JP2005120535A - 液晶ポリエステルメルトブロー不織布及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】空隙率が高く、耐屈曲性、耐熱性、耐薬品性に優れた液晶ポリエステルメルトブロー不織布及びその製造方法の提供。
【解決手段】平均繊維径が1〜30μm、不織布のCD方向の平均繊維径CV値が25%以下、平均目付けが5〜200g/m、不織布CD方向の目付けCV値が10%以下、平均通気度が5〜600cc/cm/sec、引張強度が1〜100N/25mm以上であることを特徴とする液晶ポリエステルメルトブロー不織布及びその製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、液晶ポリエステルメルトブロー不織布及びその製造方法に関し、特に不織布の目付分布を向上させた液晶ポリエステルメルトブロー不織布及びその製造方法関する。
液晶ポリエステル(以下、LCPと略すことがある。)は、機械強度、耐熱性、耐薬品性に優れているため、それによる不織布は酸、アルカリなどの腐食条件下、高温条件下での使用を前提とする用途において他の材料による不織布に対し、はるかに優れると期待されている。しかし、液晶ポリエステルは、剛直な分子が長軸方向をそろえて高度に分子配向するという性質を持ち、細長い繊維を作ってから繊維間を融着することが困難であり、できたとしても融着部での強度が低く十分な強度が得られなかった。
液晶ポリエステルの不織布の製法としては、樹脂を一般的な溶融紡糸後、延伸し、けん縮を付与しカットし、カーディグ後にニードルパンチ、ウォータパンチ、カーディグ時に融着繊維を混合して熱処理する方法、バインダーをスプレー加工する方法、あるいはスパンボンド法で紡糸し同様なシート化方法で製造する方法などが提唱されている。
すなわち、例えば、フィブリル化した液晶ポリエステル系繊維を結合した紙状物(例えば、特許文献1参照。)が開示されているが、この紙は、フィブリル間の3次元的な絡み合いが無いため充分な強度がえられていなかった。
また、強度保持された液晶ポリエステル長繊維不織布として、均一かつ緻密に自己融着させる方法(例えば、特許文献2参照。)が開示されているが、液晶ポリエステルの構造が緻密すぎて樹脂や溶媒を含浸させる用途には不向きであるという問題を有していた。また、液晶ポリエステルを用いた不織布として、溶融紡糸法により製造した液晶ポリエステル繊維を用いて不織布を製造する方法(例えば、特許文献4参照。)が開示されているが、この方法で得られた液晶ポリエステル繊維は、棒状で絡み合いに乏しいものになると考えられ、特殊なエンボスロールや液晶ポリエステルの流動開始温度前後の高温での熱処理を要するなど、長繊維の成形から最終処理までの工程が多く、成形条件が複雑で高価という欠点があるうえに、裂断長などの縦横の物性バランスが良好でないことがあった。
さらに、極細繊維からの不織布としては、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂が連続相を形成し、液晶ポリエステルが分散相を形成するようにした熱可塑性樹脂組成物からの溶融物を延伸して固化した後に、熱可塑性樹脂を溶媒で溶解して除去することにより、液晶ポリエステルが3次元的に絡合した不織布を得る方法(例えば、特許文献3参照。)が開示されているが、充分な絡合強度を有する不織布とはなっていなかった。
いずれの方法でも紡糸後に何等かの後処理を施こさない限り不織布として取り扱いが出来にくいこと、またバインダー、油剤、あるいは海成分などが不織布に残存するといった欠点があった。
これらの問題点を解決する方法として、液晶ポリエステルを溶融紡糸すると同時に、紡出物を高温高速流体で吹き飛ばし、捕集面上に集積してウエブを形成し、該ウエブにカレンダー加工及び過熱処理を施すメルトブロー法による不織布を製造するに際し、不織布の表面温度を90℃以上で溶融液晶ポリエステルの融点温度以下、線圧50kg/cm以上200kg/cm以下でカレンダー加工を行い、溶融液晶ポリエステルの融点温度−40℃以上、融点温度+20℃以下の温度で3時間以上加熱処理を行う不織布の製造方法(例えば、特許文献5参照。)が開示されているが、カレンダー加工条件等が複雑であり、得られる不織布も充分な強度を有さず、未だ、不織布としての性能を生かすための空隙率、強度保持、低異方性を同時に満たす不織布を製造することが困難であった。また、かかる不織布を製造する際、坪量をコントロールして望みの空隙率の不織布を得ることも困難であった。
特開昭60−239600号公報 特開平6−128857号公報 特開2000−119952号公報 特開平7−243162号公報 特開2002−61064号公報
