JP2005143454A - 排水処理用微生物の選択方法及びこれにより選択された微生物を用いた排水処理方法 - Google Patents

排水処理用微生物の選択方法及びこれにより選択された微生物を用いた排水処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】処理条件の変動や、季節の移り変わり等の影響を受けず、排水処理を安定して行うために有効な微生物を効率的に得る方法、及びこうして得られた微生物を用いて、安定した排水処理を行う方法を提供する。
【解決手段】以下の工程を含む排水処理用微生物の選択方法は、排水処理に有効な微生物を効率的に得ることができ、これを用いた排水処理方法は安定処理が可能である。
(1)処理すべき排水を、活性汚泥により温度20℃以下で処理する工程。
(2)前記(1)の工程を経た後の活性汚泥から固形物を取り除いた水溶液を得る工程。
(3)前記(2)の工程により得られた溶液中に含まれる有機物を、処理すべき排水に含まれる有機物よりも好んで資化する微生物を選択する工程。
【選択図】なし

Description

本発明は、排水処理、特に膜分離活性汚泥処理に有用な微生物の選択方法と、これにより選択された微生物を用いた排水処理方法に関する。
排水の処理において、微生物を用いて排水の浄化を行う活性汚泥処理方法が古くから用いられている。活性汚泥処理方法としては、水中に曝気を行い、微生物の好気的代謝によってBODを分解する方法や、嫌気槽と好気槽の間で活性汚泥を循環させて脱窒を行う方法が知られている。
活性汚泥処理方法は、活性汚泥と処理水との分離工程が必要であり、活性汚泥を重力沈降させた後、上澄み液を処理水として、河川、海洋等に放流している。この際、活性汚泥の沈降性が悪いと処理水質が悪化することから、活性汚泥の沈降性を改善するために、曝気槽に細菌を添加する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
しかしながら、活性汚泥の沈降性を常に良好に保つのは困難であり、かつ手間がかかるため、分離膜を用いて活性汚泥と処理水とを分離する方法が行われている。
分離膜を用いると、活性汚泥の沈降性に関わらず良好な水質の処理水を得ることができる。しかしながら、分離膜を用いた場合であっても、活性汚泥の処理条件の変動や、季節の移り変わり等の影響により、分離膜の閉塞が著しくなる場合がある。このような影響を軽減するため、活性汚泥に分離膜の濾過性を改善する性質を有する微生物を添加する試みもなされている(例えば特許文献2参照)。
しかしながら、このような性質を有する微生物を効率的に得る方法は、いまだ確立されていない。
特開昭62−282697号公報 特開2003−300089号公報
本発明は、処理条件の変動や、季節の移り変わり等の影響を受けず、排水処理を安定して行うために有効な微生物を効率的に得る方法、及びこうして選択された微生物を用いて、安定した排水処理を行う方法を提供することを目的とする。
本発明は、特に膜分離活性汚泥処理に好適である。
即ち本発明の第一の要旨は、以下の工程を含む排水処理用微生物の選択方法である。
(1)処理すべき排水を、活性汚泥により温度20℃以下で処理する工程。
(2)前記(1)の工程を経た後の活性汚泥から固形物を取り除いた水溶液を得る工程。
(3)前記(2)の工程により得られた水溶液中に含まれる有機物を、処理すべき排水に含まれる有機物よりも好んで資化する微生物を選択する工程。
本発明の第二の要旨は、前記選択方法により選択された微生物の菌体及び/又は菌体処理物を活性汚泥と接触させる排水処理方法である。
本発明の微生物の選択方法によれば、処理条件の変動や、季節の移り変わり等の影響を受けず、排水処理を安定して行うことができる微生物を効率的に得ることができる。本発明の選択方法により選択される微生物は、膜分離活性汚泥処理に特に有用である。
本発明の排水処理方法は、前記選択方法によって得られた微生物の菌体及び/又は菌体処理物を、処理すべき排水と接触させるので、排水処理を安定して行うことができる。本発明の排水処理方法は、膜分離活性汚泥処理方法に適用することが特に効果的である。
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明の排水処理用微生物の選択方法は、以下の工程を含む。
