JP2004316902A - 油圧ポンプ用転がり軸受およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、高強度で、転動疲労特性が長寿命で、高度の耐割れ強度を有し、経年寸法変化率の増加を抑えて寸法安定性を向上させる油圧ポンプ用転がり軸受を提供する。
【解決手段】 本発明の油圧ポンプ・モータ用軸受13は、駆動軸11を回転させてピストン16を駆動して油圧を吐出する油圧ポンプの駆動軸11を回転可能に軸支する油圧ポンプ・モータ用軸受であって、内周に転走面22aを有する外輪7と、外輪7の転走面22aに対向する転走面21aを有する内輪6と、外輪7と内輪6との間に介在する複数の転動体8とからなっている。外輪7、内輪6および転動体8のうちの少なくとも1つの部材が富化窒化層を有し、その部材の水素含有率が0.5ppm以下である。
【選択図】 図1
【解決手段】 本発明の油圧ポンプ・モータ用軸受13は、駆動軸11を回転させてピストン16を駆動して油圧を吐出する油圧ポンプの駆動軸11を回転可能に軸支する油圧ポンプ・モータ用軸受であって、内周に転走面22aを有する外輪7と、外輪7の転走面22aに対向する転走面21aを有する内輪6と、外輪7と内輪6との間に介在する複数の転動体8とからなっている。外輪7、内輪6および転動体8のうちの少なくとも1つの部材が富化窒化層を有し、その部材の水素含有率が0.5ppm以下である。
【選択図】 図1
Description
本発明は、駆動軸を回転させてピストンを駆動して油圧を吐出する油圧ポンプおよび油圧によってピストンを駆動して駆動軸を回転させる油圧モータの駆動軸の転がり軸受およびその製造方法に関し、長寿命の転動疲労特性、高度の耐割れ強度、耐経年寸法変化などを有する転がり軸受およびその製造方法に関するものである。
建設機械、農業機械などの産業機械は、油圧装置の小型化とともに油圧ポンプの高圧化によって、小型化とともに高出力になっている。高圧の油圧ポンプとしてピストンポンプが多用されている。ピストンポンプとして、アキシアル型ピストンポンプとラジアル型ピストンポンプとがある。アキシアル型ピストンポンプとして、斜軸式(ベント・アクシス式)ピストンポンプと回転斜板式ピストンポンプとがある。以下、斜軸式ピストンポンプと回転斜板式ピストンポンプとについて説明するがこれらのポンプに限定されない。
斜軸式ピストンポンプおよび回転斜板式ピストンポンプは、駆動軸を回転させてピストンを駆動して油圧を吐出する油圧ポンプとして使用される場合と油圧によってピストンを駆動して駆動軸を回転させる油圧モータとして使用される場合とがある。以下、油圧ポンプと油圧モータとを油圧ポンプ・モータという。
ピストンを往復運動させて駆動軸を回転させる油圧ポンプ・モータの駆動軸に、転がり軸受(以下、油圧ポンプ・モータ用軸受)が使用されている。油圧ポンプ・モータ用軸受として、深溝玉軸受の他に、円筒ころ軸受、円錐ころ軸受などの転がり軸受が使用されている。
油圧ポンプ・モータ用軸受がころ軸受のときは、ころのスキューなどの滑りが発生する場合があり、ピーリング、摩耗などが生じ、転動体(ころ)が内輪または外輪の軌道面に、油膜が存在しない活性面を生じ、水素脆性に及ぶことがある。また、近年、油圧機器の過熱による火災発生防止のために、水性系難燃性作動油の使用が増加している。
油圧ポンプ・モータ用軸受の潤滑は、油圧ポンプ・モータのシリンダブロックとピストンなどの油圧機器の作動油によって行われている。上記の水性系難燃性作動油は低粘度であるために、上記の油圧ポンプ・モータ用軸受の潤滑油として使用した場合には、油膜が存在しない活性面を生じ、水素脆性による剥離が発生する危険性が増大している。
上記の水素脆性剥離を防止対策として、油圧ポンプ・モータ用軸受の軸受部材(以下、軸受部材という)に、黒色酸化表面形成などの酸化表面処理をしている。
また、従来から通常の軸受部材の転動疲労に対して長寿命を与える熱処理方法として、軸受材料の材質としてステンレス鋼を使用しないで、例えば、軸受材料の材質は軸受材料のSUJをそのまま使用して、焼入れ加熱時の雰囲気RXガス中にさらにアンモニアガスを添加するなどして、その軸受部材の表層部に浸炭窒化処理を施す方法がある。この浸炭窒化処理法を用いることによって、表層部を硬化させ、ミクロ組織中に残留オーステナイトを生成させ、転動疲労寿命をある程度は向上させることができている。このような技術は、たとえば特開平11−101247号公報(特許文献1)や、特開平8−4774号公報(特許文献2)に開示されている。
特開平11−101247号公報
特開平8−4774号公報
しかし、軸受部材に上記の酸化表面処理をしたり浸炭窒化処理をしたりしても、顕著な効果が得られていない。
油圧ポンプ・モータ用軸受の機械的特性として、転動疲労に対して長寿命を確保し、割れ強度を向上させ、経年寸法変化率の増加を抑える要求がある。今後の油圧ポンプおよび油圧モータ用転がり軸受には、使用環境の高荷重化、高速化に伴い、従来よりも、大きな荷重条件でかつより高温で使用できる機械的特性を備える要求が増大している。
本発明は、高強度で、転動疲労特性が長寿命で、高度の耐割れ強度を有し、経年寸法変化率の増加を抑えて寸法安定性を向上させる油圧ポンプ用転がり軸受およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一の局面における油圧ポンプ用転がり軸受は、駆動軸を回転させてピストンを駆動して油圧を吐出する油圧ポンプの前記駆動軸を回転可能に軸支する油圧ポンプ用転がり軸受であって、内周に転走面を有する外方部材と、外方部材の転走面に対向する転走面を有する内方部材と、外方部材と内方部材との間に介在する複数の転動体とからなっている。外方部材、内方部材および転動体のうちの少なくとも1つの部材が富化窒化層を有し、その部材の水素含有率が0.5ppm以下である。
