JP2005112750A - 腎臓トランスポーターによる薬物動態の制御方法および製剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】腎臓における薬物の排泄を制御して、薬剤のより効果的な投与方法及び当該方法に用いるための製剤の提供。
【解決手段】腎臓トランスポーターを介して排泄される第一の薬剤の投与に際して、第二の薬剤として当該腎臓トランスポーター阻害剤を同時にまたはその前後に投与し、第一の薬剤の腎臓排泄を制御することを特徴とする薬剤の投与方法、並びにかかる第一の薬剤及び第二の薬剤を組成物として含む製剤。
【効果】腎臓における薬物の排泄を制御することにより、薬剤の効果的投与方法が提供できる。また、機能診断や治療効果が向上する。
【選択図】なし

Description

本発明は、目的とする薬剤が腎臓トランスポーターを経由して排泄される量を制御する薬剤の投与方法及び当該投与方法に用いるための製剤に関する。
一般に、治療および診断を目的として投与される薬物は、一度全身血液を経由して吸収、分布、代謝、排泄等の過程を経ることが知られている。このうち、吸収・分布の過程においては、血液中の薬物が血管内から組織間隙、さらに細胞内のそれぞれのスペースへ可逆的あるいは不可逆的に移行する。これらの移行は、薬物の能動的輸送または受動拡散によって起こり、その結果、薬物は標的作用部位に到達する。このとき薬物が標的作用部位に到達する量は、一般に血液中に存在する薬物の濃度に比例し、さらに経時的な濃度変化の影響を受ける。したがって、薬物の排泄が速やかである場合は、血液中の薬物の濃度低下も速いため、薬物が標的作用部位へ移行する割合も少ない(非特許文献1参照)。
例えば、甲状腺機能の診断あるいは治療に用いられる放射性ヨウ化ナトリウム(131I-NaIまたは123I-NaI)水溶液は、経口あるいは静脈内注射により体内に投与され、血液を介して甲状腺内に移行する。このとき血液中の放射性ヨウ化ナトリウムは、同時に腎臓トランスポーターを介して尿中に排泄されるので、甲状腺内への放射能の移行率は、血液中の放射性ヨウ化ナトリウムの濃度の経時的関数に依存する。したがって、腎臓からの放射性ヨウ化ナトリウムの排泄を抑制することができれば、相対的に血中濃度を高めることができ、その結果としてより効率的に甲状腺に放射能を集積させることができると考えられる。甲状腺の放射能集積率が改善すれば、機能の診断や治療効果が増すことが期待されるだけでなく、放射性薬剤の投与量を減らし、無用の被曝を低減させるのにも有効である。
しかしながら、薬物の腎臓における排泄を制御し、血中の薬物濃度を増加させて、診断効果あるいは治療効果を高めようとする研究はほとんど行われていないのが現状である。
矢野育子、乾 賢一、「腎排泄過程における相互作用」、月刊薬事、第42巻、第4号、2000年、p.307(947)-312(952)
本発明は、かかる従来技術の状況に鑑み、腎臓における薬物の排泄を制御して、薬剤のより効果的な投与方法及び当該方法に用いるための製剤を提供することを目的とする。
本発明は、腎臓トランスポーターを介して排泄される第一の薬剤の投与に際して、当該腎臓トランスポーター阻害剤(第二の薬剤)を同時にまたはその前後に投与し、第一の薬剤の腎臓排泄を制御することを特徴とする薬剤の投与方法、並びに、かかる第一の薬剤及び第二の薬剤を組成物として含む製剤に関する。
本発明において、第二の薬剤の投与時期は、第一の薬剤の投与の前後または同時のいずれでもよく、第一の薬剤の適切な効果が得られる時期に応じて適宜選ばれる。
