および第3層130の4層の構造として構成されている。
内層211は、緊張材100の周囲に保護膜を形成してあらゆる腐食を防止し、少なくとも10年、好ましくは20年以上の防食性を付与するとともに、緊張材100との接着性が良好なものが望ましい。このため、内層211は、硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を含んで構成されている。なお、エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、テトラグリシジルアミンジフェニルメタン等を採用できる。特に、低コストである点で、ビスフェノールAジグリシジルエーテルや、ビスフェノールFジグリシジルエーテルが適している。
また、内層211は、工場等で、緊張材100に前記エポキシ樹脂を施した後、現場に敷設して緊張させるまでに硬化することが好ましく、コンクリート打設前に硬化していることがより好ましい。このため、内層211には、潜在性硬化剤および硬化促進剤等の少なくともいずれかが添加されている。
この潜在性硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミドおよびその誘導体や、アジピン酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類、ジアミノマレオニトリルおよびその誘導体、アミンアダクト類、硬化剤を被膜したマイクロカプセル等を採用できる。硬化促進剤としては、例えば、2,4,6−トリス(ジアミノメチル)フェノールや、ベンジルジメチルアミン等の第3級アミン化合物や、イミダゾール化合物、BF錯体等を採用できる。また、潜在性硬化剤や硬化促進剤以外の他の助剤としては、ベンジルアルコール等の希釈剤や、タルク等の充填剤等を採用できる。
具体的には、本実施形態における内層211の組成は、エポキシ樹脂を100部、潜在性硬化剤であるジシアンジアミド8部、硬化促進剤である2,4,6−トリス(ジアミノメチル)フェノール4部、希釈剤であるベンジルアルコール10部、充填剤であるタルク15部とすることができる。
外層212は、ポリプロピレンにより構成されている。前述したように、ポリプロピレンは、JIS Z0208に準拠する透湿度が、温度40℃、相対湿度90%、厚さ40μmで、5g/m・24hであり、実質的に非透水性かつ非透湿性を有する。
この透湿度は、外層212の厚みによって変化する、つまり、外層212が厚くなればなるほど、透湿度が小さくなる。従って、外層212の厚みは、0.6mm以上であることが好ましく、より好ましくは、1.0mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上である。本実施形態の外層212では、厚み1.6mmで形成している。外層212の厚みを0.6mm未満とした場合には、透湿度の条件は満たすものの、強度等が低下するおそれがある。なお、外層212を構成する樹脂としては、耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性に優れているものが好ましい。
第2実施形態によれば、前記第1実施形態の効果に加えて、以下の効果を奏することができる。
(6)第1層210を内層211と外層212の2層構造としたので、緊張材100の腐食を確実に防止できる。この際、外層212を実質的に非透水性かつ非透湿性のポリプロピレンで構成し、さらに、内層211の組成を調節して、コンクリートの打設前に内層211が硬化するようにしたので、緊張材100の腐食をより一層確実に防止できる。
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
前記各実施形態において、第2層120の硬化性樹脂をエポキシ樹脂としたが、これに限らず、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂としてもよい。
前記各実施形態において、第2層120の結晶水含有化合物として、硫酸マグネシウム・7水和物を採用したが、これに限らず、例えば、前述した硫酸鉄(II)・7水和物や硫酸アルミニウム・18水和物等のその他の結晶水含有化合物も採用できる。
