JP2004315964A - スクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造、スクロールコンプレッサの構成部品、スクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造の製造方法、スクロールコンプレッサの構成部品の製造方法 - Google Patents

スクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造、スクロールコンプレッサの構成部品、スクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造の製造方法、スクロールコンプレッサの構成部品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 耐表面損傷特性に優れたスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造、スクロールコンプレッサの構成部品、スクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造の製造方法、スクロールコンプレッサの構成部品の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明のスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造1は、駆動軸3の自転により旋回スクロール5が所定の軸の周りを偏心公転するものであって、深溝玉軸受41を有している。深溝玉軸受41の内輪33、外輪31およびボール35のうち少なくともいずれか1つの部材が浸炭窒化層を有し、その部材のオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番を超える範囲にある。
【選択図】 図1

Description

本発明は、スクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造、スクロールコンプレッサの構成部品、スクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造の製造方法、スクロールコンプレッサの構成部品の製造方法に関するものである。
スクロールコンプレッサの駆動軸の支持構造として転がり軸受が広く用いられている。転がり軸受は転動体と軌道輪と保持器とで構成される。転動体が軌道輪の間を転動する際には、転動体と軌道輪とが点接触あるいは線接触する構造であるため、軸受投影面積が小さい割に高負荷容量と高剛性が得られる利点を有している。したがって、転がり軸受は、希薄潤滑下や高速回転下での運転等の苛酷な条件で使用するスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造に好適である。
スクロールコンプレッサの駆動軸の支持構造として用いられる転がり軸受の軸受部品は、通常、高炭素クロム軸受鋼(SUJ鋼)を約850℃に加熱して焼き入れることにより製造されていた。なお、特開2002−317777号公報(特許文献1)および特開2002−188584号公報(特許文献2)には、従来のスクロールコンプレッサの構造が開示されている。
特開2002−317777号公報 特開2002−188584号公報
スクロールコンプレッサのブラケット内は、冷媒とともに霧状の潤滑油が充填されている。スクロールコンプレッサにおいては、この冷媒と霧状の潤滑油との混合物がスクロールコンプレッサによって圧縮および膨張される。一方で、この冷媒と霧状の潤滑油との混合物によって転がり軸受の潤滑が行なわれている。通常、転がり軸受の潤滑に必要な潤滑油の動粘度は玉軸受で13mm2/s以上、ころ軸受で20mm2/s以上である。
しかしながら、スクロールコンプレッサにおいては、運転効率の低下を防ぐために非常に動粘度が低い潤滑油が用いられている。具体的には、スクロールコンプレッサの運転時において2〜4mm2/sの動粘度の潤滑油が用いられている。動粘度の低い潤滑油は油膜を形成しにくい。このため、転動体と軌道輪との間に油膜切れが起こり、たとえばピーリングやスミアリングのような表面損傷が転動体および軌道輪に生じやすい(耐表面損傷特性が低い)という問題があった。ここで、ピーリングとは、10μm程度の大きさの微小剥離および微小剥離に至る前のき裂が密集した部分をいう。スミアリングとは、微小な溶着を伴なっていて、荒れた部分をいう。ピーリングおよびスミアリングは、いずれも潤滑油の油膜が十分に形成されない場合に生じやすい表面損傷である。
また、転がり軸受が軌道輪を有しておらず、転動体がスクロールコンプレッサの構成部品の間を直接摺動する場合もある。この場合には、ピーリングやスミアリングのような表面損傷がスクロールコンプレッサの構成部品に生じるという問題があった。つまり、ピーリングやスミアリングのような表面損傷が生じるという問題は、転がり軸受に限らず、スクロールコンプレッサにおいて摺動する部分に共通して起こりうる問題であった。
したがって、本発明の目的は、耐表面損傷特性に優れたスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造、スクロールコンプレッサの構成部品、スクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造の製造方法、スクロールコンプレッサの構成部品の製造方法を提供することである。
本発明の一の局面にしたがうスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造は、駆動軸の自転により旋回スクロールが所定の軸の周りを偏心公転するスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造であって、転がり軸受を有している。転がり軸受の内輪、外輪および転動体のうち少なくともいずれか1つの部材が窒素富化層を有し、部材のオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番を超える範囲にある。
