JP2005139462A - 高分子量アクリルアミドポリマー類の製造方法と使用方法 - Google Patents

高分子量アクリルアミドポリマー類の製造方法と使用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 超高分子量のポリマーを用いた部分的に加水分解されたアクリルアミドポリマーの提供。
【解決手段】 細かく分散された高分子量のポリアクリルアミドの粒子の分散体を形成させ、しかる後に該ポリマーを好ましくない側鎖反応なしにアルカリ性物質で処理し、加水分解により高分子量のアニオン性アクリルアミドポリマー類を生成させる。これら生成物を形成させる好ましい方法は、油相に水相が分散され、安定化されたアクリルアミド水溶液の乳化物をつくった後、該モノマーを重合し、得られた該ポリマー乳化物を加水分解剤と反応させ、さらに該加水分解されたポリマーを溶液に変換させることを構成要素としている。
【選択図】 なし

Description

本発明は、一般的には、アクリルアミドポリマー類の製造と使用に関するものである。さらに詳しくは、本発明は高分子量及び超高分子量のアニオン性アクリルアミドポリマー類の製造法並びにこれら物質を種々の工業的凝集操作用途に使用する方法に関するものである。
アクリルアミドポリマー類(“ポリアクリルアミド類”または“PAMs”)の水溶液は、工業排水、下水排水の沈降及び脱水(dewater)、また凝集技術を利用した濁水の清澄化などの用途に有用である。
さらに例えばPhillips等による特許文献1で述べられているように、これら物質は、地下の原油を含む地層にポリマー溶液を導入して原油回収量を増加させる、二次、三次原油回収プロセスで非常に有用であることが知られている。PAMsは、典型的には、粉体、または細かく分散された固体として入手され、特定の用途に応じて水に溶解して水溶液として使用される。しかしながらこれら乾燥されたポリマー類を水に溶解することは難しく、時間を要するものであり、特に加水分解されたアクリルアミドポリマー類の場合にその傾向が顕著である。これは乾燥ポリマーが容易に液体に分散せず、水と接触した際に固まりをつくる傾向にあることに起因している。このような固まりを溶解するには典型的には6−10時間もの長時間を必要とする。
Anderson等による特許文献2には水溶性のビニル付加ポリマー溶液が微細な粒子として分散された油中水(water in oil) 乳化物からなるポリマーラテックスが開示されており、ポリアクリルアミドが好ましいポリマーとして引用されている。またAnderson等が開示しているポリマー含有の乳化物は安定なものである。該ポリマーは水の存在下転相させると、前述した乾燥固体ポリマーの溶解で必要とした 6−8時間もの長い溶解時間と比較し、非常に短時間で溶液にすることができる。油中水重合方法及びラテックスポリマー類の製造方法はVanderhoff等による特許文献3に記載されている。
しかしながら、上述したタイプのアクリルアミドポリマーラテックスの主たる問題点は、それらを加水分解した時にそのラテックスが不安定になり、ラテックス中のポリマーが凝集し、油中水乳化物から析出してしまい、ほとんどもしくはまったく商品価値のない製品になってしまうことである。
Connelly等による特許文献4に、微細に分散されたポリアクリルアミドを含む油中水乳化物からなるポリマーラテックスに、加水分解前にアルカリに安定な有機界面活性剤を加えラテックスを安定化してから、該アクリルアミドポリマー類を加水分解する方法が開示されている。
該アクリルアミドポリマー乳化物の製造方法はアゾ触媒、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、を用いてアクリルアミドモノマーを重合すること及びモノマーを連続的に加えて行くことを含んでなっている。またこの参考例では分子量範囲が約10,000〜25,000,000のものの製造に限定されている。
Connelly等により開示されたようなポリマー類、すなわち分子量が約25,000,000までのもの、は有害な副反応に対して相対的に鈍感であることが知られている。
このような副反応は超高分子量のPAMsにおいて発生する傾向が強い。つまりポリマーの分子量が高くなればなるほど、ポリマーが架橋する傾向が大きくなる。
このような副反応により該ポリマーがもたらす性能が低下することが知られているため、当業者はこのような不都合を避けるため、低分子量ないしは中分子量のアクリルアミドポリマー類を使用している。それ故、部分的に加水分解された高分子量及び超高分子量のアクリルアミドポリマーを沈降または凝集の用途に用いる必要をこの分野に携わる当業者は長いこと感じて来ている。
