JP2005122940A - 電池及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 基体とその片面に設けられた電池層とを有する長尺の電池体が扁平状に捲回又はつづら折りされてなる電池において、電池体の屈曲部での厚みの増加が少なく、その結果、薄型化を可能にする電池及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 電池層8は、正極と、負極と、これらの間の固体電解質とを有する。基体1の、電池層8が設けられた面とは反対側の面にノッチ2を形成する。ノッチ2の部分で折り曲げて電池体10を捲回又はつづら折りする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電池に関する。特に、正極と負極との間に固体電解質を備える電池に関する。
密閉型二次電池は、一般に、両面に活物質が塗布された正極集電体と、セパレータと、両面に活物質が塗布された負極集電体とがこの順に重ね合わされた帯状の電池要素を円筒状に捲回し、電解液とともに缶内に収納して構成される。
二次電池を搭載した電子機器の小型化要求に伴って、電子機器内での二次電池の収納効率を向上させるために、上記の円筒型電池に代わり、薄い角柱型(扁平状)の角型電池が提案されている。
角型電池では、円筒型電池と異なり、上記の帯状の電池要素を折り曲げて扁平状に捲回するか、又はつづら折りする必要がある。この角型電池では、電池要素が折り曲げられて形成される屈曲部での電池要素の曲率半径はきわめて小さくなる。この結果、屈曲部で活物質にひび割れや破断を生じたり、活物質が集電体から剥離し脱落するなどの問題が生じることがある。
このような問題を解消するために、特許文献1には、捲き芯部に短冊状電極を配し、その周りに帯状の電池要素を捲回した角型電池が提案されている。これによれば、捲き芯部分に短冊状電極を配することにより、曲率半径が相対的に小さな屈曲部をなくすことができるので、活物質のひび割れ、破断、剥離、脱落などの問題を解消できる。しかも、捲き芯部分も電池として機能させることができるので、体積あたりのエネルギー密度の低下を防止することができる。
また、特許文献2には、集電体に対して内側の活物質層の屈曲部での厚みを、屈曲部以外の部分での厚みに比べて薄くした密閉型電池が開示されている。これにより、曲率半径が小さな屈曲部においても、活物質のひび割れ、破断、剥離、脱落などの問題を解消できる。
特開平7−85885号公報 特開2003−45474号公報
しかしながら、特許文献1の角型電池では、帯状の電池要素の他に短冊状電極を作製し、更に、短冊状電極を捲き芯として捲回する必要がある。しかも、捲き芯部分の短冊状電極と、その周囲に捲回された帯状の電極とを電気的に接続するという工程も必要である。従って、製造工程が増大し且つ煩雑となり、生産性に劣る。更に、捲き芯の周りに捲回するので、得られる電池の厚みが厚くなりやすい。
また、特許文献2の密閉型電では、活物質層のうち厚みの薄い部分で集電効率が低下するので、高容量で体積エネルギー密度(体積あたりのエネルギー容量)が大きな電池を得ることができない。
近年、基体上に、負極集電体、負極活物質、固体電解質、正極活物質、正極集電体からなる電池層を、蒸着やスパッタなどの真空成膜法により形成したリチウムイオン二次電池が検討されている。この構成では、薄型で高体積エネルギー密度を実現でき、セパレーターも不要になることが期待されている。
このような小型で高容量が要求される二次電池では、特許文献2の手法によって生じる集電効率の低下は大きな課題である。
また、真空成膜法により形成された各層が薄いため、活物質層を特定部分のみ薄くする特許文献2の手法は採用できない可能性が高い。
更に、基体としてはポリイミドなどの靭性の高い高分子材料からなるシートが用いられるために、捲回やつづら折りして折り曲げること自体が困難であるという課題も有している。
この点につき図10を用いて説明する。図10は、基体と、この片面に形成された電池層(イオンの交換に関与する全ての層を含み、電池としての機能を発揮する構成単位をまとめて以後「電池層」と呼ぶ)とからなる電池体10をピッチP92で折り曲げて捲回する場合を示す。図10に示すように、電池体10を折り曲げた場合、図10の紙面左右方向の両端の屈曲部12を除く中央部分での厚みをt90、その右側の屈曲部12での厚みをt95とすると、理想的にはt90≒t95であるが、基材がポリイミド等のように靭性の高い材料からなる場合にはt90<t95となってしまう。
