JP2005138236A - 放電加工用電極線の製造方法及び放電加工用電極線 - Google Patents

放電加工用電極線の製造方法及び放電加工用電極線 Download PDF

Info

Publication number
JP2005138236A
JP2005138236A JP2003378020A JP2003378020A JP2005138236A JP 2005138236 A JP2005138236 A JP 2005138236A JP 2003378020 A JP2003378020 A JP 2003378020A JP 2003378020 A JP2003378020 A JP 2003378020A JP 2005138236 A JP2005138236 A JP 2005138236A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
wire
discharge machining
copper
layer
zinc
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003378020A
Other languages
English (en)
Inventor
Naoki Soto
直樹 外
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Suncall Corp
Original Assignee
Suncall Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Suncall Corp filed Critical Suncall Corp
Priority to JP2003378020A priority Critical patent/JP2005138236A/ja
Publication of JP2005138236A publication Critical patent/JP2005138236A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Electrical Discharge Machining, Electrochemical Machining, And Combined Machining (AREA)

Abstract

【課題】 断面直径が0.1mm以下の放電加工用電極線において、十分な引張り強さと放電加工性能とを備えてタングステン線及びモリブデン線に代替し得るとともに、製造上の問題の発生を抑制することができる。
【解決手段】 炭素を重量比で0.6%以上含有する高炭素鋼で形成されているとともに熱処理された鋼線に対して、当該鋼線の外周を銅で覆う銅被覆層を形成する(S1)。銅被覆層の外周を亜鉛で覆う亜鉛被覆層を形成する(S2)。銅被覆工程(S1)及び亜鉛被覆工程(S2)の後、鋼線、銅被覆層、及び亜鉛被覆層の3層を有する多層線を少なくとも断面直径が0.1mm以下になるまで伸線する(S4、S5)。伸線工程(S4、S5)の後に温間で引っ張り力を付与する(S6)。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ワイヤ放電加工において電極線として用いられる断面直径が0.1mm以下の放電加工用電極線、及びその製造方法に関する。
例えば、電子情報機器や携帯電話等に使用される精密部品等は、ワイヤ放電加工機により製作されたプレス金型を用いて成型加工が行われている。そして、このようなワイヤ放電加工においては、微細な高精度加工を可能にするため、放電加工用電極線として断面直径が0.1mm以下(例えば、0.07mm〜0.03mm程度)のものが多く用いられている。従来、微細加工のための放電加工用電極線(0.1mm以下)としては、放電加工時に電極線に作用する張力に抗し得る引張り強さを確保する観点から、タングステンやモリブデン等の比重の大きい金属からなる電極線が用いられていた。しかし、タングステン等を用いると資源面や製作面において問題があることや著しく高価であることから、芯線として高炭素鋼を用いてその表面に銅や亜鉛等を被覆する放電加工用電極線が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の放電加工用電極線は、高炭素鋼の芯線の表面に厚さ5μm以下の銅の被覆層が形成され、更にその上に厚さ0.5μm以上3.0μm以下の亜鉛の被覆層が形成された3層構造で構成されている電極線である。これにより、高炭素鋼の芯線により引張り強さが確保されるとともに、最外層の亜鉛被覆層により放電加工性能(加工速度)が確保され、タングステン等の高価な電極線に対して代替使用が可能な電極線が得られるものである。この電極線は、熱処理が施された高炭素鋼の鋼線に伸線加工を施し(例えば、直径0.05mmの電極線を製造する場合であれば、0.042mmまで伸線する)、その後、銅と亜鉛とを順次電気メッキを施し、最後に仕上げの伸線加工を施こして所定径とすることで製造される。
