JP2005132748A - 新規化合物Ascotricin - Google Patents

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泰典 小野
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Futoshi Nara
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Abstract

【課題】
EDG−1拮抗活性を有する新規化合物を見出すこと。
【解決手段】
下記式(I)で表される化合物又はその塩。
【化1】


【選択図】なし。

Description

本発明は、EDG−1拮抗活性を有する化合物又はその塩、該化合物の製造方法、該化合物を有効成分として含有する医薬、EDG−1拮抗剤及び血管新生阻害剤、並びに、該化合物を生産する微生物等に関する。
細胞膜からホスフォリパーゼの働きにより、プロスタグランジン、ロイコトリエン等のエイコサノイド、PAF(血小板活性化因子)、リゾフォスファチジン酸(以下LPAと略記する)等の脂質メディエーターが産生され、様々な生理活性を生じていることが明らかにされている。スフィンゴシン−1−リン酸(以下「sph−1−P」と略記する)はスフィンゴ脂質の代謝回転を通じて、特に細胞膜の主要構成成分、スフィンゴミエリンの代謝物として生成されるリゾ脂質であり、その生理活性として、平滑筋細胞、メサンギウム細胞、及び癌細胞の増殖や運動の制御、血管の弛緩・収縮、血圧の調節、心拍数の調節、血小板の凝集、脳血管痙攣、脳虚血、肝繊維症、及び免疫調節機能などが知られている。近年、sph−1−Pが、G蛋白質共役の7回膜貫通型受容体(G-protein coupled receptor:以下、「GPCR」と略記する)であるEndothelial Differentiation Gene−1(以下、「EDG−1」のように略記する)とその類縁分子であるEDG−3、EDG−5、EDG−6、及びEDG−8(以下、これらを総称して「EDG受容体」という)に結合して細胞間メッセンジャーとして働き、血管新生の過程において重要な役割を担っていることがわかってきた。
Menq−Jer Leeらはヒト臍帯静脈内皮細胞(human umbilical vein endothelial cell:以下、「HUVEC」と略記する)を用いて、sph−1−PがEDG−1及びEDG−3受容体を介して該細胞のサーバイバル延長作用、接着点形成作用、微小血管形成作用を促すこと、及び、sph−1−Pがin vivoにおいても血管新生に対して線維芽細胞増殖因子(FGF)や血管内皮細胞増殖因子(VEGF)と相乗的に効果を示すことを報告している(非特許文献1参照)。また、OK−Hee Leeらは、sph−1−PのHUVECに対するDNA合成促進作用及び、遊走作用を明らかにし、in vivoにおける血管新生に対して、sph−1−Pが単独で血管新生を促進することを報告している(非特許文献2参照)。更に、EDG−1のノックアウトマウスが血管形成異常で胎生致死になること(非特許文献3参照)から、sph−1−Pの血管新生促進作用はEDG−1を介する可能性が強く示唆されており、EDG−1とsph−1−Pの結合を阻害する化合物は血管新生阻害作用を有することが期待される。しかし、そのような活性を有する化合物は未だ報告されていない。

「セル(Cell)」 99,(1999年), p.301−312 「バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochemical and Biophysical Research Communications)」 264,(1999年), p.743−750 「ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(Journal of Clinical Investigation)」 106,(2000年), p.951−961
本発明は、EDG−1拮抗作用を有する新規な化合物を提供することを課題とする。
本発明者等は、EDG−1拮抗活性を有する物質を見出すため、鋭意探索研究を進めた結果、真菌培養物中に該活性を有する物質が含まれていることを見出し、該化合物を単離、精製し、該化合物のEDG−1拮抗活性を確認し、本発明を完成した。

本発明は

(1) 下記式(I)

で表される化合物又はその塩、

(2) 下記の物理化学的性状を有する化合物又はその塩:
1)物質の性状:無色粉末状物質
2)溶解性:メタノール、アセトンに可溶、水、ノルマルヘキサンに不溶
3)分子式:C273411
4)分子量:534(FABマススペクトル法により測定)
5)高分解能FABマススペクトル法により測定した精密質量、[M+2Na−H]は次に示す通りである;
実測値:579.1814
計算値:579.1818
6)紫外部吸収スペクトル:メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは、次に示す極大吸収を示す:260 nm (ε 7800)
7)旋光度:メタノール中で測定した旋光度は、以下に示す値を示す:
[α] 25:−22°(c 1.0)
8)赤外吸収スペクトル:臭化カリウム(KBr)錠剤法で測定した赤外吸収スペクトルは以下に示す極大吸収を示す;
3377、2958、2930、2872、1726、1612、1590、1458、1403、1380、1316、1257、1171、1152、1132、1073、1001cm−1
9)H−核磁気共鳴スペクトル:重ジメチルスルフォキシド中でジメチルスルフォキシドのシグナルを2.50 ppmとして測定した、H−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示す通りである;
0.76 (3H, t, J=1.1, 7.1 Hz)、0.80 (3H、 t、 J=7.3 Hz)、1.15 (2H、m)、1.21 (2H、m)、1.44 (2H、 m)、1.48 (2H、 m)、2.41 (2H、 m)、2.44 (2H、 m)、3.34 (1H、 dd、 J=2.2、9.3 Hz)、3.49 (2H、 dd、 J=7.6、9.3 Hz)、3.82 (1H、 dd、 J=0.7、2.2 Hz)、3.95 (1H, d、 J=0.7 Hz)、4.74(1H, d、 J=7.6 Hz)、6.23 (1H、 d、 J=1.4 Hz)、6.35 (1H、brs)、6.39 (1H, brs)、6.43 (1H、 d、 J=1.4 Hz)、6.48 (1H、 brs)ppm
10)13C−核磁気共鳴スペクトル:重ジメチルスルフォキシド中でジメチルスルフォキシドのシグナルを39.5 ppmとして測定した、13C−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである;
13.8 (q)、14.0 (q)、22.0 (t)、24.0 (t)、30.3 (t)、30.9 (t)、34.9 (t)、35.0 (t)、69.8 (d)、70.1 (d)、73.4 (d)、75.1 (d)、100.3 (d)、100.9 (d)、106.7 (d)、109.5 (d)、112.1 (d)、112.7 (d)、114.0 (s)、141.8 (s)、144.5 (s)、151.5 (s)、156.3 (s)、158.2 (s)、159.6 (s)、166.1 (s)、170.7 (s),ppm
10)高速液体クロマトグラフィー:
カラム :Develosil ODS MG―3
(直径3.0mm×長さ75mm:野村化学(株)製)
溶 媒:0.05%ギ酸水:アセトニトリル = 2:3
流 速:0.3ml/分
検 出:紫外部吸収 波長λ260nm
保持時間:2.2分、