前記各実施形態において、発熱剤として酸化カルシウムを採用したが、これに限らず、塩化アルミニウム水和物等のその他の発熱剤を採用してもよい。また、コンクリート打設温度が高温の場合や、高温地域等の十分な温度を確保できる環境条件を備える場合などには、発熱剤を添加しないで第2層120を構成してもよい。
前記各実施形態において、第3層130をポリプロピレンにより構成したが、これに限らず、例えば、ポリエチレンや高密度ポリエチレン等の、非透湿性で、かつ非透水性を有する合成樹脂を採用して構成できる。この非透湿性で、かつ非透水性を有する合成樹脂としては、例えば、JIS Z0208に準拠する透湿度が、温度40℃、相対湿度90%、厚さ40μmで50g/m・24h以下のものを採用できる。
前記第2実施形態において、外層212をポリプロピレンにより構成したが、前記第3層130と同様に、実質的に非透湿性かつ非透水性の合成樹脂を採用して構成できる。
前記各実施形態において、第3層130の厚みを2.0mmとして形成したが、特に限定されず、例えば、0.6mm以上として形成できる。
また、前記第2実施形態において、外層212の厚みを1.6mmとしたが、特に限定されず、例えば、0.6mm以上として形成できる。
前記第2実施形態において、内層211を、潜在性硬化剤および硬化促進剤を含んで構成したが、これに限らず、潜在性硬化剤および硬化促進剤の少なくともいずれかを含んで構成すればよく、内層211の硬化期間を考慮して決定すればよい。
以下、本発明を実施例を挙げて、より具体的に説明する。
[第1実施例]
下記配合の原料を用いて、押出成型機により、第1層、第2層および第3層を備える3層構造の緊張材用被覆物を製造した後、その評価を行った。
(1)緊張材用被覆物の組成および配合量と緊張材の種類
<A>第1層の構成
・エポキシ樹脂:エポキシ粉体樹脂パウダックスE100、日本ペイント株式会社製
<B>第2層の構成
・エポキシ樹脂:アデカレジンEP−4100、旭電化株式会社製;100部
・ケチミン化合物:EPIKURE H3、ジャパンエポキシレジン株式会社製;2部
・硫酸マグネシウム・7水和物;赤穂化成株式会社製;6部
・酸化カルシウム:井上石灰株式会社製;5部
・硬化助剤として潜在性硬化剤であるジシアンジアミド:アデカハードナーEH−3842、旭電化株式会社製:0.2部
<C>第3層の構成
・ポリプロピレン:三井化学株式会社製
<D>緊張材
PC鋼撚線
(2)製造方法
<A>第1層
エポキシ粉体樹脂パウダックスE100を、温度180℃、硬化時間15分間で、静電粉体塗装加工によりPC鋼撚線の表面に塗布した。その後、これを冷却してエポキシ樹脂を硬化させ、厚み1mmの第1層を形成した。
<B>第2層
第2層に用いる各原料を混合・攪拌した組成物を、第1層の表面上に塗布した。
<C>第3層
第2層の組成物が塗布された表面上に、厚み2.0mmでポリプロピレンを押出成形した。以上の工程により、緊張材用被覆物を製造した。
(3)評価
コンクリートの水和熱の発生およびその後の冷却に対応する環境モデルを設定し、この設定した環境モデル下にさらした緊張材用被覆物のサンプルについて、緊張材の緊張可能期間の測定と、硬化期間の測定とを行って、サンプルの評価を行った。
<A>コンクリート打設時に対応する環境モデルの設定
コンクリートを打設した際の硬化に伴う水和熱の発生や、その後の冷却に対応する環境モデルを設定した。この環境モデルとしては、高温地域や夏場等に対応する高温条件の場合と、通常の地域や冬場等に対応する低温条件の場合との2つを設定した。具体的には、恒温恒湿槽を用いて、高温条件の場合としては、温度90℃、相対湿度60%の環境下に14日間さらした後、温度25℃、相対湿度60%の環境下にさらすモデルを設定した。また、低温条件の場合としては、温度70℃、相対湿度60%の環境下に14日間さらした後、温度25℃、相対湿度60%の環境下にさらすモデルを設定した。ただし、本願の実施例には、高温条件についてのみ記載した。
<B>緊張材の緊張可能期間の測定
・測定装置:粘弾性解析装置、株式会社レオロジ製
・測定温度:25℃
・測定対象:前記環境モデル下にさらしたサンプルを所定時間経過後に緊張材から第3層を剥ぎ、第2層からサンプリングしたものを測定対象とした。