第一の薬剤が体内用放射性診断薬または体内用放射性治療薬である場合、その放射性核種は、11-炭素(11C)、15-酸素(15O)、18-フッ素(18F)、32-リン(32P)、59-鉄(59Fe)、67-銅(67Cu)、67-ガリウム(67Ga)、81m-クリプトン(81mKr)、81-ルビジウム(81Rb)、89-ストロンチウム(89Sr)、90-イットリウム(90Y)、99m-テクネチウム(99mTc)、111-インジウム(111In)、123-ヨウ素(123I)、125-ヨウ素(125I)、131-ヨウ素(131I)、133-キセノン(133Xe)、117m-サマリウム(117mSm)、153-サマリウム(153Sm)、186-レニウム(186Re)、188-レニウム(188Re)、201-タリウム(201Tl)、212-ビスマス(212Bi)、213-ビスマス(212Bi)および211-アスタチン(211At)よりなる群から選ばれる。
この場合、上記放射性核種によって標識される第一の薬剤のキレート基またはリガンドとしては、例えばビスアミノチオールまたはその誘導体、モノアミンモノアミドビスチオールまたはその誘導体、ビスアミドビスチオールまたはその誘導体、メルカプトアセチルグリシルグリシルグリシンまたはその誘導体、ヘキサメチルプロピレンアミンオキシムまたはその誘導体、エチレンビス[ビス(2−エトキシエチル)ホスフィン](テオトロフォスミン)またはその誘導体、2,3-ジメルカプトコハク酸またはその誘導体、エチレンシステインダイマー誘導体、メトキシイソブチルイソニトリル誘導体、ポリアミン誘導体、ピリドキシリデンアミネート誘導体、メチレンジホスホネート、ヒドロキシメチレンジホスホネート誘導体、β-メチル-ω-フェニルペンタデカン酸またはその誘導体、N-イソプロピル-アンフェタミン、ヒプル酸、ベンジルグアニジンよりなる群から選ばれる。
第二の薬剤は、腎臓のトランスポーターを阻害する効果を有する、プロベネシド、N-ベンゾイル-β-アラニン、フロセミド、エタクリン散、セファゾリンに代表される抗生剤またはスルファメチゾールに代表されるサルファ剤等から選ばれる。
ここで、抗生剤としては、例えば、セファゾリン、セファレキシン、セフチゾキシムまたはセフトリアキソン等が挙げられる。また、サルファ剤としては、例えば、スルファメチゾールまたはスルフイソキサゾール等が挙げられる。
本発明において、腎臓トランスポーターとは、腎臓に存在する輸送蛋白質をいい、腎臓での排泄・再吸収機構に関与する。
本発明によれば、腎臓における薬物の排泄を制御することにより、薬剤の効果的な投与方法が提供できる。また、機能診断や治療効果が向上し、あわせて被験者の被曝低減に寄与できる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
腎臓トランスポーターを介して排泄される第一の薬剤の投与に際して、当該腎臓トランスポーター阻害剤(第二の薬剤)を同時にまたはその前後に投与すると、第一の薬剤の腎臓排泄の抑制が生じ、第一の薬剤の高い血中濃度の維持が可能になる。その結果、第一の薬剤の標的部位への移行率を高めることができ、第一の薬剤を単独で投与するよりは高い診断あるいは治療効果を得ることが期待できる。
本発明において、かかる腎臓トランスポーターを介して排泄される第一の薬剤は、投与の目的に添った薬剤であれば治療薬または診断薬のいずれでもよい。第二の薬剤は、治療あるいは診断目的とは一切関係なく、第一の薬剤が通過するのと同じ腎臓トランスポーターを阻害する性質を有し、第一の薬剤の腎臓トランスポーターによる排泄を阻害し、かつ第一の薬剤の血中濃度を高めるものから選ぶのが好ましい。
また、第二の薬剤の選択に当たっては、前記腎臓トランスポーター阻害作用あるいは当該阻害作用以外のその薬剤の本来の薬理作用が臨床的に許容される範囲であること、常用量の範囲が広く、服用後の血中濃度が高く維持できること等が考慮される。
