JP2005124482A - CoQ・10含有栄養組成物 - Google Patents

CoQ・10含有栄養組成物 Download PDF

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綾子 嘉藤
Sumihisa Iida
純久 飯田
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Abstract

【課題】
本発明は、ビタミンC存在下におけるCoQ・10の安定性を向上させ、これにより各種食品などに利用できる栄養組成物ならびに食品、医薬品におけるCoQ・10の安定化方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、CoQ・10 100重量部に対し、ビタミンCを10〜1000重量部、β‐カロチンを1〜100重量部、酵素処理ルチンを10〜2000重量部含んでなるCoQ・10含有栄養
組成物である。CoQ・10とビタミンCが共存している状況にあってもカロチノイドおよび酵素処理ルチンが含まれており、しかもこれらの栄養素が上記の比率にある場合に、CoQ・10の安定性が顕著に改善する。
【選択図】なし

Description

本発明は、CoQ・10を安定に含有する栄養組成物に関する。より詳しくは、本発明はCoQ・10がビタミンCとの共存下でも安定性が高く保たれる栄養組成物およびこれを含有する食品など、ならびにCoQ・10の安定化方法に関する。
コエンザイムQ10(CoQ・10)は、エネルギー産生に関わる補酵素として知られてきた。その生理作用に着目して、心疾患などに対する医薬品として用いられるほか、近年はサプリメント、食品栄養添加物としても注目を集めている。CoQ・10は、加齢とともにその生合成能力は低下することから、中高年者ではその適切な補給が望ましい。CoQ・10を含む食品として魚類、肉類、海草などが知られているが、いずれもCoQ・10の含有量が低い。よって、天然素材の食品を通常の食事として摂取する限り、CoQ・10を充分に補給することは難しいと見られている。
一方、CoQ・10の量産化と安定化の技術が確立され、多くは医薬品、サプリメントとして供給されている。このようなCoQ・10を、飲食物に添加することは、他の栄養素とともに日常的に摂取できるため、効率的である。ところで工業的に製造されたCoQ・10を飲食物に添加しようとする場合にも、CoQ・10の安定化が図られねばならない。とりわけ、ほとんどの食品に含まれているビタミンCは、著しくCoQ・10の安定性を低下させることから、CoQ・10含有飲食品は、ビタミンCを除いているのが実態である。しかしながら、添加したCoQ・10とともにビタミンCもできれば共存させたい。言うまでもなくビタミンCの栄養的価値、酸化防止作用などからして、ビタミンCは食品成分として、CoQ・10に劣らず重要であるためである。よって食品などにおいて両栄養素の添加を巡るこのような状況を技術的に解決する手段の開発が切望される所以である。
CoQ・10を含有する組成物、特に水性溶液におけるそのCoQ・10の安定化に関しては、これまで、幾つかの提案がなされてきている。ビタミンB2を添加したり(例え
ば、特許文献1参照)、カロチノイドとビタミンKを加えたり(例えば、特許文献2参照)、あるいはキレート化剤およびビタミンCと共存させたりする技術(例えば、特許文献3参照)などが挙げられる。さらに、化粧品および皮膚科学的調製物中の不安定成分として、ビタミンA、CおよびEおよびそれらの誘導体、ユビキノンおよびその誘導体を安定化させるためのフラボノイド類の使用が開示されている(特許文献4参照)。
しかしながら、これらの文献をいかに精査してもビタミンCの作用により水性液体の系のCoQ・10の安定性が損なわれること、ならびにその不安定化を抑制する作用を発揮する物質については、何ら記載も示唆もされていない。
特開昭57-106627号 特許公報第3053408号 特開平2003-119126号公報 特表平10-5105213号
本発明者らは、上記問題を解決する方法を鋭意研究した結果、CoQ・10とビタミンCとが共存している状況にあってもβ-カロチンおよび酵素処理ルチンを一定の比率で含
有させると、CoQ・10の安定性が顕著に改善することを見出して本発明を完成した。