本発明の一の局面によれば、内輪、外輪、および転動体のうち少なくともいずれか1つの部材のオーステナイト粒径が微細であることにより、スクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造の耐表面損傷特性が向上する。オーステナイト粒径の粒度番号が10番以下では、耐表面損傷特性は大きく改善されないので、10番を超える範囲とする。通常、11番以上とする。オーステナイト粒径は細かいほど望ましいが、通常、13番を超える粒度番号を得ることは難しい。なお、上記窒素富化層は、あとで説明するように、浸炭窒化処理により形成されるが、上記窒素富化層に炭素が富化されていてもよいし、富化されていなくてもよい。転がり軸受の内輪、外輪および転動体のオーステナイト粒は、浸炭窒化処理の影響を大きく受けている表層部でも、それより内側の内部でも変化しない。したがって、上記の結晶粒度番号の範囲の対象となる位置は、表層部および内部とする。
なお、上記オーステナイト結晶粒は、対象とする部材の金相試料に対してエッチングなど、粒界を顕出する処理を施して観察することができる粒界であればよい。低温焼入れ直前の加熱された時点での粒界という意味で、上記のように旧オーステナイト粒と呼ぶ場合がある。測定は、JIS規格の粒度番号の平均値から平均粒径に換算して求めてもよいし、切片法などにより金相組織に重ねたランダム方向の直線が粒界と会合する間の間隔長さの平均値をとり、補正係数をかけて2次元から3次元の間隔長さにしてもよい。
本発明の他の局面にしたがうスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造は、駆動軸の自転により旋回スクロールが所定の軸の周りを偏心公転するスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造であって、転がり軸受を有している。転がり軸受の内輪、外輪および転動体のうち少なくともいずれか1つの部材が窒素富化層を有し、その部材の水素含有率が0.5ppm以下である。
本発明のさらに他の局面によれば、水素に起因する鋼の脆化を軽減することができる。鋼の水素含有率が0.5ppmを超えると鋼の割れ強度は低下する。したがってこのような鋼は、苛酷な条件で使用されるスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造にはあまり適さなくなる。水素量は低い方が望ましい。しかし、0.3ppm未満に減らすためには長時間の加熱が必要になり、オーステナイト粒径が粗大化し、かえって靭性が低下してしまう。このため、より望ましい水素含有率は0.3〜0.5ppmの範囲である。さらに望ましくは、0.35〜0.45ppmの範囲である。
なお、上記の水素含有率は、拡散性水素は測定の対象にはせず、所定温度以上で鋼から放出される非拡散性水素のみを測定の対象とするものである。サンプルサイズが小さければ、常温でもサンプルから放出され散逸してしまうので、拡散性水素量は測定の対象から外している。非拡散性水素は、鋼中の欠陥部などにトラップされており、所定の加熱温度以上ではじめてサンプルから放出される水素である。この非拡散性水素に限定しても、水素含有率は測定方法によって大きく変動する。上記の水素含有率範囲は熱伝導度法による測定方法による範囲である。さらに、後記するように、LECO社製DH−103型水素分析装置またはそれに準じる測定装置を用いて測定することが望ましい。
上記のスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造において好ましくは、転がり軸受は深溝玉軸受または円筒ころ軸受または針状ころ軸受である。
これにより、簡易な構成でスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造が構成され、かつ耐表面損傷特性に優れたスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造が得られる。
本発明の一の局面にしたがうスクロールコンプレッサの構成部品は、駆動軸の自転により旋回スクロールが所定の軸の周りを偏心公転するスクロールコンプレッサの構成部品であって、構成部品が窒素富化層を有し、その構成部品のオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番を超える範囲にある。
本発明の一の局面にしたがうスクロールコンプレッサの構成部品によれば、構成部品のオーステナイト粒径が微細であることにより、上記スクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造と同様の理由から、耐割れ強度、寸法安定性および疲労寿命が大幅に改良される。
本発明の他の局面にしたがうスクロールコンプレッサの構成部品は、駆動軸の自転により旋回スクロールが所定の軸の周りを偏心公転するスクロールコンプレッサの構成部品であって、構成部品が窒素富化層を有し、その構成部品の水素含有率が0.5ppm以下である。
これにより、上記スクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造と同様の理由により、水素に起因する鋼の脆化を軽減することができる。
本発明のスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造の製造方法は、駆動軸の自転により旋回スクロールが所定の軸の周りを偏心公転するスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造の製造方法であって、A1変態点を超える浸炭窒化処理温度で鋼を浸炭窒化処理した後、A1変態点未満の温度に冷却し、その後、前記A1変態点以上で前記浸炭窒化処理の温度未満の焼入れ温度域に再加熱し、焼入れを行なうことにより、スクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造を有する転がり軸受の内輪、外輪および転動体のうち少なくともいずれか1つの部材が製造される。
