JP2005136110A - 太陽電池素子の製造装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】半田厚み不良を発生させることなく太陽電池素子の電極表面に均一に半田層を形成することができる太陽電池素子の製造装置を提供する。
【解決手段】表面に電極が形成された複数の太陽電池素子をウェハーキャリアに収容し、このウェハーキャリアを半田融液を保持した溶融半田槽に浸漬して前記電極の表面に半田層を形成する太陽電池素子の製造装置であって、前記半田融液を前記溶融半田槽の内部で強制的に対流させる対流手段と、一つ以上の孔を有する板状の整流板とを具備し、前記整流板は前記溶融半田槽に浸漬された前記ウェハーキャリアの下方に、この溶融半田槽の底部との間に間隙を有するように配設され、前記対流手段は前記間隙に向けて半田融液を対流させるように配置してなる。
【選択図】図1

Description

本発明は太陽電池素子の製造装置に関し、特に太陽電池素子を半田融液に浸漬してその電極の表面に半田層を形成する太陽電池素子の製造装置に関する。
太陽電池素子では長期信頼性を確保するとともに複数の太陽電池素子同士をインナーリードで接続するために、その電極の表面に半田層を形成するのが一般的である。
太陽電池素子の電極表面に半田層を形成する場合、太陽電池素子を半田融液に浸漬することによって電極の表面に半田層を形成する。この場合、電極表面の酸化物を除去して半田と電極の合金を形成しやすくしたり、空気との間に膜を形成することによって太陽電池素子を加熱したときに電極の表面が酸化されるのを防止したり、界面張力を減らして半田の濡れを促進したりするために、電極の表面にはフラックスを塗布する。そのフラックスを活性化させるために、約100℃で加熱した後に半田融液に浸漬する。
また、複数の太陽電池素子の電極に同時に半田層を形成するためには、複数の太陽電池素子をウェハーキャリアに収容し、このウェハーキャリアごと半田融液の中に浸漬する方法が一般的である(特許文献1参照)。
図8および図9は従来の太陽電池素子の電極表面に半田層を形成する際に使用するウェハーキャリアの構造を示す図である。図8は太陽電池素子を収容したウェハーキャリアを側面からみた図、図9は図8中のA−A’間の断面図を示す。図8および図9中の1は太陽電池素子、2はウェハーキャリアを示す。
図8および図9に示すように、ウェハーキャリア2の側壁部2aに設けた多数のスリットS部分に複数の太陽電池素子1を縦方向に挿着して、ウェハーキャリア2をアーム(不図示)で保持して半田融液の中に浸漬して引き上げることによって太陽電池素子1の電極表面(不図示)に半田層(不図示)を形成する。
特開2002−319616号公報参照
特許文献1に記載された方法によれば、複数枚の太陽電池素子1を一度に半田融液に浸漬させるため、半田融液の温度が低下し半田の粘度が高くなる。このような状態で太陽電池素子1を半田融液から引き出すと、電極上に形成された半田上にボール状のもの(半田玉)が生ずる。この半田玉は後工程での歩留まり低下を招くため、半田層形成後に半田ごてなどにより修正作業が必要となる。
また、半田融液の液温の違いにより太陽電池素子1の電極に形成される半田層に局部的に厚い部分が発生したり、半田が電極間でブリッジするという問題が発生し、後工程での割れや外観不良を引き起こす原因になるという問題があった。
このような半田玉を発生させないようにするには、下がった温度が回復するまで太陽電池素子1を半田融液に浸漬させたままにしておくことが必要であるが、半田の熱伝導率は小さいため浸漬させたままの放置では回復までに時間がかかり、太陽電池素子1の電極材料が半田の中に溶け込むいわゆる半田食われが発生し、電極強度の低下を招くという問題が発生する。
この問題を回避するため、太陽電池素子1を半田融液に浸漬する前に、フラックスを乾燥する温度を高くして太陽電池素子1とウェハーキャリア2を半田融液の温度以上に加熱しておくことが考えられる。この方法では、太陽電池素子1とウェハーキャリア2を半田融液に浸漬しても半田融液の温度が下がることはない。しかし、このようにするとフラックスの活性が失われて半田の濡れ性が低下し、半田が被着しないという問題を生じることがある。