・緊張材の緊張可能期間について良否判定:測定した粘度が1万PS(ポイズ)以下の場合には、まだ緊張材の緊張可能期間内であると判断した。つまり、前記環境モデル下にさらしてから、第2層の粘度が1万PSになるまでの日数を緊張材の緊張可能期間とした。サンプルの良否判定は、緊張材の緊張可能期間が0.5年(6月)以内である場合を良好とし、この期間よりも大きい場合を不良とした。
<C>硬化期間の測定
・測定装置:硬度計デュロメータ
・測定方法:JIS K−7215に準拠
・硬化の良否判定:緊張材の緊張可能期間の測定に基づいて、粘度が1万PSに達したサンプルについて、更に、温度25℃、相対湿度60%の環境下にさらした。そして、所定時間経過後に緊張材から第3層を剥ぎ、第2層からサンプリングしたものの硬度を測定した。測定した硬度が60以上の場合に、硬化性樹脂が完全に硬化したものと判定した。つまり、硬度が60になるまでの期間を硬化期間とした。サンプルの良否判定は、硬化期間が1.5年以内である場合を優良とし、3年以内を良好とし、3年より大きい場合を不良とした。
<D>結果
本実施例では、高温条件の場合について実施した。
緊張可能期間の測定では、環境モデルでの放置を開始した日から20日後は、緊張可能であったが、25日後は、緊張不可能であった。つまり、緊張材の緊張可能期間は20〜25日であった。また、硬化期間の測定では、高温環境モデルに放置した後、温度25℃、相対湿度60%の環境下に置き、高温環境モデル放置開始後、通算1年2月では硬化せず、1年5月で硬化していた。つまり、硬化期間は1年2月〜1年5月であった。
以上より、本実施例では、高温条件において、緊張材の緊張可能期間が良好であり、硬化期間が優良であるため、適していると判定した。なお、下記実施例も含めて、各実施例の内容および結果を図3にまとめた。
[第2実施例]
下記配合の原料を用いて、押出成型機により、第1層を構成する内層および外層と、第2層と、第3層とを備える4層構造の緊張材用被覆物を製造した後、その評価を行った。(1)緊張材用被覆物の組成および配合量と緊張材の種類
<A>第1層の構成
<I>内層の構成
・エポキシ樹脂:アデカレジンEP−4100、旭電化株式会社製;100部
・ジシアンジアミド:アデカハードナーEH−3842、旭電化株式会社製:8部
・硬化促進剤である2,4,6−トリス(ジアミノメチル)フェノール:アデカハードナーEHC−30、旭電化株式会社製;4部
・希釈剤であるベンジルアルコール;10部
・充填剤であるタルク;15部
<II>外層の構成
・ポリプロピレン:三井化学株式会社製
<B>第2層の構成
・エポキシ樹脂:アデカレジンEP−4100、旭電化株式会社製;100部
・ケチミン化合物:EPIKURE H3、ジャパンエポキシレジン株式会社製;2部
・硫酸マグネシウム・7水和物;赤穂化成株式会社製;6部
・酸化カルシウム:井上石灰株式会社製;5部
・硬化助剤として潜在性硬化剤であるジシアンジアミド:アデカハードナーEH−3842、旭電化株式会社製:0.2部
<C>第3層の構成
・ポリプロピレン:三井化学株式会社製
<D>緊張材
PC鋼撚線
(2)製造方法
<A>第1層
<I>内層の構成
内層に用いる各原料を混合・攪拌した組成物を、第1層の表面上に塗布した。
<II>外層の構成
内層の表面上に、厚み1.6mmでポリプロピレンを押出成形した。
<B>第2層
第2層に用いる各原料を混合・攪拌した組成物を、外層の表面上に塗布した。
<C>第3層
第2層の表面上に、厚み2.0mmでポリプロピレンを押出成形した。
以上の工程により、緊張材用被覆物を製造した。
(3)評価
製造した緊張材用被覆物の評価は、前記第1実施例の低温条件下において、緊張材の緊張可能期間の測定と、硬化期間の測定とを行った。
緊張可能期間の測定では、環境モデルでの放置を開始した日から20日後は、緊張可能であったが、25日後は、緊張不可能であった。つまり、緊張材の緊張可能期間は20〜25日であった。また、硬化期間の測定は、低温環境モデルに放置した後、温度25℃、相対湿度60%の環境下に置き、低温環境モデル放置開始後、通算1年2月では硬化せず、1年5月で硬化していた。つまり、硬化期間は1年2月〜1年5月であった。
以上より、本実施例では、低温条件において、緊張材の緊張可能期間が良好であり、硬化期間が優良であるため、適していると判定した。なお、下記実施例も含めて、各実施例の内容および結果を図3にまとめた。
