JP2005120445A - プレス成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

プレス成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】プレス成形時の摺動抵抗が小さく、プレス成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板を提供する。
【解決手段】めっき層が主としてη相からなる溶融亜鉛めっき鋼板において、めっき表面にZn系酸化物及び/またはZn系水酸化物が存在し、該Zn系酸化物及び/または該Zn系水酸化物は、凸部と凸部より囲まれる不連続な凹部からなる微細凹凸を有する。さらに、前記微細凹凸は、粗さ曲線の局部山頂の平均間隔(S)が10nm以上1000nm以下、平均粗さ(Ra)が1nm以上100nm以下であることことが好ましい。また、前記めっき表面は、前記Zn系酸化物及び/または前記Zn系水酸化物が有する前記凸部及び前記凹部よりも大なる凸状部分及び凹状部分を有しており、前記Zn系酸化物及び/または前記Zn系水酸化物は、前記めっき表面の凸状部分に存在することが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、プレス成形時における摺動性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板に関するものである。
近年、防錆性向上の観点から、自動車用パネル部品には亜鉛系めっき鋼板、特に溶融亜鉛系めっき鋼板の使用比率が増加している。溶融亜鉛系めっき鋼板には亜鉛めっき後に合金化処理を施したものと施さないものとがあり、一般に前者は合金化溶融亜鉛めっき鋼板、後者は溶融亜鉛めっき鋼板と称される。なお、本発明においては、亜鉛めっき後に合金化処理を施さないものを溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛めっき後に合金化処理を施したものを合金化溶融亜鉛めっき鋼板とする。通常、自動車用パネルに使用される溶融亜鉛系めっき鋼板は、溶接性および塗装性に優れている特性を生かして、溶融亜鉛めっき後に500℃程度に加熱して合金化処理を施した合金化溶融亜鉛めっき鋼板が使用されている。
また、さらなる防錆性の向上を目指し、自動車メーカーでは厚目付けの亜鉛系めっき鋼板に対する要望が強くなりつつあるが、前述した合金化溶融亜鉛めっき鋼板で厚目付け化を実施すると、合金化に長時間を要し、合金化不良いわゆる焼けムラが発生しやすく、逆にめっき層全体で合金化を完了させようとすると、過合金化となり、めっき−鋼板界面で脆いΓ相が生成し、加工時にめっき剥離が発生しやすくなるため、厚目付けの合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造することは非常に困難である。
このため、厚目付け化には溶融亜鉛めっき鋼板が有効である。しかしながら、溶融亜鉛めっき鋼板を自動車用パネルにプレス成形する際には、前記合金化溶融亜鉛めっき鋼板と比較すると、金型との摺動抵抗が大きく、また表面の融点が低いことにより凝着を生じやすく、プレス割れが起こりやすいという問題がある。
このような問題を解決する手法として、特許文献1および特許文献2には、溶融亜鉛めっき鋼板の表面粗度を制御して、プレス成形時の型かじりを抑制する手法や、深絞り性を改善する手法が提案されている。しかしながら、このような溶融亜鉛めっき鋼板について詳細な検討を行ったところ、金型との摺動距離が短い場合には、金型との凝着を抑制する効果があるものの、摺動距離が長くなるほどこの効果は小さくなり、摺動条件によっては改善効果が得られない。また、上記提案では、このような粗さを付与する手法として、スキンパス圧延のロール条件・圧延条件を制御する方法があげられているが、実際には、ロールに亜鉛が目詰まりを起こすため、溶融亜鉛めっき鋼板表面に所定の粗さを安定的に付与することは困難である。
また、特許文献3には、めっき表面にZnOを主体とする酸化膜を形成した亜鉛めっき鋼板が提案されている。しかしながら、この技術を溶融亜鉛めっき鋼板に適用することは困難である。通常、溶融亜鉛めっき鋼板の製造の際には、亜鉛浴に浸漬した際に、過剰なFe-Zn合金化反応を抑制し、めっき密着性を確保するために、亜鉛浴中には微量なAlが添加されている。この微量に含まれるAlのために、溶融亜鉛めっき鋼板表面にはAl系酸化物が緻密に生成しているため、表面が不活性でありZnOを主体とする酸化膜を形成することができない。仮に、このような酸化膜を緻密に生成したAl系酸化物層の上層に付与したとしても、付与した酸化膜と下地との密着性が悪く十分な効果が得られないだけでなく、加工時にプレス金型に付着し、押しキズを作るなどプレス品への悪影響をもたらす問題がある。
この他にも、特許文献4にはMo酸化物皮膜を、特許文献5にはCo系酸化物皮膜を、特許文献6にはNi酸化物皮膜を、特許文献7にはCa系酸化物皮膜を、表面に形成した亜鉛めっき鋼板が提案されているが、前述したZnO主体の酸化膜と同じ理由で、十分な効果を得ることができない。