米国特許第4,034,809号明細書 米国特許第3,624,019号明細書 米国特許第3,284,393号明細書 米国特許第4,171,296号明細書
高分子量のアクリルアミドポリマー乳化物を、側鎖反応の程度を減少させるかまたは完全に無くして、効果的かつ有効に加水分解し、高分子量及び超高分子量のポリマー類を生成させる方法は望ましく、またそのような方法が必要とされている。また超高分子量ポリマー類は特に有用であるが、固形物の凝集をより効果的に行う能力が大きいことからさらに貴重なものとなっている。
かくして本発明は、好ましくは“超高分子量”のポリマー類を用いた部分的に加水分解された“高分子量”アクリルアミドポリマー類を含んでなる改良された凝集剤の使用法及び製造方法に関するものである。これらの用語はさらに以下で定義する。
本発明で使用される用語「凝集剤(flocculating agent)」は一般的には、多数の固体粒子を含む液流にそれを適用した時、該流れから固体粒子を取り除き実質的には清澄な流出液にする能力を有する材料を意味している。これまで使用してきた「凝集操作(flocculation)」は、例えば製造工場の排水流れのような液流を清澄にする多様の方法を広く包含するものである。また本発明で使用される成句「高分子量(high molecular weight)」は少なくとも約1000万の分子量をもつアクリルアミドポリマーを指している。さらに本発明で使用される成句「超高分子量(ultra high molecular weight)」は少なくとも2700万の分子量をもつポリマーを意味している。上述したように、超高分子量ポリマー類が本発明では好ましく使用される。便宜上、これ以後特に指定されない限り、本明細書中では該成句「高分子量」は前記定義された「高」及び「超高」分子量ポリマー類の両方を含むものとして使用する。
本発明では、次の様にして調製したポリマー溶液で上記した様な液流を処理する:
不連続相がレドックス重合触媒を含むアクリルアミド水溶液の微小滴、連続相が油溶性の乳化剤を含む液状炭化水素からなる油中水乳化物を調製し、次に該アクリルアミドモノマーを重合し該乳化物中にアクリルアミドポリマー水溶液粒を生成させた。本発明の具体例のひとつとして分子量が1000万以上である高分子量ポリマー類を用いる。さらに具体的な例として、分子量が約2700万の超高分子量のポリマー類を用いる。
分子量が2700万及びそれ以上である場合、側鎖反応を減少させることまたは無くすことの必要性は該ポリマーを製造する上での一要素となっている。
さらに具体的な例では、分子量範囲は3400万以上の超高分子量ポリマー類を使用する。該乳化物は油溶性の乳化剤を添加するか有機界面活性剤を一種添加することで安定化される。凝集剤生成方法は少なくともアルカリ性物質(ポリマー上のアミド基の一部をカルボキシル基に変換するように)を添加することによりアクリルアミドポリマーを部分的に加水分解することを含んでおり、その結果として部分的に加水分解された高分子量のアニオン性アクリルアミドポリマー凝集剤を得ることができる。該凝集剤は固形分を含む液流に加えて固形分を凝集させ、引き続いて液流から除去するのに使用される。
このようにして製造された凝集剤は改善された諸性質を有しており、そのため特に以下に記述する例えば製紙工場または脱インク装置から排出される鉱物質スラリー類又は排水を凝集させるというような 多種多様の工業的な固−液分離操作に有用である。本発明にかかわる凝集剤は特に、このような排水液から固形分を除去し実質上透明な液として排出するのに有効である。
本発明の高分子量アクリルアミドポリマーを使用する方法では、先行技術の低分子量又は中分子量のポリマー類を含んでなる製品を用いた方法と比較して、凝集速度並びに凝集効率を十分に高めることができる。上述した改良点には、例えば、沈降時間の短縮や凝集系での沈降速度の増加(後述する実施例3,4,14及び15を参照)も含まれる。本明細書中で好ましいと述べている超高分子量のPAM凝集剤を使用するとさらに、先行技術の低分子量から中分子量のPAMsを使用した時に必要とされる投与量よりもずっと少ない投与量で、流水中の懸濁固形分量を実質上減らすことができる。(実施例6参照)
本発明の方法の第一段階はポリマー乳化物を生成させることである。この段階は以下に述べるような数ステップの工程を含んでいる。
第一ステップではアクリルアミドモノマー水溶液の微小滴を不連続相として含んでなる油中水乳化物を生成させる。該乳化物の連続相は一種の油溶性乳化剤を含む液状炭化水素である。該乳化物はさらにRobinson等による米国特許第4,339,371号明細書に記載されているようなレドックス重合触媒の一種を含んでおり、その記載内容は引用することによって本明細書の内容となる。
