JP2005114875A - 表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 内部に物体を配置し、内部の物体を視認できるようにしたり、遮蔽することができる透明感のあるディスプレイを実現する。
【解決手段】 物体3の前後左右および上方を薄い光学素子1で取り囲み、駆動回路によって各光学素子1を個別に駆動し、別途配置した照明光源2から照明光をあて、光学素子1の光線透過状態と光線散乱状態とを制御し、物体3を視認できるようにしたり、遮蔽したりして、透明感のあるディスプレイを構成する。駆動回路によって、すべての光学素子を同時に散乱状態にするようにしてもよい。例えば、物体3として商品を配置し、売店のディスプレイとして用いてもよい。
【選択図】 図5
【解決手段】 物体3の前後左右および上方を薄い光学素子1で取り囲み、駆動回路によって各光学素子1を個別に駆動し、別途配置した照明光源2から照明光をあて、光学素子1の光線透過状態と光線散乱状態とを制御し、物体3を視認できるようにしたり、遮蔽したりして、透明感のあるディスプレイを構成する。駆動回路によって、すべての光学素子を同時に散乱状態にするようにしてもよい。例えば、物体3として商品を配置し、売店のディスプレイとして用いてもよい。
【選択図】 図5
Description
本発明は、光学装置の内部に置いた物体を、観察者に見せたり遮蔽することができる光学装置に関する。
売店、デパートなど商品を展示する際に、ショーケースなどに収容し、所定の照明光をあてて展示されている。色合いや、実際の使用状態、などを連想させたり、観察者の興味を引くことができるように、さまざまなディスプレイの構成が試みられている。
また、ショーケースのガラスを液晶調光体とし、電気的な制御によって、光線散乱状態や光線透過状態の間を転移させ、状況に応じて、商品を見せたり、遮蔽したりするように構成することができる。
たとえば、特許文献1では、面状調光素子とカラーフィルタとを組み合わせた保温装置が示されている。面状調光素子の光線透過状態・光線散乱状態を切り替えることによって、内部の物品を見ることができる考案である(図9参照)。
なお、本出願人は、特願2003−025153号において、フィールドシーケンシャルカラー駆動(FSC駆動)によって駆動する画像表示装置の出願を行っている。特願2003−025153号に示された画像表示装置では、電圧無印加時に光を透過し電圧印加時に光を散乱する表示素子を用いる。そして、2以上の光源色を発する光源を設け、その光源において順次発色を変える発色の切替タイミングと、表示素子に設けられている表示部の駆動のタイミングとを合わせることにより、表示素子における任意の場所に所望の発色をさせている。
本発明は、光学素子の光学状態を制御することで、従来にない優れた見栄えのディスプレイを得ようとする。
特に、物体を視認できる場合に、取り囲む光学素子の透明感が高く、違和感なく物体を見ることができるディスプレイを提供しようとする。
すなわち、本発明の態様1は、一対の電極付き基板間に電気光学変調層が挟持されてなる光学素子と、光学素子を駆動する駆動回路とが設けられ、電気光学変調層は駆動回路からの信号によって、光線透過状態と光線散乱状態を含む2以上の光学状態を転移することができる表示装置であって、物体を取り囲むように、複数の光学素子が配置され、前記光学素子の光学状態が駆動回路によって制御され、光学素子の一方の外表面から他方の外表面に至る光線の透過率が80%以上とされ、照明光によって物体が光学素子を通して視認することができ、かつ、前記光学素子が光線散乱状態に置かれた場合には、物体が遮蔽され視認できないように構成されてなる光学装置を提供する。
態様2は、物体の前後左右および上方に光学素子が少なくとも一枚ずつ配置されてなる態様1に記載の光学装置を提供する。
態様3は、すべての光学素子が同時に光線散乱状態に置くことができる態様1または2に記載の光学装置を提供する。
態様4は、物体が商品である態様1、2または3に記載の光学装置を提供する。
態様5は、売店のディスプレイとして用いられる請求項1、2、3または4に記載の光学装置を提供する。態様6は、光学素子がない面の、物体側に位置する内面側がミラーとなっている態様1、2、3、4または5のいずれかに記載の光学装置を提供する。また、態様7は、それぞれの光学素子が光線散乱状態となる時間がずれており、照明光の色が光線散乱状態と連動している態様1〜6のいずれかに記載の光学装置を提供する。