第二の薬剤の投与時期は、第一の薬剤の投与と同時、またはその前後のいずれでもよく、第一の薬剤の投与目的に合致した効果を及ぼすように適宜選ばれる。薬剤の投与経路は、それぞれ静脈内、動脈内、皮下、リンパ管、経口等のいずれかから適宜選ばれ、第一の薬剤と第二の薬剤の投与経路が同じでも異なっていてもよい。
第二の薬剤としては、腎臓のトランスポーターを阻害する効果を有する、プロベネシド、N-ベンゾイル-β-アラニン、フロセミド、エタクリン散、セファゾリンに代表される抗生剤またはスルファメチゾールに代表されるサルファ剤等から選ばれる。
ここで、抗生剤としては、例えば、セファゾリン、セファレキシン、セフチゾキシムまたはセフトリアキソン等から選択することができる。また、サルファ剤としては、例えば、スルファメチゾールまたはスルフイソキサゾール等から選択することができる。
第一の薬剤が体内用放射性診断薬または体内用放射性治療薬である場合、その放射性核種は、11-炭素(11C)、15-酸素(15O)、18-フッ素(18F)、32-リン(32P)、59-鉄(59Fe)、67-銅(67Cu)、67-ガリウム(67Ga)、81m-クリプトン(81mKr)、81-ルビジウム(81Rb)、89-ストロンチウム(89Sr)、90-イットリウム(90Y)、99m-テクネチウム(99mTc)、111-インジウム(111In)、123-ヨウ素(123I)、125-ヨウ素(125I)、131-ヨウ素(131I)、133-キセノン(133Xe)、117m-サマリウム(117mSm)、153-サマリウム(153Sm)、186-レニウム(186Re)、188-レニウム(188Re)、201-タリウム(201Tl)、212-ビスマス(212Bi)、213-ビスマス(212Bi)および211-アスタチン(211At)等が挙げられる。
また、これら放射性核種が標識される第二の薬剤のキレートあるいはリガンドとしては、ビスアミノチオールまたはその誘導体、モノアミンモノアミドビスチオールまたはその誘導体、ビスアミドビスチオールまたはその誘導体、メルカプトアセチルグリシルグリシルグリシンまたはその誘導体、ヘキサメチルプロピレンアミンオキシムまたはその誘導体、エチレンビス[ビス(2−エトキシエチル)ホスフィン](テオトロフォスミン)またはその誘導体、2,3-ジメルカプトコハク酸またはその誘導体、エチレンシステインダイマー誘導体、メトキシイソブチルイソニトリル誘導体、ポリアミン誘導体、ピリドキシリデンアミネート誘導体、メチレンジホスホネート、ヒドロキシメチレンジホスホネート誘導体、β-メチル-ω-フェニルペンタデカン酸またはその誘導体、N-イソプロピル-アンフェタミン、ヒプル酸、ベンジルグアニジン等が挙げられる。
MAG3(メルカプトアセチルグリシルグリシルグリシン)の99m-テクネチウム錯体(99mTc-MAG3)は腎臓に集積性を有するため、腎および尿路疾患の診断を目的として広く用いられている体内用放射性医薬品である。体内に投与された99mTc-MAG3は、速やかに腎臓トランスポーターを介して尿中に排泄されるので、腎臓への放射能の移行率は、腎血漿流量に依存する。したがって、99mTc-MAG3の腎臓からの排泄を抑制することができれば、相対的に血中濃度を高めることができると考えられる。99mTc-MAG3は主に腎尿細管の有機酸トランスポーター(organic anion transporter=OAT)により尿細管腔に運ばれて排泄されると考えられるので、臨床で用いることが可能なプロベネシド、N-ベンゾイル-β-アラニンおよびセファゾリンをOAT阻害剤として選択することができる。
後述する実施例では、それぞれの阻害剤を前投与したマウス(負荷群)と無処置のマウス(コントロール群)に、99mTc-MAG3をそれぞれ尾静脈から投与し、投与後15分までの各組織への集積率を比較した。その結果、各薬剤負荷群は、コントロール群に比べて膀胱への移行量が顕著に低下しており、体外排泄量の低下が確認された。一方、それに伴い血中濃度は向上し、各組織への集積量も増加した(表1−1〜1−4)。これは、OAT阻害剤などの第二の薬剤により体内全体の99mTc-MAG3濃度が高まったことを示しており、99mTc-MAG3の使用量を抑制できる可能性を示すものである。
