以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、ソレノイドバルブのうちのリニアソレノイドバルブについて説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの断面図、図3は本発明の第1の実施の形態におけるボビン・エンド部ユニットの製造方法を示す工程図である。
図1において、10はリニアソレノイドバルブであり、該リニアソレノイドバルブ10は、自動変速機の油圧回路におけるライン圧の油路等に図示されないモジュレータバルブを介して接続され、モジュレータバルブにおいて発生させられた所定の油圧、すなわち、レギュレータ圧が入力圧としてリニアソレノイドバルブ10に供給される。そして、リニアソレノイドバルブ10は、電流が供給されることによって駆動され、電流に対応する油圧を所定の出力圧(パイロット圧)として図示されないコントロールバルブに対して出力する。
また、11は磁気駆動装置を構成するソレノイド部、12は該ソレノイド部11を駆動することによって作動させられるバルブ部としての調圧バルブ部であり、前記リニアソレノイドバルブ10を実際に図示されない自動変速機ケースに取り付ける場合、ソレノイド部11が上方に、調圧バルブ部12が下方に置かれる。前記ソレノイド部11は、コイルアッセンブリ13、該コイルアッセンブリ13に対して進退(図1において左右方向に移動)自在に配設されたプランジャ14、前記コイルアッセンブリ13を包囲して配設された筒状の筐(きょう)体としてのヨーク20及びターミナル21を備える。
また、前記コイルアッセンブリ13は、第1の部材としてのボビン54に巻線16を巻装することによって形成され、前記ターミナル21を介して電流が供給されるコイル17、該コイル17の後端(図1において右端)に隣接させて配設された第1のエンドヨークとしての環状のエンド部58、及び前記コイル17の前端(図1において左端)に隣接させて配設された第2のエンドヨークとしての環状のエンド部59を備える。前記エンド部58、59によって第2の部材が構成される。
前記コイルアッセンブリ13内(ボビン54及びエンド部58、59の径方向内方)には、軸方向において同じ径を有する中空部22が形成され、該中空部22に前記プランジャ14が摺動自在に嵌入される。したがって、プランジャ14は中空部22に嵌入された状態でコイルアッセンブリ13によって支持される。
前記エンド部58、59及びヨーク20は、磁性体、本実施の形態においては、強磁性体から成り、該強磁性体として電磁軟鉄等を使用することができる。該電磁軟鉄としては、純鉄を95〔%〕以上、好ましくは、ほぼ99〔%〕以上(小数点第1位で四捨五入して99〔%〕以上)含むもの、すなわち、実質的に純鉄が使用される。
そして、前記エンド部58、59を磁気的に切り離すために、前記ボビン54は非磁性体から成り、該非磁性体としてはステンレススチール(SUS)等の非磁性金属材料を使用することができる。前記ボビン54は、筒状部51、該筒状部51の後端において径方向外方に向けて形成された環状のフランジ部52、及び筒状部51の前端において径方向外方に向けて形成された環状のフランジ部53を備え、断面がほぼ「コ」字の形状を有する。そして、前記ボビン54とエンド部58、59とは焼結によって隙間なく接合され、一体的に組み付けられる。
また、前記ヨーク20は、有底の筒状体から成り、筒状部55及び円形の形状を有する底部56を備え、深絞り、冷間鍛造等の塑性金属加工によって一体に形成される。前記筒状部55の前端の円周方向における所定の部分に切欠57が形成され、該切欠57を介してコイルアッセンブリ13にターミナル21が取り付けられる。
前記ヨーク20は強磁性体から成り、強磁性体として、塑性金属加工が容易な炭素量の少ない低炭素鋼、例えば、前記エンド部58、59と同様の電磁軟鉄等を使用するのが好ましい。
また、前記ヨーク20において、筒状部55の前端にかしめ部81が形成され、ヨーク20内にコイルアッセンブリ13を嵌入し、調圧バルブ部12のバルブ本体62をセットした後、かしめ部81とバルブ本体62の後端に形成されたフランジ部63とをかしめることによって、ソレノイド部11と調圧バルブ部12とが一体的に組み付けられる。
前記プランジャ14は、軸方向においてコイル17より長くされる。そして、前記プランジャ14において、前端面(図1において左端面)S1の中央に、調圧バルブ部12のスプール26の後端が当接させられ、後端面(図1において右端面)S2に、プランジャ14とヨーク20とを磁気的に切り離すために表面処理が施され、非磁性体から成る図示されない外層が形成される。したがって、プランジャ14がヨーク20に当接した状態において、プランジャ14とヨーク20との間に磁束が生じるのを抑制することができる。