本発明の第1実施形態に係る緊張材用被覆物を示す断面図である。 本発明の第2実施形態に係る緊張材用被覆物を示す断面図である。 本発明の実施例の内容および結果を示す図である。
符号の説明
1,2 緊張材用被覆物
100 緊張材
110,210 第1層
120 第2層
130 第3層
211 内層
212 外層

Claims (15)

  1. プレストレストコンクリートを構成する緊張材の表面を被覆する緊張材用被覆物であって、
    前記緊張材の表面を被覆し、硬化性樹脂を含んで構成される第1層と、
    この第1層の外側に設けられ、硬化性樹脂、湿気硬化型硬化剤、および結晶水含有化合物を含んで構成される第2層と、
    この第2層の外側に設けられ、実質的に非透水性かつ非透湿性の合成樹脂を含んで構成される第3層とを備えることを特徴とする緊張材用被覆物。
  2. 請求項1に記載の緊張材用被覆物において、
    前記第1層の硬化性樹脂は、エポキシ樹脂であることを特徴とする緊張材用被覆物。
  3. 請求項1に記載の緊張材用被覆物において、
    前記第1層は、前記緊張材の表面を被覆する内層と、この内層の外側で、かつ前記第2層の内側に設けられる外層とを備え、
    前記内層は、硬化性樹脂と、硬化促進剤および潜在性硬化剤の少なくともいずれか1つとを含んで構成され、
    前記外層は、実質的に非透水性かつ非透湿性の合成樹脂を含んで構成されることを特徴とする緊張材用被覆物。
  4. 請求項3に記載の緊張材用被覆物において、
    前記外層の合成樹脂は、JIS Z0208に準拠する透湿度が、温度40℃、相対湿度90%、厚さ40μmで50g/m・24h以下の合成樹脂であることを特徴とする緊張材用被覆物。
  5. 請求項4に記載の緊張材用被覆物において、
    前記外層の合成樹脂は、ポリプロピレンであることを特徴とする緊張材用被覆物。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の緊張材用被覆物において、
    前記第2層の結晶水含有化合物は、コンクリート打設時の発熱を起点として結晶水を放出することを特徴とする緊張材用被覆物。
  7. 請求項6に記載の緊張材用被覆物において、
    前記結晶水含有化合物は、40℃以上で、かつ100℃以下の温度で結晶水を放出することを特徴とする緊張材用被覆物。
  8. 請求項7に記載の緊張材用被覆物において、
    前記結晶水含有化合物は、硫酸マグネシウム水和物および硫酸鉄(II)水和物の少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする緊張材用被覆物。
  9. 請求項1〜請求項8のいずれかに記載の緊張材用被覆物において
    前記第2層の硬化性樹脂は、エポキシ樹脂であることを特徴とする緊張材用被覆物。
  10. 請求項1〜請求項9のいずれかに記載の緊張材用被覆物において、
    前記第2層の湿気硬化型硬化剤は、ケチミン化合物であることを特徴とする緊張材用被覆物。
  11. 請求項1〜請求項10のいずれかに記載の緊張材用被覆物において、
    前記第3層の合成樹脂は、JIS Z0208に準拠する透湿度が、温度40℃、相対湿度90%、厚さ40μmで50g/m・24h以下の合成樹脂であることを特徴とする緊張材用被覆物。
  12. 請求項11に記載の緊張材用被覆物において、
    前記第3層の合成樹脂は、ポリプロピレンであることを特徴とする緊張材用被覆物。
  13. 請求項1〜請求項12のいずれかに記載の緊張材用被覆物において、
    前記第2層は、発熱剤を含んで構成されることを特徴とする緊張材用被覆物。
  14. 請求項13に記載の緊張材用被覆物において、
    前記発熱剤は、酸化カルシウムであることを特徴とする緊張材用被覆物。
  15. 請求項1〜請求項14のいずれかに記載の緊張材用被覆物により表面が被覆されていることを特徴とする緊張材。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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