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、空隙率が高く、耐屈曲性、耐熱性、耐薬品性に優れた液晶ポリエステルメルトブロー不織布及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、液晶ポリエステルを特定の方法によりメルトブローすることにより不織布の目付分布を向上させた液晶ポリエステルメルトブロー不織布が得られ、それらは空隙率が高く、耐屈曲性、耐熱性、耐薬品性に優れている不織布であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、平均繊維径が1〜30μm、不織布のCD方向の平均繊維径CV値が25%以下、平均目付けが5〜200g/m、不織布CD方向の目付けCV値が10%以下、平均通気度が5〜600cc/cm/sec、引張強度が1〜100N/25mm以上であることを特徴とする液晶ポリエステルメルトブロー不織布が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、液晶ポリエステルが、下記の繰り返し構造単位を少なくとも全体の30モル%含むものであることを特徴とする液晶ポリエステルメルトブロー不織布が提供される。
Figure 2005120535
また、本発明の第3の発明によれば、液晶ポリエステルを370〜450℃の押出機で溶融した後、370〜450℃の温度に設定したダイに送り込み、ダイノズルから吐出させると同時に、340〜450℃のエアーブローガスにより延伸して微細繊維化し、ノズルから7〜25cm離れたコレクタに捕集することを特徴とする第1又は2の発明に記載の液晶ポリエステルメルトブロー不織布の製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、エアーブローガスの温度及び流量をダイスの幅方向に分割し、各範囲で調製することを特徴とする液晶ポリエステルメルトブロー不織布の製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第3又は4の発明において、アニール処理を施してなることを特徴とする液晶ポリエステルメルトブロー不織布の製造方法が提供される。
本発明の液晶ポリエステルメルトブロー不織布は、目付分布が向上し、空隙率が高く、耐屈曲性、耐熱性、耐薬品性に優れた液晶ポリエステルメルトブロー不織布である。
本発明を以下に詳しく説明する。
(1)液晶ポリエステル
本発明において用いる液晶ポリエステル樹脂は、特に限定するものではないが、モノマー単位として、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシジカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、芳香族アミノカルボン酸などから選ばれたモノマー単位、とくには芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシジカルボン酸から選ばれたモノマー単位を構成単位とする異方性溶融相を形成する液晶ポリエステル樹脂ならびに液晶ポリエステルアミド樹脂が好ましく用いられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、たとえば4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−5−ナフトエ酸、2―ヒドロキシ−3―ナフトエ酸、4’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、3’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、4’−ヒドロキシフェニル−3−安息香酸、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中では4−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸が得られる液晶ポリエステル樹脂の特性や融点を調整しやすいという点から好ましい。
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシビフェニル、ビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4−カルボキシフェノキシ)ブタン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、ビス(3−カルボキシフェニル)エーテル、ビス(3−カルボキシフェニル)エタン等の芳香族ジカルボン酸、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中ではテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が得られる液晶ポリエステルの機械物性、耐熱性、融点温度、成形性を適度なレベルに調整しやすいことから好ましい。