特許文献8にFe系酸化物とZn系酸化物、Al系酸化物からなる酸化皮膜を備えた亜鉛系めっき鋼板に関する技術が記載されている。前記と同様、溶融亜鉛めっき鋼板の場合、表面が不活性なため、初期に形成されるFe酸化物が不均一となり、効果を得るための酸化物量が多く、酸化物の剥離などの課題が生じる。
以下に先行技術文献情報について記載する。なお、非特許文献1については、説明の都合上、[発明を実施するための最良の形態]の項で説明する。
特開2002-4019号公報 特開2002-4020号公報 特開平2-190483号公報 特開平3-191091号公報 特開平3-191092号公報 特開平3-191093号公報 特開平3-191094号公報 特開2000-160358号公報 名越正泰、他2名、「極低加速走査電子顕微鏡でみた実材料表面」、表面技術、2003年、54巻、第1号、p.31-34
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、プレス成形時の摺動抵抗が小さく、プレス成形性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、種々の検討を加えた結果、溶融亜鉛めっき鋼板表面に特有のZn系酸化物及び/またはZn系水酸化物を形成することにより、広範な摺動条件で良好なプレス性が得られることを知見した。これは次のような理由による。
前述したように、溶融亜鉛めっき鋼板表面にはAl系酸化物層が形成されていることから、プレス成形時の金型との凝着をある程度抑制することができる。このため、さらにプレス時の摺動特性を改善するためには、より厚いAl系酸化物層を形成することは有効であると考えられるが、Al系酸化物層を厚く成長させるためには、高温で長時間酸化させる必要があり、実用上困難であることに加え、この際に、徐々にFe-Zn合金化反応が進行し、めっき密着性を劣化させるという欠点がある。逆に、Zn系酸化物及び/またはZn系水酸化物層を形成させるためには、表面のAl系酸化物層を完全に除去する必要があるため、この処理に長時間を要するという欠点がある。
一方、Al系酸化物層を一部破壊し、新生面を露出させた後に、表面を酸化させる処理を行うと、この新生面上ではZn系酸化物及び/またはZn系水酸化物が形成され、またこの新生面上へのZn系酸化物及び/またはZn系水酸化物層は容易に付与できる。このようにして形成されためっき表面のZn系酸化物及び/またはZn系水酸化物は、摺動抵抗の低減効果を有することがわかった。
さらに発明者らは、めっき表面に形成させるZn系酸化物及び/またはZn系水酸化物に微細な凹凸を付与することにより、摺動性をさらに向上することを見出した。なお、本発明において、微細凹凸とは、凸部と凸部より囲まれる不連続な凹部からなるものであり、好ましくは、粗さ曲線の平均粗さRa(以下、Raと称す)で1nm以上100 nm以下、局部山頂の平均間隔S(以下、Sと称す)で10nm以上1000 nm以下の表面粗さとなっているものである。ここで、本発明の微細凹凸は、前記特許文献1および前記特許文献2に記載されている表面粗度(Ra: 1 μm前後)とは一桁以上小さいサイズである。従って、本発明におけるRaなどの粗さパラメータは、長さがミリメートルオーダー以上の粗さ曲線について測定されるミクロン(μm)オーダーかそれ以上の凹凸を定義する一般的な粗さパラメータと異なり、数ミクロン長さの粗さ曲線から算出されるものである。また、前記先行文献は、溶融亜鉛めっき鋼板表面の粗さを規定したものであるのに対し、本発明は、溶融亜鉛めっき鋼板表面に付与した酸化物層の粗さを規定するものである。
また、溶融亜鉛めっき鋼板の摺動性は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板と異なり、めっきが軟質であるため摺動時の面圧依存性が大きい。面圧が高い場合、摺動性は良好であるが、面圧を低くすると、摺動性が劣る傾向が認められ、面圧が低い条件では、めっき表面の変形が少ない為、めっき表面の凸状部分を主体に金型と接触する。そこで、溶融亜鉛めっき鋼板の低面圧条件での摺動特性をさらに向上させるためには、凸状部分にも上述した酸化物を形成させる必要があることを見出した。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1]めっき層が主としてη相からなる溶融亜鉛めっき鋼板において、めっき表面にZn系酸化物及び/またはZn系水酸化物が存在し、該Zn系酸化物及び/または該Zn系水酸化物は、凸部と凸部より囲まれる不連続な凹部からなる微細凹凸を有することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
[2]上記[1]において、前記微細凹凸は、粗さ曲線の局部山頂の平均間隔(S)が10nm以上1000nm以下、平均粗さ(Ra)が1nm以上100nm以下であることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