本発明は、ビタミンC存在下におけるCoQ・10の安定性を向上させ、これにより各種食品などに利用できる栄養組成物を提供することを目的とする。さらに本発明は、食品、医薬品におけるCoQ・10の安定化方法を提供することを目的とする。
本発明の概要を以下に記す。
本発明に係る含有栄養組成物は、コエンザイムQ10(CoQ・10)100重量部に対し
て、ビタミンCを10〜1000重量部、β‐カロチンを1〜100重量部、酵素処理ルチンを10
〜2000重量部含んでなるCoQ・10含有栄養組成物である。
特に、β‐カロチン 1重量部に対して、酵素処理ルチンを10〜200重量部含むことが望
ましい。
本発明には、上記のCoQ・10含有栄養組成物を含むことを特徴とする食品も包含される。さらに上記CoQ・10含有栄養組成物を含む医薬品も包含される。
本発明によるコエンザイムQの安定性を増す方法は、コエンザイムQとビタミンC類とが存在する水性液体の系において、コエンザイムQ 100重量部に対し、カロチノイドを1〜100重量部、酵素処理ルチンを10〜2000重量部の割合で含めることによる。
前記の系として、食品または医薬品が挙げられる。
〔発明の具体的説明〕
以下、本発明に係る栄養組成物、これを配合した食品および医薬品、コエンザイムQの安定性を増す方法について具体的に説明する。
本発明に係る組成物に含まれる4栄養素成分のうち、ビタミンC、β‐カロチンおよび酵素処理ルチンはいずれも食品に添加されてきた。コエンザイムQ10(CoQ・10)も近年、医薬品のほか健康食品などにも用いられている。いずれも生物に存在する栄養素、生理物質またはその誘導体として安全性の高いものである。
なお、本明細書において、本栄養組成物の4成分であるCoQ・10、ビタミンC、β‐カロチンおよび酵素処理ルチンについては、それらの塩または誘導体を含めて言及することもある。またCoQ・10の「安定化」とは、CoQ・10、特にCoQ・10(還元型)が時間経過とともにその量が減少することを防止する作用をいう。CoQ・10の安定性が損なわれる原因として、酸化還元反応、光による分解などが考えられる。特に光による分解では、還元型のみならず酸化型のCoQ・10も分解の対象となる。なお、水性液体の系でのCoQ・10の安定性がビタミンCの作用により損なわれることに直接関連するかどうか不明であるが、CoQ・10(還元型)は、ビタミンCでは再生されないことが示されている。
コエンザイムQ10(CoQ・10)
コエンザイムQ(別名「ユビキノン」)は、電子伝達系の重要な補因子であり、真核生物では細胞のミトコンドリア内膜に存在する脂溶性ベンゾキノン誘導体である。コエンザイムQ(酸化型)は、下記式の構造を有し、n=6〜10のコエンザイムQ6〜Q10が広
く知られている。還元型コエンザイムQは、下記式で=O(キノン)の代わりに−OH(ヒドロキノン)となっている。
Figure 2005124482
これらのうち、通常は側鎖イソプレン単位n=7〜10のコエンザイムが使用される。特にヒトを含む高等動物ではn=10のコエンザイムQ10(ユビデカレノン)が、呼吸鎖の一員であり、必須の細胞成分である。コエンザイムQ10は、上記CoQ・10であり、すでに量産技術が開発され製剤として上市され、容易に入手できる。本発明では、CoQ・10として酸化型、還元型のいずれを使用してもよい。還元型CoQ・10は、酸化型に比べるとより不安定であるが、生体内では活性型として機能している。もっとも、酸化型CoQ・10でも体内に吸収されると、還元酵素の作用により還元型に変換されて利用される。したがって、市販されているCoQ・10製剤として、錠剤、顆粒、カプセル、水溶化液など各種の形態があるが、水溶化液またはその粉末が好ましい。
酵素処理ルチン
ルチン(Rutin)は、下記式(2)で示されるように、ケルセチンをアグリコンとし、
その3位の水酸基に、L-ラムノシル-(α1→6)-グルコースがβ-結合したフラボノー
ル配糖体をいう。
Figure 2005124482
ルチンはソバの全草、イチジク、アオギリ、タバコの葉などに含まれる。このルチンはヘスペリジン、ナリンジンといった他のフラボノイド類と同様、毛細血管の強化、出血予防等のいわゆるビタミンP様の作用を有している。また、ルチンには血中のコレステロール量や中性脂質量の低下、骨密度の向上効果、動脈硬化・高血圧などを改善する作用があることも見出されている。さらにルチンは、紫外線吸収、酸化防止、着色・退色などの作用も有することから、飲食物、健康食品のほか、循環器系疾患の予防剤として医薬品にも供されている。