これにより、水素に起因する鋼の脆化を軽減することができる。水素含有率が0.5ppmを超えると、割れ強度が低下して過酷な荷重が加わる部位の使用に適さなくなる。水素含有率は低いほうが望ましいが、0.3ppm未満に減らすためには、長時間の加熱が必要になり、オーステナイト結晶粒径が粗大化し、かえって靭性が低下してしまって、水素含有率低減の効果を打ち消してしまう。したがって、水素含有率は0.3〜0.5ppmの範囲にする必要があり、0.35〜0.45ppmの範囲であることが望ましい。なお、上記窒素富化層は、あとで説明するように、浸炭窒化処理により形成されるが、上記窒素富化層に炭素が富化されていてもよいし、富化されていなくてもよい。
また、上記の水素含有率の測定においては、拡散性水素量を測定対象としないで、所定温度以上で鋼から放出される非拡散性水素のみを測定の対象としている。拡散性水素は、サンプルサイズが小さければ、常温でもサンプルから放出され散逸してしまうので、測定の対象から外している。非拡散性水素は、鋼中の欠陥部などにトラップされており、所定の加熱温度以上になってサンプルから放出される水素である。水素含有率を非拡散性水素に限定しても、水素含有率は、測定方法によって異なる。本発明に係る水素含有率範囲は、熱伝導度法による測定方法による範囲であって、LECO社製DH−103型水素分析装置またはそれに準じる測定装置を用いて測定している。
本発明の他の局面における油圧ポンプ用転がり軸受は、駆動軸を回転させてピストンを駆動して油圧を吐出する油圧ポンプの前記駆動軸を回転可能に軸支する油圧ポンプ用転がり軸受であって、内周に転走面を有する外方部材と、外方部材の転走面に対向する転走面を有する内方部材と、外方部材と内方部材との間に介在する複数の転動体とからなっている。外方部材、内方部材および転動体のうちの少なくとも1つの部材が富化窒化層を有し、その部材のオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番を超える範囲にある。
オーステナイト結晶粒径を微細化すると、転動疲労寿命を大幅に改良することができる。オーステナイト結晶粒径の粒度番号が10番以下では、高温下での転動疲労寿命は大きく改善することができるが、本発明に係る熱処理方法を採用することによって、粒度番号10番を超えるオーステナイト結晶粒径を得ることができる。このオーステナイト結晶粒径が細かいほど高温下での転動疲労寿命が大きくなり、たとえば、粒度番号を11番以上にすることが好ましい。しかし、通常、13番を超える粒度番号を得ることは難しい。なお、上記の本発明対象部材のオーステナイト結晶粒は、浸炭窒化処理の影響を大きく受けている表層部においても、表層部よりも深い内部でも変化しない。
また、オーステナイト結晶粒は、対象とする部材の金相試料に対してエッチングなど、粒界を顕出する処理を施して観察することができる粒界であればよい。低温焼入れ直前の加熱された時点での粒界という意味で、上記のように旧オーステナイト粒と呼ぶ場合がある。測定は、JIS規格の粒度番号の平均値から平均粒径に換算して求めてもよいし、切片法などにより金相組織に重ねたランダム方向の直線が粒界と会合する間の間隔長さの平均値をとってもよい。
上記の「JIS(日本工業規格)の粒度番号で10番を超えるようにすること」と、「オーステナイト結晶粒の平均粒径を6μm以下にすること」とは、オーステナイト結晶粒径は略同一になる。すなわち、後述する図8のオーステナイト結晶粒度を示すオーステナイト結晶粒度組織図から判定すると、従来技術熱処理軸受部材のオーステナイト結晶粒径はJIS(日本工業規格)の粒度番号で10番である。それに対して、本発明対象部材の平均粒径は5.6μmであり、この粒径はJISの粒度番号で12番に相当する。したがって、本発明対象部材の粒径は、JISの粒度番号で10番を超えている。
本発明の油圧ポンプ用転がり軸受の製造方法は、内周に転走面を有する外方部材と、外方部材の転走面に対向する転走面を有する内方部材と、外方部材と内方部材との間に介在する複数の転動体とからなり、駆動軸を回転させてピストンを駆動して油圧を吐出する油圧ポンプの駆動軸を回転可能に軸支する油圧ポンプ用転がり軸受の製造方法である。A1変態点を超える浸炭窒化処理温度で鋼を浸炭窒化処理した後、A1変態点未満の温度に冷却し、その後、A1変態点以上で浸炭窒化処理の温度未満の焼入れ温度域に再加熱し、焼入れを行なうことにより、外方部材、内方部材、および転動体のうち少なくともいずれか1つの部材が製造される。
軸受部材を浸炭窒化処理のための加熱後にA1変態点温度よりも低温にした後で再加熱し油冷して焼入れすることによって、窒素富化層を有する鋼の破壊応力値を、従来では得られなかった2650MPa以上にできる。これによって、従来よりも破壊応力値に優れ、強度の高い転がり軸受を得ることができる。
上記の熱処理は、浸炭窒化処理に引き続いてそのまま1回焼入れする普通焼入れよりも、表層部分を浸炭窒化しつつ、割れ強度を向上させ、経年寸法変化率を減少させることができる。上述したように、上記の熱処理方法によれば、オーステナイト結晶粒の粒径を従来の2分の1以下となるミクロ組織を得ることができる。上記の熱処理を受けた軸受部材は、転動疲労特性が長寿命であり、割れ強度を向上させ、経年寸法変化率も減少させることができる。
なお、本明細書中における「油圧ポンプ用転がり軸受」の語句は、駆動軸を回転させてピストンを駆動して油圧を吐出する油圧ポンプの駆動軸を回転可能に軸支する油圧ポンプ用転がり軸受の他、油圧によってピストンを駆動して駆動軸を回転させる油圧モータの駆動軸を回転可能に軸支する油圧モータ用転がり軸受も含む意味である。
本発明対象部材が、以下に記載する本発明の効果のすべてを同時に有している必要はなく、本発明の1つ以上の効果を有していなければよい。
1つ目の効果として、従来技術では、水素含有率が0.5ppmを超えていたために鋼が脆化し、割れ強度が低下して過酷な荷重が加わる部位の使用に適さなかったが、浸炭窒化処理のための加熱後にA1変態点温度よりも低温にした後で再加熱し油冷して焼入れをする。この結果、上記本発明対象部材の窒素富化層の水素含有率を0.5ppm以下として、割れ強度を向上させることができる。