特開2000−107943号公報(第2−4頁、第1図)
特許文献1に記載の放電加工用電極線は、伸線により鋼線の径が十分に小さくなった状態で銅及び亜鉛の電気メッキを施して所望の被覆厚さの電極線を得るものであるため、鋼線の径が相当に小さい状態でメッキが行われることになる。このため、メッキ時に鋼線に付与される大きな張力により、断線が発生し易い(鋼線が破断し易い)という問題がある。そのため、歩留まりの低下や断線トラブルによる生産能率の低下等の製造上の問題を生じ易い。
本発明は、上記実情に鑑みることにより、十分な引張り強さと放電加工性能とを備えてタングステン線及びモリブデン線に代替し得るとともに、製造上の問題の発生を抑制することができる断面直径が0.1mm以下の放電加工用電極線及びその製造方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の製造方法は、ワイヤ放電加工において電極線として用いられる放電加工用電極線の製造方法に関する。
そして、本発明の放電加工用電極線の製造方法は、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有しており、以下の特徴を単独で、もしくは、適宜組み合わせて備えている。
上記目的を達成するための本発明の放電加工用電極線の製造方法における第1の特徴は、炭素を重量比で0.6%以上含有する高炭素鋼で形成されているとともに熱処理された鋼線に対して、当該鋼線の外周を銅で覆う銅被覆層を形成する銅被覆工程と、前記銅被覆層の外周を亜鉛で覆う亜鉛被覆層を形成する亜鉛被覆工程と、前記銅被覆工程及び前記亜鉛被覆工程の後、前記鋼線、前記銅被覆層、及び前記亜鉛被覆層の3層を有する多層線を少なくとも断面直径が0.1mm以下になるまで伸線を行う伸線工程と、前記伸線工程の後に温間で引っ張り力を付与する真直処理工程と、を備えていることである。
この構成によれば、熱処理後のまだ十分に径が大きい状態の鋼線に対して銅被覆工程と亜鉛被覆工程とが行われてその後伸線工程が行われるため、鋼線の径が小さい状態で電気メッキ等の被覆工程が行われることがない。このため、被覆工程で鋼線に付与される張力による引張り応力を小さくでき、断線してしまうことを抑制することができる。これにより、歩留まりの低下や断線トラブルによる生産能率の低下等の製造上の問題の発生を抑制することができる。
また、銅及び亜鉛被覆工程の後に伸線を行っても伸線工程中の被覆層の剥離の問題も生じないことも本件発明者らは知見した。
また、この製造方法により、鋼線の表面に、銅リッチ層、黄銅層、及び亜鉛リッチ層の各層が形成された4層構造の放電加工用電極線を製造することができる。
従って、十分な引張り強さと放電加工性能とを備えてタングステン線及びモリブデン線に代替し得るとともに、製造上の問題の発生を抑制することができる断面直径が0.1mm以下の放電加工用電極線を製造することができる。
本発明の放電加工用電極線の製造方法における第2の特徴は、前記真直処理工程では、300℃以上550℃以下の温度において5秒以上1分以下の時間の間保持することである。
この構成によれば、十分に真直処理を行うことができ、真直性の高い放電加工用電極線が得られる。
本発明の放電加工用電極線の製造方法における第3の特徴は、前記銅被覆工程では、鋼線半径方向における銅被覆層厚みが前記鋼線半径の5%以上15%以下となるように前記銅被覆層を形成することである。
この構成によれば、銅被覆層厚みを5%以上とすることで最終的に十分な導電性を確保できるとともに、銅被覆層厚みを15%以下とすることで最終的に十分な鋼線径の大きさも確保できて引張り強さの低下を抑制できる。
本発明の放電加工用電極線の製造方法における第4の特徴は、前記亜鉛被覆工程では、鋼線半径方向における亜鉛被覆層厚みが前記鋼線半径の2%以上8%以下となるように前記亜鉛被覆層を形成することである。
この構成によれば、亜鉛被覆層厚みを2%以上とすることで最終的に十分な放電加工性能を確保できるとともに、亜鉛被覆層厚みを8%以下とすることで最終的に十分な鋼線径の大きさも確保できて引張り強さの低下を抑制できる。
本発明の放電加工用電極線の製造方法における第5の特徴は、前記銅被覆層は、電気メッキにより形成されることである。
この構成によれば、所望の厚みの銅被覆層を安定して容易に形成することができる。
本発明の放電加工用電極線の製造方法における第6の特徴は、前記亜鉛被覆層は、電気メッキにより形成されることである。
この構成によれば、所望の厚みの亜鉛被覆層を安定して容易に形成することができる。
また、前述の目的を達成するための本発明の放電加工用電極線は、ワイヤ放電加工において電極線として用いられるものに関する。