[3]上記[1]または[2]において、前記めっき表面は、前記Zn系酸化物及び/または前記Zn系水酸化物が有する前記凸部及び前記凹部よりも大なる凸状部分及び凹状部分を有しており、前記Zn系酸化物及び/または前記Zn系水酸化物は、前記めっき表面の凸状部分に存在することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
[4]上記[3]において、前記めっき表面の凸部に存在する前記Zn系酸化物及び/または前記Zn系水酸化物の微細凹凸は、粗さ曲線の局部山頂の平均間隔(S)が10nm以上500nm以下、平均粗さ(Ra)が1nm以上100nm以下であることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
[5]上記[1]ないし[4]において、前記Zn系酸化物及び/または前記Zn系水酸化 物が存在する部分は、前記めっき表面に占める割合が面積率で70%以上であることを特 徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
なお、本発明において、めっき表面に存在する「Zn系酸化物及び/またはZn系水酸化物」とは、Zn系の酸化物だけでなく、Zn系の水酸化物を含むものであり、すべてがZn系の水酸化物の場合も含むものとする。また、以下、「Zn系酸化物及び/またはZn系水酸化物」を、「Zn系酸化物」と略す。
本発明によれば、プレス成形時の摺動抵抗が小さく、安定して優れたプレス成形性を示す溶融亜鉛めっき鋼板を提供することができる。
溶融亜鉛めっき鋼板は、通常、微量のAlを含んだ亜鉛浴に浸漬することにより製造されるため、めっき皮膜は主としてη相からなり、また表層には、亜鉛浴に含まれているAlによるAl系酸化物層が形成された皮膜である。このη相は、合金化溶融亜鉛めっき皮膜の合金相であるζ相、δ相と比較すると軟らかく、かつ融点が低いことから、凝着が発生しやすく、プレス成形時の摺動性に劣る。ただし、溶融亜鉛めっき鋼板の場合、表面にAl系酸化物層が形成されていることにより、金型の凝着を抑制する効果がわずかに見られるため、特に金型との摺動距離が短い場合には、摺動特性の劣化が見られないことがある。しかしながら、この表面に形成されているAl系酸化物層は薄いため、摺動距離が長くなると凝着が発生しやすくなり、広範な摺動条件で満足するプレス成形性を得ることができない。さらに、溶融亜鉛めっき鋼板は軟質であり、他のめっきと比較して金型と凝着しやすく面圧が低い場合に、摺動特性が低くなる。
このような溶融亜鉛めっき鋼板と金型との凝着を抑制するためには、表面に厚い酸化物層を形成することが有効である。すなわち、めっき鋼板表面に存在するAl系酸化物層の一部を破壊し、酸化処理を行うことによりZn系酸化物層を形成することがめっき鋼板の摺動特性の向上に対して重要である。さらに、めっき表面に形成させるZn系酸化物に微細な凹凸を付与することにより、さらなる摺動抵抗の低下を実現できる。ここで微細凹凸とは、凸部と凸部より囲まれる不連続な凹部からなるものであり、微細な凹部が分散していればよく、凹部の周囲の凸部は同じ高さである必要はなく、ある程度の高さ変動があってもかまわない。そして、好ましくは、微細凹凸は、粗さ曲線のRaで1nm以上100 nm以下、Sで10nm以上1000 nm以下の表面粗さとなっていることである。微細凹凸の構成例としては、Zn系酸化物の表面が微細凹凸を有しているもの、あるいは、めっき表面上に、粒状、板状、リン片状などの形状を有するZn系酸化物が分布することで微細凹凸が形成されているものである。
微細な凹凸により摺動抵抗が低下する理由は、微細凹凸の凹部が微細なオイルピット群として働き、ここに潤滑油を効果的に保持できることによるものと考えられる。すなわち、前述の酸化物としての摺動抵抗低減効果に加えて、潤滑油を摺動部に効果的に保持できる微細な油だめ効果により更なる摺動抵抗低減効果が発現される。このような微細凹凸の潤滑油保持効果は、マクロ的な視点で比較的平滑な表面を有しておりマクロ的に潤滑油を保持しにくく、圧延などにより潤滑性を狙ってマクロな表面粗さを安定して付与することが困難な、溶融亜鉛めっきの安定した摺動抵抗低減に特に有効である。また、摺動条件としては接触面圧の低い摺動条件下で特に有効である。
微細凹凸の大きさは、上記のように、Ra及びSで表すことができる。本発明では、Raは1nm以上100 nm以下、Sは10nm以上1000 nm以下で摺動抵抗低減効果があり好ましことを確認した。RaやSを上記より小さくすると平滑表面に近づき、粘性のある油の油だめとしての効果が低減するため、好ましくない。一方、RaやSを上記より大きくしても、油だめ効果の大幅な改善は見られなく、また酸化物を厚く付ける必要があり製造することが難しくなる。さらに、酸化物が摺動時に工具と接触する際、粗大なZn系酸化物では、油溜めの効果よりも酸化物の破壊抵抗を増大させるという悪影響が生じる。以上から、より好ましくは、Sは10nm以上500nm以下とする。