人工アミノ酸である123I-AMTはアミノ酸膜能動輸送機構に高い親和性を有するため、アミノ酸輸送機構の活性が高い脳や膵臓の機能診断を目的として開発され、同じくアミノ酸代謝の盛んな腫瘍診断に用いられている体内用放射性医薬品である。同時に123I-AMTは、分解代謝を受けないため、未変化体として速やかに尿中に排泄される性質を有する。したがって、123I-AMTの腎排泄を抑制すれば、血中濃度を高めるとともに、脳や膵臓などの標的組織への集積を向上させることができると考えられる。
そこで、後述する実施例では、臨床応用が可能な上記阻害剤を前投与したマウス(負荷群)と無処置のマウス(コントロール群)に、123I-AMTをそれぞれ尾静脈から投与し、同様に各組織への集積率を比較した。その結果、すべての薬剤負荷群において、コントロール群と比較して膀胱への移行量低下と血中濃度の顕著な増加が示された。さらに、投与後15分において、放射能集積率がアミノ酸輸送系の存在する脳では1.5-1.8倍に、膵臓では1.7−3.4倍に増加した(表2−1〜2−4)。これらは、人工アミノ酸である125I-AMT特有の集積組織であり、プロベネシド、N-ベンゾイル-β-アラニン、セファゾリンによる薬剤の集積性の向上が確認された。
甲状腺機能の診断あるいは治療に用いられる放射性ヨウ化ナトリウム(131I-NaIまたは123I-NaI)水溶液は、経口あるいは静脈内注射により体内に投与され、血液を介して甲状腺内に移行する。このとき血液中の放射性ヨウ化ナトリウムは、同時に腎臓トランスポーターを介して尿中に排泄されるので、甲状腺内への放射能の移行率は、血液中の放射性ヨウ化ナトリウムの濃度の経時的関数に依存する。したがって、腎臓からの排泄を抑制することができれば、相対的に血中濃度を高めることができ、その結果としてより効率的に甲状腺に放射能を集積させることができると考えられる。
そこで、本発明では、有機酸トランスポーター(organic anion transporter=OAT)の阻害剤であり臨床で用いられているプロベネシドをヨウ素の腎排泄制御薬として選択した。臨床応用における経口投与を想定し、プロベネシドを連続静注したラット(プロベネシド負荷群)と無処置のラット(コントロール群)に、放射性ヨウ素(123I) 370MBqをそれぞれラットの尾静脈から投与し、0-60分までの積算画像と、3、24時間後の画像をガンマカメラで撮像して比較した。その結果、プロベネシド負荷群は、コントロール群に比べて甲状腺の放射能集積率が最大2倍にまで増加した(表3及び図1参照)。以上の結果は、プロベネシド負荷によって、放射性ヨウ素の腎排泄が抑制され、血中放射能濃度が高く維持されたため、甲状腺への放射能集積が増加したことを示すものである。
本発明の薬剤の投与方法及び当該方法に用いるための製剤により、甲状腺の放射能集積率が改善すれば、機能の診断や治療効果が増すものと期待される。また、放射性薬剤の投与量を減らし、無用の被曝を低減させるのにも有効であると考えられる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
プロベネシド、N-ベンゾイル-β-アラニン、セファゾリン負荷正常マウスにおけるTc-MAG 3 の体内分布
Tc-MAG3(99m-テクネチウム標識メルカプトアセチルグリシルグリシルグリシン、日本メジフィジックス社製)を用い、マウスの体内分布を、コントロール群およびプロベネシド(PBC)負荷群、N-ベンゾイル-β-アラニン(BBA)負荷群、セファゾリン(CFZ)負荷群について検討した。