そして、本発明の1つの観点による放電加工用電極線は、炭素を重量比で0.6%以上含有する高炭素鋼で形成されるとともに熱処理されている鋼線に対して、前記鋼線の外周を銅で覆う銅被覆層を形成する銅被覆工程と、前記銅被覆層の外周を亜鉛で覆う亜鉛被覆層を形成する亜鉛被覆工程と、前記銅被覆工程及び前記亜鉛被覆工程の後、前記鋼線、前記銅被覆層、及び前記亜鉛被覆層の3層を有する多層線を少なくとも断面直径が0.1mm以下になるまで伸線を行う伸線工程と、前記伸線工程の後に温間で引っ張り力を付与する真直処理工程と、を備える放電加工用電極線の製造方法によって製造されていることを特徴とする。
この構成によれば、熱処理後のまだ十分に径が大きい状態の鋼線に対して銅被覆工程と亜鉛被覆工程とが行われてその後伸線工程が行われるため、鋼線の径が小さい状態で電気メッキ等の被覆工程が行われることがない。このため、被覆工程で鋼線に付与される張力による引張り応力を小さくでき、断線してしまうことを抑制することができる。これにより、歩留まりの低下や断線トラブルによる生産能率の低下等の製造上の問題の発生を抑制することができる。
また、銅及び亜鉛被覆工程の後に伸線を行っても伸線工程中の被覆層の剥離の問題も生じないことも本件発明者らは知見した。
また、このように製造して得られた放電加工用電極線は、鋼線の表面に、銅リッチ層、黄銅層、及び亜鉛リッチ層の各層が形成された4層構造となることを本件発明者らは知見した。
従って、十分な引張り強さと放電加工性能とを備えてタングステン線及びモリブデン線に代替し得るとともに、製造上の問題の発生を抑制することができる断面直径が0.1mm以下の放電加工用電極線を得ることができる。
また、本発明の他の観点による放電加工用電極線は、前述の目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有しており、以下の特徴を単独で、もしくは、適宜組み合わせて備えている。
前述の目的を達成するための本発明の他の観点による放電加工用電極線における第1の特徴は、断面直径が0.1mm以下であって、炭素を重量比で0.6%以上含有する高炭素鋼により形成されている鋼線と、前記鋼線の外周を被覆するよう形成されているとともに、銅を重量比で70%以上含有する銅リッチ層と、前記銅リッチ層の外周を被覆するとともに、銅を重量比で55%以上65%以下含有し亜鉛を重量比で30%以上40%以下含有する黄銅により形成されている黄銅層と、前記黄銅層の外周を被覆するよう形成されているとともに、亜鉛を重量比で50%以上含有する亜鉛リッチ層と、を備えていることである。
この構成によれば、鋼線の表面に、銅リッチ層、黄銅層、及び亜鉛リッチ層の各層が形成された4層構造の放電加工用電極線を得ることができる。従って
十分な引張り強さと放電加工性能とを備えてタングステン線及びモリブデン線に代替し得る断面直径が0.1mm以下の放電加工用電極線を得ることができる。
また、この放電加工用電極線は、鋼線の外周を銅で覆う銅被覆工程と、さらにその外周を亜鉛で覆う亜鉛被覆工程と、銅被覆工程及び亜鉛被覆工程の後、鋼線・銅被覆層・亜鉛被覆層の3層を有する多層線を断面直径が0.1mm以下になるまで伸線を行う伸線工程と、伸線工程の後に温間で引っ張り力を付与する真直処理工程と、を備える放電加工用電極線の製造方法によって製造することができる。
即ち、まだ十分に径が大きい状態の鋼線に対して銅被覆工程と亜鉛被覆工程とが行われてその後伸線工程が行われるため、鋼線の径が小さい状態で電気メッキ等の被覆工程が行われることがない。このため、被覆工程で鋼線に付与される張力による引張り応力を小さくでき、断線してしまうことを抑制することができる。これにより、歩留まりの低下や断線トラブルによる生産能率の低下等の製造上の問題の発生を抑制することができる。
また、銅及び亜鉛被覆工程の後に伸線を行っても伸線工程中の被覆層の剥離の問題も生じないことも本件発明者らは知見した。
従って、十分な引張り強さと放電加工性能とを備えてタングステン線及びモリブデン線に代替し得るとともに、製造上の問題の発生を抑制することができる断面直径が0.1mm以下の放電加工用電極線を得ることができる。
前述の目的を達成するための本発明の他の観点による放電加工用電極線における第2の特徴は、前記亜鉛リッチ層は、電極線半径方向における被覆層厚みが0.05μm以下であることである。
この構成によれば、表面に0.05μm以下の亜鉛リッチ層を備えることで十分な放電加工性能を確保できるとともに、十分な鋼線径の大きさも確保できて引張り強さの低下を抑制できる。
また、この放電加工用電極線は、銅被覆工程、亜鉛被覆工程、銅及び亜鉛被覆工程の後に3層の多層線を断面直径が0.1mm以下になるまで伸線を行う伸線工程、及び真直処理工程と、を備える放電加工用電極線の製造方法によって製造することができる。従って、被覆工程での断線の発生を抑制し、歩留まりの低下や断線トラブルによる生産能率の低下等の製造上の問題の発生を確実に抑制することができる。
