JP2005114147A - 転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】外輪1、内輪2および複数の転動体3を有する転がり軸受10であって、外輪1、内輪2および転動体3のうち少なくともいずれか一つの部材が、窒素富化層を有し、オーステナイト結晶粒の粒度番号が10番を超える範囲にあり、かつ、硬度がHv700以上である。
【選択図】 図1
Description
JIS規格SUJ2材(1.0重量%C−0.25重量%Si−0.4重量%Mn−1.5重量%Cr)を用いて、(1)水素量の測定、(2)結晶粒度の測定、(3)シャルピー衝撃試験、(4)破壊応力値の測定、(5)転動疲労試験、の各試験を行なった。表1にその結果を示す。
水素量は、LECO社製DH−103型水素分析装置により、鋼中の非拡散性水素量を分析した。拡散性水素量は測定してない。このLECO社製DH−103型水素分析装置の仕様を下記に示す。
分析精度:±0.1ppmまたは±3%H(いずれか大なるほう)
分析感度:0.01ppm
検出方式:熱伝導度法
試料重量サイズ:10mg〜35mg(最大:直径12mm×長さ100mm)
加熱炉温度範囲:50℃〜1100℃
試薬:アンハイドロン Mg(ClO4)2、アスカライト NaOH
キャリアガス:窒素ガス、ガスドージングガス:水素ガス、いずれのガスも純度99.99%以上、圧力40psi(2.8kgf/cm2)である。
結晶粒度の測定は、JIS G 0551の鋼のオーステナイト結晶粒度試験方法に基づいて行なった。
シャルピー衝撃試験は、JIS Z 2242の金属材料のシャルピー衝撃試験方法に基づいて行なった。試験片は、JIS Z 2202に示されたUノッチ試験片(JIS3号試験片)を用いた。
図6は、静圧壊強度試験(破壊応力値の測定)の試験片を示す図である。図中のP方向に荷重を負荷して破壊されるまでの荷重を測定する。その後、得られた破壊荷重を、下記に示す曲がり梁の応力計算式により応力値に換算する。なお、試験片は図6に示す試験片に限られず、他の形状の試験片を用いてもよい。
σ1=(N/A)+{M/(Aρ0)}[1+e1/{κ(ρ0+e1)}]
σ2=(N/A)+{M/(Aρ0)}[1−e2/{κ(ρ0−e2)}]
κ=−(1/A)∫A{η/(ρ0+η)}dA
(5)転動疲労寿命
転動疲労寿命試験の試験条件を表2に示す。また、図7は、転動疲労寿命試験機の概略図である。図7(a)は正面図であり、図7(b)は側面図である。図7(a)および図7(b)において、転動疲労寿命試験片21は、駆動ロール11によって駆動され、ボール13と接触して回転している。ボール13は、3/4インチのボールであり、案内ロール12にガイドされて、転動疲労寿命試験片21との間で高い面圧を及ぼし合いながら転動する。
表1に示した試験結果を説明するならば次のとおりである。
浸炭窒化処理したままの従来浸炭窒化処理品は、0.72ppmと非常に高い値となっている。これは、浸炭窒化処理の雰囲気に含まれるアンモニア(NH3)が分解して水素が鋼中に浸入したためと考えられる。これに対し、試料B〜Dは、水素量は0.37〜0.40ppmと半分近くまで減少している。この水素量は普通焼入れ品と同レベルである。
結晶粒度は二次焼入れ温度が、浸炭窒化処理時の焼入れ(一次焼入れ)の温度より低い場合、すなわち試料B〜Dの場合、オーステナイト粒は、結晶粒度番号11〜12と顕著に微細化されている。試料EおよびFならびに従来浸炭窒化処理品および普通焼入れ品のオーステナイト粒は、結晶粒度番号10であり、本発明例の試料B〜Dより粗大な結晶粒となっている。
表1によれば、従来浸炭窒化処理品のシャルピー衝撃値は5.33J/cm2であるのに比して、本発明例の試料B〜Dのシャルピー衝撃値は6.30〜6.65J/cm2と高い値が得られている。この中でも、二次焼入れ温度が低い方がシャルピー衝撃値が高くなる傾向を示す。普通焼入れ品のシャルピー衝撃値は6.70J/cm2と高い。