本発明によれば、使用しないときは透明で、その存在自体が目障りになったり、圧迫感を与えることが少なく、開放感があり、透明感のあるディスプレイを行うことができる。
また、あたかも空間に透明な画像が浮いているような印象を与えるディスプレイを実現することができる。
以下に、本発明の実施の形態を図、実施例等を使用して説明する。なお、これらの図,実施例等および説明は本発明を例示するものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の趣旨に合致する限り他の実施の形態も本発明に属し得ることは言うまでもない。図中、同一の要素については同一の符号を付した。
本発明に用いる光学素子は、液晶層が光線透過状態と光線散乱状態とを繰り返しとることができるようになしたものである。なお、光線透過状態と光線散乱状態とは、可視光に対し適用される状態である。光線透過状態としては、光学素子で物体を見ることができる場合には光学素子が透明で開放感を与える。基本的に、光学素子の光線透過率が高いことが好ましい。光学装置の背後を光学装置の散乱時の色合い(照明光があたったヘイズ状態)と似たような色合いに設定しておけば、背景に光学装置がとけこみ、あたかも物体が消失したかのような印象を観察者に与えることもできる。
この光線透過状態と光線散乱状態との切り替えは、光学素子が、液晶層と、液晶層を挟持する透明な一対の電極付き基板とを備え、たとえば、透明電極間に電圧を印加した時には液晶層が光線散乱状態をとり、透明電極間の電圧印加を停止した時には液晶層が光線透過状態をとるようになすことによって実現することができる。
液晶層としては液晶と硬化樹脂とよりなる複合体を使用することができる。液晶と硬化樹脂とよりなる液晶層は、透明な一対の電極付き基板に液晶と硬化性化合物とを含有する組成物を挟持し、熱や紫外線、電子線などの手段を用いてこの硬化性化合物を硬化させて、液晶/硬化樹脂複合体層として形成できる。
本発明に係る硬化樹脂としては、透明性を持ち、本発明の趣旨に反しない限り、公知のどのようなものでもよいが、電圧を印加した場合に実質的に液晶のみが応答するように液晶と硬化樹脂とが分離した構造を持つことが、高速応答性を有する液晶層を実現する上で好ましい。
このような構造を持つ硬化樹脂を形成するための硬化性化合物としては、液晶に溶解可能な硬化性化合物を選択することで、未硬化時の混合物の配向状態を制御可能となり、硬化樹脂を硬化する際に高い透明性を保持することが可能となる。なお、本発明において、物体とは商品、人間、掲示物、文字なども含まれることはいうまでもない。さらに、時間的に物体の状態が変化するものでもよい。
さらに、基板が液晶層と接触する側には液晶分子のプレチルト角が、基板表面に対して60度以上であるようにする処理が施されていると配向欠陥を少なくすることができ、透明性が向上するため好ましい。この際、ラビング処理はされていてもされていなくてもよい。プレチルト角は70度以上であることがより好ましい。なお、このプレチルト角は、基板表面に垂直の方向を90度として規定したものである。
硬化性化合物としては、式1の化合物や式2の化合物を例示できる。
A1−O−(R1)m−O−Z−O−(R2)nO−A2 ・・・ (1)
A3−(OR3)o−O−Z’−O−(R4O)p−A4 ・・・ (2)
A3−(OR3)o−O−Z’−O−(R4O)p−A4 ・・・ (2)
ここで、A1,A2,A3,A4は、それぞれ独立に、アクリロイル基、メタクリロイル基、グリシジル基またはアリル基であり、R1,R2,R3,R4は、それぞれ独立に、炭素数2〜6のアルキレン基であり、Z,Z’は、それぞれ独立に、2価のメソゲン構造部であり、m,n,o,pは、それぞれ独立に、1〜10の整数である。
式1,式2のメソゲン構造部Z,Z’と硬化部位A1,A2,A3,A4との間に、R1,R2,R3,R4を含む分子運動性の高いオキシアルキレン構造を導入することで、硬化に際して、硬化過程における硬化部位の分子運動性を向上でき、短時間で十分な硬化が可能となる。
式1,式2の硬化部位A1,A2,A3,A4としては、光硬化や熱硬化が可能な上記の官能基であればいずれでもよいが、なかでも、硬化時の温度を制御できることから光硬化に適するアクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
