JP2005126738A - 溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材、具体的には、1400℃以上であっても、オーステナイト粒の粗大化を抑制するピンニング粒子として作用する粒子を鋼中に残存せしめた鋼材、およびこうした鋼材を製造するための有用な方法を提供する。
【解決手段】 所定の化学成分組成を有する鋼材であり、且つTi窒化物、Zr窒化物、Ti炭化物、Zr炭化物およびこれら1種以上の複合物で大きさが0.01〜0.5μmのものが、1μm2当たり1個以上分散したものである。

Description

本発明は、橋梁や高層建造物、船舶などに使用される鋼材であって、殊に溶接したときにおける熱影響部(以下、「HAZ」と称することがある)での靭性を改善した鋼材およびそのような鋼材を製造するための有用な方法に関するものである。
橋梁や高層建造物、船舶などに使用される溶接用鋼材に要求される特性は、近年益々厳しくなっており、鋼材自体の靭性は勿論のこと、溶接したときにおけるHAZでの靭性も良好であることが求められている。その一方で、溶接作業効率を高めるには、例えば、エレクトロガスアーク溶接法やフラックス−銅バッキング溶接法などに代表される大入熱溶接法の採用が望まれている。
ところが、溶接時の入熱が大きくなるほどHAZの冷却速度が遅くなり、焼入性が低下して粗大な島状マルテンサイトを生成することによって、HAZ靭性が却って低下する傾向がある。こうしたことから、大入熱溶接法を採用した場合でもHAZ靭性の劣化を抑制し得る鋼材の実現が望まれているのが実状である。
これまでにも鋼材のHAZ靭性を改善する技術が様々提案されている。例えば特許文献1には、鋼材中に微細なTiNを分散再析出させることで、大入熱溶接を行ったときのHAZで生じるオーステナイト粒の粗大化を抑制するピンニング粒子として利用し、オーステナイト粒の小径化を図ることが提案されている。
しかし本発明者らが検討したところ、最高到達温度が1400℃を超える様な高温になる溶接金属との境界(以下、「ボンド部」と称することがある)近傍では、溶接時に受ける熱によって大部分のTiNが固溶消失してしまうので、大入熱溶接においては靭性劣化抑制効果が十分に発揮されないことが分かった。
大入熱溶接においても、溶接ボンド部近傍の靭性を改善する技術として、例えば特許文献2〜4などに開示されるような各種方法も提案されている。これらの方法では、溶鋼をTi脱酸した際に生成するTiOx、Ca脱酸した際に生成するCaO、或はSi−Mn複合脱酸した際に生成するMnO−SiO2を鋼材に含有させることによって、HAZのオーステナイト粒の抑制を図るものである。これらTiOx、CaO或はMnO−SiO2などの酸化物は、1400℃以上の高温においても鋼材中で固溶消失することなく安定に存在するので、HAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制する効果を発揮するものとされている。
しかしながら、上記各酸化物は、溶鋼中で酸化物粒子同士が凝集し易く、或は個々の粒子が成長して粗大化し易いのが一般的であるために、オーステナイト粒の粗大化を抑制するピンニング粒子として有効に作用する0.5μm以下の粒子を微細に分散させること自体が困難であるという問題があった。
他方、特許文献5、6には、ZrやTiを含有する酸窒化物、窒化物、炭化物或は炭窒化物等を分散させた溶接用鋼材が提案されている。しかしながら、これらの技術では、Al含有量を0.01%以下に制限するものであるので、溶鋼段階でのZrやTiの添加を溶存酸素が高い状態で実施しなければならず、上記と同様の理由によって、生成酸化物が必ずしも十分に分散しているとはいえない状況である。また、TiやZrの一部が脱酸に消費されてしまうので、凝固後に析出するTiやZrの窒化物或は炭窒化物の量および個数ともに十分とはいえないという問題がある。
特公昭55−26146号公報 特許請求の範囲等 特許第2024681号公報 特許請求の範囲等 特開平05−287374号公報 特許請求の範囲等 特開平03−287711号公報 特許請求の範囲等 特開2000−54065号公報 特許請求の範囲等 特開2001−13700号公報 特許請求の範囲等
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材、具体的には、1400℃以上の高温であっても、オーステナイト粒の粗大化を抑制するピンニング粒子として作用する析出物粒子を鋼中に残存せしめた鋼材、およびこうした鋼材を製造するための有用な方法を提供することにある。