マウスにTc-MAG3を投与し、一定時間(2、5、10、15分)後に屠殺し、血液を採集するとともに各臓器を摘出し重量を秤量した後、放射能を測定した。放射能の半減期を補正した後、各臓器への集積率(%投与量/g組織または%投与量/臓器)を求めた。
PBC負荷群、BBA負荷群、CFZ負荷群は、Tc-MAG3投与前に、いずれも20mg/kg体重となるよう静脈投与した。
各臓器における放射能の測定結果を表1−1(コントロール群)、表1−2(PBC負荷群)、表1−3(BBA負荷群)、表1−4(CFZ負荷群)に示す。表中、胃、膀胱は%ID/組織、その他は%ID/gを表す。表1−2、表1−3及び表1−4には、コントロール群に対する放射能の割合を「対コントロール比」として示した。
99mTc-MAG3は腎尿細管より速やかに尿中に排泄される腎臓機能診断薬であるが、投与後15分でいずれの薬剤負荷においても膀胱への移行量がコントロールと比較して顕著に低下しており、体外排泄量の低下が確認された。一方、腎臓への集積は増加しており、それに伴い血中濃度も向上し、各組織への集積量も高まっている。これは、第二の薬剤により体内全体の99mTc-MAG3濃度が高まったことを示しており、99mTc-MAG3の使用量を抑制できる可能性を示している。
放射性ヨウ素標識アミノ酸の調製
生体内脱ヨウ素化反応をはじめとする分解代謝系に対する高い安定性、尿排泄性を具備する放射性ヨウ素標識アミノ酸として、アミノ酸膜能動輸送機構への高い親和性を示す3-iodo-α-methyl-L-tyrosine (I-AMT)を選択した。標識は、クロラミン-T法により行った。AMTを1×10-7mol含む0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)10μLとクロラミン-Tを1×10-7mol含む0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)10μLに、125I-NaI溶液1μL (1.85MBq)を加えて室温で15分間反応させた。反応後、当量のピロ亜硫酸ナトリウムを含む0.01Mリン酸緩衝液(pH7.4)10μLを加えて反応を止めた。
標識率及び放射化学的純度はシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)で分析した。
TLC展開溶媒;
メタノール : 酢酸 = 100 : 1 (Rf値: 125I-AMT 0.55-0.60)
メタノール : 10%酢酸アンモニア水溶液 = 10 : 1 (Rf値: 125I-AMT 0.60-0.65)
125I-AMTの精製には、以下に示す条件による高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた。
HPLCの条件;
カラム:NOVA-PAK C18
溶 媒:水 : メタノール : 酢酸 = 80 : 20 : 1
流 速:1.5mL/min
なお、125I-AMTのリテンションタイムは、約18分であった。
さらに精製後、溶媒を0.9%生理食塩水と交換して実験に用いた。
プロベネシド、N-ベンゾイル-β-アラニン、セファゾリン負荷正常マウスにおける放射性ヨウ素標識アミノ酸の体内分布
実施例2で調整した125I-AMTを用い、実施例1と同様にマウスの体内分布を、コントロール群およびプロベネシド(PBC)負荷群、N-ベンゾイル-β-アラニン(BBA)負荷群、セファゾリン(CFZ)負荷群について検討した。マウスに125I-AMTを投与し、一定時間(2、5、10、15分)後に屠殺し、血液を採集するとともに各臓器を摘出し重量を秤量した後、放射能を測定した。放射能の半減期を補正した後、各臓器への集積率(%投与量/g組織または%投与量/臓器)を求めた。
