JP3396786B2 - 脱窒細菌の培養方法、固定化脱窒細菌およびこれを用いる脱窒方法 - Google Patents
脱窒細菌の培養方法、固定化脱窒細菌およびこれを用いる脱窒方法Info
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Description
定化脱窒細菌およびこれを用いる脱窒方法に関し、より
詳しくは人工的な魚飼育などにおける水質浄化システム
への浄化微生物として適用できる脱窒細菌に関するもの
である。
節を行う循環濾過養魚システムの開発が現在ヒラメなど
を対象として進められている。飼育適水温調節等のため
に飼育水を循環再利用するこのシステムでは、魚の排泄
物が飼育水中に蓄積し、水質悪化を引き起こすため、そ
の浄化は非常に重要となる。魚の主な排泄物であるアン
モニアが生物酸化されることによって生成される硝酸
は、高濃度では魚の生育を阻害し、また飼育水を酸性化
させる等の悪影響を及ぼすことから、飼育水を長期に利
用するためには、この硝酸を還元し、ガス状窒素として
除去する脱窒を行う必要がある。
生物を用いる方法が物理化学的方法に比べ実際的である
ことが知られている。脱窒細菌は土壌や海洋など自然界
に広く生息し、硝酸や亜硝酸を還元してガス状窒素にし
て放出する細菌であり、その見かけ上の代謝経路に応じ
て以下の3つの型: A型 NO2 - → N2 B型 NO3 - → NO2 - →N2 C型 NO3 - → N2 に類別されることが知られている。本発明者はC型が魚
毒性のある亜硝酸を放出せず、魚の飼育における脱窒に
最も有用であると考え、そのような代謝経路をもち、か
つ高い脱窒活性を示す海洋性脱窒細菌を分離し、そして
濾材の表面に該細菌を付着させて浄化を行う生物膜法に
よる飼育水中からの硝酸の除去に関して検討を行い、有
効な濾材を選択し、ある程度の脱窒効果を確認した。
物膜法による脱窒では、効率のよい脱窒作用を得るため
に、培養した細菌を、事前に脱窒槽内の濾材に高密度で
接種する必要のあることが明らかとなった。このため、
実験室レベルでの脱窒への前記脱窒細菌の適用の場合に
問題となることはないが、この生物膜法を工業レベルで
適用しようとする際に、上記の人工的に接種する脱窒細
菌を確保し、安定に供給する必要があるが、この脱窒細
菌を大量かつ高密度に培養する方法は今まで見出されて
いない。また、生物膜法による脱窒効果は高いものがあ
るが、しかしその能力には限界があり、しかもより長期
にわたる使用の場合、脱窒作用が不安定になるおそれが
ある等の問題がある。本発明は上記問題点を解決するた
めになされたものであり、海洋性脱窒細菌を大量かつ高
密度に培養し得る方法ならびに該脱窒細菌の固定化およ
びその固定化細菌を流動床方式で利用する脱窒方法を提
供することを課題とする。
代謝経路がNO3 - → N2 である有用海洋性脱窒細菌
について最適生育条件等の種々の研究を行い、このよう
な海洋性脱窒細菌についてこれまで報告されたことのな
かった高密度および大量培養方法を見出し、さらに前記
脱窒細菌を固定化して脱窒を行うことにより、生物膜法
に比べ、より効率よく脱窒が行われ得ることを見出し、
さらに鋭意検討を重ね、本発明を完成させた。
5℃、培養培地塩分濃度0.85〜3.4%の最適生育
条件を有し、硝酸から直接ガス状窒素へ還元する見かけ
上の代謝経路をもつアルカリゲネス属(Alcaligenes) の
海洋性脱窒細菌を塩分濃度0.85〜3.4%の培養培
地中、該培地のpHを6〜8、温度を32〜38℃に維
持して培養液の610nmでの吸光度が2以上となるま
で培養することからなる脱窒細菌の培養方法に関する。
菌は、硝酸の還元で生成する亜硝酸を菌体外へ放出せず
に速やかにガス状窒素へ還元する次式:NO3 - → N
2 の見かけ上の代謝経路をもつものである。このような
脱窒細菌は各地海浜の海砂や底泥、魚類飼育装置の濾過
槽の濾過砂等を試料とし、硝酸集積培養分離法により分
離・純化され、脱窒活性が確認され、さらに脱窒型の判
別および属レベルでの分類がなされたものである。な
お、脱窒細菌は通性嫌気性であり、好気的にも生育し得
るので、上記分離培養は好気的条件下で行い、脱窒活性
はガス発生および培地pHの上昇により確認した。ま
た、脱窒型の判別は培養後の培地中の無機窒素三態(N
O3 - ,NO2 - ,NH4 + )の量的変化により、属レ
ベルでの分類はグラム染色、鞭毛観察、糖発酵性試験等
により行った。
性の制御のしやすさ、さらに形質が安定である等の点か
ら好ましい海洋性脱窒細菌は、宮城県蒲生干潟の砂泥か
ら分離・純化されたアルカリゲネス属G−A−2−1株
と命名される1株と、千葉県我孫子市に所在する財団法
人電力中央研究所・我孫子研究所の魚飼育水濾過槽の濾
過砂から分離・純化されたアルカリゲネス属Ab−A−
1株およびアルカリゲネス属Ab−A−2株と命名され
る2株である。これら3株の中で、脱窒活性の高さや培
養条件の広さ等の点からアルカリゲネス属Ab−A−1
株が特に好ましい。また、これらの脱窒細菌は平成5年
9月13日に工業技術院生物工学工業技術研究所に寄託
され、それぞれ以下の受託番号を有する。 アルカリゲネス属菌株 受託番号 G−A−2−1 FERM P−13861 Ab−A−1 FERM P−13862 Ab−A−2 FERM P−13860 これら菌株の分離等については渡部ら:電力中央研究所
・研究報告U89035(1989)にさらに詳細に記
載されている。
脱窒細菌の最適生育条件は、培地pH、温度および塩分
濃度の各条件下における比増殖速度を比較することによ
り、pH6〜8、温度35℃、塩分濃度0.85〜3.