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、半田厚み不良を発生させることなく太陽電池素子の電極表面に均一に半田層を形成することができる太陽電池素子の製造装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1にかかる太陽電池素子の製造装置は、表面に電極が形成された複数の太陽電池素子をウェハーキャリアに収容し、このウェハーキャリアを半田融液を保持した溶融半田槽に浸漬して前記電極の表面に半田層を形成する太陽電池素子の製造装置であって、前記半田融液を前記溶融半田槽の内部で強制的に対流させる対流手段と、一つ以上の孔を有する板状の整流板とを具備し、前記整流板は前記溶融半田槽に浸漬された前記ウェハーキャリアの下方に、この溶融半田槽の底部との間に間隙を有するように配設され、前記対流手段は前記間隙に向けて半田融液を対流させるように配置してなる。
このような構成にしたので、対流手段によって強制的に対流させられた半田融液が、整流板の孔を抜けるときに、より均一な対流となってウェハーキャリアの方向に向けて流れるので、ウェハーキャリアを浸漬することによって半田融液の温度が下がり温度分布にばらつきが出ていた太陽電池素子の電極近傍における半田融液の温度分布が均一となる。
本発明の請求項2にかかる太陽電池素子の製造装置は、請求項1に記載の太陽電池素子の製造装置において、前記整流板は、前記溶融半田槽を上下に二分割してなるようにしたので、対流手段によって強制的に対流された半田融液のうち、ウェハーキャリアに到達する分は全て、この整流板に設けられた孔を通過したものとなる。したがって、ウェハーキャリアに到達する半田融液の均一性がより一層向上する。
本発明の請求項3にかかる太陽電池素子の製造装置は、請求項1または2に記載の太陽電池素子の製造装置において、前記対流手段は、前記間隙の側方に配置されるとともに、前記整流板には複数の孔が形成され、前記対流手段によって対流させた前記半田融液の上流側から下流側に向かうに連れて、これらの孔による単位面積当たりの開口率を次第に減少させてなる。
対流手段によって強制的に対流させられた半田融液には圧力がかかっているので、整流板の孔から上部に抜ける。このとき半田融液は上方向に向かう速度成分と下流方向へ向かう速度成分の二つを有し、下流側に向かって斜め上方向に流れるので、下流側に向けて半田融液の対流が収束し、均一性が損なわれる傾向がある。ここで本発明の請求項3の構成によれば、整流板に設けられた孔の開口率が上流から下流にかけて減少しているので、開口率を全面で均一にした場合と比べると、整流板の上流側から流入する半田融液の量が多く、下流側から流入する半田融液の量が少なくなる。この結果、整流板の上方において下流側に向けて半田融液の対流が収束したとしても、整流板の下流側から流入する半田融液の量は少ないので、整流板の上方において、半田融液の対流の均一性が損なわれる影響を抑えることができる。
本発明の請求項4にかかる太陽電池素子の製造装置は、請求項3に記載の太陽電池素子の製造装置において、前記整流板は、前記対流手段によって対流させた前記半田融液の上流側から下流側に向かうにつれて、その下面が前記溶融半田槽の底面に近付くようにしてなる。この構成では、整流板は半田融液の対流方向に対して、斜めに配置されていることとなる。したがって、水平方向に対流するように導入された半田融液は、整流板の下面に当たり、その一部は孔を抜けて上方に導出され、下方から上方に向かう流れを作る。残りの半田融液はさらに下流方向に流れながら、再度、整流板に設けられた孔を抜けて上方に導出される。このように半田融液の上流側から下流側に向かうに連れて、整流板の下面が溶融半田槽の底面に近付き、このような繰り返しが整流板の下面において次々と発生し、半田融液は下方から上方へとより均一な対流となる。