有用な触媒系として一般的には、例えば、過硫酸塩−メルカプタン系、過硫酸塩−亜硫酸塩系、塩素酸塩−重亜硫酸塩系及び過酸化水素−鉄系が挙げられるが、本発明で使用するに最も好ましいレドックス触媒は3級ブチルハイドロパーオキシド−重亜硫酸ナトリウムである。乳化物を生成させたならば、該アクリルアミドモノマーを触媒を用いて塊状重合し、不連続相の高分子量アクリルアミドポリマー水溶液の粒子にする。該ポリマーは少なくとも約1000万の分子量を持つことが望ましい。このような重合体ラテックスおよびそれらの製造方法は先に述べたAnderson等による米国特許第3,642,019号及びVanderhoff等による同第3,284,393号明細書に記載されており、またそこに開示された事項はそれを引用することにより本明細書に含まれる。
該ポリマーは、しかる後に、以下に述べるようにして加水分解される。加水分解された生成物の分子量は相応する固有粘度で少なくとも約15dl/gを示し、またその溶液粘度は少なくとも約4mP.s.になっている。該ポリマーは2700万よりも大きい分子量の超高分子量ポリマーであり、固有粘度が少なくとも約32dl/gであり、溶液粘度が少なくとも7mPa.sであることがさらに好ましい。
上記の如くして生成したポリマーの分子量は、例えば溶液(“標準”として公知)粘度(Solution Viscosity “SV”)、または固有粘度(Intrinsic Viscosity “IV”)のような粘度法分子量測定法で測定することができる。これら両方法はともに通常の当業者にはよく知られた方法である。また該ポリマーの固有粘度が次式をもって該ポリマーの分子量と関係づけられることも当業者には周知のことである。
IV=0.000373 × 分子量0.66
しかしながら固有粘度測定はやっかいで時間もかかる測定方法である。本発明で実施されているように該IV測定は4球型キャノン−ウッベローデキャピラリー粘度計を用いて、例えば、1モル濃度の食塩水に100,250,500及び1000ppmの濃度に試料調製して、50〜1000sec−1の剪断速度範囲で30℃で測定される。このようにして得られたデーターを直線回帰し、ゼロ剪断速度、ゼロポリマー濃度まで外挿する。この回帰計算により求められた値が該ポリマーの固有粘度である。
溶液(つまり、標準)粘度値は相対的に固有粘度値を求めるよりも容易に、つまり手間も時間もかからずに、求めることができる。さらにSV値は特定のポリマーについてはIV値と相関させることができるため、ポリマーの分子量は該ポリマーの溶液粘度を参照することで近似的に求めることができる。つまり、ある特定のポリマーでその溶液粘度が高い時は、該ポリマーの分子量も高いことを意味している。例えば(次の値は近似値である):
SV 4 mPa.s = IV 15 dl/g = Mw 10,000,000
SV 5 mPa.s = IV 25 dl/g = Mw 20,000,000
SV 6 mPa.s = IV 30 dl/g = Mw 26,000,000
SV 7 mPa.s = IV 32 dl/g = Mw 30,000,000
Sv 10.9 mPa.s = IV 50 dl/g =Mw 60,000,000
である。
本発明でのSV値は、1モル濃度のNaClに0.1%濃度になるようポリマーを溶解し、25℃で測定したものである。SV値が10以下の場合はULアダプターをつけたブルックフィールド粘度計を用いて60rpmで測定し、SV値が10より大きい時は、30rpmで測定し、該測定値を1.7倍している。
該ポリマーの標準粘度値と加水分解されたポリマーの加水分解度との間に相関がある。つまり、加水分解度(アミド基がカルボキシル基に変換された程度)が一般に少なくとも5モル%であるポリマーでは、該SV値は約7mPa.sまたはそれ以上である。加水分解度が10モル%またはそれ以上のポリマーでは,該SV値は一般的には少なくとも8mPa.sとなっている。さらに、加水分解度の範囲が20モル%またはそれ以上の場合、該SV値は一般的には少なくとも約9mPa.sとなっている。
ポリマーのSVとIVの関係及びポリマーの分子量を決定するためにこの知見を使用することについては以下に示す諸実施例で明確に説明する。
実施例13では、例えば、実施例1で製造したポリマーの溶液についてSV値とIV値の両方を測定した。該ポリマーの分子量は前述した式(1)を用いてIV値から求めた。ただ単にポリマーのSV値だけが分かっている(IV値は未知)場合(実施例10〜12参照)でも、SV値、IV値間の直線関係からIV値を求め、さらに前述した関係式 1を用いることによりポリマーの分子量の近似値をおおざっぱではあるが簡単に求めることができる。