また溶融亜鉛めっきでは、後述するように、調質圧延時、調圧ロールと接触しためっき表面の凹状部分の方が、平坦な凸状部分よりも活性であるためZn系酸化物が生成し易い傾向にある。そのため、凹状部分に形成されるZn系酸化物の方が、凸状部分のZn系酸化物より粗大になる場合がある。そのような不均一性は本発明の効果を損ねるものではないが、凸状部分のZn系酸化物は摺動時に工具と直接接触するため、めっき鋼板の摺動性に大きく影響する。ゆえにできるだけZn系酸化物は、めっき表面の凸状部分に存在することが好ましい。また、前述のように、酸化物の破壊抵抗が大きくならないように、めっき表面の凸状部分に形成されるZn系酸化物の微細凹凸のRaは1nm以上100nm以下、Sは10nm以上500nm以下(より好ましくは10nm以上300nm以下)とすることが、より安定的に摺動抵抗低減効果を得る上で特に重要であり好ましい。
Zn系酸化物に微細な凹凸を付与し、RaおよびSを制御する有効な一つの方法は、Zn系酸化物にFeを含ませることである。Zn系酸化物にFeを含有させることにより、Zn酸化物はその含有量に応じて除除に微細となり数が増加する。その微細なサイズの酸化物の集合として、微細凹凸を形成する。ZnとFeを含む酸化物が微細な凹凸を有する酸化物となる理由は明らかになっていないが、Zn酸化物の成長がFeあるいはFeの酸化物によって抑制されるためと推定している。ZnとFeの和に対するFeの好適割合(百分率)は明確になっていないが、少なくともFeが1%以上、50%以下の範囲で有効である。Fe原子比率が50%を超えると酸化物が剥離しやすいうえ、本発明で得られるような微細凹凸を有する結晶形態を得ることが困難となり十分な特性を得ることができない可能性があり、1%未満では微細凹凸の形状制御効果が得られなくなる可能性がある。このようなZnとFeを含む酸化物は、後述のpH緩衝作用を有する酸性溶液に接触させるZn系酸化物の形成方法において、その酸性溶液にFeを添加することで形成することができる。その濃度は特に限定されないが、一例として、硫酸第一鉄(7水和物)を5〜400g/lの範囲で添加することで製造可能である。
なお、Ra、Sの表面粗さパラメータは、Zn系酸化物の表面の形状を、三次元形状計測機能を有する走査電子顕微鏡や走査プローブ顕微鏡(原子間力顕微鏡など)を用いて数値化し抽出した長さ1μm以上10μm以下の粗さ曲線より、日本工業規格の「表面粗さ-用語」B-0660-1998等に記載されている数式に従って計算することができる。また、微細凹凸の形状は高分解能の走査電子顕微鏡を用いて観察することができる。この計算では、前記粗さ曲線の長さを、基準長さとした。ただし、基準長さで求められない場合は評価長さで求めるものとする。酸化物の厚さは数十nm程度と薄いため、低い加速電圧、例えば1 kV以下、を用いて観察することが有効である。特に、電子のエネルギーとして数eVを中心とする低エネルギーの二次電子を除いて二次電子像の観察を行うと、酸化物の帯電により生じるコントラストを低減することができるため、微細凹凸の形状の良好な観察を行うことができる(非特許文献1参照)。
前述したように、溶融亜鉛めっき鋼板は、Znめっき層が他のめっきと比較して軟質、低融点であるため、面圧により摺動特性が変化しやすく、低面圧での条件において摺動性が低い。これを解決するためには、Zn系酸化物を例えば調質圧延時にロールにより凹状部分となっている部分以外の、めっき表面の凸状部分にも酸化物を形成させることが好ましい。即ち、効果を十分に発現させるためには、Zn系酸化物がめっき表面の凹状部分凸状部分を十分被覆していることが重要であり、Zn系酸化物がめっき表面に占める割合(被覆率)が面積率で70%以上存在することが好ましい。なお、Zn系酸化物の被覆率は、X線マイクロアナライザー(以下、EPMAと称す)による元素マッピング、もしくは走査電子顕微鏡(以下、SEMと称す)により評価できる。EPMAでは、着目する酸化物から得られるO、Al、Znの強度あるいはそれらの比をあらかじめ得ておき、それを基に測定した元素マップのデータ処理を行うことで、被覆率を見積もることができる。また、加速電圧0.5kV前後の電子線を用いたSEM像観察でも、より簡便に面積率を見積もることができる。前記条件でのSEM像観察では、表面で酸化物の形成されている部分とされていない部分を明瞭に区別することができるため、得られた二次電子像を画像処理ソフトウエアにより二値化することで面積率を評価できる。ただし、観察されるコントラストが、着目する酸化物に合致しているかどうかを、あらかじめAESやEDS等で確認しておくことが必要である。
次いで、Zn系酸化物の厚さについて、説明する。
めっき表面におけるZn系酸化物については、その平均厚さを10nm以上、より好ましくは20nm以上とすることが良好な摺動性を得る点から好ましい。上記の厚さであれば、金型と被加工物の接触面積が大きくなるプレス成形加工において、めっき表面のZn系酸化物が摩耗した場合でも残存し、摺動性の低下を招くことがないためである。一方、摺動性の観点からZn系酸化物の平均厚さに上限はないが、厚いZn系酸化物が形成されると、表面の反応性が極端に低下し、化成処理皮膜を形成するのが困難になるため、平均厚さは200nm以下とするのが望ましい。