前述の目的を達成するための本発明の他の観点による放電加工用電極線における第3の特徴は、前記黄銅層及び前記銅リッチ層の電極線半径方向における被覆厚みは、いずれとも前記亜鉛リッチ層の電極線半径方向における被覆厚みの10倍以上厚いことである。
この構成によれば、銅被覆工程、亜鉛被覆工程、銅及び亜鉛被覆工程の後に3層の多層線を断面直径が0.1mm以下になるまで伸線を行う伸線工程、及び真直処理工程と、を備える放電加工用電極線の製造方法によって製造することができる。従って、被覆工程での断線の発生を抑制し、歩留まりの低下や断線トラブルによる生産能率の低下等の製造上の問題の発生を確実に抑制することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る放電加工用電極線1(以下、「電極線1」ともいう)の軸方向と垂直な断面の模式図である。電極線1は、ワイヤ放電加工において電極線として用いられ、断面直径が0.1mm以下(例えば、0.07mmや0.05mm)の放電加工用電極線である。ワイヤ放電加工機(図示せず)において、例えば、この電極線1を用いて微細加工されたプレス金型等が製作され、その金型によって精密部品等が成型加工されることになる。
図1の断面模式図に示すように、電極線1は、中心の鋼線11と、その周囲に形成されている銅リッチ層12、黄銅層13、及び亜鉛リッチ層14とを備えた4層構造となっている。
鋼線は、炭素を重量比で0.6%以上含有する高炭素鋼により形成され、芯線を構成している。電極線1の断面内において、周囲の層に対して大きな面積比率を占める鋼線が芯線として用いられていることで、十分な引張り強さを確保することができる。
銅リッチ層12は、鋼線11の外周を被覆するよう形成されている。そして、銅を重量比で70%以上含有する層として形成されている。銅リッチ層12は、鋼線11の半径方向における厚みが鋼線11の半径寸法に対して良好な導電性を確保するために必要な下限の厚み以上であるとともに、鋼線径の大きさも確保できて引張り強さの低下を抑制できる上限厚み以下となるように形成されている。
黄銅層13は、銅リッチ層12の外周を被覆するとともに、銅を重量比で55%以上65%以下の範囲で含有し、亜鉛を重量比30%以上40%以下の範囲で含有する黄銅により形成されている。
亜鉛リッチ層14は、黄銅層13の外周を被覆するように形成されている。そして、亜鉛リッチ層14は、亜鉛を重量比で50%以上含有する層として形成されている。この亜鉛リッチ層14は、電極線11の半径方向における被覆厚みが0.05μm以下であって、最表層に薄く形成されている。最表層に薄く亜鉛リッチ層14が形成されていることで、良好な放電加工性能を確保することができる。なお、最表層の亜鉛リッチ層14は、黄銅よりも低温度で溶融分離するため、放電加工性能の向上を図ることができる。
また、電極線1における銅リッチ層12及び黄銅層13の電極線半径方向における被覆厚みは、いずれとも亜鉛リッチ層14の電極線半径方向における被覆厚みの10倍以上の厚さを備える層として形成されている。なお、各層間(11・12間、12・13間、13・14間)では、各重量比が遷移するように変化している。
次に、本実施形態に係る放電加工用電極線の製造方法について説明する。
図2は、電極線1の製造方法における各工程の順番を示すフローチャートである。図2に示すように、本実施形態に係る製造方法は、炭素を重量比で0.6%以上含有する高炭素鋼であって、焼鈍等の熱処理(S0)が施されて所望の組織状態に調整された鋼線に対して適用される。本実施形態に係る製造方法には、脱スケール工程S1、銅(Cu)メッキ工程S2、亜鉛(Zn)メッキ工程S3、伸線工程(第1伸線工程S4、第2伸線工程S5)、及び真直処理工程S6が含まれている。
まず、脱スケール工程S1では、熱処理により鋼線表面に形成されているスケール層(酸化鉄層)の除去を行う。スケール層除去は、例えば鋼線を塩酸槽に浸漬することで行われる(硫酸酸洗でもよい、また、酸洗前にショットブラスト等により機械的なスケール除去を行っていてもよい。
脱スケール工程S1が終了して表面のスケール層が除去された鋼線に対して、次に、当該鋼線の外周を銅で覆う銅被覆層を形成する銅メッキ工程(銅被覆工程)S2が施される。銅被覆層は、電気メッキにより形成される。電気メッキにより、所望の厚みの銅被覆層を安定して容易に形成することができる。
銅メッキ工程S2では、鋼線半径方向における銅被覆層厚みが鋼線半径の5%以上15%以下の範囲に収まるように銅被覆層が形成されることが望ましい。銅被覆層厚みを5%以上とすることで、最終的に電極線1になったときに十分な導電性を確保できる。そして、銅被覆層厚みを15%以下とすることで、最終的に電極線1になったときに十分な鋼線径の大きさも確保できて引張り強さの低下を抑制できる。