本発明のスクロールコンプレッサの構成部品の製造方法は、駆動軸の自転により旋回スクロールが所定の軸の周りを偏心公転するスクロールコンプレッサの構成部品の製造方法であって、A1変態点を超える浸炭窒化処理温度で鋼を浸炭窒化処理した後、A1変態点未満の温度に冷却し、その後、A1変態点以上で浸炭窒化処理の温度未満の焼入れ温度域に再加熱し、焼入れを行なうことにより、構成部品が製造される。
本発明のスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造およびスクロールコンプレッサの構成部品の製造方法によれば、浸炭窒化処理後A1変態点未満の温度に冷却した後に最終的な焼入れを行なうので、オーステナイト粒径を細かくすることができる。この結果、耐表面損傷特性などを向上させることができる。
さらに、たとえばオーステナイトが変態する温度にまで冷却することにより、浸炭窒化処理の際のオーステナイト粒界と最終焼入れの際のオーステナイト粒界とを無関係にすることができる。さらに、最終焼入れの際の加熱温度が浸炭窒化処理時の加熱温度よりも低いので、浸炭窒化処理の効果が及ぶ表層部における未溶解セメンタイト量は浸炭窒化処理のときよりも増大する。このため最終焼入れの加熱温度において、浸炭窒化処理のときより、未溶解セメンタイト量の比率が増大し、オーステナイト量の比率が低下する。しかも、鉄−炭素2元状態図から、セメンタイトとオーステナイトとの共存領域において、焼入れ温度の低下にともないオーステナイトに固溶する炭素濃度も低くなる。
最終焼入れ温度に加熱したとき、オーステナイト粒の成長を妨げる未溶解セメンタイト量が多いために、オーステナイト粒は微細となる。また、焼入れによってオーステナイトからマルテンサイトやベイナイトに変態した組織は炭素濃度が低いので、浸炭窒化処理温度から焼き入れた組織に比べて靭性に富んだ組織となる。
本発明のスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造およびスクロールコンプレッサの構成部品の製造方法において好ましくは、焼入れ温度域が790℃〜830℃の温度域である。
この構成により、オーステナイト結晶粒の成長が生じにくい温度に再加熱して焼入れするので、オーステナイト粒径を細かくすることができる。
本発明のスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造およびスクロールコンプレッサの構成部品によれば、軸受部品および構成部品は、窒素富化層が形成された上で、オーステナイト粒径が粒度番号で11番以上に微細化され、水素含有率も低減される。このため、耐表面損傷特性に優れたスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造およびスクロールコンプレッサの構成部品を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造を示す概略断面図である。
図1を参照して、スクロールコンプレッサ51は、駆動軸3と旋回スクロール5と固定スクロール7とモータケーシング13とブラケット15とを主に有している。本実施の形態におけるスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造1は、たとえば旋回スクロール5と駆動軸3との間に組み付けられた旋回軸受1aと、ブラケット15と駆動軸3の間に組み付けられた主軸受1bと、モータケーシング13と駆動軸3の間に組み付けられた補助軸受1cとを有している。
このスクロールコンプレッサ51においては、モータケーシング13とブラケット15とがボルト19aを介して固定されている。また、ブラケット15と固定スクロール7とがボルト19bを介して固定されている。このモータケーシング13とブラケット15と固定スクロール7とで構成される空間の内部に駆動軸3と旋回スクロール5とが配置されている。
駆動軸3には永久磁石からなるモータ回転子9が固定されている。また、モータケーシング13の内周部にはモータ固定子11が固定されている。駆動軸3は、主軸受1bと補助軸受1cとを介してモータケーシング13とブラケット15とに回転可能に支持されている。駆動軸3は先端にクランク部17を有している。クランク部17は、駆動軸3の軸心から偏心距離eだけ偏心した位置に軸心を有している。
また、旋回スクロール5は旋回軸受1aを介してクランク部17の先端に回転可能に連結されている。旋回スクロール5と固定スクロール7とは互いに対峙するように配置されている。これにより、渦巻き状の圧縮動作室23が形成されている。圧縮動作室23は、旋回スクロール5の偏心公転にともなって、回転軸に対して外周側から内周側へ向けて容積が順次減少するように形成されている。なお、旋回スクロール5と固定スクロール7との間には、旋回スクロール5の自転を防止する自転防止機構25が同一円周方向に沿った複数箇所に配置されている。
次に、スクロールコンプレッサ51の動作について説明する。駆動軸3の回転(自転)にともなって、クランク部17が駆動軸3の軸心を中心として偏心距離eを半径とした偏心公転をする。旋回スクロール5は、クランク部17の偏心公転の力を受けて自転しようとする。しかし、旋回スクロール5は、自転防止機構25によって自転することを妨げられる。これにより、旋回スクロール5は、駆動軸3の軸心を中心として偏心距離eを半径とした偏心公転を行なう。その結果、旋回スクロール5および固定スクロールの外周側から圧縮動作室23内に流入した気体は、内周側に移送されながら圧縮される。そして高圧となった気体は排出孔21から排出される。
