従来から、トイレや会議室などの室内における人の存在・不在に応じて照明負荷のような負荷を自動的にオンオフさせる人感スイッチが提供されている。この種の人感スイッチとしては、人体から放射される熱線を焦電型赤外線センサ(以下、「焦電素子」と呼ぶ)によって監視し、視野内における熱線量の変化の有無により人の存在・不在を検出するパッシブ型のものが広く用いられている。すなわち、焦電素子を用いたパッシブ型の人感センサは、赤外線を投光する必要がないから、回路構成が簡単であって小型かつ低価格で提供できる上に、単体での視野が比較的広く、複数個の焦電素子を並設して視野を拡げる場合も互いに干渉することがないという利点を有している。
もっとも、焦電素子は受光する熱線量の変化率(時間変化)に応じた電圧出力が得られる微分型のセンサであるから、焦電素子を単独で用いた場合には視野内への人の侵入または退出の時点でのみ電圧出力が得られ、しかも視野内への侵入か退出かは判別することができないものである。そこで、人体から放射された熱線が受光レンズや受光用ミラーのような光学要素を介して焦電素子に入射するように構成し、光学要素を用いることで焦電素子の視野内において感度むらが生じるように構成している。つまり、図10(a)のように、天井に設けた焦電素子10の視野内において床面上に他の領域よりも高感度になる長方形状の高感度領域DHを複数設け、高感度領域DHを幅方向の一直線上に配列したり、図10(b)のように、天井に設けた焦電素子10の視野内において床面上に他の領域よりも高感度になる正方形状の高感度領域DHを複数設け、高感度領域DHを4個ずつ組にして配置するとともに、各組を一直線上に配列したりすることによって、焦電素子10の視野内に感度むらを付与するのである。このような構成では、焦電素子10と床面上の高感度領域DHとを結ぶビーム状の領域が高感度になるから、高感度になるビーム状の領域を検知ビームBDと呼んでいる。
上述のように、焦電素子10の視野内に複数本の検知ビームBDを形成すれば視野内に感度むらが形成され、焦電素子10の視野内に存在する人が手を動かす程度に微動しただけで焦電素子10に入射する熱線量に時間変化が生じるから、焦電素子10の視野内に人が存在している期間には焦電素子10から断続的に電圧出力が得られることになる。そこで、焦電素子10を用いて人の存否を検出し、人の存否に応じて負荷16を自動的にオンオフさせる自動スイッチとして図11に示す構成が広く採用されている。図11に示す構成では、焦電素子10の出力を増幅器11により増幅した後に、比較器12により増幅器11の出力のうち基準電圧以下のノイズを除去するとともに波形整形することにより、焦電素子10から電圧出力が発生するタイミングで矩形波状の信号を発生させており、この信号をタイマ回路14のトリガとして用いている。タイマ回路14は、トリガが与えられると一定時間であるディレイ時間を時限し、ディレイ時間の時限中には負荷制御回路15を通して負荷16をオンに保つ。また、タイマ回路14はリトリガラブルであって、ディレイ時間の時限中に比較器12からトリガが与えられると、その時点からさらにディレイ時間を時限するように構成されている。したがって、焦電素子10により人が検知されることにより負荷16がオンになってディレイ時間の時限が開始されると、ディレイ時間の時限中に焦電素子10で人が検知されるたびに負荷16のオンを継続させる時間が延長されるのである。その結果、焦電素子10の視野を室内に設定しているとすれば、室内に人が存在し、ディレイ時間の満了前に人の微動が検出される状態が続く限りは、負荷16がオンに保たれるのである。また、人の退室などによってディレイ時間の満了までに人の検知がなければ、タイマ回路14の時限動作が満了して負荷16はオフになる。
いま、室内に人が存在するか否かを焦電素子10によって検知し、人が存在する間に照明器具のような負荷16をオンにする場合を想定する。図12(a)は室内における人の存否を表しており、室内に人が存在し焦電素子10の視野内において人が移動ないし微動すると焦電素子10から電圧出力が発生し、図12(b)のように、増幅器11の出力に変動が生じる。比較器12は、図12(c)のように、増幅器11の出力からノイズを除去し波形整形を行うことで矩形波状の信号を出力する。タイマ回路14は、比較器12から出力される信号をトリガとしてディレイ時間Tdの時限を行う。ここで、焦電素子10の視野内に人が存在していても微動もせずに静止していると、タイマ回路14によるディレイ時間Tdの時限が満了し、図12(d)のように、負荷16がオフになる。つまり、人の静止状態がディレイ時間Tdを越えて継続していると、焦電素子10の視野内に人が存在しているにもかかわらず負荷16がオフになる。
たとえば、トイレにおいて負荷16として照明器具を用いる場合に、トイレに人が入室したときには照明器具が点灯するが、トイレ内で人が静止している状態がディレイ時間Tdに達するとトイレ内に人が存在するにもかからわず照明器具が消灯するという不都合を生じることになる。このような不都合を回避するために、負荷16として照明器具を用いる場合に、図13(d)のように、ディレイ時間Tdの満了前に減光する段調光を行ったり、図13(e)のように、ディレイ時間Tdの満了前にブザーなどによる報知音を発生させたりすることにより、ディレイ時間Tdの満了が近付いたことを報知する技術が知られている。上述のようにしてディレイ時間Tdの満了前に報知すれば、室内の人は動くことによってタイマ回路14を再トリガすることができ、負荷16のオンを継続することが可能になる。
しかしながら、ディレイ時間Tdの満了前に報知する技術を採用したとしても、この種の人感センサの機能を認識していない人には、負荷16のオンを継続させるように行動させることができず、減光や報知音により不安感を生じさせることになるから、公共での用途では上述の技術を採用するのは困難である。そこで、報知機能を設ける代わりにディレイ時間Tdを比較的長く設定する(10〜15分)ことによって対応しているのが現状である。
ところで、公共施設としての身障者用のトイレでは、室内の照明器具の点灯・消灯の操作を不要として使い勝手を向上させるとともに省エネルギを実現するために、熱線式人感センサを用いて、使用時にのみ照明器具を点灯させ、不使用時には照明器具を消灯させていることが多い。ところが、上述のようにディレイ時間Tdが長くなると、トイレから人が退室した後にも比較的長時間に亘って照明器具が点灯し続けることになり、無駄な電力消費が生じて省エネルギを実現できず、また人が退室しているにもかかわらず照明器具が点灯していることによって、次にトイレを使用しようとする人はトイレが使用中であると誤認し照明器具が消灯するまで比較的長時間に亘って待機するという不都合を生じることがある。
一方、焦電素子を2個用いるとともに、一方の焦電素子の視野の外側に他方の焦電素子の視野を環状に設定し、両焦電素子による人の検知の時間的な先後関係によって、侵入、在留、退出を判別する技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この構成では、たとえば図14(a)のように外側の視野を設定した焦電素子で人を検知した後に、図14(b)のように内側の視野を設定した焦電素子で人が検知されると、図14(c)のように入室と判断し、その後、内側の視野を設定した焦電素子で人が検知された後に、外側の視野を設定した焦電素子で人が検知されると、図14(d)のように退室と判断することができる。
