JP2005118639A - フッ素イオン回収材及びその製造方法並びにフッ素イオンの回収方法 - Google Patents

フッ素イオン回収材及びその製造方法並びにフッ素イオンの回収方法 Download PDF

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Abstract

【課題】フッ素と親和性の高いチタンに着目し、また廃棄物を出すことなく、排水中のフッ素の基準濃度を満足すること、さらに回収したフッ素を効率良く濃縮及び回収することを課題とする。
【解決手段】TiOSO4・xH2Oから製造した水酸化チタンゲルからなるフッ素イオン回収材。TiOSO4・xH2Oを水に分散させた後、アンモニア水等のアルカリ溶液を添加し、その結果得られた生成物を沈降させて、水酸化チタンゲルを得るフッ素イオン回収材の製造方法。TiOSO4・xH2Oから製造した水酸化チタンゲルのpHを調整することによりフッ素イオンの吸着及び脱着を行うフッ素イオンの回収方法。
【選択図】 図6C

Description

本発明はチタン塩の水溶液にアルカリを添加することによって得られるゲル状のフッ素イオン回収材及びその製造方法並びにフッ素イオンの回収方法に関するものである。
近年、フッ素化合物は半導体等の製造、アルミニウム電解、過リン酸肥料、タイル、レンガ、ガラス繊維、セラミックス、練り歯磨きへの添加剤などに使用され、それらの工場からの排出により約15 ppmの高濃度のフッ素が水中に混入する機会が増加し、フッ素が人体へ及ぼす影響が懸念されている。
フッ素の人体へ及ぼす主な影響は、神経障害、肝臓障害、骨格障害などが報告され、これらの障害を 「 フッ素中毒症 」 と総称する。
現在、アメリカを中心としてイギリス、カナダ、オーストラリアなどの諸国で、フッ素が引き起こす中毒症の問題について激しい論争が起き、それが社会問題化している。
このようなフッ素の問題が世界的に叫ばれる中、我が国では、1999年2月 「 水質汚濁に係る環境基準及び地下水の水質汚濁に係る環境基準 」が改正され、環境基準として新しくフッ素が追加設定された。これを受けて工業排水基準の見直しが検討され、2001年7月には水質汚濁防止法の規定に基づき、環境省令が一部改正となった。それに伴い、フッ素の排水基準が強化され、フッ素の排水基準値はこれまでの15 ppmから8 ppmに引き下げられた。
この8 ppmという基準値は、従来から排水中のフッ素イオンの処理で用いられてきた、カルシウム凝集沈殿法によるフッ素イオン除去の限界を意味する。カルシウム凝集沈殿法とは炭酸カルシウムを用いて排水中のフッ素イオンをフッ化カルシウムとして沈殿させ回収する方法で、フッ化カルシウムとして回収可能なフッ素濃度の下限は約10 ppmであると言われている。つまり、この方法によるフッ素の回収は、将来的に厳しくなると考えられるフッ素の排出基準にも対応することが困難であると言える。
さらに、この方法は排水の処理後に大量のフッ化カルシウムの沈殿を生成させ、その廃棄物の処理に多大なコストが掛かるという問題を内包している。このため、カルシウム凝集沈殿法に代わる新規回収プロセスの必要性が高まっている。
従来、フッ素イオン等を含有する水をチタン、ジルコニウム、スズの含水亜鉄酸塩の1種を含有するイオン吸着剤付着三次元網目状構造体で濾過すること(例えば、特許文献1参照)が、フッ素イオンを含む廃水を、弱塩基性イオン交換樹脂等を使用して吸着すること(例えば、特許文献2参照)が、亜鉛電解液中に硫酸チタニル・2水塩を添加し、アルカリpH調整剤を加えて加水分解生成物を生成させてフッ素イオンを吸着除去する技術(例えば、特許文献3参照)が、フッ素イオンをフッ化カルシウムとして固定する技術(例えば、特許文献4参照)が開示されている。
しかし、これらは効率が悪くまた十分なフッ素イオンの除去ができていないと考えられる。
