JP2005105846A - 真空ポンプ - Google Patents

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Abstract

【課題】 装置内部で異常な振れが発生した場合において、主要部品に損傷を与えることなくモータの駆動を停止させることが可能な真空ポンプを提供すること。
【解決手段】 シャフト11に回転側突起部81を設け、ステータコラム18にストッパ61を設ける。ストッパ61は、固定側突起部63とロータ部24との間に形成される空隙の間隔が所定のクリアランスαとなり、かつ、回転側突起部81との間に形成される空隙の間隔が所定のクリアランスβとなる位置に配設する。装置内部で異常な振れが発生した場合には、ストッパ61を回転部の一部に接触させることによって異常状態を検知させ、モータ10の駆動を停止させる。これにより、シャフト11やロータ部24等の回転部に、おける振れ量が増大してしまうような場合であっても、主要部品を損傷することなくターボ分子ポンプ1を停止させることができる。
【選択図】 図2

Description

真空容器の排気に用いられる真空ポンプに関し、特に、回転軸の軸受装置に磁気軸受装置を用いた真空ポンプ装置に関する。
例えば、半導体製造装置や電子顕微鏡装置などで使用されている高真空が要求される真空容器の排気処理には、高い排気性能を有する真空ポンプが利用されている。このような真空ポンプには、例えば、ターボ分子ポンプやねじ溝式ポンプ、またこれらの機構を兼ね備えた複合型の真空ポンプがある。
これらの真空ポンプには、回転軸を非接触で支持するために磁気軸受が用いられている。また、真空ポンプには、保護用ベアリングが設けられており、真空ポンプの起動時や停止時、停電時など磁気軸受装置による回転軸の支持が困難な状況においては、保護用ベアリングによって回転軸が支持されるようになっている。この保護用ベアリングの内輪と回転軸との間に設けられた遊びは、真空ポンプ内の回転部と固定部とが接触しないような値に設計されている。
また、半導体装置の製造工程では、さまざまなプロセスガスを半導体の基板に作用させる工程が多々あり、真空ポンプは真空チャンバ内を真空にするのみならず、これらのプロセスガスを真空チャンバ内から排気するのにも使用される。
これらのプロセスガスは、排気される際に冷却されてある温度になると固体となり排気系に生成物を析出する場合がある。例えば、ターボ分子ポンプ内部では、多数のロータ翼が配設されたロータが毎分数万回転の高速回転を行っている。これらの回転部材に析出物が堆積すると、回転対のバランスの不釣合いが発生し、ロータ翼がターボ分子ポンプのケーシングの内周面に配設されたステータ翼に接触するなど不都合が生じる場合がある。
そのため、従来から真空ポンプの内部における堆積物の程度を検出することによって、未然に堆積物による不具合を防止する技術が下記の特許文献に開示されている。
特開平6−330885号公報
ところで、真空ポンプに設けられている保護用ベアリングは、回転軸と保護用ベアリングの内輪とを接触させることによって支持するため、接触部分で摩耗を起こしてしまう。この保護用ベアリングの内輪の内径は、経時的に摩耗する摩耗量を考慮した値となっている。そして、通常は、例えば定期的に保護用ベアリングの交換を行うなどのメンテナンスを実行し、摩耗により発生する不具合を防止している。
しかしながら、長期間メンテナンスが行われない場合などには、保護用ベアリングの摩耗量が設計時に考慮されていた値を超えるおそれがある。そして、保護用ベアリングの過度の摩耗によって、保護用ベアリングの内輪と回転軸との遊びが広がってしまうと、回転軸の振動量(振れ量)が増大し、真空ポンプ内の回転部と固定部とが接触するおそれがある。
また、上述した特許文献1に記載されている磁気軸受装置では、磁気軸受装置のセンサを用いてロータの振れ量を検出している。そのため、回転軸をその曲げ振動固有値を越えて駆動した場合には、発振状態となり適切なロータの振れ量が検出できない場合があった。このような発振状態におけるロータの振れ量の検出方法について図4を参照して説明する。
