JP2005135869A - 積層焼結体、セラミックヒータ、ガスセンサ素子、積層焼結体の製造方法およびガスセンサ素子の製造方法。 - Google Patents

積層焼結体、セラミックヒータ、ガスセンサ素子、積層焼結体の製造方法およびガスセンサ素子の製造方法。 Download PDF

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【課題】導体パターンの側端近傍における積層不良を低減することができる積層焼結体、セラミックヒータ、ガスセンサ素子、積層焼結体の製造方法およびガスセンサ素子の製造方法を提供することである。
【解決手段】発熱体22およびリード部23がセラミック層24a,24b間に配置され、焼成により一体化され、発熱体22およびリード部23が、これらを挟持する両方のセラミック層24a,24bに埋め込まれているセラミックヒータ21である。また、このセラミックヒータ21を備えたガスセンサ素子、およびこれらの製造方法である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、積層焼結体、セラミックヒータ、ガスセンサ素子、積層焼結体の製造方法およびガスセンサ素子の製造方法に関し、詳しくは自動車の排ガス中の酸素濃度を検出するための酸素センサ素子に代表される板状のガスセンサ素子に好適な積層焼結体、積層焼結体の製造方法、セラミックヒータ、このセラミックヒータを備えたガスセンサ素子およびガスセンサ素子の製造方法に関する。
近年、環境問題がクローズアップされ、各業界にて地球環境を最優先とする取り組みがなされている。とりわけ、自動車業界においては、アメリカのカルフォルニア州の排ガス規制に代表されるように、排気ガス中のCO2、CO、HC、NOx量を年々低減していくことが世の中の流れになってきている。その中で、更なる排ガス中の上記ガスを低減するためには、如何に効率よく燃料を燃焼させるかが重要であり、そのためにも排ガス中の残存酸素量を瞬時に測定し、その情報を燃焼系に速くフィードバックすることができる酸素センサの要望が高まりつつある。
酸素センサはこれまで、排気ガスの熱を利用して、一端が封止された円筒状のセンサを昇温し、センサ機能を発現させてきた。しかし、センサ機能が発現するまでの間、排ガスは垂れ流しの状態にあり、昨今の厳しい排ガス規制には対応しきれなくなってきた。そこで、円筒状のセンサを積極的にヒータで加熱する酸素センサが開発された。このような酸素センサを用いることで、センサ機能を速く発現できるようになり、よりレスポンス良く情報をフィードバックできるようになった。
ところが、円筒状のセンサでは、どうしてもサイズが大きくなり、しかもヒータとセンサとの間隔が大きくなるために、センサ機能の発現速度には限界があった。そこで、最近では、センサ部を板状にして小さくし、更にセンサ部とヒータとを一体成形することで昇温スピードを高め、より速くセンサ機能を発現できるようにした板状の酸素センサ素子を備えた酸素センサが開発されつつある(例えば、特許文献1参照)。
上記の板状酸素センサ素子は、セラミックヒータと、ガス濃度を検知する機能を有するセンサ部が形成されたセラミック層が積層された構造であり、これらが焼成により一体化されている。図8は、この酸素センサ素子におけるセラミックヒータを示す断面図である。このセラミックヒータ51は、発熱体52およびリード部(図示せず)からなるヒータパターンがセラミック層54a,54b間に配置され、焼成により一体化されたものである。
しかしながら、この酸素センサ素子の製造において、焼成によりセラミック層となる各グリーンシートの積層密着条件、脱脂焼成条件等の条件設定は容易ではなく、焼成により発熱体52の側端55の近傍やリード部の側端の近傍を起点としてセラミック層54a,54bにクラックが発生したり、焼成により前記側端の近傍に空隙が生じる等の積層不良が生じることがあった。このような積層不良が生じると製造歩留まりが低下し、コストアップにつながるという問題がある。