2つ目の効果として、従来技術では、オーステナイト結晶粒が粗大化して耐割れ強度の向上を図ることが困難であったが、浸炭窒化処理のための加熱後にA1変態点温度よりも低温にした後で再加熱し油冷して焼入れをする。この結果、上記軸受の窒素富化層および熱影響部のオーステナイト結晶粒の粒度番号を10番を超える範囲にして、残留オーステナイトの増加による経年寸法変化率を低減させることができる。なお、熱影響部とは、窒素富化層に隣接する部分であって、浸炭窒化処理、焼き入れ、冷却、焼き戻しなどの熱変化によって金属組織が変化する可能性がある部分をいう。
3つ目の効果として、従来技術では、転動疲労に対して長寿命、割れ強度の向上、経年寸法変化率の増加を抑えるために、組成を特殊な合金成分とした原材料の入手が困難であって原材料コストも高くなっていたが、浸炭窒化処理のための加熱後にA1変態点温度よりも低温にした後で再加熱し油冷して焼入れをする。この結果、上記軸受の窒素富化層および熱影響部の破壊応力値を2650MPa以上にして、従来技術よりも破壊応力値を大にして、耐割れ強度を向上させることができる。
上記のように熱処理した本発明対象部材を使用することによって、転動疲労に対して長寿命を確保し、割れ強度を向上させ、経年寸法変化率の増加を抑えることができる。
次に図面を用いて本発明の一実施の形態について説明する。
図1は、油圧ポンプ・モータ用軸受を使用した斜軸式ピストンポンプの概略断面図である。
図1の斜軸式ピストンポンプの概略断面図は、従来技術の熱処理による油圧ポンプ・モータ用軸受(以下、従来技術熱処理軸受部材という)および本発明に係る熱処理による油圧ポンプ・モータ用軸受(以下、本発明対象部材という)に適用される。
図1の斜軸式ピストンポンプ10において、ハウジング12に固定された油圧ポンプ・モータ用軸受13によって駆動軸11が回転自在に軸支されている。駆動軸11、シリンダブロック14およびピストン16のユニットは、角度20度ないし40度程度の角度範囲で、傾斜自在に結合されている。駆動軸11の回転によって、ピストン16がシリンダブロック14内で往復運動をして、シリンダブロック14とピストン16との間で形成される容積が増加する領域で圧油を吸引し、容積が減少する領域で圧油を吐出する。この2つの領域はバルブフレート17によって仕切られている。なお、斜軸式ピストンポンプ10は、ピストン16のストロークを変えて、シリンダブロック14の傾き角度を変えている。この斜軸式ピストンポンプ10はオイルモータと組み合わせて油圧変速機として多用されている。本実施の形態の油圧ポンプ・モータ用軸受13は、これらの油圧機器にすべて適用される。
次に、斜軸式ピストンポンプ10の油圧ポンプ・モータ用軸受13に荷重される力について説明する。
ピストン16の一端が駆動軸11の大径部またはフランジに駆動軸11の中心軸から偏心して固定されているので、駆動軸11の回転によってピストン16がシリンダブロック14の内部でシリンダブロック軸18を中心として回転移動する。ピストン16が図示しているように、シリンダブロック軸18の下方に位置しているときは、ピストン16はシリンダブロック14内に入り込んで容積が増加する領域で圧油を吸引する。逆に、ピストン16が図示していないシリンダブロック軸18の上方に位置しているときは、ピストン16はシリンダブロック14から引き出され、容積が減少する領域で圧油を吐出する。
油圧ポンプ・モータ用軸受13は駆動軸11の回転によるラジアル方向の力を受けるとともに、ピストン16の往復運動によってアキシアル方向の力も受ける。そこで、斜軸式ピストンポンプ10の油圧ポンプ・モータ用軸受13として、円錐ころ軸受を2個対向させて使用している。なお、円錐ころ軸受の他に、たとえば深溝玉軸受や円筒ころ軸受などを使用することもできる
図2は、油圧ポンプ・モータ用軸受を使用した回転斜板式ピストンポンプの概略断面図である。
図2は、油圧ポンプ・モータ用軸受を使用した回転斜板式ピストンポンプの概略断面図である。
図2の回転斜板式ピストンポンプの概略断面図は、従来技術熱処理軸受部材および本発明対象部材に適用される。
図2の回転斜板式ピストンポンプ20において、ハウジング12に固定された油圧ポンプ・モータ用軸受13によって駆動軸11が回転自在に軸支されている。駆動軸11の回転によって、ピストン16が固定斜板21に沿って動きシリンダブロック14内で往復運動をして、シリンダブロック14とピストン16との間で形成される容積が増加する領域で圧油を吸引し、容積が減少する領域で圧油を吐出する。
この回転斜板式ピストンポンプ20は、斜軸式ピストンポンプ10に比べて部品点数が少なく構造も簡単で、斜板(スワットュプレート)の角度を変えるだけで可変吐出量型にすることができ斜軸式よりも小形にできるので、多用されている。本実施の形態の油圧ポンプ・モータ用軸受13は、これらの油圧機器にすべて適用される。回転斜板式ピストンポンプ20の油圧ポンプ・モータ用軸受13として、深溝玉軸受を2個使用している。なお、深溝玉軸受の他に、たとえば円錐ころ軸受や円筒ころ軸受などを使用することもできる。
図3(A)、(B)は深溝玉軸受の断面図であり、図4は円筒ころ軸受の断面図であり、図5は円錐ころ軸受の断面図である。本発明対象部材の軸受は、図3(A)、(B)に示した深溝玉軸受、図4に示す円筒ころ軸受、図5に示した円錐ころ軸受などが包含される。
図3(A)に示す深溝玉軸受は、内方部材としての内輪6と、外方部材としての外輪7と、複数の玉の転動体8と、保持器9とからなっている。外輪7は内周に転走面22aを有しており、内輪6は転走面22aの各々に対向する転走面21aを有している。そして、外輪7と内輪6との間に複数の転動体8が介在している。
図3(B)に示す複列深溝玉軸受は、内方部材としての内輪6aと、外方部材としての外輪7aと、複数の玉の転動体8aと、保持器9aとからなっている。外輪7aは内周に転走面22bを有しており、内輪6aは転走面22bの各々に対向する転走面21bを有している。そして、外輪7aと内輪6aとの間に複数の転動体8aが介在している。
図4に示す円筒ころ軸受は、内方部材としての内輪6cと、外方部材としての外輪7cと、複数の玉の転動体8cと、保持器9cとからなっている。外輪7cは内周に転走面22cを有しており、内輪6cは転走面22cの各々に対向する転走面21cを有している。そして、外輪7cと内輪6cとの間に複数の転動体8cが介在している。