(1)処理すべき排水を、活性汚泥により温度20℃以下で処理する工程。
(2)前記(1)の工程を経た後の活性汚泥から固形物を取り除いた水溶液を得る工程。
(3)前記(2)の工程により得られた水溶液中に含まれる有機物を、処理すべき排水に含まれる有機物よりも好んで資化する微生物を選択する工程。
前記(1)の工程において、活性汚泥とは、処理すべき排水中の有機物を資化、代謝する能力を有する生物群を含んだ水溶液をいう。この生物群の入手方法は特に限定はされず、例えば生活排水、食品加工排水等の処理を、活性汚泥を用いて行っている排水処理場等から得ることもできる。また、処理すべき排水を開放系で曝気しているうちに自然に増殖してくる微生物群を用いることもできる。また、土壌等の自然環境に存在する微生物群を採取して用いることもできる。
前記(1)の工程は、処理すべき排水を活性汚泥によって温度20℃以下で処理する。これは、排水処理を不安定にする数々の要因の中で、活性汚泥の固液分離性が冬季に悪化する傾向が強いこと等から、温度低下の影響が大きいと考えられるためである。
活性汚泥の固液分離性悪化の原因としては、以下のような機構が推定される。すなわち、活性汚泥中の平均的な微生物は、水温低下によりその生育活性が低下すると、排水中の有機物を生育するためのエネルギーとして消費し尽くさず、多糖類等を貯蔵物質として生成するようになる。この多糖類等の濃度が活性汚泥中に増加してくると、活性汚泥の沈降性の悪化を招くと共に、多糖類等によって分離膜の微細孔が閉塞されやすくなると考えられる。
この多糖類等を生成する微生物は、いわゆる異化代謝産物抑制(キャタボライトリプレッション)によって、処理すべき排水中に元々含まれる有機物を優先的に資化し、生成された多糖類等を資化しないから、この多糖類等は、一旦生成されると長期に亘って活性汚泥中に滞留することになり、固液分離を阻害し続けることになる。
ここで、処理すべき排水を活性汚泥によって温度20℃以下で処理した後、固形物を取り除いて、固液分離の阻害物質を含む水溶液を得て、この阻害物質を、処理すべき排水中に含まれる有機物よりも好んで資化する微生物を選択することにより、活性汚泥による排水処理に特に好適な微生物を得ることができることを本発明者らは見出した。
また、この微生物を用いて排水処理を行うことにより、活性汚泥中にこの阻害物質が蓄積することを防止できることを本発明者らは見出した。
本発明は、以上のような観点からなされたものであるが、本発明はこの作用機構に基づくものに限定はされない。
なお、前記(1)の工程は、処理すべき排水を実験的に活性汚泥で処理することによって行えばよいが、例えば既存の排水処理場において、温度20℃以下で処理されている際に活性汚泥を採取することによっても、前記(1)の工程を行ったことになる。
前記(2)の工程では、固液分離性の阻害物質を含む活性汚泥から、固形物を取り除いた水溶液を得る。
活性汚泥から固形物を取り除く方法は、活性汚泥を遠心分離する方法、活性汚泥を静置して重力沈降させる方法、阻害物質を通過させるが固形物は阻止する程度の目開きの濾布等で活性汚泥中の固形物を濾し取る方法、凝集剤で活性汚泥中の固形物を凝集させた後除去する方法、等を用いることができる。
前記(3)の工程では、前記(2)の工程により得られた溶液中に含まれる有機物を、処理すべき排水に含まれる有機物よりも好んで資化する微生物を選択する。
前記(3)の工程は、以下の(4)〜(6)の工程を含むことが好ましい。
(4)前記(2)の工程で得られた水溶液に、評価する微生物を接種して培養し、一定時間毎に微生物菌体数を計数する工程。
(5)処理すべき排水に、評価する微生物を接種して、一定時間毎に微生物菌体数を計数する工程。
(6)前記(4)の工程による微生物菌体数の増加量と、前記(5)の工程による微生物菌体数の増加量とを比較し、前記(4)の工程による微生物菌体数の増加量の方が多い場合に、評価する微生物を有用な微生物として選択する工程。
なお、前記(4)及び(5)の工程において、培養に用いる前記(2)の工程で得られた水溶液及び処理すべき排水は滅菌処理等を行い、評価する微生物以外の微生物の影響を排除したものを用いることが好ましい。