また、焦電素子の視野内に検知領域を持つ超音波センサを組み合わせる構成も考えられている(たとえば、特許文献2参照)。超音波センサには、超音波を間欠的に送波するとともに反射波を受波し、送波から受波までの時間を距離に置き換えることによって、距離の変化から物体の有無を判断するものを用いる。この構成を採用すると、図15(a)のように焦電素子による人の検知後に、図15(b)のように超音波センサで人が検知されると、図15(c)のように入室と判断し、その後、超音波センサで人が検知されなくなった後に焦電素子による人の検知があれば、図15(d)のように退室と判断することができる。
特開2001−291176号公報
特開平10−153656号公報
上述したように、焦電素子を単独で用いた場合には、視野への侵入か退出かを識別することはできないから、トイレの照明器具を負荷として用いる場合に入室中の消灯を確実に防止しようとすればディレイ時間を長くしなければならず、ディレイ時間を長くすると、トイレからの退室後も比較的長時間に亘って照明器具が点灯状態を継続するという不都合が生じる。
一方、複数のセンサを組み合わせる構成では入室と退室とを判別することができるから、入室から退室までの期間に照明器具を継続して点灯させることが可能になり、また退室から照明器具の消灯までの時間を比較的短く設定することが可能になり、焦電素子を単独で用いる場合の問題は解決可能と考えられる。
しかしながら、入退室の判定には両センサによる人の検知の順序(先後関係)を利用しており、2個の焦電素子を組み合わせる構成では、検知の順序を判定するために、両視野の間に人を検知しない空白の領域を設定しておくことが必要である。したがって、空白の領域に沿って人が移動するときには、退室の判断ができない可能性がある。また、2個の焦電素子を大小二重に設定しなければならないから、比較的広い空間にしか適用することができず、トイレ内の空間が狭いときには適正な視野を設定することができない可能性もある。
また、焦電素子と超音波センサとを組み合わせる構成では、超音波センサの検知領域を焦電素子の視野内に設定するから、空白の領域は形成されないものの、トイレ内の空間が狭いときには超音波の多重反射が生じて人を正確に検知できない可能性がある。
結局、2個の焦電素子を用いる構成と焦電素子に超音波センサを組み合わせる構成とのいずれであっても入退室を正確に判断するのは難しいという問題を有している。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、入退室を正確に判断することにより、在室時には負荷のオンを継続し、退室後には負荷を短時間でオフにして省エネルギを実現する複合型人感センサを提供することにある。
請求項1の発明は、室内に設置され人体から放射される熱線を監視するとともに熱線量の変化によって人の存否を検知する熱線式人感センサと、熱線式人感センサによる人の検知後に起動され室内の画像を撮像するとともに画像内の人が室内から退室した時点を検知する画像式人感センサと、負荷をオンオフさせるスイッチ回路と、熱線式人感センサによる人の検知時点と画像式人感センサによる退室の検知時点とをディレイ時間の時限を開始する起点とするとともにディレイ時間の時限中にはスイッチ回路をオンに保ちディレイ時間内に熱線式人感センサと画像式人感センサとがどちらも人を検知しなければディレイ時間の満了時点でスイッチ回路をオフにする検知処理部とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、熱線式人感センサと画像式人感センサとが入退室を両者の検知の先後関係(検知順序)によって検知するのではなく、熱線式人感センサによって入室を検出し、画像式人感センサによって退室を検出するから、各センサの役割が分担されることによって、入退室を正確に判断することが可能になる上に、熱線式人感センサの視野と画像式人感センサの視野とは一致させることが可能であるから、室内空間が狭い場合でも使用することが可能であり、その上、超音波センサのようなアクティブ型のセンサを用いないから、多重反射などによる誤認も生じることがない。また、入室と退室との間ではディレイ時間の時限中にスイッチ回路をオンに保つからディレイ時間を比較的長く設定することによって入室中に負荷がオフになるのを防止することが可能であり、その一方で、熱線式人感センサによる人の検知時点だけではなく、退室の検知時点もディレイ時間の時限が開始される起点に用いているから、退室後のディレイ時間を適宜に設定することによって、退室から負荷をオフにするまでの時間を従来構成よりも短く設定することが可能になる。なお、退室を検出することができない場合でも、ディレイ時間の満了時点では負荷がオフになるから、退室の検出に失敗しても負荷を自動的にオフにして省エネルギを実現できる。
請求項2の発明では、請求項1記載の発明において、前記検知処理部は、前記画像式人感センサによる退室の検知時点から時限する前記ディレイ時間を、前記熱線式人感センサによる人の起動時点から時限する前記ディレイ時間である初期ディレイ時間よりも短縮した退室ディレイ時間とすることを特徴とする。
この構成によれば、退室までのディレイ時間よりも退室後の退室ディレイ時間を短縮しているから、入室から退室まではディレイ時間を長く設定することによって入室中の負荷のオン状態を継続しやすくし、退室時点からは退室ディレイ時間を短く設定することによって電力が無駄に消費されるのを防止することが可能になる。その結果、省エネルギになるのはもちろんのこと、身障者用のトイレの照明器具を負荷とするような場合に、退室後に照明器具が長時間に亘って消灯しないことによって使用中と誤認されるのを防止することができる。
請求項3の発明では、請求項2記載の発明において、前記退室ディレイ時間の時限中は、前記熱線式人感センサと前記画像式人感センサとの少なくとも一方の感度を他の期間よりも高めることを特徴とする。
この構成によれば、画像式人感センサによって退室と判断された後のディレイ時間である退室ディレイ時間において人を検知する感度を高めているから、退室ディレイ時間において室内に人が残っていないことを保証することができ、たとえ退室を誤認したとしても、室内に人が存在していれば負荷のオン状態を継続させることが可能になる。
請求項4の発明では、請求項1ないし請求項3の発明において、前記検知処理部は、前記熱線式人感センサによる人の検知時点から時限する前記ディレイ時間を一定である初期ディレイ時間とするとともに、初期ディレイ時間から一定の余裕時間を減算した起動時間を設定し、熱線式人感センサによる人の検知時点から起動時間が経過すると前記画像式人感センサを起動することを特徴とする。