特開平9−187646号公報 特開平7−232915号公報 特開平6−57476号公報 特開2000−84570号公報
本発明は、フッ素と親和性の高いチタンに着目し、また廃棄物を出すことなく、排水中のフッ素の基準濃度を満足すること、さらに回収したフッ素を効率良く濃縮及び回収することを課題とする。
本発明は、リンと親和性の高いチタンに着目し、回収したリンを有効に再利用することを念頭に置き、新規な吸着材の開発を目指した。本発明は、酸化物硫酸塩のTiOSO4・xH2Oから、ゲル状の水酸化チタン吸着材の合成を行い、この水酸化チタンを用いることにより、フッ素イオンを選択的に、かつ迅速に回収可能であるという知見を得た。
本発明は、この知見に基づき、
1)TiOSO4・xH2Oから製造した水酸化チタンゲルからなることを特徴とするフッ素イオン回収材、2)乾燥後の水酸化チタンゲルが10〜750μmのフレーク状粒子を備えていることを特徴とする1記載のフッ素イオン回収材、3)水酸化チタン粒の粒度分布が1〜20μmであり、平均粒径が1〜10μmであることを特徴とする1記載のフッ素イオン回収材、4)TiOSO4・xH2Oにおけるxが2であることを特徴とする1〜3のいずれかに記載のフッ素イオン回収材、5)フッ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオンを含有する溶液中において、フッ素イオンの選択的吸着能を備えていることを特徴とする1〜4のいずれかに記載のフッ素イオン回収材、を提供する。
本発明は、また
6)TiOSO4・xH2Oを水に分散させた後、アンモニア水等のアルカリ溶液を添加し、その結果得られた生成物を沈降させて、水酸化チタンゲルを得ることを特徴とするフッ素イオン回収材の製造方法、7)浮遊する羽衣状の生成物を沈降させ、室温にて熟成させることを特徴とする6記載のフッ素イオン回収材の製造方法、を提供する。
本発明は、さらに
8)TiOSO4・xH2Oから製造した水酸化チタンゲルのpHを調整することによりフッ素イオンの吸着及び脱着を行うことを特徴とするフッ素イオンの回収方法、9)低pHにおいてフッ素イオンの吸着を行い、高pHにおいてフッ素イオンの脱着を行うことを特徴とする8記載のフッ素イオンの回収方法、10)フッ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオンを含有する溶液中において、選択的にフッ素イオンを吸着することを特徴とする8又は9記載のフッ素イオンの回収方法、を提供する。
本発明の回収材は、人体及び環境に優しい素材を出発物質とし、エネルギーを外部からできるだけ加えずに常温、常圧の水溶液系における合成が可能である。すなわち、その合成プロセスも環境に配慮したものである。また、本発明における回収材の性能は、他の共存イオンが存在している溶液中においてもフッ素イオンのみを選択的にかつ迅速に回収可能であり、さらに一度回収したフッ素イオンを脱着させることも可能である。この発明により、化学・医薬などの工場から排出される廃液を浄化することが可能であるという優れた効果を有する。
本発明のゲル状の水酸化チタンからなる吸着材及び参考として水酸化チタン由来の粉末状の具体的な製造(調製)方法について述べる。
(吸着材の合成)
(1)水酸化チタンゲルの製造(調製)
TiOSO4・xH2O を2.0 g 秤量し純水10 mlに分散させ溶液が完全に透明になるまで攪拌した後に、アルカリ溶液であるアンモニア水10 ml をゆるやかに添加し、浮遊した羽衣状の生成物を得た。その後、羽衣状の生成物を静かに重力により沈降させ、室温にて所定時間熟成させることにより水酸化チタンゲル(特別な場合を除き、以下「THG」を使用する)を得た。
なお、水酸化チタンゲルの製造に際し、水に溶解させるTiOSO4・xH2Oの量、アンモニア水の添加量、あるいは沈降・熟成の温度・時間は任意に設定できるものであり、上記に述べた数値条件に限定されるものではない。
(2)水酸化チタン粉末の調製