銅メッキ工程S2が終了すると、次に、銅被覆層の外周を亜鉛で覆う亜鉛被覆層を形成する亜鉛メッキ工程(亜鉛被覆工程)S3が施される。亜鉛被覆層は、電気メッキにより形成され、これにより、所望の厚みの亜鉛被覆層を安定して容易に形成することができる。
亜鉛メッキ工程S3では、鋼線半径方向における亜鉛被覆層厚みが鋼線半径の2%以上8%以下の範囲に収まるように亜鉛被覆層が形成されることが望ましい。亜鉛被覆層厚みを2%以上とすることで、最終的に電極線1になったときに十分な放電加工性能を確保できる。そして、亜鉛被覆層厚みを8%以下とすることで、最終的に電極線1になったときに十分な鋼線径の大きさも確保できて引張り強さの低下を抑制できる。
なお、下表1に、最終的な電極線直径が、70μm及び50μmの各場合におけるメッキ前素線直径と、伸線前の状態での銅被覆層厚み及び亜鉛被覆層厚みとの組み合わせの例を示す。
亜鉛メッキ工程S3が終了すると、次に伸線工程が行われる。伸線工程では、鋼線、銅被覆層、亜鉛被覆層の3層を有する多層線を少なくとも0.1mm以下になるまで伸線が連続して(他の工程を途中に挟まずに)施される。例えば、70μm、50μm、30μmなどの所望の各断面直径になるまで伸線が連続的に行われる。
伸線工程では、第1伸線機によって行われる第1伸線工程S4と、第2伸線機によって行われる第2伸線工程S5とが続けて行われる。第1伸線工程S4及び第2伸線工程S5ともに、鋼線・銅被覆層・亜鉛被覆層の3層からなる多層線を複数のダイス内を順番に通過させていくことにより、径小化して伸線していく。なお、下表2は、最終的な電極線直径が70μm及び50μmの各場合におけるパススケジュール(各ダイス出側での線径寸法)の例について一部省略しつつ示したものである。
表2において、例えば、電極線直径が70μmのときは、伸線前素線直径は480μm〜552μmの範囲で設定される。そして、この直径の素線が#1伸線機の#1ダイスを通過すると、直径400〜472μmまで伸線される。以下、順番にダイスを通過する毎に伸線されるとともに径小化され、第1伸線機では複数のダイスを経て200〜280μm程度まで径小化される。また、続けて、第2伸線機でも同様に複数のダイスを通過して、最終的に直径70μmになるまで伸線される。
図3は、伸線工程前における多層線の表面(図3(a))と、伸線工程後における電極線の表面(図3(b))とをそれぞれ示した走査電子顕微鏡(SEM)による観察結果である。図3(b)に示すように、伸線後であっても最表面の亜鉛被覆の剥離は発生しておらず、多層線としての構造を保ったまま伸線されていることがわかる。即ち、本件発明者は、銅及び亜鉛被覆工程の後に伸線を行っても伸線工程中の被覆層の剥離の問題も生じないことを知見した。
図4は、伸線工程が終了して真直処理工程が行われる前の状態の電極線における最表層からの半径方向の深度に応じた組成変化の一例を示したものであって、オージェ電子分光法による観察結果を示したものである。なお、図4は、直径が50μmの電極線についての観察結果である。この結果に示すように、伸線後の状態でも、最表層から0.4μm(4000オングストローム)程度の深度までは亜鉛(Zn)が多く含有された層となっている。そして、最表層から0.4〜1.6μm(4000〜16000オングストローム)程度の深度までは銅(Cu)が多く含有された層となっており、1.6μmより深いところでは鉄(Fe)が多く含有された層(鋼線の層)となっている。従って、伸線工程では、鋼線の表面に銅被覆及び亜鉛被覆が施された状態をほぼ保った状態のまま伸線されていることがわかる。
伸線工程(S4、S5)が終了すると、次に真直処理工程S6が行われる。真直処理工程S6では、電極線に温間で引張り力を付与することで行われる。なお、この真直処理工程S6で保持される温間条件は、十分に真直処理を施して真直性の高い電極線を得るために、300℃以上550℃以下(573.15K以上823.15K以下)の温度において5秒以上1分以下の時間の間であることが望ましい。真直処理工程(S6)の完了により本実施形態に係る製造方法が終了する(S7)ことになる。
図5は、真直処理工程が終了した状態の最終的な放電加工用電極線(電極線1)における最表層からの半径方向の深度に応じた組成変化の一例を示したものであって、オージェ電子分光法による観察結果を示したものである。なお、図5は、図4の場合と同様、直径が50μmの電極線についての観察結果である。
図5に示すように、電極線1では、亜鉛を重量比で50%以上含有する亜鉛リッチ層14(図1参照)が、最表層から0.05μm以下の被覆厚みの層として薄く形成されている。そして、亜鉛リッチ層の内側であって最表層から1μm(10000オングストローム)程度の深度の領域には、銅を重量比で55%以上65%以下含有し亜鉛を重量比で30%以上40%以下含有する黄銅より成る黄銅層13が形成されている。また、黄銅層の内側であって最表層から1.6μm(16000オングストローム)程度の深度の領域には、銅を重量比で70%以上含有する銅リッチ層12が形成されている。銅リッチ層12の内側では、銅の重量比が減少して高炭素鋼の層(鋼線11)へと移行している。なお、図5に示すように、銅リッチ層12及び黄銅層13の電極線半径方向における被覆厚みは、いずれとも亜鉛リッチ層14の電極線半径方向における被覆厚みの10倍以上厚い層として形成されている。