また、半田融液は整流板に設けられた孔の壁面に衝突して向きを変えるので、下流方向へ向かう速度成分が少なくなる。その結果、孔を抜けた半田融液は、上方へ向かう速度成分が主体的となるので、下流側に向いた半田融液の対流の収束が少なくなり、整流板の上方における半田融液の対流の均一性が向上する。
さらに、半田融液の上流側から下流側に向かうに連れて、整流板の下面が溶融半田槽の底面に近付いているので、半田融液の圧力は高くなる。ここで、整流板に設けられた孔の開口率が上流から下流にかけて減少しているので、上流では圧力が低いが開口率が大きい、下流では開口率が低いが圧力が高い、という相補的な作用効果が得られ、整流板の上流から下流まで半田融液の抜けが均一となる。その結果、整流板の上方において、より均一な半田融液の対流が得られる。
本発明の請求項5にかかる太陽電池素子の製造装置は、請求項1から4のいずれかに記載の太陽電池素子の製造装置において、前記整流板は、その上面を略水平としてなるようにしたので、この整流板の上に、ウェハーキャリアを載置することが可能となる。
本発明の請求項6にかかる太陽電池素子の製造装置は、請求項1から5のいずれかに記載の太陽電池素子の製造装置において、前記溶融半田槽の外側に設けられ、その内部にこの溶融半田槽を収めてなる外側溶融半田槽と、これらの溶融半田槽間で半田融液が移動可能な連通部と、を備え、前記対流手段は、前記外側溶融半田槽から前記溶融半田槽へ向けて半田融液を対流させるべく前記連通部に備えられるとともに、前記外側溶融半田槽には、半田溶融用のヒータが備えられてなるようにしたので、外側溶融半田槽において、ヒータによって高温となった半田融液を対流手段によって前記溶融半田槽に供給するので、ウェハーキャリアの浸漬によって、下がった半田融液の温度を速やかに回復することができる。
本発明の請求項1にかかる太陽電池素子の製造装置によれば、対流手段によって強制的に対流させられた半田融液が、整流板の孔を抜けるときに、より均一な対流となってウェハーキャリアの方向に向けて流れるので、ウェハーキャリアを浸漬することによって半田融液の温度が下がり、温度分布にばらつきが出ていた太陽電池素子の電極近傍における半田融液の温度分布が均一となる。その結果、太陽電池素子の電極に形成される半田の厚みが均一となる。
本発明の請求項2にかかる太陽電池素子の製造装置によれば、対流手段によって強制的に対流された半田融液のうち、ウェハーキャリアに到達する分は全て、この整流板に設けられた孔を通過したものとなる。したがって、ウェハーキャリアに到達する半田融液の均一性がより一層向上する。その結果、太陽電池素子の電極に形成される半田の厚みがより均一となる。
本発明の請求項3にかかる太陽電池素子の製造装置によれば、半田融液の対流の均一性が損なわれる影響を抑え、半田融液はウェハーキャリア近傍において、より均一な流束を得ることができるので、半田融液の温度分布がより均一となり、電極の半田厚みの均一性がさらに向上する。
本発明の請求項4にかかる太陽電池素子の製造装置によれば、半田融液は下方から上方へとより均一な対流となるので、ウェハーキャリア近傍において、温度分布がより均一となり、電極の半田厚みの均一性がさらに向上する。
本発明の請求項5にかかる太陽電池素子の製造装置によれば、整流板の上に、ウェハーキャリアを載置することが可能となるので、安定して確実に本発明の効果を奏しつつ、太陽電池素子の電極に半田を形成することができる。また、ウェハーキャリア内部に収容した太陽電池素子1が割れるなどのダメージを受けることも少なくなる。
本発明の請求項6にかかる太陽電池素子の製造装置によれば、外側溶融半田槽において、ヒータによって高温となった半田融液を対流手段によって前記溶融半田槽に供給するので、ウェハーキャリアの浸漬によって、下がった半田融液の温度を速やかに回復することができ、太陽電池素子を半田融液に浸漬する時間を短くすることができる。これにより、太陽電池素子の電極材料が半田の中に溶け込んで電極の強度低下を招く半田食われの現象を抑えることができる。