(3) 下記式(II)

で表される化合物又はその塩、

(4) 下記の物理化学的性状を有する化合物又はその塩:
1)物質の性状:無色粉末状物質
2)溶解性:メタノール、アセトンに可溶、水、ノルマルヘキサンに不溶
3)分子式:C293811
4)分子量:562(FABマススペクトル法により測定)
5)高分解能FABマススペクトル法により測定した精密質量、[M+2Na−H]は次に示す通りである;
実測値:607.2132
計算値:607.2131
6)紫外部吸収スペクトル:メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは、次に示す極大吸収を示す:261 nm (ε 9000)
7)旋光度:メタノール中で測定した旋光度は、以下に示す値を示す:
[α] 25:−18°(c 0.5)
8)赤外吸収スペクトル:臭化カリウム(KBr)錠剤法で測定した赤外吸収スペクトルは以下に示す極大吸収を示す;
3376、2956、2929、2871、2860、1726、1615、1590、1460、1403、1379、1316、1253、1169、1152、1132、1072、1001cm−1
9)H−核磁気共鳴スペクトル:重ジメチルスルフォキシド中でジメチルスルフォキシドのシグナルを2.50 ppmとして測定した、H−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示す通りである;
0.84 (3H、 m)、0.85 (3H、 m)、1.28 (8H、 m)、1.54 (2H、 m)、1.55 (2H、 m)、2.55 (2H、 m)、2.56 (2H、 m)、3.52 (1H、 dd、 J=2.3、9.5 Hz)、3.57 (1H、 dd、 J=7.3、9.5 Hz)、3.97 (1H、 dd、 J=0.6、2.3 Hz)、4.36 (1H、 d、 J=0.6 Hz)、4.91 (1H、 d、 J=7.3 Hz)、6.34 (1H、brs)、6.45 (1H、 brs)、6.46 (1H、 brs)、6.47 (1H、 brs)、 6.50 (1H、 brs) ppm
10)13C−核磁気共鳴スペクトル:重ジメチルスルフォキシド中でジメチルスルフォキシドのシグナルを39.5 ppmとして測定した、13C−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである;
13.8 (q)、13.9 (q)、21.8 (t)、21.9 (t)、30.2 (t)、30.5 (t)、30.8 (t)、31.1 (t)、32.3 (t)、35.0 (t)、69.7 (d)、69.8 (d)、73.0 (d)、73.8 (d)、99.8 (d)、100.0 (d)、106.6 (d)、109.3 (d)、112.1 (d)、112.7 (d)、113.9 (s)、142.2 (s)、144.6 (s)、151.4 (s)、156.0 (s)、158.0 (s)、159.5 (s)、166.0 (s)、169.5 (s) ppm
10)高速液体クロマトグラフィー;
カラム :Develosil ODS MG―3
(直径3.0mm×長さ75mm:野村化学(株)製)
溶 媒:0.05%ギ酸水:アセトニトリル = 2:3
流 速:0.3ml/分
検 出:紫外部吸収 波長λ260nm
保持時間:3.2分、

(5) アスコトリカ(Ascotricha)属に属する、(1)乃至(4)のいずれか一つに記載の化合物の生産菌を培養し、その培養物より(1)乃至(4)のいずれか一つに記載の化合物を単離することを特徴とする、(1)乃至(4)のいずれかひとつに記載の化合物の製造方法、

(6) アスコトリカ(Ascotricha)属に属する、(1)乃至(4)のいずれか一つに記載の化合物の生産菌が、アスコトリカ・チャルタールム バークレイ (Ascotricha chartarum Berkeley) SANK 14186株(FERM BP−08506)である、(5)に記載の製造方法、

(7) (1)乃至(4)のいずれか一つに記載の化合物又はその塩を有効成分として含有する医薬、

(8) (1)乃至(4)のいずれか一つに記載の化合物又はその塩を有効成分として含有するEDG−1拮抗剤、

(9) (1)乃至(4)のいずれか一つに記載の化合物又はその塩を有効成分として含有する血管新生阻害剤、

(10) アスコトリカ・チャルタールム バークレイ (Ascotricha chartarum Berkeley) SANK 14186株(FERM BP−08506)、