ルチンもまたアルカリ性水溶液には可溶であるが、水、酸に難溶であり、室温では、1リットルの水に僅かに0.1g程度しか溶けない。そのためルチンの水溶性を高めるための種々の方法およびその誘導体が提案されており、例えば溶解性が改善された誘導体であるα‐グルコシル化ルチン(酵素処理ルチンに包含される)などがある。本発明に係る組成物に含まれるルチン類の種類として、水溶性である酵素処理ルチンが好ましい。
本発明に係る栄養組成物に使用する酵素処理ルチンは市販のものを使用できる。例えば、これらのフラボノイドのグルコシル化誘導体としては東洋精糖株式会社製の「αGルチ
ンP」TMなどが使用できる。この「αGルチンP」は、上記ルチンに酵素グルコシダーゼ、
トランスグルコシダーゼなどの転移作用によりデンプン、デキストリンなどからグルコー
スをルチンのグルコース4位に転移した水溶性ルチンであり、グルコース数の異なるα‐グルコシルルチンの混合物である。「αGルチンP」では、ルチンに比べてその溶解性(水溶性、脂溶性)は向上し、耐熱性、長期保存性などの安定性も改善されている。「α‐グルコシル化ルチン」の製造方法は、特許公開公報昭54−32073に開示されている。
ビタミンC
人間は、アスコルビン酸とも呼ばれるビタミンCを体内で合成することができないため食品から必要量を摂取しないとビタミンC欠乏症になる。本発明では、食品中にもともと含有されているビタミンCの他に、抗酸化作用またはビタミン補充の目的で添加されるビタミンCも対象となる。ビタミンCとCoQ・10とが、特に水性の溶液状態で共存すると、時間経過とともにCoQ・10の安定性が低下することが問題である。
ビタミンCの含有量を増強する目的で添加する場合、ビタミンCまたはその塩またはその各種誘導体は市販されているものを使用することができる。ビタミンCの誘導体として、グルコシル化アスコルビン酸、リン酸化アスコルビン酸などが挙げられる。アスコルビン酸には、酸化型および還元型があるが、そのいずれも用い得る。ビタミンCの抗酸化作用も併せて期待する場合には、還元型アスコルビン酸を使用するのがよい。しかしながら、このものは空気酸化を受けやすい。
ビタミンCまたはその誘導体は、酵素処理ルチンと同様、水に易溶性である。なお、酵素処理ルチンとビタミンCとを併用することにより、毛細血管の抵抗性増強などのビタミンP作用に相乗効果を発揮させることができることがこれまでの研究で明らかにされている。
β‐カロチン
カロチノイドとしては、β‐カロチン、α‐カロチン、γ‐カロチン、δ‐カロチン、リコペン、ルテイン、クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、ロドキサンチン、カンタキサンチン、カプサンチン、クロセチン、スクアレン、β‐イオノン等が挙げられる。これらのカロチンは、単独でまたは2種以上の組み合わせで用いることができる。この中でβ‐カロチンがビタミンAの前駆体であり、食品着色料としても用いられており、入手容易であるため好ましい。カロチノイドもまた、コエンザイムQと同様に水に難溶性である。
β‐カロチンによるCoQ・10の安定化作用が報告されており(例えば特許文献2)、下記実施例でも確認した。
栄養組成物の調製
本発明に係る栄養組成物は、CoQ・10、100重量部に対し、以下の割合で配合して
調製する。ビタミンCを10〜10000重量部、好ましくは10〜1000重量部、β‐カロチンを
1〜100重量部、好ましくは1〜20重量部、酵素処理ルチンを10〜2000重量部好ましくは100〜1000重量部含有するように混合する。β‐カロチンは、1重量部未満であると、Co
Q・10の安定化作用が不充分になる。100重量部を超えると沈殿化などの可能性も出て
来る。また酵素処理ルチンの含有量が10重量部未満であると、CoQ・10の安定化作用が不充分になる。2000重量部を超えるとその安定化作用は頭打ちとなる。
当該栄養組成物中のCoQ・10の含量は、分散安定性、飲食物などにおける利用態様、CoQ・10の日用量により異なるが、一般には0.0005〜0.2重量%、好ましくは0.001〜0.1重量%の範囲である。なお、CoQ・10の日用量は、摂取者の年齢、体重、性別