本実施の形態においては、スクロールコンプレッサ51を構成している構成部品(固定スクロール7、旋回スクロール5、ブラケット15、モータケーシング13、駆動軸3、旋回軸受1a、主軸受1b、補助軸受1c)が窒素富化層を有し、その構成部品のオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番を超える範囲にある。
本実施の形態においては、スクロールコンプレッサ51を構成している構成部品(固定スクロール7、旋回スクロール5、ブラケット15、モータケーシング13、駆動軸3、旋回軸受1a、主軸受1b、補助軸受1c)が窒素富化層を有し、その構成部品の水素含有率が0.5ppm以下である。
本実施の形態においては、旋回軸受1a、主軸受1bおよび補助軸受1cとして深溝玉軸受が用いられている。この深溝玉軸受について以下に説明する。
図2は、本発明の実施の形態1におけるスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造である深溝玉軸受を示す概略断面図である。図1および図2を参照して、深溝玉軸受41は、外輪31と内輪33とボール35と保持器37とを有している。外輪31は、モータケーシング13およびブラケット15および旋回スクロール5に組み付けられている。内輪33は駆動軸3に組み付けられている。ボール35は、保持器37により転動自在に保持されて、外輪31と内輪33との間に固定されている。
本実施の形態においては、深溝玉軸受41を構成している内輪33、外輪31およびボール35のうち少なくとも1つの部材が窒素富化層を有し、その部材のオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番を超える範囲にある。
本実施の形態においては、深溝玉軸受41を構成している内輪33、外輪31およびボール35のうち少なくとも1つの部材が窒素富化層を有し、その部材の水素含有率が0.5ppm以下である。
次に、深溝玉軸受41を構成している内輪33、外輪31およびボール35のうち少なくとも1つの部材、またはスクロールコンプレッサ51を構成している構成部品に行なう浸炭窒化処理を含む熱処理について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1における熱処理方法を説明する図である。また、図4は、本発明の実施の形態1における熱処理方法の変形例を説明する図である。図3は1次焼入れおよび2次焼入れを行なう方法を示す熱処理パターンであり、図4は焼入れ途中で材料をA1変態点温度未満に冷却し、その後、再加熱して最終的に焼入れる方法を示す熱処理パターンである。どちらも本発明の実施の態様例である。これらの図において、処理T1では鋼の素地に炭素や窒素を拡散させまた炭素の溶け込みを十分に行なった後、A1変態点未満に冷却する。次に、図中の処理T2において、処理T1よりも低温に再加熱し、そこから油焼入れを施す。
上記の熱処理は、普通焼入れ、すなわち浸炭窒化処理に引き続いてそのまま1回焼入れするよりも、材料の表層部分を浸炭窒化しつつ、割れ強度を向上させ、経年寸法変化率を減少することができる。上記の熱処理方法によれば、オーステナイト結晶粒の粒径が従来の2分の1以下となるミクロ組織を得ることができる。したがって、本実施の形態における深溝玉軸受41の内輪、外輪および転動体のうち少なくともいずれか1つの部材、またはスクロールコンプレッサ51の構成部品に上記の熱処理を施すことにより、スクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造1、およびまたはスクロールコンプレッサ51の構成部品の耐表面損傷特性転動疲労特性が長寿命となり、割れ強度が向上し、経年寸法変化率が減少する。
なお、水素含有率のみを本発明の範囲に入れる場合には、T2温度である2次焼入温度を浸炭窒化処理の加熱温度T1(1次焼入温度)より低くする必要はなく、2次焼入温度T2を1次焼入温度T1以上にしてもよい。すなわち、T2がT1より高くても水素含有率は本発明の範囲内に入れることができる。しかし、2次焼入温度を1次焼入温度未満とすることにより、水素含有率を低減した上で、さらにオーステナイト粒径が粒度番号10番を超えるようにすることができる。したがって、T2がT1未満であることが望ましい。
上記の熱処理のどちらによっても、その中の浸炭窒化処理により「浸炭窒化処理層」である窒素富化層が形成される。浸炭窒化処理において素材となる鋼の炭素濃度が高いため、通常の浸炭窒化処理の雰囲気から炭素が鋼の表面に侵入しにくい場合がある。たとえば炭素濃度が高い鋼の場合(1wt%程度の鋼)、それ以上高い炭素濃度の浸炭層が生成する場合もあるし、それ以上高い炭素濃度の浸炭層は生成しにくい場合がある。しかし、窒素濃度は、Cr濃度などにも依存するが、通常の鋼では最大限0.025wt%程度以下と低いので、素材の鋼の炭素濃度によらず窒素富化層が明瞭に生成される。上記窒素富化層には炭素が富化されていてもよいことはいうまでもない。
図5はスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造における部材のミクロ組織、とくにオーステナイト粒を示す図である。図5(a)は本発明例の軸受部品であり、図5(b)は従来の軸受部品である。すなわち、上記図3に示す熱処理パターンを適用した軸受鋼のオーステナイト結晶粒度を図5(a)に示す。また、比較のため、従来の熱処理方法による軸受鋼のオーステナイト結晶粒度を図5(b)に示す。また、図6(a)および図6(b)は、上記図5(a)および図5(b)を図解したオーステナイト結晶粒界を示す図である。これらオーステナイト結晶粒度を示す組織より、従来のオーステナイト粒径はJIS規格の粒度番号で10番であり、また本発明による熱処理方法によれば12番の細粒を得ることができる。また、図5(a)の平均粒径は、切片法で測定した結果、5.6μmであった。