PBC負荷群、BBA負荷群、CFZ負荷群は125I-AMT投与前に、いずれも20mg/kg体重となるよう静脈投与した。
各臓器における測定結果を表2−1(コントロール群)、表2−2(PBC負荷群)、表2−3(BBA負荷群)、表2−4(CFZ負荷群)に示す。表中、 胃、膀胱は%ID/組織、その他は%ID/gを表す。表2−2、表2−3及び表2−4には、コントロール群に対する放射能の割合を「対コントロール比」として示した。
すべての薬剤負荷群において、投与後15分においてコントロールに比べて膀胱への移行量低下と血中濃度の顕著な増加が示された。さらに、アミノ酸輸送系が存在する脳、膵臓における集積性が向上している。これらは、125I-AMT本来の集積組織であり、プロベネシド、N-ベンゾイル-β-アラニン、セファゾリンによる集積性の向上を示している。
プロベネシド負荷ラットにおける放射性ヨウ素( 123 I)投与時のシンチグラフィと甲状腺集積率
放射性ヨウ素の腎排泄制御を目的とし、臨床薬として用いられているプロベネシド (Sigma)をOAT阻害剤として選択した。臨床応用における経口投与を想定し、プロベネシドを連続静注し、その効果をラットシンチグラフィで検討した。
非放射性ヨウ素の摂取制限のために24時間ラットを絶食させた。ラットは固定器に固定し、無麻酔で使用した。まず、コントロールとして123I 370kBq (日本メジフィジックス)を尾静脈より投与した。投与後、0-60分までの積算画像(1min/frame)と3時間後、24時間後のシンチグラムをガンマカメラ(Picker Prism 3000)を用いて撮像した。体内123Iの減衰を待って、同一個体にプロベネシド (100mg/kg/day)を大腿静脈からシリンジポンプ(Razel Scientific Instruments:A-99)を使って、撮像開始1時間前から24時間後まで連続静注した。その後、同様の操作によって撮像を行い、得られた結果を比較した。
図1、図2及び図3は、プロベネシド負荷の効果を検討したラットシンチグラフィにおける123I 投与後0-60分の積算画像(図1)と3時間後(図2)、24時間後(図3)の画像である。プロベネシド負荷時にはコントロールと比較して、甲状腺の集積が著しく向上した。
表3には、甲状腺と胃におけるプロベネシド負荷時/コントロール集積比を示す。プロベネシド負荷によって、すべての時間で甲状腺への集積が向上し、3時間後では集積比がコントロールの約2倍と顕著に増加した。胃への集積はコントロールと同程度であるか、低下していた。
以上より、プロベネシドは123Iの甲状腺集積を向上させる薬剤として有用であると考えられる。その機序は明確ではないものの、甲状腺への集積が向上したことから、競合置換作用による放射性ヨウ素の甲状腺集積率向上の可能性が明らかとなった。
プロベネシド負荷の効果を検討したラットシンチグラフィにおける123I 投与後0-60分の積算画像である。 プロベネシド負荷の効果を検討したラットシンチグラフィにおける123I 投与後3時間の画像である。 プロベネシド負荷の効果を検討したラットシンチグラフィにおける123I 投与後24時間の画像である。

Claims (11)

  1. 腎臓トランスポーターを介して排泄される第一の薬剤の投与に際して、第二の薬剤として当該腎臓トランスポーター阻害剤を同時にまたはその前後に投与し、第一の薬剤の腎臓排泄を制御することを特徴とする薬剤の投与方法。
  2. 第一の薬剤が体内用放射性診断薬または体内用放射性治療薬である請求項1記載の薬剤の投与方法。