に関する。

本発明において、上記(1)に記載の構造式からなる化合物又は(2)に記載の物理化学的性状を有する化合物をAscotricin Aと呼び、(3)に記載の構造式からなる化合物又は(4)に記載の物理化学的性状を有する化合物をAscotricin Bと呼ぶ。Ascotricin A及びAscotricin Bを総称してAscotricinと呼ぶ。
Ascotricinは、常法に従って塩にすることができる。Ascotricinの塩は、医薬用途又は医薬以外の用途に使用され得る。医薬に使用されるAscotricinの塩としては、薬理学上許容されれば特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等を挙げることができる。医薬以外の用途(例えば、合成中間体としての用途)に使用されるAscotricinの塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属の塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属の塩、アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩等の金属の塩;アンモニウム塩のような無機塩、t−オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N−メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N−ベンジルフェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニア塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有機アミン塩;及びグリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、アスパラギン塩のようなアミノ酸塩等を挙げることができる。
また、Ascotricinは、常法に従ってエステルとすることができる。Ascotricinのエステルとしては、例えば、炭素数1乃至6個からなるアルキル基で形成されるエステル等を挙げることができる。そのようなエステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ネオペンチルエステル等を例示することができる。
さらに、Ascotricinは、種々の異性体を有する。本発明においては、これらの異性体及びこれらの異性体の混合物がすべて単一の式で示される。本発明においては、これらの異性体及びこれらの異性体の混合物をもすべて包含する。
また、Ascotricin及びその塩は、溶剤和物となることがある。例えば、大気中での放置又は再結晶等により水分を吸収し、吸着水が付いたり、水和物となる場合があるが、そのような溶剤和物も本発明に包含される。
さらに、本発明においては、生体内において代謝されてAscotricinに変換される化合物、いわゆるプロドラッグもすべて含むものである。

Ascotricinは、常法に従って化学合成により製造され得るし、該物質を生産する微生物の培養物から常法に従って単離・精製することも出来る。Ascotricinを生産する微生物としては、特に限定されないが、好適には真菌であり、より好適にはアスコトリカ(Ascotricha)属に属する真菌であり、さらにより好適にはアスコトリカ・チャルタールム バークレイ (Ascotricha chartarum Berkeley)であり、最適にはアスコトリカ・チャルタールム バークレイ (Ascotricha chartarum Berkeley) SANK 14186(以下、「SANK 14186株」という)である。
SANK 14186株は沖縄県八重山郡竹富町にて採集した土壌より、1998年8月に分離された。
以下に、SANK 14186株の菌学的性状について述べる。
菌の培養に使用した各培地の組成を以下に記載する。
[WSH培地(改良ワイツマン アンド シルバ−ヒュンター(Modified Weitzman and Silva−Hutner) 培地)]
日食オートミール 10g
硫酸マグネシウム七水和物 1g
リン酸二水素カリウム 1g
硝酸ナトリウム 1g
寒天 20g
蒸留水 1000ml

[PCA培地 (ポテトキャロット寒天(Potato Carrot Agar )培地)]
ジャガイモ 30g
ニンジン 2.5g
寒天 20g
蒸留水 1000ml

[PDA培地(ポテトデキストロース寒天(Potato Dextrose Agar)培地)]
ニッスイ ポテトデキストロース寒天培地(日水製薬(株)製) 39g
蒸留水 1000ml

以下の記載において、色調の表示は「メチューン・ハンドブック・オブ・カラー 弟三版(Methuen handbook of colour(3rd. edition))」 (コーネルップ アンド ヴァンシャー 著 (ed. Kornerup, A. and Wanscher, J. H.) エリー メチューン (Erye Methuen), ロンドン、1978年)に従った。

SANK 14186株の培養性状は以下のようになる。
WSH培地での23℃、14日目の菌叢直径は27−33 mmに達す。菌叢は短い綿毛状の白色の菌糸からなり、中央から縁辺部にかけて分生子および子のう殻をまばらに形成して、暗緑色(30F5−30F7)を呈す。縁辺部は白色で、大きく波状となる。裏面中心部は暗緑色(30F6)、縁辺部では白色となる。可溶性色素及び浸出液は観察されない。
PCA培地での23℃、14日目の菌叢直径は25−30 mmに達す。菌叢は短い綿毛状の白色の菌糸からなり、中央付近は旺盛に分生子を形成して暗緑色(30F3)を呈す。縁辺部は白色で、大きな波状となる。裏面中心部は暗緑色から黄土色(30F3−4D5)、縁辺部は白色となる。菌叢中心部に未熟な子のう殻を形成する。可溶性色素及び浸出液は観察されない。
PDA培地での23℃、14日目の菌叢直径は25−33 mmに達す。菌叢はフェルト状で、白色から灰色(30A1−30E1)を呈す。縁辺部は全縁で白色となる。裏面は白色、中央部でまばらに暗緑色(30F5)を呈す。子のう殻、分生子、可溶性色素及び浸出液は観察されない。

SANK 14186株のWSH培地での23℃、14日目の微細構造は以下のようになる。
子のう殻は亜球形で、幅330−350 μm、高さ450−460 μm、口孔を持ち、暗褐色から黒色となる。頂毛は直生で、基部で幅3−4 μm、膝状に屈曲し、しばしば二分枝し、有隔壁で、暗茶色から黒色となり、頂毛の屈曲部に短い無色の不稔性の分枝を生じる。不稔性の分枝は棍棒形で、長さ6.5−13.6 μm、幅2.8−4.0 μmとなる。側毛は頂毛に類似する。子のうは円筒形で、長さ52−72 μm、 幅5.8−7.8 μm、 8胞子を含み、薄壁で、子のう胞子が成熟すると消失する。子のう胞子は円盤形で、子のう内に単列し、成熟すると暗茶色から黒色となり、赤道面に明瞭なスリットを有し、長さ7.4−9.2 μm、幅5.9−8.3 μmとなる。
分生子柄は菌糸または頂毛から生じ、幅2.2−4.0 μmで、有隔壁で、頂毛に類似し、単生または二差分枝し、オリーブ茶色から暗茶色で、頂部に向けて淡茶色から無色となる。分枝した枝では無色の不稔性の枝と分生子形成細胞を形成する枝が不規則に並ぶ。分生子形成細胞は枝の先端部に存在し、長さ5.6−12.8 μm、幅2.4−3.6 μm、淡褐色で、上部の約1/3に分生子を形成する。分生子はシンポジオ型で、分生子形成細胞の小突起から形成され、直径4−7 μm、不規則な楕円形で、表面は小いぼ状となり、成熟すると淡褐色となる。