4%であることが見出された。また、上記最適生育条件
に維持して脱窒細菌を培養することにより、培養液の吸
光度(波長=610nm,濁度)が2〜6程度まで該細
菌を高密度に培養することができ、しかも前記培養方法
は大量培養にも適用し得るものだった。なお、温度は3
2〜38℃の範囲で高い増殖速度が得られることも確認
した。そこで、上記の海洋性脱窒細菌を塩分濃度0.8
5〜3.4%の培養培地中、該培地のpHを6〜8、温
度を32〜38℃に維持して培養することにより、本発
明の脱窒細菌を高密度で大量に培養することが可能とな
った。本発明の脱窒細菌の高密度および大量培養によ
り、生物膜法、すなわち濾材の表面に細菌を高密度で付
着させて水質浄化を行う方法に対して工業レベルで本発
明の脱窒細菌を適用することができる。ここで、濾材に
は例えば砂濾材(直径3〜6mm前後のもの等)、繊維
状濾材(極細の化学繊維を輪状に編んで紐としたもの
等)または板状濾材(ハニカム状プラスチックチューブ
等)等が用いられるが、菌体付着後の脱窒活性の高さの
点で砂濾材および繊維状濾材が好ましく、扱いやすさで
は繊維状濾材が特に好ましい。
℃、培養培地塩分濃度0.85〜3.4%の最適生育条
件を有し、硝酸から直接ガス状窒素へ還元する見かけ上
の代謝経路をもつアルカリゲネス属の海洋性脱窒細菌を
固定化してなる固定化脱窒細菌に関する。本発明におい
て菌体の固定化は、慣用の方法に従って、天然もしくは
合成高分子ゲルの微細な粒子中に菌体を包み込むか、ま
たは半透膜性の膜により菌体を被覆することによる、い
わゆる包括固定化により行われのが好ましい。高分子ゲ
ルとしては、例えばポリビニルアルコール(PVA)ゲ
ル、ポリエチレングリコール(PEG)ゲル、ポリアク
リルアミドゲル、2−ヒドロキシメチルアクリルアミド
ゲル、シリカゲル、アルギン酸、ウレタン樹脂等を挙げ
ることができ、半透膜性の膜としてはセルロースまたは
その誘導体等を挙げることができる。また、本発明にお
ける菌体の固定化は、酵素の固定化の際に行われる担体
結合法や架橋法により行われてもよい。なお、海洋性魚
類の水質浄化への適用の場合、海水の塩濃度に対する耐
性等の点からPVAゲルまたはPEGゲルでの固定化が
好ましい。
嫌気的流動床にて流入水と接触させることからなる脱窒
方法を提供する。この脱窒方法において、前記流入水の
糖濃度を炭素換算濃度120〜360mg−C/l、滞
留時間を12〜36時間として処理を行うことが好まし
い。本発明の脱窒方法の特に好ましい態様において、前
記流入水の糖濃度は炭素換算濃度で240mg−C/l
であり、滞留時間は24時間である。なお、本明細書に
おいて「滞留時間」とは水理学的滞留時間を意味し、あ
る系に含まれる流入水が1回置き換わる時間である。ま
た、本発明の脱窒方法は、前記流入水が循環濾過養魚シ
ステムにおける飼育水である、循環濾過養魚システムに
適用するのが効果的である。
明するが、本発明はこれのみに限定されるものではな
い。 I.有用海洋性脱窒細菌の選抜 A.海洋底泥中の一般細菌数と脱窒細菌数の測定 試料として愛知県渥美湾、神奈川県横須賀小和田湾、宮
城県仙台湾南蒲生および仙台湾蒲生の海砂や底泥および
千葉県我孫子市に所在する財団法人電力中央研究所・我
孫子研究所の魚飼育水濾過槽の濾過砂の5検体を用い
た。一般海洋性細菌数については1/10濃度ZoBe
ll 2216E寒天培地および1/10濃度ORI寒
天培地を用いた希釈平板法で、また脱窒細菌数について
は海水を添加した硝酸添加肉エキス寒天培地(以下、肉
エキス培地と略す)および3%NaClを添加したGi
ltay培地(以下、Giltay培地と略す)を用い
た最確値法(Most Probable Number法,以下MPN法と
略す)で算出した。いずれも培養は25℃で14日間と
した。用いた培地の種類と組成は表1に示した。
おける脱窒菌数の測定については、ガス発生(培地中に
入れたダラム管へのガス蓄積)かつ培地pHの上昇(培
地の青色化)をもって脱窒陽性とし、肉エキス培地にお
いてはガス発生をもって脱窒陽性とした。なお、最確値
数をもって菌数に換算した。供試試料中の海洋性一般細
菌数を表2に、そして脱窒菌数を表3にまとめて示し
た。
海浜における密度とほぼ同様な104 〜107 /g生試
料のレベルであった(表2)。一方、脱窒細菌の密度は
101 〜102 /g生試料のレベルであり、一般細菌数
に比較するとごく低い割合のため(表3)、分離には集
積培養が必要と判断された。
た。まず、MPN法に用いた培養後の液体培地の一定量
を、Giltay寒天培地および肉エキス寒天培地に塗
布し脱窒細菌を分離した〔Watahiki等, Agric. Biol. B
iochem. 47, 1991-1996 (1983)参照〕。なお、脱窒細菌
は通性嫌気性であり、好気的にも生育し得るので、上記
分離培養は好気的条件下で行った。生育してきたコロニ
ーは任意に分離・純化した後、各分離株はGiltay
培地で嫌気培養し、脱窒活性はガス発生および培地pH
の上昇により確認した。この一連の分離操作を分離方法
Iとした。この分離方法は酸素に代わる酸化剤(最終電
子受容体)として硝酸を添加して脱窒細菌を集積する硝
酸集積培養分離法である。一方、最終電子受容体として