図4は、発振状態におけるロータの振れ量の検出方法を模式的に示した図である。ここでは、磁気軸受装置に設けられている径方向(ラジアル)変位センサ103、104を用いて、中心軸102に対する回転軸101の振れ量を検出している。詳しくは、径方向変位センサ103を用いて検出点105における振れ量を、径方向変位センサ104を用いて検出点106における振れ量を検出している。
図4に示すように、回転軸101は、正常状態ではなく発振状態となると曲がってしまう。そして、回転軸101は、その軸方向の中程で振れ量δとなる。しかしながら、径方向変位センサ103、104は、それぞれ検出点105、106における回転軸101の振れ量を検出しているため、実際の振れ量δは検出されない。
従って、回転軸101において基準値を超える振れ量δが所定時間連続して生じた場合であっても、異常と判断されないといった不具合が発生していた。
そこで本発明は、内部で異常な振れが発生した場合において、気体移送機構に損傷を与えることなくモータの駆動を停止させることが可能な真空ポンプを提供することを目的とする。
請求項1記載の発明では、吸気口と排気口を備えた外装体と、前記外装体内に設けられた固定部と、前記外装体内に回転自在に支持されたシャフトと、前記シャフトに配設され、前記吸気口から前記排気口へ気体を移送する気体移送機構が設けられたロータと、からなり、前記固定部との間に所定の空隙を介して配置された回転部と、前記シャフトを回転させるモータと、前記シャフトを磁気浮上させて非接触で支持する磁気軸受と、前記シャフトを支持し、内輪の内径が前記シャフトの外径よりも大きく形成された保護用軸受と、前記所定の空隙よりも小さく、且つ前記シャフトと前記保護用軸受との間に設けられた隙間より大きいクリアランスが、前記固定部と前記回転部との間に形成されるように、前記固定部および前記回転部の少なくとも一方に形成された振れ規制部と、前記固定部又は前記回転部と前記振れ規制部との接触が検出された場合に、前記モータの駆動を停止させる駆動停止手段と、を具備することにより前記目的を達成する。
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記保護用軸受を支持する支持部材を具備し、前記振れ規制部を、前記支持部材に形成されていることにより前記目的を達成する。
請求項3記載の発明では、請求項1または請求項2記載の発明において、前記駆動停止手段に、前記モータの負荷電流を検出するモータ電流検出手段と、前記モータ電流検出手段により検出された前記負荷電流と所定の基準値とを比較する比較手段と、を具備し、前記駆動停止手段は、前記比較手段による比較の結果、前記負荷電流が前記所定の基準値を超えた場合に、前記固定部と前記回転部とが接触していると判断し、前記モータの駆動を停止させることにより前記目的を達成する。
本発明によれば、内部で異常な振れが発生した場合において、主要部品に損傷を与えることなくモータの駆動を停止させることができる。
以下、本発明の真空ポンプにおける好適な実施の形態について、図1から図3を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態のターボ分子ポンプ1の軸線方向の断面を示した図である。
本実施形態では、真空ポンプの一例としてターボ分子ポンプ部とねじ溝式ポンプ部を備えた、いわゆる複合翼タイプのターボ分子ポンプを例にとり説明する。
ケーシング16は、略円筒状の形状をしており、ケーシング16の底部に設けられたベース27と共にターボ分子ポンプ1の外装体を構成している。そして、ターボ分子ポンプ1の外装体の内部には、ターボ分子ポンプ1に排気機能を発揮させる構造物つまり気体移送機構が収納されている。
これら排気機能を発揮する構造物は、大きく分けて回転自在に軸支された回転部とケーシング16に対して固定されたステータ部(固定部)から構成されている。そして、排気機能を発揮する構造物は、吸気口6側がターボ分子ポンプ部Tにより構成され、排気口19側がねじ溝式ポンプ部Sから構成されている。
また、ターボ分子ポンプ1の外装体の外部には、ターボ分子ポンプ1の動作を制御する制御装置48が専用線を介して設けられている。
回転部は、後述するモータ10によって回転されるシャフト11とロータ部24とによって構成されている。