以上のような菌学的特徴はホークスワースの文献(「ホークスワース (1971) ア リバージョン オブ ジーナス アスコトリカ バーク. マイコロジカル ペーパーズ 126:1−28」 (Hawksworth, D. L. (1971)A revision of genus Ascotricha Berk. Mycological Papers 126:1−28))の記載したアスコトリカ・チャルタールム バークレイ(Ascotricha chartarum Berkeley) の記載によく一致した。従って、本菌株をアスコトリカ・チャルタールム バークレイ (Ascotricha chartarum Berkeley)と同定し、アスコトリカ・チャルタールム バークレイ (Ascotricha chartarum Berkeley) SANK 14186と命名した。SANK 14186株は、2003年10月6日付けで独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(住所:日本国茨城県つくば市東1−1−1中央第6)に国際寄託され、受託番号FERM BP−08506が付された。

周知の通り、真菌類は自然界において、又は人工的な操作(例えば、紫外線照射、放射線照射、化学薬品処理等)により、変異を起こしやすく、本発明のSANK 14186株もそのような変異を起こし易いと推測される。本発明において、SANK 14186株は、その全ての変異株を包含する。
また、これらの変異株の中には、遺伝的方法、たとえば組み換え、形質導入、形質転換等により得られたものも包含される。即ち、Ascotricinを生産するSANK 14186株、それらの変異株およびそれらと明確に区別されない菌株は全てSANK 14186株に包含される。
上述の通り、Ascotricinは該物質の生産菌を培養することにより製造することができる。Ascotricin生産菌の培養は、通常微生物の二次代謝産物の製造に使用されるような培地を用いて行なうことができる。そのような培地は、微生物が資化出来る炭素源、窒素源及び無機塩を含有する。
炭素源としては、例えば、グルコース、フルクトース、マルトース、シュークロース、マンニトール、グリセリン、デキストリン、オート麦、ライ麦、デンプン、ジャガイモ、トウモロコシ粉、綿実油、糖蜜、クエン酸、酒石酸等が挙げられ、これらは単独又は併用して使用することができる。炭素源の添加量は、通常、培地量の1乃至10重量%の範囲である。
窒素源としては、通常、蛋白質およびその加水分解物を含有する物質または無機塩が使用される。このような窒素源としては、例えば、大豆粉、フスマ、落花生粉、綿実粉、カゼイン加水分解物、ファーマミン、魚粉、コーンスチープリカー、ペプトン、肉エキス、イースト、イーストエキス、マルトエキス、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム等が挙げられ、これらは単独または併用して使用することができる。窒素源の添加量は、通常、培地量の0.2乃至10重量%の範囲である。
栄養無機塩としては、例えば、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カルシウムイオン、リン酸イオン、硫酸イオン、塩化物イオン、炭酸イオン等のイオンを得ることのできる塩類が使用される。また、カリウム、カルシウム、コバルト、マンガン、マグネシウム等の金属を微量含む塩類も使用することができる。
液体培養を行う場合には、必要に応じて、消泡剤を用いることができ、このような消泡剤としては、例えば、シリコン油、植物油、界面活性剤等が使用される。
AscotricinはSANK 14186株を好気的培養法で好気的に培養することにより得られる。このような培養法としては、例えば、固体培養法、振盪培養法又は通気撹拌培養法等が用いられる。
小規模な培養は、4乃至30℃(好適には17℃乃至30℃、最適には23℃)で数日間振盪培養を行うのが好ましい。培養は、三角フラスコ中で一段階または複数段階の種の発育工程により開始する。種培養は、フラスコに滅菌した種培養用培地を加え、SANK 14186株を接種した後、定温インキュベーター中で数日間または充分に成長するまで振盪することにより行う。得られた種培養液の一部または全部は、次段階の種培養用培地または生産培養用培地に接種するのに使用される。培養は、滅菌した生産培養用培地を含むフラスコに、種培養液を接種し、一定温度で数日間振盪することにより行うことができる。
大量培養は、撹拌機、通気装置を備えた適当なタンクで培養するのが好ましい。培地は、タンクの中で作製することができ、121℃に加熱して滅菌後、冷却して使用する。培養は、タンク内の生産培養用培地に種培養液を接種し、4乃至30℃(好適には17℃乃至30℃、最適には23℃)で通気撹拌して行うことができる。この方法は多量の化合物を得るのに適している。
培養時間は、通常、150時間乃至200時間でAscotricinの生産量は最高値に達する。
培養終了後、得られた培養物、その中に含まれる菌体及び/又はその培養上清から、Ascotricinを抽出することができる。菌体及びその他の固形分と培養上清とを分離するためには、遠心分離法又は珪藻土をろ過助剤とするろ過法を使用することができる。
Ascotricinの抽出には該化合物の物理化学的性状を利用することができる。培養ろ液又は培養上清中に存在するAscotricinは、酸性又は中性条件下で水と混和しない有機溶剤、例えば、酢酸エチル、クロロホルム、塩化エチレン、塩化メチレン、ブタノール、それら2つ以上の混合溶媒等により抽出することができる。菌体内に存在するAscotricinは、50乃至90%の含水アセトン又は含水メタノールを用いて菌体から抽出し、有機溶媒を留去した後、培養ろ液又は培養上清中に存在する場合と同様に抽出することができる。全培養物中に存在するAscotricinは、全培養物にアセトン又はメタノールを20乃至80%、好適には40乃至60%、より好適には50%添加し、抽出することができる。抽出終了後、珪藻土をろ過助剤としてろ過し、得られた可溶物から、培養ろ液又は培養上清中に存在する場合と同様に抽出することができる。
上述の抽出物からAscotricinを単離するための精製は、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、HPLC等の精製手段を用いて、常法に従い行なうことができる。
吸着クロマトグラフィーは、Ascotricinを含む上述の抽出液を吸着剤と接触させ、夾雑物を吸着させて取り除くか、又はAscotricinを吸着剤に吸着させて夾雑物を除去した後、該吸着剤からAscotricinを溶出させることにより行なうことができる。吸着剤としては、例えば、活性炭、アンバーライトXAD−2、同XAD−4(以上、ローム・アンド・ハース社製)、ダイアイオンHP−10、同HP−20、同CHP−20P、同HP−50、セパビーズSP−207(以上、三菱化学(株)製)等を挙げることができる。吸着させたAscotricinの溶出に使用する溶媒としては、例えば、メタノール水、アセトン水、ブタノ−ル水等を挙げることができる。
イオン交換クロマトグラフィーは、Ascotricinが酸性物質として挙動することを利用して行なう。すなわち、Ascotricinを含む上述の抽出液を陰イオン交換担体と接触させてAscotricinを該担体に吸着させ、夾雑物を除去した後、溶媒系のイオン強度、pH等を変化させることによりAscotricinを溶出させることができる。陰イオン交換担体としては、DEAE−セルロース(ブラウン社製)、DEAE−セファデックス、DEAE−セファロース、QAE−セファデックス(以上、ファルマシア社製)、DEAE−トヨパールC(東ソー(株)製)、デュオライト A−2(ダイアモンド・シャムロック・ケミカル社製)、アンバーライト IRA−68(ローム・アンド・ハース社製)、ダウエックス1×4、同21K、同SBR−P(以上、ダウ・ケミカル社製)等を挙げることができる。
分配クロマトグラフィーに使用する担体としては、例えば、シリカゲル、TSKゲルトヨパールHW−40F(東ソー(株)製)、セファデックスLH−20(ファルマシア社製)等を挙げることができる。
逆相クロマトグラフィーに使用する担体としては、例えば、コスモシール140C18(ナカライテスク(株)製)等を挙げることができる。
HPLCに使用するカラムとしては、例えば、ショウデックスアサヒパックC8P50−4E(昭和電工(株)製)、YMCパックODS−AM(ワイエムシィ(株)製)、カプセルパックUG120(資生堂(株)製)、デベロシルODS−UG5、ODS−MG5、C30−UG5(以上、野村化学(株)製)の如き逆層カラム等を挙げることができる。
これらの精製手段を単独で、又は適宜組み合わせることにより、Ascotricinを単離・精製することができる。必要なら同じ精製手段を反復してもよい。各精製手段の実施には、カラムクロマトグラフィー法、バッチクロマトグラフィー法、薄層クロマトグラフィー法等、精製に適した方法を選択することができる。このような方法により製造されるAscotricinも、本発明に含まれる。