式1,式2のR1,R2,R3およびR4の炭素数については、その分子運動性の観点から1〜6が好ましく、炭素数2のエチレン基および炭素数3のプロピレン基がさらに好ましい。
式1,式2のメソゲン構造部Z,Z’としては、1,4−フェニレン基の連結したポリフェニレン基を例示できる。この1,4−フェニレン基の一部または全部を1,4−シクロへキシレン基で置換したものであってもよい。また、これら1,4−フェニレン基や置換した1,4−シクロへキシレン基の水素原子の一部または全部が、炭素数1〜2のアルキル基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基などの置換基で置換されていてもよい。
好ましいメソゲン構造部Z,Z’としては、1,4−フェニレン基が2個連結したビフェニレン基(以下、1,4−フェニレン基が2個連結したビフェニレン基を4,4−ビフェニレン基ともいう。)、3個連結したターフェニレン基、およびこれらの水素原子の1〜4個が炭素数1〜2のアルキル基、フッ素原子、塩素原子もしくはカルボキシル基に置換されたものを挙げることができる。最も好ましいものは、置換基を有しない4,4−ビフェニレン基である。メソゲン構造部を構成する1,4−フェニレン基または1,4−シクロへキシレン基同士の結合は全て単結合でもよいし、以下に示すいずれかの結合でもよい。
式1,式2のm,n,o,pは、それぞれ独立に、1〜10であることが好ましく、1〜4が更に好ましい。あまり大きいと液晶との相溶性が低下し、硬化後の光学素子の透明性を低下させるからである。
本発明に使用できる硬化性化合物の例を以下に示す。
液晶と硬化性化合物とを含有する組成物には、上記式(1),式(2)で表される硬化性化合物を含め、複数の硬化性化合物を含有していてもよい。たとえば、この組成物に、式1,式2で、m,n,o,pの異なる複数の硬化性化合物を含有させると、液晶との相溶性を向上させることができる場合がある。
液晶と硬化性化合物とを含有する組成物は硬化触媒を含有していてもよい。光硬化の場合、ベンゾインエーテル系、アセトフェノン系、フォスフィンオキサイド系などの一般に光硬化に用いられる光重合開始剤を使用できる。熱硬化の場合は、硬化部位の種類に応じて、パーオキサイド系、チオール系、アミン系、酸無水物系などの硬化触媒を使用でき、また、必要に応じてアミン類などの硬化助剤も使用できる。
硬化触媒の含有量は、含有する硬化性化合物の20重量%以下が好ましく、硬化後に硬化樹脂の高い分子量や高い比抵抗が要求される場合は1〜10重量%とすることが更に好ましい。
液晶分子を、基板表面に対してプレチルト角が60度以上になるように配向させる処理方法としては、垂直配向剤を用いる方法がある。垂直配向剤は、たとえば界面活性剤を用いる方法や、アルキル基やフルオロアルキル基を含むシランカップリング剤などで基板表面を処理する方法、または日産化学工業社製のSE1211やJSR社製のJALS−682−R3等の市販の垂直配向剤を用いる方法がある。垂直配向状態から任意の方向に液晶分子が倒れた状態を作るためには、公知のどのような方法を採用してもよい。垂直配向剤をラビングしてもよい。また、電圧が基板に対して斜めに印加されるように、電極にスリットを設け、あるいは電極上に三角柱を配置する方法を採用してもよい。
本発明の光学素子を形成するために、用いることができる液晶としては、公知の液晶から適宜選択できるが、誘電率異方性が負のものを用いるのが好ましい。また駆動電圧を低下させるためには誘電率異方性が大きい方が好ましい。
光学素子に用いる基板としては、透明性が確保できればどのような公知のものを使用することもできる。ガラス基板を使用できる。プラスチックやフイルムでもよい。また、光学素子は平面状である必要はなく、曲げた形状の光学素子でもよい。円筒形状と半球形状の光学素子とを組み合わせて、全体の形状が曲面体である光学装置を作成することもできる。
基板上に設ける電極としてはITO(酸化インジウム−酸化スズ)のような金属酸化物の透明電極材料を使用できる。
一対の配向処理済み基板の配向方向の組み合わせとしては、平行、直交のいずれでもよく適当な角度で配置すればよい。電極付き基板の電極表面上に樹脂薄膜を設け、これをラビングするなどして、電極表面の液晶を配向させる公知の機能を付与することもできる。