芳香族ジオールの具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等の芳香族ジオール、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらの中ではハイドロキノンおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニルが重合時の反応性、得られる液晶ポリエステル樹脂の特性などの点から好ましい。
芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、芳香族アミノカルボン酸の具体例としては、たとえば4−アミノフェノール、N−メチル−4−アミノフェノール、3−アミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、4−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−4’−ヒドロキシジフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシジフェニルエーテル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルメタン、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルスルフィドなどの芳香族ヒドロキシアミン、1,4−フェニレンジアミン、N−メチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノフェニルスルフィド(チオジアニリン)、2,5−ジアミノトルエン、4,4’−エチレンジアニリン、4,4’−ジアミノジフェノキシエタン、4,4’−ジアミノビフェニルメタン(メチレンジアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(オキシジアニリン)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ジアミン、4−アミノ安息香酸、6−アミノ−2−ナフトエ酸、7−アミノ−2−ナフトエ酸などの芳香族アミノカルボン酸、ならびにこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
芳香族ヒドロキシジカルボン酸の具体例としては、例えば2−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジカルボン酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、これらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体、ならびにこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
好ましい液晶ポリエステル樹脂の具体例としては、例えば、基本的モノマー構成単位が下記の化合物からなるものが挙げられる。
4−ヒドロキシ安息香酸/2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸共重合体2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/4,4’−ジヒドロキシビフェニル共重合体2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4’−ジヒドロキシビフェニル共重合体2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4’−ジヒドロキシビフェニル/ハイドロキノン共重合体2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/ハイドロキノン共重合体4−ヒドロキシ安息香酸/2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/4,4’−ジヒドロキシビフェニル共重合体4−ヒドロキシ安息香酸/2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/ハイドロキノン共重合体2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/4,4’−ジヒドロキシビフェニル共重合体2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン共重合体2