このように本発明によれば、半田融液は、特に整流板の上方において、より均一な流束となり、対流の均一性が高まるので、半田の厚さのムラを防止できる。また、溶融半田槽内の半田融液の温度分布がより均一となるため、半田層形成の仕上がりが向上し、後の修正作業が不要となる。
さらに、半田融液の温度分布が均一となり、半田融液の場所による温度のムラを減少させて効率的にヒータによる加熱を利用できるので、太陽電池素子を半田融液に浸漬する時間を短くすることができる。これにより、太陽電池素子の電極材料が半田の中に溶け込んで電極の強度低下を招く半田食われの現象を抑えることができる。
さらに、半田融液の流れが悪くなりにくいため、半田玉が発生することがなく、後工程での歩留まり低下を招いたり、半田浸漬後に半田ごてなどにより修正作業が必要となったりすることがない。
以下、本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明にかかる太陽電池素子の製造装置の例を示す図であり、(a)は、本発明にかかる太陽電池素子の製造装置の構造を示す図、(b)は、(a)のX−X方向から見た断面図である。そして、1は太陽電池素子、2はウェハーキャリア、3は押さえバー、4はアーム、5は外側溶融半田槽、6は半田融液、7は内側の溶融半田槽、8は整流板、9は対流手段の一例である羽根車、10はヒータ、12は連通部を示す。
図1(a)に示すように、外側溶融半田槽5は、その内側に溶融半田槽7が設けられており、いずれの槽にも半田融液6が入っていて、内側の溶融半田槽7から外側溶融半田槽5へ、もしくは外側溶融半田槽5から内側の溶融半田槽7へ、連通部12を経由して、半田融液6が相互に移動可能となっている。そして、この連通部12には半田融液6を強制的に対流させるための対流手段である羽根車9が設けられている。この羽根車9を回転させることによって、外側溶融半田槽5内の半田融液6を内側の溶融半田槽7へと導入し、内側の溶融半田槽7の内部で半田融液6の対流を強制的に起こさせる。余剰な半田融液6は、内側の溶融半田槽7の上部からオーバーフローして、外側溶融半田槽5へと循環する仕組みとなっている。また、外側溶融半田槽5には半田を溶融するためのヒータが設けられており、このヒータに通電することで、半田を溶融した状態で保持することができる。
この太陽電池素子の製造装置は、内側の溶融半田槽7に、表面に電極が形成された複数の太陽電池素子が収容されたウェハーキャリア2を内側の溶融半田槽7内の半田融液6に対して、上方より浸漬することによって、これらの電極の表面に半田層を形成する。このウェハーキャリア2はアーム4で保持されるとともに、太陽電池素子1を半田融液6に浸漬したときに、密度差から浮力が生じ、太陽電池素子1がウェハーキャリア2から外れて欠けたりすることを防止するため、押さえバー3が設けられている。
次に本発明の太陽電池素子の製造装置における特徴部分について説明する。本発明の太陽電池素子の製造装置は、溶融半田槽7にウェハーキャリア2を浸漬したとき、その下方に整流板8が溶融半田槽7の底部との間に間隙11を有するように配設されている。そして、対流手段である羽根車9によって押し出された半田融液6の対流は、この間隙11に向けて押し出されるような構成となっている。この構成によれば、対流手段である羽根車9によって押し出された半田融液6は圧力を有しているため、整流板8の孔を抜けて、上方へと導出される。このときに、その対流がより均一な分布となってウェハーキャリア2の方向に向けて流れるので、ウェハーキャリア2を浸漬することによって半田融液6の温度が下がり、温度分布にばらつきが出ていた太陽電池素子1の電極近傍における半田融液6の温度分布が均一となる。その結果、太陽電池素子1の電極に形成される半田の厚みが均一となる。