この構成によれば、入室から初期ディレイ時間は負荷のオン状態を保証することができる。また、初期ディレイ時間の時限中において余裕時間を減算した時間を起動時間として、熱線式人感センサによる人の検知時点から起動時間後に画像式人感センサを起動するから、熱線式人感センサによる人の検知直後に画像式人感センサを起動する場合に比較すると画像式人感センサによる電力消費を低減することができ、結果的に省エネルギにつながる。さらに、画像式人感センサの起動から初期ディレイ時間の満了までに余裕時間を設けているから、余裕時間の間に画像式人感センサの動作を安定させることができ、負荷のオン状態が継続している間に退室の検知が可能な状態になる。
請求項5の発明では、請求項1ないし請求項4の発明において、前記熱線式人感センサが熱線を監視する視野と前記画像式人感センサが撮像する視野とは等しくなるように設定されていることを特徴とする。
この構成によれば、室内への出入口に熱線式人感センサの視野の境界と画像式人感センサの視野の境界とを重ねて設定可能であるから、熱線式人感センサによって出入口からの入室時点を遅滞なく検知することができ、画像式人感センサによって出入口からの退室時点を遅滞なく検知することが可能になる。また、熱線式人感センサと画像式人感センサとの視野を一致させることによって狭い室内でも利用することが可能である。
請求項6の発明では、請求項1ないし請求項5の発明において、前記画像式人感センサは、少なくとも出入口を含む下向きの視野を持つように設置され、画像内において人が存在するとみなせる領域に外接矩形を設定し、画像内での外接矩形の代表点の座標が画像式人感センサの視野の中央部から周辺部に向かって移動し、かつ視野から外接矩形が消滅した時点を、人の退室時点と判断することを特徴とする。
この構成によれば、画像式人感センサが天井に配置されるとともに出入口を視野に含むように視野を下向きに設定しているときに退室を容易に検知することができる。つまり、比較的狭い室内において利用するのに適した画像による退室の検知技術を提供することができる。
請求項7の発明では、請求項1ないし請求項5の発明において、前記画像式人感センサは、出入口に向かって斜め下向きを視野として設置され、画像内において人が存在するとみなせる領域に外接矩形を設定し、画像内での外接矩形の上下寸法と左右寸法との少なくとも一方が時間経過に伴って縮小し、視野から外接矩形が消滅する時点と外接矩形の面積が規定の閾値以下になった時点とを、人の退室時点と判断することを特徴とする。
この構成によれば、視野を斜め下向きに設定しているときに退室を容易に検知することができる。つまり、比較的広い室内において利用するのに適した画像による退室の検知技術を提供することができる。
請求項8の発明では、請求項1ないし請求項7の発明において、前記画像式人感センサは画像内において人が存在するとみなせる領域に外接矩形を設定し、前記検知処理部は入室から退室までの期間において画像内で発生した外接矩形の最大個数を入室人数とみなし退室人数が入室人数に一致した時点を画像式人感センサによる退室の検知時点とすることを特徴とする。
この構成によれば、複数人が入退室する場合に全員が退室するまで負荷のオン状態を維持することが可能になり、入室時に動作させた負荷が室内に人が残っているにもかかわらずオフになるのを防止することができる。
本発明の構成によれば、熱線式人感センサによって入室を検出し、画像式人感センサによって退室を検出するから、各センサの役割が分担されることによって、入退室を正確に判断することが可能になる上に、熱線式人感センサの視野と画像式人感センサの視野とは一致させることが可能であるから、室内空間が狭い場合でも使用することが可能であり、その上、超音波センサのようなアクティブ型のセンサを用いないから、多重反射などによる誤認も生じることがないという利点がある。また、入室と退室との間ではディレイ時間の時限中にスイッチ回路をオンに保つからディレイ時間を比較的長く設定することによって入室中に負荷がオフになるのを防止することが可能であり、その一方で、熱線式人感センサによる人の検知時点だけではなく、退室の検知時点もディレイ時間の時限が開始される起点に用いているから、退室後のディレイ時間を適宜に設定することによって、退室から負荷をオフにするまでの時間を従来構成よりも短く設定することが可能になる。
本発明は、図1に示すように、人体から放射される熱線を検出する焦電型赤外線センサ(以下、「焦電素子」と略称する)10を用いた熱線式人感センサ1とTVカメラのような撮像手段20を用いた画像式人感センサ2とを併用することによって室内のような特定領域における人の存在・不在を判断し、特定領域における人の存在・不在に応じて負荷のオンオフを制御するものである。本実施形態では、特定領域としてトイレ内を想定し、負荷としてはトイレ内を照明する照明負荷を想定する。この種の用途では、トイレへの入室時に照明負荷を点灯させた場合はトイレ内に人が存在する限りは照明負荷を点灯させ続け、またトイレからの退室直後には照明負荷の点灯を継続するが、退室後の比較的短時間で照明負荷を消灯させることが要求される。従来構成において説明したように、焦電素子10では視野内に設定した検知エリアへの人の侵入は高い確率で検出するものの、検知エリア内での人の静止状態と検知エリアから人の退出とを区別することは困難である。そこで、本発明では、この種の焦電素子10の欠点を補うために撮像手段20を人の検知に併用し、トイレへの入室の検知には主として焦電素子10を用い、トイレからの退室の検知には主として撮像手段20を用いる構成を採用している。
トイレには負荷としての照明器具4が配置され、照明器具4は照明負荷(ランプあるいはランプと点灯装置との組合せ)を含む。本実施形態の複合型人感スイッチは、商用電源(図示せず)と照明器具4との間の給電経路に挿入されるスイッチ回路32を備え、スイッチ回路32に設けたスイッチ要素(リレーまたは3端子双方向サイリスタを用いる)を開閉することにより照明器具4への電源を入切する。つまり、スイッチ回路32にスイッチ要素を備えているから、壁スイッチのような通常の機械式スイッチに代えて用いることができる。また、スイッチ回路32を商用電源に接続するから、内部回路の電源がスイッチ回路32を通して供給される構成を採用している。したがって、1組の電源端子に商用電源を接続するだけで、商用電源から照明器具4への電源の入切と商用電源から内部回路への給電とが可能になる。
スイッチ回路32に設けたスイッチ要素は制御部31により開閉される。上述したように、本実施形態は、焦電素子10と撮像手段20とを併用して照明負荷のオンオフを制御するものであり、焦電素子10を用いた熱線式人感センサ1による人検知と撮像手段20を用いた画像式人感センサ2による人検知とを組み合わせてトイレへの人の入室と退室とを判断するために検知処理部30を備える。すなわち、検知処理部30は、トイレへの人の入退室を判断し判断結果を制御部31に与える。また、制御部31では照明器具4の点灯と消灯とのタイミングを規定する制御信号を生成し、この制御信号によりスイッチ回路32を制御する。また、負荷が照明負荷であってトイレ内が明るければトイレに人が存在していても照明負荷を点灯させる必要がないから、熱線式人感センサ1にはトイレ内の明るさ(照度)を検出するCdSあるいはフォトダイオードからなる明るさセンサ13を設けてあり、検知処理部30は明るさセンサ13により検出されているトイレ内の明るさに応じて、照明器具4を点灯させるか否かを判断する機能も備える。