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン共重合体4−ヒドロキシ安息香酸/2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン共重合体2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン/4,4’−ジヒドロキシビフェニル共重合体2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/4−アミノフェノール共重合体4−ヒドロキシ安息香酸/2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/4−アミノフェノール共重合体2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/4,4’−ジヒドロキシビフェニル/4−アミノフェノール共重合体2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/エチレングリコール共重合体2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/4,4’−ジヒドロキシビフェニル/エチレングリコール共重合体4−ヒドロキシ安息香酸/2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/エチレングリコール共重合体4−ヒドロキシ安息香酸/2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/4,4’−ジヒドロキシビフェニル/エチレングリコール共重合体
これらのうち本発明において、好ましい液晶ポリエステルの構成成分として、下記式〔I〕および〔II〕で表される繰返し単位、下記式〔II〕、〔III〕および〔IV〕で表される繰返し単位、または下記式〔I〕、〔II〕、〔III〕および〔IV〕で表される繰返し単位を含むのがよい。
Figure 2005120535
[式中、ArおよびArはベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、ビフェニルエーテル環またはビフェニルアルカン環(ただし、アルカンの炭素原子数は1〜4である)であり、そしてこれらの環はアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子で置換されていてもよい。]
式〔I〕および〔II〕で表される繰返し単位を用いる場合、式〔I〕/〔II〕のモル比は10/90〜90/10、好ましくは20/80〜80/20の範囲であるのがよい。また、式〔II〕、〔III〕および〔IV〕で表される繰返し単位を用いる場合、式〔II〕/式〔III〕および〔IV〕の合計量のモル比は90/10〜10/90、好ましくは85/15〜60/40の範囲であるのがよい。また、式〔I〕、〔II〕、〔III〕および〔IV〕で表される繰返し単位を用いる場合、上記式〔I〕/〔II〕のモル比で、かつ式〔I〕および〔II〕の合計量/式〔III〕および〔IV〕の合計量のモル比は90/10〜50/50、好ましくは85/15〜60/40の範囲であるのがよい。
式〔I〕で示される繰返し単位を導入するために使用されるモノマーとしては、4−ヒドロキシ安息香酸、式〔II〕で示される繰返し単位を導入するために使用されるモノマーとしては、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、式〔III〕で示される繰返し単位を導入するために使用されるモノマーとしては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、式〔IV〕で示される繰返し単位を導入するために使用されるモノマーとしては、ハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニルが挙げられる。
なお、上記LCPには、必要に応じて、着色剤、無機フィラー、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常使用されている添加剤を混合使用することができ、さらに、ポリオレフィン、熱可塑性エラストマー、液晶樹脂などを本発明の機能を阻害しない範囲で加えることができる。
LCPのMFRは、好ましくは10〜1000g/10分であり、より好ましくは20〜300g/10分である。MFRが上記下限未満では押出圧力及びノズル先端圧力が高くなり紡糸が困難であり、上限を超えると低背圧により安定吐出、紡糸が困難である。
ここで、LCPのMFRは、ASTMD−1238−82に準拠し、340℃で測定する値である。
(2)LCPメルトブロー不織布