(実施の形態2)
図1を参照して、本実施の形態においては、主軸受1bとして円筒ころ軸受が用いられている。
図7(a)は、本発明の実施の形態2におけるスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造である円筒ころ軸受を示す概略断面図である。図7(b)は、本発明の実施の形態2におけるスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造である円筒ころ軸受を示す部分斜視図である。
図1および図7(a)、(b)を参照して、円筒ころ軸受45は、外輪31と内輪33と円筒ころ39と保持器37とを有している。円筒ころ39は、保持器37により転動自在に保持されて、外輪31と内輪33との間に固定されている。
なお、これ以外の構成については図1および図2に示す実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態においては、円筒ころ軸受45を構成している内輪33、外輪31および円筒ころ39のうち少なくとも1つの部材が窒素富化層を有し、その部材のオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番を超える範囲にある。
本実施の形態においては、円筒ころ軸受45を構成している内輪33、外輪31および円筒ころ39のうち少なくとも1つの部材が窒素富化層を有し、その部材の水素含有率が0.5ppm以下である。
(実施の形態3)
図1を参照して、本実施の形態においては、旋回軸受1aとして針状ころ軸受が用いられている。
図8は、本発明の実施の形態3におけるスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造である針状ころ軸受を示す概略斜視図である。
図1および図8を参照して、針状ころ軸受47は、外輪31と針状ころ38と保持器37とを有している。外輪31は旋回スクロール5に組み付けられている。また、クランク部17が直接内輪となっている。針状ころ38は、保持器37により転動自在に保持されて、外輪31と駆動軸3との間に固定されている。
なお、これ以外の構成については図1および図2に示す実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態においては、針状ころ軸受47を構成している外輪31および針状ころ38のうち少なくとも1つの部材が窒素富化層を有し、その部材のオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番を超える範囲にある。
本実施の形態においては、針状ころ軸受47を構成している外輪31および針状ころ38のうち少なくとも1つの部材が窒素富化層を有し、その部材の水素含有率が0.5ppm以下である。
次に本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
JIS規格SUJ2材(1.0重量%C−0.25重量%Si−0.4重量%Mn−1.5重量%Cr)を用いて、本発明の実施例1を行なった。表1に示した各試料の製造履歴を以下に示す。
Figure 2004315964
(試料A〜D;本発明例):浸炭窒化処理850℃、保持時間150分間。雰囲気は、RXガスとアンモニアガスとの混合ガスとした。図3に示す熱処理パターンにおいて、浸炭窒化処理温度850℃から1次焼入れを行ない、次いで浸炭窒化処理温度より低い温度域780℃〜830℃に加熱して2次焼入れを行なった。ただし、2次焼入温度780℃の試料Aは焼入不足のため試験の対象から外した。
(試料E、F;比較例):浸炭窒化処理は、本発明例A〜Dと同じ履歴で行ない、2次焼入れ温度を浸炭窒素処理温度850℃以上の850℃〜870℃で行なった。
(浸炭窒化処理品;比較例):浸炭窒化処理850℃、保持時間150分間。雰囲気は、RXガスとアンモニアガスとの混合ガスとした。浸炭窒化処理温度からそのまま焼入れを行ない、2次焼入れは行なわなかった。
(普通焼入れ品;比較例):浸炭窒化処理を行なわずに、850℃に加熱して焼入れた。2次焼入れは行なわなかった。
上記の試料に対して、(1)水素量の測定、(2)結晶粒度の測定、(3)シャルピー衝撃試験、(4)破壊応力値の測定、(5)転動疲労試験、の各試験を行なった。次にこれらの試験方法について説明する。
I 実施例1の試験方法
(1)水素量の測定
水素量は、LECO社製DH−103型水素分析装置により、鋼中の非拡散性水素量を分析した。拡散性水素量は測定してない。このLECO社製DH−103型水素分析装置の仕様を下記に示す。
分析範囲:0.01〜50.00ppm
分析精度:±0.1ppmまたは±3%H(いずれか大なる方)
分析感度:0.01ppm
検出方式:熱伝導度法
試料重量サイス゛:10mg〜35g(最大:直径12mm×長さ100mm)
加熱炉温度範囲:50℃〜1100℃
試薬:アンハイドロン Mg(ClO42 、 アスカライト NaOH
キャリアガス:窒素ガス、ガスドージングガス:水素ガス、いずれのガスも純度99.99%以上、圧力40PSI(2.8kgf/cm2)である。
測定手順の概要は以下のとおりである。専用のサンプラーで採取した試料をサンプラーごと上記の水素分析装置に挿入する。内部の拡散性水素は窒素キャリアガスによって熱伝導度検出器に導かれる。この拡散性水素は本実施例では測定しない。次に、サンプラーから試料を取出し抵抗加熱炉内で加熱し、非拡散性水素を窒素キャリアガスによって熱伝導度検出器に導く。熱伝導度検出器において熱伝導度を測定することによって非拡散性水素量を知ることができる。
(2)結晶粒度の測定
結晶粒度の測定は、JIS G 0551の鋼のオーステナイト結晶粒度試験方法に基づいて行なった。
(3)シャルピー衝撃試験