焦電素子10を用いた熱線式人感センサ1による人検知は周知の技術であって、焦電素子10の出力を増幅器11により増幅し、比較器12において人の動きに相当するレベルの信号を抽出する。焦電素子10は受光する熱線量(赤外線量)の変化率に応じた電圧出力が得られる微分型のセンサであり、トイレの室温変化などによって生じる熱線量の緩やかな変化に対しては焦電素子10からの出力は小さいから、比較器12を用いることにより、この種の雑音成分を除去しているのである。また、比較器12は波形整形機能も兼ねており、焦電素子10で検出される人の動きに対応した比較器12の出力は矩形波状になる。図示していないが、焦電素子10の受光面の前方には、焦電素子10の視野内で感度むらを付与した受光レンズを配置するのが望ましく、このような受光レンズを用いることにより焦電素子10の視野内で人が手を動かす程度の動きでも焦電素子10に入射する熱線量が変化し、比較器12から人の動きに対応する出力が得られることになる。このような受光レンズは、収束レンズである小レンズの集合体として形成され、各小レンズの光軸近傍の領域は感度が高く、各小レンズの境界付近は感度が低くなるから、各小レンズの光軸近傍にそれぞれ焦電素子10の視野よりも幅狭であるビーム状の検知エリアを設定したことになる。このような各小レンズの光軸近傍の検知エリアを検知ビームと呼んでいる。焦電素子10はトイレ内では便器の上方の天井に配置され、少なくとも便器を含む領域を視野としている。
上述した熱線式人感センサ1の出力である比較器12の出力および明るさセンサ13の出力はともに検知処理部30に入力される。検知処理部30では、比較器12から入力される矩形波状の信号を用いて焦電素子10の視野内での人の存否を判断する。検知処理部30では、たとえば、矩形波状の信号が規定した時間内に規定した個数(たとえば、3個)が入力されると、焦電素子10の視野内に人が存在すると判断する(人検知と判断する)。ただし、従来構成としても説明したように、焦電素子10は微分型のセンサであって人に動きのあるときにしか人検知と判断されないから、焦電素子10の出力に基づいて人検知と判断されたときには、検知処理部30に内蔵したタイマ回路(オフディレイタイマ)を起動し、タイマ回路がディレイ時間を時限している間には制御部31を通してスイッチ回路32をオンに保つ。タイマ回路はリトリガラブルであり、タイマ回路の時限動作中に人検知と判断されると、その時点からさらにディレイ時間を時限する。タイマ回路のディレイ時間は後述するように可変であって、通常は比較的長く設定されており、トイレに人がいる間に人の動きがなくともスイッチ回路32がオンに保たれるようにしてある。
検知処理部30には、明るさセンサ13の出力に対する閾値が設定されており、明るさセンサ13により検出される明るさ(照度)が閾値を越える期間には制御部31に対してスイッチ回路32をオフに保つように指示する。また、検知処理部30では、明るさセンサ13に対して2段階の閾値を用いてヒステリシスを付与しており、明るさセンサ13により検出される明るさが、低いほうの閾値以下になると次に高いほうの閾値を越えるまでは人検知に対応したスイッチ回路32のオンオフを行い、その後、明るさが高いほうの閾値を越えると次に低いほうの閾値以下になるまではスイッチ回路32をオフに保つようになっている。したがって、明るさ変化がいずれかの閾値付近で振動しても動作が安定することになる。ここに、スイッチ回路32のオンオフを行う期間において、人検知に対応して照明器具4を点灯させると明るさセンサ13により検出される明るさが、高いほうの閾値を越える場合があるが、人検知に対応してスイッチ回路32をオンにしたときには明るさセンサ13の出力を無効にすることによって、短時間のうちに照明器具4の点灯と消灯とが繰り返されるような誤動作が防止される。
ところで、撮像手段20はCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサのような固体撮像素子であり、所定時間間隔で撮像した画像を出力する。また、撮像手段20から出力される画像のアナログ信号は、画像入力手段21においてA/D変換されることによってデジタル信号に変換される。ただし、デジタル信号を出力する機能を備えたCMOSイメージセンサを撮像手段20に用いる場合には、画像入力手段21におけるA/D変換は不要になる。撮像手段20で撮像する画像としては、カラー画像を用いることも可能であるが、ここではモノクロの濃淡画像を採用するものとする。撮像手段20が撮像する時間間隔は、当該時間間隔で得られる時系列の画像から移動物体の存否を判断できる程度の範囲で適宜に設定すればよく、滑らかな動画像を得ることが目的ではないから、1秒間に30フレームの画像を出力する必要はない。
画像入力手段21の出力は輪郭抽出手段22に入力され、画像入力手段21の出力である濃淡画像は輪郭抽出手段22に入力され、濃淡画像から各画素の微分値と方向コードとが求められる。つまり、輪郭線抽出手段22では、各画素の画素値が微分値となる微分画像と、各画素の画素値が方向コードとなる方向コード画像とが求められ、微分画像と方向コード画像とは濃淡画像とともに半導体メモリからなる記憶部23に格納される。
微分値を求める手法は種々提案されているが、基本的には、着目する画素の近傍画素(8近傍が広く採用されている)について、画像の垂直方向に関する輝度差を水平方向に関する輝度差で除算した値を微分値として用いる。ただし、濃淡画像から微分画像を生成するのは、画像内の物体と背景との輝度値の相違によって物体と背景との境界付近で微分値が大きくなることを利用し、物体の輪郭線の候補を抽出するためであるから、本実施形態では、輪郭線の強調のためにソーベル(Sobel)フィルタを用いた重み付きの微分処理を行う。
また、方向コードは、微分値を輝度値の変化方向に対応付けた値であって45度を単位として8方向に整数値のコードを対応付けたものである(ここでは、8近傍の画素から求めた通常の微分値に方向コードを対応付けている)。各画素の方向コードは、画像内において輝度値の変化が最大になる方向に直交する方向を表すように設定される。したがって、各画素において方向コードが示す方向は輪郭線の延長方向にほぼ一致する(各画素の方向コードが示す方向に対して±45度の範囲内で隣接する3画素が物体の輪郭線上の画素になる可能性が高い)。
上述のように輪郭抽出手段22において求めた微分画像では、コントラストの大きい部位が強調されるから、適宜の閾値で微分画像を二値化することによって、微分画像に含まれる物体の輪郭線の候補を抽出することができる。輪郭抽出手段22では、抽出した輪郭線の候補となる領域を1画素幅に細線化して輪郭線の候補となるエッジの候補を抽出する。エッジの候補は途切れている可能性があるから、エッジの候補について方向コードを用いて画素を追跡し、物体の輪郭線とみなせるエッジの候補を連結したエッジからなる輪郭線画像を生成して記憶部23に設けた輪郭線画像記憶手段23aに一定期間格納する。記憶部23は輪郭線画像を求める際の作業領域としても用いられる。