また、図6は、直径が70μmの電極線1についての図5と同様のオージェ電子分光法による観察結果を示したものである。図6に示すように、直径が70μmの電極線1の場合でも、亜鉛リッチ層14が最表層から0.05μm以下の被覆厚みの層として形成されており、その内側に黄銅層13、銅リッチ層12、及び鋼線11の層が順番に形成されている。また、図5の場合と同様に、銅リッチ層12及び黄銅層13の電極線半径方向における被覆厚みは、いずれとも亜鉛リッチ層14の電極線半径方向における被覆厚みの10倍以上厚い層として形成されている。
上述した製造方法によって製造された電極線1の特性について評価した結果を下表3に示す。
表3では、直径が70μmの場合の電極線1についての評価結果を示しており、引張り強さ、真直性、放電加工性能について評価試験を行った。その結果、引張り強さについては、放電加工時に作用する張力に対して十分に抗し得る水準である2132N/mm2という高い強度を確保することができた。また、真直性についても、3.5mm/m(吊り下げ状態にして吊り下げ長さ1mあたりで水平方向の広がりが3.5mm以内)というワイヤ放電加工において要求されるのに十分な真直性を確保することができた。
また、放電加工性能については、最大加工速度を比較する試験を行った。なお、比較は、鋼線の外周に黄銅が被覆されたもの(例えば、鋼線に銅及び亜鉛メッキをした後、熱拡散により被覆層を黄銅化して伸線したもの)に対して行った。また、加工速度は、1辺の長さが3mmの角形状加工(周長さ12mmの加工)試験を行い、その1stcutのみについて行った。その結果、電極線1では、0.709mm/minという高い放電加工性能が得られ、黄銅被覆の電極線に対して1.43倍も高速で加工できることがわかった。
以上説明した放電加工用電極線1及びその製造方法によると、熱処理後のまだ十分に径が大きい状態の鋼線に対して銅メッキ工程S1と亜鉛メッキ工程S2とが行われてその後伸線工程(S4、S5)が行われるため、鋼線の径が小さい状態で被覆工程が行われることがない。このため、被覆工程で鋼線に付与される張力による引張り応力を小さくでき、断線してしまうことを抑制することができる。これにより、歩留まりの低下や断線トラブルによる生産能率の低下等の製造上の問題の発生を抑制することができる。
また、この製造方法によると、鋼線11の表面に、銅リッチ層12、黄銅層13、及び亜鉛リッチ層14の各層が形成された4層構造の放電加工用電極線1を製造することができる。従って、十分な引張り強さと放電加工性能とを備えてタングステン線及びモリブデン線に代替し得るとともに、製造上の問題の発生を抑制することができる断面直径が0.1mm以下の放電加工用電極線を製造することができる。なお、電極線1によると、表面に0.05μm以下の亜鉛リッチ層14を備えることで十分な放電加工性能を確保できるとともに、十分な鋼線径の大きさも確保できて引張り強さの低下を抑制できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、次のように変更して実施してもよい。
(1)真直処理工程は、300℃以上550℃以下の温度で5秒以上1分以下の時間の間保持するものでなくてもよい。
(2)銅被覆工程において形成される銅被覆層厚みは、鋼線半径の5%以上15%以下でなくてもよい。また、亜鉛被覆工程において形成される亜鉛被覆層厚みは、鋼線半径の2%以上8%以下でなくてもよい。
(3)銅被覆層及び亜鉛被覆層は、電気メッキにより形成されるものでなくてもよい。
本発明の実施形態に係る放電加工用電極線の軸方向と垂直な断面の模式図である。 本発明の実施形態に係る放電加工用電極線の製造方法における各工程の順番を示すフローチャートの一例である。 図2に示す製造方法における伸線工程の前後での電極線表面の走査電子顕微鏡による観察結果である。 図2に示す製造方法における真直処理工程が行われる前の状態の電極線(直径50μm)における最表層からの半径方向の深度に応じた組成変化の一例を示したオージェ電子分光法による観察結果である。 図2に示す製造方法における真直処理工程が終了した状態の電極線(直径50μm)における最表層からの半径方向の深度に応じた組成変化の一例を示したオージェ電子分光法による観察結果である。 図2に示す製造方法における真直処理工程が終了した状態の電極線(直径70μm)における最表層からの半径方向の深度に応じた組成変化の一例を示したオージェ電子分光法による観察結果である。
符号の説明
1 放電加工用電極線
11 鋼線
12 銅リッチ層
13 黄銅層
14 亜鉛リッチ層