上記課題を解決することのできた溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材とは、C:0.01〜0.2%(「質量%」の意味。以下同じ)、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.5〜2.5%、Al:0.01〜0.08%、Ti:0.005〜0.06%、Zr:0.01〜0.12%(但し、Ti<Zr)、N:0.002〜0.01%、を夫々含有すると共に、P:0.02%以下(0%を含む)、S:0.008%以下(0%を含む)に夫々抑制し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼材であり、Ti窒化物、Zr窒化物、Ti炭化物、Zr炭化物およびこれら1種以上を含む複合物で大きさが0.01〜0.5μmのものが1μm2当たり1個以上分散したものである点に要旨を有するものである。
本発明の鋼材においては、必要に応じて、更に他の元素として、(a)Cu:0.05〜2.0%、Ni:0.05〜3.5%、Cr:0.01〜1.5%、Mo:0.01〜1%、Nb:0.005〜0.06%、V:0.005〜0.1%、およびB:0.0003〜0.005%よりなる群から選択される1種以上、(b)Ca:0.0005〜0.005%および/またはMg:0.0005〜0.005%、(c)Ce:0.001〜0.5%および/またはLa:0.001〜0.5%等を含有させることも有用であり、含有させる成分に応じて本発明の鋼材の特性が更に改善される。
一方、上記のような鋼材を製造するに当たっては、未脱酸溶鋼に対してAlを添加し、溶鋼中の溶存酸素量を10ppm以下に調整した後、TiおよびZr並びに他の元素を添加するようにすれば良い。また、この製造方法を実施するに際しては、未脱酸溶鋼に対してAlを添加してから3分以上経過後にTiおよびZr並びに他の元素を添加することが好ましい。
本発明によれば、溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材およびその製法を提供することができ、この鋼材は、小〜中入熱溶接に限らず、大入熱溶接する際にも好適に用いることができる。
実際の溶接ボンド部近傍では、1400℃以上になっている時間が短いので、全ての窒化物、炭化物等が鋼中に固溶している訳ではないため、窒化物や炭化物を形成する元素を適切な濃度で含有させれば、オーステナイト粒粗大化を抑制できる。
これをTi窒化物やTi炭化物に当てはめた場合、Tiの鋼中含有量を高めれば、Ti窒化物およびTi炭化物の総析出量が増大することになる。しかしながら、Tiの鋼中濃度が或る一定の値以上となると、個々のサイズが大きくなり、オーステナイト粒の粗大化を抑制するピンニング粒子の個数が減少してしまうだけでなく、粗大な炭化物、窒化物の存在は鋼材の靭性を却って損ねることになる。
そこで本発明者らは、鋼材を製造するに当たり、Alで脱酸した溶鋼に、適切な量のTiと共にZrを併用添加すれば、Ti窒化物、Zr窒化物、Ti炭化物、Zr炭化物およびこれら1種以上の複合物(以下では、これらを総括して「析出物」と呼ぶことがある)の粒子サイズを0.01〜0.5μmに維持したまま、粒子個数を1μm2当たり1個以上分散させることができることが判明した。
尚、上記「複合物」とは、TiおよびZrを含む炭化物、窒化物の他、TiおよびZrの少なくともいずれかを含む炭窒化物をも含む趣旨である。また、これらの析出物の「粒子サイズ」は最大径を意味し、この粒子サイズが0.01μm未満では、オーステナイト粒の粗大化を抑制するピンニング粒子として機能せず、0.5μmを超えると靭性の低下を招く原因となる。
図1は、Alで脱酸した後にTiおよびZrを添加したときの鋼中のTi濃度[%Ti]およびZr濃度[%Zr]が析出物(大きさが0.01〜0.5μmの析出物)個数に与える影響を示したものであり、図中の各プロットの添え字が析出物個数(個/μm2)を意味する。一方、図2は図1に対応した各プロット位置(添え字)における靭性値(0℃での吸収エネルギーvE0:J)を示したものである。
また図1、2に基づき、析出物個数とHAZ靭性との関係を図3に示すが、これらの結果から明らかなように、析出物個数が1個/μm2以上のときに100J以上の吸収エネルギーvE0が達成されていることが分かる。
ところで、或る一定濃度のTiとNを含有する溶鋼を冷却して凝固させた場合には、TiNは1400℃付近から析出しはじめることになる。これに対して、Zrの場合には、TiほどNとの親和性が強くないので、TiNと同程度の含有量であれば、1400℃よりも低い温度で析出し始める。こうした現象を溶接時における析出挙動に当てはめると、溶接時に鋼材温度が1400℃まで上昇してもTiNは鋼中に残存しているが、ZrNは消失してしまうことになる。