輪郭線画像記憶手段23aに格納された輪郭線画像は移動輪郭抽出手段24に入力され、移動輪郭抽出手段24では3枚または5枚の輪郭線画像から移動物体に対応するエッジを抽出する。ここでは、図2を用いて3枚の輪郭線画像から移動物体に対応するエッジを抽出する技術について説明する。いま、図2(a)〜(c)のように、時刻T−ΔT、T、T+ΔTに撮像された3枚の輪郭線画像E(T−ΔT)、E(T)、E(T+ΔT)が移動輪郭抽出手段24に与えられるものとする。図示例では、それぞれ移動物体Obを含んだ輪郭線画像E(T−ΔT)、E(T)、E(T+ΔT)を示している。
移動輪郭抽出手段24では、まず、時系列において隣接する各一対の輪郭線画像(つまり、E(T−ΔT)とE(T)、E(T)とE(T+ΔT))の差分を求める(この画像は、輪郭線画像の差分であるから、以下では「差分輪郭線画像」と呼ぶ)。ただし、輪郭線画像は、エッジの部分とエッジ以外の部分とで異なる画素値を持つ2値画像であるから、移動輪郭抽出手段24では各一対の輪郭線画像について同じ位置の一対の画素ごとに排他的論理和を求める論理演算を行えば、着目する一対の輪郭線画像の差分を求めたことになる。図示例の輪郭線画像から求めた2枚の差分輪郭線画像では、各差分輪郭線画像にそれぞれ移動物体Obが2回ずつ現れることになる。
移動輪郭抽出手段24では、時刻Tの輪郭線画像E(T)に含まれる移動物体Obを抽出するために、2枚の差分輪郭線画像について同じ位置の一対の画素ごとに論理積を求める論理演算を行い、結果の画像を図2(d)のような候補画像として出力する。すなわち、2枚の差分輪郭線画像では背景はほぼ除去されているから、2枚の差分輪郭線画像について論理積の演算を行うと共通部分である時刻Tの輪郭線画像E(T)について背景を除去した候補画像が得られ、この候補画像には移動物体Obのほかにはノイズを含むだけになると考えられる。
ここに、本実施形態では3枚の輪郭線画像E(T−ΔT)、E(T)、E(T+ΔT)を用いる例を示しているが、4枚以上の輪郭線画像を用いて候補画像を生成することも可能である。たとえば、5枚の輪郭線画像E(T−2ΔT)、E(T−ΔT)、E(T)、E(T+ΔT)、E(T+2ΔT)を用いる場合には、まず2枚ずつの輪郭線画像(E(T−2ΔT)とE(T+2ΔT)、E(T−ΔT)とE(T+ΔT))について、それぞれ論理積を求める論理演算によって移動物体Obを除去した背景の輪郭線画像を生成する。このようにして得られる2枚の輪郭線画像をそれぞれ反転して輪郭線画像E(T)との論理積を求める論理演算を行うと、輪郭線画像E(T−2ΔT)、E(T+2ΔT)において移動物体Obにより隠れていた背景と輪郭線画像E(T)における移動物体Obを含む輪郭線画像と、輪郭線画像E(T−ΔT)、E(T+ΔT)において移動物体Obにより隠れていた背景と輪郭線画像E(T)における移動物体Obを含む輪郭線画像とが得られる。両輪郭線画像について論理積を求める論理演算によって共通部分を抽出すれば、輪郭線画像E(T)における移動物体Obのエッジを含む輪郭線画像(候補画像)が得られる。このほかに、4枚以上の輪郭線画像を種々に組み合わせることによって、候補画像を生成することができる。
候補画像では濃淡画像から差分を求めるのではなく2値の輪郭線画像について論理演算を行っており、しかも2枚の画像から移動物体Obを抽出するのではなく、3枚以上の輪郭線画像を用いて特定時刻の輪郭線画像に含まれる移動物体Obを抽出するようにしているから、候補画像の中では同じ移動物体Obが2箇所に現れることがなく、移動物体Obを含む変化の生じた領域のみを抽出することができる。移動輪郭抽出手段24から出力される候補画像には移動物体Obのほかにノイズも含まれるから、移動輪郭抽出手段24において求めた候補画像を移動領域検出手段25に入力し、移動領域検出手段25では画素が連結されている領域(連結領域)ごとにラベリングを施す。ここに、各連結領域に対して図2(e)のように外接矩形D1を設定し、外接矩形D1に対してラベリングを施すようにすれば、画素ごとにラベルを付与する場合に比較してデータ量を低減することができる。また、上述のように3枚以上の輪郭線画像を用いて候補画像を求めているから、濃淡画像についてフレーム間の差分を求める場合のような残像の発生がなく、移動物体のエッジのみを抽出することが可能になる。
移動輪郭抽出手段24から出力された図2(d)のような候補画像と、記憶部23に格納された方向コード画像とは領域特徴量検出手段26に入力され、領域特徴量検出手段26では、移動領域検出手段25によりラベルを付与された領域が、人に対応する領域か人以外の外乱かを評価する。領域特徴量検出手段26では、まず、移動輪郭抽出手段24の出力として得られた候補画像の中でラベルが付された領域ごとに、記憶部23に格納された方向コード画像を参照してエッジ上の画素の方向コードを求め、ラベルが付された領域ごとに方向コードに関する度数分布を求める。度数分布は対象とする各エッジ上の画素の総数で正規化しておく。また、方向コードは、8種類の方向コードを用いるのではなく、同方向で互いに逆向きになる方向コードについては同じ方向コードとみなし、4種類の方向コードについて度数分布を求める。つまり、0度と180度とに対応する方向コード、45度と225度とに対応する方向コード、90度と270度とに対応する方向コード、135度と315度とに対応する方向コードとの4種類の方向コードを用いる。図3に1領域について、0度と180度とを「方向1」、45度と225度とを「方向2」、90度と270度とを「方向3」、135度と315度とを「方向4」と区分して求めた度数分布の例をヒストグラムとして示す。
領域特徴量検出手段26ではラベル付けされた領域ごとに度数分布を求めた後、度数分布の形状により人か外乱かを判断する。この判断には、人に対応するエッジには直線部分より曲線部分が多く、しかも人に対応するエッジは形状が複雑であるから、エッジの上の画素にはすべての方向コードについて出現頻度が比較的高いのに対して、構造物などによるエッジは直線部分が多く特定の方向に偏った分布を示すことが多いという経験則を利用する。つまり、領域が人に対応するときの各方向コードの度数に関して各方向コードごとに上限値および下限値による正常範囲を設定し、各領域ごとに求めた度数分布について、各方向コードの度数のうちの1つでも正常範囲を逸脱するものがあるときには、当該領域を人以外の外乱とみなす。
さらに、領域特徴量検出手段26では、度数分布において極端な分布の偏りがないと判断された領域(外乱とみなされなかった領域)について、当該領域が人を含むか否かを評価する。つまり、人に関するエッジの方向コードの度数分布をあらかじめ記憶部23にテーブルとして登録してある基準データを用い、外乱とはみなされなかった各領域ごとの度数分布を基準データの度数分布と比較し、両者の類似度を評価する。2つの度数分布間の類似度は種々の方法で評価可能であるが、各方向ごとの度数の差の2乗和を評価値に用いると簡単な方法ながら類似度の評価が可能になる。この評価値を適宜に設定した閾値と比較し、評価値が閾値以下である場合には当該領域を人に対応する領域と判断する。この方法では、テンプレートマッチングによる場合に比較して、基準データのデータ量が少ない上に比較演算の演算量も少なくなる。