また、前記プランジャ14には、軸方向に所定の径の油路30が貫通させて形成され、該油路30を介してプランジャ14の前端側(図1において左端側)と後端側(図1において右端側)とが連通させられる。したがって、プランジャ14が進退させられるのに伴って、中空部22内におけるプランジャ14の前端側の油が後方(図1において右方)に流れたり、中空部22内におけるプランジャ14の後端側の油が前方(図1において左方)に流れたりする。
ところで、前記フランジ部53は、肉厚に形成され、かつ、内周面がテーパ状に形成される。すなわち、フランジ部53の内径は、フランジ部53の前端において最も大きく、後方になるに従って小さくなり、フランジ部53の後端において筒状部51の内径と等しくなる。
そして、前記エンド部59の内周縁の近傍に、前記フランジ部53の内周面に対応させて、テーパ状の外周面を備え、断面が直角三角形の形状を有する縁部61が後方に向けて突出させて形成され、フランジ部53の内周面と縁部61の外周面とが接触させられる。そのために、縁部61の外径は、前端において最も大きく、後方になるに従って小さくなり、エンド部59の内径と等しくなる。この場合、縁部61は後方に向けて先細に形成されるので、縁部61において磁気飽和が形成される。
なお、本実施の形態において、前記縁部61の外周面及びフランジ部53の内周面はテーパ状にされるが、外周面及び内周面を、凸状又は凹状に湾曲させたり、異なる傾斜角の多段傾斜面にしたりすることもできる。
また、前記プランジャ14は、エンド部58、59及びヨーク20と同様に強磁性体から成り、強磁性体として、例えば、電磁軟鉄等を使用することができる。
そして、前記プランジャ14の外周面には、表面処理が施されて層構造が形成される。したがって、前記プランジャ14は、強磁性体から成るベース、該ベースの径方向外方に形成された外層を備える。該外層は、摩擦係数μの小さい材料であり、かつ、非磁性体から成り、例えば、コーティング処理によって形成される。
また、軸方向において、プランジャ14とエンド部59とは、常にオーバラップしていて、所定の磁束引渡し部が確保される。そして、プランジャ14及びヨーク20の各磁束通過断面積をいずれもほぼ一定にすると、エンド部58とプランジャ14とのオーバラップ量をプランジャ14のストロークによらず前記磁束通過断面積以上に設定することができるので、ソレノイド部11を小型化することができるだけでなく、磁気効率を向上させることができる。
一方、調圧バルブ部12は、前記バルブ本体62、該バルブ本体62に対して進退自在に嵌入されたスプール26、前記バルブ本体62の前端にスナップ止めされ、スプール26がバルブ本体62から抜け出すのを防止する抜止め用のエンドプレート64、及び該エンドプレート64とスプール26の前端との間に配設され、スプール26をソレノイド部11側に向けて所定のスプリング荷重で付勢する付勢部材としてのスプリング44を備える。
前記スプール26は、前端に形成され、スプリング44内に挿入されるばね座60、該ばね座60の後方に隣接させて形成された大径のランド66、該ランド66の後方に隣接させて形成された小径のグルーブ67、該グルーブ67の後方に隣接させて形成された大径のランド68、該ランド68の後方に隣接させて形成された小径のグルーブ69、該グルーブ69の後方に隣接させて形成された中径のランド71、及び該ランド71の後方に隣接させて形成された小径のプランジャ当接部72を備える。
前記バルブ本体62は、前記モジュレータバルブから供給された入力圧が供給される入力ポートp1、出力圧をコントロールバルブに対して出力するための出力ポートp2、密閉されたフィードバックポートp3及びドレーンポートp4を備え、前記フィードバックポートp3は、図示されないフィードバック油路を介して前記出力ポートp2と連通させされ、出力圧がフィードバック圧として供給され、ランド68、71の面積差に対応する付勢力を発生させ、該付勢力でスプール26を前方に付勢する。なお、前記入力ポートp1には切欠kが形成される。
したがって、前記スプール26は、プランジャ14による推力、スプリング44のスプリング荷重及びフィードバック圧による付勢力を受け、プランジャ当接部72をプランジャ14に当接させた状態で、プランジャ14と一体的に進退させられる。
次に、前記構成のリニアソレノイドバルブ10の動作について説明する。