前記(4)及び(5)の工程における微生物菌体数の計数方法は、培養液を一定時間(例えば24時間)毎にサンプリングし、寒天培地等のプレートに蒔いて、形成されるコロニー数を計測する方法、顕微鏡で目視して微生物菌体数を計測する方法、吸光度や濁度によって微生物菌体数を推測する方法等を用いることができる。
このような選択方法によって得られる微生物としては、例えばトルロプシス キャンディダ (Torulopsis candida)IFO768株等が挙げられる。
本発明の選択方法によって得られる微生物の菌体及び/又は菌体処理物を活性汚泥と接触させることにより、処理条件の変動や、季節の移り変わり等の影響を蒙ることなく、安定して排水処理を行うことができる。
微生物の菌体としては、得られた菌体の培養液を使用することができる。また、培養液を遠心分離または膜濾過に供することにより集菌した菌体を使用することもできる。
菌体処理物としては、培養液や集菌した菌体を、その生存が維持される状態で適宜処理した形態、例えば固定化菌体の形態のものを使用することができる。固定化菌体の形態としては、培養液や集菌した菌体をアルギン酸またはアクリルアミドで包括した固定物、米糠または籾殻等に吸着させた固定化物等が挙げられる。
微生物の菌体、菌体培養液、菌体処置物は、そのまま使用してもよいし、例えば、無機凝集剤、高分子凝集剤等の適当な添加剤と混合した状態で使用してもよい。また、菌体、菌体培養液、菌体処置物をそれぞれ単独で使用しても、混合して使用してもよい。
本発明の選択方法によって選択される微生物の培養方法は特に限定されない。例えば、炭素源として、グルコース、フルクトース、グルタミン酸ナトリウム、澱粉等を含んだ培養液を用いて培養することができる。また、窒素源として、アンモニア、硫酸アンモニア、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等を含んだ培養液を用いて培養することもできる。
また、その他の有機栄養源として、酵母エキス、肉エキス、麦芽エキス、ペプトン、味液等を含んだ培養液を用いてもよい。また無機塩として、リン酸塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、鉄塩、コバルト塩、銅塩、その他微量金属塩等を含んだ培養液を用いてもよい。
培養条件については、培養液のpHは、好ましくは4〜10であり、より好ましくは5〜9である。
培養温度は、好ましくは10〜40℃であり、より好ましくは20〜30℃である。また、培養期間は、好ましくは10〜100時間であり、より好ましくは20〜50時間である。
本発明の選択方法によって選択される微生物の菌体及び/又は菌体処理物を、活性汚泥と接触させる方法としては特に限定はされず、例えば菌体及び/又は菌体処理物を活性汚泥に添加して排水を処理する方法、菌体及び/又は菌体処理物を固定床として、これに活性汚泥を接触させる方法等を用いることができる。
活性汚泥に添加する場合、微生物量が少なすぎると、固液分離の阻害物質の低減効果が迅速に発揮されない傾向にある。また、添加する微生物量を多くしても、固液分離の阻害物質の低減効果は頭打ちになる傾向にある。したがって、活性汚泥1ml当りの微生物数が1×10〜1×10個となるように微生物を添加することが好ましい。
本発明の排水処理方法は、活性汚泥の沈降性を良好にする効果を有するので、重力沈降によって固液分離を行う排水処理方法に適用することもできるが、分離膜によって固液分離を行う膜分離活性汚泥法に適用すると、その固液分離の阻害物質低減効果が有効に発揮される。
膜分離活性汚泥法に使用する分離膜は、任意の孔径のものを用いることができるが、平均孔径としては0.01〜20μmが好ましく、0.1〜1μmがより好ましい。このような範囲の孔径を有する分離膜は、多糖類等の有機物によって閉塞し易いため、このような範囲の孔径を有する分離膜を使用した膜分離活性汚泥法に、本発明の選択方法で得られた微生物を適用することは特に有効である。
なお、分離膜の形態は特に限定されず、平膜、中空糸膜、袋状膜、チューブラー膜等を用いることができる。
以下、実施例により本発明を説明する。
前記(1)〜(3)の工程を行うことにより、トルロプシス キャンディダ (Torulopsis candida)IFO768株を得た。