特開2000−146901号公報
本発明の課題は、導体パターンの側端近傍における積層不良を低減することができる積層焼結体、セラミックヒータ、ガスセンサ素子、積層焼結体の製造方法およびガスセンサ素子の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、導体パターンの側端近傍における積層不良が以下のような原因で発生するという知見を得た。すなわち、導体パターンがセラミック層間に配置され一体化された従来の積層焼結体は、通常、導体パターンが形成されたグリーンシート上に他のグリーンシートを積層し焼成して作製される。このように導体パターンが形成されたグリーンシート上に他のグリーンシートを積層すると、積層した上側のグリーンシートが導体パターンの形状に沿って変形し該グリーンシートに凹部が形成され、この凹部に導体パターンが埋め込まれる。
すなわち、従来の積層焼結体では、導体パターンを挟持する2枚のグリーンシートのうち、主として、後で積層する上側のグリーンシートのみが変形し該グリーンシートに凹部が形成される。したがって、上側のグリーンシートは、下側グリーンシートと導体パターン上端との間の大きな段差(導体パターンの厚み分の段差)に追随するように変形する必要があるため、焼成後には上側のセラミック層、特に該セラミック層における導体パターンの側端近傍に残留応力が集中してこの部分にクラックが発生したり、上側のグリーンシートが前記段差に十分に追随できずに導体パターンの側端近傍に空隙が生じる。
そして、本発明者らは、上記知見に基づき、さらに研究を重ねた結果、導体パターンを一方のグリーンシート(上側のグリーンシート)のみではなく、他方のグリーンシートにも埋め込むことにより、導体パターンの厚み分の段差に追随するために必要なグリーンシート1枚当たりの変形度合いを小さくことができるため、導体パターンの側端近傍において生じる残留応力を一方のセラミック層に集中させずに双方のセラミック層に分散させることができるので、導体パターン側端近傍のセラミック層にクラックが発生するのを抑制することができるとともに、一枚当たりのグリーンシートに埋め込まれる導体パターンの厚みが小さくなるので、導体パターンの側端近傍に空隙が生じるのを抑制することができるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記課題を解決するための本発明の積層焼結体、セラミックヒータ、ガスセンサ素子、積層焼結体の製造方法およびガスセンサ素子の製造方法は、以下の構成からなる。
(1) 導体パターンがセラミック層間に配置され、焼成により一体化された積層焼結体であって、前記導体パターンが、該導体パターンを挟持する両方のセラミック層に埋め込まれていることを特徴とする積層焼結体。
(2) 前記導体パターンが紡錘形の断面形状を有している(1)記載の積層焼結体。
(3) 前記紡錘形断面の両端を結ぶ直線と、前記紡錘形断面の一端から該断面の外周を構成する一方の曲線に引いた接線とのなす角度をθ1とし、前記直線と、前記一端から他方の曲線に引いた接線とのなす角度をθ2としたときに、θ1とθ2の和が45°以下である(2)記載の積層焼結体。
(4) 前記θ1とθ2の和が10°〜40°である(3)記載の積層焼結体。
(5) 前記紡錘形断面の両端を結ぶ直線から前記紡錘形断面の外周を構成する一方の曲線までの最大垂直距離をL1とし、前記直線から他方の曲線までの最大垂直距離をL2としたときに、{L1/(L1+L2)}が0.1〜0.9である(2)〜(4)のいずれかに記載の積層焼結体。
(6) 前記(1)〜(5)のいずれかに記載の積層焼結体における前記セラミック層がセラミック絶縁層であり、前記導体パターンがヒータパターンであるセラミックヒータ。
(7) 前記(6)記載のセラミックヒータを備えたことを特徴とするガスセンサ素子。