TiNと共にZrNをHAZのγ粒粗大化に寄与させるためには、Tiよりも高い濃度のZrを含有させる必要がある(Ti<Zr)。これらの効果をもたらすTi,ZrおよびNの鋼中濃度の適正範囲が、Ti:0.005〜0.06、Zr:0.01〜0.12%、N:0.002〜0.01%である。
一方、Ti炭化物およびZr炭化物については、1000℃以上で消失してしまうので、HAZ靭性向上にはそれほど寄与しないが、鋼材の冷却中に1000℃以下で析出してくることになるので、その結果として室温状態の鋼材には、Ti窒化物、Zr窒化物に溶解した状態(炭窒化物として)、隣接した状態、或は単独状態で存在することになる。尚、本発明では靭性向上にそれほど寄与しない上記各炭化物個数をも評価の対象としたのは、炭化物と窒化物を明確に区別できないこと、およびこれらの析出物の個数によって或る一定の確実性をもって、HAZ靭性を評価できるからである。
TiやZrを窒化物として析出させるためには、溶鋼中へのTiおよびZrの添加を、溶存酸素の極力少ない状態で行うことが推奨される。溶存酸素の多い状態でTiやZrを添加すると、TiやZrは酸素と結合して酸化物を形成し、窒化物の析出個数が減少してしまうからである。HAZ靭性を向上させるだけの効果を発揮する析出物個数を確保するためには、TiおよびZrを添加するときの溶存酸素量を10ppm以下とする必要がある。図4は、鋼中Al含有量[%Al](最終的な含有量)と、析出物個数(大きさ0.01〜0.5μmの析出物)の関係を示したものである(但し、Ti:0.005〜0.06%、Zr:0.02〜0.1%)。この結果から明らかなように、鋼中Al含有量[%Al]が0.01%以上のときには、析出物の個数1個/μm2以上を確保できることが分かる。
溶鋼中へAlを添加した後には、脱酸生成物としてのAl23が生成することになるが、このAl23は凝集粗大化しやすいために、鋼材中に残存したAl23は,HAZ靭性ばかりでなく、鋼材自体の靭性も損ねることになる。また、Al23は後続析出物の生成核となるので、TiNやZrN等を多く分散させる目的からすれば、Al23は溶鋼から極力排除すべき存在である。こうした観点から、粗大化したAl23を溶鋼から浮上分離させるためには、溶鋼へAlを添加してからTiおよびZrその他の成分を添加するまでの時間を3分以上確保することが好ましい。尚、こうした現象を考慮すると、鋼中で残存するAl含有量が添加時よりも少なくなるので、溶鋼へ添加するAl濃度は、最終的な鋼中Al含有量が0.01%以上となるように調整するようにすればよいが、ほぼ0.02〜0.1%程度となる。
本発明の鋼材は、必須成分として、C:0.01〜0.2%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.5〜2.5%、Al:0.01〜0.08%、Ti:0.005〜0.06%、Zr:0.01〜0.1%(但し、Ti<Zr)、N:0.002〜0.01%を夫々含有すると共に、P:0.02%以下(0%を含む)、S:0.008%以下(0%を含む)に夫々抑制したものであるが、これらの成分の範囲限定理由は次の通りである。
C:0.01〜0.2%
Cは、鋼材の強度を確保するために欠くことのできない元素であり、この効果を有効に発揮させるには、0.01%以上含有させる必要があり、好ましくは0.02%以上含有させるのがよい。しかしながら、C含有量量が0.2%を超えるとHAZに島状マルテンサイトが多く生成し、HAZ靭性の劣化を招くばかりでなく、溶接性にも悪影響を及ぼすため0.2%以下に抑える必要がある。好ましくは0.15%以下とすることがより推奨される。
Si:0.05〜0.5%
Siは、鋼の脱酸と強化に対して有用な元素である。こうした作用を有効に発揮させるためには、0.05%以上含有させる必要があるが、過剰に含有されると鋼の溶接性および靭性が劣化するので0.5%以下とする必要がある。Si含有量の好ましい下限は0.04%であり、好ましい上限は0.4%である。
Mn:0.5〜2,5%
Mnは、鋼材の強度を向上させるのに有効な元素である。こうした作用を有効に発揮させるには、0.5%以上含有させる必要があり、好ましくは0.7%以上含有させるのがよい。しかしながら、Mn含有量が過剰になると鋼材の溶接性を劣化させるので、2.5%以下に抑える必要がある。好ましくは1.8%以下とするのがよい。
Al:0.01〜0.08%