亜硝酸を添加して集積培養を行い、その集積培養液から
脱窒細菌を分離する、以下に示す一連の分離操作を分離
方法IIとした。分離方法Iで用いた分離試料を採取し
た地点から、同様に採取した生試料1gをネジ口試験管
中の20ml容の亜硝酸添加1/10濃度ZoBell
2216E液体培地に加え、嫌気グローブボックス
〔内部気相N2 :H2 :CO2 =17:2:1,酸素濃
度0.1%(v/v)以下〕中で嫌気培養した。なお、
亜硝酸の濃度は100ppm−Nとし、KNO2 の形で
添加した。2週間毎に同組成の培地に植え継ぎ、8週間
後に嫌気的好条件下で一定量の培養液を寒天平板培地に
塗布し細菌を分離した。分離菌株は100ppm−N相
当量の硝酸もしくは亜硝酸を添加した1/10濃度Zo
Bell 2216E液体培地(各20ml/試験管)
を用いて22±2℃で1週間嫌気培養し、培養後の培地
中の無機窒素三態(NO3 - ,NO2 - ,NH4 + )の
量的変化から、脱窒活性の有無の確認と、硝酸および亜
硝酸からの脱窒の様式(以下、脱窒型とする)を判断し
た。分離方法Iで分離した脱窒菌も同様に脱窒型の判断
を行った。なお、培地中無機窒素三態の測定は菊地ら:
電力中央研究所・研究報告U87025(1987)に
記載の方法に従った。
であり、そのうち脱窒活性を示したのは81菌株で、分
離菌株数に占める脱窒菌株数の割合は34%であった。
一方、分離方法IIでは145菌株を分離し、その脱窒
活性を調べた結果、121菌株が脱窒活性を示し、分離
菌株数に占める脱窒菌株数の割合は83%であり、分離
方法Iより高い割合であった。
嫌気培養後の培地中の無機窒素三態の量的変化の測定に
より得られた結果のうち典型的なものを図1に示した。
なお、以下に示す菌株の名称は表5の脚注にも示したと
おり、Atの表示のあるものは渥美湾の試料由来のもの
であり、以下同様に、Yは横須賀小和田湾の試料由来、
Gは仙台湾の試料由来、そしてAbは我孫子の電力中央
研究所の試料由来であることを意味する。菌株At−8
−R−2は硝酸添加培地中で亜硝酸を生成しているが、
無機窒素の総量は変わらず、また、亜硝酸添加培地中の
亜硝酸の量も変化していない。このことから、この菌株
は、硝酸は還元するが脱窒はしない硝酸呼吸型(NO3
- → NO2 - )であると判断された。菌株At−8−
R−1は硝酸添加および亜硝酸添加培地で無機窒素量が
減少しているので脱窒細菌であるが、硝酸添加培地では
亜硝酸が検出されており、見かけ上、硝酸は亜硝酸を経
てガス状窒素へ還元されている。菌株At−B−4は硝
酸添加および亜硝酸添加培地で無機窒素量が減少してい
るので脱窒細菌であるが、硝酸添加培地ではAt−8−
R−1菌株と異なり亜硝酸が検出されない。このことは
硝酸の還元で生成した亜硝酸は速やかにガス状窒素へ還
元されていることを示す。G−2−R−1菌株は亜硝酸
添加培地でのみ無機窒素量が減少しており、亜硝酸のみ
から脱窒できる菌株であると判断される。従って、脱窒
細菌は上記したようにその見かけ上の代謝経路に応じ、 A型 NO2 - → N2 B型 NO3 - → NO2 - →N2 C型 NO3 - → N2 の脱窒型に分類できる。亜硝酸は魚類に有害であり、ま
た飼育水に蓄積してくるのは硝酸が多いことから、循環
濾過方式の水質浄化システムへの適用を考慮するとC型
の脱窒細菌が有用であると考えられる。上の実験で脱窒
陽性と判断された菌株の脱窒型の判別結果を表4にまと
めて示す。
(8菌株)であり、分離方法IIでは分離菌株の23%
(28菌株)であった。このことは、C型脱窒細菌は自
然界の脱窒菌の中では、少ないことを示唆するものであ
る。
養しても活性が安定か否かを追試して菌株の安定性を確
認し、安定であった分離菌株について清水の方法〔「海
洋微生物実験法」門田・多賀編,学会出版センター,2
28−233頁(1985年)〕に従い、グラム染色、
鞭毛観察、糖発酵性試験(OFテスト)等を行い、属レ
ベルでの分類を行った。
示あり)は8菌株中7菌株がアルカリゲネス属であり、
分離方法IIで分離されたC型脱窒細菌(菌株名にBの
表示あり)は8菌株ともにシュードモナス属(Pseudomon
as) であった。
測定 上記有用脱窒細菌の脱窒細菌をO'hara等, J. Gen. Micr
obiol., 129, 2405-2412 (1983) に記載の方法に準じ
て、アセチレン阻害法を用いて測定した。アセチレン阻
害法はアセチレンが脱窒過程(NO3 - → NO
2 - (NO)→N2 O→N2 )の中で、N2 OのN2 へ
の還元を阻害するという性質を利用したもので、本来N
2 およびN2 Oとして発生すべき量をN2 Oとして測定
し、脱窒活性を算出する方法である。
試菌株を、硝酸添加ZoBell2216E寒天培地の
入った広口フラスコを用いて24±1℃の嫌気グローブ
ボックス中で5日間嫌気培養した。培地に添加した硝酸
量は100ppm−N相当量であり、KNO3 の形で添
加した。寒天培地表面に生育した菌体をフラスコ中に注
いだ滅菌濾過海水に懸濁した後、遠心分離し上澄み液を
捨て、ペレット状の菌体をもう一度滅菌濾過海水に懸濁
し遠心分離をすることで菌体を洗浄した。菌体は最終的
に濾過海水に懸濁し、測定の試料とした。菌体懸濁液1