なお、めっき表面におけるZn系酸化物の平均厚さは、Arイオンスパッタリングと組み合わせたオージェ電子分光(AES)により求めることができる。この方法においては、所定厚さまでスパッタした後、測定対象の各元素のスペクトル強度から相対感度因子補正により、その深さでの組成を求めることができる。このうち、酸化物に起因するOの含有率は、ある深さで最大値となった後(これが最表層の場合もある)、減少し、一定となる。Oの含有率が最大値より深い位置で、最大値と一定値との和の1/2となる深さを、酸化物の厚さとする。
また、めっき表面におけるZn系酸化物の厚さを制御するにあたり、厚く生成させようとすると、Zn系酸化物が存在する部分では厚くなり、逆にAl系酸化物が残存した部分では厚くならないため、めっき鋼板表面全体を見ると、酸化物の厚さが厚い部分と薄い部分とが共存する厚さの不均一な酸化物が形成され場合がある。しかし、何らかの理由で薄い部分の一部で酸化物が形成されていない部分が存在していたとしても、前述したメカニズムと同じ理由で摺動性の向上を得ることができる。
次に本発明のめっき表面にZn系酸化物を形成する方法について説明する。
Zn系酸化物を形成する手法としては、溶融亜鉛めっき鋼板をpH緩衝作用を有する酸性溶液に接触させ、その後、1〜30秒放置する酸化処理を行った後、水洗・乾燥する方法が有効である。
このZn系酸化物形成メカニズムについては明確でないが、次のように考えることができる。溶融亜鉛めっき鋼板を酸性溶液に接触させると、鋼板側からは亜鉛の溶解が生じる。この亜鉛の溶解は、同時に水素発生反応を生じるため、亜鉛の溶解が進行すると、溶液中の水素イオン濃度が減少し、その結果溶液のpHが上昇し、溶融亜鉛めっき鋼板表面にZn系酸化物を形成すると考えられる。このように、Zn系酸化物の形成のためには、亜鉛の溶解とともに、鋼板に接触している溶液のpHが上昇することが必要であるため、鋼板を酸性溶液に接触させた後に水洗までの保持時間を調整することは有効である。この際、保持時間が1秒未満であると、鋼板に接触している溶液のpHが上昇する前に液が洗い流されるためにZn系酸化物を形成できず、一方、30秒を超えて放置しても酸化物生成に変化が見られないためである。このように、保持過程で、特殊な微細凹凸構造を有するZn系酸化物が成長する。より好ましい保持時間は、2〜10秒である。
酸化処理に使用する酸性溶液のpHは1.0〜5.0の範囲にあることが望ましい。これはpHが5.0を超えると、亜鉛の溶解速度が遅く、一方1.0未満では、亜鉛の溶解の促進が過剰となり、Zn系酸化物の形成速度がいずれも遅くなるためである。また、酸性溶液には、pH緩衝効果をもった薬液を添加することが不可欠である。これは、実際の製造時に処理液のpH安定性をもたせるのみでなく、前述のZn溶解に伴うpH上昇によるZn系酸化物形成過程において、局部的なpH上昇を阻止し、適度な反応時間を付与することにより、Zn系酸化物成長時間を確保し、本発明の特徴である微細凹凸形状を有するZn系酸化物形成に作用するためである。
このようなpH緩衝性を有する薬液(酸性溶液)としては、酸性領域でpH緩衝性を有すれば、その薬液種に制限はないが、例えば、酢酸ナトリウム(CH3COONa)などの酢酸塩、フタル酸水素カリウム((KOOC)2C6H4)などのフタル酸塩、クエン酸ナトリウム(Na3C6H5O7)やクエン酸二水素カリウム(KH2C6H5O7)などのクエン酸塩、コハク酸ナトリウム(Na2C4H4O4)などのコハク酸塩、乳酸ナトリウム(NaCH3CHOHCO2)などの乳酸塩、酒石酸ナトリウム(Na2C4H4O6)などの酒石酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩のうちの一種以上を用いることができる。
また、その濃度としては、それぞれ5〜50g/lの範囲であることが望ましい、これは、5g/l未満であると、pH緩衝効果が不十分で、所定の酸化物層を形成できないためであり、50g/lを超えても、効果が飽和するだけでなく、酸化物の形成に長時間を要するためである。酸性溶液には、めっき鋼板を接触させることにより、めっきよりZnが溶出混入するが、これはZn系酸化物の形成を著しく妨げるものではない。従って、酸性溶液中のZn濃度は特に規定しない。より好ましいpH緩衝剤及びその濃度としては、酢酸ナトリウム3水和物を10〜50g/lの範囲、さらに好ましくは、20〜50g/lの範囲とした液であり、本溶液を用いれば有効に本発明の酸化物を得ることができる。
酸性溶液に接触させる方法には特に制限はなく、めっき鋼板を酸性溶液に浸漬する方法、めっき鋼板に酸性溶液をスプレーする方法、塗布ロールを介して酸性溶液をめっき鋼板に塗布する方法等があげられ、最終的に薄い液膜状で鋼板表面に存在することが望ましい。これは、鋼板表面に存在する酸性溶液の量が多いと、亜鉛の溶解が生じても溶液のpHが上昇せず、次々と亜鉛の溶解が生じるのみであり、酸化物層を形成するまでに長時間を有するだけでなく、めっき層の損傷も激しく、本来の防錆鋼板としての役割も失うことが考えられるためである。この観点から、液膜の量は、3g/m2以下に調整することが望ましく、液膜量の調整は、絞りロール、エアワイピング等で行うことができる。