図5に示す円錐ころ軸受は、内方部材としての内輪6dと、外方部材としての外輪7dと、複数の玉の転動体8dと、保持器9dとからなっている。外輪7dは内周に転走面22dを有しており、内輪6dは転走面22dの各々に対向する転走面21dを有している。そして、外輪7dと内輪6dとの間に複数の転動体8cが介在している。
本実施の形態においては、駆動軸11を回転させてピストンを駆動して油圧を吐出する油圧ポンプおよび油圧によってピストンを駆動して駆動軸を回転させる油圧モータの駆動軸11の油圧ポンプ・モータ用軸受13の内輪6,6a,6c,6d、外輪7,7a,7c,7dおよび保持器9,9a,9c,9dに回転自在に軸支された複数の転動体8,8a,8c,8dのうちの少なくとも一つの軸受部材に、図6または図7に示す後述の熱処理を実施する。これにより、水素含有率が0.5ppm以下である油圧ポンプ・モータ用軸受を得ることができる。また、これにより、オーステナイト結晶粒の粒度番号が10番を超える範囲である油圧ポンプ・モータ用軸受を得ることができる。
図6および図7において、図6(B)または図7(A)に記載の「普通焼入」とは、図6(A)または図7(A)に記載の「浸炭窒化処理」をしない焼き入れをいう。また、図6(A)に記載の「1次焼入」とは、浸炭窒化処理のための加熱温度T1(以下、浸炭窒化処理加熱温度という)に加熱し油冷によって急冷する1回目の焼き入れをいう。図6(B)に記載の「2次焼入」とは、図6(A)に記載の1次焼入をした後で、普通焼入のための加熱温度T2(以下、普通焼入加熱温度という)に加熱し油冷によって急冷する2回目の焼き入れをいう。
それに対して、図7(A)においては、浸炭窒化処理温度T1に加熱した後に、A1変態点温度よりも低温に冷却しているが、この冷却は、上記の図6(A)と同図(B)との間の油冷による急冷ではないために焼き入れになっていない。したがって、図7に示す焼入は1回だけであって、図6(A)の「1次焼入」および同図(B)の「2次焼入」のような2回の焼入の区別がない。
図6は、本発明対象部材の1次焼入れ後に油冷によってA1変態点温度よりも相当に低温まで冷却してから2次焼入れする第1の熱処理パターン図である。
同図(A)は、浸炭窒化処理加熱温度T1(845℃)に加熱して浸炭窒化処理をした後、その浸炭窒化処理加熱温度T1から油冷して焼き入れする1次焼入を説明する図である。同図(B)は、この後、上記浸炭窒化処理加熱温度T1(845℃)よりも低い普通焼き入れ温度T2(800℃)に加熱してから油冷して焼き入れする2次焼入を説明する図である。図6(A)および(B)に示す第1の熱処理パターンでは、油冷によって1次焼入れした後、次に低温から浸炭窒化処理加熱温度T1よりも低い普通焼き入れ温度T2(800℃)で加熱し油冷によって2次焼入れしている。
図7は、上記第1の熱処理パターンと同様の効果を有する第2の熱処理パターン図であって、本発明対象部材の浸炭窒化処理のための加熱後にA1変態点温度よりも低温になった時点で再加熱した後で油冷して焼入れをする第2の熱処理パターン図である。
この図7に示す第2の熱処理方法は、本発明対象部材を、浸炭窒化処理加熱温度T1加熱継続中に、加熱開始温度近くまで下げないで、A1変態点温度未満であって加熱開始温度よりもかなり高い温度(以下、A1変態点近接低温度という)まで冷却し、その後、浸炭窒化処理加熱温度T1よりも低い普通焼き入れ温度T2に再加熱し油冷して焼き入れする。
したがって、図7に示す第2の熱処理方法は、前述した図6に示す第1の熱処理方法と異なり、本発明対象部材を、浸炭窒化処理加熱温度T1で加熱して窒素富化層を形成させた後に、浸炭窒化処理加熱温度T1の加熱継続中に、A1変態点近接低温度まで冷却し、続けて浸炭窒化処理温度T1よりも低い普通焼き入れ温度T2で加熱し油冷して焼き入れる方法である。逆に、第1の熱処理パターンの熱処理方法と第2の熱処理パターンの熱処理方法との共通点は、浸炭窒化処理のための加熱後にA1変態点温度よりも低温にした後で再加熱し油冷して焼入れすることである。
上記の熱処理のどちらによっても、その中の浸炭窒化処理により「浸炭窒化処理層」である窒素富化層が形成される。浸炭窒化処理において素材となる鋼の炭素濃度が高いため、通常の浸炭窒化処理の雰囲気から炭素が鋼の表面に侵入しにくい場合がある。たとえば炭素濃度が高い鋼の場合(1wt%程度の鋼)、それ以上高い炭素濃度の浸炭層が生成する場合もあるし、それ以上高い炭素濃度の浸炭層は生成しにくい場合がある。しかし、窒素濃度は、Cr濃度などにも依存するが、通常の鋼では最大限0.025wt%程度以下と低いので、素材の鋼の炭素濃度によらず窒素富化層が明瞭に生成される。上記窒素富化層には炭素が富化されていてもよいことはいうまでもない。
図8は、図6または図7に示す本発明対象部材および従来技術熱処理軸受部材のオーステナイト結晶粒度を示すオーステナイト結晶粒度組織図である。図8(A)は本発明対象部材のオーステナイト結晶粒度を示すオーステナイト結晶粒度組織図であり、図8(B)は比較のために従来技術熱処理軸受部材のオーステナイト結晶粒度を示すオーステナイト結晶粒度組織図である。
図9は、図8に示す本発明対象部材のオーステナイト結晶粒度を示すオーステナイト結晶粒度組織を図解したオーステナイト結晶粒度を示すオーステナイト結晶粒度図解図である。
図9(A)は本発明対象部材のオーステナイト結晶粒度を示す図8(A)のオーステナイト結晶粒度組織図を図解したオーステナイト結晶粒度図解図であり、図9(B)は比較のために従来技術熱処理軸受部材のオーステナイト結晶粒度を示す図8(B)のオーステナイト結晶粒度組織図を図解したオーステナイト結晶粒度図解図である。
上記のオーステナイト結晶粒度を示すオーステナイト結晶粒度組織図から判定すると、従来技術熱処理軸受部材のオーステナイト結晶粒径はJIS(日本工業規格)の粒度番号で10番であり、また本発明対象部材では、12番の細粒を得ることができ、図8(A)の平均粒径は、切片法で測定した結果、5.6μmであった。
次に、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