mlを12.8ml容の試験管に入れ、180mM濃度
のグルコース溶液1mlおよび18mM濃度のKNO3
溶液1mlを加えてゴム栓をし、直ちにガスタイトシリ
ンジを用いて内部気相(9.8ml)の10%量のアセ
チレンを添加した。以上の操作は全て嫌気的条件下で行
った。アセチレン添加時を、脱窒活性測定開始時とし、
25℃で一定時間培養後、生成したN2 OをPID型ガ
スクロマトグラフ装置(日立製作所製GC3000PI
D)を用いて測定した。なお、反応液中のグルコース濃
度は60mM、KNO3 濃度は6mM(84ppm−
N)である。菌体懸濁液は、超音波処理で菌体を破砕し
た後、タンパク質含量の測定に供した。タンパク質含量
は、バイオラッド社のプロテインアッセイキットを用
い、アルブミンを標準として測定した。そして脱窒活性
はタンパク質単位重量の生成N2 Oで表示した。
てN2 Oの生成を測定したところ、図2に示したように
測定開始後3時間まで直線的に増加した。この結果を踏
まえ、他の供試菌株は測定開始後1時間で生成したN2
Oを測定し脱窒活性とした。結果を表6に示した。
olN2 O/時間/mgタンパク質であり、菌株により
異なった。しかし、平均的な脱窒活性はSmith等, Soil
Sci. Soc. Am. J. 50,349-353 (1986)に報告されてい
る土壌から分離した代表的な脱窒細菌シュードモナス・
フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescence)の脱窒活
性(1350nmolN2 O/時間/mgタンパク質)
に比肩し得るものだった。
活性と有機物の種類との関係を調べた。有機物としてグ
ルコース、サッカロース、ペプトン、グルタミン酸およ
びメタノールを用いた。ペプトンはDifco製のもの
を用い、その他は和光純薬株式会社製のものを用いた。
脱窒に必要な有機物量の理論値はグルコースを用いた場
合は1mg−N NO3 を脱窒するのに1.07mg−
Cが必要であることから、ここでは有機物濃度を120
mg−C、硝酸イオン濃度を100mg−N/lとし
た。なお、脱窒活性は前項と同様にアセチレン阻害法に
よって測定した。
の関係は菌株により異なることがわかる。なお、供試し
た16菌株の脱窒活性の平均値をとると、グルコースの
場合680±429nmolN2 O/時間/mgタンパ
ク質であった。また、グルコースにおける脱窒速度を1
00とした場合、サッカロース107、ペプトン14
5、グルタミン酸114、メタノール87.8であっ
た。このように、添加有機物としてはペプトンやグルタ
ミン酸が高い活性を示す傾向にあったが、これら有機物
は20%強の有機窒素を含んでいるので、該有機窒素が
無機化してアンモニアとして放出されることを考える
と、純脱窒活性は総脱窒活性の8割相当量になる。これ
を考慮すると、グルコースおよびサッカロースにおける
脱窒活性はペプトンに匹敵するレベルになる。また、グ
ルコースおよびサッカロースはペプトンやグルタミン酸
より安価であり、高濃度の水溶液での室温保存が可能で
ある等取扱いが容易である。以上のことから、脱窒のエ
ネルギー源として添加する有機物の種類としてはグルコ
ースおよびサッカロースが適当であると判断される。さ
らに、供試菌株を有機物に対する利用性の範囲の広さと
活性の高さの点から比較すると、アルカリゲネス属に属
するG−A−2−1株、G−A−2−2株、Ab−A−
1株およびAb−A−2株が特に有効な菌株であると判
断される。ただし、G−A−2−2株は培養が他の3株
と比べ困難であるので、実際の適用は難しいと予想され
る。
3株G−A−2−1株、Ab−A−1株およびAb−A
−2株について脱窒活性とDOとの関係を調べた。この
場合、アセチレン阻害法による脱窒活性の測定ができな
いので、培養実験によって行った。実験には、25℃に
保温した恒温培養槽5つを用い、DOは0,7,15,
30ならびに60%酸素飽和度とした。培養溶液DOの
調節はエアレーションと窒素ガスによって行い、培養期
間のDOの変動範囲は設定値の±10%程度であった。
例えば設定値が30%酸素飽和度の場合、実際のDOの
変動範囲は27〜33%酸素飽和度であった。培養液の
攪拌はスクリュー型攪拌羽を用い70rpmで行った。
脱窒活性は各培養槽中の培養液(硝酸イオン濃度100
ppm−Nならびにグルコース300ppmを添加した
滅菌濾過海水2l)に嫌気的に生育させた菌体を接種し
た後、24時間培養後の培養液中の無機態窒素の減少量
を測定することから算出した。また、同時に、培養液中
の有機態炭素濃度(TOC)を全有機炭素分析計(島津
製作所製TOC−500型)により測定し、有機物分解
速度を算出した。なお、本実験による接種菌体量はG−
A−2−1株で11.1μg菌体タンパク質/ml培養
液、Ab−A−1株で5.2μg菌体タンパク質/ml
培養液、そしてAb−A−2株で19.6μg菌体タン
パク質/ml培養液であった。
0%酸素飽和度における脱窒速度に対する比活性を意味
し、有機物分解速度についても併記した。いずれの菌株
ともに脱窒活性はDOの増加とともに減少したが、菌株
によってその度合いは異なっていた。また、有機物分解
の比活性(TOC減少量)はどのDOでも100%以上