プランジャ14の初期位置において、プランジャ14の後端が底部56と当接させられ、ターミナル21を介してコイル17に電流が供給されると、磁束が生じるが、ボビン54が非磁性体で形成され、ボビン54とエンド部58、59とが磁気的に切り離されているので、ボビン54を迂(う)回し、ヨーク20からエンド部58、プランジャ14及びエンド部59を順に通ってヨーク20に戻る磁路が形成され、これに伴って、該磁路における縁部61とプランジャ14との間に吸引部Pが形成される。
そして、コイル17がプランジャ14を所定の吸引力で吸引し、プランジャ14に推力を発生させる。その結果、前記スプリング44によるスプリング荷重に抗して、推力は前記フィードバック圧と共にスプール26に伝達され、調圧バルブ部12が作動させられ、スプール26を前進(図1において左方向に移動)させる。この場合、プランジャ14のストローク量に基づいて、スプール26がスプリング荷重に抗してプランジャ14と一体に前進させられ、スプール26の位置が制御される。これにより、入力ポートp1とドレーンポートp4との流通割合が制御され、リニアに油圧が調整され、出力ポートp2から調整された油圧が前記出力圧として出力される。
この場合、前述されたように、ボビン54の後端面S2の表面には表面処理が施され、非磁性体から成る外層が形成されているので、プランジャ14の後端から磁束が漏れることがない。また、エンド部58、59の内周面とプランジャ14の外周面との間のクリアランスが十分小さくされるので、磁路の磁気抵抗を小さくすることができる。
そして、前記吸引部Pにおいて、縁部61は後方に向けて先細に形成され、縁部61において、磁路の断面積が小さくされるので、コイル17に供給される電流の値、すなわち、電流値、及びプランジャ14のストローク量に応じて、磁気飽和が形成される。したがって、各電流値におけるプランジャ14のストローク量に対する吸引力の変化量を比較的少なくすることができる。
そして、前記コイル17への電流の供給を切断すると、スプリング荷重によって、スプール26及びプランジャ14は、後退(図1において右方向に移動)させられ、初期位置に戻る。
ところで、前記エンド部58、59が強磁性体から成るのに対して、ボビン54が非磁性体から成るので、ボビン54とエンド部58、59とを溶接、ロー付け等によって組み付けようとすると、組付けのための作業が煩雑になり、ソレノイド部11のコストが高くなってしまう。
そこで、本実施の形態においては、前述されたように、ボビン54とエンド部58、59とを焼結によって接合し、組み付けて、ボビン・エンド部ユニットを形成するようにしている。なお、本実施の形態においては、ボビン54及びエンド部58、59を構成する二つの異なる材料間での接合、すなわち、異材接合を行うようにしている。
そして、接合における接合面(接合境界部)における接合強度を高くするために、二つの材料のうちの第1の材料として、焼結に伴って収縮反応を起こす収縮材料、本実施の形態においては、ステンレススチールの焼結材を使用し、第2の材料として、加熱されても収縮しない非収縮材料、本実施の形態においては、電磁軟鉄の溶製材を使用し、焼結拡散による固相反応を利用するようにしている。
そのために、ボビン54の少なくとも一部によって係止部が、エンド部58、59の少なくとも一部によって被係止部が形成され、前記係止部が接合面より径方向外方に、前記被係止部が接合面より径方向内方に置かれ、互いに当接させられる。
すなわち、本実施の形態においては、前記フランジ部52において、筒状部51の後端から所定の量だけ径方向外方に延びる第1の環状部分73、及び該第1の環状部分73の外周縁から軸方向に後方に向けて延びる第2の環状部分74が形成され、該第2の環状部分74が前記係止部とされる。なお、第1、第2の環状部分73、74によって段部が形成される。また、前記エンド部58において、内周縁の近傍の前端部(図1において左端部)に、前記段部に対応させ、かつ、ボビン54側に突出させて、環状の突起部75が形成され、該突起部75が前記被係止部とされる。なお、前記突起部75の径方向の寸法と第1の環状部分73の寸法とが等しくされ、突起部75の軸方向の寸法と第2の環状部分74の寸法とが等しくされる。
一方、前記フランジ部53において、前述されたように、内周面がテーパ状に形成されるので、内周面の近傍が前記係止部とされる。また、前記エンド部59において、前述されたように、縁部61が形成されるので、縁部61が前記被係止部とされる。
次に、図3に従って、ボビン・エンド部ユニットの製造方法について説明する。