参考までに、水酸化チタン粉末の製造(調製)を説明する。
TiOSO4・xH2Oを8.0 g 秤量し純水50 mlに分散させた懸濁液を5分間静置する。その後アンモニア水10 mlをゆっくりと添加し、室温にて12時間熟成させた。そして生成した沈殿物のろ過、洗浄、乾燥 ( 70 ℃で10時間、その後110 ℃で4時間 ) を行い、粉末状水酸化チタン(特別な場合を除き、以下「THP」を使用する)を得た。
(吸着材の特性評価)
調製した吸着材の特性評価を行うために種々の解析を行った。その詳細を以下に述べる。
(XRD解析)
TiOSO4・xH2Oおよび乾燥状態のTHGの粉末を、粉末X線回折装置を用いて分析した(理学電機(株)製、RAD-PCを使用)。
(吸着材のチタン含有量の算出)
TiOSO4・xH2OおよびTHPを加熱し、その重量減少からチタン含有量を求めた(理学電機(株)製TG-DTA、Rigaku TG8120 を使用)。測定条件は標準試料としてAl2O3を用いて、空気中で昇温速度 10 ℃/min、保持時間10minで最高温度 600 Kまたは700 Kまで加熱した。
(形状観察)
TiOSO4・xH2O、乾燥状態のTHGの形状をSEM( 日立製作所(株)製、走査型電子顕微鏡S-2400 )を用いて観察した。
(粒度分布測定)
THGの粒度分布および平均粒径をレーザー回折散乱式粒度分布測定計( 日機装(株)製、MICROTRAC9320-X100 )を用いて測定した。
(合成した吸着材によるフッ素イオンの吸着試験)
合成した吸着材を用いて、フッ化ナトリウム水溶液からフッ素イオンの吸着実験を行った。その詳細を以下に述べる。
(1)水酸化チタンゲルによる種々の濃度の水溶液からのフッ素イオン吸着
TiOSO4・xH2O 2.0 gから調製したTHGの全量を、[ F]0 =50 及び5 ppmの濃度に調整したフッ化ナトリウム水溶液に投入し、硝酸を用いて溶液をpH 4 に調整した。pHが安定した後に、所定の時間ごとに10 mlの溶液を採取し、採取した溶液を10倍に希釈した後に、溶液中のフッ素イオン濃度をイオンクロマトグラフィー( 日本ダイオネクス(株)製、イオンクロマトグラフィー DX-120 )を用い定量した。
(2)水酸化チタンゲルによる種々のpHの水溶液からのフッ素イオン吸着
TiOSO4・xH2O 2.0 gから調製したTHGの全量を [ F-]0 =50 ppmのフッ化ナトリウム水溶液に投入し、硝酸またはアンモニア水を用いて溶液をpH 2〜10に調整した。
溶液のpHが安定した後、所定の時間で10 mlの溶液の採取を行い、採取した溶液を10倍に希釈し溶液中のフッ素イオン濃度を、イオンクロマトグラフィーを用い定量した。また、溶液のpH変化をガラス電極式水素イオン濃度計( TOA社製、pH METER HM-20E )を用い常時観測した。
(3)水酸化チタンゲルによるフッ素イオンの吸脱着
TiOSO4・xH2O 2.0 gから調製したTHGの全量をフッ化ナトリウム水溶液( [F-]0 =50 ppm )に投入した後に、フッ素イオンを吸着するため、硝酸を用いて溶液をpH 3に調整した。
溶液のpHが安定してから1時間後に10 mlの溶液を採取した後に、フッ素イオンを脱着させるため、アンモニア水を用いて溶液をpH 9に調整し、pHが安定してから1時間後に10 mlの溶液の採取を行った。
pH 3およびpH 9 における溶液採取を1サイクルとして、3サイクル繰り返し行い、採取した溶液を10倍に希釈し溶液中のフッ素イオン濃度を、イオンクロマトグラフィーを用い定量した。
(4)水酸化チタンゲルによるフッ素イオンの選択的吸着
硝酸イオンおよび硫酸イオンが共存した溶液からのフッ素イオンの選択的吸着挙動を調べた。その方法を以下に示す。TiOSO4・xH2O 2.0 gから調製したTHGの全量を硝酸イオンおよび硫酸イオンが共存した[ F-]0 =50 ppmの水溶液に投入し、硝酸を用いて溶液をpH 4に調整した。