  3. 体内用放射性診断薬または体内用放射性治療薬が、11-炭素(11C)、15-酸素(15O)、18-フッ素(18F)、32-リン(32P)、59-鉄(59Fe)、67-銅(67Cu)、67-ガリウム(67Ga)、81m-クリプトン(81mKr)、81-ルビジウム(81Rb)、89-ストロンチウム(89Sr)、90-イットリウム(90Y)、99m-テクネチウム(99mTc)、111-インジウム(111In)、123-ヨウ素(123I)、125-ヨウ素(125I)、131-ヨウ素(131I)、133-キセノン(133Xe)、117m-サマリウム(117mSm)、153-サマリウム(153Sm)、186-レニウム(186Re)、188-レニウム(188Re)、201-タリウム(201Tl)、212-ビスマス(212Bi)、213-ビスマス(212Bi)および211-アスタチン(211At)よりなる群から選ばれる一つの核種で標識される請求項2記載の薬剤の投与方法。
  4. 第一の薬剤が、ビスアミノチオールまたはその誘導体、モノアミンモノアミドビスチオールまたはその誘導体、ビスアミドビスチオールまたはその誘導体、メルカプトアセチルグリシルグリシルグリシンまたはその誘導体、ヘキサメチルプロピレンアミンオキシムまたはその誘導体、エチレンビス[ビス(2−エトキシエチル)ホスフィン](テオトロフォスミン)またはその誘導体、2,3-ジメルカプトコハク酸またはその誘導体、エチレンシステインダイマー誘導体、メトキシイソブチルイソニトリル誘導体、ポリアミン誘導体、ピリドキシリデンアミネート誘導体、メチレンジホスホネート、ヒドロキシメチレンジホスホネート誘導体、β-メチル-ω-フェニルペンタデカン酸またはその誘導体、N-イソプロピル-アンフェタミン、ヒプル酸、ベンジルグアニジンよりなる群から選ばれる一つに放射性核種が標識されている請求項3記載の薬剤の投与方法。
  5. 第二の薬剤が、プロベネシド、N-ベンゾイル-β-アラニン、フロセミド、エタクリン散、抗生剤またはサルファ剤から選ばれる一つである請求項4記載の腎臓トランスポーター阻害作用を有する薬剤の投与方法。
  6. 抗生剤がセファゾリン、セファレキシン、セフチゾキシムまたはセフトリアキソンである請求項5記載の腎臓トランスポーター阻害作用を有する薬剤の投与方法。
  7. サルファ剤がスルファメチゾールまたはスルフイソキサゾールである請求項5記載の腎臓トランスポーター阻害作用を有する薬剤の投与方法。
  8. 腎臓トランスポーターを介して排泄される第一の薬剤および当該腎臓トランスポーター阻害剤である第二の薬剤からなり、第一の薬剤の排泄を制御することを特徴とする薬剤。
  9. 第一の薬剤及び第二の薬剤が別容器に充填、製剤化されたキット剤として提供される請求項1ないし8に記載の薬剤。
  10. 第一の薬剤が体内用放射性診断薬または体内用放射性治療薬である請求項9記載の薬剤
  11. 体内用放射性診断薬または体内用放射性治療薬が、11-炭素(11C)、15-酸素(15O)、18-フッ素(18F)、32-リン(32P)、59-鉄(59Fe)、67-銅(67Cu)、67-ガリウム(67Ga)、81m-クリプトン(81mKr)、81-ルビジウム(81Rb)、89-ストロンチウム(89Sr)、90-イットリウム(90Y)、99m-テクネチウム(99mTc)、111-インジウム(111In)、123-ヨウ素(123I)、125-ヨウ素(125I)、131-ヨウ素(131I)、133-キセノン(133Xe)、117m-サマリウム(117mSm)、153-サマリウム(153Sm)、186-レニウム(186Re)、188-レニウム(188Re)、201-タリウム(201Tl)、212-ビスマス(212Bi)、213-ビスマス(212Bi)および211-アスタチン(211At)よりなる群から選ばれる一つの核種で標識される請求項10記載の薬剤。
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