二つの基板間にある液晶層の厚さは、スペーサー等で規定することができる。その間隔は1〜50μmが好ましく、3〜30μmがさらに好ましい。液晶層の厚さが狭すぎるとコントラストが低下し、大きすぎると駆動電圧が上昇する傾向が増大するため好ましくない場合が多い。
図1には、このような構造を有する光学素子の一例の模式的断面図を示している。図1において、一対のガラス基板21,22の相対する面には、透明電極23,24が設けられる。さらに内側には配向膜が設けられている(図示を省略)。この配向膜を設けない場合もある。そして、この配向膜の間に、図示されていないスペーサーにより厚みを規定した液晶層27が挟持される。この液晶層27には硬化樹脂が含まれている。
一般に液晶による散乱・透過モードでは、電極間に電圧が印加されると光線透過状態をとり、電圧印加を停止した時には光線散乱状態をとるように構成する。あるいは電圧印加時には光線散乱状態をとり、電圧印加を停止した時には光線透過状態をとるように構成することが可能である。電源をオフにして、画像表示装置を使用しないときは透明で、光学素子の存在自体が目障りになったり、圧迫感を与えることが少なく、開放感がある光学素子を実現するためには、後者の条件が好ましい。このため、本明細書においては、主に、電圧印加時には光線散乱状態をとり、電圧印加を停止した時には光線透過状態をとるように構成した光学素子構造について説明してある。しかし、本発明においては、その逆の動作モードをもつ液晶層を使用することもできる。
上記のようにして作製された複数の光学素子が、物体を取り囲むように配置される。具体的には、物体の前後左右および上方に光学素子が少なくとも一枚ずつ配置される。なお、各光学素子は、駆動回路によって液晶の状態を制御される。駆動回路によって、すべての光学素子を同時に光線散乱状態にしてもよい。また、すべての光学素子を同時に光線散乱状態に変化させ、その後、同時に光線透過状態に変化させることを周期的に繰り返してもよい。例えば、繰り返し周期を6秒として、すべての光学素子を同時に光線散乱状態に変化させ、その後、同時に光線透過状態に変化させることを繰り返してもよい。また、駆動回路によって、それぞれの光学素子が光線散乱状態となる時間をずらし、照明光の色が光線散乱状態と連動するようにしてもよい。
光学素子の一方の外表面から他方の外表面に至る光線の透過率が70%以上であることが好ましい。また、光学素子がない面にミラーを配置してもよい。この場合、物体側に位置する内面側がミラーとなるようにする。
上記のようにして作製された光学素子の液晶層は、光線透過状態と光線散乱状態との間の応答速度も3ms以下と非常に速くできる場合が多い。また、従来の散乱透過モードと比べると、斜めから見たときにも非常に良好な光線透過状態を得ることができるようにすることができる。たとえば、上記に例示した組成の熱硬化性組成物を使用した場合、垂直から40度傾けて見た場合もほとんどヘイズがないようにすることが可能である。すなわち、光線透過状態の視野角依存性が良好であり、ガラスのように見えるようにすることができる。
また、光線透過状態と光線散乱状態との時間的割合は、光線散乱状態の光学装置と光学素子に取り囲まれた物体とのどちらをより見やすくするかの割合に関与する。すなわち、光線透過状態の時間的割合が大きいと、光学素子に取り囲まれた物体が明確に見える状態となる。そして、光線透過状態の時間的割合を次第に小さくしていくと、最初明確に見えていた物体がぼおーっと見えるようになり、最後には見えなくなる。
そこで、光学素子の液晶層が光線散乱状態にある時間と光線透過状態である時間との割合を適切に設定することにより、観察者が、光線散乱状態の光学装置と光学素子に取り囲まれた物体とを同時に認識できるようにできる。複数の光学素子を使用する場合を含めて言えば、1フレーム内で少なくともいずれか一つの光学素子が光線散乱状態にある時間の合計と全ての光学素子の液晶層が光線透過状態である時間との割合を、観察者が、光線散乱状態の光学装置と光学素子に取り囲まれた物体とを同時に認識できるように設定できるのである。なお、物体の見栄具合を調整するには、光学素子の輝度を変更することが有効である(図2のタイミングチャート参照)。