上記した式1をもって、対象とするポリマーのIV値から溶液中のポリマーの分子量を高精度で計算することができるが、時間がかかること、細部について注意が必要であることなどのIV値を求める上での困難さは、分子量を測定するという目的に対してSV値を使用する相対的容易さに比べ、荷が重すぎるきらいがある。これはこのようなSV値は求めるのが相対的に簡単であり、また上述したように相応するIV値に対して数学的にも相関づけることができ、それにより溶液のSV値だけからポリマーの分子量をおおざっぱに求めることができるからである。
本発明での使用に適したPAMsは、上述したように、少なくとも2700万の超高分子量を有し、固有粘度(IV)値が少なくとも約32dl/g であり、溶液粘度(SV)値が少なくとも約7mPa.sのものであるが、分子量が3400万またはそれ以上のものはさらに好ましいものである。
ポリマー乳化物の生成についてさらに言及すると、そこで連続相を形成させるために用いる油は 、液状炭化水素類、液状置換炭化水素類を含む広範な有機液体群から選択することができる。有用な液状炭化水素類として、ベンゼン、キシレン、トルエン、鉱油類、ケロセン類、ナフサ類などの芳香族および脂肪族化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら物質は安価であり、水不溶性であり、比較的非毒性であること及び比較的高い引火点を有しており工業的に使用するに際し火災に対しての危険性を最小にすることができるなどの理由から使用に適している。
乳化物を形成する成分相互の量比は広い範囲で動かすことができるが、一般的には該乳化物は20重量%から50重量%の水;約10から40重量%の油および約20から40重量%の高分子量のアクリルアミドポリマーを含んでいる。
しかしながら、一般的には安定な乳化物を生成させるには油溶性の乳化剤の一種または、有機界面活性剤の一種を添加することが必要である。油溶性の乳化剤を添加する場合、その必要量は日ごろの経験から決定されるものであるが、一般的には油重量を基準にして約0.1から30重量%に相当する量が使用され、さらに好ましくは、油重量の約3から15重量%の範囲内で使用される。
本発明での使用に有用な乳化剤は“親水性−親油性バランス”を表すHLBでは“低HLB物質”として当業者には公知のものである。
これら物質については関連文献、例えば、この分野の当業者がよく参考にする“the Atlas HLB 界面活性剤選択指針”に、詳細に説明されている。
好ましい乳化剤としてソルビタンエステル類およびそれらのエトキシ化誘導体類が挙げられるがモノオレイン酸ソルビタンが特に本目的にかなった物質である。
使用可能な他の乳化剤として、例えば、上述したVanderoff等による特許文献3で述べられているものがあるが、本発明ではこれら乳化剤だけに限定されるものではなく、高いHLB値を持つ他の乳化剤でもそれらが良好な油中水型乳化物を生成できる限り使用可能である。
本発明に使用する有機界面活性剤に検討を移すと、これら物質は最終製品を安定化するものでなければならないが、この必要にかなう化合物であればどれもまた使用可能である。しかしながら、特殊な用途に使用する界面活性剤の選択はまず最初に少量試料で試用し、ポリマー状乳化物および/又は加水分解剤の違いによる不都合な効果を防止するよう、場合場合に応じて、使用されなければならない。好ましい有機界面活性剤は、10から20個の炭素原子を有する脂肪族アルコールまたはアミンに、該アルコールまたはアミン1モル当たり、2から10モルのエチレンオキシドを反応させて製造したものである。しかしながら、20より多い炭素原子もしくは10より少ない(しかしながら少なくとも8個の)炭素原子を有する他のアミン類およびアルコール類も本発明では使用可能である。
もっとも好ましいものは、該アルコールまたはアミンが12個から18個の炭素原子を有し、エチレンオキシドが該アルコールまたはアミン1モル当たり2から4モル反応しているものであり、特に好ましい界面活性剤はオレイルアミンとエチレンオキシドとを反応させ生成させたエトキシル化オレイルアミンである。 他の有用な有機界面活性剤は、例えば、(a)1モルのオレイルアルコールを2モルのエチレンオキシドと反応させポリオキシエチレン(2)オレイルアルコールとしたもの又は(b)1モルのラウリルアルコールを4モルのエチレンオキシドと反応させポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルとしたものである。