上記破壊応力値は、耐割れ強度に相当する。表1によれば、従来浸炭窒化処理品は2330MPaの破壊応力値となっている。これに比して、試料B〜Dの破壊応力値は2650〜2840MPaと改善された値が得られている。普通焼入れ品の破壊応力値は2770MPaであり、試料B〜Dの改良された耐割れ強度は、オーステナイト結晶粒の微細化と並んで、水素含有率の低減による効果が大きいと推定される。
表1によれば、普通焼入れ品は浸炭窒化層を表層部に有しないことを反映して、転動疲労寿命L10は最も低い。これに比して従来浸炭窒化処理品の転動疲労寿命は3.1倍となる。試料B〜Dの転動疲労寿命は従来浸炭窒化処理品より大幅に向上する。試料E,Fは、従来浸炭窒化処理品とほぼ同等である。
上記をまとめると、本発明例の試料B〜Dは、水素含有率が低下し、オーステナイト結晶粒度が11番以上に微細化され、シャルピー衝撃値、耐割れ強度および転動疲労寿命も改善される。
次に実施例IIについて説明する。下記のX材、Y材およびZ材について、一連の試験を行なった。熱処理用素材には、JIS規格SUJ2材(1.0重量%C−0.25重量%Si−0.4重量%Mn−1.5重量%Cr)を用い、X材〜Z材に共通とした。X材〜Z材の製造履歴は次のとおりである。
X材(比較例):普通焼入れのみ(浸炭窒化処理せず)。
Y材(比較例):浸炭窒化処理後にそのまま焼入れ(従来の浸炭窒化焼入れ)。浸炭窒化処理温度845℃、保持時間150分間。浸炭窒化処理の雰囲気は、RXガス+アンモニアガスとした。
Z材(本発明例):図2の熱処理パターンを施した軸受鋼。浸炭窒化処理温度845℃、保持時間150分間。浸炭窒化処理の雰囲気は、RXガス+アンモニアガスとした。最終焼入れ温度は800℃とした。
転動疲労寿命の試験条件および試験装置は、上述したように、表2および図7に示すとおりである。この転動疲労寿命試験結果を表3に示す。
シャルピー衝撃試験は、Uノッチ試験片を用いて、上述のJIS Z 2242に準じた方法により行なった。試験結果を表4に示す。
図8は、静的破壊靭性試験の試験片を示す図である。この試験片のノッチ部に、予き裂を約1mm導入した後、3点曲げによる静的荷重を加え、破壊荷重Pを求めた。破壊靭性値(K1c値)の算出には次に示す(I)式を用いた。また、試験結果を表5に示す。
K1c=(PL√a/BW2){5.8−9.2(a/W)+43.6(a/W)2
−75.3(a/W)3+77.5(a/W)4}・・・(I)
静圧壊強度試験片は、上述のように図6に示す形状のものを用いた。図中、P方向に荷重を付加して、静圧壊強度試験を行なった。試験結果を表6に示す。
保持温度130℃、保持時間500時間における経年寸法変化率の測定結果を、表面硬度、残留オーステナイト量(50μm深さ)と併せて表7に示す。
玉軸受6206を用い、標準異物を所定量混入させた異物混入下での転動疲労寿命を評価した。試験条件を表8に、試験結果を表9に示す。
表10に、窒素含有量と異物混入条件下の転動寿命との関係について行なった試験の結果を示す。なお、比較例1は標準焼入れ品、比較例2は標準の浸炭窒化品である。比較例3は本発明実施例と同様の処理を施したものの窒素量のみ過多の場合である。試験条件は次のとおりである。
供試軸受:円すいころ軸受30206(内・外輪、ころ共にJISによる高炭素クロム軸受鋼2種(SUJ2)製)
ラジアル荷重:17.64kN
アキシアル荷重:1.47kN
回転速度:2000rpm
硬質の異物混入1g/L
2 内輪
3 転動体
10 転がり軸受
11 駆動ロール
12 案内ロール
13 ボール
21 転動疲労寿命試験片
T1 浸炭窒化処理温度
T2 焼入れ加熱温度
Claims (3)
- 外輪、内輪および複数の転動体を有する転がり軸受において、前記外輪、内輪および転動体のうち少なくともいずれか一つの部材が、窒素富化層を有し、オーステナイト結晶粒の粒度番号が10番を超える範囲にあり、かつ、硬度がHv700以上である、転がり軸受。
- 硬度がHv720〜Hv800の範囲にある請求項1の転がり軸受。
- 前記部材が軌道輪であって、前記硬度が、研削後の軌道面の表層50μmにおける値である請求項2の転がり軸受。
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