(i)平均繊維径及びCD方向の繊維径分布
本発明の液晶ポリエステルメルトブロー不織布の平均繊維径は、1〜30μmであり、好ましくは2〜10μmである。平均繊維径が1μm未満では単繊維強度が弱く不織布として巻き取ることが困難であり、フィルタ材に用いた場合も破れ易く好ましくなく、30μmを超えると剛性が高く、フィルタ材に供した場合、曲げ加工時に繊維の破断による破れが生じ易く好ましくない。
また、不織布のCD方向の繊維径分布は、CV値で25%以下であり、好ましくは8%以下である。CD方向の繊維径分布のCV値が25%を超えると細繊維と太繊維が局所的に混在し、フィルタ材に使用した場合、濾過効率の低下、電池セパレータとして供した場合、バラツキによる短絡、内部抵抗上昇の原因となる。
なお、本発明におけるCD方向の繊維径分布は、不織布のCD方向任意の20箇所についての平均繊維径の標準偏差から求め、次式によって求める値である。
Figure 2005120535
(ii)平均目付け、CD方向の目付け分布
本発明の液晶ポリエステルメルトブロー不織布の平均目付けは、5〜200g/mであり、好ましくは15〜100g/mである。目付けが5g/m未満では、強度が弱く、不織布の巻き取りが困難であるばかりでなく、フィルタ材に供した場合、破れの原因となる。目付けが200g/mを超えると不織布内部に層間剥離が起こり、巻き取り時、加工時に破断を起こし易い。
また、不織布のCD方向の目付け分布は、CV値で10%以下であり、好ましくは3%以下である。CD方向の目付け分布のCV値が10%を超えると、不織布ロールのCD方向に凹凸が生じ巻き取り時に皺が入り、電池セパレータに供した場合、低目付けによる短絡、高目付けによる内圧上昇の原因となる。
なお、本発明における目付けCV値は、不織布のCD方向任意の20箇所についての平均目付けの標準偏差から求め、次式によって求める値である。
Figure 2005120535
(iii)通気度
本発明の液晶ポリエステルメルトブロー不織布の平均通気度は、5〜600cc/cm/secであり、好ましくは10〜100cc/cm/secである。通気度が5cc/cm/sec未満ではフィルタ材に供した場合濾過抵抗が大きく、電池セパレータに供した場合も内部抵抗上昇の要因となり、600cc/cm/secを超えると単位体積当りの繊維密度が疎となりフィルタ材に供した場合効率低下の要因となる。
(iv)引張強度
本発明の液晶ポリエステルメルトブロー不織布の引張強度は、1〜100N/25mmであり、好ましくは2.5〜90N/25mmである。引張強度が1N/25mm未満では不織布生産時破断しやすく、フィルタ材に供した場合も破断しやすい、100N/25mmを超えると不織布の伸度が極度に低下し、フィルタ材、電池セパレータ材としてアセンブリ時の自由度が少なく不適である。
(v)外観
本発明の液晶ポリエステルメルトブロー不織布の外観は、不織布表面に綿状異物、ショットが少なく、目付け分布の悪さによる濃淡が少ないので、外観に優れている。不織布表面上の異物、ショットの存在及び目付け分布の濃淡の存在は、フィルタ材として用いた場合、濾過効率の低下、電池セパレータ材として用いた場合、短絡及び内部抵抗上昇の原因となり、好ましくない。
(3)液晶ポリエステルメルトブロー不織布の製造
本発明の液晶ポリエステルの不織布は、メルトブロー法により得られるメルトブロー不織布である。本発明で用いるメルトブロー法としては、溶融した液晶ポリエステル樹脂を、押出機で溶融し、一列に配列した複数のノズル孔を有するダイスから溶融ポリマーとして吐出させると同時に、オリフィスダイに隣接して設備した噴射ガス口からダイス温度より高い温度のエアーブローガスを噴射せしめて、吐出された溶融ポリマーを微細繊維化し、次いで、得られた微細繊維流をコレクタであるコンベヤネット上等に捕集して不織布を製造する方法であり、本発明においては、次の製造条件で製造する。
メルトブロー装置ダイスにおいて、ノズル孔径は、0.2〜0.8mmφが好ましく、ノズル個数は、5〜15個/cmであるのが好ましい。ノズル孔径が上記範囲未満では吐出樹脂圧力が高くなり、上記範囲を超えると繊維を細くすることができない。また、ノズル個数が上記範囲未満では、LCPの吐出圧力が高くなり、上記範囲を超えると繊維同士が融着しすぎて、不織布の均一性を失うことになる。
LCPを溶融する押出機の温度は、370〜450℃であり、ダイス温度は、370〜450℃であり、ノズルからの溶融LCP樹脂吐出量は、0.2〜3g/min/holeが好ましい。
また、本発明の方法においては、高温エアーブローガスの温度を340〜450℃にする。