(8) 導体パターンをグリーンシート上に形成する工程と、このグリーンシートの導体パターン形成面を加圧して前記導体パターンの一部を前記グリーンシートに埋め込む工程と、前記導体パターン形成面に他のグリーンシートを積層する工程と、得られたグリーンシートの積層体を焼成する工程とを備えたことを特徴とする積層焼結体の製造方法。
(9) ヒータパターンをグリーンシート上に形成する工程と、このグリーンシートのヒータパターン形成面を加圧して前記ヒータパターンの一部を前記グリーンシートに埋め込む工程と、前記ヒータパターンを形成したグリーンシート上に、ガス濃度を検知する機能を有するセンサ部が形成されたグリーンシートを積層する工程と、得られたグリーンシートの積層体を焼成する工程とを備えたことを特徴とするガスセンサ素子の製造方法。
前記(1)記載の積層焼結体によれば、導体パターンが両方のセラミック層に埋め込まれているので、上記したように積層不良が発生するのを抑制し、歩留まりを向上させ、コストダウンを図ることができる。
前記(2)記載のように、積層焼結体における導体パターンは紡錘形の断面形状を有しているのが好ましい。このように導体パターンの断面が紡錘形であるときには、導体パターンの厚みが緩やかに変化するので、導体パターンの厚み分の段差に対してグリーンシートがより追随しやすくなり、クラックの発生や空隙の発生を抑制する効果をより高めることができる。
この場合、前記(3),(4)記載のように、角度θ1とθ2の和が上記範囲にあるのが好ましい。θ1とθ2の和が45°を超えると、導体パターンの厚み分の段差が大きくなるため、導体パターンの側端近傍に積層不良が発生しやすくなるおそれがある。
また、前記(5)記載のように、前記最大垂直距離L1,L2が上記の関係にあるのが好ましい。{L1/(L1+L2)}が上記範囲内にあることにより、双方のセラミック層における残留応力の不均衡をより低減することができるので、積層不良の抑制効果をさらに高めることができる。
上記のような積層焼結体は、前記(6),(7)記載のように、特にセラミックヒータおよびこのセラミックヒータを備えたガスセンサ素子に好適である。これにより、積層不良が低減され、コストダウンが図られたセラミックヒータおよびガスセンサ素子を得ることができる。
前記(8),(9)記載の製造方法によれば、グリーンシートにおける導体パターン(ヒータパターン)を形成した面を加圧して導体パターンの一部を前記グリーンシートに埋め込む工程を備えているため、導体パターンを双方のグリーンシートに埋め込むことができるので、積層不良が低減され、コストダウンが図られたセラミックヒータおよびガスセンサ素子を得ることができる。
以下、本発明の積層焼結体、セラミックヒータ、ガスセンサ素子、積層焼結体の製造方法およびガスセンサ素子の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
<セラミックヒータ>
図1(a),(b)は本発明の一実施形態にかかるセラミックヒータを示す断面図であり、これらのうち図1(a)はこのセラミックヒータの発熱体を含む断面を示す断面図であり、図1(b)はリード部を含む断面を示す断面図である。図2は、このセラミックヒータの構造を説明するための分解斜視図である。
図1および図2に示すように、本実施形態のセラミックヒータ21は、発熱体22、この発熱体22に電流を供給するために発熱体22に接続されたリード部23およびこのリード部23の端部に接続された電極パッド34からなるヒータパターンがセラミック絶縁層24a,24b間に配置され、焼成により一体化された積層焼結体である。なお、絶縁層外部へ通電するためのスルーホールおよび電極パッドは省略してある。
本発明では、図1(a),(b)に示すように発熱体22およびリード部23が、これらを挟持する両方のセラミック絶縁層24a,24bに埋め込まれていることが重要である。発熱体22およびリード部23は紡錘形の断面形状を有している。ここで、紡錘形断面とは、図1(a),(b)に示すように2つの略円弧状の曲線22a,22b(または23a,23b)をそれぞれの両端で結合した、両側に凸の形状のことをいう。