この様にして精製されたAscotricinは、EDG−1拮抗活性を有する。
本発明において、「EDG−1拮抗活性」とは、sph−1−PとEDG−1の結合を拮抗的に阻害し、該結合を介した細胞内シグナル伝達を阻害する活性をいう。該結合を介した細胞内シグナル伝達により引き起こされる病理現象としては様々なものが考えられ、EDG−1拮抗活性を有するAscotricinは、該病理現象に起因するあらゆる疾患を治療又は予防する活性を有する。該病理現象の主なものとして血管新生が挙げられる。病態における血管新生とは、炎症細胞や癌細胞等からのシグナルに応答して血管が形成されることにより、患部への栄養供給が促進され、炎症又は癌の拡大、増悪、転移を促進する現象である。このような血管新生が関与する疾患の具体例としては、炎症疾患(例えば免疫及び、非免疫性疾患、慢性関節リウマチ、乾癬)、異常な血管新生を伴う疾患(例えば再狭窄、糖尿病性網膜症、血管新生性緑内障、後水晶体繊維増殖症、アテローム性動脈硬化症プラークの毛細血管増殖、甲状腺過形成(バセドウ病を含む)、肺炎症、ネフローゼ症候群、及び骨粗しょう症)、脳血管痙攣、脳虚血、癌関連疾患(例えば固形腫瘍、固形腫瘍転移、血管線維腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、カポジ肉腫)、脳梗塞、心筋梗塞症、腎炎、肺炎、免疫性疾患、クローン病、大腸炎、慢性下痢等を挙げることができる。上記した固形腫の中には、乳癌、肺癌、胃癌、食道癌、結腸直腸癌、肝臓癌、卵巣癌、卵胞膜細胞腫、男性胚腫、頚部癌、子宮内膜癌、前立腺癌、腎臓癌、皮膚癌、骨肉腫、膵臓癌、尿路癌、甲状腺癌、脳腫瘍などが含まれる。更に、免疫及び非免疫疾患の中には、全身性エリトマトーデス、多発性筋炎、皮膚筋炎、血管炎症群、Wegener肉芽腫、強皮症、ベーチェット病、ぶどう膜炎、特発性間質性肺炎、Goodpasture症候群、サルコイドーシス、アレルギー性肉芽腫性血管炎、気管支喘息、心筋炎、心筋症、心肥大、大動脈炎症候群、心筋梗塞後症候群、原発性肺高血圧症、潰瘍性大腸炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、肺線維症、間質性肺炎、慢性肝炎、肝硬変、閉塞性動脈硬化症、閉塞性血栓血管炎、バージャー病、糖尿病性ニューロパチーの末梢動脈疾患、敗血症、劇症肝炎、ウイルス性肝炎、微小変化型ネフローゼ、膜性腎症、慢性腎不全、腎糸球体硬化症、半月体形成性腎炎、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、多発性硬化症、浮腫性疾患、動脈硬化症、痔核、裂肛、痔ろうなどの静脈瘤、解離性動脈瘤、狭心症、DIC、胸膜炎、うっ血性心不全、多臓器不全、とこずれ、火傷、クローン病、重症筋無力症、炎症性ニューロパチー、自己免疫性水疱症、尋常性乾癬、アトピー性皮膚炎、慢性光線性皮膚炎、脳梗塞、創傷、GVHD、各種臓器移植での拒絶反応などが含まれる。すなわち、Ascotricin又はその塩を有効成分として含有する医薬は、EDG−1拮抗剤、血管新生阻害剤、又は上述のような血管新生が関与する各種疾患の治療又は予防剤として用いることができる。
Ascotricin若しくはその塩を医薬として用いる場合、種々の形態で投与され得る。その投与形態は、製剤、年齢、性別、疾患等に依存する。例えば、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤等は経口投与される。注射剤等は静脈内投与、筋肉内投与、皮内投与、皮下投与又は腹腔内投与される。坐剤は直腸内投与される。
Ascotricin又はその塩を有効成分として含有する各種製剤は、常法に従い、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶解剤、矯味矯臭剤、コーティング剤等、医薬製剤分野において通常使用し得る公知の補助剤を用いて製造することができる。
錠剤の形態に成形するに際しては、担体として当該分野で公知のものを広く使用でき、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、澱粉、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、珪酸等の賦形剤、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、澱粉液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等の結合剤、乾燥澱粉、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、澱粉、乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第四級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン、澱粉等の保湿剤、澱粉、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状珪酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩、硼酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等を挙げることができる。錠剤は、必要に応じ、通常の剤皮を施した錠剤、例えば、糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多重錠とすることができる。
丸剤の形態に成形するに際しては、担体として当該分野で公知のものを広く使用でき、例えば、ブドウ糖、乳糖、澱粉、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤、ラミナラン、カンテン等の崩壊剤を挙げることができる。
注射剤として調製される場合、液剤及び懸濁剤は殺菌され、且つ血液と等張であるのが好ましく、これら液剤、乳剤および懸濁剤の形態に形成するに際しては、希釈剤として当該分野において公知のものを広く使用でき、例えば、水、エチルアルコール、プロピレングリコール、エポキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等を挙げることができる。等張を維持するために充分な量の食塩、ブドウ糖又はグリセリンを含有せしめてもよい。溶解補助剤、緩衝剤、無痛化剤、着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤、他の薬剤等を含有せしめてもよい。
なお、注射剤を静脈内投与する場合、単独で、ブドウ糖、アミノ酸等の通常の補液と混合して、又は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等とのエマルジョンとして投与される。
坐剤の形態に成形するに際しては、担体として当該分野で公知のものを広く使用でき、例えばポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン、半合成グリセライド等を挙げることができる。
上述の医薬製剤に含有せしめるAscotricin又はその塩の量は、特に限定されないが、好適には1乃至70重量%であり、より好適には1乃至30重量%である。
Ascotricin又はその塩を含有する医薬製剤の投与量は、症状、年齢、体重、投与方法、剤形等に依存するが、通常成人に対して1日当たり投与されるAscotricin又はその塩の量は、好適には0.001乃至2000mgであり、より好適には0.01乃至200mgであり、さらにより好適には0.1乃至20mgである。
Ascotricinを含有する医薬製剤の投与回数は、数日に1回、1日1回、又は1日複数回である。
本発明により、EDG−1拮抗活性を有する化合物が提供される。本発明の化合物を有効成分として含有する医薬は、EDG−1拮抗剤又は血管新生を伴う疾患の治療又は予防剤として有用である。
次に、実施例、試験例及び製剤例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
[実施例1] SANK 14186株の培養
下記の表1で示される種培養培地を30mlずつ100ml容三角フラスコ1本に入れ、121℃で20分間加熱滅菌した。フラスコの培地にSANK 14186株を一白金耳接種し、回転振盪培養機で、210rpm、23℃で7日間培養し種培養液とした。
[表1] 種培養培地
可溶性デンプン 2%
グリセリン 3%
グルコース 3%
ゼラチン 0.25%
大豆粉 1%
イーストエキス 0.25%
硝酸アンモニウム 0.25%
寒天末 0.3%
CB−442(消泡剤) 0.01%
_____________________________
*水道水を用いて調製した。滅菌前はpH6.5であった。