JISのSUJ2材(1.0重量%Cと0.25重量%Siと0.4重量%Mnと1.5重量%Cr)を用いて、本発明対象部材と従来技術の熱処理方法の本発明対象部材との機械的性質について比較をした。表1に示した各試料の製造履歴を以下に示す。
JISのSUJ2材(1.0重量%Cと0.25重量%Siと0.4重量%Mnと1.5重量%Cr)を用いて、本発明対象部材と従来技術の熱処理方法の本発明対象部材との機械的性質について比較をした。表1に示した各試料の製造履歴を以下に示す。
(試料A〜D;本発明の実施例):雰囲気をRXガスとアンモニアガスとの混合ガスとして、温度850℃で150分間保持して浸炭窒化処理を施した。図6(または図7)に示す熱処理パターンにおいて、浸炭窒化処理温度850℃から1次焼入れを行ない、次いで浸炭窒化処理温度よりも低い温度域780℃〜830℃に加熱して2次焼入れを行った。ただし、2次焼入れ温度780℃の試料Aは焼入れ不足のため試験の対象から外した。
(試料E、F;本発明との比較例):浸炭窒化処理は、本発明の実施例A〜Dと同じ履歴で行い、2次焼入れ温度を浸炭窒素処理温度(850℃)以上の850℃〜870℃で行った。
(従来の浸炭窒化処理品;比較例):雰囲気をRXガスとアンモニアガスとの混合ガスとして、温度850℃で150分間保持して浸炭窒化処理を施した。その浸炭窒化処理時の温度からそのまま焼入れを行ない、2次焼入れは行なわなかった。
(普通焼入れ品;比較例):浸炭窒化処理を行なわずに、850℃に加熱して焼入れた。2次焼入れは行なわなかった。
(試料E、F;本発明との比較例):浸炭窒化処理は、本発明の実施例A〜Dと同じ履歴で行い、2次焼入れ温度を浸炭窒素処理温度(850℃)以上の850℃〜870℃で行った。
(従来の浸炭窒化処理品;比較例):雰囲気をRXガスとアンモニアガスとの混合ガスとして、温度850℃で150分間保持して浸炭窒化処理を施した。その浸炭窒化処理時の温度からそのまま焼入れを行ない、2次焼入れは行なわなかった。
(普通焼入れ品;比較例):浸炭窒化処理を行なわずに、850℃に加熱して焼入れた。2次焼入れは行なわなかった。
上記の各試料に対して、(1)水素量の測定、(2)結晶粒度の測定、(3)シャルピー衝撃試験、(4)破壊応力値の測定および(5)転動疲労試験の各々を行った。次にこれらの試験方法について説明する。
I 実施例1の試験方法
(1)水素量の測定
水素量は、LECO社製DH−103型水素分析装置により、鋼中の非拡散性水素量を分析した。拡散性水素量は測定してない。このLECO社製DH−103型水素分析装置の仕様を下記に示す。
(1)水素量の測定
水素量は、LECO社製DH−103型水素分析装置により、鋼中の非拡散性水素量を分析した。拡散性水素量は測定してない。このLECO社製DH−103型水素分析装置の仕様を下記に示す。
分析範囲:0.01〜50.00ppm
分析精度:±0.1ppmまたは±3%H(いずれか大なる方)
分析感度:0.01ppm
検出方式:熱伝導度法
試料重量サイス゛:10mg〜35g(最大:直径12mm×長さ100mm)
加熱炉温度範囲:50℃〜1100℃
試薬:アンハイドロン Mg(ClO4)2、アスカライト NaOH
キャリアガス:窒素ガス、ガスドージングガス:水素ガス、いずれのガスも純度99.99%以上、圧力40PSI(2.8kgf/cm2)である。
分析精度:±0.1ppmまたは±3%H(いずれか大なる方)
分析感度:0.01ppm
検出方式:熱伝導度法
試料重量サイス゛:10mg〜35g(最大:直径12mm×長さ100mm)
加熱炉温度範囲:50℃〜1100℃
試薬:アンハイドロン Mg(ClO4)2、アスカライト NaOH
キャリアガス:窒素ガス、ガスドージングガス:水素ガス、いずれのガスも純度99.99%以上、圧力40PSI(2.8kgf/cm2)である。
測定手順の概要は以下のとおりである。専用のサンプラーで採取した試料をサンプラーごと上記の水素分析装置に挿入する。内部の拡散性水素は窒素キャリアガスによって熱伝導度検出器に導かれる。この拡散性水素は本実施例では測定しない。次に、サンプラーから試料を取出し抵抗加熱炉内で加熱し、非拡散性水素を窒素キャリアガスによって熱伝導度検出器に導く。熱伝導度検出器において熱伝導度を測定することによって非拡散性水素量を知ることができる。
(2)結晶粒度の測定
結晶粒度の測定は、JIS G 0551の鋼のオーステナイト結晶粒度試験方法に基づいて行なった。
(3)シャルピー衝撃試験
シャルピー衝撃試験は、JIS Z 2242の金属材料のシャルピー衝撃試験方法に基づいて行なった。試験片は、JIS Z 2202に示されたUノッチ試験片(JIS3号試験片)を用いた。なお、シャルピー衝撃値は、次式の吸収エネルギーEを断面積(0.8cm2)で除した値である。
(2)結晶粒度の測定
結晶粒度の測定は、JIS G 0551の鋼のオーステナイト結晶粒度試験方法に基づいて行なった。
(3)シャルピー衝撃試験
シャルピー衝撃試験は、JIS Z 2242の金属材料のシャルピー衝撃試験方法に基づいて行なった。試験片は、JIS Z 2202に示されたUノッチ試験片(JIS3号試験片)を用いた。なお、シャルピー衝撃値は、次式の吸収エネルギーEを断面積(0.8cm2)で除した値である。
吸収エネルギー:E=WgR(cosβ−cosα)
W:ハンマー重量(=25.438kg)
g:重力加速度(=9.80665m/sec2)
R:ハンマー回転軸中心から重心までの距離(=0.6569m)
α:ハンマー持ち上げ角度(=146°)、β:ハンマー降り上がり角度
(4)破壊応力値の測定
図10は、静圧壊強度試験(破壊応力値の測定)の試験片を示す図である。図中のP方向に荷重を負荷して破壊されるまでの荷重を測定する。その後、得られた破壊荷重を、下記に示す曲がり梁の応力計算式により応力値に換算する。なお、試験片は図10に示す試験片に限られず、他の形状の試験片を用いてもよい。
W:ハンマー重量(=25.438kg)
g:重力加速度(=9.80665m/sec2)
R:ハンマー回転軸中心から重心までの距離(=0.6569m)
α:ハンマー持ち上げ角度(=146°)、β:ハンマー降り上がり角度
(4)破壊応力値の測定