この屈曲部12での膨らみは、以下のような原因で発生すると考えられる。すなわち、電池体10を屈曲部12で折り曲げようとすると、基体内の内側に圧縮応力Finが発生し、外側に引っ張り応力Foutが発生する。基体の靭性が高い場合には、基体がこれらの応力に容易に降伏せず、これらの反力が内部応力として残留する。従って、電池体10を十分に変形させることができず、その結果、両端の屈曲部12に厚い膨らみが形成されてしまう。
この厚みt90と厚みt95との差は、捲回数が増加するにしたがって積算され、数百回も捲回すると、両端部が非常に厚くなり、電池の薄型化に対して大きな障害となる。
本発明は、上記の従来の二次電池が有していた問題を解決し、屈曲部での厚みの増加が少なく、その結果、薄型化を可能にする電池及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明にかかる電池は、基体と、前記基体の片面に設けられた電池層とを有する長尺の電池体が扁平状に捲回又はつづら折りされてなる。前記電池層は、正極と、負極と、これらの間の固体電解質とを有し、前記基体の前記電池層が設けられた面とは反対側の面にノッチが形成されている。
また、本発明にかかる電池の製造方法は、長尺の基体の第1面に、正極と、負極と、これらの間の固体電解質とを有する電池層を形成して電池体を得る工程と、前記基体の前記第1面とは反対側の第2面にノッチを形成する工程と、前記電池体を扁平状に捲回又はつづら折りする工程とを有することを特徴とする。
本発明によれば、基体の電池層が設けられた面とは反対側の面にノッチが設けられている。このノッチによって、屈曲部に残留する内部応力を緩和することができ、屈曲部での厚みの増加を抑制することができる。従って、薄型の扁平状角型電池を得ることができる。
また、電池層を構成する層の厚みを部分的に薄くするなどの手段が必要ないため、上記特許文献2が有する集電効率の低下という問題を生じない。
更に、電池層が固体電解質を有することにより、セパレータや電解液が不要となり、電池の一層の小型化が容易になる。また、電解液の漏出防止のための構造が不要になり、また、安全性が向上する。
かくして、本発明によれば、体積エネルギー密度が大きく、小型、薄型の電池を得ることができる。
図1は本発明の一実施形態にかかる電池を構成する電池体の長手方向に沿った断面図である。電池体10は、長尺の基体1と、基体1の片面に設けられた電池層8とからなる。電池層8は、正極集電体3、正極活物質4、固体電解質5、負極活物質6、負極集電体7をこの順に含む。図1では、電池層8の正極集電体3側の面に基体1が設けられているが、負極集電体7側の面に基体1が設けられていても良い。
負極活物質6は電子を負極集電体7に対して放出し酸化され、正極活物質4は正極集電体3から電子を受け取り還元される。負極集電体7と正極集電体3との間に抵抗負荷を設けることで、この抵抗負荷に電流が流れる。固体電解質5は、正極活物質4と負極活物質5との間のイオンの移動を可能にする役目を負っている。このような電池層8の動作は、電池として一般的に周知である。
2は、基体1の電池層8が設けられた面と反対側の面に形成されたノッチである。ノッチ2は、基体1の幅方向(図1の紙面の垂直方向)に沿って伸びた切り込み又は溝である。
図1に示した長尺の電池体10を略一定ピッチで順に折り曲げて捲回又はつづら折りすることにより、薄い角柱型(扁平状)の本発明の電池が得られる。
図2は、電池体10を薄い角柱型(扁平状)に捲回してなる角型電池の捲回中心部を示した断面図である。電池体10がピッチP92で順に同じ側に折り曲げられて捲回されている。このとき、屈曲部12内にノッチ2が位置するように、ノッチ2の形成位置、ピッチP92、及び折り曲げ位置が設定される。図2に示すように、屈曲部12内にノッチ2が位置しているので、屈曲部12の部分での電池体10の厚みが薄い。従って、電池体10を容易に折り曲げることができる。しかも、屈曲部12で電池体10の厚みが薄いために、電池体10の内側の圧縮応力Fin及び外側の引っ張り応力Foutに対する反力も、図10に示した従来の電池に比べて小さくなる。更に、図2では、ノッチ2が形成された面を内側にして折り曲げられているので、屈曲部12での電池体10の曲率半径が大きくなり、残留内部応力を更に小さくすることができる。その結果、図2の右側の屈曲部12での厚みを屈曲部12を除く中央部分での厚みt90とほぼ同等にすることができる。従って、屈曲部12に相当する両端での膨らみがほとんどない、薄型の角型電池を得ることができる。