照明光を調整するためにシャッターを用いることができる。シャッターには、高速応答性が要求される。このような目的には、一般的な機械的なシャッター以外にも、液晶シャッター等も使用できる。たとえば、強誘電性液晶シャッターや、透過散乱タイプの液晶モードを利用したシャッターを用いてもよい。シャッターとして偏光板を用いる場合は、光源から出てくる光の偏光を、シャッターの入光側偏光板の透過軸に揃えておけば、光の利用効率が高くなり、好ましい。
なお、シャッターを使用せず、光源からの光の照明のタイミングを、光学素子の液晶層が光線透過状態と光線散乱状態とをとる駆動タイミングと直接同期させてもよい。シャッターの代わりに直接光源をオンオフしてもよい。この場合の光源としては高速スイッチング可能なLEDを使用してもよい。
入射光に対し、光学素子の液晶層が光線透過状態と光線散乱状態とをとる駆動タイミングについて図2を参照して説明する。図2において、たとえば、光学素子の電極間に電圧を印加して液晶層に電界を付与し、光線透過状態から光線散乱状態に変化させ、それと同期させて画像投射器からの画像を投射させる。また、光学素子の電極間の電圧印加を停止し、液晶層の電界を除去し、光学素子の液晶層を光線散乱状態から光線透過状態に変化させ、それと同期させて画像投射器からの投射をオフとする。この操作を繰り返すことにより光学素子の液晶層が光線散乱状態の時にのみ画像が投射され、観察者は光線散乱状態となった光学素子を見ることができる。
従って、以上の光線透過状態と光線散乱状態とを繰り返すことにより、観察者は、光線散乱状態の光学装置と光学素子に取り囲まれた物体との二つの状態を同時に認識することが可能となるのである。
光学素子が十分な散乱性を持つとき、光は全ての方向に散乱されるので、観察者は、光学素子をほぼ完全な散乱体として見ることになる。
本発明に係る光学装置において、光線透過状態と光線散乱状態とを組み合わせて駆動することができる。この場合は、光線透過状態と光線散乱状態との組みの繰り返しの最小単位よりなるフレームの繰り返し頻度を、観察者が光学素子上の画像のちらつき(フリッカー)を感じない範囲内に設定でき、1フレーム内で、少なくともいずれか一つの光学素子の液晶層が光線散乱状態にある時間の合計T1と全ての光学素子の液晶層が光線透過状態である時間T2との割合を、観察者が、光学装置の内部の物体と光線散乱状態の光学装置とを同時に認識できるように設定することもできる。
1フレームの間に光学素子の液晶層の光線散乱状態と光線透過状態とがあると、観察者にとっては、光線散乱状態の光学装置を見る時間T1と光学素子に取り囲まれた物体を見る時間T2とが存在することとなるが、このような条件を設定すると、ちらつきを気にすることもなく物体と光線散乱状態の光学装置とを同時に見られるようにすることができるからである。
一般的に、1フレームの繰り返し頻度が30Hz以上であれば、残像作用により物体の視認のちらつきが気にならなくなる。1フレームの繰り返し頻度は50Hz以上であれば全くフリッカーを気にならなくなるので好ましい。70Hz以上であれば更に好ましい。上限については特に制限はないが、1kHzを超えると、光学素子が応答し切れず、また消費電流量が多くなるので1kHz以下が好ましい。
なお、ここで「フレーム」は、光線透過状態と光線散乱状態との組みの繰り返しの最小単位よりなり、図2の場合は、T1とT2との合計である。
本発明に係る光学素子は複数存在する場合もある。光学素子が複数存在する場合、1フレーム内で、少なくともいずれか一つの光学素子の液晶層が光線散乱状態にある時間の合計T1と全ての光学素子の液晶層が光線透過状態である時間T2とが、T1/(T1+T2)≦0.8を満足することが重要である。T1/(T1+T2)≦0.8であれば、光学素子に取り囲まれた物体を同時に見ることができるからである。T1/(T1+T2)の下限については特に制限がないが、あまり短いと、光学素子に投射された画像を見難くなる場合がある。サブリミナルな画像を利用する場合以外は、0.01<T1/(T1+T2)であることが好ましい場合が多い。
T1/(T1+T2)の比率は、光学素子に取り囲まれた物体を見ることを優先するか、光線散乱状態の光学装置を見ることを優先するか(または、物体を消失させる状態)によって変わる。たとえば、物体を短い時間だけ表示するようにする場合、長い時間見せるようにする場合に応じて調整する。透明性を増加させて物体をより見やすくする条件であるT1/(T1+T2)<0.5が好ましい。また、比率は状況によって変化させてもよい。