であり、有機物分解は迅速に行われていることがわかっ
た。本実験で得られた24時間後の窒素減少量から算出
した比活性から0%DOにおける脱窒活性の50%脱窒
活性を示すDO値を推定すると、G−A−2−1株で7
%DO、Ab−A−1株で30〜60%DO、そしてA
b−A−2株で15%DOであった。この結果から、ア
ルカリゲネス属Ab−A−1株を用いた場合、DOが比
較的高い条件でも脱窒可能であるといえる。このよう
に、高い脱窒活性を得るためにはDOを低める方が良
い。しかし、DOが比較的高い条件でも脱窒できれば、
魚類等の飼育水の循環利用の観点から利点は多い。従っ
て、上記アルカリゲネス属Ab−A−1株は特に好まし
い菌種であるといえる。
アルカリゲネス属に属する3株G−A−2−1株、Ab
−A−1株およびAb−A−2株を用いてそれらの大量
培養を可能にする条件の探索のために、それらの生育最
適条件、有機物条件およびそれらの結果をふまえて大量
培養方法を検討した。 A.最適生育条件の検討 まず、上記のアルカリゲネス属の3株について、基本培
地としてZoBell2216E液体培地を用い、培地
のpH、海水濃度、温度条件のいずれか1つのみを変化
させ、その際の各条件下における比増殖速度(μ)を測
定することにより、それぞれの最適条件を明らかにし
た。最適培地pHの探索の場合、培地pHは5、6、
7、8、9および10の6段階に変化させ、その他の条
件は海水濃度を100%、そして温度を30℃に一定と
した。また最適海水濃度は、海水濃度は100、75、
50、25および0%の5段階に変化させ、それ以外の
条件は一定とした(pH:7.8,温度30℃)。そし
て最適温度の探索の場合、20、25、30、35およ
び40℃の5段階に温度を変化させ、pHは7.8、海
水濃度は100%に一定とした。比増殖速度は以下のよ
うに算出した。試験管(18mmφ×18cm)に10
mlの培地を入れ、各条件に設定した後、オートクレー
ブ滅菌した。pHの調整は1規定の塩酸もしくは水酸化
ナトリウム溶液を培地に添加することで、また、海水濃
度の調整は蒸留水を添加することでオートクレーブ滅菌
前に調整した。調整した培養液の入った試験管に、予め
各菌株を接種したのち3日間30℃で震盪培養したZo
Bell 2216E培養液0.3mlを接種し、往復
震盪培養機によって各設定条件下において震盪培養し
た。培養のための試験管は多数準備し、測定試料は経時
的に採取した。脱窒細菌の生育は培養液の濁度(O.
D.610nm)を測定することによって求め、濁度の
経時的な変化から増殖曲線を描き、その増殖曲線から、
細菌が1時間当り何倍になるかを示す比増殖速度を算出
した。
H、海水濃度および温度の影響を、それぞれ図5、6お
よび7に示した。 (1)pH(図5参照) 供試したアルカリゲネス属の3株について、その至適p
Hは3株ともに7であった。pHが6から8では、いず
れの株もその比増殖速度はpH7の場合と比較して大き
くは変わらなかった。pH5、9および10では、比増
殖速度は低下する傾向がみられたがその程度は菌株によ
って異なっていた。すなわち、G−A−2−1株とAb
−A−2株では、最も低い比増殖速度を示したpH10
の場合では、pH7に比較して比増殖速度は20%前後
低下したが、Ab−A−1株では、pH10の場合、約
40%低下と顕著であった。pH5では、G−A−2−
1株が他の2株に比較して低下の割合が高かったが、p
H7の場合と比較して10%の低下であった。
下の結果が得られた。いずれの株においても、0%濃度
(実際の海水濃度は接種源からの塩が入るので約3%海
水濃度)では、他の濃度に比較して著しく比増殖速度が
低下した。その他の濃度、すなわち25%から100%
の間では、株によって若干の違いはあるものの、ほぼ同
レベルの比増殖速度を示した。海水濃度が25%から1
00%間の比増殖速度の違いは以下のようであった。G
−A−2−1株では、25%から100%の間でほぼ等
しい比増殖速度を示した。Ab−A−2株では、25な
らびに50%が比増殖速度が最も高く、それ以上の濃度
では比増殖速度がわずかに低下した。Ab−A−1株の
場合は、50%で最も比増殖速度が高く、25%ならび
に75%および100%ではわずかに低下した。これ
ら、25から100%の海水濃度範囲では、比増殖速度
の違いは、最も大きいAb−A−1株でも最大16%
(濃度が50%と100%の場合)であった。一般に海
洋性細菌は、その至適塩濃度が0.3〜0.5M(海水
の塩濃度は約0.5M)にある低度好塩性細菌であると
されるが、以上の結果から、本供試3菌株も、その特徴
を有していることが明かとなった。
結果が得られた。Ab−A−1株とAb−A−2株で
は、培養温度が20℃から35℃までは、温度の上昇に
伴って比増殖速度も直線的に高まり、40℃では若干低
下した。一方、G−A−2−1株では、35℃で最も比
増殖速度が高かったが、それは30℃における値とほぼ
同等であり、20℃および40℃では著しく低かった。
これら3株は、至適温度が35℃にあり、中温性細菌で
あることが示された。以上の検討結果から、供試した3
株の生育に最適な条件は、pH;6から8、海水濃度;
25%〜100%(すなわち、塩分濃度0.85〜3.