得られたトルロプシス キャンディダ (Torulopsis candida)IFO768株を、表1に示す成分濃度でpH7.0に調製した培養液を用いて以下の条件にて前培養した。
Figure 2005143454
500ml三角フラスコに培養液1を100ml分注し、綿栓をして、121℃、20分間オートクレーブで滅菌した。この培養液に、寒天プレートを用いて培養した トルロプシス キャンディダ (Torulopsis candida)IFO768株のコロニーを接種した。そして、30℃、230rpmにて2日間振とう培養器(型式:TB−50RV、高崎科学器械株式会社)で振とうした。
次に、表1に示す成分濃度でpH7.0に調製した培養液を用いて以下の条件にて本培養した。
30Lジャーファーメンター(型式:TS−30、株式会社高杉製作所)に培養液を20L分注し、121℃、20分間オートクレーブで滅菌したあと、前培養にて得られたトルロプシス キャンディダ (Torulopsis candida)IFO768株の培養液100mlを接種し、30℃、250rpm、0.5vvm、0.049MPaにて2日間通気攪拌培養を行った。
図1に示す装置を用いて、生活排水を原水とする排水を、活性汚泥によって60日間処理した。処理開始時に、トルロプシス キャンディダ (Torulopsis candida)IFO768株を、前記本培養液が活性汚泥体積あたり0.15Kg/mとなるように添加した。処理期間の水温は13〜17℃であった。
槽のサイズ等は以下のように構成した。
1.嫌気槽および曝気槽の活性汚泥容量(サイズ):
0.672m(長さ80cm×幅60cm×高さ180cm、水深140cm)
2.処理水量: 3.5m/日
3.余剰汚泥引抜き量:0.105m/日
4.曝気槽から嫌気槽への活性汚泥循環量:7.0m/日
5.曝気量:0.15 Nm/hr
6.膜透過流速:0.9 m/m/日
さらに、曝気槽に中空膜を用いた膜分離装置(膜面積:3.5m、ユニットサイズ外寸:長さ19cm×幅18cm×高さ80cm)を曝気槽内に設置し、吸引濾過により濾液を処理水として取り出した。処理期間中の原水および活性汚泥の性状を表2に示す。
Figure 2005143454
処理期間中の、原水、処理水、活性汚泥から固形物を取り除いた水溶液中にそれぞれ含まれる多糖類濃度、蛋白質濃度、活性汚泥のMLSS、汚泥沈降容量(SV30)、膜分離装置の濾過差圧、濾過性の指標となる減圧濾過による濾過量を、表3に示す。なお、各々の測定は、以下の手順にて行った。
<多糖類濃度の測定>
原水、活性汚泥から固形物を取り除いた溶液、膜で濾過した処理水中の多糖類は、透析膜(Spectrum Laboratories社製、Spectra/Por Membrane 、Type Anisotropic 分画分子量2000)10cmに各液を10ml充填し、攪拌機で攪拌している純水5Lに浸漬し、3時間透析をして低分子量の糖を除いたものについて測定した。
なお、活性汚泥から固形物を取り除いた水溶液は、活性汚泥を12000rpm、20分間遠心分離後の上澄みを採取して得た。
多糖類濃度はフェノール硫酸法により以下の手順にて測定した。
1)10mlのねじ口試験管に希釈した原水1mlを取り、5(質量/容量%)フェノール溶液1mlを加えて10秒間よく混和する。
2)ねじ口試験管にピペットなどを用いて特級濃硫酸5mlを速やかに加え、10秒間よく混和する。
3)10分後、再度10秒間よく混和し、室温(20〜30℃)に30分間放置後、490nmの吸光度測定する。
4)ブランクとして、原水の代わりに超純水を用いて上記2及び3の操作を行う。
5)グルコースを標準液として予め作成した検量線から糖濃度を読み取る。
<蛋白質濃度の測定>
原水、活性汚泥から固形物を取り除いた溶液、膜で濾過した処理水について、多糖類濃度の測定時と同様の透析膜を用い、同様の手段によりアミノ酸を含む低分子量の蛋白質を除いたものを用いて蛋白質濃度を測定した。
なお、活性汚泥から固形物を取り除いた溶液は、前記多糖類濃度の測定と同様にして得た。
蛋白質濃度は、ピアス社製のプロテインアッセイ試薬キットを用いて測定し、アルブミンを標準液として予め作成した検量線から濃度を求めた。
<活性汚泥のMLSSの測定>