ロータ部24は、シャフト11に配設された回転部材である。ロータ部24は、吸気口6側(ターボ分子ポンプ部T)に設けられたロータ翼21と、排気口19側(ねじ溝式ポンプ部S)に設けられた円筒部材29、およびシャフト11などから構成されている。
ロータ翼21は、シャフト11の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜してシャフト11から放射状に伸びた複数のブレードから構成されている。ターボ分子ポンプ1には、ロータ翼21が軸線方向に複数段設けられている。
円筒部材29は、外周面が円筒形状をした部材から構成されている。
シャフト11は、円柱部材の回転軸(ロータ軸)である。シャフト11の上端にはロータ部24が複数のボルト25により取り付けられている。シャフト11とロータ部24によってターボ分子ポンプ1における回転部が構成されている。
シャフト11の軸線方向の中程には、シャフト11を回転させるモータ10が配設されている。
本実施の形態では、一例としてモータ10は、DCブラシレスモータによって構成されているものとする。
シャフト11のモータ10を構成する部位の周囲には、永久磁石が固着されている。この永久磁石は、例えば、シャフト11の周りにN極とS極が180°ごとに配置されるように固定されている。この永久磁石の周囲には、シャフト11から所定のギャップ(空隙)を経て、例えば6個の電磁石が60°ごとにシャフト11の軸線に対して対照的にかつ対向するように配置されている。
一方、ターボ分子ポンプ1は、シャフト11の回転数と回転角度(位相)を検出する図示しないセンサを備えており、これによって制御装置48は、シャフト11に固着された永久磁石の磁極の位置を検出することができるようになっている。
制御装置48は、検出した磁極の位置に従って、モータ10の電磁石の電流を次々に切り替えて、シャフト11の永久磁石の周囲に回転磁界を生成する。
シャフト11に固着した永久磁石はこの回転磁界に追従し、これによってシャフト11は回転する。また、モータ10外周には、ステンレスなどの金属で構成された円筒部材であるカラー49が配設されており、モータ10を保護している。
また、モータ10の吸気口6側及び排気口19側には、シャフト11をラジアル方向に軸支するための磁気軸受8及び磁気軸受12が設けられている。
さらに、シャフト11の下端には、シャフト11を軸線方向(スラスト方向)に軸支するための磁気軸受20が設けられている。
そして、シャフト11は、磁気軸受8、12によってラジアル方向(シャフト11の径方向)に非接触で支持され、磁気軸受20によってスラスト方向(シャフト11の軸方向)に非接触で支持されている。これらの磁気軸受は、いわゆる5軸制御型の磁気軸受を構成しており、シャフト11は軸線周りの回転の自由度のみ有している。
磁気軸受8には、例えば4つの電磁石がシャフト11の周囲に90°ごとに対向するように配置されている。これらの電磁石は、シャフト11との間にギャップ(空隙)を介して配置されている。なお、このギャップ値は、シャフト11の定常時における振動量(ふれ量)、ロータ部24とステータ部との空間距離、磁気軸受8の性能等を考慮した値となっている。
そして、電磁石に対向するシャフト11には、ターゲットが形成されている。磁気軸受8の電磁石の磁力でこのターゲットが吸引されることによって、シャフト11がラジアル方向に非接触で支持されるようになっている。
磁気軸受12についも、磁気軸受8と同様の構成をとっている。
磁気軸受20は、シャフト11に対して垂直に設けられた円板状の金属製のアーマチュア30を介してシャフト11を軸方向に浮上させている。
磁気軸受20には、例えば2つの電磁石がアーマチュア30を介して対向するように配置されている。これらの電磁石は、アーマチュア30との間にギャップ(空隙)を介して配置されている。なお、このギャップ値は、シャフト11の定常時における振動量(ふれ量)、ロータ部24とステータ部との空間距離、磁気軸受20の性能等を考慮した値となっている。
そして、磁気軸受20の電磁石の磁力でアーマチュア30が吸引されることによって、シャフト11がアキシャル方向に非接触で支持されるようになっている。