基体1の長手方向と平行な断面におけるノッチ2の断面形状は特に限定はない。例えば、図3(A)に示すような三角形状(又はV字状)、図3(B)に示すような四角形状、図3(C)に示すような台形状、図3(D)に示すような円弧状(又はU字状)等であっても良い。また、図3(E)に示すように複数のノッチ(この例では三角形状のノッチ)2を接近又は隣接するように連続して形成しても良い。図3(A)〜(E)に示した断面形状を有するノッチ2はいずれも比較的容易に形成することができる。
ノッチ2は、電池体10が折り曲げられる部分(屈曲部12)内に少なくとも存在するように配置される。これにより、本発明の上記効果が有効に発揮される。電池体10の長手方向において、屈曲部12を構成する全範囲にわたってノッチ2が存在する必要はないが、図2に示すように全範囲にわたってノッチ2が存在すると、残留内部応力を低減でき屈曲部12での厚みをより小さくすることができるので好ましい。屈曲部12以外の位置には、ノッチ2は存在していても、していなくても良い。
電池体10を折り曲げる場合、ノッチ2が形成された面を内側にしても良いし、外側にしても良い。図4(A)〜(C)は、連続する複数の三角形状ノッチ2が形成された面を内側にして、電池体10を矢印方向に折り曲げる様子を順に示した概念図である。また、図5(A)〜(C)は、連続する複数の三角形状ノッチ2が形成された面を外側にして、電池体10を矢印方向に折り曲げる様子を順に示した概念図である。
図4のように、ノッチ2が形成された面を内側にして電池体10を折り曲げる場合には、図5の場合に比べて、電池層8の曲率半径が大きくなるので、電池層8を構成する各層にひび割れ、破断、剥離、脱落などの問題が生じる可能性を一層低減できる。従って、捲回型電池を作製する場合には、ノッチ2が形成された面を内側にして電池体10を捲回することが好ましい。
図5のようにノッチ2を外側にして折り曲げる場合、図5(C)の状態において基体1とは反対側の表面を構成する電池層8の集電体同士が対向し接触する。この表面の集電体を保護するために、集電体が互いに対向する領域に保護材料を介在させても良い。また、電池体10を図5のように捲回する場合には、基体1の捲回中心に相当する部分には電池層8を形成しないことにより、集電体同士の接触を避けても良い。
本発明の電池は、図2のように電池体10が捲回されている場合に限られず、図6のように電池体10が一定ピッチで順に逆側に折り曲げられて(即ち、つづら折りされて)いても良い。この場合も、少なくとも屈曲部12にはノッチ2が存在している。図6において、上下の矢印は電池体10をつづら折りする際に電池体10に付与する圧縮荷重の向きを示す。
図7に示すように、電池体10が扁平状に捲回又はつづら折りされてなる板状構造体15の幅方向(図2又は図6の紙面の垂直方向)の両端に、電極取り出しのため一対の外部電極17を設けても良い。外部電極17の材料としては、ニッケル、亜鉛、スズ、はんだ合金、導電性樹脂などの各種導電材料を用いることが出来る。その形成方法としては、溶射、メッキ、塗布などを用いることが出来る。一方の外部電極17には正極集電体3が電気的に接続され、他方の外部電極17には負極集電体6が電気的に接合される。このとき、一対の外部電極17,17が相互に絶縁されるように、正極集電体3及び負極集電体7の幅方向の形成領域をパターニングしておく必要がある。
電池層8を構成する正極活物質3の材料としては、一般に正極活物質として利用される公知の材料を使用できるが、これ以外に、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2)などのリチウムイオン二次電池の正極活物質として用いられる材料を使用することもできる。
負極活物質6の材料としては、一般に負極活物質として利用される公知の材料を使用できるが、これ以外に、グラファイトカーボン等の炭素系材料、シリコン又はシリコンを含む化合物又はこれらの混合物、金属リチウム、リチウム遷移金属窒化物、リチウム合金などのリチウムイオン二次電池の負極活物質として用いられる材料を使用することもできる。
正極集電体2及び負極集電体7の材料としては、白金、パラジウム、又はこれらの合金、金、銀、アルミニウム、銅、ニッケル、ITO(インジウム−スズ酸化物)等の電子導電性を有する材料を使用することができる。