また、このようなZn系酸化物を形成する処理を行う前には、溶融亜鉛めっき鋼板に調質圧延を施す必要がある。これは、通常は材質調整が主目的であるが、本発明では同時に鋼板表面に存在するAl系酸化物層の一部を破壊する効果もあるためである。
発明者らが、Zn系酸化物形成処理前、およびZn系酸化物形成処理後のめっき鋼板の各々の表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、Zn系酸化物皮膜は、主に調質圧延の際に圧延ロールがめっき表面に接触することで圧延ロールのダル目の凸部で押圧されてAl系酸化物層が破壊された部分に生成していることがわかった。従って、Zn系酸化物の被覆率および分布は、調質圧延の圧延ロールの粗さや伸長率を制御し、Al系酸化物層が破壊される面積を制御することで制御可能となる。
ただし、ここでは調質圧延による例を示したが、本発明では上記調質圧延に限定せずに、めっき表面のAl系酸化物層を機械的に破壊でき、Zn系酸化物を形成させ、Zn系酸化物の被覆率の制御に有効であれば他の方法でも構わない。その一例としては、金属ブラシによる処理やショットブラストなどがあげられる。
なお、調質圧延により調圧ロールの凹凸がめっき鋼板に転写され、めっき表面には凹凸が形成される。凹状部分ではめっき鋼板表面のAl系酸化物が機械的に破壊され、新生面が露出しており、凸状部分に比較し活性である。一方、凸状部分は調圧ロールによる変形をほとんど受けない部分であり、一般にめっきままの平坦な状態が維持されており、めっき鋼板表面のAl系酸化物の破壊程度が少ない。従って、調質圧延後の溶融亜鉛めっき鋼板の表面は不均一に活性、不活性な部分が存在する。この様な表面に対し酸化処理を施すと、凹状部分にZn系酸化物を形成することは可能であるが、凹状部分のみに酸化物が形成され、凹状部分以外の凸となっている平坦部分(凸状部分)へ酸化物を付与することが困難である。もちろん摺動条件によりAl系酸化物層が削り取られ、凝着が生じやすい状況が発生しても、共存するZn系酸化物層が凝着の抑制効果を発揮することができるため、プレス成形性には問題なく、プレス成形性を向上させることができるが、よりプレス成形性を向上させるためには、凸状部分にも酸化物を付与することが好ましい。
そこで発明者らが検討した結果、酸化処理の前に活性化処理を行い、表面のAl系酸化物量を適正量まで低減することが凸状部分へのZn系酸化物を付与に対して有効であることを見出した。すなわち、活性化処理に引き続き、pH緩衝作用を有する酸性溶液と接触させ、水洗までの保持時間を1〜30秒確保する事により、めっき鋼板表面の大部分に摺動性に有効な微細凹凸を有するZn系酸化物を形成させることが可能となり、低面圧での摺動特性を大幅に向上させることを実現した。
具体的な活性化処理方法として、アルカリ性溶液に接触させ、表面を活性化する方法があげられる。アルカリ性溶液によりAl系酸化物を除去し、表面に新生面を露出することが可能となる。前述した調質圧延時には、材質上制限される伸長率のために、鋼板の種類によっては、十分にAl系酸化物層を破壊できない場合があるが、調質圧延後に活性化処理を行えば、鋼板の種類によらず、十分にAl系酸化物層を除去し、安定的に摺動性に優れたZn系酸化物を形成することができる。
活性化処理による表面のAl系酸化物量を適正量、すなわち、本発明のZn系酸化物を酸化処理により形成するのに有効なめっき鋼板表面Al系酸化物の好ましい形態は以下のとおりである。
めっき鋼板表面のAl系酸化物は完全に除去する必要は無く、ある程度、めっき表面のZn系酸化物と混在している状態で良いが、表面の凸状部分のZn系酸化物に平均的に含まれるAl濃度が20at%未満となる状態にすることが好ましい。ここで示したAl濃度は、オージェ電子分光(AES)とArスパッタリングによる深さ方向分析により、2μm×2μm程度の領域における平均的な酸化物厚さとAl濃度の深さ方向分布を測定したときの、酸化物の厚さに相当する深さまでの範囲におけるAl濃度の最大値である。
Al濃度が20at%以上となると、局部的に微細凹凸構造を有するZn系酸化物が形成され難くなり、70%以上の被覆率で、微細凹凸構造を有するZn系酸化物をめっき表面に被覆することが困難となる。この結果、摺動特性、特に低面圧条件での摺動特性、化成処理性、接着接合性が低下する。
表面のAl系酸化物を適正量とする為には、例えば、アルカリ性溶液に接触させる場合は、溶液のpHは11以上、浴温は50℃以上とし、アルカリ溶液との接触時間は1秒以上とすることが好ましい。上記範囲内であればアルカリ溶液の種類に制限はなく、水酸化ナトリウムや水酸化ナトリウム系の脱脂剤などを用いることができる。