図10は、静圧壊強度試験(破壊応力値の測定)の試験片を示す図である。図中のP方向に荷重を負荷して破壊されるまでの荷重を測定する。その後、得られた破壊荷重を、下記に示す曲がり梁の応力計算式により応力値に換算する。なお、試験片は図10に示す試験片に限られず、他の形状の試験片を用いてもよい。
図10の試験片の凸表面における繊維応力をσ1、凹表面における繊維応力をσ2とすると、σ1およびσ2は下記の式によって求められる(機械工学便覧A4編材料力学A4−40)。ここで、Nは円環状試験片の軸を含む断面の軸力、Aは横断面積、e1は外半径、e2は内半径を表す。また、κは曲がり梁の断面係数である。
σ1=(N/A)+{M/(Aρo)}[1+e1/{κ(ρo+e1)}]
σ2=(N/A)+{M/(Aρo)}[1−e2/{κ(ρo−e2)}]
κ=−(1/A)∫A{η/(ρo+η)}dA
(5)転動疲労試験
転動疲労寿命試験の試験条件を表2に示す。また、図11は、転動疲労寿命試験機の概略図である。図11(A)は正面図であり、図11(B)は側面図である。
σ2=(N/A)+{M/(Aρo)}[1−e2/{κ(ρo−e2)}]
κ=−(1/A)∫A{η/(ρo+η)}dA
(5)転動疲労試験
転動疲労寿命試験の試験条件を表2に示す。また、図11は、転動疲労寿命試験機の概略図である。図11(A)は正面図であり、図11(B)は側面図である。
図11(A)および(B)を参照して、転動疲労寿命試験片121は、駆動ロール111によって駆動され、ボール113と接触して回転している。ボール113は、(3/4)”のボールであり、案内ロール112にガイドされて、転動疲労寿命試験片121との間で高い面圧を及ぼし合いながら転動する。
II 実施例1の試験結果
(1) 水素量
浸炭窒化処理したままの従来の浸炭窒化処理品は、表1に示すように、水素含有率が0.72ppmと非常に高い値となっている。これは、浸炭窒化処理の雰囲気に含まれるアンモニア(NH3)が分解して水素が鋼中に侵入したためと考えられる。
(1) 水素量
浸炭窒化処理したままの従来の浸炭窒化処理品は、表1に示すように、水素含有率が0.72ppmと非常に高い値となっている。これは、浸炭窒化処理の雰囲気に含まれるアンモニア(NH3)が分解して水素が鋼中に侵入したためと考えられる。
これに対して、試料B〜Fの水素含有率は0.37〜0.42ppmとなっており、従来の浸炭窒化処理品の半分近くにまで減少している。この鋼中の水素含有率は普通焼入れ品と同じレベルである。
上記の鋼中の水素量を低減して水素を固溶することによって、鋼の脆化を軽減することができる。すなわち、水素含有率を低減することによって、本発明の実施例の試料B〜Fのシャルピー衝撃値および破壊応力値を大きく改善することができた。
(2) 結晶粒度
結晶粒度は、表1に示すように、2次焼入れ温度が浸炭窒化処理時の焼入れ(1次焼入れ)の温度よりも低い場合、すなわち試料B〜Dの場合、オーステナイト結晶粒は、結晶粒度番号11〜12と顕著に微細化されている。表1に示した試料の欄でE、F、従来浸炭窒化処理品および普通焼入品の4試料のオーステナイト結晶粒は、いずれも結晶粒度番号10であり、試料B〜Dよりも粗大な結晶粒となっている。
結晶粒度は、表1に示すように、2次焼入れ温度が浸炭窒化処理時の焼入れ(1次焼入れ)の温度よりも低い場合、すなわち試料B〜Dの場合、オーステナイト結晶粒は、結晶粒度番号11〜12と顕著に微細化されている。表1に示した試料の欄でE、F、従来浸炭窒化処理品および普通焼入品の4試料のオーステナイト結晶粒は、いずれも結晶粒度番号10であり、試料B〜Dよりも粗大な結晶粒となっている。
(3) シャルピー衝撃値
従来の浸炭窒化処理品のシャルピー衝撃値は、表1に示すように、5.33J/cm2であるのに比して、本発明の実施例の試料B〜Fのシャルピー衝撃値は6.20〜6.65J/cm2であって高い値が得られている。この中でも、2次焼入れ温度が低いほうがシャルピー衝撃値が高くなる傾向を示す。なお、普通焼入品のシャルピー衝撃値は6.70J/cm2であって高い値が得られている。
従来の浸炭窒化処理品のシャルピー衝撃値は、表1に示すように、5.33J/cm2であるのに比して、本発明の実施例の試料B〜Fのシャルピー衝撃値は6.20〜6.65J/cm2であって高い値が得られている。この中でも、2次焼入れ温度が低いほうがシャルピー衝撃値が高くなる傾向を示す。なお、普通焼入品のシャルピー衝撃値は6.70J/cm2であって高い値が得られている。
(4) 破壊応力値
上記の破壊応力値は、耐割れ強度に相当し、表1に示すように、従来の浸炭窒化処理品は2330MPaの破壊応力値となっている。これに比して、試料B〜Fの破壊応力値は2650〜2840MPaと改善されている。普通焼入品の破壊応力値は2770MPaであり、試料B〜Fの破壊応力値と同等である。このような、試料B〜Fの改良された耐割れ強度は、オーステナイト結晶粒の微細化するとともに、水素含有率の低減による効果が大きいと推定される。
上記の破壊応力値は、耐割れ強度に相当し、表1に示すように、従来の浸炭窒化処理品は2330MPaの破壊応力値となっている。これに比して、試料B〜Fの破壊応力値は2650〜2840MPaと改善されている。普通焼入品の破壊応力値は2770MPaであり、試料B〜Fの破壊応力値と同等である。このような、試料B〜Fの改良された耐割れ強度は、オーステナイト結晶粒の微細化するとともに、水素含有率の低減による効果が大きいと推定される。
(5) 転動疲労試験
普通焼入品は、表1に示すように、窒素富化層を表層部に有していないために、転動疲労寿命比L10(試験片10個中1個が破損する寿命)は最も低い。これに比して、従来の浸炭窒化処理品の転動疲労寿命は3.1倍となっている。試料B〜Dの転動疲労寿命は、従来の浸炭窒化処理品よりも大幅に向上している。試料EおよびFは、従来の浸炭窒化処理品とほぼ同等である。
普通焼入品は、表1に示すように、窒素富化層を表層部に有していないために、転動疲労寿命比L10(試験片10個中1個が破損する寿命)は最も低い。これに比して、従来の浸炭窒化処理品の転動疲労寿命は3.1倍となっている。試料B〜Dの転動疲労寿命は、従来の浸炭窒化処理品よりも大幅に向上している。試料EおよびFは、従来の浸炭窒化処理品とほぼ同等である。