図3は、発熱体22およびリード部23の断面形状を説明するための説明図である。図3に示すように、発熱体22およびリード部23における上記紡錘形断面の両端E,E’を結ぶ直線Aと、紡錘形断面の一端Eから該断面の外周を構成する一方の曲線22a(または23a)に引いた接線T1とのなす角度をθ1とし、直線Aと、一端Eから他方の曲線22b(または23b)に引いた接線T2とのなす角度をθ2としたときに、θ1とθ2の和は45°以下、好ましくは10°〜40°であるのがよい。
θ1とθ2の和が45°を超えると、発熱体22およびリード部23の側端Eの近傍に積層不良が発生しやすくなるおそれがある。なお、曲線の他端E’における各接線と直線Aとの角度についても、上記θ1,θ2の場合と同様の範囲内であるのがよい。
また、直線Aから一方の曲線22a(または23a)までの最大垂直距離をL1とし、直線Aから他方の曲線22b(または23b)までの最大垂直距離をL2としたときに、{L1/(L1+L2)}は0.01〜0.99、好ましくは0.1〜0.9、より好ましくは0.3〜0.9であるのがよい。これにより、双方のセラミック絶縁層24a,24bにおける残留応力の不均衡をより低減することができるので、積層不良の抑制効果をさらに高めることができる。
{L1/(L1+L2)}が0.99を超えると、発熱体22およびリード部23の側端E,E’近傍に積層不良が発生しやすくなるおそれがある。一方、{L1/(L1+L2)}が0.01未満では、発熱体22およびリード部23を下側のセラミック絶縁層24bに埋め込む工程に長時間を要したり、埋め込む際の加圧力を大きくしなければならないおそれがある。また、埋め込み工程の時間を長くしたり、埋め込む際の加圧力を大きくすると、グリーンシート(焼成によりセラミック絶縁層24bとなる部分を含むグリーンシート)およびヒータパターンが大きく変形して(伸びて)、所望の寸法精度が得られないおそれがある。
セラミック絶縁層24a,24bの材料としては、絶縁性を有したセラミックスであれば特に限定されず、例えばアルミナ、フォルステライト等を使用することができる。なお、セラミック絶縁層24a,24bは、ジルコニアのような固体電解質のシートに印刷等により薄く形成されていてもかまわない。発熱体22およびリード部23の材料としては、公知の導電性金属材料を用いることができ、例えば白金、タングステンあるいは白金とロジウム、パラジウム、ルテチウムおよび金からなる群より選ばれる1種との合金などが使用可能である。
セラミックヒータ21は、以下のようにして製造することができる。まず、セラミック絶縁層用のグリーンシート24a,24bを、例えばドクターブレード法を用いたテープ成形等の公知の成形方法によって作製する。ついで、発熱体用、リード部用および電極パッド用の印刷ペーストを作製する。
次に、グリーンシート24bにスクリーン印刷等により上記印刷ペーストを塗布し、乾燥して発熱体パターン等を形成する。ついで、発熱体パターン等を形成したグリーンシート24bの表面を平板金型等で加圧することにより、発熱体およびリード部からなるヒータパターンの一部をグリーンシート24bに埋め込む。このとき、発熱体およびリード部の断面が上記した条件を満足するように、平板金型による加圧力、加圧時間、加圧温度等を調節する。その後、セラミック絶縁層用のグリーンシート24aを上記パターン上に熱圧着あるいは密着液を使用して加圧積層し、グリーン体(グリーンシートの積層体)を得る。
次に、上記グリーン体を必要に応じて所定の寸法にカットする。ついで、このグリーン体を焼成することによりセラミックヒータ21を得ることができる。焼成温度は、セラミック材料及びヒータ材料等との関係に応じて適宜選択することができる。なお、上記のようにセラミック絶縁層用のグリーンシート24a,24bを用いずに、絶縁性材料からなる絶縁ペーストをジルコニアのような固体電解質のグリーンシートに塗布し乾燥して、絶縁ペーストにより形成された絶縁層に発熱体22等のヒータパターンを埋め込むようにしてもよい。