また、照明光源は白色光源のみでなく、カラー光源であってもよい。また、タイミングによって色が変化するカラー光源でもよい。その場合、光学素子の駆動と同期をとることによって、さらに複雑で高度な見栄えの表示を達成できる。照明光の色を変化させると同時に、光学素子のオン・オフ制御を同期させ、各光学素子を個別に駆動することによって、意匠性の高いディスプレイを実現できる。
カラー光源として2以上の光源色を発する光源を設け、その光源において順次発色を変える発色の切替タイミングと、光学素子を光線散乱状態にするタイミングとを合わせることにより光学素子に所望の発色をさせるフィールドシーケンシャルカラー駆動(FSC駆動)により各光学素子を駆動してもよい。
なお、フレームは同じ周期で繰り返されるのが通常であるが、場合によっては一部異なっていてもよい。
ここで、光線散乱状態と光線透過状態との切り替えの状態についてさらに詳細に説明する。本発明に係る光学素子は、駆動電圧を変化させたとき、光線散乱状態と光線透過状態とが一瞬のうちに切り替わるわけではなく、光学素子の光線散乱状態と光線透過状態との切り替えの応答速度に応じた過渡的な状態を呈するのが普通である。
このように、過渡的な状態を光線散乱状態と見なすのか光線透過状態と見なすのかは実情に応じて決めることができるが、光線透過状態として扱える時間を長く確保したい場合には、過渡的な状態を光線透過状態と見なすことが好ましい。本発明におけるT1とT2とは、上記のいずれの定義の場合にも適用が可能である。
シール剤としては、透明性の高い樹脂であれば公知のどのようなものを使用することも可能である。透明性の高い樹脂を使用すれば、光学素子は全面に渡って透明感が高まり、画像が空中に浮かんだように見える状態が強調される。たとえばガラス基板を使用した場合には、ガラスの屈折率に近似した屈折率を有するエポキシ樹脂やアクリル樹脂を使用すれば、空中に透明なガラスが浮いているような状態が実現できることになるのである。
光学素子としては、対角線の長さが数cm程度の小さいものから3m程度の大きいものを含め、どのようなサイズのものも使用することができるが、一般的にいえば、小型よりは大型の方が迫力のある画像が楽しめて好ましい場合が多い。また、いくつかの光学素子をつなぎ合わせて大型光学素子とすることもできる。
つなぎ合わせる場合、つなぎ合わせの境界部はできるだけ光学素子が連続的に光線透過状態および光線散乱状態として見えるように液晶層がつながるのが好ましい。ただし、つなぎ合わせ境界部で液晶層が重なると、光学状態の明るさが異なってみえる場合があり、好ましくない。
逆に、光学素子周辺部のシールや枠部でつなぎ合わせ境界部をつくる場合、このような部位は、光線透過状態と光線散乱状態との切り替えができないため、透明な材料を選択すると、その部位の制御ができないことになる。
そこで、このような部位を透明にせず、その一部または全部を常に光線散乱状態にして、光学素子と同等の散乱性を常に持たせることが有用な場合がある。
本発明に係る画像表示装置は、ショーウインドウなどの店頭の演出、シミュレーション装置、展示場などの受付の近くに設置される情報表示、コンビニエンスストアのレジスターの近くに設置される展示物、アーケードゲーム機の表示装置等として使用でき、独特のディスプレイを楽しむことが可能となる。
また、光学素子はその電気光学変調層を一つの機能層として用いる方法以外に、電極を分割したり、複数の任意形状としたりしてもよい。また複数のパターン形状の光学素子を積層してもよい。
また、複数の光学素子において、散乱させる光学素子を経時的に替えていくことにより、点滅に似た表示を行い、観察者への注意喚起を促すことができる。
耐衝撃性を増すためには、上下基板を固定化することが望ましい。たとえば、接着性スペーサーを用いることにより、上下基板を固定することができる。接着性スペーサーは透明性の高い材料を選ぶことが好ましい。
使用する光学素子において散乱表示する必要のない部分は、全て接着性の樹脂で満たすことも可能である。また、散乱表示する必要のある場所でも、接着性スペーサーの専有面積を調整することにより散乱能を調整することが可能である。特に、光学素子に取り囲まれた物体がある程度見えることを要求される場合は非常に有効な方法である。
本発明による表示装置は、例えば、売店のディスプレイとして用いられる。
以下に本発明の実施例を示す。実施例中、「部」は重量部を意味する。