下記の表2で示される本培養培地を80mlずつ500ml容三角フラスコ5本に入れ121℃で20分間加熱滅菌した。この培地を室温で23℃に冷却した後、上記の種培養液2mlを接種し、回転振盪培養機で、210rpm、23℃で7日間培養した。
[表2] 本培養培地
可溶性デンプン 2%
グリセリン 3%
グルコース 3%
ゼラチン 0.25%
大豆粉 1%
イーストエキス 0.25%
硝酸アンモニウム 0.25%
CB−442(消泡剤) 0.01%
____________________________
*水道水を用いて調製した。滅菌前はpH6.5であった。

[実施例2] Ascotricin AおよびAscotricin Bの単離
本実施例におけるAscotricinの挙動は、以下に示す条件のHPLCによりモニターした。

カラム :Develosil ODS MG―3
(直径3.0mm×長さ75mm:野村化学(株)製)
溶 媒:0.05%ギ酸水:アセトニトリル = 2:3
流 速:0.3ml/分
検 出:紫外部吸収 波長λ260nm
保持時間:2.2分(Ascotricin A)
3.2分(Ascotricin B)

実施例1において得られた培養物400mlに、ギ酸0.5ml、アセトン250ml、酢酸エチル250mlを加え、室温で30分間攪拌した後、吸引濾過により固形物を除去し、抽出液900mlを得た。得られた抽出液に酢酸エチル100mlを添加した後、分配した。得られた有機層を飽和食塩水200mlで洗浄した後、無水硫酸ナトリウム10gで乾燥した。有機層中の不溶物を濾紙及びロートを用いて濾過し、得られた濾液を減圧濃縮後、凍結乾燥を行うことでAscotricinを含む粗粉末1.86gを得た。
この粗粉末全量を、0.05%ギ酸を含む60%アセトニトリル水溶液20mlに溶解し、このうち10mlを以下の精製に供した。
該アセトニトリル溶液1mlを予め0.05%ギ酸を含む60%アセトニトリル水で平衡化したHPLCカラム(Develosil ODS MG−5(直径20mm×長さ150mm:野村化学(株)製)に供与し、平衡化に用いた溶媒系により、流速10.0ml/分で展開した。活性画分の紫外部吸収を波長λ260nmにて検出し、保持時間6.5分に溶出されるピークをAscotricin A画分として、10.6分に溶出されるピークをAscotricin B画分としてそれぞれ分取した。
このようなHPLC分取操作を10回繰り返し、得られた溶出画分を合併し、減圧濃縮して得られたAscotricin A及びAscotricin Bの懸濁液それぞれ20mlを凍結乾燥し、Ascotricin Aの粉末を115.3mg、Ascotricin Bの粉末を48.8mg、それぞれ得た。