Alは、強い脱酸元素であり、TiおよびZrを炭化物として析出させるために必要な元素である。こうした作用を有効に発揮させるためには、0.01%以上含有させる必要があり、好ましくは0.015%以上含有させるのがよい。しかし、Alを過剰に含有させてもその効果は飽和するので、0.08%以下とする必要があり、好ましくは0.06%以下とするのがよい。
Ti:0.005〜0.06%
Tiは、HAZ靭性の向上に効果のある重要な元素であり、鋼組織中に析出したTi炭化物が、溶接時の加熱によって生成するオーステナイト粒の粗大化を防止してフェライト変態を促進し、HAZ靭性を向上させる有用な元素である。こうした作用を有効に発揮させるには、0.005%以上含有させる必要があり、好ましくは0.007%以上含有させるのがよい。しかしながら、Ti含有量が過剰になると鋼材の靭性を却って劣化させるので、0.06%以下に抑えるべきである。好ましくは0.05%以下とするのがよい。
Zr:0.01〜0.12%(但し、Ti<Zr)
Zrは、Tiと並んでHAZ靭性の向上に効果のある重要な元素であり、鋼組織中に析出したZr析出物が、溶接時の加熱によって生成するオーステナイト粒の粗大化を防止してフェライト変態を促進し、HAZ靭性を向上させるの有効な元素である。こうした作用を有効に発揮させるためには、0.01%以上含有させる必要があり、好ましくは0.02%以上含有させるのがよい。しかしながら、Zr含有量が過剰になると鋼材の靭性を却って劣化させるので、0.12%以下に抑えるべきである。好ましくは0.10%以下とするのがよい。
N:0.002〜0.01%
Nは、TiやZrと結合して窒化物を生成させ、HAZのオーステナイト粒の粗大化を防止してフェライト変態を促進し、HAZ靭性を向上させる元素である。この作用を有効に発揮させるには、0.002%以上含有させる必要がある。N含量が多いほどオーステナイト粒の微細化は促進され、靭性向上に有効であるが、0.01%を超えると靭性に有害な固溶N量の増大により却って靭性が劣化する。従って、N含有量は0.01%以下に抑える必要がある。好ましい下限値は0.003%であり、好ましい上限値は0.008%である。
P:0.02%以下(0%を含む)
Pは、鋼材中の結晶粒界に偏析しやすい元素であり、この偏析により靭性を劣化させる。こうした不都合を発生させないためには、P含有量は0.02%以下に抑制する必要があり、好ましくは0.006%以下とすることが推奨される。
S:0.008%以下(0%を含む)
Sは、Mnと結合してMnS介在物を生成し、鋼材の靭性や板厚方向の延性を劣化させる有害な元素である。こうしたことから、S含有量は0.08%以下に抑制すべきであり、好ましくは0.006%以下とするのがよい。
本発明の鋼材は、上記元素を必須成分として含有するものであり、残部はFeおよび不可避不純物(例えば、SnやZn,As,Seなど)であるが、更に他の元素として、(a)Cu:0.05〜2.0%、Ni:0.05〜3.5%、Cr:0.01〜1.5%、Mo:0.01〜1%、Nb:0.005〜0.06%、V:0.005〜0.1%、およびB:0.0003〜0.005%よりなる群から選択される1種以上、(b)Ca:0.0005〜0.005%および/またはMg:0.0005〜0.005%、(c)Ce:0.001〜0.5%および/またはLa:0.001〜0.5%等を含有させることも有用であり、含有させる成分に応じて本発明の鋼材の特性が更に改善される。
Cu:0.05〜2.0%、Ni:0.05〜3.5%、Cr:0.01〜1.5%、Mo:0.01〜1%、Nb:0.005〜0.06%、V:0.005〜0.1%、およびB:0.0003〜0.005%よりなる群から選択される1種以上
これらの元素は鋼材の強化に有効である。このうちCuは、0.05%以上含有させることによって鋼材を固溶強化させることができる。また、Cuを0.6%以上含有させると時効析出強化も発揮し、大幅な強度向上が可能となる。しかし、Cuが2.0%を超えて含有されると、靭性を低下させる原因となる。そのためCu含量は2%以下に抑えるのが好ましい。より好ましくは1.5%以下とすることが推奨される。
Niは、鋼材(母材)の強度を高めると共に、鋼材の靭性を向上させるのに有効な元素であり、この作用を有効に発揮させるには、0.05%以上含有させるのが好ましい。Ni含有量は多いほど好ましいが、高価な元素であるため経済的観点から3.5%以下にするのがよい。より好ましくは3.0%以下とするのがよい。