溶液のpHが安定してから、所定の時間ごとに10 mlの溶液を採取し、採取した溶液を10倍に希釈した後に、採取した溶液中のフッ素イオン、硝酸イオンおよび硫酸イオン濃度を、イオンクロマトグラフィーを用い定量した。
(結果および考察)
(吸着材のキャラクタリゼーション)
TiOSO4・xH2OとTHPのXRD結果を図1に示す。TiOSO4・xH2OのXRDパターンにおいて、低角度側でTiOSO4・2H2Oに帰属されるピークが観測されたことから、TiOSO4・xH2O はTiOSO4・2H2Oであると考えられる。一方、THPのXRD結果から、この物質は非晶質であることが分かった。図2にTHPのTG-DTA曲線を示す。
TiOSO4・xH2OのTG-DTA曲線を図3に示す。TiOSO4・xH2OのDTA曲線において300 Kから560 Kの間で3つの吸熱ピークが観測された。
1つ目の吸熱ピークは370 Kまでの低温域で現れたことから、表面吸着水の蒸発による吸熱反応を示していると考えられる。
これに対し2つ目および3つ目の吸熱ピークは、2つの結晶水の蒸発による吸熱反応であると考えられる。また、1つ目、2つ目、および3つ目の各吸熱ピークに対応する重量減少率は、TG曲線からそれぞれ6.1、6.9、および10.4 %であり、全体の重量減少率は23.4 %であった。
以上の結果から、表面吸着水を含むTiOSO4・xH2Oのxの値を求めるとx= 2.7であった。そこで、TiOSO4・2.7 H2Oが含有する全てのチタンがTHGの合成において使われていると仮定し、TiOSO4・xH2O 2 gから合成したTHGのチタン含有量を算出した。その結果、TiOSO4・xH2O 2 gから合成したTHG は9.58×10-3 molのチタンを含有することが分かった。
しかしx=2.7という値はXRDで同定された結晶構造のxの値と異なる。この誤差の原因は、試料表面に存在する表面吸着水の重量減少率を結晶水の重量減少率としてxの値を計算したためであると考えられる。
全重量減少率(23.4%)−表面吸着水に帰属される重量減少(6.9%)=結晶水に帰属される重量減少率(17.3%)
そこで、上式に示したように、全重量減少率から表面吸着水に帰属される重量減少率を除いた17.3 %がTiOSO4・xH2O中に含まれる結晶水に帰属される重量減少率であるから、その値を用いてTiOSO4・xH2Oのxの値を算出した。その結果、x≒ 2であった。
これらの計算結果からTiOSO4・xH2Oは2つの結晶水を持つTiOSO4・2H2Oであると考えられ、この結果はXRDで同定された結晶構造と一致する。
TiOSO4・2H2O、THPのSEM写真及び乾燥させたTHGのSEM写真を、それぞれ図4、図5及び図6A、図6B、図6Cに示す。TiOSO4・2H2Oは長さ約35、太さ約4 μmの棒状の結晶であった。
これに対し乾燥させたTHGは薄く小さな層が幾つも重なり、10〜750μmのフレーク状粒子を形成していた。このフレーク状の粒子の大きさにばらつきが見られるのは、THGを乾燥させたときに粒子が凝集したためと考えられる。図6B、図6Cは、個々のフレーク状の粒子を拡大したものである。THGはゲル状でフレキシブルな柔らかい構造を呈している。
THGの粒度分布測定結果を図8に示す。また、参考までにTHPの粒度分布測定結果を図7に示す。
THGの粒度分布はシャープで左右対称な形をしていた。また、THPおよびTHGの粒度分布はそれぞれ0.6〜22 μmおよび1.8〜11 μmであり、平均粒径はそれぞれ3.6および3.7μmであった。通常、水酸化チタン粒の粒度分布は1〜20μmであり、平均粒径は1〜10μmである
(水酸化チタンゲルによるフッ素イオンの吸着挙動)
水酸化チタンゲルを用いて種々の濃度の水溶液からフッ素イオンを回収し、その吸着量を調べることによって、水酸化チタンゲルの低濃度フッ素イオンの吸着能力およびフッ素イオン吸着容量の違いを調べた。