本発明の1つの実施態様では、該界面活性剤はポリマー状乳化物に該乳化物の0.10から15重量% の濃度になるよう添加され、そこで十分に混合される。しかしながら、0.5から3重量%の界面活性剤濃度範囲で使用するのが最も好ましいものである。好ましい実施態様では、ポリマー状乳化物は上述したように生成されるが、その乳化物中には(1)高分子量のアクリルアミドポリマーの水溶液分散粒子と(2)例えば、10から20個の炭素原子を持つ脂肪族炭化水素アルコールに該アルコール1モルあたり2−10モルのエチレンオキシドを反応させて得られる有機界面活性剤が含まれている。
次のステップで、該ポリマーを後述する“加水分解剤”と反応させ、加水分解された高分子量アクリルアミドにする。この方法を採用する該製造方法は、該有機界面活性剤が既にポリマー状乳化物中に存在しているため、一ステップ省略できる有利性がある。
本発明での加水分解に有用な加水分解剤には、アルカリ金属水酸化物類、4級アンモニウム水酸化物類がある。有用な4級アンモニウム水酸化物の一つとしてテトラメチルアンモニウム水酸化物が挙げられるが、好ましい加水分解剤はアルカリ金属水酸化物類であり、さらに好ましいものは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムである。しかしながら実際はアルカリ溶液を作る物質ならばどれも加水分解剤として使用できる。
本発明の方法においては、加水分解剤は水溶液とし、撹拌下ゆっくりとポリマー状乳化物に加える。好ましい加水分解剤は10〜50%濃度のアルカリ金属水酸化物水溶液であるが、20〜40%溶液がさらに好ましく、約30%濃度の溶液が最も好ましいものである。
該アルカリ金属水酸化物溶液の濃度はポリマー状乳化物を基準にすると0.2〜30重量%、好ましくは4〜12重量%である。しかしながら使用する加水分解剤の百分率は所望の加水分解度に応じて変更される。
前述したように約30%濃度のアルカリ金属水酸化物類の溶液が特に有用であるが、水媒体中のアルカリ金属水酸化物の濃度がそれよりも高くても低くて同様に使用できることに留意すべきである。条件として低濃度の加水分解剤を使用することが都合のよい場合は、低加水分解度のものを所望する時、および安定性要因を考慮する時である。高濃度加水分解剤は過度の希釈なしに高度の加水分解度を所望する時に使用できる。当業者には容易に理解できることであるが、この決定には安定性に対する考慮もなされなければならない。
該加水分解反応は室温でも行うことができるが、昇温して行ったほうが良い結果が得られる。一般には該反応は約10〜70℃の範囲で行われるが、この反応での好適な温度範囲は約35〜55℃にある。
加水分解反応に要する時間は反応物、濃度、反応条件および所望する加水分解度による。本発明でのアクリルアミドポリマーは先に述べたよう方法で3〜80%加水分解される。前述した反応条件にもよるが、典型的には5〜60%の加水分解が達成できるが、10〜50%の加水分解範囲が望ましい。
この加水分解手順並びに前述してきた全ての反応条件および範囲は、本発明の実施態様すなわち、(1)有機界面活性剤又は乳化剤を含むポリマー状乳化物の生成および(2)異なる段階での、有機界面活性剤または乳化剤のポリマー状乳化物への添加、に適用される。
加水分解剤による反応後、生成した加水分解アクリルアミドポリマーは、前述したAnderson等による特許文献2で開示されている乳化物類と同じく、油中水型乳化物の中に分散されている。加水分解後、該加水分解されたポリマー状乳化物を、Anderson等により開示されたと同じ方法で、水中にある加水分解されたアクリルアミドポリマーが該乳化物から非常に短時間で分離するように相転化させた。この結果を首尾よく成し遂げるには第2の界面活性剤(相転化剤)を用いる。相転化剤はそれをポリマー含有の乳化物に加えるか、該乳化物を溶解させる水に加えることが好ましく、またこの相転化剤の採用は必要不可欠なものであろう。
別法として乳化物を形成させるために使用する界面活性剤を自己相転化型にし、第2の乳化剤添加を不要とすることも可能である。これらいわゆる“破壊剤(breaker)”物質としては親水−親液平衡(“HLB”)が約10より大きいものが好ましい。それら物質にはエトキシ化アルコール類;エトキシ化アルキルフェノール類およびエトキシ化アミン類並びに当業者には公知の他の多様な化合物があるが、アニオン性の高分子量PAMを相転化させるために使用する特に好ましい界面活性剤はエトキシ化ノニルフェニル(nonylphenyl ethoxylate)である。
相転化剤を加えると乳化物から速やかにポリマーが水溶液として分離される。Anderson等によりリストされた界面活性剤は、加水分解されたアクリルアミドポリマーを容易に相転化させることが認められたが、相転化に使用する界面活性剤は、ポリマーラテックスの違いにより場合場合に応じて試用確認しなければならない。