固体電解質4の材料としては、リチウムイオン二次電池を構成する場合には、イオン導電性を有するLi3PO4に代表されるLi含有物などを用いることができる。Li3PO4やLi3PO4に窒素を混ぜて(あるいはLi3PO4の元素の一部を窒素で置換して)得られる材料(LiPON:代表的な組成はLi2.9PO3.30.36)などはリチウムイオン伝導性に優れるので好ましい。同様に、Li2S−SiS2、Li2S−P25、Li2S−B23などの硫化物固体電解質も有効である。更にこれらの固体電解質にLiIなどのハロゲン化リチウムや、Li3PO4等のリチウム酸素酸塩をドープした固体電解質も有効である。本発明の固体電解質4の材料は上記に限定されず、その他の材料を用いることも出来る。
基体1は、ポリイミド、アラミド、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの高分子材料からなるシート、アルミナ、ニッケル、ステンレス鋼などからなる金属箔、ガラスなどの電気絶縁基板、シリコンなどの半導体基板などを用いることができる。但し、捲回又はつづら折りすることができる程度の可撓性を有している必要がある。また、電池体10を捲回した場合や外部電極17(図7参照)を形成した場合に、正極と負極との絶縁性を確保する必要がある。これらの理由により、ポリイミド、アラミド、PEN、PET等の絶縁性の高分子フィルムを用いることが好ましい。
次に、本発明の電池の製造方法の一実施形態を説明する。本発明の電池は、長尺の基体1の一方の面(第1面)に電池層8を形成して電池体10を得た後、この電池体10を略一定ピッチで折り曲げて扁平状に捲回又はつづら折りして製造される。
電池層8の形成は、基体1上に電池層8を構成する各層(薄膜)を順に真空成膜法により形成することにより行うことが好ましい。真空成膜法より電池層8を構成する各層の厚みを薄くすることができ、最終的に薄型の電池を得ることができる。また、電池体10を折り曲げたときに、電池層8を構成する各層内に残留する内部応力を小さくできるので、各層のひび割れ、破断、剥離、脱落などの問題が生じる可能性を低減できる。例えば、長尺の基体1を走行させながら、その片面に真空成膜法により薄膜を連続的に形成することができる。真空成膜法としては、例えば、蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法などを挙げることができる。このような方法により、所望する薄膜を容易に効率よく形成できる。いずれを選択するかは、形成しようとする薄膜の種類に応じて決定すればよい。
電池層8を構成する各層(薄膜)を形成する際に、薄膜の形成領域を制限(パターニング)しても良い。このパターニング方法としては、マスキングテープ法、オイルマスキング法、メタルマスキング法などの周知の方法を用いることができる。
得られた電池体10を、図2に示すように略一定ピッチで同じ側に折り曲げて扁平状に捲回し、又は図6に示すように略一定ピッチで交互に逆側に折り曲げてつづら折りして、薄い角柱型(扁平状)構造体を得る。必要に応じて、この板状構造体に加圧プレスを施して、更に厚みを薄くし、厚さ寸法精度を向上させ、形状を整えても良い。更に、必要に応じて、外部電極を付与したり、外装や印刷を施したりすることもできる。
基体1の他方の面(第2面)へのノッチ2の形成は、電池層8の形成前、又は電池層8の形成後であって電池体10を捲回又はつづら折りする前のいずれであっても良い。しかし、電池層8を真空成膜法によって形成する場合には、基体1に電池層8を形成した後にノッチ2を形成するのが好ましい。電池層8を形成する前にノッチ2を形成すると、ノッチ2を形成した面とは反対側の面のノッチ2に対応する部分が窪んでしまい、その後、この面に真空成膜法によって薄膜を形成すると、均一な薄膜形成が困難になることがあるからである。
ノッチ2の形成方法としては、刃物により基体1の表面を切削除去する切削法、加熱した型を基体1の表面に押し当てて熱変形させる熱変形法、エッチング法(ドライエッチング、ウェットエッチングのいずれでも可能)などを用いることができる。切削法においては刃物の形状を、熱変形法においては型の形状を、エッチング法においてはエッチング条件を、それぞれ適切に設定することにより、所望する断面形状(図3(A)〜(E)参照)を有するノッチ2を形成することができる。
次に本発明の一実施例を説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
まず、基体1上に電池層8を構成する各層を真空蒸着法で形成した。使用した真空蒸着装置の概略構成を図8に示す。
真空成膜装置100は、隔壁121により上下に仕切られた真空槽101を備える。隔壁121より上側の部屋(搬送室)122には、捲き出しロール111,円筒状のキャンロール113,捲き取りロール114,搬送ロール112a,112bが配置される。隔壁121より下側の部屋(薄膜形成室)123には、第1薄膜形成源135及び第2薄膜形成源136が配置されている。隔壁121の中央部にはマスク124が設けられ、マスク124の開口を介してキャンロール113の下面が薄膜形成室123側に露出している。真空槽101内は、真空ポンプ116により所定の真空度に維持される。