この整流板8は、図1(a)に示すように、溶融半田槽7を上下に二分割してなるように配設することが望ましい。このようにすれば、分割された上下の領域において、半田融液6は整流板8に設けられた孔を通してのみ、相互に移動できるようになる。したがって、羽根車9によって強制的に対流された半田融液6のうち、ウェハーキャリア2に到達する分は全て、この整流板8に設けられた孔を通過したものとなる。したがって、ウェハーキャリア2に到達する半田融液6の均一性が向上するので、太陽電池素子1の電極に形成される半田の厚みがより均一となる。
このような整流板8は、図1(b)に示すように、例えばステンレスなどの金属板に多数の孔14を開けたパンチングメタル状の形状を有するものを使用することができる。また、この整流板8の厚さは0.5mm〜200mmの範囲とすることが望ましい。この範囲より小さいときには、整流板8が半田融液6の対流によって、変形したり破損したする恐れがあり、この範囲よりも大きいときには、整流板8が重くなって取り扱いが不便となったり、半田融液6が孔14を抜けにくくなったりするからである。この整流板8の厚みは5mm〜200mmの範囲とすればより望ましい。5mmを超える厚みとすることにより、整流板8を通過する際に半田融液6の速度成分として、上方向に向かう速度成分を主体的にすることが可能になる。
整流板8に設ける孔14の寸法は、直径1mm〜50mmの範囲とすることが望ましい。この範囲よりも小さいときには、半田融液6が孔14を抜けにくくなり、この範囲よりも大きいときには、半田融液6の流れを均一化する効果に乏しくなるからである。
また、図1(b)に示すように、整流板8に複数の孔14を形成し、対流手段によって対流させた半田融液6の上流側から下流側に向かうに連れて、これらの孔14による単位面積当たりの開口率を次第に減少させるようにすることが望ましい。その理由について、図2を用いて説明する。図2では簡単にするため、図1(a)において、内側の溶融半田槽7と対流手段である羽根車9の部分を抜き出している。図2(a)は整流板8aに設けた複数の孔による単位面積当たりの開口率を一定とした場合、図2(b)は整流板8bに設けた複数の孔による単位面積当たりの開口率を半田融液6の上流側から下流側に向かうに連れて、次第に減少させるようにした場合を示す。なお、参考のため図7に整流板を設けない本発明の範囲外の例を示す。
まず図2(a)の場合、羽根車9によって強制的に対流させられた半田融液6には圧力がかかっているので、整流板8aの孔から上部に抜ける。この上部に抜けた半田融液6は上方向に向かう速度成分と下流方向へ向かう速度成分の二つを有しており、対流f1、対流f2のように下流側に向かって斜め上方向に対流が生ずる。その結果、対流f3のように、溶融半田槽7の下流側に向けて半田融液6の対流が収束し、整流板8aの上方の領域において、均一性が損なわれる。そして、対流f4、対流f5のように半田融液6の表層部や溶融半田槽7の内壁に沿って逆方向に向かう対流が生ずる恐れがある。このように半田表層では対流手段(羽根車9)の方向に向いた対流f4となり、半田深層では、対流手段(羽根車9)から出て行く方向の対流f1、f2となった場合、ウェハーキャリア2にセットされた太陽電池素子1に対して、半田融液6から力が加わって、上部は羽根車9側に、下部は羽根車9と反対側に倒れようとする力が働く。そして、ウェハーキャリア2に近くなった電極部では半田融液6が滞留して、半田が厚く形成される恐れがある。この半田が厚い部分は後工程での歩留まり低下を招くため、半田後に半田ごてなどにより修正作業が必要となる。また、内側の溶融半田槽内が均一に対流しないため、内側の溶融半田槽内の温度にばらつきが生じ、半田玉などが生じると、半田層の形成仕上がりが悪くなり、半田ごてなどにより修正作業が必要となる場合がある。