4%)、温度;35℃であることが明かとなった。
細菌の増殖に与える影響 前項における検討結果から、各菌株について明らかとな
った生育最適条件下において、基本培地への有機物添加
の効果について検討した。基本培地として、ZoBel
l 2216E培地およびAnderson培地(培地
1リットルあたりペプトン2.5g、酵母エキス2.5
g、FePO4 0.1g)のpHを7、海水濃度を50
%としたものを用い(これを、それぞれZoBell改
変培地およびAnderson改変培地と呼ぶ)、それ
にグルコース、マンニトール、サッカロース、水溶性デ
ンプンまたはアスパラギン酸を2段階の濃度(1.0%
および0.5%)で添加した場合の比増殖速度を比較し
た。また、無機窒素源の添加の影響を調べるためKNO
3 を加えた区を、培地有機物濃度が低い場合の影響を調
べるためにZoBell改変培地を1/2濃度にした区
を設定した。また、培養温度は全て35℃とした。
地を基本培地として用いた場合、以下の結果が得られ
た。G−A−2−1株の場合、ZoBell改変培地区
に比較して、1/2ZoBell改変培地で明かに比増
殖速度が低下し、1.0%マンニトールを添加した場合
で17%高くなったが、他の実験区では大きな差はなか
った。Ab−A−1株の場合、ZoBell改変培地区
に比較して、他の実験区では大きな差はなかったが、マ
ンニトールならびにサッカロース添加区以外では、比増
殖速度が低くなる傾向が見られた。Ab−A−2の場合
も、ZoBell改変培地区に比較して、他の実験区で
は大きな差はなかったが、1.0%デンプン添加区、
1.0%サッカロース添加区、1.0%グルコース添加
区で低下する傾向を示した。いずれの株の場合も、最大
の比増殖速度を示したのは、ZoBell改変培地に、
1.0%のマンニト−ルを添加した場合であり、マンニ
トールの添加による脱窒細菌の増殖促進効果があること
が示唆された。また、Anderson改変培地を基本
培地として行った同様の検討では、ZoBell改変培
地と同等か、それより劣る比増殖速度が得られた。従っ
て、供試株を大量に培養することを想定した場合、Zo
Bell 2216E培地を用い、かつマンニト−ルを
添加することが有効であると考えられた。各菌株におい
て最も高い比増殖速度が得られた、ZoBell改変培
地にマンニトール1.0%を加えた培地をZoBell
改変培地(II)として、次の大量培養に用いた。
および20リットル容のジャーファーメンター(三菱油
化エンジニアリング株式会社製)を用いた。まず、三角
フラスコを用いて、脱窒細菌3株の培養を行った。2リ
ットル容三角フラスコに1リットルのZoBell改変
培地(II)を入れオートクレーブにより滅菌した。培
地は脱窒細菌を接種後、30℃、100rpmで震盪培
養した。培養液を経時的に採取し、培養液の濁度(O.
D.610nm)を測定した。この際、培養液の菌密度
が高い場合には、濁度が0.4以下になるように培養液
を希釈して測定し換算した。次に、ジャーファーメンタ
ーを用いて培養を行った。該ジャーファーメンターの内
容量は20リットルであり、内部の攪拌はタービン型羽
根で行い、無菌空気の供給は培養槽の下部から行った。
なお、ジャーファーメンターの滅菌は、熱水ならびに7
0%アルコール溶液によって行った。培養槽容器の中に
滅菌した18リットルのZoBell改変培地(II)
を入れ、予め前培養した培養液300mlを接種した
後、35℃、攪拌速度100rpm、空気流速0.5リ
ットル空気/リットル培養液/分の条件下で培養を行っ
た。本実験条件においては、培養期間中のDOは飽和度
の70%以上を維持した。培養の経過に伴う培地pHの
変化は、適宜、1規定の塩酸もしくは水酸化ナトリウム
溶液により調節した。培養中に培養液の一部を採取し、
培養液の濁度(O.D.610nm)を測定することに
より増殖速度を評価した。
脱窒細菌3株の培養の結果を図9に示した。各菌株とも
に、接種後直ちに対数増殖に入ったが、培養時間約12
時間でO.D.が0.6程度の対数増殖終期に入り、7
2時間まで培養を継続しても、最終密度はO.D.(6
10nm)=1程度までしか上がらなかった。図10
に、20リットルのジャーファーメンターによる大量培
養の結果を示した。本実験においては、フラスコ条件と
同様に、培養開始後直ちに対数増殖に入り、フラスコ条
件における最終到達濃度である濁度1(O.D.,61
0nm)に12時間以内に達した。その後、Ab−A−
2株は増殖がゆっくりとなり定常期に入り48時間後に
最大濁度2を示したのちに死滅期に入った。G−A−2
−1株とAb−A−1株は12時間以降も増殖を続け、
G−A−2−1株では、36時間目に最大濁度が5に、
Ab−A−1株では48時間目に最大濁度が6に達し
た。各グラフの下側には培地pHの推移を示したが、そ
のグラフ上の矢印はその時点でpHを調整したことを表
す。これらの最大濁度における細菌数を希釈平板法で計
数したところ、G−A−2−1株で5.4×1015細胞
/ml、Ab−A−1株で3.4×1015細胞/ml、
Ab−A−2株で7.1×1015細胞/mlに達した。
また、最大濁度条件の培養液を遠心分離して得られた菌
体の乾物重を測定したところ、G−A−2−1株で1.
88g乾物/リットル培養液、Ab−A−1株で2.6
g乾物/リットル培養液、Ab−A−2株で1.36g
乾物/リットル培養液であった。最大濁度に達するまで
の期間の菌体生産効率は、G−A−2−1株で52mg
乾物/リットル培養液/時間、Ab−A−1株で54m
g乾物/リットル培養液/時間、Ab−A−2株で28
mg乾物/リットル培養液であった。以上の検討結果か
ら、3株の内ではAb−A−1株が、最も増殖が早く高
密度培養が可能であることが示された。また、培養の経
過とともに、培養液のpHが変動した。3株ともに培養
初期には培地が酸性側に傾いたが、培養の後期は培地が
アルカリ側に傾く現象が見られた。3株の中では、Ab
−A−1株がpH変動の割合が少なかった。今まで、海
洋性脱窒細菌を大量かつ高密度に培養して利用する試み
はほとんどなされておらず、参考にすべき報告値は見あ
たらない。従って、本発明は脱窒細菌の高密度の大量培
養条件を初めて明かにしたものといえる。なお、本項で
の培養は全て好気的な条件で行ったが、脱窒細菌は好気
条件で培養しても嫌気条件に誘導すれば脱窒活性を誘導
するので、好気培養よりも難しい嫌気条件での大量培養
法は必要性が少ないと判断したためである。
ステムの効率化に関する検討 次に、脱窒細菌を包括固定化し、固定化脱窒細菌を適用
した流動床型脱窒槽を適用した脱窒法に関する検討を行
った。 A.固定化脱窒細菌の脱窒活性に与える基質濃度ならび
に溶存酸素の影響に関する検討 脱窒細菌の固定化担体の作成は、植本ら:電力中央研究
所・研究報告U90056(1991)に記載の方法に
従った。供試菌株にはアルカリゲネス属Ab−A−1株
を用い、ZoBell 2216E液体培地で培養した
後、培養液から遠心分離により菌体を回収した。包括固
定用の高分子ゲルとしてポリビニルアルコール(PV