<酸素センサ素子>
図4(a)は、本発明の一実施形態にかかる板状酸素センサ素子の長手方向に垂直な断面を示す断面図であり、図4(b)はこの酸素センサ素子の長手方向に平行な断面を示す断面図である。図4(a),(b)に示すように、本実施形態の酸素センサ素子は、酸素濃度を検知する機能を有するセンサ部11と、このセンサ部11を加熱するための前記セラミックヒータ21と、セラミック層15,16,25とを備えており、これらが焼成により一体化されている。
センサ部11は、酸素イオン導電性を有する固体電解質層12と、この固体電解質層12の上面に設けられた検知電極13と、固体電解質層12の下面に設けられた基準電極14とを備えている。これらの検知電極13および基準電極14にはリード部18,19がそれぞれ接続され、リード部18の端部には電極パッド31(後述する図5参照)が接続され、リード部19の端部には電極パッド32が接続されている。そして、この電極パッド32は、スルーホール37を介して固体電解質層12の上面に設けられた電極パッド33に電気的に接続されている。排気ガスによる検知電極13の被毒を防止する観点から、検知電極13表面に電極保護層として図示しないセラミック多孔質層を設けてもよい。セラミックヒータ21における電極パッド34は、スルーホール36を介してセラミック層25の下面に設けられた電極パッド35に電気的に接続されている。
セラミックヒータ21とセンサ部11を構成する固体電解質層12とは、コ字形状のセラミック層15およびセラミック層16を介して接合されている。これにより、この酸素センサ素子には、一端が封止された空洞部(大気導入孔)17が形成されている。セラミックヒータ21の下面にはセラミック層25が積層されている。
検知電極13,基準電極14、リード部18,19,23および電極パッド31〜35を構成する電極材料としては、発熱体22およびリード部23と同様の材料が使用可能である。特に、発熱体22、リード部23および各電極の材料としては、固体電解質層12およびセラミック層15,16,25と同時に焼成できる点で、白金、タングステン等が好適である。
固体電解質層12を構成する材料としては、ジルコニア、チタニア系セラミックス等の固体電解質を用いることができる。この固体電解質としては、安定化剤としてY23、Yb23、Sc23、Sm23、Nd23、Dy23などの希土類酸化物を酸化物換算で3〜15モル%含有する部分安定化ZrO2または安定化ZrO2、アルカリ土類元素を固溶させたZrO2などを用いてもよい。その他のセラミック層15,16,25の材料としては、特に限定されるものではなく、固体電解質層12と同じ固体電解質を用いてもよく、アルミナ含有材料等の種々のセラミック材料を用いることもできる。
本実施形態の酸素センサ素子を備えた酸素センサでは、発熱体22に通電して固体電解質層12を400〜1000℃程度に加熱した状態で、空洞部17に基準大気(酸素)が導入され、検知電極13が排ガス等の測定雰囲気中に配置される。そして、検知電極13と基準電極14との間で発生する起電力を測定して、排気ガス中の酸素濃度を測定する。
以下、本発明のセラミックヒータ21を備えた酸素センサ素子を製造する方法の一例について、図5の分解斜視図をもとに説明する。なお、図5では電極接続用のスルーホール36,37は省略してある。