まず、ステンレススチールの粉体を前記ボビン54の形状を有する型内に充填(てん)して圧力を加え、圧粉体として成形し、該圧粉体を焼結炉に送り、第1の温度、本実施の形態においては、1000〔℃〕の焼結温度で仮焼結を行い、焼結時における第1の部材としての仮焼結品を形成する。
なお、前記ステンレススチールによっては、加熱に伴って、マルテンサイト化してわずかな磁性を有することがあるので、確実に非磁性体とするために、オーテスナイト系のSUS310、SUS316等を使用するのが好ましい。
続いて、前記仮焼結品と、あらかじめ冷間鍛造によって形成されたエンド部58、59とを組み付けて予備成形品を形成し、該予備成形品を焼結炉に送り、還元雰囲気下又は不活性ガス雰囲気下で第2の温度、本実施の形態においては、1100〜1200〔℃〕の焼結温度で30分以上加熱し、本焼結を行う。
これに伴って、仮焼結品とエンド部58、59とが接合され、ボビン・エンド部ユニットが形成される。
本実施の形態においては、仮焼結を行うようにしているが、仮焼結品に加工を施す必要がない場合は、強度を大きくする必要がないので、仮焼結を行わず、前記圧粉体をそのまま第1の部材として利用することができる。その場合、圧粉体とエンド部58、59とを組み付けて予備成形品を形成し、該予備成形品を焼結炉に送り、還元雰囲気下又は不活性ガス雰囲気下で加熱し、本焼結を行う。
したがって、仮焼結を行わない分、工程を簡素化することができるとともに、ボビン・エンド部ユニットのコストを低くすることができる。
なお、本焼結が行われる際に、エンド部58、59が加熱され、焼鈍(なま)し処理手段が同時に行われる。したがって、接合に伴ってエンド部58、59内に発生する応力を無くすことができ、エンド部58、59の磁気特性を向上させることができる。
ところで、前記仮焼結が行われると、焼結材を構成する粒子間で熱による結合が起こるようになっているが、この場合、焼結温度が比較的に低く、焼結時間も短いので、粒子同士は完全には凝固しておらず、仮焼結品の粒子間に多数の微小な空間が残留している。
続いて、前記予備成形品を加熱して本焼結を行うと、前記仮焼結品において焼結材の収縮反応が起こり、各粒子間の結合が進み、粒子同士が完全に凝固する。このとき、仮焼結品は収縮し、フランジ部52、53の径方向の寸法が小さくなり、前記第2の環状部分74及びフランジ部53の各内周面の内径が小さくなる。
これに対して、前記エンド部58、59は電磁軟鉄から成り、該電磁軟鉄は、溶製材であり、加熱に伴って収縮反応が起こらない。すなわち、突起部75及び縁部61の各外周面の外径は小さくならない。
したがって、ボビン54は、接合面においてエンド部58、59に圧力を加え、該エンド部58、59を径方向内方に向けて押し付ける。その結果、接合面における接合強度を大きくすることができる。
また、焼結材の材料の成分、焼結材を構成する粒子の寸法等を調整することによって、ボビン54の熱膨張率、及びエンド部58、59の熱膨張率は、通常の使用温度範囲において実質的に等しくされる。したがって、本焼結が行われる際に、仮焼結品及びエンド部58、59は、1100〜1200〔℃〕の焼結温度に加熱されるが、同じように膨張するので、仮焼結品及びエンド部58、59に歪(ひず)みが発生することはない。その結果、通常の使用温度範囲においてボビン54及びエンド部58、59の内径に段差が形成されることがなくなり、ソレノイド部11を安定させて駆動することができる。
また、リニアソレノイドバルブ10を使用している間に、自動変速機ケース内、外気、油等の温度が変化しても、ボビン54及びエンド部58、59は同じように膨張したり収縮したりするので、コイルアッセンブリ13の内周面に歪みが発生することがなくなる。したがって、コイルアッセンブリ13の内周面とプランジャ14の外周面との間のクリアランスに局部的なばらつきが発生するのを防止することができるので、磁束を安定させることができ、かつ、プランジャ14の摺動を妨げることがない。その結果、ソレノイド部11を安定させて駆動することができる。
このように、ボビン54の仮焼結品とエンド部58、59とを組み付けて予備成形品を形成し、該予備成形品の本焼結を行うだけで、仮焼結品又は圧粉体とエンド部58、59とを接合することができる。したがって、ボビン54とエンド部58、59とを溶接、ロー付け等によって組み付ける必要がないので、組付けのための作業を簡素化することができ、ソレノイド部11を製造する工数を少なくすることができる。その結果、ソレノイド部11のコストを低くすることができる。