液晶ポリエステルを溶融する押出機の温度が低すぎると、吐出樹脂圧力が低くなり、高すぎるとLCPの劣化が促進される。樹脂吐出量が低すぎると吐出樹脂圧力が低くなり、均一な不織布が得られず、樹脂吐出量が高いと細い繊維が得られない。液晶ポリエステルの融着強度は低いためエアーブローガス温度を340〜450℃にすることにより、不織布のCD方向の目付け分布及び平均繊維径分布をコントロールすることを可能にし、微細繊維同士の融着強度が強くなり、高強度の不織布が得られる。高温エアーブローガス温度が低すぎると細い繊維が得られず、高いと連続繊維が得られず、切れてコンベヤネットに捕集することが困難になる。
また、本発明の方法においては、エアーブローガスの温度及び流量をダイスの幅方向で分割してコントロールする方法が好ましい。
通常、メルトブロー不織布においては、CD方向(幅方向)の目付け分布のコントロールは、一列に配列した複数のノズル孔を有するダイスの幅方向のダイス温度をコントロールすることにより行っているが、液晶ポリエステルは、押出し可能な温度範囲が狭く低温側では固化し易く、高温側では分解し易いため、ダイス温度のコントロールのみでは、非常に難しい。そこで、本発明の方法においては、ダイスに隣接して設備した高温エアーブローガスの流量及び温度をダイス幅方向に分割し、例えば、10分割にして、それぞれを上記範囲内に収まるようにコントロールを行うのが好ましい。高温エアーブローガスの流量及び温度を幅方向に分割コントロールすることにより、不織布のCD方向の微妙な目付け分布及び平均繊維径分布のコントロールを容易にすることができ、その結果、不織布のCD方向の目付け分布及び平均繊維径分布を向上させ、得られるメルトブロー不織布の収率が向上し、不織布の巻に凹凸が無くなり、カレンダー加工、スリット加工等の後加工が容易となり、さらに弛みも少なくなるという特徴を有している。
さらに、ノズルとコレクタ間の距離は、7〜25cmであり、好ましくは8〜20cmである。ノズルとコレクタ間の距離が7cm未満であると、高温エアーブローガスに伴われた微細繊維がコレクタに衝突して繊維の跳ね返りが生じ、ショットが形成されやすい。25cmを超えると、繊維同士の融着が進まず、強度の弱い不織布になり易い。
本発明の方法においては、上記のメルトブロー法によって得られた液晶ポリエステルメルトブロー不織布をアニール処理してもよい。メルトブロー法により製造される液晶ポリエステル樹脂の不織布は、非晶質状態で極細繊維化されるため、加熱により収縮が起きやすい。したがって、アニール処理することにより、寸法安定性、耐破れ性が付与されるという効果があり、特に、耐熱性、耐収縮性に優れた不織布とすることができる。
アニール処理としては、メルトブロー不織布を成形後、またはフィルタ及び電池セパレータ等のアセンブリ加工前に、30秒〜5分間、170〜250℃、好ましくは190〜220℃で行う。具体的な方法としては、メルトブロー不織布を所定の温度に加熱した2対のロール間を加圧せずに沿わせて加温処理する方法、メルトブロー不織布の両端をピンテンターで挟み所定温度に維持したオーブン中で加温処理する方法等が挙げられる。アニール温度が、170℃未満であると、不織布が結晶化されずアニール効果が得られない。250℃を超えると、軟化により弛み、伸びが生じアニール処理が困難である。
本発明の液晶ポリエステル不織布は、電池またはキャパシタ用セパレータ、耐熱用液体フィルタ、耐熱用エアフィルタ、耐薬品用フィルタ、その他耐熱性、耐薬品性を要する産業資材等の用途に用いることができ、特に、不織布のCD方向の目付け分布及び平均繊維径分布が良いので、耐熱性、強度、表面外観に優れ、非水系電池またはキャパシタ用セパレータとして用いることができる。電池またはキャパシタ用セパレータとしては、上記で得られた液晶ポリエステルメルトブロー不織布を所定の幅にスリット加工を行い、所定の大きさに打ち抜き又は所定の長さに裁断し製造できる。スリット、打抜き及び裁断時に不織布の引張強度が弱いと原反切れを生じ、不織布からセパレータを得る収率が低下する。
したがって、セパレータの成形は、不織布の引張強度が3.5N/25mm未満では加工時の原反切れの確率が50%を超えることから、引張強度が3.5N/25mm未満部分を除去して成形する方法が好ましく、さらに、不織布の短絡部分を除去して成形する方法が好ましい。
本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の物性値は、下記の方法で測定した。
(1)MFR:ASTMD−1238−82に準拠して340℃で測定した。
(2)平均繊維径、繊維径CV値:不織布のCD方向任意の10箇所について電子顕微鏡で各5枚の写真撮影を行い、1枚の写真につき20本の繊維の直径を測定し、各箇所毎に得られた合計100本の繊維径を平均して求めた。
繊維径CV値は、不織布のCD方向任意の10箇所についての平均繊維径の標準偏差から求め、次式によって求めた。
Figure 2005120535