前述した如く、本発明で製造されるポリマー類は各種の工業的凝集用途に有用であるが、このようにして製造された好ましい加水分解された超高分子量ポリマー類の性能は分子量が性能を左右する変数になっている沈降プロセスに適用した場合、特許文献4記載の化学的に同一のポリマーの性能と比較し、実際に、大幅に改善されていることがわかる。
このような用途の一つに鉱物質スラリー類の凝集がある。該方法はこのようなスラリーに、スラリーの固形分含有量基準で1〜1000ppm、好ましくは10−1000ppmの部分的に加水分解された高分子量アニオン性油中水型乳化物の有効量を加え、該スラリー中の固形分粒子を凝集させることからなっている。
しかる後、これら粒子をスラリーより分離することで、実質上清澄な液流を得ることができる。スラリーを凝集させるために用いる乳化物溶液は、該乳化物を0.05から3重量%の濃度で含んでいることが望ましい。
本発明のさらなる実施態様は上述した高分子量ポリマー乳化物を、例えば、製紙工場の排水、または紙からインクを除去し該繊維を再生使用できるようにする脱インク装置の工程水の凝集操作に使用することに関するものである。上述した鉱物質スラリーの凝集操作とは対照的に、本具体例では2段階の工程が必要である。第一段階では、カチオン性ポリマー、例えばポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、カチオン性ポリアクリルアミドまたはポリアミン、を排水に加え排水中の固形分粒子上のアニオン性電荷を実質上中和し、第一の混合物をつくる。該方法の第二段階では第一段階の混合物に、排水中の固形分重量基準で約1から10000ppm、好ましくは約10〜1000ppmの本発明に関わる部分的に加水分解されたアクリルアミドポリマーの油中水型乳化物の有効量を加え、固形分粒子を凝集させて溶液から除去し、第二の混合物をつくる。その結果、実質上清澄で粒子状物を含まない排水となる。特定の凝集用途に対して加えるべき乳化物の最適量は日常の試験を行うことで通常の当業者により決めることができる。
以下の実施例は説明だけのためになされたものであり、本発明になんら制限を加えるものではない。
実施例 1
前述したように、超高分子量ポリマー乳化物をレドックス触媒の存在下、塊状重合で製造した。2000部のバックボーン乳化物に
低臭気性石油オイル 75部
エトキシ化脂肪族アミン 46.2部
30%NaOH 287部
エトキシ化ノニルフェニル相転化剤 44部
を加え、該混合物を撹拌下25〜30℃の温度で反応させた。得られた生成物は溶液粘度(SV)が11.4mPa.sで、カルボキシル基含有量が29モル%であった。先に検討を加えたように、該ポリマーのカルボキシル基含有量は該ポリマーが受けた加水分解の程度を表す指標であり、また該ポリマーの溶液粘度に相応している。
実施例 2
以下の例外事項を除いて、実施例 1と同様にして行った:
478.3部の30%NaOHと47.9部のエトキシ化ノニルフェニル相転化剤を用いた。得られた生成物はSV値が12.1mPa.sで、カルボキシル基含有量は45モル%であった。
実施例 3 クレー沈殿試験
水中にカオリンクレーを5%固形分濃度になるよう分散させたもの(1000mlの試料を1リットルのメスシリンダーに入れたもの)に、以下に述べるスラリーに添加する前にあらかじめ水に溶解したポリマー類を加えて凝集させた。 該凝集剤はスラリーに対して1.25ppmの濃度であった。清澄な水とクレー分散液の界面が500mlの目盛りに達するまでの凝集スラリーの沈殿時間を測定した。
ポリマー 沈殿時間(秒)
ポリマーA 195
実施例1のポリマー 105
実施例2のポリマー 75
ポリマーA=モノマーから共重合された標準的なアクリルアミド/アクリ ル酸 ポリマー乳化物。 SV=6.3mPa.s;
カルボキシ基 =30モル%。
本実施例は本発明のポリマー(実施例1及び実施例2)が分散物の沈殿時間を46〜64%も改善(短縮)することを示している。
実施例 4 石炭拒絶試験(Coal Refuse Tests)
2箇所の炭鉱から得られた試料を用い、凝集試験を実施した。
Figure 2005139462
炭鉱Aのものについては、本発明の凝集剤を用いると沈降速度(増加)が41%改善され、炭鉱Bのものについてのこの改善は約280%になる。
実施例 5 脱インク装置からの“工程水”の浄化
実施例1で製造されたアニオン性PAMを、紙の脱インク装置からの洗液の凝集処理に試用してみた。その結果を以下に示した。
Figure 2005139462
実施例 6 溶存空気浮選による脱インク装置からの廃液の処理
脱離したインクを分離前に凝集させるために2段階凝集剤処理法で廃紙脱インク装置からの排水処理を行った。次に凝集したインクを溶存空気浮選法により排水から分離した。