これに対して、図2(b)に示す本発明の請求項3の構成によれば、整流板8bに設けられた孔の開口率が上流から下流にかけて減少しているので、開口率を全面で均一にした場合と比べると、整流板8bの上流側から流入する半田融液6の量を多く、下流側から流入する半田融液6の量を少なくすることができる。この結果、下流側ほど整流板8bに設けられた孔から上部に抜ける半田融液6の量が少なくなるので、トータルで見ると、半田融液6の対流はより均一な流束となって、上方へ向かうようになる。この結果、半田融液6はウェハーキャリア2の近傍において、より均一な流束を得ることができ、半田融液6の温度分布がより均一となり、図2(a)の時と比べて、ウェハーキャリア2内の太陽電池素子1にかかる力は小さくなるので、太陽電池素子1の電極の半田厚みの均一性が向上する。
なお、図2(a)の場合(整流板8aに設けた複数の孔による単位面積当たりの開口率が一定)は、図2(b)の場合(整流板8bに設けた複数の孔による単位面積当たりの開口率を半田融液6の上流側から下流側に向かうに連れて次第に減少させる)より、半田融液6の対流が不均一となっているが、図7に示した整流板8を設けない本発明の範囲外の場合と比較すると、明らかに半田融液6は整流板8の孔を通過することによって、均一性が向上する本発明の効果が得られている。
整流板8の開口率については、図1(b)に示すように孔の存在密度を変えるほか、図3(a)に示すように孔の径を変化させてもよく、必要とする開口率を得ることができる。また、存在密度および径の双方を同時に変えてもよく、所望の開口率の整流板8を極めて簡便に得ることができる。さらに、図3(b)に示すようにスリット形状の孔14aを設けてもよく、このスリットの幅を変えるだけで簡便に所望の開口率を有する整流板8を得ることができる。なお、このスリット形状の孔14aを設ける場合には、その長手方向が半田融液6の対流方向に対して、ほぼ垂直になるようにすることが望ましい。
なお、整流板8の開口率は、単位面積当たり10%から80%の範囲で変化させることが望ましい。この範囲より小さいと整流板8から上方へ抜ける半田融液6が少なくなりすぎて、対流が十分に均一とならない。また、この範囲よりも大きいと整流板8を通過する半田融液6が多すぎて、通過前の半田融液6の有していた下流方向に向かう速度成分を十分に減少させることができない恐れがある。より望ましい範囲としては、30%から60%である。
図4および図5に、本発明の太陽電池素子の製造装置にかかる整流板の別の実施形態について説明する。
図4は、整流板8の下面を、対流手段によって対流させた前記半田融液の上流側から下流側に向かうにつれて溶融半田槽の底面に近付けた場合を示す図である。この場合、整流板8は半田融液6の対流方向に対して、斜めに配置されている。したがって、水平方向に対流するように導入された半田融液6は、整流板8の下面に当たり、その一部は整流板8に設けられた孔14を抜けて上方に導出され、下方から上方に向かう流れを作る。残りの半田融液6はさらに下流方向に流れながら、再度、整流板8に設けられた孔14を抜けて上方に導出される。このように上流側から下流側に向かうに連れて、整流板8の下面が溶融半田槽7の底面に近付き、このような繰り返しが整流板8の下面において次々と発生し、整流板8の孔14を通過した半田融液6は、より均一な対流となって下方から上方へと向かうようになる。
また、このとき半田融液6は整流板8に設けられた孔14の壁面に衝突して向きを変えるので、下流方向へ向かう速度成分が少なくなる。その結果、孔14を抜けた半田融液6は、上方へ向かう速度成分が主体的となるので、下流側に向いた半田融液6の対流の収束が少なくなり、半田融液6の対流の均一性が向上する。
さらに、上流側から下流側に向かうに連れて、整流板8の下面が溶融半田槽7の底面に近付いているので、半田融液6は圧縮を受けその圧力は高くなる。ここで、整流板8に設けられた孔14の開口率が上流から下流にかけて減少しているので、上流では圧力が低いが開口率が大きい、下流では開口率が低いが圧力が高い、という相補的な作用効果が得られる。この結果、整流板8の孔14に対し、上流部から下流部まで半田融液6の抜けが均一となる。その結果、半田融液6の温度分布がより均一となり、電極の半田厚みの均一性が向上する。なお、整流板8に設ける孔14は、鉛直方向に向けて形成しておくことがより望ましい。