Crも母材強度を高めるのに有効な元素であり、こうした作用を発揮させるためには0.01%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.02%以上含有させるのがよい。しかし、Cr含有量が1%を超えると溶接性を阻害するようになるので、Cr含有量は1.5%以下に抑えるのが好ましい。より好ましくは1.2%以下に抑制するのがよい。
Moは母材強度を高めるのに有効な元素であり、こうした作用を発揮させるためには0.01%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.02%以上含有させるのがよい。しかし、Mo含有が1%を超えると溶接性を悪化させるので、Mo含量は1%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.8%以下に抑えることが推奨される。
Nbも母材強度を高めるのに有効な元素であり、こうした作用を発揮させるためには0.005%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.006%以上含有させるのがよい。しかし、Nb含有量が0.06%を超えるとNbCが析出して母材の靭性を劣化させるので、Nb含有量は0.06%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.5%以下に抑えることが推奨される。
Vも母材強度を高めるのに有効な元素であり、こうした作用を発揮させるためには0.005%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.006%以上含有させるのがよい。しかし、V含有量が0.1%を超えると溶接性および母材靭性を劣化させるので、V含有量は0.1%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.08%以下に抑えることが推奨される。
Bは母材強度を高めると共に、冷却過程でBNを析出させ、オーステナイト粒内からのフェライト変態を促進させる。これらの効果を有効に発揮させるには、0.0003%以上含有させるのが好ましい。しかし、B含有量が0.005%を超えると靭性を劣化させるので、B含有量は0.005%以下とするのが好ましい。より好ましくは0.003%以下に抑えるのがよい。
Ca:0.0005〜0.005%および/またはMg:0.0005〜0.005%
CaおよびMgは、母材強度の異方性を生じるMnSの球状化形態制御に有効な元素である。こうした作用を発揮させるためには、いずれも0.0005%含有させることが好ましく、より好ましくは0.0008%以上含有させるのがよい。しかしながら、これらの元素の含有量が過剰になると単独のCaSやMgS等が生成し、母材靭性を却って低下させることになる。より好ましくは0.004%以下に抑えるのがよい。
Ce:0.001〜0.5%および/またはLa:0.001〜0.5%
CeおよびLaは、母材強度の異方性を生じるMnSの球状化形態制御に有効な元素である。こうした作用を発揮させるためには、いずれも0.0001%含有させることが好ましく、より好ましくは0.0002%以上含有させるのがよい。しかしながら、これらの元素を多量に含有させることは経済上の理由から好ましくない。従って、いずれも0.5%以下にすることが好ましく、より好ましくは0.3%以下に抑えるのがよい。
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
電解鉄:170kgをAr雰囲気下で溶解し、成分調整を行った。成分調整は下記(A)または(B)のいずれかの手順で行った。成分調整後、平均直径:220mm、高さ:500mmの円筒径鋳型に注入し、鋼塊を得た。下記表1に、成分調整手順、Alの添加時濃度、Al添加からTiおよびZr添加までの時間、TiおよびZr添加時の溶存酸素量を示す。また下記表2に鋼材の最終的な化学成分組成を、夫々示す。
[手順]
(A):所定量のAlを溶鋼に添加した後、TiおよびZrその他の成分を添加して成分調整する。
(B):TiおよびZrその他の成分を添加した後、所定量のAlを溶鋼に添加して成分調整する。
Figure 2005126738
Figure 2005126738
得られた鋼塊の底から高さ:約100mmの位置から円板状(直径:200mm)に切り出し、さらにこの中央部から10mm角のサンプルを切り出し、析出物調査に供した。このサンプルから抽出レプリカを作成し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、最大径が0.01〜0.5μmの析出物個数を測定した。このとき、1視野2.5μm×3.0μmを30000倍で観察し、16視野(全視野面積:120μm2)に対して個数計測を行い、1μm2当たりの個数に換算した。またTEMに付属する特性X線エネルギー分散分光分析により、観察される析出物が、Tiおよび/またはZrを含む窒化物、炭化物、炭窒化物であることを確認した。