A,クラレ製クラレポバールPVA−HC)を10%
(w/v)の濃度で用い、固定化した菌数濃度は8×1
018細胞/リットルPVAであった。作成した固定化脱
窒細菌は、ZoBell 2216E液体培地に500
mg−N/lのKNO3 を添加した培養液で馴養した。
この馴養を十分に行い、脱窒活性の発現が認められた固
定化脱窒細菌を用い以下の検討を行った。
11に示す装置を用いた。容量2リットルの培養槽1は
所定量の固定化脱窒細菌2が予め充填され、そして反応
液3をその中に導入する(矢印a)反応液導入管4、処
理後の反応液3を排出する(矢印b)反応液排出管5を
備えている。なお、培養槽1内部の攪拌は矢印cの芳香
に回転する回転羽根(スクリュー型羽根7とタービン型
羽根8)を備えた攪拌機9を用いて行われる(回転速度
は70rpm)。反応液3のpHはpHメーター13に
より検知され、必要に応じ適当な酸または塩基が反応槽
1内に供給される。同様に、反応液3の温度は温度計1
4により検知され、設定温度(25℃)より高温となっ
た場合、培養槽1周囲を覆うウォータージャケット10
の給水管11から冷却水を注入し、該ジャケット内に満
たされた後、排水管12から排水することにより設定温
度まで冷却し、逆に設定温度より低温となった場合、温
水または水蒸気を前記ジャケット10に通し加温する。
さらに、反応液3中のDOの制御は、培養槽1に備えた
DOセンサー15により検知され、必要に応じ、該セン
サー15に連結したDOコントローラー16がガス流量
計17を作動させ、ライン18を介して攪拌機9下部に
取りつけた散気管6から反応液3中に所定量の窒素と空
気を供給することにより行われる。なお、DOは酸素飽
和度1%以下に保った。
水(汲み置きしたもの)で洗浄した360ml容の固定
化脱窒細菌を培養槽に入れ1440mlの海水を添加
し、総容量1.8リットル、充填率20%とした。これ
に200mg−N/lKNO3と1000mg/lグル
コースを添加し、次に窒素ガスを供給しながら嫌気条件
を保ち、脱窒活性を誘導した。その後、内部の反応液を
入れ換えて、各条件下での脱窒活性を測定した。反応条
件は以下のように設定した。基質硝酸量と脱窒活性の関
係を検討するために、炭素源としてのグルコース濃度は
1000mg/l反応液に設定し、硝酸濃度を100、
200、500、1000mg/lと変化させて脱窒活
性を測定した。脱窒活性の測定は、反応液中の無機窒素
三態量を上記方法に従って測定し、無機窒素の減少量か
ら脱窒量を算出して行った。基質グルコース量と脱窒活
性の関係を検討するためには、硝酸濃度は200mg−
N/l反応液に設定し、グルコース濃度を300、60
0、1000、10000mg/lと変化させて脱窒活
性を測定した。
量との関係について検討した結果を図12に示した。初
期硝酸濃度を100mg−N/lから1000mg−N
/lの範囲で変化させたが、24時間目までの脱窒量に
大きな差はなく、実験区間の脱窒活性には大きな違いが
なかったことが示された。24時間以降では、初期硝酸
濃度が100mg−N/lの場合においては硝酸がなく
なったため脱窒量は増えなかったが、それ以外の区では
実験区間に大きな差はなかった。このことは、固定化脱
窒細菌による脱窒速度は本実験で設定した初期基質硝酸
濃度の範囲では大きな影響を受けないことを示す。
検討した結果を図13に示した。初期グルコース濃度を
300mg/lから10000mg/lの範囲で変化さ
せたが、実験区間の脱窒活性に違いが見られた。すなわ
ち、グルコース濃度が300〜1000mg/lの範囲
では脱窒量において各実験区で大きな差はなかったが、
10000mg/lの場合は顕著に活性が低下した。ま
た、この最後の実験区では、反応液の中に糸状菌と思わ
れる水垢状のものが繁茂した。グルコース基質が十分に
存在したことがこのような現象を招いたと考えられる
が、この糸状菌と思われるものによって固定化微生物が
なんらかの影響を受けて脱窒活性が低下したことが予想
される。本発明者はAb−A−1株は菌体懸濁液の条件
ではグルコース濃度が増加してもその脱窒活性は大きく
は向上しないことをこれまでの研究で確認しているが
(渡部ら:電力中央研究所・研究報告U91002(1
991)、以上の結果から、グルコース濃度が300〜
1000mg/lの範囲では、固定化してもその性質は
変わらないと考えられる。
床による脱窒法の検討 ここでは、連続 (Chemostat)条件における固定化脱窒細
菌の脱窒活性の検討を行った。図11に示した装置を用
い、ペリスタポンプを用いて反応液を流入させ、連続反
応実験を行った。実験条件は表7に示した。反応槽の容
量は1.8リットルであり、温度は25℃、攪拌速度は
70rpmとした。実験期間中、DOの制御は行わなか
った。装置への流入水と流出水に含まれる無機窒素三態
と全有機炭素(TOC)を上記方法に従って測定した。
脱窒活性ならびにTOC消費量の経時的推移を図14に
示した。実験は2連でおこなったが、同様の推移を示し
たので、1連のみの結果を示した。反応槽流入水と流入
水の窒素三態ならびにTOCについても示した。なお、
DOは実験期間中を通じて酸素飽和度の5%以下に保た
れた。水理学的滞留時間(HRT)が48時間の最初の
7日間は、脱窒量はほぼ一定であり、約60mg−N/
lが除去され、また添加されたTOCの大部分が消費さ
れていた。また、4日目までは亜硝酸の生成が見られた
が、それ以降は検出されなかった。Ab−A−1株を適
用した生物膜法による脱窒では、脱窒槽の運用開始直後
の数日間に亜硝酸の蓄積が見られたが、その後は亜硝酸
の蓄積はなかった。このように、固定化脱窒細菌を適用
した場合でも生物膜法と同様の現象が見られた。HRT
が24時間の次の7日間では、脱窒量は増加したが、T
OC量についても増加した。脱窒量が増えた理由とし
て、滞留時間が短くなったことで、HRTが48時間の
場合に比較して基質の供給が活発になり、脱窒活性も上
昇したことが考えられる。また、炭素基質の供給が2倍
に増えたことが、未消費のTOCを増やした理由であろ
う。HRTが12時間の7日間は、脱窒量はHRT24
時間に比較して減少し、流出水のTOC量についてはさ
らに増加した。流入水の基質濃度を半分にしてHRTを
24時間にした7日間は、HRT12時間と比べて、脱
窒量はほぼ同じで、流出水のTOC量が減少した。
る固定化脱窒細菌の脱窒活性ならびにTOC消費速度に
関する評価を行い、結果を表8に示した。脱窒活性なら
びにTOC消費速度に関する評価は、各実験条件の最終
日の測定値を、この時期が各条件における定常状態であ
ると仮定して用いた。測定値は、2連の平均値である。
RTが48時間の場合は、1.8リットルの反応槽で1
日当り88.2mg−Nが除去されており、これは反応
槽1リットル当りに換算すると49mg−Nである。本
発明者が確立した生物膜法による脱窒能力は、約40m
g−N/l脱窒槽/日であるので(HRTが48時間,
グルコース濃度300mg/lの条件下)、本発明によ
る値はその1.2倍であり、生物膜法と比較してわずか
であるが向上している。HRT24時間の場合は、1.