上述したように、撮像手段20により撮像した画像から移動物体に相当する領域を抽出することができ、しかも領域特徴量検出手段26では移動物体に相当する領域が人に対応する領域か否かを判断することができるから、撮像手段20により撮像した画像に基づいて人の存否を検出することが可能になる。すなわち、撮像手段20から領域特徴量検出手段26までの一連の処理によって、撮像手段20で撮像した画像に基づいて人を検出する画像式人感センサ2が構成される。画像式人感センサ2による判断結果、つまり領域特徴量検出手段26による判断結果は検知処理部30に入力される。なお、移動輪郭抽出手段24、移動領域検出手段25、領域特徴量検出手段26、検知処理部30、制御部31は、マイクロコンピュータを用いて実現され、周辺回路とともに信号処理部3を構成している。
次に、検知処理部30において、熱線式人感センサ1による人検知と画像式人感センサ2(つまり、撮像手段20)による人検知とを用いてスイッチ回路32を制御する手順について説明する。以下では、図4(a)のように、明るさセンサ13により検出されている明るさ(照度)が低いほうの閾値以下になってから高いほうの閾値を越えていない期間を想定して説明する。上述したように、この期間は検知処理部30がスイッチ回路32のオンオフを制御することができる期間であるから、焦電素子10が人体から放射される熱線を受光し、受光する熱線量に変化が生じることによって、比較器12から図4(b)のような矩形波状の出力が得られることによって、図4(c)のように、検知処理部30では人検知と判断する。
図4に示す例は、図4(c)(d)に示しているように、熱線式人感センサ1の出力によって人検知と判断された時点で検知処理部30から起動信号Saを出力し、画像式人感センサ2を起動している。画像式人感センサ2が起動されると、図4(e)のように、画像式人感センサ2は人検知と判断する。ただし、画像式人感センサ2は上述のように移動物体を検出するものであり、トイレ内では人の動きが止まることによって、画像式人感センサ2で人検知と判断されなくなる可能性があり(図示例では画像式人感センサ2によって人検知の判断が継続している状態を表している)、また熱線式人感センサ10についても人検知と判断できなくなる可能性がある。そこで、上述のようにタイマ回路のディレイ時間を比較的長く設定することによって、トイレ内に人が存在する間に照明器具4が消灯するのを防止している。
一方、トイレから退室する際には人に動きが生じるから、熱線式人感センサ1と画像式人感センサ2とはともに人検知と判断する。ただし、熱線式人感センサ1による人検知の判断では、トイレからの退室時点を正確に検知するのは困難であるから、図4(e)のように、トイレからの退室時点は画像式人感センサ2によって判断する。画像式人感センサ2による退室の判断方法については後述する。画像式人感センサ2によりトイレからの人の退室が検知されると、タイマ回路のディレイ時間をトイレ内に人が滞在している期間における初期ディレイ時間Td1よりも短縮した退室ディレイ時間Td2を設定し、図4(f)のように、退室から退室ディレイ時間Td2が経過するとスイッチ回路32をオフにする(照明器具4を消灯する)。退室後の退室ディレイ時間Td2は、検知処理部30において設定可能なディレイ時間の最短値(10秒程度)とする。なお、タイマ回路はリトリガラブルであるから、初期ディレイ時間Td1の時限中であっても画像式人感センサ2により退室が検知されると、ディレイ時間を退室ディレイ時間Td2に変更して時限動作を行い、画像式人感センサ2は退室ディレイ時間Td2の満了時点まで継続して動作する。
ところで、熱線式人感センサ1による人検知の判断はトイレへの入室時点を検出する目的であり、一方、画像式人感センサ2による人検知の判断はトイレからの退室時点を検出する目的であるから、画像式人感センサ2は人がトイレから退室するまでに起動すればよいと言える。そこで、図5(c)のように熱線式人感センサ1による人検知の判断時点から、図5(d)のように、一定の起動時間Taが経過した後に検知処理部30から起動信号Sa(図1参照)を出力し、画像式人感センサ2を起動するのが望ましい。起動時間Taは、熱線式人感センサ1による人検知の判断時点から人がトイレから退室すると想定した時間よりも短く設定される。
このように熱線式人感センサ1による人検知の判断時点に対して画像式人感センサ2の起動を起動時間Taだけ遅らせると、熱線式人感センサ1による人検知の判断時点で画像式人感センサ2を起動する場合に比較して画像式人感センサ2に供給する電力を低減することができる。起動時間Taは、熱線式人感センサ1による人検知の判断直後に設定されるディレイ時間に基づいて設定するのが望ましい。つまり、熱線式人感センサ1による人検知の判断で照明器具4を点灯させた時点では、現場条件に応じた比較的長い初期ディレイ時間Td1が検知処理部30に設定されており、この初期ディレイ時間Td1から一定の余裕時間Tbを減算した値を起動時間Taとして用いるのが望ましい。
起動時間Taをこのように設定すると、現場条件に応じた初期ディレイ時間Td1に基づいて起動時間Taが設定されることになり、しかも初期ディレイ時間Td1に対して一定の余裕時間Tbだけ前から画像式人感センサ2が起動されるから、画像式人感センサ2の動作が安定した状態でトイレからの退室を検知することが可能になる。さらに、熱線式人感センサ1による人検知の判断から初期ディレイ時間Td1の間に画像式人感センサ2による人検知の判断がなされない限りは照明器具4が消灯することがなく、照明器具4の消灯までに画像式人感センサ2を起動することが可能になる。要するに、熱線式人感センサ1による人検知の判断後であって画像式人感センサ2が起動する前に(起動時間Taの間に)人がトイレから退室し、画像式人感センサ2では人の退室が検知できない場合でも初期ディレイ時間Td1の満了後には照明器具4を消灯するとともに、画像式人感センサ2を停止させることができる。しかも、余裕時間Tbを適宜に設定することによって、画像式人感センサ2の起動から人検知の判断が確実に行えるようになるまでの時間を確保することが可能になる。
ここに、余裕時間Tbが存在しない場合を想定すると、画像式人感センサ2による人検知の判断が行えるようになった時点では人が存在しないから画像式人感センサ2による退室の検知がなされず、しかも初期ディレイ時間Td1も満了しているから、熱線式人感センサ1による人検知の判断によって照明器具4を点灯させた後に、照明器具4を消灯させることができず、照明器具4の点灯状態が継続されるとともに画像式人感センサ2の動作も継続され、電力が無駄に消費されることになる。したがって、上述したように、(起動時間Ta)=(初期ディレイ時間Td1)−(余裕時間Tb)の関係に設定するのが望ましいと言える。
焦電素子10の視野と撮像手段20の視野とは、トイレの全体を含むのが望ましい。撮像手段20の視野が室内の全体を含むようにすれば、外接矩形D1の消滅時点を退室時点と判断することができ、しかも室内で出入口以外の場所に人が移動しても退室と誤判断することがないからである。また、焦電素子10の視野の境界はトイレの出入口に一致させておくのが望ましく、このことによって焦電素子10の視野内に人が侵入した時点、つまりトイレに人が入室した時点で照明器具4を遅滞なく点灯させることが可能になる。一方、撮像手段20の視野の境界はトイレの出入口に一致させるか、トイレの出入口のやや外方まで延長しておくのが望ましい。この設定によって、画像式人感センサ2で退室を検知した後に熱線式人感センサ1が人検知の判断を行うことがなくなり、画像式人感センサ2での退室時点の検知によってディレイ時間を確実に短縮することが可能になる。