[試験例1] 細胞内サイクリックAMP(cAMP)濃度変化測定試験
EDG−1発現細胞をsph−1−Pで刺激した際に生じる細胞内cAMPの濃度変化に対する被験化合物の作用について、以下のように試験した。
ヒトEDG−1(核酸配列:GenBank Accession No. NP_001391)を強制発現させたCHO細胞を作成し(Science (1998) vol.279, p.1552-1555)、該細胞を96穴プレート(コーニング社製)に4×10個/ウェルで播種し、37℃、5%CO存在下で一晩培養した。翌日、培地を無血清培地に交換して37℃、5%CO存在下で15分間培養し、次いで1mMの3−イソブチル−1−メチルキサンチン(IBMX)を含む培地に交換して37℃、5分間前処理した後、1mMのIBMX、30μMのフォルスコリン、100nMのsph−1−P、及び被検化合物(DMSOにより、所望の濃度になるよう溶解済み)またはDMSOを含む培地に交換して37℃で15分間刺激した。培地を除去後、1%トライトンX−100溶液を添加して細胞を溶解し、cAMPkit(日本シェーリング社製)を用いて溶液中のcAMP濃度を測定した。本試験系におけるAscotricin AのIC50値は8.2μM、Ascotricin BのIC50値は1.8μMであった。

[試験例2] Sph−1−PとEDG−1の結合阻害試験
EDG−1とsph−1−Pの結合に対する被験化合物の作用について下記のように試験した。
試験例1と同様に作製したEDG−1発現CHO細胞を12穴プレート(コーニング社)に7.4×10個/ウェルで播種し、37℃、5%CO存在下で一晩培養した後、プレートを氷上に移し、氷冷した無血清培地に交換した。DMSOまたは15μg/mlの被験化合物を加えた後、[32P]sph−1−Pを添加して1時間氷上に静置した。細胞を氷冷したPBSで3回洗浄し、1N 水酸化ナトリウム溶液で溶解し、該溶解液の放射活性を液体シンチレーションカウンター(LS 6500、ベックマン社)で測定した。その結果、結合阻害活性は、Ascotricin Aが17%、Ascotricin Bが38%であった。

[試験例3] HUVEC遊走阻害試験
HUVEC遊走試験に対する被験化合物の作用について、以下のように測定した。
96穴ケモタキシスチャンバー(Neuro Probe社製)の下層に100nMのsph−1−Pを含む無血清培地を入れ、0.5mg/mlマトリゲル溶液(ベクトンディッキンソン社)に浸して室温で1時間放置した8μm孔のフィルター(Neuro Probe社製)をセットした。HUVECを無血清培地に懸濁し、DMSOまたは被検化合物を加えた後、37℃、5%CO存在下で10分間培養して調製したHUVEC懸濁液(8×10個)を該チャンバーの上層に加え、同条件下で4時間培養した。フィルターをディフ・クイック(国際試薬社)で染色し、非遊走細胞を除去した後、スペクトラレインボーサーモ(テカンジャパン社)でOD595を測定した。その結果、被験化合物のHUVEC遊走阻害活性は、7.5μg/mlの濃度において、Ascotricin Aが9%、Ascotricin Bが45%であった。血管新生は血管内皮細胞の遊走を伴う生理現象であるため、この結果により、被験化合物が血管新生抑制活性を有することが示された。


[製剤例1] 経口用カプセル剤
以下にAscotricinを有効成分として含有する経口用カプセル製剤の配合の一例を示す。

Ascotricin A 30mg
乳糖 170mg
トウモロコシ澱粉 150mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
―――――――――――――――――――――――――――
全量 352mg

Claims (10)

  1. 下記式(I)