また、本焼結が行われる際に、エンド部58、59の焼鈍処理が同時に行われるので、ソレノイド部11を製造する工数を一層少なくすることができる。
しかも、固相反応が利用されるようになっているので、液相反応とは異なり、形成される溶融相の厚さが極めて小さく10〔μm〕程度である。したがって、接合後のボビン54及びエンド部58、59の寸法を精度よく調整することができるだけでなく、接合面の境界が乱れにくく、接合に伴って第1、第2の材料の特性が変化することがない。その結果、ボビン54及びエンド部58、59の特性、特に、エンド部58、59の磁気特性が低下するのを防止することができるので、コイル17によるプランジャ14の吸引力を大きくすることができる。
また、固相反応においては、接合面において焼結拡散が均一に行われるので、隙間のない安定した接合面を得ることができる。したがって、ボビン・エンド部ユニットの耐久性、及びソレノイド部11の耐久性を向上させることができる。
なお、本実施の形態において、焼結拡散に伴って、第1の材料に第2の材料が浸透するのは許容され、第2の材料に第1の材料が浸透するのが阻止されるように第1、第2の材料が選択される。したがって、エンド部58、59の磁気特性が低下するのを防止することができ、ソレノイド部11の特性が低下するのを防止することができる。なお、第1の材料に第2の材料が浸透しても、ボビン54はもともと非磁性体から成るので、ソレノイド部11の特性が低下することはない。
ところで、本実施の形態においては、フランジ部53の内周面及び縁部61の外周面がいずれもテーパ状に形成されるので、前記接合が行われるのに伴ってボビン54が収縮すると、軸方向の力が発生し、エンド部59が前方に押されてしまう。そこで、エンド部59が仮焼結品に対して移動することがないように、予備成形品を第2の焼結型内にセットするようにしている。したがって、予備成形品を第2の焼結型内にセットする分だけソレノイド部11を製造する工数が多くなってしまう。
そこで、予備成形品を第2の焼結型内にセットすることなく本焼結を行うことができるようにした本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図4は本発明の第2の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの断面図である。
この場合、コイルアッセンブリ13は、第1の部材としてのボビン154に巻線16を巻装することによって形成されたコイル17、該コイル17の後端(図において右端)に隣接させて配設された第1のエンドヨークとしての環状のエンド部58、及び前記コイル17の前端(図において左端)に隣接させて配設された第2のエンドヨークとしての環状のエンド部159を備える。前記エンド部58、159によって第2の部材が構成される。
また、前記ボビン154は、筒状部51、該筒状部51の後端において径方向外方に向けて形成された環状のフランジ部52、及び筒状部51の前端において径方向外方に向けて形成された環状のフランジ部153を備える。
そして、該フランジ部153は、前端部(図において左端部)を切り欠くことによって、外周縁の近傍に、前方(図において左方)に向けて突出させて環状の突起部171が形成され、該突起部171が係止部とされる。
また、エンド部159の内周縁の近傍に、突起部171に対応させて環状の突起部172が形成され、該突起部172が被係止部とされる。
なお、フランジ部153において、前記突起部171より後方(図において右方)の内周面がテーパ状に形成され、エンド部159において、前記突起部172より後方に、前記フランジ部153の内周面に対応させて、テーパ状の外周面を備えた縁部61が後方に向けて突出させて形成され、フランジ部153の内周面の一部と縁部61の外周面とが接触させられる。
本実施の形態においては、フランジ部153の内周面の一部及び縁部61の外周面がいずれもテーパ状に形成されるので、前記接合が行われるのに伴って第1の材料が収縮すると、軸方向の力が発生し、エンド部159が前方に押されるが、ボビン154は、収縮して突起部171、172間の接合面においてエンド部159に圧力を加え、該エンド部159を径方向内方に向けて押し付ける。したがって、エンド部159が仮焼結品に対して移動することがないので、予備成形品を第2の焼結型内にセットする必要がなくなり、ソレノイド部11を製造する工数を少なくすることができる。
ところで、前記第1、第2の実施の形態においては、フランジ部52において、第2の環状部分74を軸方向に形成する必要があるので、ボビン・エンド部ユニットの軸方向寸法が大きくなり、ソレノイド部11の軸方向寸法も大きくなってしまう。