ところで、上述のように画像式人感センサ2によって退室時点を検知したとしても誤検知の可能性も残るから、画像式人感センサ2による退室時点の検知後である退室ディレイ時間Td2において、トイレ内の人の存否を監視し続ける必要がある。つまり、上述のように画像式人感センサ2は退室ディレイ時間Td2の満了まで動作を継続する。また、明るさセンサ13で検出する明るさが条件(低いほうの閾値以下になってから高いほうの閾値を越えるまで)を満たしている限り、熱線式人感センサ1による監視は継続しているから、退室ディレイ時間Td2においてもトイレ内の人の検知は行われる。したがって、退室ディレイ時間Td2においても人の存否は監視されるのであるが、退室ディレイ時間Td2において人が検知されなければ退室ディレイ時間Td2の満了後には照明器具4が消灯するから、退室ディレイ時間Td2においてトイレ内に人が存在しないことを保証する必要がある。そこで、図5(g)のように、退室ディレイ時間Td2には、熱線式人感センサ1と画像式人感センサ2との少なくとも一方の感度を常時よりも高めることによって、退室ディレイ時間Td2においてトイレ内に人が存在しないことを確定するのが望ましい。
熱線式人感センサ1の感度は、増幅器11のゲインと比較器12の閾値とによって調節可能である。つまり、退室ディレイ時間Td2においては、増幅器11の増幅率を常時よりも高めることと、比較器12の閾値を常時よりも引き下げることとの少なくとも一方を行うことによって感度を高める。また、画像式人感センサ2の感度は、領域特徴量検出手段26において類似度の評価に用いる評価値と比較する閾値によって調節可能であり、また移動領域検出手段25でラベルを付した領域内で類似度の評価に用いる画素数を増減することでも調節可能である。つまり、評価値と比較する閾値を小さくすれば、類似度が低いものも類似とみなされることになり、また、類似度の評価に用いる画素数を低減すれば、類似度の高い場合と低い場合との評価値の差が小さくなる。その結果、人検知の判断の誤り率は高くなるものの漏れ率は低減することになる。このことは、画像式人感センサ2の感度を実質的に高めたことに相当する。
上述のように、退室ディレイ時間Td2において、熱線式人感センサ1と画像式人感センサ2との少なくとも一方の感度を常時よりも高くすることによって、退室ディレイ時間Td2における人の存否を確実に検出することができ、トイレ内に人が存在するにもかかわらず画像式人感センサ2が退室と誤認した場合でも、照明器具4の消灯を回避することが可能になる。なお、退室ディレイ時間Td2において人検知と判断した場合には、熱線式人感センサ1により最初に人検知と判断されたときの動作に戻る。
上述した画像式人感センサ2による退室の判断には以下の2種類の方法のいずれかを採用する。ここでは、撮像手段20をトイレの天井の中央付近に設置し、鉛直下向きを中心として、図6のように視野VFが設定されているものとする。また、視野VF内には便器6と出入口(図示していないが、図6の右下方にトイレの出入口が存在する)とが含まれるものとする。トイレからの退室時には人が移動するから、図6(a)のように、移動領域検出手段25で設定される外接矩形D1の移動を監視することによって退室の判断を行う。つまり、退室の判断には外接矩形D1の代表点(中心点や頂点)の移動を監視し、図6(b)のように、代表点(外接矩形D1)の位置が視野VFの中央部から周辺部に向かって移動し、かつ視野VFから外接矩形D1が消滅した時点を、人がトイレから退室した時点と判断する。図6(b)における矢印R1は代表点が移動した向きを示している。なお、トイレへの入室と退室とを検出すればよく、トイレ内での滞在を監視することは必須ではないから、トイレが広い場合には、焦電素子10および撮像手段20を、トイレの天井においてトイレの出入口側に偏った位置に配置してもよい。
上述した構成例は、画像式人感センサ2の光軸が鉛直下向きの場合を想定しているが、画像式人感センサ2の光軸を鉛直下向きに対して斜めに傾ける場合もある。たとえば、トイレよりも広い室内である会議室などからの人の退室を監視する場合には、出入口から離れた場所に撮像手段20を設置し、光軸を出入口に向けて配置する。つまり、光軸が出入口に向かって斜め下向きになるから、図7(a)(b)に示すように、人Mが出入口ENに近付くにつれて、外接矩形D1の上下寸法と左右寸法とのうち少なくとも一方が時間経過に伴って縮小することになる。さらに具体的には、人Mが出入口ENに向かって移動すると図7(a)のように、外接矩形D1の下辺が視野VFの中で上向きに移動するとともに外接矩形D1の面積が小さくなる。また、出入口ENを設けた壁面に沿って人Mが移動する場合には、図7(b)のように退室の際に左右寸法が小さくなる。そこで、視野VFから外接矩形D1が消滅した時点と外接矩形D1の面積が規定した閾値以下になった時点とを退室時点と判断する。つまり、画像内で外接矩形D1が2つの条件のいずれかを満たすと退室と判断する。このように、検知処理部30では、外接矩形D1を監視することにより退室を判断することができる。
退室の判断について上述した2種類の方法は1人が入退室する場合に適用できるが、室内に複数人が入った場合には、1人が退室した後にも室内には人が残るから、全員が退室するまでは照明器具4を点灯した状態に維持しなければならない。このような状況は会議室のような広い室内に限らず、たとえば図8に示すように、介護者M1が被介護者M2に同伴してトイレに入室した後に介護者M1のみが退室する場合などにも生じる。このような状況では、画像式人感センサ2で退室者を検知した時点で室内に残った人が静止しているとすれば、熱線式人感センサ1と画像式人感センサ2とのいずれもが室内に残った人を検出しないから、画像式人感センサ2による退室の検知から退室ディレイ時間Td2が経過すると、照明器具4が消灯する。つまり、室内に人が残っているにもかかわらず照明器具4が消灯するという不都合を生じる可能性がある。
そこで、トイレへの人の入室を熱線式人感センサ1により検出した後に画像式人感センサ2が退室を検出するまでの期間において、画像式人感センサ2における移動領域検出手段25で求めた1画面内の外接矩形D1の最大個数を求めておき、退室者が生じるたびに外接矩形D1の最大個数から退室者に相当する外接矩形D1の個数を減算し、この値が最終的に0になった時点を全員の退室とみなすようにしてある。図8に示す例では、図8(a)の状態において介護者M1が被介護者M2から離れることによって、2個の外接矩形D1が形成され、図8(b)では1人(介護者M1の外接矩形D1)の退室が検出されるから、被介護者M2が静止して外接矩形D1が形成されない場合(外接矩形D1が形成されないことを破線で示している)であっても、1人がトイレ内に残っていることを認識することができる。