活性汚泥適量を試料として沈殿管にとり、5000rpmで5分間遠心分離を行い、上澄液を捨てて、沈殿管に水を加え、攪拌し、再び同様に遠心分離し、上澄液を捨て、この沈殿物を蒸発皿に洗い入れ、110℃で2時間乾燥して質量を測定し、以下の計算式によってMLSSとして算出した。
MLSS(mg/L)=沈殿物の乾燥質量(mg)/活性汚泥の試料量(L)
<SV30>
活性汚泥を1Lのメスシリンダーに採取し30分間放置して沈降させた後、活性汚泥の占める容積mlを測定し、以下の計算式によって算出した。
SV30(%)=30分後における沈降汚泥容量(ml)/測定に用いた活性汚泥(ml)×100
<膜分離装置の濾過差圧>
膜分離装置から吸引ポンプへの吸引ラインに高感度精密微差圧計(型式WO−81、株式会社岡野製作所)を取り付け、その指示を読み取って測定した。
<減圧濾過の濾過量>
図2に示すような、濾過器7(他用途型タンク付きホルダーModel KST−142−UH;アドバンテック社製)、濾液を計量するメスシリンダー8、センサー9、(OKANO WORKS社製 TYPE AVGN)、電磁弁10、ニードルバルブ11、アスピレーター12、コントローラー13をポリプロピレンチューブで連結した減圧濾過装置を使用して以下のようにして測定した。
なお、メスシリンダーの上部はメスシリンダーの内径に合わせたシリコン栓をはめ、減圧状態が維持されるようにした。さらに、アスピレーターで減圧した際に、減圧度が設定値を超えるときにセンサーが働き、電磁弁が自動的に開閉されて設定値の減圧度が維持されるようにして、全系が設定した減圧度(30KPa)に保たれるようにした。この時、電磁弁にニードルバルブを設けて流路を絞ることにより、急激に減圧度が低下するのを抑えた。
そして口径0.2μm、面積158cmの親水性濾紙(アドバンテック社製)を入れた減圧濾過装置の濾過器に活性汚泥を500ml入れ、濾過開始後、5分間の濾過量を500mlメスシリンダーで計量した。
なお、この濾過量は活性汚泥の濾過性の指標となるものであり、濾過量が多いほど、その活性汚泥は濾過し易いことを意味する。
Figure 2005143454
<比較例1>
トルロプシス キャンディダ (Torulopsis candida)IFO768株を添加しない以外は、実施例1と同様にして活性汚泥を用いた排水処理を行ったところ、処理開始後14日後に膜分離装置の濾過差圧が40kPaにまで上昇して運転が困難となったため、排水処理を停止した。
結果を表3に示す。
<実施例2>
比較例1で処理停止後の活性汚泥を採取し、12000rpmの連続遠心分離を行って、固形物を取り除いた溶液を得た。この溶液200mlに、他の微生物の影響を排除するため、カナマイシンを10ppmとなるように添加して、乾熱滅菌(180℃、1時間)した綿栓付き500ml三角フラスコに入れ、実施例1で本培養したトルロプシス キャンディダ (Torulopsis candida)IFO768株を6×10個となるように接種し、15℃、230rpmの振とう培養器(型式TB−50RV、高崎科学器機株式会社)で培養したところ、培養72時間で生菌数は7×10個に増加した。培養後の液を12000rpmで遠心分離して固形物を取り除いた溶液中の多糖濃度は100mg/Lから25mg/Lまで減少していたが、タンパク濃度は変化なかった。
以上の実施例1、2及び比較例1より、本発明の選択方法にて得られた微生物を用いると、膜分離装置の濾過を阻害すると考えられる多糖類の含量を大幅に低減させることができ、その結果安定運転が可能となることがわかる。
なお、以下、参考例として濾過性阻害物質の消長についての実験結果を付す。
<参考例1>
比較例1で処理停止後の活性汚泥を採取し、12000rpmの連続遠心分離を行って、固形物を取り除いた溶液を得た。この溶液600mlを500ml三角フラスコ2本に300mlずつ分注し、pHを6に調製して、デキストラナーゼT「アマノ」4(天野エンザイム株式会社製)を1000Uとなるように添加して45℃で48時間、酵素反応させた。酵素処理後の液をpH7に再調整後、そのうちの500mlを用いて減圧濾過したところ、5分間の濾過量は195mlであった。
<参考例2>