そこで、ボビン・エンド部ユニットの軸方向寸法を小さくし、ソレノイド部11の軸方向寸法も小さくすることができるようにした本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図5は本発明の第3の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの断面図である。
この場合、コイルアッセンブリ13は、第1の部材としてのボビン254に巻線16を巻装することによって形成されたコイル17、該コイル17より径方向内方において、コイル17に隣接させて、かつ、コイル17の所定の箇所、本実施の形態においては、中央の近傍から後方(図において右方)に延在させて配設された第1のエンドヨークとしての筒状のエンド部258、及び前記コイル17の前端(図において左端)に隣接させて配設された第2のエンドヨークとしての環状のエンド部59を備える。前記エンド部258、59によって第2の部材が構成される。
また、前記ボビン254は、筒状部251、及び該筒状部251の前端において径方向外方に向けて形成された環状のフランジ部253を備える。
そして、ヨーク220は、有底の筒状体から成り、筒状部55、円形の形状を有する底部56、及び筒状部55と底部56との接続部分において、筒状部55より径方向内方に向けて突出させて形成された環状の連結部221を備える。さらに、プランジャ214において、プランジャ214とヨーク220とを磁気的に切り離すために、後端面(図において右端面)S2に半球状の凸部201が形成され、該凸部201に表面処理が施され、非磁性体から成る図示されない外層が形成される。なお、前記エンド部258、59、プランジャ214及びヨーク220は強磁性体から成る。
この場合、前記プランジャ214の初期位置において、前記凸部201が底部56と当接させられ、ターミナル21を介してコイル17に電流が供給されると、磁束が生じるが、ボビン254が非磁性体で形成され、ボビン254とエンド部258、59とが磁気的に切り離されているので、ボビン254を迂回し、ヨーク220からエンド部258、プランジャ214及びエンド部59を順に通ってヨーク220に戻る磁路が形成される。
そして、エンド部258が、巻線16の中央の近傍から後方に延在させて配設され、広い範囲にわたってプランジャ214と摺動させられるので、ヨーク220からエンド部258に流れる磁束は、エンド部258内の全体にわたって広がった後、プランジャ214に送られる。したがって、エンド部258内における磁束密度を低くすることができるので、プランジャ214とエンド部258との間で磁気の切り離しを行うことができ、径方向の力がプランジャ214に加わるのを抑制することができる。そして、プランジャ214とボビン254及びエンド部258、59との間の摺動が良好になるので、プランジャ214を円滑に進退(図において左右方向に移動)させることができ、ソレノイド部11の特性を向上させることができる。
本実施の形態においては、前記ボビン254において、筒状部251の後端(図において右端)の外周縁部から所定の量だけ後方に向けて突出させて環状部分274が形成され、該環状部分274が係止部とされる。また、前記エンド部258において、前記環状部分274と対応させて、かつ、前端の内周縁部から所定の量だけ前方(図において左方)に向けて突出させて環状部分275が形成され、該環状部分275が被係止部とされる。
一方、前記フランジ部253において、内周面がテーパ状に形成されるので、内周面の近傍が前記係止部とされる。また、前記エンド部59において、前記フランジ部253に対応させて、テーパ状の外周面を備えた縁部61が形成されるので、縁部61が前記被係止部とされる。
したがって、仮焼結においてボビン254の仮焼結品を形成し、該仮焼結品及びエンド部258、59から成る予備成形品を第2の焼結型内にセットし、加熱して本焼結を行うと、仮焼結品において収縮反応が起こり、各粒子間の結合が進み、粒子同士が完全に凝固する。その結果、仮焼結品は収縮し、筒状部251及びフランジ部253の径方向の寸法が小さくなり、前記環状部分274の内周面の内径が小さくなる。
これに対して、前記エンド部258、59は電磁軟鉄から成り、加熱に伴って収縮反応が起こらないので、環状部分275及び縁部61の各外周面の外径は小さくならない。
その結果、ボビン254は、収縮して、接合面においてエンド部258、59に圧力を加え、該エンド部258、59を径方向内方に向けて押し付ける。したがって、接合面における接合強度を大きくすることができる。