このように外接矩形D1の最大個数を求めることによって入室人数に相当する値を求め、退室者の人数を減算することによって全員の退室を確認しているので、室内に人が残っている状態で照明器具4を消灯する可能性を低減することができる。ここで、人の入室が検知されてから退室が検知されるまでの期間において、外接矩形D1の最大個数を求めているから、入室時などに複数人が重なった外接矩形D1が得られたとしても期間中には人数分の個数の外接矩形D1が得られると考えられ、外接矩形D1の最大個数は確実に入室者の人数以上になる。一方、複数人の退室者に対応する外接矩形D1が重なって1つの外接矩形D1しか得られない場合には、外接矩形D1の最大個数から退室者に相当する外接矩形D1の個数を減算しても0にならない場合が生じる。ただし、このような場合でもディレイ時間の経過後には照明器具4がオフになるから、全員の退室までは照明器具4の点灯状態を継続するという目的を達成できる。
上述のように、入室者の人数を推定する技術としては、入室から退室までの期間における外接矩形D1の個数の最大数を入室者の人数とみなすほか、外接矩形D1の面積の変化によって入室者の人数を推定することも可能である。たとえば、身障者用のトイレにおいて、図9(a)のように、介護者M1と被介護者M2とが同時に入室したとすれば、入室者が2人であるにもかかわらず外接矩形D1が1個しか形成されない場合がある。このような状況では、図9(b)のように、介護者M1はトイレ内に被介護者M2を残して一旦退室すると考えられ、介護者M1が被介護者M2から離れるときに被介護者M2の動きが少なければ、介護者M1にのみ外接矩形D1が形成される可能性がある。つまり、2人が入室したにもかかわらず、外接矩形D1の個数は1個しか得られない場合が考えられる。ただし、撮像手段20はトイレ内を天井側から撮像しているから、介護者M1の動きによって形成される外接矩形D1の面積は、入室時の外接矩形D1の面積よりも小さくなる。そこで、外接矩形D1の面積が規定した閾値以上の変化しかつ面積が縮小されたときに、1人が退室し1人が残されていると判断するのである。なお、外接矩形D1の面積変化について1人分の範囲を規定しておけば、1人が占める面積の範囲を逸脱しているときに複数人が重なっていると推定することができ、外接矩形D1の面積を人数を推定するための情報として用いることが可能になる。
上述の技術を採用すれば退室の判断が可能になるが、室内の入室者がほぼ静止している状況や入室者が柱のような遮蔽物に隠れる状況などでは、入室者が背景と同様に扱われることになり、移動輪郭抽出手段24から有効な候補画像が得られず、移動領域検出手段25において外接矩形D1が生成されないことになる。そこで、熱線式人感センサ1による入室が検出された後に、輪郭抽出手段22により得られる輪郭線画像に関して、移動領域検出手段25と同様に外接矩形を設定し、異なる時刻の輪郭線画像について外接矩形の移動量が規定した閾値以下であって、しかも外接矩形に含まれる画素のうち輝度値が変化した画素数が規定値よりも少ないか、あるいは外接矩形に含まれる画素の方向コードについて求めた度数分布の距離(領域特徴量検出手段26と同様の手法で求めた度数分布の評価値)が規定値よりも小さいときには、検知処理部30では退室の可能性を考慮して、静止、遮蔽(遮蔽物に隠れた状態)、退室のいずれかとみなし、さらに上述した条件で退室が判断されていなければ、静止または遮蔽と判断する。要するに、移動輪郭抽出手段24から有効な候補画像が得られない場合でも、ただちに退室と判断するのではなく、上述した条件で退室が判断されなければ静止または遮蔽であって室内に滞在している(従来例の「在留」に相当)と判断するのである。静止または遮蔽と判断したときには、画像式人感センサ2では移動物体の監視状態を継続し、熱線式人感センサ1での人検知の判断によって設定した初期ディレイ時間が満了するまで照明器具4の点灯を維持する。要するに、明確な退室の判断がなされなければ退室ではないと判断して、照明器具4が消灯される可能性を低減しているのである。
ところで、外乱光が変化するような室内では、撮像手段20の視野内において輝度が比較的大きく変化する領域が生じることがある。トイレのように室内空間が比較的小さい場合には、撮像手段20の視野内において人の占める面積が大きいから、外接矩形D1の面積に下限を設けておけば、外乱光によるノイズの領域を大部分は除去できると考えられる。しかしながら、会議室のように室内空間が比較的広い場合には、外接矩形D1の範囲を撮像手段20の遠方に存在する人よりも狭めることができないから、外接矩形D1の面積によるノイズの除去が困難である。
この種の問題を解決する技術としては、輪郭線画像を用いてテンプレートとのパターンマッチングを行うことが考えられるが、パターンマッチングを行うには作業用に大容量のメモリが要求される上に、処理能力の高い高コストの装置が必要になるという問題が生じる。
ところで、上述したように、画像を用いて退室を検知するには、時間経過に伴う外接矩形D1の移動方向や寸法変化を用いるから、複数毎の画像を記憶しておくことが必要であって、人が静止しているときでもノイズが含まれていると人の移動と判断される領域が発生するから、複数毎の画像が累積して記憶されることになる。ただし、ノイズによる画像を蓄積しても無駄であるから、画像の累積を開始してから一定の廃棄時間毎に記憶部23から画像を廃棄することが必要である。このように記憶部23から画像を廃棄すると、人を含む画像も廃棄され、廃棄直後には人が移動しているか静止しているかの判断ができないが、検知処理部30では画像を廃棄した時点においては人は静止しているとみなし、上述したように退室が明確に検知されるまでは静止と判断するのである。このように判断することによって、退室していないにもかかわらず退室と判断する可能性を低減することができ、在室中に不用意に照明器具4が消灯される可能性を低減することができる。
ところで、焦電素子10と撮像手段20とは同じケースに収納することになるから、会議室のような比較的広い室内において撮像手段20の光軸を斜め下向きに設定するような場合には、焦電素子10が出入口から遠ざかり、撮像手段20と同じケースに収納した焦電素子10では出入口付近からの熱線量の変化に対して十分な感度を得ることが難しくなることがある。そこで、本実施形態では、図1に示すように、焦電素子10を収納したケースとは独立した子機ケースを備える子機5を付加可能としている。子機5は、焦電素子10と増幅器11と比較器12とに相当する構成を備え、子機5の出力は比較器12の出力と同様に、人の動きに対応した矩形波状になる。子機5の出力は検知処理部30に入力されるのであって、検知処理部30では比較器12の出力と子機5の出力との論理和を用いて人検知の判断を行う。したがって、画像式人感センサ2と焦電素子10とを収納したケースを出入口から遠い部位に配置したとしても、子機5を出入口付近に配置することが可能になり、出入口付近の人の検知を子機5によって行うことが可能になる。つまり、焦電素子10の視野を拡大したことになる。子機5は1台だけではなく複数台を並設して用いることが可能であって、室内形状に応じて適宜台数の子機5を付設することができる。