[ F]0 =50 ppm、pH 4 のフッ化ナトリウム水溶液からのフッ素イオンの吸着を行った結果を図9に示す。比較のためにTHPの同吸着量の変化を同図に示す。
THGによるフッ素イオンの吸着量実験では、実験開始から約5分で初期濃度の70%以上を回収し、さらに平衡に達するまでの時間は約30分であった。一方、THPによるフッ素イオンの吸着量が平衡に達するまでの時間は約4時間であった。また、THPおよびTHGによるフッ素イオン吸着量が平衡に達したときのチタン1 molあたりのフッ素イオン吸着量は、それぞれ4.95×10-2 および1.97×10-1 molであった。
[ F]0 =5 ppm、pH 4 のフッ化ナトリウム水溶液からフッ素イオンの吸着を行った実験の結果を表1に示す。THGは実験開始から1時間で溶液中の全てのフッ素イオンを吸着した。これに対し、THPは24時間経過しても溶液中のフッ素イオンを全く吸着しなかった。
THGがTHPよりもフッ素イオン吸着能力が高い理由として、形態の違いによる表面積の差が挙げられる。すなわち図6B、図6Cに示すように、THGはゲル状でフレキシブルな柔らかい構造をしているために外部表面だけでなく、内部表面もフッ素イオンの吸着に使うことが可能であるが、THPは棒状結晶で自由度の低い構造であるため、外部表面だけが有効に作用するからであると考えられる。
Figure 2005118639
(水酸化チタンゲルの吸着特性について)
1.フッ素イオン吸着に及ぼすpHの影響
水酸化チタンゲルを用いて種々のpHのフッ化ナトリウム水溶液からフッ素イオンを吸着し、その吸着挙動を調べることによって、水酸化チタンゲルによるフッ素イオンの吸着挙動に及ぼすpHの影響を調べた。
pH 2、3、4の3種類のフッ素イオン水溶液( [ F-]0 =50 ppm )からフッ素イオン吸着を行った結果を図10に示す。
フッ素イオン吸着量が平衡に達するまでの時間はpH2では約20 min、pH 3、4ではそれぞれ約10 minであった。また、そのときのチタン1 molあたりのフッ素イオン吸着量はpH 2で約1.5×10‐1 mol、 pH 3および4 ではそれぞれ約 2.4ならびに1.9 ×10‐1 mol であった。
この結果からTHGのフッ素イオン吸着量および吸着量が平衡に達するまでの時間は、溶液のpHにより異なることが分かった。
pH 2、3、4の3種類のフッ化ナトリウム水溶液( [ F]0 =50 ppm )からフッ素イオンを吸着した際の溶液のpH変化を図11に示す。
初期pH 2、3、4の全ての溶液中においてTHGによるフッ素イオンの吸着に伴う溶液のpHの上昇が確認された。この結果はTHGの系においてフッ素イオンの吸着が、溶液中のフッ素イオンとTHGの持つOH間のイオン交換反応によるものであることを示唆している。
溶液をpH 2〜10まで変化させ、各pHで1時間フッ素イオンの吸着実験を行った結果を図12に示す。
溶液がpH 2からpH 3の間では溶液のpHの上昇に伴いフッ素イオンの吸着量は増加し、pH 3においてフッ素イオンの吸着量は最も多くなり、チタン1 molあたり2.38×10‐1 molを吸着した。
しかし、pH 3からpH 8の間では、溶液のpHの上昇に伴って吸着量が直線的に減少し、pH 9以上では吸着した全てのフッ素イオンを脱着した。
この結果から、THGのフッ素イオン吸着量はpH依存性を持つことが分かった。つまりTHGは溶液のpHを調整することで簡便にフッ素イオンの吸脱着が可能であることが分かった。なお、pHの条件は、フッ素イオンを含有する溶液の状況により変化するものであり、その回収の対象となる液体(溶液)の種類に応じて、適宜調節することができる。
水酸化チタンは溶液のpHによって存在形態が変化し、pH 2ではTi(OH)2 2+、pH 3ではTi(OH)3 +、pH 4以上ではTi(OH)4として溶液中に安定に存在することが知られている。