、健康状態、用法などにより変動するが、通常は1〜300mgの範囲中で、適宜決定することができる。成人の場合には通常5〜200mg/日、好ましくは10〜100mg/日の範囲で摂取する
ことができる。飲食物におけるCoQ・10の最終濃度は、その溶解・分散安定性、食品
の種類、形状などにより変化するが、通常は上記栄養組成物の濃度よりも低い。
当該栄養組成物または食品などにおけるCoQ・10の含量が決まれば、β‐カロチンおよび酵素処理ルチンの使用量は、上記の比率に応じて決められる。ビタミンCを添加する場合、その添加量も同様である。
これらを所定量秤量し、さらに他に加える物質があればそれらも必要量だけ添加し、混合して栄養組成物を調製する。ペースト状または顆粒状にするか、固形製剤として成型する場合には、適当量の水などを添加し、また所望により増量剤、賦形剤と混捏し、必要に応じて濃縮して顆粒状、球状、キューブ、タブレット状などに成型して使用することができる。液状品の場合には水などの溶媒に溶解すればよい。本発明の栄養組成物の形態は、特に限定されないが、それを食品または医薬品に添加して利用する観点からは、液状形態、特に水溶性物質に溶解、分散、乳化した態様が望ましい。液状品は、溶解あるいは使用上便利なようにその濃度を適宜調節できるなど利便性が高いためである。
脂溶性のCoQ・10およびβ‐カロチンは、予め植物性油、動物性油といった非親水性物質の可溶化媒体に、必要であれば加熱操作を加えて溶解したのち、乳化剤、分散剤もしくは界面活性剤などを用いて水性液体中に分散・乳化させて用いられる。そのために使用できる可溶化媒体として、例えば大豆油、サフラー油、オリーブ油、胚芽油、ヒマワリ油、牛脂、イワシ油などの動植物油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトールなどの多価アルコール、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどの界面活性剤などが挙げられる。このような可溶化媒体に溶解させたβ-カロチンおよびCoQ・
10は、水性液体に加えて撹拌しながら、あるいは超音波ホモジナイザーなどを使用して所望する粒子径で水性液体中に均一に分散させることが望ましい。
脂溶性のCoQ・10およびβ‐カロチンを有機酸の存在下で、水溶性物質の水溶液中に分散・乳化して、CoQ・10およびβ‐カロチンを含有する保護コロイドを形成させてもよい(特開平2003−55203)。このものは、高圧ホモジナイザーなどを使用して微細
な粒子に分散・乳化することにより、均一で安定な水性エマルジョンの形態として存在する。そのために使用される水溶性物質には、寒天、ゼラチン、キサンタンガム、アラビアガム、カゼイン、CMCナトリウム、ポリビニルピロリドン、デンプン、コーンファイバー
、グラーガム、ペクチンなどの植物由来の水溶性多糖類などが例示される。
水に難溶性のCoQ・10およびβ‐カロチンは、リポソームなどで被覆してこれを水性液体中に分散・乳化させて用いてもよい(上記の特許文献3)。リポソームとしては、リン脂質二重層および/または糖脂質が用いられる。そのためのリン脂質として、卵黄、大豆由来のリン脂質またはその他の改質リン脂質などを使用できる。リポソームの製造方法などは周知の技術である。
次いでこれを酵素処理ルチンおよびビタミンCの必要量と混合する。混合順序は特に問わないが、ビタミンCは、特に空気酸化を受けやすいため最後に添加するなど考慮することが望ましい。このようにして得られる溶液状態の栄養組成物は安定性に優れており、長期間の保存中でも、水に難溶性であるCoQ・10、β‐カロチンの析出などフロック(凝集塊)の生成はほとんど認められない。
本発明に係るもう一つのCoQ・10含有栄養組成物は、β‐カロチン 1重量部に対
し、酵素処理ルチンを1〜400重量部、好ましくは10〜200重量部、より好ましくは10〜100重量部含むことを特徴とする。β‐カロチン単独でもCoQ・10の安定化作用を有するが、その作用をさらに増強する酵素処理ルチンを、その効果が認められる有効な範囲の量
を添加する。