Claims (10)

  1. ワイヤ放電加工において電極線として用いられる放電加工用電極線の製造方法であって、
    炭素を重量比で0.6%以上含有する高炭素鋼で形成されているとともに熱処理された鋼線に対して、当該鋼線の外周を銅で覆う銅被覆層を形成する銅被覆工程と、
    前記銅被覆層の外周を亜鉛で覆う亜鉛被覆層を形成する亜鉛被覆工程と、
    前記銅被覆工程及び前記亜鉛被覆工程の後、前記鋼線、前記銅被覆層、及び前記亜鉛被覆層の3層を有する多層線を少なくとも断面直径が0.1mm以下になるまで伸線を行う伸線工程と、
    前記伸線工程の後に温間で引っ張り力を付与する真直処理工程と、
    を備えていることを特徴とする放電加工用電極線の製造方法。
  2. 前記真直処理工程では、300℃以上550℃以下の温度において5秒以上1分以下の時間の間保持することを特徴とする請求項1に記載の放電加工用電極線の製造方法。
  3. 前記銅被覆工程では、鋼線半径方向における銅被覆層厚みが前記鋼線半径の5%以上15%以下となるように前記銅被覆層を形成することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の放電加工用電極線の製造方法。
  4. 前記亜鉛被覆工程では、鋼線半径方向における亜鉛被覆層厚みが前記鋼線半径の2%以上8%以下となるように前記亜鉛被覆層を形成することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の放電加工用電極線の製造方法。
  5. 前記銅被覆層は、電気メッキにより形成されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の放電加工用電極線の製造方法。
  6. 前記亜鉛被覆層は、電気メッキにより形成されることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の放電加工用電極線の製造方法
  7. ワイヤ放電加工において電極線として用いられる放電加工用電極線であって、
    炭素を重量比で0.6%以上含有する高炭素鋼で形成されるとともに熱処理されている鋼線に対して、前記鋼線の外周を銅で覆う銅被覆層を形成する銅被覆工程と、
    前記銅被覆層の外周を亜鉛で覆う亜鉛被覆層を形成する亜鉛被覆工程と、
    前記銅被覆工程及び前記亜鉛被覆工程の後、前記鋼線、前記銅被覆層、及び前記亜鉛被覆層の3層を有する多層線を少なくとも断面直径が0.1mm以下になるまで伸線を行う伸線工程と、
    前記伸線工程の後に温間で引っ張り力を付与する真直処理工程と、
    を備える放電加工用電極線の製造方法によって製造されていることを特徴とする放電加工用電極線。
  8. ワイヤ放電加工において電極線として用いられ、断面直径が0.1mm以下の放電加工用電極線であって、
    炭素を重量比で0.6%以上含有する高炭素鋼により形成されている鋼線と、
    前記鋼線の外周を被覆するよう形成されているとともに、銅を重量比で70%以上含有する銅リッチ層と、
    前記銅リッチ層の外周を被覆するとともに、銅を重量比で55%以上65%以下含有し亜鉛を重量比で30%以上40%以下含有する黄銅により形成されている黄銅層と、
    前記黄銅層の外周を被覆するよう形成されているとともに、亜鉛を重量比で50%以上含有する亜鉛リッチ層と、
    を備えていることを特徴とする放電加工用電極線。
  9. 前記亜鉛リッチ層は、電極線半径方向における被覆厚みが0.05μm以下であることを特徴とする請求項8に記載の放電加工用電極線。
  10. 前記黄銅層及び前記銅リッチ層の電極線半径方向における被覆厚みは、いずれとも前記亜鉛リッチ層の電極線半径方向における被覆厚みの10倍以上厚いことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の放電加工用電極線。
JP2003378020A 2003-11-07 2003-11-07 放電加工用電極線の製造方法及び放電加工用電極線 Pending JP2005138236A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003378020A JP2005138236A (ja) 2003-11-07 2003-11-07 放電加工用電極線の製造方法及び放電加工用電極線