捲き出しロール111から捲き出された長尺の基体1は、搬送ロール112a、キャンロール113、搬送ロール112bによって順に搬送され、捲き取りロール114に捲き取られる。第1薄膜形成源135及び/又は第2薄膜形成源136から生成された原子、分子、又はクラスタなどの粒子103が隔壁121のマスク124を通過して、キャンロール113上を走行している基体1の表面上に付着して薄膜106を形成する。搬送ロール112a,112bは、基体1の走行を安定化させる。マスク124は、基体1上に形成される薄膜106の位置を限定し、また、その厚みが不均一になるのを防ぐ。
第1薄膜形成源135及び第2薄膜形成源136は、図示しない電子ビーム源(電子銃)を備え、これからの電子ビームが蒸着源(ソース)に衝突してこれを溶融させる。第1薄膜形成源135及び第2薄膜形成源136のうちのいずれか一方のみを使用して蒸着することもでき、また、両者を同時に使用して蒸着することもできる。第1薄膜形成源135及び第2薄膜形成源136を同時に使用して蒸着する場合には、これらからの粒子103が基体1に達するまでの間に互いに混ざり合い、基体1上に合金膜に近い状態の薄膜106を連続的に形成することができる。
基体1として、厚さ30μmの帯状のポリイミドフィルムを用いた。真空槽101内を真空ポンプ116によって1.3×10-3Pa〜1.3×10-4Paに維持した。基体1を、毎分2cmの速度で走行させ、この上に必要な層を順次成膜した。
最初に、正極集電体3として白金を蒸着した。蒸着源に使用した白金の純度は99.9%である。これを第1薄膜形成源135及び第2薄膜形成源136のうちのいずれか一方にセットして、基体1上に厚み1μmの白金層を形成し、捲き取りロール114に捲き取った。
正極集電体3を形成した基体1を捲き出しロール111側にセットして、正極集電体3の上に正極活物質4としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)を蒸着した。第1薄膜形成源135にリチウムを、第2薄膜形成源136にコバルトをそれぞれセットし、十分に減圧した後、マスク124の近傍に酸素ガスを導入しながらリチウムとコバルトとを同時に蒸着した。
この際の成膜条件は、形成される薄膜がコバルト酸リチウムの組成を有するように、リチウムとコバルトの各蒸着レートおよび導入される酸素の流量を予め調べて決めた。これらの条件は、真空槽101の大きさや形状、蒸着源と電子銃との位置関係、蒸着源とキャンロール113上の基体1との距離などで変わってくるため、使用する蒸着装置ごとに調整しなければならない。このようにして厚み1μmのコバルト酸リチウムからなる正極活物質4を形成し、基体1を捲き取りロール114に捲き取った。
正極活物質4を形成した基体1を捲き出しロール111側にセットして、正極活物質4上に固体電解質5としてLi3PO4を蒸着した。第1薄膜形成源135及び第2薄膜形成源136のうちのいずれか一方の蒸着源にLi3PO4をセットし、マスク124の近傍に窒素ガスを導入しながら蒸着を行った。このようにして厚み1μmの固体電解質4を形成し、基体1を捲き取りロール114に捲き取った。
固体電解質5を形成した基体1を捲き出しロール111側にセットして、固体電解質5上に負極活物質6としてリチウムを蒸着した。蒸着源に使用したリチウムの純度は99.9%である。これを第1薄膜形成源135及び第2薄膜形成源136のうちのいずれか一方にセットして、厚み1μmのリチウム薄膜を形成し、捲き取りロール114に捲き取った。
負極活物質6を形成した基体1を捲き出しロール111側にセットして、負極活物質6上に負極集電体7として白金を蒸着した。蒸着条件は正極集電体3の形成時と同一とした。
以上の工程を経て、基体1の片面に、正極集電体3、正極活物質4、固体電解質5、負極活物質6、負極集電体7がこの順に形成された電池層8を備えた、図1に示す長尺の電池体10を得た。各層の厚みは、基体1が30μm、電池層8を構成する各層がいずれも1μm、電池層8が5μmである。
次に、基体1の電池層8が形成されていない側の表面にノッチ2を形成した。ノッチ2の形成に使用した装置の概略構成を図9に示す。