まず、グリーンシート12a,12b,15,16,25a,25b,25cを、例えばドクターブレード法を用いたテープ成形等の公知の成形方法によって作製する。ついで、導電性金属材料と必要に応じて共材を混合して発熱体用の印刷ペーストを作製する。共材は発熱体とセラミック絶縁層との熱膨張係数の差を小さくするためのものである。共材としては、例えば種々のセラミックス等を用いることができる。混合方法は、特に限定されるものではなく、例えば3本ロール等のロール混合、ミルを用いたミル混合等を用いることができる。同様に、検知電極用の印刷ペースト、基準電極用の印刷ペースト、セラミック絶縁層用の印刷ペーストおよび電極パッド用の印刷ペーストを、ロール混合等を用いて作製する。
ついで、グリーンシート12a,12bにスクリーン印刷等により上記印刷ペーストを塗布し、検知電極13および基準電極14の電極パターンを形成する。これらの電極パターンは、1枚のグリーンシートの両面に印刷してもよい。
次に、グリーンシート25aに印刷等によりセラミック絶縁層用の印刷ペースト24bを塗布、乾燥し、ついで印刷ペースト24bにスクリーン印刷等により発熱体用の印刷ペースト22、リード部用の印刷ペースト23および電極パッド用の印刷ペースト34を塗布し、乾燥して各パターンを形成する。
ついで、図6(a)に示すように、発熱体、リード部および電極パッドからなるヒータパターンを形成した印刷ペースト24bの表面を平板金型41等で加圧することにより、ヒータパターンの一部をセラミック絶縁層用の印刷ペースト24bで形成したセラミック絶縁層に埋め込む(図6(b))。このとき、発熱体およびリード部の断面が上記した条件を満足するように、平板金型41による加圧力、加圧時間、加圧温度等を調節する。その後、セラミック絶縁層用の印刷ペースト24aを上記パターン上に塗布し、乾燥する。
次に、グリーンシート25cに印刷等により電極パッド用の印刷ペースト35を塗布し、ヒータの取り出し電極パッド用のパターンを形成する。ついで、各種電極、セラミック絶縁層、ヒータパターン等が形成された各グリーンシート、基準大気と接するようにコ字形状に金型で打ち抜いたグリーンシート15、厚み調整用のグリーンシート16等を位置決めし、熱圧着あるいは密着液を使用して加圧積層し、グリーン体(グリーンシートの積層体)を得る。なお、酸素センサ素子の厚み調整のために、各種パターンが印刷されていない他のグリーンシートを上記グリーンシート間にさらに介在させても何ら問題なく、図5に限定されるものではない。また、上記のようにセラミック絶縁層用の印刷ペースト24a,24bを用いずに、絶縁性材料からなるグリーンシートを用いて、これらのグリーンシートに発熱体22等のヒータパターンを埋め込むようにしてもよい。
次に、上記グリーン体を必要に応じて所定の寸法にカットする。発熱体22と該発熱体22を被覆するセラミック絶縁層24a,24bとで構成された発熱部の外形は、長さが8〜15mm、好ましくは9〜13mmであるのがよく、幅が2〜3.5mm、好ましくは2.5〜3.3mmであるのがよく、厚みが1〜2mm、好ましくは1.2〜1.8mmであるのがよい。これにより、セラミックヒータ21の発熱部の体積を小さくして酸素センサ素子の昇温速度を高めることができる。
ついで、各種電極、絶縁層、ヒータパターン等を有するグリーン体を同時焼成する。焼成温度は、セラミック材料及び電極材料等との関係に応じて適宜選択することができる。同時焼成によって、焼成工程を一回にすることができ、コストダウンを図ることができる。
なお、本発明の目的を逸脱しない範囲において、セラミックヒータおよび酸素センサ素子の構成は上記実施形態のみに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、本発明を酸素センサ素子に適用した場合について説明したが、本発明は、例えばNOxセンサ、CO2センサ等の類似した構造のガスセンサ素子にも適用可能である。
また、上記実施形態では、積層焼結体がセラミックヒータの場合を例に挙げて説明したが、電極、リード部等の導体パターンがセラミック層間に配置された積層焼結体であれば、特に限定されることなく本発明を適用可能である。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<酸素センサ素子の作製>