このように、本実施の形態においては、環状部分274、275を軸方向にオーバラップさせてボビン254及びエンド部258を形成することができるので、ボビン・エンド部ユニットの軸方向寸法を小さくすることができる。したがって、ソレノイド部11の軸方向寸法も小さくすることができる。
ところで、本実施の形態における予備成形品を第2の焼結型内にセットすることなく本焼結を行うことができるようにした本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、第3の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
図6は本発明の第4の実施の形態におけるリニアソレノイドバルブの断面図である。
この場合、コイルアッセンブリ13は、第1の部材としてのボビン354に巻線16を巻装することによって形成されたコイル17、該コイル17より径方向内方において、コイル17に隣接させて、かつ、コイル17の所定の箇所、本実施の形態においては、中央の近傍から後方(図において右方)に延在させて配設された第1のエンドヨークとしての筒状のエンド部258、及び前記コイル17の前端(図において左端)に隣接させて配設された第2のエンドヨークとしての環状のエンド部159を備える。前記エンド部258、159によって第2の部材が構成される。
また、前記ボビン354は、筒状部351、及び該筒状部351の前端において径方向外方に向けて形成された環状のフランジ部353を備える。
本実施の形態においては、前記ボビン354において、筒状部351の後端(図において右端)の外周縁部から所定の量だけ後方に向けて突出させて環状部分374が形成され、該環状部分374が係止部とされる。また、前記エンド部258において、前記環状部分374と対応させて、かつ、前端の内周縁部から所定の量だけ前方(図において左方)に向けて突出させて環状部分275が形成され、該環状部分275が被係止部とされる。
一方、前記フランジ部353は、前端部(図において左端部)を切り欠くことによって、外周縁の近傍に、前方に向けて突出させて環状の突起部371が形成され、該突起部371が係止部とされる。
また、エンド部159の内周縁の近傍に、前記フランジ部353の突起部371に対応させて、環状の突起部172が形成され、該突起部172が被係止部とされる。
なお、フランジ部353において、前記突起部371より後方の内周面がテーパ状に形成され、エンド部159において、前記突起部172より後方に、前記フランジ部353の内周面に対応させて、テーパ状の外周面を備えた縁部61が後方に向けて突出させて形成され、フランジ部353の内周面の一部と縁部61の外周面とが接触させられる。
したがって、仮焼結においてボビン354の仮焼結品を形成し、該仮焼結品及びエンド部258、159から成る予備成形品を加熱して本焼結を行うと、仮焼結品において収縮反応が起こり、各粒子間の結合が進み、粒子同士が完全に凝固する。その結果、仮焼結品は収縮し、筒状部351及びフランジ部353の径方向の寸法が小さくなり、前記環状部分374の内周面の内径が小さくなる。
これに対して、前記エンド部258、159は電磁軟鉄から成り、加熱に伴って収縮反応が起こらないので、環状部分275及び縁部61の各外周面の外径は小さくならない。
したがって、ボビン354は、収縮して、接合面においてエンド部258、159に圧力を加え、該エンド部258、159を径方向内方に向けて押し付ける。その結果、接合面における接合強度を大きくすることができる。
本実施の形態においては、フランジ部353の内周面の一部及び縁部61の外周面がいずれもテーパ状に形成されるので、前記接合が行われるのに伴って第1の材料が収縮すると、軸方向の力が発生し、エンド部159が前方に押されるが、ボビン354は、前述されたようにエンド部159に圧力を加え、該エンド部159を径方向内方に向けて押し付ける。したがって、エンド部159が仮焼結品に対して移動することがないので、予備成形品を第2の焼結型内にセットする必要がなくなり、ソレノイド部11を製造する工数を少なくすることができる。
また、本実施の形態においては、環状部分374、275を軸方向にオーバラップさせてボビン354及びエンド部258を形成することができるので、ボビン・エンド部ユニットの軸方向寸法を小さくすることができる。したがって、ソレノイド部11の軸方向寸法も小さくすることができる。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。