略「ハ」字状に設置された一対のガイド152a,152b上を、長尺の電池体10が、基体1側の面を一対のガイド152a,152b側にして矢印155方向に摺動する。一対のガイド152a,152bの間の開口153の下方にて円筒形状のブレード(例えば円筒砥石)150が回転している。ブレード150の回転中心軸は電池体10の幅方向と平行である。ブレード150は上下方向に昇降することができ、上昇したとき電池体10の基体1の表面と接触して、基体1に幅方向に延びたノッチ2を形成することができる。電池体10の走行速度、ブレード150の上昇のタイミング、ブレード150の上死点での停止時間、ブレード150の半径などを調整することにより、所望する断面形状を有するノッチ2を形成することができる。
実施例では、基体1の表面に、ピッチ2cmで、深さ15μm、電池体10の長手方向(図9の紙面左右方向)の幅が3mmのノッチ2を形成した。
次に、ノッチ2を形成した電池体10を、基体1側を内側にして2cmのピッチでノッチ2の部分で100回同じ側に折り曲げて扁平状に捲回した。
得られた捲回型の扁平角型リチウムイオン2次電池の厚みは3.5mmであり、両端の電池体10の屈曲部12で厚みが増大することはなく、上下の表面はほぼ平坦であった。
この扁平角型電池は薄いので、厚さ方向の外力によりわずかではあるが湾曲させることができ、このような湾曲変形の前後で充放電サイクル特性は変化しなかった。
本発明の電池の利用分野は特に限定されないが、例えば薄型、軽量の小型携帯機器の2次電池として利用することができる。
本発明の一実施形態にかかる電池を構成する電池体の長手方向に沿った断面図である。 本発明の一実施形態にかかる捲回角型電池の捲回中心部を示した断面図である。 (A)〜(E)は、本発明の電池において、基体に形成されるノッチの断面形状の例を示した断面図である。 (A)〜(C)は、本発明において、ノッチが形成された面を内側にして電池体を折り曲げる様子を順に示した概念図である。 (A)〜(C)は、本発明において、ノッチが形成された面を外側にして電池体を折り曲げる様子を順に示した概念図である。 本発明の一実施形態において、長尺の電池体をつづら折りして角型電池を製造する様子を示した概念図である。 本発明の電池の一実施形態の外観斜視図である。 本発明の一実施例において使用した真空蒸着装置の概略構成を示した側面断面図である。 本発明の一実施例において使用したノッチを形成するための装置の概略構成を示した側面断面図である。 従来のリチウムイオン二次電池が有していた課題を説明する図である。
符号の説明
1 基体
2 ノッチ
3 正極集電体
4 正極活物質
5 固体電解質
6 負極活物質
7 負極集電体
8 電池層
10 電池体
12 屈曲部
15 板状構造体
17 外部電極
100 真空成膜装置
101 真空槽
103 粒子
106 薄膜
111 捲き出しロール
112a,112b 搬送ロール
113 キャンロール113
114 捲き取りロール
116 真空ポンプ
121 隔壁
122 搬送室
123 薄膜形成室
124 マスク
135 第1薄膜形成源
136 第2薄膜形成源
150 ブレード
152a,152b ガイド
153 開口

Claims (7)

  1. 基体と、前記基体の片面に設けられた電池層とを有する長尺の電池体が扁平状に捲回又はつづら折りされてなる電池であって、
    前記電池層は、正極と、負極と、これらの間の固体電解質とを有し、
    前記基体の前記電池層が設けられた面とは反対側の面にノッチが形成されていることを特徴とする電池。
  2. 前記電池体の長手方向と平行な断面における前記ノッチの断面形状が、三角形状、四角形状、台形状、及び、円弧状のうちのいずれかを含む請求項1に記載の電池。
  3. 前記電池体が折り曲げられた屈曲部に前記ノッチが少なくとも存在する請求項1に記載の電池。
  4. 長尺の基体の第1面に、正極と、負極と、これらの間の固体電解質とを有する電池層を形成して電池体を得る工程と、
    前記基体の前記第1面とは反対側の第2面にノッチを形成する工程と、
    前記電池体を扁平状に捲回又はつづら折りする工程と
    を有することを特徴とする電池の製造方法。
  5. 前記基体の長手方向と平行な断面における前記ノッチの断面形状が、三角形状、四角形状、台形状、及び、円弧状のうちのいずれかを含む請求項4に記載の電池の製造方法。
  6. 前記電池層を真空成膜法により形成する請求項4に記載の電池の製造方法。
  7. 前記ノッチが形成された位置にて前記電池体を折り曲げる請求項4に記載の電池の製造方法。
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