該2段階方法はエピクロルヒドリンとジメチルアミンからのポリアミン型縮合生成物であるカチオン性ポリマーを加え(27から34ppm)、しかる後に高分子量アニオン性ポリアクリルアミド乳化ポリマーの溶液を加えることを含んでいる。最初の試験では、SV及び電荷が対照ポリマーA(実施例3参照)と同じ標準アニオン共重合体乳化物を添加量5〜10ppmの範囲で加えた。
凝集したインク固形分を分離した後、排水中に残留するインク固形分の平均的レベルは220ppmであった。
2番目の試験では、実施例 2と同じ超高分子量アニオン性共重合体乳化物を添加量2.5〜6ppmの範囲で加えた。
排水中に残留したインク固形分の平均的レベルは112ppmであった。このことより、本発明による新規なポリマー類は、先行物質の添加量よりも少ない添加量でも先行物質類(ポリマーA)よりも実質上より大きな懸濁固形分の減少効果をもっていることがわかる。
実施例 7 製紙工場排水の凝集
20ppmのポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(“polyDADM”)と実施例 1のアニオン性PAMとを組み合わせたもので製紙工場排水を処理した。その結果を以下に示した。
Figure 2005139462
実施例 8及び9
得られるポリマー類の加水分解度が低くなるようにNaOHの使用量を減らしたほかは、実施例 1と同様にして実施した。この加水分解度の低下に相応してポリマーのSVも減少した。(実施例 1の製品と関連している。)
Figure 2005139462
実施例 10〜12
NaOHの使用量を増やしたほかは、実施例 1 と同様にして実施した。さらに試料の一部を加熱処理した。該ポリマーの加水分解度は以下のカルボキシル基値で示されるように実質上より大きいものであった。またすべての場合において、安定な乳化物が得られた。
Figure 2005139462
実施例 13
実施例1を繰り返した。生成物のSV値は10.86mPa.sであり、IVは50.4dl/gであった。[これは式1、IV=0.000373×分子量0.66、を使用して求めると分子量6070万に相当する。]
商業的に入手可能なアクリル酸/AMD 共重合体試料のSVは6.08mPa.s、IVは29.7dl/g(分子量=2600万)であった。
実施例 14
実施例1を繰り返した。得られたポリマーのSVは10.0であった。実施例3と同じクレー沈降試験を実施し、その性能を他のアニオン性PAM類と比較した。
Figure 2005139462
この実施例は、先行技術の物質で本発明のポリマーを使用した時と同じ結果(10フィート/時間の沈降速度)を得るためには、実質上より多くの量を必要とすることを示している。
実施例 15
Connollyの米国特許第4,171,296号明細書実施例1に記載された処方を正確に繰り返してみた。得られた乳化生成物(ポリマー対照例Q)はSV値が6.85mPa.s(M.W.=約3500万)であった。分析を行うため該ポリマー試料を沈殿させた。沈殿で得られたポリマーのカルボキシル基含有量は35モル%であった。さらに、本出願明細書の実施例1を繰り返し実施し、SV値11.17mPa.sの乳化ポリマーで、沈殿させて得たポリマーのカルボキシル基含有量が35モル%のものを得た。実施例 3で述べたクレーの沈降試験を行い、下記の結果を得た:
また実施例1と同じ操作で、SV値6.5mPa.s、これは分子量28,000,000に相当する、のより分子量の小さいポリアクリルアミドをつくり、しかる後、前述したように加水分解を行った。このPAMをポリマーBとして区別して以下に示した。
Figure 2005139462
以上の結果は、本発明の高分子量ポリマー類の優秀さを明確に物語っている。
実施例 16及び17
ポリアクリルアミドバックボーン乳化物の分子量を減少させるために連鎖移動剤のイソプロパノールを重合前にモノマーに加えた以外は、実施例1を繰り返した。しかる後、加水分解反応を実施例 1に述べた通りに実施した。
Figure 2005139462
実施例 18〜23
多様の安定化界面活性剤を加えた以外は、実施例1を繰り返した。さらにエトキシ化アルコール相転化界面活性剤を使用した。
実施例 安定化界面活性剤 最終製品のSV値
18 オレイン酸イソプロピルアミド* 10.64
19 ポリオキシエチレンオレイルエーテル 10.03
(HLB=8.2)
20 ポリオキシエチレンオレイルエーテル 10.74
(HLB=5.0)
21 オレイン酸置換イミダゾリン 11.11
22 オレイン酸のジエタノールアミド* 10.64
23 ポリオキシエチレンラウリルエーテル 10.50
*アルカリに安定でない。