図1に示す模式的断面図を持つ光学素子を次のように作成した。まず、誘電率異方性が負であるネマチック液晶(チッソ社製AG−1016XX)を80部、化2の(a)で示される硬化性化合物を20部、ベンゾインイソプロピルエーテルを0.2部ブレンドし、混合組成物を調製した。
ついで、透明電極の上に垂直配向用ポリイミド膜(JSR社製JALS−682−R3)を形成した、長さ200mm,幅200mm,厚さ1.1mmの一対のガラス製の基板を、ポリイミド薄膜が対向するようにして設置し、その間隙に直径6μmの樹脂ビーズを微量配してから、基板の四辺に約1mm幅のエポキシ樹脂層を印刷により設け、これを張り合わせて硬化し、光学素子周辺部が透明の樹脂層でシールされる状態にした。
具体的には、シール層の一部を開放しておき、シール層の硬化後、このようにして形成された液晶セル中に上記混合組成物を注入し、その後シール層の一部開放部をエポキシ樹脂で封止し、硬化して、図1に示すシール層28を完成させた。ついで、垂直配向用ポリイミド膜の働きで硬化性化合物を溶解させた液晶が基板面に垂直方向に配向を示すような状態に保ったまま硬化性化合物を硬化し、液晶層を形成した。具体的には、この注入された液晶セルを40℃に保持した状態で、主波長が約365nmのHg−Xeランプにより、上側より約2.5mW/cm2、下側より同じく約2.5mW/cm2の紫外線を10分間照射し、透明の樹脂層でシールした光学素子を得た。
図3に、開口角5°の光学系で評価したときの駆動電圧V(実効値)に対する透過率Tのデータを示す。ガラス基板の表面にはアンチグレア(AR)処理がなされていない状態のものである。電圧無印加時の透過率は約84%であった。また、電圧を40V印加したときの透過率は約3%であった。
なお、図4に示すように、この光学素子の周辺部を機械的強度の向上や液晶層等の化学的変質防止のための透明樹脂のシール枠29を設けてもよい。この場合、光学素子は透明の樹脂層で二重にシールされることになる。本例では、このようにして形成した光学素子1を物体を取り囲むように、前後左右および上方に5枚を配置した。基本構成の一例を図5に示す。図示を省略した駆動回路から、それぞれの光学素子に信号(駆動電圧)を与えて光学状態を制御する。
光学素子1の液晶層の透過光線散乱状態のスイッチングも60Hzで実施し、図2に示すようなタイミングで画像投射と同期させた。また、全光線散乱状態・全光線透過状態とを間欠的に繰り返すように駆動を行った。
光学素子1の液晶層を光線透過状態と光線散乱状態との間で切り替える駆動は、200Hzの交流矩形波で、電圧は0Vと30Vとの切り替えで実施した。立ち上がり時間は約1.5msで、立ち下がり時間は約2msであった。光学装置の背景を白っぽい色合いにして駆動を行った。
その結果、物体が消失し、背景のなかに溶け込むように感じたり、いきなり物体が空中に現れるといった印象を観察者に与えることができた。
実施例1と同様にして作成した光学素子1を5枚準備し、図6のように構成した。照明光源2および物体を光学装置1の内部に配置した。この結果、観察者からは、光学素子のオンオフによって、光学素子に取り囲まれた物体を見ることができた。また、電圧無印加時は完全に光線透過状態となるため、画像表示装置を使用していないときには開放感があり、光学素子が光線散乱状態にあるときには、物体を完全に遮蔽することができた。物体を視認できた際には、非常に開放感のある印象を与えることができた。
実施例1と同様にして作成した光学素子を用いて、図7のように配置した。本例では物体自身が発光性をもつものである。
照明光源の点灯のタイミングを調整し、オンオフを間欠的に繰り替えすように設定した。投射タイミングが図8に示すようになるように調整した。T11=4ms,T12=12ms,T21=4ms,T22=12ms,T1=8ms,T2=8msと設定した。
この光学装置を使用すれば、光学素子1の内部の物体の表示を、さまざまな色合いや見栄えで表示を呈するようにすることができる。
なお、光学素子の表裏に、SiO2とTiO2との誘電体多層膜よりなるARコート(低反射コート)処理を施した。これにより、ガラス基板表面での外光の反射が減ったことによるコントラスト向上を実現できた。また、光学素子の基板面で反射し、物体の画像がぼける問題を低減させることができた。