まず、平均粒径0.8μmのイットリアを5モル%添加した部分安定化ジルコニア粉末に、ブチラール系バインダー、可塑剤、溶剤およびメディアを混合し、48時間撹拌してスラリーを得た。その後、ドクターブレード成形にて上記スラリーを成形し、乾燥させて、厚さ180μmのセンサ用グリーンシートを作製した。
また、平均粒径0.5μmのアルミナ粉末に、ブチラール系バインダー、可塑剤、溶剤およびメディアを混合し、48時間撹拌してスラリーを得た。その後、ドクターブレード成形にて上記スラリーを成形し、乾燥させて、厚さ200μmの基体用グリーンシートを作製した。
次に、平均粒径1μmの白金粉末、平均粒径0.8μmのアルミナ粉末、ブチラール系バインダーおよびテルピネオールを調合し、3本ロールにて10回パス混合した後、テルピネオールにて希釈し、粘度調整してセラミックヒータに用いる発熱体用およびリード部用の印刷ペーストをそれぞれ得た。
また、平均粒径1μmの白金粉末、平均粒径0.8μmのジルコニア粉末、ブチラール系バインダーおよびテルピネオールを調合し、3本ロールにて10回パス混合した後、テルピネオールにて希釈し、粘度調整して検知電極用、基準電極用および電極パッド用の印刷ペーストをそれぞれ得た。
次に、得られた発熱体用印刷ペーストおよびリード部用印刷ペーストを用いて、前記基体用グリーンシートに発熱体、リード部および電極パッドからなるヒータパターンをスクリーン印刷にて形成し、その後、乾燥させて、ヒータパターンが形成されたグリーンシートを得た。
そして、このグリーンシートの発熱体のパターン等が形成された面を平板金型にて所定の圧力で加圧して、グリーンシートに凹部を形成し該凹部に発熱体パターンおよびリード部パターンを埋め込んだ。平板金型による加圧時間は、表1に示す値とした。ついで、このグリーンシート上に別の基体用グリーンシートを積層した。
基準大気と接する空洞部に位置するグリーンシートは、金型にて空洞部の幅が1.4mmとなるように基体用グリーンシートをコ字形状に打ち抜いて作製した。また、別の基体用グリーンシートの表裏面に、検知用電極用、基準電極用および電極パッド用の印刷ペーストをスクリーン印刷により印刷し、乾燥して検知電極、基準電極および電極パッドが形成されたグリーンシートを得た。
次に、上記で得られた各グリーンシートを位置決めして、熱圧着にて積層し、加圧プレスしてグリーン体(グリーンシートの積層体)を得た。その後、グリーン体を所定形状にカットして酸素センサ素子成形体を得、この成形体を1450℃にて2時間焼成して試料No.1〜16の酸素センサ素子を各50個ずつ作製した。
Figure 2005135869
<性能評価>
得られた各酸素センサ素子について、発熱体の断面を走査型電子顕微鏡にて写真撮影し、その断面形状における寸法L1,L2、角度θ1,θ2、ヒーター幅およびグリーンシートの伸び量を測定するとともに、積層不良状態を観察した。積層不良は、主に発熱体の紡錘形断面の側端近傍から伸びるクラックの有無で判断した。グリーンシートの伸び量とは、平板金型による加圧前後に測定した酸素センサ素子の幅方向における発熱体の幅W(図7参照)の加圧前後の差を表す。また、ヒータ幅とは、平板金型による加圧後に測定した発熱体の線幅t(図7参照)を表す。結果を表1に示す。
表1から、加圧時間を長くすることによりヒータパターンを下側のセラミック層(図2のセラミック層24b)のみに埋め込んだ試料No.1(L1=0、θ1=0)は、積層不良は発生していないものの、過度の加圧によってグリーンシートの伸び量が大きいことがわかる。また、加圧を行っていない試料No.13(L2=0、θ2=0)は、積層不良の発生率が高い。