活性化処理は酸化処理の前に実施することが好ましいが、溶融亜鉛めっき後調質圧延の前で実施しても良い。この場合、めっき後、まず、活性化処理を施し、面内で均一にAl酸化物を適正量除去した後、調質圧延を実施、引き続き酸化処理とする事になる。
なお、本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板を製造するに関しては、めっき浴中にAlが添加されていることが必要であるが、Al以外の添加元素成分は特に限定されない。すなわち、Alの他に、Pb、Sb、Si、Sn、Mg、Mn、Ni、Ti、Li、Cuなどが含有または添加されていても、本発明の効果が損なわれるものではない。また、酸化処理中に不純物が含まれることにより、P、S、N、B、Cl、Na、Mn、Ca、Mg、Ba、Sr、Siなどが酸化物層中に微量取り込まれても、本発明の効果が損なわれるものではない。
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
板厚0.8mmの冷延鋼板上に、溶融亜鉛めっき皮膜を形成し、更に調質圧延を行った。調質圧延前もしくは後に、活性化処理として、水酸化ナトリウム系脱脂剤、日本パーカライジング(株)製FC-4370溶液に所定時間接触させた。調質圧延及び活性化処理に引き続き、酸化物形成処理として、活性化処理を施した試料を、酢酸ナトリウム3水和物、硫酸第一鉄7水和物の添加量、pHを適宜変えた酸性溶液に2〜5秒浸漬した。その後ロール絞りを行い、液量が3g/m2以下となる様に調整した後、5秒間間大気中、室温にて放置した。
なお、これらの試料は、いずれもめっき層の表面のZn系酸化物に網目状の微細凹凸を有することが、SEM観察により確認できた。図1は、本発明において、めっき層の凸状部分表面に形成されたZn系酸化物の微細凹凸の形状を説明する走査電子顕微鏡写真の一例である。図1において、黒色部分または黒灰色部分(1)が凹部で、この部分を囲むようにして網目状に白く見える部分(2)が凸部である。網目状とは、凹凸の平面構造として、図1に示されるように凸部が凹部(網の目)を囲むように形成された構造で、微細な凹部が不連続に分散していることが特徴である。このような微細な凹凸が微小油溜として働き、摺動抵抗を低下させることが期待される。以上の供試材について、プレス成形性試験として摺動特性の評価、また表面形態評価として、Zn系酸化物の被覆率、Zn系酸化物の微細凹凸の形状の測定を行った。
また比較のため、上記活性化処理及び酸化物形成処理を行っていない溶融亜鉛めっきままの供試材も用意し、上記と同様の評価を行った。
得られた結果を表1に示すとともに、以下に、特性評価方法、及び皮膜解析方法について記述する。
(1)プレス成形性(摺動特性)評価(摩擦係数測定)
プレス成形性を評価するために、各供試材の摩擦係数を以下のようにして測定した。
図2は、摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。同図に示すように、供試材から採取した摩擦係数測定用試料1が試料台2に固定され、試料台2は、水平移動可能なスライドテーブル3の上面に固定されている。スライドテーブル3の下面には、これに接したローラ4を有する上下動可能なスライドテーブル支持台5が設けられ、これを押上げることにより、ビード6による摩擦係数測定用試料1への押付荷重Nを測定するための第1ロードセル7が、スライドテーブル支持台5に取付けられている。上記押付力を作用させた状態でスライドテーブル3を水平方向へ移動させるための摺動抵抗力Fを測定するための第2ロードセル8が、スライドテーブル3の一方の端部に取付けられている。なお、潤滑油として、スギムラ化学社製のプレス用洗浄油プレトンR352Lを試料1の表面に塗布して試験を行った。
図3は使用したビードの形状・寸法を示す概略斜視図である。ビード6の下面が試料1の表面に押し付けられた状態で摺動する。図3に示すビード6の形状は幅10mm、試料の摺動方向長さ59mm、摺動方向両端の下部は曲率4.5mmRの曲面で構成され、試料が押し付けられるビード下面は幅10mm、摺動方向長さ50mmの平面を有する。このビードを用いると、摺動距離が長い条件での摩擦係数を評価できる。摩擦係数測定試験は、押し付け荷重N:400kgf、試料の引き抜き速度(スライドテーブル3の水平移動速度):20cm/minとした。なお、本条件の押付け面圧は、7.8MPaであり、比較的低い面圧条件である。
供試材とビードとの間の摩擦係数μは、式:μ=F/Nで算出した。
(2)Zn系酸化物の被覆率測定
Zn系酸化物の被覆率を測定するために、走査電子顕微鏡(LEO社LEO1530)を用い、加速電圧0.5 kVでインレンズタイプの二次電子検出器を用いて低倍率の二次電子像を観察した。この観察条件で、Zn系酸化物が形成された部分は暗いコントラストとして、このような酸化物が形成されていない部分と明瞭に区別することができる。得られた二次電子像を画像処理ソフトウエアにより二値化し、暗い部分の面積率を求めてZn系酸化物の形成された被覆率とした。
(3)Zn系酸化物の微細凹凸の形状及び粗さパラメータの測定