本発明に係る栄養組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で他の物質を配合してもよい。例えば、各種アミノ酸、ビタミン類、ミネラルなどの栄養素を加えて栄養滋養の強化を図ってもよい。さらに栄養組成物の安定化および品質向上のために分散剤および乳化剤などの安定剤、甘味料、増量剤、香味料などの各種成分を1種または2種以上を必要に応じて配合できる。具体的には水飴、ぶどう糖、マルトース、砂糖、異性化糖、パラチノース、トレハロース、ステオビオシド、アセスルファムK、スクラロース、L-アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル、グリチルリチンなどの甘味料;クエン酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、グルコン酸などの各種有機酸塩類;各種フレーバーなどの香味料;デキストリン、デンプン、乳糖、結晶セルロース、D−マンニトールなどの増量剤;ヘスペリジン、酵素処理ヘスペリジンなどの強化剤などを配合してもよい。さらに一般に食品、医薬品に使用されている各種添加物、例えばレシチン、アラビアガム、ソルビトール液、糖液などの賦形剤、着色料、pH調製剤など任意の成分を含めることができる。
上記のようにして調製される本発明の栄養組成物の保存容器と保存方法としては、特に限定されないが、低温保存、密閉容器による嫌気的な保存、遮光保存などが望ましい。
栄養組成物の利用
本発明に係る栄養組成物について、以下、好ましい利用態様を例示するが、該栄養組成物の用途がこれらに限定されるものではない。
上記栄養組成物は、一般食品、健康食品、機能性食品、栄養強化食品、心疾患などの治療用薬剤として、あるいはビタミン作用などといった薬効を有する薬剤原料としての用途が挙げられる。本発明に係る栄養組成物は、水などへの溶解度が良好であるため、特に各種飲料、調味液などの液状物に添加することができる。
本発明に係る栄養組成物は、これら含有する4栄養成分のそれぞれの生理作用に加えて抗酸化作用をも有する。したがって、本栄養組成物を食品、医薬品などに添加されれば、上記効果に加えて食品、医薬品などの酸化防止効果も期待できる。さらに本栄養組成物を食品、医薬品などに添加することにより異味異臭の発生、変色または毒性物質の生成などを有効に防止し、その品質あるいは栄養価を維持することができる。
本発明の栄養組成物を添加する食品の種類や形態、添加量などは任意に選択できる。該栄養組成物を、食品に含有させることより、不足しがちな栄養素の補給が容易となる。そのような食品としては、流動食、スープ類、清涼飲料水、各種のお茶(緑茶、紅茶、ウーロン茶)飲料、ジュース類、乳飲料、健康ドリンク飲料、ゼリー状飲料などの液状食品、パン、菓子、うどんなどの麺類、クッキー、せんべいなどの炭水化物系食品、ふりかけ、バター、ジャムなどのスプレッド類などの形態が挙げられる。健康食品、機能性食品として利用する場合には、一日当たりの投与量が管理できる形にするのが望ましい。
栄養素補給または健康増進を目的とする飲食物(健康食品、機能性食品、栄養強化食品等を含む)などにおいても、品質保持などのために種々の添加剤、栄養素などを配合することができる。一般飲食物、嗜好品、医薬品などに本発明の栄養組成物を使用するには、その製品が完成するまでの工程のうち適切な段階で、この栄養組成物を添加することができる。例えば、栄養組成物を添加する際に他の配合成分と混合、混和、混捏してもよく、飲食物などに栄養組成物を浸透、溶解、散布、塗布、噴霧、注入などしてもよい。液状食品の場合、最初から液状食品として調製してもよいが、粉末またはペースト状で調製し、所定量の本栄養組成物を含む水性液体に溶解してもよい。
医薬品として利用する場合、上記栄養素4成分それぞれの生理作用に基づく様々な薬効を活かす利用形態が考えられる。例えば相対的に量の多い酵素処理ルチンによるビタミンPの生理作用を保持した形で、CoQ・10の心疾患治療作用も期待できるため、従来の血管強化用など循環器疾患の治療用医薬品の成分原料としても使用しうる。このような医薬品としてビタミンP強化剤;循環器系疾患、感受性疾患等の予防剤または治療剤(抗感受性疾患剤);などが挙げられる。
上記各種疾患の治療用として経口投与される医薬品などにおいては、薬効のほか、品質保持面より紫外線吸収、酸化防止、着色・退色の防止も強化される。そのような医薬品としては、例えば、経腸栄養剤、補助栄養剤、水薬、シロップ剤などが挙げられる。