    で表される化合物又はその塩。
  2. 下記の物理化学的性状を有する化合物又はその塩:
    1)物質の性状:無色粉末状物質
    2)溶解性:メタノール、アセトンに可溶、水、ノルマルヘキサンに不溶
    3)分子式:C273411
    4)分子量:534(FABマススペクトル法により測定)
    5)高分解能FABマススペクトル法により測定した精密質量、[M+2Na−H]は次に示す通りである;
    実測値:579.1814
    計算値:579.1818
    6)紫外部吸収スペクトル:メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは、次に示す極大吸収を示す:260 nm (ε 7800)
    7)旋光度:メタノール中で測定した旋光度は、以下に示す値を示す:
    [α] 25:−22°(c 1.0)
    8)赤外吸収スペクトル:臭化カリウム(KBr)錠剤法で測定した赤外吸収スペクトルは以下に示す極大吸収を示す;
    3377、2958、2930、2872、1726、1612、1590、1458、1403、1380、1316、1257、1171、1152、1132、1073、1001
    9)1H−核磁気共鳴スペクトル:重ジメチルスルフォキシド中でジメチルスルフォキシドのシグナルを2.50 ppmとして測定した、1H−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示す通りである;
    0.76 (3H, t, J=1.1, 7.1 Hz)、0.80 (3H、 t、 J=7.3 Hz)、1.15 (2H、m)、1.21 (2H、m)、1.44 (2H、 m)、1.48 (2H、 m)、2.41 (2H、 m)、2.44 (2H、 m)、3.34 (1H、 dd、 J=2.2、9.3 Hz)、3.49 (2H、 dd、 J=7.6、9.3 Hz)、3.82 (1H、 dd、 J=0.7、2.2 Hz)、3.95 (1H, d、 J=0.7 Hz)、4.74(1H, d、 J=7.6 Hz)、6.23 (1H、 d、 J=1.4 Hz)、6.35 (1H、brs)、6.39 (1H, brs)、6.43 (1H、 d、 J=1.4 Hz)、6.48 (1H、 brs)ppm
    10)13C−核磁気共鳴スペクトル:重ジメチルスルフォキシド中でジメチルスルフォキシドのシグナルを39.5 ppmとして測定した、13C−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである;
    13.8 (q)、14.0 (q)、22.0 (t)、24.0 (t)、30.3 (t)、30.9 (t)、34.9 (t)、35.0 (t)、69.8 (d)、70.1 (d)、73.4 (d)、75.1 (d)、100.3 (d)、100.9 (d)、106.7 (d)、109.5 (d)、112.1 (d)、112.7 (d)、114.0 (s)、141.8 (s)、144.5 (s)、151.5 (s)、156.3 (s)、158.2 (s)、159.6 (s)、166.1 (s)、170.7 (s),ppm
    10)高速液体クロマトグラフィー:
    カラム :Develosil ODS MG―3
    (直径3.0mm×長さ75mm:野村化学(株)製)
    溶 媒:0.05%ギ酸水:アセトニトリル = 2:3
    流 速:0.3ml/分
    検 出:紫外部吸収 波長λ260nm
    保持時間:2.2分。
  3. 下記式(II)


    で表される化合物又はその塩。
  4. 下記の物理化学的性状を有する化合物又はその塩:
    1)物質の性状:無色粉末状物質
    2)溶解性:メタノール、アセトンに可溶、水、ノルマルヘキサンに不溶
    3)分子式:C293811
    4)分子量:562(FABマススペクトル法により測定)
    5)高分解能FABマススペクトル法により測定した精密質量、[M+2Na−H]は次に示す通りである;
    実測値:607.2132
    計算値:607.2131
    6)紫外部吸収スペクトル:メタノール中で測定した紫外部吸収スペクトルは、次に示す極大吸収を示す:261 nm (ε 9000)
    7)旋光度:メタノール中で測定した旋光度は、以下に示す値を示す:
    [α] 25:−18°(c 0.5)
    8)赤外吸収スペクトル:臭化カリウム(KBr)錠剤法で測定した赤外吸収スペクトルは以下に示す極大吸収を示す;
    3376、2956、2929、2871、2860、1726、1615、1590、1460、1403、1379、1316、1253、1169、1152、1132、1072、1001cm−1
    9)H−核磁気共鳴スペクトル:重ジメチルスルフォキシド中でジメチルスルフォキシドのシグナルを2.50 ppmとして測定した、H−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示す通りである;
    0.84 (3H、 m)、0.85 (3H、 m)、1.28 (8H、 m)、1.54 (2H、 m)、1.55 (2H、 m)、2.55 (2H、 m)、2.56 (2H、 m)、3.52 (1H、 dd、 J=2.3、9.5 Hz)、3.57 (1H、 dd、 J=7.3、9.5 Hz)、3.97 (1H、 dd、 J=0.6、2.3 Hz)、4.36 (1H、 d、 J=0.6 Hz)、4.91 (1H、 d、 J=7.3 Hz)、6.34 (1H、brs)、6.45 (1H、 brs)、6.46 (1H、 brs)、6.47 (1H、 brs)、 6.50 (1H、 brs) ppm
    10)13C−核磁気共鳴スペクトル:重ジメチルスルフォキシド中でジメチルスルフォキシドのシグナルを39.5 ppmとして測定した、13C−核磁気共鳴スペクトルは、以下に示すとおりである;
    13.8 (q)、13.9 (q)、21.8 (t)、21.9 (t)、30.2 (t)、30.5 (t)、30.8 (t)、31.1 (t)、32.3 (t)、35.0 (t)、69.7 (d)、69.8 (d)、73.0 (d)、73.8 (d)、99.8 (d)、100.0 (d)、106.6 (d)、109.3 (d)、112.1 (d)、112.7 (d)、113.9 (s)、142.2 (s)、144.6 (s)、151.4 (s)、156.0 (s)、158.0 (s)、159.5 (s)、166.0 (s)、169.5 (s) ppm
    10)高速液体クロマトグラフィー:
    カラム :Develosil ODS MG―3
    (直径3.0mm×長さ75mm:野村化学(株)製)
    溶 媒:0.05%ギ酸水:アセトニトリル = 2:3
    流 速:0.3ml/分
    検 出:紫外部吸収 波長λ260nm
    保持時間:3.2分。
  5. アスコトリカ(Ascotricha)属に属する請求項1乃至4のいずれか一つに記載の化合物の生産菌を培養し、その培養物より請求項1乃至4のいずれか一つに記載の化合物を単離することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の化合物の製造方法。
  6. アスコトリカ(Ascotricha)属に属する、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の化合物の生産菌が、アスコトリカ・チャルタールム バークレイ (Ascotricha chartarum Berkeley) SANK 14186株(FERM BP−08506)である、請求項5記載の製造方法。
  7. 請求項1乃至4のいずれか一つに記載の化合物又はその塩を有効成分として含有する医薬。
  8. 請求項1乃至4のいずれか一つに記載の化合物又はその塩を有効成分として含有するEDG−1拮抗剤。
  9. 請求項1乃至4のいずれか一つに記載の化合物又はその塩を有効成分として含有する血管新生阻害剤。
  10. アスコトリカ・チャルタールム バークレイ (Ascotricha chartarum Berkeley) SANK 14186株(FERM BP−08506)。
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