また図5は、整流板8の下面を、対流手段によって対流させた半田融液6の上流側から下流側に向かうにつれて溶融半田槽7の底面に近付けた本発明にかかる太陽電池素子の製造装置の他の例を示した図である。このように、整流板8の上面を略水平にしておくことにより、太陽電池素子1を収容したウェハーキャリア2をその上面に載置することが可能となる。このようにすれば、ウェハーキャリア2の位置が確定し、変位しないので、安定して確実に本発明の効果を奏しつつ、ウェハーキャリア2に収納した太陽電池素子1の電極に半田を形成することができる。またウェハーキャリア2が動かないので内部に収容した太陽電池素子1が割れるなどのダメージを受けることがない。
さらに、本発明の太陽電池素子の製造装置では、図1に示したように、外側溶融半田槽5に、半田を溶融するためのヒータ10を備えるようにすることが望ましい。このようにすれば、外側溶融半田槽5の半田融液6は、内側の溶融半田槽7よりも高温となり、この高温となった半田融液6を羽根車9によって、内側の溶融半田槽7に供給するので、ウェハーキャリア2を浸漬することによって下がった半田融液6の温度を速やかに回復することができる。したがって、太陽電池素子1を半田融液6に浸漬する時間を短くすることができ、太陽電池素子1の電極材料が半田融液6の中に溶け込んで電極の強度低下を招く半田食われの現象を抑えることができる。このヒータ10としては、半田融液6によるダメージを抑えるため、例えばテフロン(R)(デュポンの登録商標)などを被覆したヒーターを用いることが望ましい。また、外側溶融半田槽5の内壁の裏側、あるいは外側溶融半田槽5の外側に設けて、半田融液6を間接的に加熱するようにしてもよい。このように半田融液6に直接接触しない箇所にヒータを設ければ、ヒータに対するダメージが少なく、長寿命とすることができる。
なお、本発明の実施形態は上述の例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることはもちろんである。
例えば、上述の説明では、半田融液6を強制的に対流させる対流手段として、羽根車9によって説明したが、これに限るものではなく、羽根車9の代わりに、ポンプなどを用いて半田融液6を対流させても構わない。
さらに、整流板8として、金属板に孔を開けた場合によって説明したが、これに限るものではなく、例えば、ステンレスメッシュなどにメッキなどで目張りをして必要な開口率を有する整流板を得ることもできる。
また、図5において、整流板8の上面を略水平としたときに、ウェハーキャリア2を載置できる点について述べたが、このとき整流板8の上面にウェハーキャリア2と嵌合あるいは係合して固定するための機構を設けてもよい。このようにすれば、さらに確実にウェハーキャリア2を動かないように固定できるので、安定した状態で電極に半田を形成することができ、またウェハーキャリア2が動かないので内部に収容した太陽電池素子1が割れるなどのダメージを受けることがない。
さらに、上述の説明では、外側溶融半田槽5の内部に溶融半田槽7を設けた例によって説明したが、これに限るものではなく、前記溶融半田槽と、この溶融半田槽とは別に第2の溶融半田槽と、これらの溶融半田槽間で半田融液が移動可能な連通部とを備え、前記対流手段は、前記第2の溶融半田槽から前記溶融半田槽へ向けて半田融液を対流させるべく前記連通部に備えられるとともに、前記溶融半田槽から第2の溶融半田槽へと半田融液を循環させる循環手段が備えられてなるようにしても構わない。具体的には、図6に示すように、溶融半田槽17とは別に第2の溶融半田槽15と、これらの溶融半田槽間で半田融液6が移動可能な連通部22とを備え、対流手段の羽根車9は、第2の溶融半田槽15から溶融半田槽17へ向けて半田融液6を対流させるために、連通部22に取り付けられ、溶融半田槽17から第2の溶融半田槽15へと半田融液6を循環させて戻してやる循環手段13が設けられている。このように、2つの溶融半田槽を別々の槽によって構成してやれば、半田融液6の量が多くなり、ウェハーキャリア2を浸漬させても半田融液6の温度が下がりにくい。ただし、この場合、半田融液6の量が多いため、ヒータ20の容量は大きいものを選定してやることが望ましい。