上記をまとめると、本発明の実施例の試料B〜Fでは、鋼中の水素量が低くなり、破壊応力値およびシャルピー衝撃値が向上している。しかし、転動疲労寿命まで含めて改良しようとすると、オーステナイト結晶粒度の粒度番号を11番程度以上に微細化した試料B〜Dになる。
したがって、試料B〜Fは、いずれも本発明の実施例に該当するが、より望ましい本発明の範囲としては、2次焼入れ温度を浸炭窒化処理温度よりも低くして結晶粒の微細化をさらに図った試料B〜Dになる。
(実施例2)
下記のX材、Y材およびZ材について、一連の試験を行った。熱処理用素材には、JISのSUJ2材(1.0重量%Cと0.25重量%Siと0.4重量%Mnと1.5重量%Cr)を用いてX材ないしZ材に共通とした。X材ないしZ材の製造履歴は次のとおりである。
(X材:比較例):浸炭窒化処理をしない普通焼入れのみを行なった。
(Y材:比較例):比較のための従来の浸炭窒化焼入方法であって、雰囲気をRXガスとアンモニアガスとの混合ガスとして、浸炭窒化処理後にそのまま焼き入れた。浸炭窒化処理の温度を845℃とし、保持時間を150分間とした。
(Z材:本発明の実施例):軸受鋼に図6の熱処理パターンを施した。雰囲気をRXガスとアンモニアガスとの混合ガスとして、浸炭窒化処理の温度を845℃として保持時間を150分間とし、最終焼入れ温度を800℃とした。
下記のX材、Y材およびZ材について、一連の試験を行った。熱処理用素材には、JISのSUJ2材(1.0重量%Cと0.25重量%Siと0.4重量%Mnと1.5重量%Cr)を用いてX材ないしZ材に共通とした。X材ないしZ材の製造履歴は次のとおりである。
(X材:比較例):浸炭窒化処理をしない普通焼入れのみを行なった。
(Y材:比較例):比較のための従来の浸炭窒化焼入方法であって、雰囲気をRXガスとアンモニアガスとの混合ガスとして、浸炭窒化処理後にそのまま焼き入れた。浸炭窒化処理の温度を845℃とし、保持時間を150分間とした。
(Z材:本発明の実施例):軸受鋼に図6の熱処理パターンを施した。雰囲気をRXガスとアンモニアガスとの混合ガスとして、浸炭窒化処理の温度を845℃として保持時間を150分間とし、最終焼入れ温度を800℃とした。
(1) 転動疲労寿命
転動疲労寿命試験の試験条件および試験装置は、表2および図11に示すとおりである。この転動疲労寿命試験結果を表3に示す。
転動疲労寿命試験の試験条件および試験装置は、表2および図11に示すとおりである。この転動疲労寿命試験結果を表3に示す。
比較例のY材は、表3に示すように、同じく比較例で普通焼入れのみを施したX材のL10寿命(試験片10個中1個が破損する寿命)の3.1倍であり、浸炭窒化処理による長寿命化の効果が認められる。これに対して、本発明の実施例のZ材は、Y材の1.74倍、またX材の5.4倍の長寿命を示している。この改良の主因はミクロ組織の微細化によるものと考えられる。
(2) シャルピー衝撃試験
シャルピー衝撃試験は、Uノッチ試験片を用いて、上述のJIS Z 2242に準じた方法によって行なった。試験結果を表4に示す。
シャルピー衝撃試験は、Uノッチ試験片を用いて、上述のJIS Z 2242に準じた方法によって行なった。試験結果を表4に示す。
本発明に係る実施例のZ材では、普通焼入れのみを施したX材(比較例)と同等で、かつ浸炭窒化処理を施したY材(比較例)よりも高いシャルピー衝撃値が得られた。
(3) 静的破壊靭性値の試験
図12は、静的破壊靭性試験の試験片を示す図である。静的破壊靭性試験の試験片に亀裂を予め約1mm導入した後に、3点曲げによる静的荷重Pを加え、破壊荷重を求めた。破壊靭性値(KIC値)の算出には次に示す次式を用いた。また、試験結果を表5に示す。
図12は、静的破壊靭性試験の試験片を示す図である。静的破壊靭性試験の試験片に亀裂を予め約1mm導入した後に、3点曲げによる静的荷重Pを加え、破壊荷重を求めた。破壊靭性値(KIC値)の算出には次に示す次式を用いた。また、試験結果を表5に示す。
KIC=(PL√a/BW2){5.8−9.2(a/W)+43.6(a/W)2−75.3(a/W)3+77.5(a/W)4}
予め導入した亀裂の深さが窒素富化層深さよりも大きくなったために、比較例のX材とY材とには違いはない。しかし、本発明の実施例のZ材では比較例のX材およびY材に対して約1.2倍の破壊靭性値(KIC値)を得ることができた。
(4) 静圧破壊強度試験(破壊応力値の測定)
静圧壊強度試験片は、上述のように図10に示す形状のものを用いた。図中、P方向に荷重を負荷して、静圧壊強度試験を行なった。試験結果を表6に示す。
静圧壊強度試験片は、上述のように図10に示す形状のものを用いた。図中、P方向に荷重を負荷して、静圧壊強度試験を行なった。試験結果を表6に示す。
浸炭窒化処理を施したY材(比較例)の静圧破壊強度は普通焼入れのみを施したX材(比較例)の静圧破壊強度よりもやや低い値である。しかしながら、本発明の実施例のZ材の静圧破壊強度は、Y材の静圧破壊強度よりも向上し、X材の静圧破壊強度よりもわずかに高いレベルになっている。
(5) 経年寸法変化率
温度130℃で500時間保持した場合の経年寸法変化率を測定した。その測定結果を、表面硬度、残留オーステナイト量(表面から0.1mm深さでの)とともに表7に示す。
温度130℃で500時間保持した場合の経年寸法変化率を測定した。その測定結果を、表面硬度、残留オーステナイト量(表面から0.1mm深さでの)とともに表7に示す。
残留オーステナイト量の多いY材の寸法変化率に比べて、本発明の実施例のZ材の寸法変化率は低く抑えられている。
(6) 異物混入潤滑下における寿命試験
玉軸受を用い、標準異物を所定量混入させた異物混入潤滑下での転動疲労寿命を評価した。試験条件を表8に、また試験結果を表9に示す。
玉軸受を用い、標準異物を所定量混入させた異物混入潤滑下での転動疲労寿命を評価した。試験条件を表8に、また試験結果を表9に示す。