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003378020A JP2005138236A (ja) 2003-11-07 2003-11-07 放電加工用電極線の製造方法及び放電加工用電極線

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005138236A true JP2005138236A (ja) 2005-06-02

Family

ID=34688543

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003378020A Pending JP2005138236A (ja) 2003-11-07 2003-11-07 放電加工用電極線の製造方法及び放電加工用電極線

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005138236A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006136952A (ja) * 2004-11-10 2006-06-01 Tokusen Kogyo Co Ltd 放電加工用電極線

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006136952A (ja) * 2004-11-10 2006-06-01 Tokusen Kogyo Co Ltd 放電加工用電極線

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6306523B1 (en) Method of manufacturing porous electrode wire for electric discharge machining and structure of the electrode wire
EP2517817B1 (en) Electrode wire for electro-discharge machining and method for manufacturing the same
JP6829213B2 (ja) 鱗状微細組織の電極線材料およびその製造方法と使用
CN102369077B (zh) 线放电加工用电极线及其制造方法
JP2006307277A (ja) 極細めっき線の製造方法
KR20190099195A (ko) 합금 코팅된 edm 와이어
EP2724805A1 (en) Electrode wire for electro-discharge machining and method for manufacturing the same
JP6288433B2 (ja) 銅コイル材、銅コイル材の製造方法、銅平角線の製造方法、及び被覆平角線の製造方法
WO2016068209A1 (ja) 放電加工用電極線及び放電加工用電極線製造方法
KR102451451B1 (ko) 와이어 방전 가공용 전극선
JP6655769B1 (ja) めっき線棒、当該めっき線棒の製造方法、並びに、当該めっき線棒を用いた、ケーブル、電線、コイル、ワイヤハーネス、ばね部材、エナメル線、及び、リード線
JP2005138236A (ja) 放電加工用電極線の製造方法及び放電加工用電極線
JP2010236035A (ja) 伸線加工性の良好なAlめっき鋼線およびその製造方法
JP6369545B2 (ja) 放電加工用電極線及びその製造方法
JP3087552B2 (ja) 放電加工用電極線
JP2001269820A (ja) ワイヤ放電加工用電極線の製造方法
JP2010129410A (ja) 電線導体の製造方法および電線導体
JP7260267B2 (ja) ワイヤ放電加工用電極線
KR102016538B1 (ko) 와이어 방전 가공용 전극선 및 그 제조 방법
JP2017189828A (ja) ワイヤ放電加工用電極線
JPH0797699A (ja) 細径複合金属めっき線の製造方法
JP2005349467A (ja) 極細めっき線の製造方法
JP2010236033A (ja) 伸線加工性に優れたAlめっき鋼線およびその製造方法
JPH04237532A (ja) 複合ワイヤの製造方法
JP2010192227A (ja) 導電性複合金属材料

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050823

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20070723

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070731

A521 Written amendment

Effective date: 20070928

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20071030