一方、本発明の範囲内である試料No.2〜12,No.14〜16は、積層不良は認められず、グリーンシートの伸び量も小さい。特に、{L1/(L1+L2)}が0.3以上の試料No.6〜12,No.14〜16は、グリーンシートの伸びも見られなかった。なお、上記実施例では、絶縁性を有するアルミナのグリーンシートにヒータパターンを形成したが、ジルコニアのグリーンシートにアルミナの絶縁性ペーストを塗布し、この絶縁性ペーストにヒータパターンを形成した場合も、上記実施例と同様の効果があった。
(a),(b)は本発明の一実施形態にかかるセラミックヒータを示す断面図である。 本発明の一実施形態にかかるセラミックヒータの構造を説明するための分解斜視図である。 本発明の一実施形態にかかるセラミックヒータにおける発熱体およびリード部の断面形状を説明するための説明図である。 (a)は、本発明の一実施形態にかかる板状酸素センサ素子の長手方向に垂直な断面を示す断面図であり、(b)はこの酸素センサ素子の長手方向に平行な断面を示す断面図である。 本発明の一実施形態にかかる板状酸素センサ素子の製造方法を説明するための分解斜視図である。 (a)は、本発明の一実施形態にかかる板状酸素センサ素子の製造において、発熱体およびリード部をグリーンシートに埋め込む前の状態を示す概略断面図であり、(b)は発熱体およびリード部をグリーンシートに埋め込んだ後の状態を示す概略断面図である。 実施例で作製した酸素センサ素子におけるヒータパターンを示す概略図である。 従来のセラミックヒータを示す断面図である。
符号の説明
11 センサ部
12 固体電解質層
13 検知電極
14 基準電極
15,16,25 セラミック層
17 空洞部
18,19 リード部
21 セラミックヒータ
22 発熱体
22a,22b,23a,23b 曲線
23 リード部
24 セラミック絶縁層

Claims (9)

  1. 導体パターンがセラミック層間に配置され、焼成により一体化された積層焼結体であって、前記導体パターンが、該導体パターンを挟持する両方のセラミック層に埋め込まれていることを特徴とする積層焼結体。
  2. 前記導体パターンが紡錘形の断面形状を有している請求項1記載の積層焼結体。
  3. 前記紡錘形断面の両端を結ぶ直線と、前記紡錘形断面の一端から該断面の外周を構成する一方の曲線に引いた接線とのなす角度をθ1とし、前記直線と、前記一端から他方の曲線に引いた接線とのなす角度をθ2としたときに、θ1とθ2の和が45°以下である請求項2記載の積層焼結体。
  4. 前記θ1とθ2の和が10°〜40°である請求項3記載の積層焼結体。
  5. 前記紡錘形断面の両端を結ぶ直線から前記紡錘形断面の外周を構成する一方の曲線までの最大垂直距離をL1とし、前記直線から他方の曲線までの最大垂直距離をL2としたときに、{L1/(L1+L2)}が0.1〜0.9である請求項2〜4のいずれかに記載の積層焼結体。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の積層焼結体における前記セラミック層がセラミック絶縁層であり、前記導体パターンがヒータパターンであるセラミックヒータ。
  7. 請求項6記載のセラミックヒータを備えたことを特徴とするガスセンサ素子。
  8. 導体パターンをグリーンシート上に形成する工程と、このグリーンシートの導体パターン形成面を加圧して前記導体パターンの一部を前記グリーンシートに埋め込む工程と、前記導体パターン形成面に他のグリーンシートを積層する工程と、得られたグリーンシートの積層体を焼成する工程とを備えたことを特徴とする積層焼結体の製造方法。
  9. ヒータパターンをグリーンシート上に形成する工程と、このグリーンシートのヒータパターン形成面を加圧して前記ヒータパターンの一部を前記グリーンシートに埋め込む工程と、前記ヒータパターンを形成したグリーンシート上に、ガス濃度を検知する機能を有するセンサ部が形成されたグリーンシートを積層する工程と、得られたグリーンシートの積層体を焼成する工程とを備えたことを特徴とするガスセンサ素子の製造方法。
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