したがってpH 2におけるフッ素イオンの吸着量が、pH 3におけるフッ素イオンの吸着量と比べて減少している理由は、pH 2の溶液中においてTHGが一部溶解し、それらがTi(OH)2 2+イオンとして溶液中に存在しているからである。
また、pH 3において吸着量が最も多くなるのは、pH 3付近において溶液中の水酸化チタンがTi(OH)3 +からTi(OH)4またはTi(OH)3 +からTi(OH)4への平衡状態にあり、存在状態が最も不安定で反応性に富むためであると考えられる。
(吸脱着サイクル数に伴う吸着量の変化)
本発明の水酸化チタンゲルを用いて、フッ化ナトリウム水溶液からのフッ素イオンの吸着操作及び吸着材からのフッ素イオンの脱着操作を繰返し行い、その都度溶液中のフッ素イオン濃度を定量し、水酸化チタンゲルによるフッ素イオンの吸着量及び脱着量を調べることによって、水酸化チタンゲルによる吸脱着サイクル数に伴う吸着量の変化を調べた。
この結果、1回目のサイクルにおけるフッ素イオンの吸着量及び脱着量は、それぞれ2.1及び2.1×10−1molであり、フッ素イオンの脱着率は100%であった。また、2回目及び3回目のサイクルにおけるフッ素イオンの吸着量は、2.2及び2.2×10−1molであり、1回目のサイクルと殆ど変化はなかった。一方、フッ素イオンの脱着量はそれぞれ2.2及び2.2×10−1molであり、脱着率は共に100%であった。この結果は7回目まで実施したが、同様の結果であった。
以上から、本発明の水酸化チタンゲルは、フッ素イオンの吸脱着サイクルでは殆ど変化せず、安定した吸脱着を繰返すことが分かった。
(フッ素イオン吸着の選択性)
一般に工業排水中にはフッ素イオンの他に硝酸イオン、硫酸イオン等の様々なアニオンが共存している。本研究でターゲットにした排水中においても硝酸イオン、硫酸イオン等のアニオンが共存していた。
このような工業排水中から吸着材を用いてフッ素イオンの吸着を行うとき、吸着材にフッ素イオンの選択的吸着能力があるならば、種々の排水中のフッ素イオンを選択的に吸着可能であり、共存アニオンの吸着によるフッ素イオンの吸着効率の低下を避けることができる。
つまり、選択的なフッ素イオンの吸着能力は効率のよいフッ素イオンの回収を目指す上で重要な条件と言える。
そこで、原料由来の硫酸イオンおよびpH調整に用いる硝酸由来の硝酸イオンが共存したフッ化ナトリウム水溶液から、水酸化チタンゲルを用いてフッ素イオンの吸着を行い、フッ素イオン、硝酸イオンおよび硫酸イオンの吸着量を調べることによって、水酸化チタンゲルの選択的なフッ素イオンの吸着能力を調べた。
フッ素イオンの選択的回収実験の結果を表2に示す。
Figure 2005118639
溶液中のフッ素イオン、硝酸イオンおよび硫酸イオンの初濃度はそれぞれ50、8000及び1100 ppmであり、THGによる吸着を開始してから10分後の濃度は、それぞれ15、8000及び 1100 ppm、27分後の濃度は、それぞれ12、8000及び 1100 ppm、60分後の濃度は、それぞれ12、8000及び 1100 ppmであった。
フッ素イオン、硝酸イオンおよび硫酸イオンのうちフッ素イオンの濃度だけが短時間で急速に減少したが、他のアニオンの濃度にほとんど変化はなかった。
また、THGによるフッ素イオンの吸着量は60 分間でチタン1 molあたり2.07×10‐1 molであった。これらの結果からTHGはフッ素イオンに対して選択的な吸着能力を持つことが分かった。
以上から、THPとTHGの比較実験の結果より、THGは低濃度のフッ化ナトリウム水溶液から、全てのフッ素イオンを吸着することが可能であり、またTHGはTHPと比較して吸着容量も大きいことが分かる。
また、THGによるフッ素イオン吸着量および吸着量が平衡に達するまでの時間は溶液のpHによって異なることが分かる。そして、フッ素イオン吸着に伴う溶液のpHの上昇から、THGの系におけるフッ素イオンの吸脱着は、溶液中のフッ素イオンとTHGのOH間で起こるイオン交換反応によって行われることが推測される。