また、例えばウェハーキャリアの形状はこれに限定されるものではないし、半田の種類はSn−Pbの共晶半田であってもいいし、Sn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−Zn系、Sn−Sb系、Sn−In系、Sn−Bi系などの鉛を含有しないいわゆる鉛フリー半田を使用しても同様の効果を得ることができる。特に、高い融点を有するBi系などの鉛フリー半田は、ウェハーキャリアを浸漬するなどして半田融液の温度が下がると悪影響を被りやすく、本発明の太陽電池素子の製造装置を用いれば、このような悪影響を回避することができるので、好ましい。
(a)は、本発明にかかる太陽電池素子の製造装置の一例を示す図であり、(b)は、(a)のX−X方向から見た断面図である。 (a)、(b)は、本発明の太陽電池素子の製造装置にかかる整流板の作用を示す図である。 (a)、(b)は、本発明の太陽電池素子の製造装置にかかる整流板の一実施例であり、図1(a)のX−X方向から見た断面図である。 本発明の太陽電池素子の製造装置の一例を示す図である。 本発明の太陽電池素子の製造装置の一例を示す図である。 本発明の太陽電池素子の製造装置の一例を示す図である。 本発明の範囲外の太陽電池素子の製造装置の例を示す図である。 太陽電池素子の電極表面に半田層を形成する際に使用するウェハーキャリアの構造を示す図であり、太陽電池素子を収容したときの側面図である。 図8中のA−A’間の断面図である。
符号の説明
1:太陽電池素子
2:ウェハーキャリア
2a:側壁部
3:押さえバー
4:アーム
4:半田融液
5:外側溶融半田槽
6:半田融液
7:(内側の)溶融半田槽
8、8a、8b:整流板
9:羽根車
10:ヒータ
11:間隙
12:連通部
13:循環手段
14:孔
15:第2の溶融半田槽
17:溶融半田槽
20:ヒータ
22:連通部
f1〜f5:対流
S:スリット

Claims (6)

  1. 表面に電極が形成された複数の太陽電池素子をウェハーキャリアに収容し、このウェハーキャリアを半田融液を保持した溶融半田槽に浸漬して前記電極の表面に半田層を形成する太陽電池素子の製造装置であって、前記半田融液を前記溶融半田槽の内部で強制的に対流させる対流手段と、一つ以上の孔を有する板状の整流板とを具備し、前記整流板は前記溶融半田槽に浸漬された前記ウェハーキャリアの下方に、この溶融半田槽の底部との間に間隙を有するように配設され、前記対流手段は前記間隙に向けて半田融液を対流させるように配置してなる太陽電池素子の製造装置。
  2. 前記整流板は、前記溶融半田槽を上下に二分割してなる請求項1に記載の太陽電池素子の製造装置。
  3. 前記対流手段は、前記間隙の側方に配置されるとともに、前記整流板には複数の孔が形成され、前記対流手段によって対流させた前記半田融液の上流側から下流側に向かうに連れて、これらの孔による単位面積当たりの開口率を次第に減少させてなる請求項1または2に記載の太陽電池素子の製造装置。
  4. 前記整流板は、前記対流手段によって対流させた前記半田融液の上流側から下流側に向かうにつれて、その下面が前記溶融半田槽の底面に近付くようにしてなる請求項3に記載の太陽電池素子の製造装置。
  5. 前記整流板は、その上面を略水平としてなる請求項1から4のいずれかに記載の太陽電池素子の製造装置。
  6. 前記溶融半田槽の外側に設けられ、その内部にこの溶融半田槽を収めてなる外側溶融半田槽と、これらの溶融半田槽間で半田融液が移動可能な連通部と、を備え、前記対流手段は、前記外側溶融半田槽から前記溶融半田槽へ向けて半田融液を対流させるべく前記連通部に備えられるとともに、前記外側溶融半田槽には、半田溶融用のヒータが備えられてなる請求項1から5のいずれかに記載の太陽電池素子の製造装置。
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