本発明の栄養組成物に関わるその他の利用態様として、抗酸化溶液として肉、魚などの生鮮食品の保存用、化粧品、動物用食品、酪農用飼料などの用途も挙げられる。
食品などに、本発明の栄養組成物を添加する代わりにコエンザイムQそのものを添加するときは、ビタミンCをさらに添加する、しないいずれの場合においてもβ−カロチンおよび酵素処理ルチンを最終的に上記の割合となるように添加してもよい。このようにしても、食品中に共存するビタミンCによる作用を抑制してコエンザイムQの安定化を図った食品などを得ることができる。
コエンザイムQの安定化方法
本発明は、食品、医薬品におけるCoQ・10の安定化方法を提供する。すなわち、コエンザイムQとビタミンC類とが存在する水性液体の系において、コエンザイムQ 100重量部に対し、カロチノイドを1〜100重量部、酵素処理ルチンを10〜2000重量部の割合で
含めることによるコエンザイムQの安定性を増す方法である。前記の水性液体の系として
、食品、医薬品、化粧品、飼料などが挙げられる。この方法においてコエンザイムQとしてCoQ・10、ビタミン類としてビタミンC、カロチノイドとしてβ‐カロチンが好ましい。
CoQ・10とビタミンCが共存している状況にあってもカロチノイドおよび酵素処理ルチンが含まれており、しかもこれらの栄養素が上記の比率にある場合に、CoQ・10の安定性が顕著に改善する。
本発明に係る栄養組成物を食品または医薬品に配合するか、あるいは本発明の方法に基づき、これら食品や医薬品において添加したCoQ・10の安定性は著しく改善され、併せて抗酸化作用、退色防止、風味改善作用なども発揮される。
さらに本発明に係る栄養組成物を含む飲食物または医薬品を経口的に摂取することにより、ビタミンP作用を示すルチン、CoQ・10、ビタミンCおよびカロチノイドという栄養素を同時に摂取することができる。したがってこれらの栄養素の不足を補って、体内でのそれぞれの生理作用を期待することができる。
〔実施例〕
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、かかる実施例によりなんら限定されるものではない。
β‐カロチンおよび酵素処理ルチンによるCoQ・10の安定化作用
CoQ・10 1重量部に対し、ビタミンC、β‐カロチンおよび酵素処理ルチンを一定の比率で含む水溶液を調製し、それぞれ光照射下におけるCoQ・10の安定性を調べた。
クエン酸緩衝液(pH3.0)中で、最終濃度としてそれぞれCoQ・10水溶液(日清ファルマ(株)から購入したCoQ・10水溶化液10S)0.12%(CoQ・10として120ppm)、β‐カロチン調製品0.1%(β-カロチンとして10ppm)、ビタミンC1000ppmおよびα-グルコシルルチンPが300、600、1200ppmとなるように溶解して試料水溶液を調製した。
室温で、照射光源から上記試料の面まで一定の距離に保ち、5000〜8000ルクスの照度にて白色蛍光灯で照射された状態にて、6日間貯蔵した。その後試料の一部を取り出し、試料中のCoQ・10の残存量を高速液体クロマトグラフィーにて測定し、貯蔵後のCoQ・10残存率(%)を求めた。
・高速液体クロマトグラフィーの測定条件
カラム:ODSC18(資生堂)
カラム温度:35℃
溶媒:メタノール/無水エタノール65/35
流速:1.0/分
検出器:275nm
得られた結果を図1に示す。
本実験条件下で、CoQ・10のみでは(図中、BLで示す)、残存率10%であった。す
なわち、CoQ・10は、光に対して極めて不安定であり、刻々分解されてしまうことがわかる。これとともにビタミンCが共存すると、CoQ・10残存率はさらに5%まで低下
した(図中、V.C100)。光に弱いCoQ・10に対し、酵素処理ルチン、β‐カロチン単独の添加でもそれぞれCoQ・10の保護作用が認められた。単独使用では、酵素処理ルチンよりもβ‐カロチンの方が少量の使用でもCoQ・10をより有効に保護した。しかし、両者の併用でCoQ・10の残存率はさらに改善されたことは驚くべき結果であった。しかもβ‐カロチンと酵素処理ルチンとの相乗的保護作用は、ビタミンCが共存する場
合でも認められた。
β‐カロチンはCoQ・10と同様、疎水性分子であることから、水性液体の中でCoQ・10の安定化のために使用することには限界があると考えられる。水に易溶性である酵素処理ルチンが、β‐カロチンのそのような作用を相乗的に向上させることは、飲料系もしくは液状の食品ではとりわけ有用である。