8リットル反応槽で1日当り202mg−Nが除去され
ており(反応槽1リットル当りでは112mg−N)、
生物膜法に比較して2.8倍の能力があり、生物膜法と
比較して、非常に活性が高かった。HRTが12時間の
場合は、1.8リットルの反応槽で1日当り220mg
−Nが除去されており、生物膜法に比較して3倍の能力
がある。しかし、脱窒槽に添加されたTOCのうち77
%が流出するという問題がある。従って、TOCが魚に
影響を与えることが考えられる場合は、固定化脱窒細菌
を用いた流動床型脱窒槽と、流れ出すTOCの処理槽を
組み合わせることが必要になるかも知れない。また、H
RT24時間の条件で基質濃度を半分にした場合は、脱
窒量もTOC消費速度も約半分に低下するものの、生物
膜法に比べ脱窒効率の若干の向上がみられた。以上の検
討結果から、固定化脱窒細菌を適用した嫌気的流動床に
よる脱窒法は、生物膜法に比較して全般的に脱窒効率が
向上し、特に、基質の糖濃度を炭素換算濃度で240m
g−Cと2倍以上に高め、かつHRTを24時間と2倍
に早めた場合に、その脱窒能力が2.8倍程度に効率化
することが明らかとなった。
下の効果を奏するものである。まず、有用海洋性脱窒細
菌の高密度での大量培養を可能にしたことにより、濾材
への人工接種を可能とし、該海洋性脱窒細菌は実験室レ
ベルのみならず、工業的レベルでの生物膜法での脱窒に
適用できるものとなった。さらに、本発明は、上記脱窒
細菌を包括固定化し、その固定化脱窒細菌を適用した嫌
気的流動床型の脱窒槽を用いることで、より高い効率で
脱窒を行うことを可能にした。また、本発明の海洋性脱
窒細菌はその見かけ上の代謝が硝酸からガス状窒素へ直
接還元するタイプであるので、亜硝酸発生が望ましくな
い循環濾過養魚システム等における水質浄化の浄化微生
物として、生物膜またはより効率的には固定化細菌の形
態で好適に用いることができる。
無機窒素三態の量的変化を示すグラフである。
リゲネス属Ab−A−1株によるN2 O生成量の経時的
変化を示すグラフである。
係を示すグラフである。
える溶存酸素濃度の影響を示すグラフである。
影響を示すグラフである。
海水濃度の影響を示すグラフである。
影響を示すグラフである。
添加の効果を示すグラフである。
ける増殖の経時的推移を示すグラフである。
おける増殖の経時的推移および培地pH調整を示すグラ
フである。
菌の反応特性の測定に用いた装置を示す断面図である。
との関係を示すグラフである。
ス濃度との関係を示すグラフである。
窒活性ならびに全有機炭素(TOC)消費量の経時的推
移を示すグラフである。
Claims (6)
- 【請求項1】 pH6〜8、温度35℃、培養培地塩分
濃度0.85〜3.4%の最適生育条件を有し、硝酸か
ら直接ガス状窒素へ還元する見かけ上の代謝経路をもつ
アルカリゲネス属の海洋性脱窒細菌を塩分濃度0.85
〜3.4%の培養培地中、該培地のpHを6〜8、温度
を32〜38℃に維持して培養液の610nmでの吸光
度が2以上となるまで培養することからなる脱窒細菌の
培養方法。 - 【請求項2】 pH6〜8、温度35℃、培養培地塩分
濃度0.85〜3.4%の最適生育条件を有し、硝酸か
ら直接ガス状窒素へ還元する見かけ上の代謝経路をもつ
アルカリゲネス属の海洋性脱窒細菌を固定化してなる固
定化脱窒細菌。 - 【請求項3】 海洋性脱窒細菌がアルカリゲネス属G−
A−2−1株(FERM P−13861号)、アルカ
リゲネス属Ab−A−1株(FERM P−13862
号)またはアルカリゲネス属Ab−A−2株(FERM
P−13860号)である請求項2記載の固定化脱窒
細菌。 - 【請求項4】 請求項2または3記載の固定化脱窒細菌
を嫌気的流動床にて流入水と接触させることからなる脱
窒方法。 - 【請求項5】 前記流入水の糖濃度を炭素換算濃度12
0〜360mg−C/l、滞留時間を12〜36時間と
して処理を行う請求項4記載の脱窒方法。 - 【請求項6】 前記流入水が循環濾過養魚システムにお
ける飼育水である請求項4または5記載の脱窒方法。
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