Zn系酸化物の微細凹凸が形成されていることは、走査電子顕微鏡(LEO社LEO1530)を用い、加速電圧0.5 kVで試料室内に設置されたEverhart-Thornly型の二次電子検出器を用いて高倍率の二次電子像を観察することにより確認した。
Zn系酸化物の表面粗さの計測は、電子線三次元粗さ解析装置(エリオニクス社製ERA-8800FE)を用いた。測定は加速電圧5kV、ワーキングディスタンス(作動距離)15mmにて行い、測定時の面内方向のサンプリング間隔は5 nm以下とした(観察倍率は40000倍以上)。なお、電子線照射による帯電を避けるため金蒸着を施した。Zn系酸化物が存在する領域一箇所当たり電子線の走査方向から長さ3μm程度の450本以上の粗さ曲線を切出した。測定した場所は一試料当たり3箇所以上である。
上記の粗さ曲線から装置に付属の解析ソフトウエアを用いて、粗さ曲線のRaと粗さ曲線のSを計算した。ここで、Ra、Sは、それぞれ、微細凹凸の粗さ、周期を評価するパラメータである。これらの一般的な定義に関しては、日本工業規格の「表面粗さ-用語」B-0660-1998等に記載されている。本発明例は、1μm以上10μm以下の長さの粗さ曲線についての粗さパラメータであるが、そのRa、Sは、上記文献で定義される数式に従って計算されている。この計算では、前記粗さ曲線の長さを、基準長さとした。ただし、基準長さで求められない場合は評価長さで求めるものとする。
電子線を試料表面に照射するとカーボン主体のコンタミネ−ションが成長し、それが測定データに現れる場合がある。この影響は今回のように測定領域が小さい場合顕著になりやすい。そこでデータ解析に当たっては、測定方向の長さ(約3μm)の半分をカットオフ波長とするSplineハイパーフィルターをかけて、この影響を除去した。本装置の較正には、米国の国立研究機関NISTにトレーサブルなVLSIスタンダード社のSHS薄膜段差スタンダード(段差18nm、88nm、450nm)を用いた。
Figure 2005120445
表1より、No.1〜7の本発明例は、Zn系酸化物が本発明の範囲内でめっき表面に存在しているため、摩擦係数が低く、摺動特性に優れている。中でもZn系酸化物が凸状部分に存在し、Zn系酸化物の微細凹凸の粗さ曲線のS、Raおよび被覆率が本発明範囲内であるNo2〜6では、さらに摩擦係数が低くなっているのがわかる。
一方、活性化処理及び酸化物形成処理を行っていない溶融亜鉛めっきままのNo.8は、酸化物が十分に形成されておらず、摩擦係数も高く、摺動特性が劣っている。
本発明の実施例に係わる溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層の平坦部表面に形成された網目状の微細凹凸を説明する図面代用の走査電子顕微鏡写真の一例である。 摩擦係数測定装置を示す概略正面図。 図1中のビード形状・寸法を示す概略斜視図。
符号の説明
1 摩擦係数測定用試料
2 試料台
3 スライドテーブル
4 ローラ
5 スライドテーブル支持台
6 ビード
7 第1ロードセル
8 第2ロードセル
N 押付荷重
F 摺動抵抗力

Claims (5)

  1. めっき層が主としてη相からなる溶融亜鉛めっき鋼板において、めっき表面にZn系酸化物及び/またはZn系水酸化物が存在し、該Zn系酸化物及び/または該Zn系水酸化物は、凸部と凸部より囲まれる不連続な凹部からなる微細凹凸を有することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
  2. 前記微細凹凸は、粗さ曲線の局部山頂の平均間隔(S)が10nm以上1000nm以下、平均粗さ(Ra)が1nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  3. 前記めっき表面は、前記Zn系酸化物及び/または前記Zn系水酸化物が有する前記凸部及び前記凹部よりも大なる凸状部分及び凹状部分を有しており、
    前記Zn系酸化物及び/または前記Zn系水酸化物は、前記めっき表面の凸状部分に存在することを特徴とする請求項1または2に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  4. 前記めっき表面の凸状部分に存在する前記Zn系酸化物及び/または前記Zn系水酸化物の微細凹凸は、粗さ曲線の局部山頂の平均間隔(S)が10nm以上500nm以下、平均粗さ(Ra)が1nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項3に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  5. 前記Zn系酸化物及び/または前記Zn系水酸化物が存在する部分は、前記めっき表面に占める割合が面積率で70%以上であることを特徴とする請求項1ないし4に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
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