β‐カロチンおよび酵素処理ルチンによるCoQ・10の安定化作用
実施例1と同様に、CoQ・10 1重量部に対し、ビタミンC、β‐カロチンおよび
酵素処理ルチンを一定の比率で含む水溶液を調製し、それぞれ光照射下におけるCoQ・10の安定性を調べた。
クエン酸緩衝液(pH3.0)中で、最終濃度としてそれぞれCoQ・10水溶液0.12%(
CoQ・10として120ppm)、β‐カロチン調製品0.1%(β-カロチンとして10ppm)、ビタミンC100ppmおよびα-グルコシルルチンPが50、100ppmとなるように溶解して試料水溶液を調製した。
室温で、照射光源から上記試料の面までの距離を一定に保ち、2000〜5000ルクスの照度にて白色蛍光灯で照射された状態にて、5日間貯蔵した。その後試料の一部を取り出し、試料中のCoQ・10の残存量を高速液体クロマトグラフィーにて測定し、貯蔵後のCo
Q・10残存率(%)を求めた。
高速液体クロマトグラフィーの測定およびその条件は、実施例1の場合と同様である。得られた結果を図2に示す。
酵素処理ルチンを単独で添加した場合、少量の使用でもCoQ・10保護作用は、ビタミンCが存在しない場合、する場合いずれにおいても、若干であるが認められる。しかし
、その安定化作用は使用量を多くすると頭打ちとなる傾向が認められた。この場合もβ‐カロチンとの併用で、CoQ・10保護作用の相乗効果が示された。本実験から明らかに、β‐カロチンによるCoQ・10の安定化作用を低濃度のルチン存在でも発揮されることが判明した。
ビタミンCが、リポソームで保護された還元型CoQ・10を空気酸化から守る安定化作用が示したことが報告されている(上記の特許文献3)。この場合、上記実施例1および2と異なり、光照射はされていないため、光の存在がビタミンCの作用を変更する可能性がある。
コエンザイムQ10(CoQ・10)、ビタミンC、β‐カロチンおよび酵素処理ルチンを含む清涼飲料水(その配合組成を表1に示す)を調製した。この清涼飲料水は、含有するCoQ・10が長期間にわたり安定に保たれたことから、CoQ・10の補給剤として好適な清涼飲料水である。
Figure 2005124482
CoQ・10、ビタミンC、β‐カロチンおよび酵素処理ルチンを含むゼリー(その配合組成を表2に示す)を調製した。このゼリーは、含有するCoQ・10が長期間にわたり安定に保たれたことから、CoQ・10の補給剤として好適なゼリーである。
Figure 2005124482
図1は、CoQ・10がビタミンCと共存する場合における、酵素処理ルチンおよびβ‐カロチンによるCoQ・10の安定化効果を示す。CoQ・10量は6日間光照射下での残存率(%)で示される。図中、BL:ブランク(すなわち、CoQ・10のみ)、RutまたはR:酵素処理ルチン、V.C:ビタミンCである。 図2は、CoQ・10がビタミンCと共存する場合における、酵素処理ルチンおよびβ‐カロチンによるCoQ・10の安定化効果を示す。CoQ・10量は5日間光照射下での残存率(%)で示される。図中、BL:ブランク(すなわち、CoQ・10のみ)、RutまたはR:酵素処理ルチン、V.C:ビタミンCである。

Claims (6)

  1. コエンザイムQ10(CoQ・10)100重量部に対して、ビタミンCを10〜1000重量部
    、β‐カロチンを1〜100重量部、酵素処理ルチンを10〜2000重量部含んでなるCoQ・
    10含有栄養組成物。
  2. β‐カロチン 1重量部に対して、酵素処理ルチンを10〜200重量部含むことを特徴とす
    る請求項1に記載のCoQ・10含有栄養組成物。
  3. 請求項1または2に記載のCoQ・10含有栄養組成物を含むことを特徴とする食品。
  4. 請求項1または2に記載のCoQ・10含有栄養組成物を含むことを特徴とする医薬品。
  5. コエンザイムQとビタミンC類とが存在する水性液体の系において、コエンザイムQ 100重量部に対し、カロチノイドを1〜100重量部、酵素処理ルチンを10〜2000重量部の割
    合で含めることによるコエンザイムQの安定性を増す方法。
  6. 前記の系が、食品または医薬品である請求項5に記載の方法。
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