次に、溶接時に熱影響を受けるHAZの靭性を評価するために、大入熱溶接を模擬して下記に示す溶接再現試験を行なった。
(溶接再現試験)
上記円板状鋼材中央部から切り出したサンプル全体が1400℃になるように加熱し、この温度で5秒間保持した後、冷却した。このときの冷却速度は、800℃から500℃への冷却時間が300秒となるように調整した。
上記の熱履歴を付与したサンプルを、Vノッチシャルピー試験に供し、0℃での吸収エネルギー(vE0)を測定して靭性を評価した。このvE0値が高いほど靭性の良好な鋼材と評価できる。各鋼材の析出個数および吸収エネルギー(vE0)を下記表3に示す。
Figure 2005126738
これらの結果から、次のように考察できる。まずNo.1〜15のものは、本発明で規定する要件を満足する例であり、溶接熱影響部の靭性が良好な鋼材(vE0で100J以上)が得られている。このうち特にAl添加からTiおよびZrの添加までの時間を3分以上とした例(No.1〜8)では、vE0値が150J以上の鋼材が得られていることが分かる。これに対して、No.9〜13のものは、Al添加からTiおよびZrの添加までの時間が3分未満の例、No.14〜15のものは、Al添加前にZrおよびTiを添加した例であるが、No.1〜8のものに比べると、析出物個数やvE0値が若干劣っていることが分かる。
一方、No.16〜25のものは、本発明で規定するのいずれかの要件を外れる例であり、いずれも析出個数が1個/μm2未満であり、溶接熱影響部の靭性が劣っていることが分かる。
鋼中のTi濃度[%Ti]およびZr濃度[%Zr]が析出物個数に与える影響を示したグラフである。 鋼中のTi濃度[%Ti]およびZr濃度[%Zr]が靭性に与える影響を示したグラフである。 鋼中の析出物個数と靭性(vE0値)との関係を示したグラフである。 鋼中Al含有量と析出物個数の関係を示したグラフである。

Claims (6)

  1. C :0.01〜0.2%(「質量%」の意味。以下同じ)、
    Si:0.05〜0.5%、
    Mn:0.5〜2.5%、
    Al:0.01〜0.08%、
    Ti:0.005〜0.06%、
    Zr:0.01〜0.12%(但し、Ti<Zr)、
    N :0.002〜0.01%、を夫々含有すると共に、
    P :0.02%以下(0%を含む)、
    S :0.008%以下(0%を含む)、
    に夫々抑制し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼材であり、
    Ti窒化物、Zr窒化物、Ti炭化物、Zr炭化物およびこれら1種以上を含む複合物で、大きさが0.01〜0.5μmのものが1μm2当たり1個以上分散したものであることを特徴とする溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材。
  2. 更に他の元素として、
    Cu:0.05〜2.0%、
    Ni:0.05〜3.5%、
    Cr:0.01〜1.5%、
    Mo:0.01〜1%、
    Nb:0.005〜0.06%、
    V :0.005〜0.1%、および、
    B :0.0003〜0.005%、
    よりなる群から選択される1種以上を含むものである請求項1に記載の鋼材。
  3. 更に他の元素として、
    Ca:0.0005〜0.005%および/またはMg:0.0005〜0.005%を含むものである請求項1または2に記載の鋼材。
  4. 更に他の元素として、
    Ce:0.001〜0.5%および/またはLa:0.001〜0.5%を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の鋼材。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の鋼材を製造するに当たり、未脱酸溶鋼に対してAlを添加して溶鋼中の溶存酸素量を10ppm以下に調整した後、TiおよびZr並びに他の元素を添加することを特徴とする溶接熱影響部の靭性に優れた鋼材の製造方法。
  6. 未脱酸溶鋼に対してAlを添加してから3分以上経過後にTiおよびZr並びに他の元素を添加する請求項5に記載の製造方法。
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