デキストラナーゼT「アマノ」4に代えて、セルラーゼT「アマノ」4(天野エンザイム株式会社製)を1000Uとなるように添加した以外は、参考例1と同様にして酵素反応させ、減圧濾過したところ、5分間の濾過量は420mlであった。
<参考例3>
酵素を加えずに、参考例1と同様の条件でホールドした液について、参考例1と同様に減圧濾過したところ、5分間の濾過量は70mlであった。
<参考例4>
デキストラナーゼT「アマノ」4に代えて、プロテアーゼM「アマノ」G(天野エンザイム株式会社製)を1000Uとなるように添加した以外は、参考例1と同様にして酵素反応させ、減圧濾過したところ、5分間の濾過量は70mlであった。
<参考例5>
デキストラナーゼT「アマノ」4に代えて、プロテアーゼS「アマノ」G(天野エンザイム株式会社製)を1000Uとなるように添加し、pHを8とした以外は、参考例1と同様にして酵素反応させ、減圧濾過したところ、5分間の濾過量は77mlであった。
<参考例6>
プロテアーゼS「アマノ」Gに代えて、プロレザーFG−F(天野エンザイム株式会社製)を1000Uとなるように添加した以外は、参考例5と同様にして酵素反応させ、減圧濾過したところ、5分間の濾過量は75mlであった。
<参考例7>
デキストラナーゼT「アマノ」4に代えて、プロテアーゼP「アマノ」3G(天野エンザイム株式会社製)を1000Uとなるように添加した以外は、参考例1と同様にして酵素反応させ、減圧濾過したところ、5分間の濾過量は78mlであった。
<参考例8>
酵素を添加せず、pHを2に調整して121℃、20分間オートクレーブ処理した以外は参考例1と同様にして減圧濾過したところ、5分間の濾過量は450mlであった。
<参考例9>
酵素を添加せず、pHを12に調整して121℃、20分間オートクレーブ処理した以外は参考例1と同様にして減圧濾過したところ、5分間の濾過量は100mlであった。
<参考例10>
酵素を添加せず、pHを7に調整して121℃、20分間オートクレーブ処理した以外は参考例1と同様にして減圧濾過したところ、5分間の濾過量は75mlであった。
<参考例11>
参考例1と同様にして得た固形物を取り除いた溶液600mlを1Lのビーカーに入れて、12%(重量/質量)次亜塩素酸ナトリウム1.2mlを添加後、25℃で3時間、スターラーで攪拌して処理し、参考例1と同様にして減圧濾過したところ、5分間の濾過量は465mlであった。
<参考例12>
参考例1と同様にして得た固形物を取り除いた溶液500mlを、pHを7に調整して減圧濾過したところ、5分間の濾過量は60mlであった。
本発明の排水処理方法に使用する装置の一例を示す模式図である。 濾過性の指標となる減圧濾過を行う装置の一例を示す模式図である。
符号の説明
1 嫌気槽
2 曝気槽
3 微生物貯留槽
4 ポンプ
5 膜分離装置
6 曝気装置
7 濾過器
8 メスシリンダー
9 センサー
10 電磁弁
11 ニードルバルブ
12 アスピレーター
13 コントローラー

Claims (3)

  1. 以下の工程を含む排水処理用微生物の選択方法。
    (1)処理すべき排水を、活性汚泥により温度20℃以下で処理する工程。
    (2)前記(1)の工程を経た後の活性汚泥から、固形物を取り除いた水溶液を得る工程。
    (3)前記(2)の工程により得られた水溶液中に含まれる有機物を、処理すべき排水に含まれる有機物よりも好んで資化する微生物を選択する工程。
  2. 前記(3)の工程は、以下の工程を含む請求項1に記載の排水処理用微生物の選択方法。
    (4)前記(2)の工程で得られた水溶液に、評価する微生物を接種して培養し、一定時間毎に微生物菌体数を計数する工程。
    (5)処理すべき排水に、評価する微生物を接種して、一定時間毎に微生物菌体数を計数する工程。
    (6)前記(4)の工程による微生物菌体数の増加量と、前記(5)の工程による微生物菌体数の増加量とを比較し、前記(4)の工程による微生物菌体数の増加量の方が多い場合に、評価する微生物を有用な微生物として選択する工程。
  3. 請求項1又は2に記載の選択方法により選択された微生物の菌体及び/又は菌体処理物を活性汚泥と接触させる排水処理方法。
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