シャルピー衝撃試験は、JIS Z 2242の金属材料のシャルピー衝撃試験方法に基づいて行なった。試験片は、JIS Z 2202に示されたUノッチ試験片(JIS3号試験片)を用いた。なお、シャルピー衝撃値は、次式の吸収エネルギーEを断面積(0.8cm2)で除した値である。
吸収エネルギー:E=WgR(cosβ−cosα)
W:ハンマー重量(=25.438kg)
g:重力加速度(=9.80665m/sec2
R:ハンマー回転軸中心から重心までの距離(=0.6569m)
α:ハンマー持ち上げ角度(=146°)、β:ハンマー降り上がり角度
(4)破壊応力値の測定
図9は、静圧壊強度試験(破壊応力値の測定)の試験片を示す図である。図中のP方向に荷重を負荷して破壊されるまでの荷重を測定する。その後、得られた破壊荷重を、下記に示す曲がり梁の応力計算式により応力値に換算する。なお、試験片は図9に示す試験片に限られず、他の形状の試験片を用いてもよい。
図9の試験片の凸表面における繊維応力をσ1、凹表面における繊維応力をσ2とすると、σ1およびσ2は下記の式によって求められる(機械工学便覧A4編材料力学A4−40)。ここで、Nは円環状試験片の軸を含む断面の軸力、Aは横断面積、e1は外半径、e2は内半径を表す。また、κは曲がり梁の断面係数である。
σ1=(N/A)+{M/(Aρo)}[1+e1/{κ(ρo+e1)}]
σ2=(N/A)+{M/(Aρo)}[1−e2/{κ(ρo−e2)}]
κ=−(1/A)∫A{η/(ρo+η)}dA
(5)転動疲労試験
転動疲労寿命試験の試験条件を表2に示す。また、図10は、転動疲労寿命試験機の概略図である。図10(a)は正面図であり、図10(b)は側面図である。
図10(a)および(b)を参照して、転動疲労寿命試験片121は、駆動ロール111によって駆動され、ボール113と接触して回転している。ボール113は、(3/4)”のボールであり、案内ロール112にガイドされて、転動疲労寿命試験片121との間で高い面圧を及ぼし合いながら転動する。
II 実施例1の試験結果
(1)水素量
浸炭窒化処理したままの浸炭窒化処理品は、0.72ppmと非常に高い値となっている。これは、浸炭窒化処理の雰囲気に含まれるアンモニア(NH3)が分解して水素が鋼中に侵入したためと考えられる。これに対して、試料B〜Dは、水素量は0.37〜0.40ppmと半分近くにまで減少している。この水素量は普通焼入れ品と同じレベルである。
上記の水素量の低減により、水素の固溶に起因する鋼の脆化を軽減することができる。すなわち、水素量の低減により、本発明例の試料B〜Dのシャルピー衝撃値は大きく改善されている。
(2)結晶粒度
結晶粒度は2次焼入れ温度が、浸炭窒化処理時の焼入れ(1次焼入れ)の温度より低い場合、すなわち試料B〜Dの場合、オーステナイト粒は、結晶粒度番号11〜12と顕著に微細化されている。試料EおよびFならびに浸炭窒化処理品および普通焼入品のオーステナイト粒は、結晶粒度番号10であり、本発明例の試料B〜Dより粗大な結晶粒となっている。
(3)シャルピー衝撃試験
表1によれば、浸炭窒化処理品のシャルピー衝撃値は5.33J/cm2であるのに比して、本発明例の試料B〜Dのシャルピー衝撃値は6.30〜6.65J/cm2と高い値が得られている。この中でも、2次焼入れ温度が低い方がシャルピー衝撃値が高くなる傾向を示す。普通焼入品のシャルピー衝撃値は6.70J/cm2と高い。
(4)破壊応力値の測定
上記破壊応力値は、耐割れ強度に相当する。表1によれば、浸炭窒化処理品は2330MPaの破壊応力値となっている。これに比して、試料B〜Dの破壊応力値は2650〜2840MPaと改善された値が得られる。普通焼入品の破壊応力値は2770MPaであり、試料B〜Fの破壊応力値と同等である。このような、試料B〜Dの改良された耐割れ強度は、オーステナイト結晶粒の微細化と並んで、水素含有率の低減による効果が大きいと推定される。
(5)転動疲労試験
表1によれば、普通焼入品は窒素富化層を表層部に有しないことを反映して、転動疲労寿命L10は最も低い。これに比して浸炭窒化処理品の転動疲労寿命は3.1倍となる。試料B〜Dの転動疲労寿命は浸炭窒化処理品より大幅に向上する。本発明の試料E,Fは、浸炭窒化処理品とほぼ同等である。
上記をまとめると、本発明例の試料B〜Dは、水素含有率が低下し、オーステナイト結晶粒度が11番以上に微細化され、シャルピー衝撃値、耐割れ強度および転動疲労寿命も改善される。
(実施例2)
次に実施例2について説明する。下記のX材、Y材およびZ材について、一連の試験を行なった。熱処理用素材には、JIS規格SUJ2材(1.0重量%C−0.25重量%Si−0.4重量%Mn−1.5重量%Cr)を用い、X材〜Z材に共通とした。X材〜Z材の製造履歴は次のとおりである。
(X材:比較例):普通焼入れのみ(浸炭窒化処理せず)。
(Y材:比較例):浸炭窒化処理後にそのまま焼き入れる(浸炭窒化焼入れ)。浸炭窒化処理温度845℃、保持時間150分間。浸炭窒化処理の雰囲気は、RXガス+アンモニアガスとした。
(Z材:本発明例):図4の熱処理パターンを施した軸受鋼。浸炭窒化処理温度845℃、保持時間150分間。浸炭窒化処理の雰囲気は、RXガス+アンモニアガスとした。最終焼入れ温度は800℃とした。
(1)耐表面損傷特性
耐表面損傷特性を調べるために、X材とZ材についてピーリング試験およびスミアリング試験を行なった。図11は、ピーリング試験およびスミアリング試験を行なう2円筒試験機の概略図である。図11(a)は正面図であり、図11(b)は側面図である。
図11(a)および図11(b)を参照して、円筒状の耐表面損傷試験片117aが回転軸115aに取り付けられていて、円筒状の耐表面損傷試験片117bが回転軸115bに取り付けられている。耐表面損傷試験片117aの表面と耐表面損傷試験片117bの表面とは互いに接触している。耐表面損傷試験片117aと耐表面損傷試験片117bとは、互いに高い面圧を及ぼし合いながら転動する。