垂直配向用ポリイミド膜の表面をラビングし、プレチルト角を70度とした以外は、実施例1と同様にして光学素子を作製した。
光学素子の液晶層を光線透過状態と光線散乱状態との間で切り替える駆動の立ち上がり時間は約1.0msで、立ち下がり時間は約1.5msであった。
実施例1と同様の配置関係とした。この結果、観察者4からは、光学素子に取り囲まれた物体と光線散乱状態の光学装置を同時にちらつきなく見ることができた。また、電圧無印加時は完全に光線透過状態となるため、開放感がある印象を与えることができた。
ショーウインドウとして利用する場合は、商品の前に光学素子を置いて、商品のイメージに合う情報を流すことにより通行人の興味を引くことが可能となる。
コンビニエンスストア等のレジスターの横や上部に配置した場合、従来の表示体では透明でないため店員と客の距離が発生して疎外感があった。しかし、本表示装置を用いた場合には、疎外感がなくなる。同様な使い方で受付に配置してもよい。このときの表示としては、商品の説明、売り出し商品、期間限定商品や数量限定商品等の情報やそのコマーシャルメッセージを流すことができる。
この結果、画像に切れ目が生じるものの、全体としては不自然でない画像を表示することができた。
なお、この散乱に寄与しない部位、すなわち光線透過状態と光線散乱状態との切り替えのできない部位に、透明エポキシ樹脂に屈折率の異なるビーズを分散した散乱樹脂を添加して、常に光線散乱状態とすることにより、光学素子と同等の散乱性を常に持たせた結果、画像を切れ目なく表示できるようになり、より自然な画像が得られた。
光学素子のサイズを大きくするために、実施例1のガラス基板の代わりにプラスチック基板を使用することができる。たとえば、プラスチック基板には0.2mm厚のポリカーボネート樹脂を用い、幅1mのロール状のポリカーボネートにITOを連続成膜し、その上に垂直配向膜を成膜する。長さ2mのこのポリカーボネート2枚を基板とし、この基板間に、液晶層の材料とスペーサーとを一緒にした液を注入する以外は実施例1とほぼ同様にして光学素子を作成することができる。この結果、実施例1と同様の性能を有する大判の光学素子を実現することができる。
実施例1のギャップ制御用の樹脂ビーズに代えて、上下基板を接着可能な接着型スペーサーを用いた。透明電極上に垂直配向用ポリイミド膜(JSR社製JALS−682−R3)を形成した基板に、接着型スペーサー液を塗布し、フォトリソ法を用いてパターニングし、300μm×300μm間隔で20μm×20μmのサイズで高さ6μmの柱状のスペーサーを作成した。その後は、実施例1と同様な操作により光学素子を作製したが、最後に熱処理により上下基板を接着させた。これにより、衝撃等により電圧無印加時の透明性が劣化する現象が大幅に減少した。
1:光学装置
2:照明光源
3:物体
4:観察者
2:照明光源
3:物体
4:観察者
Claims (7)
- 一対の電極付き基板間に電気光学変調層が挟持されてなる光学素子と、光学素子を駆動する駆動回路とが設けられ、電気光学変調層は駆動回路からの信号によって、光線透過状態と光線散乱状態を含む2以上の光学状態を転移することができる表示装置であって、
物体を取り囲むように、複数の光学素子が配置され、前記光学素子の光学状態が駆動回路によって制御され、
光学素子の一方の外表面から他方の外表面に至る光線の透過率が70%以上とされ、
照明光によって物体が光学素子を通して視認することができ、かつ、前記光学素子が光線散乱状態に置かれた場合には、物体が遮蔽され視認できないように構成されてなる光学装置。 - 物体の前後左右および上方に光学素子が少なくとも一枚ずつ配置されてなる請求項1に記載の光学装置。
- すべての光学素子が同時に光線散乱状態に置くことができる請求項1または2に記載の光学装置。
- 物体が商品である請求項1、2または3に記載の光学装置。
- 売店のディスプレイとして用いられる請求項1、2、3または4に記載の光学装置。
- 光学素子がない面の、物体側に位置する内面側がミラーとなっている請求項1、2、3、4または5に記載の光学装置。
- それぞれの光学素子が光線散乱状態となる時間がずれており、照明光の色が光線散乱状態と連動している請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学装置。
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