(3)平均目付け、目付けCV値:試料長さ方向より、25×200mmの試験片を採取し、水分平衡状態の重さを測定し、1m当たりに換算して求めた。
目付けCV値は、次式により求めた。
Figure 2005120535
(4)厚み:試料長さ方向より、100×100mmの試験片を採取し、ダイヤルシックネスゲージで測定した。
(5)通気度:試料長さ方向より、100×100mmの試験片を採取し、JIS L 1096に準拠し、フラジール型試験機を用いて測定した。
(6)引張強度:JIS L 1085に準拠して測定した。試料長さ方向より、25×200mmの試験片を用い、つかみ間隔は10cm、引張り速度は30cm/分とした。
(7)綿状異物の有無:試料長さ方向より1m採取し、目視によりその試料の上下に一片の長さが1cm以上の綿状異物が観察された場合、有りとし、観察されなかった場合、無しとした。
(実施例1)
液晶ポリエステル(上野製薬(株)製UENO−LCP2100、MFR:93g/10分(340℃))をノズル径0.38mm、ノズル数12個/cmのメルトブローダイから、押出機温度400℃、ダイス温度400℃、エアーブローガス温度420℃、エアーブローガス流量1.1Nm/分(10分割)、ダイス−コレクタ間隔13cmの条件でメルトブロー化し、メルトブロー不織布を得た。得られたメルトブロー不織布は、平均繊維径が5.3μm、CD方向の平均繊維径のCV値が7.7%、目付けが50g/m、CD方向の目付けCV値が2.7%、厚みが0.69mm、通気度が33cc/cm/sec、平均引張強度が4.5N/25mmであり、さらに不織布表面には綿状異物が認められなかった。
(実施例2)
エアーブローガス温度を380〜430℃、エアーブローガス流量を1.1〜1.4Nm/分とし、10分割で目付け分布及び平均繊維径分布をコントロールするようにし、ダイス−コレクタ間隔を12cmにする以外は、実施例1と同様にしてメルトブロー不織布を得た。評価結果を表1に示す。
(比較例1)
液晶ポリエステル(MFR:8.2g/10分)をノズル径0.38mm、ノズル数12個/cmのメルトブローダイから、押出機温度450℃、ダイス温度450℃、エアーブローガス温度450℃、エアーブローガス流量1.1Nm/分(10分割)、ダイス−コレクタ間隔10cmの条件でメルトブロー化し、メルトブロー不織布を得た。得られたメルトブロー不織布は、平均繊維径が25μm、CD方向の平均繊維径のCV値が40%、目付けが50g/m、CD方向の目付けCV値が12%、厚みが0.72mm、通気度が785cc/cm/sec、平均引張強度が2.1N/25mmであり、さらに不織布表面には低溶融伸度により糸切れが多発し綿状異物が認められた。また、紡糸時のノズル先端圧力は50kg/cmでありノズルの設計耐圧力を超えており長時間防止した場合ノズル破損の危険が高い状態であった。
Figure 2005120535
表1より明らかなように、本発明のLCP製メルトブロー不織布は、物性の均一性が高く強度もあり、セパレータに用いた場合も短絡がなく、高収率で製品セパレータを得ることができる(実施例1及び2)。
本発明のLCPメルトブロー不織布は、不織布のCD方向の目付け分布及び平均繊維径分布が向上し、かつ不織布表面に異物、ショット等が存在せず、フィルタ材や強度及び耐熱性が要求される電池またはキャパシタ用セパレータ材に用いることができる。

Claims (5)

  1. 平均繊維径が1〜30μm、不織布のCD方向の平均繊維径CV値が25%以下、平均目付けが5〜200g/m、不織布CD方向の目付けCV値が10%以下、平均通気度が5〜600cc/cm/sec、引張強度が1〜100N/25mm以上であることを特徴とする液晶ポリエステルメルトブロー不織布。
  2. 液晶ポリエステルが、下記の繰り返し構造単位を少なくとも全体の30モル%含むものであることを特徴とする請求項1に記載の液晶ポリエステルメルトブロー不織布。
    Figure 2005120535
  3. 液晶ポリエステルを370〜450℃の押出機で溶融した後、370〜450℃の温度に設定したダイに送り込み、ダイノズルから吐出させると同時に、340〜450℃のエアーブローガスにより延伸して微細繊維化し、ノズルから7〜25cm離れたコレクタに捕集することを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶ポリエステルメルトブロー不織布の製造方法。
  4. エアーブローガスの温度及び流量をダイスの幅方向に分割し、各範囲で調整することを特徴とする請求項3に記載の液晶ポリエステルメルトブロー不織布の製造方法。
  5. アニール処理を施してなることを特徴とする請求項3又は4に記載の液晶ポリエステルメルトブロー不織布の製造方法。
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