X材に比べて、浸炭窒化処理を施したY材(比較例)では約2.5倍の長寿命が得られ、また本発明の実施例のZ材では約2.3倍の長寿命が得られた。本発明の実施例のZ材は、比較例のY材に比べて残留オーステナイトが少なくても、窒素の侵入と微細化されたミクロ組織の影響とによって、Y材とほぼ同等の長寿命が得られている。
(実施例3)
軸受材料(SUJ2)の普通焼入軸受部材とステンレス(13%Cr)鋼の軸受部材と本発明対象部材とについて、耐水素脆性剥離の寿命試験をした。その試験結果を表10に示す。本発明対象部材は普通焼入軸受部材の10倍の転動疲労寿命比L10を有し、13%Cr鋼の軸受部材の1.7倍の寿命を有している。なお、転動疲労寿命比L10は、前述した試験片10個中1個が破損する寿命である。表中のL10[h]は試験片10個中1個が破損するまでの寿命試験時間であり、L10寿命比は、普通焼入軸受部材の10倍の転動疲労寿命比L10を1としている。
軸受材料(SUJ2)の普通焼入軸受部材とステンレス(13%Cr)鋼の軸受部材と本発明対象部材とについて、耐水素脆性剥離の寿命試験をした。その試験結果を表10に示す。本発明対象部材は普通焼入軸受部材の10倍の転動疲労寿命比L10を有し、13%Cr鋼の軸受部材の1.7倍の寿命を有している。なお、転動疲労寿命比L10は、前述した試験片10個中1個が破損する寿命である。表中のL10[h]は試験片10個中1個が破損するまでの寿命試験時間であり、L10寿命比は、普通焼入軸受部材の10倍の転動疲労寿命比L10を1としている。
国内材(SUJ2)と海外材1と海外材2とに対して、普通焼入軸受部材と従来技術の浸炭窒化熱処理の軸受部材と本発明対象部材とについて、清浄油潤滑における転動疲労寿命を試験した。その試験結果を表11に示す。海外材1および海外材2は、国内材よりも低コストであるが、それらの普通焼入軸受部材は、表面起点剥離が発生するために転動疲労寿命比L10が極めて低い。しかし、海外材1および海外材2においても、本発明に係る熱処理方法を実施すると、転動疲労寿命比L10が大きく改善されている。表11において、転動疲労寿命比L10は、国内材の普通焼入軸受部材を1としている。
国内材(SUJ2)に対して、普通焼入軸受部材と従来技術の浸炭窒化熱処理の軸受部材と本発明対象部材とにおけるピーリング発生率およびスミアリング強度について、耐表面損傷特性試験をした。その試験結果を表12に示す。本発明対象部材は、スミアリング強度は従来技術の浸炭窒化処理軸受部材よりも若干低下しているが、ピーリング発生率が向上している。
なお、ピーリングとは、微小な剥離(10μm程度)の密集した部分をいい、微小な剥離に至っていない亀裂も無数に存在する。主な原因は潤滑性能が悪いときに発生しやすい。また、スミアリングとは、表面が荒れており微小な溶着を伴うことをいう。主な原因は転動体の転がり運転中に滑りが混在しており、潤滑性能が悪いときに発生しやすい。
上記の結果より、本発明の実施例のZ材、すなわち本発明対象部材は、従来の浸炭窒化処理では困難であった転動疲労寿命の長寿命化、割れ強度の向上、経年寸法変化率の低減の3項目を同時に満足することができる。
今回開示された実施の形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
6,6a,6c,6d 内輪、7,7a,7c,7d 外輪、8,8a,8c,8d 転動体(玉またはころ)、9,9a,9c,9d 保持器、10 斜軸式ピストンポンプ、11 駆動軸、12 ハウジング、13 油圧ポンプ・モータ用軸受、14 シリンダブロック、16 ピストン、17 バルブプレート、18 シリンダブロック軸、20 回転斜板式ピストンポンプ、21 固定斜板、21a〜21d,22a〜22d 転走面、111 駆動ロール、112 案内ロール、113 (3/4)”ボール、121転動疲労寿命試験片。
Claims (3)
- 駆動軸を回転させてピストンを駆動して油圧を吐出する油圧ポンプの前記駆動軸を回転可能に軸支する油圧ポンプ用転がり軸受であって、
内周に転走面を有する外方部材と、
前記転走面に対向する転走面を有する内方部材と、
前記外方部材と前記内方部材との間に介在する複数の転動体とからなり、
前記外方部材、前記内方部材および前記転動体のうちの少なくとも1つの部材が富化窒化層を有し、その部材の水素含有率が0.5ppm以下である、油圧ポンプ用転がり軸受。 - 駆動軸を回転させてピストンを駆動して油圧を吐出する油圧ポンプの前記駆動軸を回転可能に軸支する油圧ポンプ用転がり軸受であって、
内周に転走面を有する外方部材と、
前記転走面に対向する転走面を有する内方部材と、
前記外方部材と前記内方部材との間に介在する複数の転動体とからなり、
前記外方部材、前記内方部材および前記転動体のうちの少なくとも1つの部材が富化窒化層を有し、その部材のオーステナイト結晶粒の粒度番号が10番を超える範囲にある、油圧ポンプ用転がり軸受。 - 内周に転走面を有する外方部材と、
前記転走面に対向する転走面を有する内方部材と、
前記外方部材と前記内方部材との間に介在する複数の転動体とからなり、
駆動軸を回転させてピストンを駆動して油圧を吐出する油圧ポンプの前記駆動軸を回転可能に軸支する油圧ポンプ用転がり軸受の製造方法であって、
A1変態点を超える浸炭窒化処理温度で鋼を浸炭窒化処理した後、前記A1変態点未満の温度に冷却し、その後、前記A1変態点以上で前記浸炭窒化処理の温度未満の焼入れ温度域に再加熱し、焼入れを行なうことにより、前記外方部材、前記内方部材、および前記転動体のうち少なくともいずれか1つの部材が製造されることを特徴とする、油圧ポンプ用転がり軸受の製造方法。
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WO2006053611A1 (de) * | 2004-11-16 | 2006-05-26 | Alfred Kärcher Gmbh & Co. Kg | Taumelantrieb |
CN100560975C (zh) * | 2004-11-16 | 2009-11-18 | 阿尔弗雷德·凯驰两合公司 | 摆动传动装置 |
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