スミアリング試験においては、回転軸115aと回転軸115bとを異なる回転速度で回転した。これにより、耐表面損傷試験片117aと耐表面損傷試験片117bとの間に滑りが発生し、スミアリングが発生する。このスミアリングがどれぐらいの回転速度差で発生するかによってスミアリング強度を評価した。一方、ピーリング試験においては、回転軸115aのみを駆動することにより、回転軸115bが回転軸115aの回転にともなう従動回転をするようにした。回転軸115bの従動回転により、耐表面損傷試験片117aと耐表面損傷試験片117bとの面粗度の差により局部的金属疲労が発生し、これによりピーリングが発生する。このピーリングの発生率を評価した。スミアリング試験およびピーリング試験の試験条件は表2および表3のとおりである。また、ピーリング試験およびスミアリング試験の結果を表4に示す。
Figure 2004315964
Figure 2004315964
Figure 2004315964
X材に比べZ材のピーリング発生率は半分以下になっていることがわかる。また、スミアリング強度についても、Z材はX材よりも高強度となっていることがわかる。したがって、本発明の熱処理方法によって製造された軸受部品は、優れた耐表面損傷特性を有することがわかる。
(2)転動疲労寿命
転動疲労寿命試験の試験条件および試験装置は、表5および図10に示すとおりである。この転動疲労寿命試験結果を表6に示す。
Figure 2004315964
Figure 2004315964
表6によれば、比較例のY材は、同じく比較例で普通焼入れのみを施したX材のL10寿命(試験片10個中1個が破損する寿命)の3.1倍を示し、浸炭窒化処理による長寿命化の効果が認められる。これに対して、本発明例のZ材は、Y材の1.74倍、またX材の5.4倍の長寿命を示している。この改良の主因はミクロ組織の微細化によるものと考えられる。
(3)シャルピー衝撃試験
シャルピー衝撃試験は、Uノッチ試験片を用いて、上述のJISZ2242に準じた方法により行なった。試験結果を表7に示す。
Figure 2004315964
浸炭窒化処理を行なったY材(比較例)のシャルピー衝撃値は、普通焼入れのX材(比較例)より高くないが、Z材はX材と同等の値が得られた。
(4)静的破壊靭性値の試験
図12は、静的破壊靭性試験の試験片を示す図である。この試験片のノッチ部に、予き裂を約1mm導入した後に、3点曲げによる静的荷重を加え、破壊荷重Pを求めた。破壊靭性値(KIc値)の算出には次に示す(I)式を用いた。また、試験結果を表8に示す。
Ic=(PL√a/BW2){5.8−9.2(a/W)+43.6(a/W)2−75.3(a/W)3+77.5(a/W)4}…(I)
Figure 2004315964
予め導入した亀裂深さが窒素富化層深さよりも大きくなったため、比較例のX材とY材とに違いはない。しかし、本発明例のZ材は比較例に対して約1.2倍の値を得ることができた。
(5)静圧壊強度試験(破壊応力値の測定)
静圧壊強度試験片は、上述のように図9に示す形状のものを用いた。図中、P方向に荷重を負荷して、静圧壊強度試験を行なった。試験結果を表9に示す。
Figure 2004315964
浸炭窒化処理を行なっているY材は普通焼入れのX材よりもやや低い値である。しかしながら、本発明のZ材は、Y材よりも静圧壊強度が向上し、X材と遜色ないレベルが得られている。
(6)経年寸法変化率
保持温度130℃、保持時間500時間における経年寸法変化率の測定結果を、表面硬度、残留オーステナイト量(0.1mm深さ)と併せて表10に示す。
Figure 2004315964
残留オーステナイト量の多いY材の寸法変化率に比べて、本発明例のZ材は3分の2以下に抑制されていることがわかる。
(7)異物混入潤滑下における寿命試験
玉軸受6206を用い、標準異物を所定量混入させた異物混入潤滑下での転動疲労寿命を評価した。試験条件を表11に、また試験結果を表12に示す。
Figure 2004315964
Figure 2004315964
X材に比べ、浸炭窒化処理を施したY材は約2.5倍の長寿命が得られた。また、本発明例のZ材は約3.7倍の長寿命が得られた。本発明例のZ材は、比較例のY材に比べて残留オーステナイトが少ないものの、窒素の侵入と微細化されたミクロ組織の影響で長寿命が得られている。
上記の結果より、本発明例のZ材、すなわち本発明の熱処理方法によって製造された軸受部品は、従来では困難であった耐表面損傷特性の向上、転動疲労寿命の長寿命化、割れ強度の向上、経年寸法変化率の低減の4項目を同時に満足することができることがわかった。
なお、本実施の形態1〜3においては、スクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造1が深溝玉軸受41、円筒ころ軸受45および針状ころ軸受47を有する場合について示したが、本発明はこれらの軸受に限定されるものではなく、転がり軸受を有するスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造であればよい。
また、本実施の形態1においては、旋回スクロール5が駆動軸3の軸心を中心として偏心公転を行なう場合について示したが、本発明はこのような場合に限定されるものではなく、旋回スクロールが所定の軸の周りを偏心公転すればよい。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の実施の形態1におけるスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造を示す概略断面図である。 本発明の実施の形態1におけるスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造である深溝玉軸受を示す概略断面図である。 本発明の実施の形態1における熱処理方法を説明する図である。 本発明の実施の形態1における熱処理方法の変形例を説明する図である。 スクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造における部材のミクロ組織、とくにオーステナイト粒を示す図である。(a)は本発明例の軸受部品であり、(b)は従来の軸受部品である。 (a)は図5(a)を図解したオーステナイト粒界を示し、(b)は図5(b)を図解したオーステナイト粒界を示す。 (a)は本発明の実施の形態2におけるスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造である円筒ころ軸受を示す概略断面図である。(b)は本発明の実施の形態2におけるスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造である円筒ころ軸受を示す部分斜視図である。 本発明の実施の形態3におけるスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造である針状ころ軸受を示す概略斜視図である。 静圧壊強度試験(破壊応力値の測定)の試験片を示す図である。 転動疲労寿命試験機の概略図である。(a)は正面図であり、(b)は側面図である。 2円筒試験機の概略図である。(a)は正面図であり、(b)は側面図である。 静的破壊靭性試験の試験片を示す図である。
符号の説明
1 スクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造、1a 旋回軸受、1b 主軸受、1c 補助軸受、3 駆動軸、5 旋回スクロール、7 固定スクロール、9 モータ回転子、11 モータ固定子、13 モータケーシング、15 ブラケット、17 クランク部、19a,19b ボルト、21 排出孔、23 圧縮動作室、25 自転防止機構、31 外輪、33 内輪、35 ボール、37 保持器、41 深溝玉軸受、45 円筒ころ軸受、47 針状ころ軸受、51 スクロールコンプレッサ、111 駆動ロール、112 案内ロール、113 (3/4)”ボール、115a,115b 回転軸、117a,117b 耐表面損傷試験片、121転動疲労寿命試験片。

Claims (9)

  1. 駆動軸の自転により旋回スクロールが所定の軸の周りを偏心公転するスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造であって、
    転がり軸受を有し、
    前記転がり軸受の内輪、外輪および転動体のうち少なくともいずれか1つの部材が窒素富化層を有し、前記部材のオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番を超える範囲にある、スクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造。
  2. 駆動軸の自転により旋回スクロールが所定の軸の周りを偏心公転するスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造であって、
    転がり軸受を有し、
    前記転がり軸受の内輪、外輪および転動体のうち少なくともいずれか1つの部材が窒素富化層を有し、前記部材の水素含有率が0.5ppm以下である、スクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造。
  3. 前記転がり軸受は深溝玉軸受である、請求項1または2に記載のスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造。
  4. 前記転がり軸受は円筒ころ軸受である、請求項1または2に記載のスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造。
  5. 前記転がり軸受は針状ころ軸受である、請求項1または2に記載のスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造。
  6. 駆動軸の自転により旋回スクロールが所定の軸の周りを偏心公転するスクロールコンプレッサの構成部品であって、
    前記構成部品が窒素富化層を有し、その構成部品のオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番を超える範囲にある、スクロールコンプレッサの構成部品。
  7. 駆動軸の自転により旋回スクロールが所定の軸の周りを偏心公転するスクロールコンプレッサの構成部品であって、
    前記構成部品が窒素富化層を有し、その構成部品の水素含有率が0.5ppm以下である、スクロールコンプレッサの構成部品。
  8. 駆動軸の自転により旋回スクロールが所定の軸の周りを偏心公転するスクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造の製造方法であって、
    1変態点を超える浸炭窒化処理温度で鋼を浸炭窒化処理した後、前記A1変態点未満の温度に冷却し、その後、前記A1変態点以上で前記浸炭窒化処理の温度未満の焼入れ温度域に再加熱し、焼入れを行なうことにより、前記スクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造を有する転がり軸受の内輪、外輪および転動体のうち少なくともいずれか1つの部材が製造されることを特徴とする、スクロールコンプレッサにおける駆動軸の支持構造の製造方法。
  9. 駆動軸の自転により旋回スクロールが所定の軸の周りを偏心公転するスクロールコンプレッサの構成部品の製造方法であって、
    1変態点を超える浸炭窒化処理温度で鋼を浸炭窒化処理した後、前記A1変態点未満の温度に冷却し、その後、前記A1変態点以上で前記浸炭窒化処理の温度未満の焼入れ温度域に再加熱し、焼入れを行なうことにより、前記構成部品が製造されることを特徴とする、スクロールコンプレッサの構成部品の製造方法。
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