THGは溶液のpHを調整することによって簡便にフッ素イオンの吸脱着が可能であり、さらにTHGによるフッ素イオンの吸着量および脱着量は7回の吸脱着サイクルではほとんど変化しないことが分かる。
さらに、THGは大過剰の硝酸イオンおよび硫酸イオンの存在する溶液中においても、フッ素イオンを選択的に吸着可能であることが分かる。
本発明の回収材は、人体及び環境に優しい素材を出発物質とし、エネルギーを外部からできるだけ加えずに常温、常圧の水溶液系における合成が可能である。
すなわち、その合成プロセスも環境に配慮したものである。また、本発明における回収材の性能は、他の共存イオンが存在している溶液中においてもフッ素イオンのみを選択的にかつ迅速に回収可能であり、さらに一度回収したフッ素イオンを脱着させることも可能である。
本発明は、このように半導体製造、金属表面処理、ガラス加工・窯業、化学・医薬等、多くの業種の生産工場において利用可能であり、工業排水の水質汚染の問題解決に有効である。
XRDによるTHP及びTiOSO・xHOの構造解析を示す図である。 THPのTG−DTA曲線を示す図である。 TiOSO・xHOのTG−DTA曲線を示す図である。 TiOSO・2HOのSEM写真(画像)を示す図である。 THPのSEM写真(画像)を示す図である。 THGのSEM写真(画像)を示す図である。 図6Aの拡大図である。 図6Aの他の拡大図である。 THPの粒径分布を示す図である。 THGの粒径分布を示す図である。 吸着時間に対するTHG及びTHPのフッ素イオン吸着量の変化を示す図である。 THGのフッ素イオン吸着量に及ぼすpHの影響を示す図である。 フッ素イオンを吸着した際の溶液のpH変化を示す図である。 溶液のpHを変化させ、各pHでフッ素イオンの吸着実験を行った結果を示す図である。

Claims (10)

  1. TiOSO4・xH2Oから製造した水酸化チタンゲルからなることを特徴とするフッ素イオン回収材。
  2. 乾燥後の水酸化チタンゲルが10〜750μmのフレーク状粒子を備えていることを特徴とする請求項1記載のフッ素イオン回収材。
  3. 水酸化チタン粒の粒度分布が1〜20μmであり、平均粒径が1〜10μmであることを特徴とする請求項1記載のフッ素イオン回収材。
  4. TiOSO4・xH2Oにおけるxが2であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフッ素イオン回収材。
  5. フッ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオンを含有する溶液中において、フッ素イオンの選択的吸着能を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフッ素イオン回収材。
  6. TiOSO4・xH2Oを水に分散させた後、アンモニア水等のアルカリ溶液を添加し、その結果得られた生成物を沈降させて、水酸化チタンゲルを得ることを特徴とするフッ素イオン回収材の製造方法。
  7. 浮遊する羽衣状の生成物を沈降させ、室温にて熟成させることを特徴とする請求項6記載のフッ素イオン回収材の製造方法。
  8. TiOSO4・xH2Oから製造した水酸化チタンゲルのpHを調整することによりフッ素イオンの吸着及び脱着を行うことを特徴とするフッ素イオンの回収方法。
  9. 低pHにおいてフッ素イオンの吸着を行い、高pHにおいてフッ素イオンの脱着を行うことを特徴とする請求項8記載のフッ素イオンの回収方法。
  10. フッ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオンを含有する溶液中において、選択的にフッ素イオンを吸着することを特徴とする請求項8又は9記載のフッ素イオンの回収方法。
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