ここで開示した発明が上述した目的を十分満足することは明らかに予測できるが、多種多様の改良と実施態様は当分野の当業者により考案することができるものである。また付加された諸請求はこのような改良と実施態様のすべてが本発明の真の精神と範囲に含まれるようになされたものである。
本発明の特徴と、実施態様は次の通りである。
1.a)レドックス重合触媒を含有するアクリルアミドモノマー水溶液の微小滴を不連続相とし、油溶性乳化剤を含有する液状炭化水素を連続相としてなる油中水型乳化物をつくり;
b)該アクリルアミドモノマーを塊状重合して、不連続相としてのアクリルアミドポリマーの水溶液粒を形成させ;
c)該アクリルアミドポリマーをアルカリ金属水酸化物もしくは第4級アンモニウム水酸化物と反応させて該ポリマーの少なくとも一部を加水分解し、固有粘度で少なくとも約15dl/g、溶液粘度で少なくとも約4mPa.sとして表される1000万以上の分子量を持つ重合体を生成させる
ことを含んでなる改良された諸性能を有する凝集剤の製造方法。
2.該ポリマーが、固有粘度で表すと少なくとも約32dl/g、溶液粘度で表すと少なくとも約7mPa.sである少なくとも約2000万の分子量を有するポリマーであることを特徴とする上記1記載の方法。
3.上記c)段階に移る前に、さらに油溶性乳化剤及び有機界面活性剤からなる群から選択される安定化剤の一種を該乳化物に加えることを含んでなる上記2記載の方法。
4.該加水分解された高分子量PAM分散物にさらに相転化剤を加え、加水分解された該粒子を水溶液中に放出させることを特徴とする上記1記載の方法。
5.4mPa.sより大きい溶液粘度及び約5モル%より大きい加水分解度を有する部分的に加水分解された高分子量アクリルアミドポリマー。
6.上記5の加水分解された高分子量ポリマーの油中水型乳化物。
7.さらに相転化剤の一種を含んでなる上記6記載の乳化物。
8.多数の鉱物質粒子を含んでなる鉱物質水性スラリーに、該スラリーの固形分含有量をベースとして、該粒子を凝集させるに有効な量の上記5記載のポリアクリルアミドの溶液を加えて混合液をつくり、その混合液から該粒子を除去し、実質的に清澄な液とすることを含んでなる鉱物質スラリー類の凝集方法。
9.多数の固形分粒子を含んでいる製紙工場の排水に該固形分粒子が帯びているアニオン性の電荷を実質的に中和するに十分なカチオン性ポリマーを加えた第一段目の混合液をつくり;
該第一段目の混合液に、該排水中の固形分含有量をベースとして、該固形分粒子を凝集させるのに有効な量の上記5のポリアクリルアミド溶液を加えて第二段目の混合液をつくり;そして
第二段目の混合液から凝集した固形分粒子を除去し、それにより実質的に清澄な液流とする
ことを含んでなる製紙工場排水の凝集処理方法。
10.多数の固形分粒子を含む脱インク装置からの工程排水に該固形分粒子が帯びているアニオン性の電荷を実質的に中和するに十分なカチオン性ポリマーを加えて第一段目の混合液をつくり;
該第一段目の混合液に、該排水中の固形分含有量をベースとして、該固形分粒子を凝集させるのに有効な量の上記5記載の乳化物溶液を加えて第二段目の混合液をつくり;そして
第二段目の混合液から凝集した固形分粒子を除去し、それにより実質的に清澄な液流とする
とすることを含んでなる第インク装置からの工程排水の凝集処理方法。

Claims (1)

  1. a)レドックス重合触媒を含有するアクリルアミドモノマー水溶液の液滴を不連続相として、油溶性乳化剤を含有する液状炭化水素を連続相として含んでなる油中水型乳濁液をつくり;
    b)該アクリルアミドモノマーを塊状重合して、不連続相としてのアクリルアミドポ
    リマーの水溶液粒を形成させ;
    c)ポリマーが加水分解される前に、油溶性乳化剤及び有機界面活性剤からなる群か
    ら選択される安定化化合物を乳濁液に加え、そして
    d)該アクリルアミドポリマーをアルカリ金属水酸化物もしくは第4級アンモニウム
    水酸化物と反応させて該ポリマーの少なくとも5モル%を加水分解し、
    i)5モル%以上の加水分解度においては少なくとも7mPasの溶解粘度、10
    モル%以上の加水分解度においては少なくとも8mPasの溶解粘度、又は2
    0モル%以上の加水分解度においては少なくとも9mPasの溶解粘度、そし

    ii)安定した油中水乳濁液中にポリマーの分散を維持しながら、少なくとも32
    dl/gの固有粘度、及び少なくとも7mPasの溶融粘度で示されるように
    少なくとも2700万の分子量を有するポリマーを生成させる、
    ことを含んでなるアクリルアミド重合体の製造方法。
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