また、磁気軸受8、12の近傍には、それぞれ変位センサ9、13が形成されており、シャフト11のラジアル方向の変位が検出できるようになっている。さらに、シャフト11の下端には変位センサ17が形成されており、シャフト11の軸線方向の変位が検出できるようになっている。
変位センサ9、13は、シャフト11のラジアル方向の変位を検出する素子であって、例えばコイルによって構成されている。
このコイルはターボ分子ポンプ1の外部に設置された制御装置48に形成された発振回路の一部となっている。変位センサ9は発振回路の発振に伴って高周波電流が流れ、シャフト11上に高周波磁界を発生するようになっている。
そして、変位センサ9、13とターゲットとの距離が変化すると発振機の発振振幅が変化し、これによってシャフト11の変位を検出することができるようになっている。
なお、シャフト11の変位を検出するセンサとして、他に静電容量式のものや光学式のものなどがある。
制御装置48は、変位センサ9、13からの信号によってシャフト11がラジアル方向の変位を検出すると、磁気軸受8の各電磁石の磁力を調節してシャフト11を所定の位置に戻すように動作する。
このように、制御装置48は変位センサ9、13の信号により磁気軸受8をフィードバック制御する。これによってシャフト11は磁気軸受8において電磁石から所定の空隙(ギャップ)を隔ててラジアル方向に磁気浮上し、空間中に非接触で保持される。
変位センサ17も変位センサ9、13と同様に、例えばコイルによって構成されている。そして、コイルと対向するシャフト11側に設けられたのターゲットとの距離を検出することによって、アキシャル方向の変位を検出している。
制御装置48は、変位センサ9、13からの信号によってシャフト11がラジアル方向の変位を検出すると、磁気軸受8の各電磁石の磁力を調節してシャフト11を所定の位置に戻すように動作する。
このように、制御装置48は変位センサ17の信号により磁気軸受20をフィードバック制御する。これによってシャフト11は磁気軸受20において電磁石から所定の空隙(ギャップ)を隔ててアキシャル方向に磁気浮上し、空間中に非接触で保持される。
このようにして、シャフト11は、磁気軸受8、12によりラジアル方向に保持され、磁気軸受20によりスラスト方向に保持されるため、軸線周りに回転するようになっている。
ケーシング16およびベース27の内部には、ステータ部が形成されている。このステータ部は、吸気口6側(ターボ分子ポンプ部T)に設けられたステータ翼22と、排気口19側(ねじ溝式ポンプ部S)に設けられたねじ溝スペーサ5、ステータコラム18などから構成されている。
ステータ翼22は、シャフト11の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜してケーシング16の内周面からシャフト11に向かって伸びたブレードから構成されている。ターボ分子ポンプ部Tでは、これらステータ翼22が軸線方向に、ロータ翼21と互い違いに複数段形成されている。各段のステータ翼22は、円筒形状をしたスペーサ23により互いに隔てられている。
ねじ溝スペーサ5は、内周面にらせん溝7が形成された円柱部材である。ねじ溝スペーサの内周面は、所定の間隙を隔てて円筒部材29の外周面に対面するようになっている。ねじ溝スペーサ5に形成されたらせん溝7の方向は、らせん溝7内をロータ部24の回転方向にガスが輸送された場合、排気口19に向かう方向である。らせん溝7の深さは排気口19に近づくにつれ浅くなるようになっている。そして、らせん溝7を輸送されるガスは排気口19に近づくにつれて圧縮されるようになっている。
ベース27は、ケーシング16と共にターボ分子ポンプ1の外装体を構成している。ベース27のラジアル方向中央には、ロータの回転軸線と同心に円筒形状を有するステータコラム18が、吸気口6方向に取り付けられている。
また、変位センサ9の吸気口6側には、保護用ベアリング40が設けられて、変位センサ13の排気口19側には、保護用ベアリング50が設けられている。
保護用ベアリング40は、シャフト11をラジアル方向に支持する転がり軸受である。
保護用ベアリング40は、シャフト11と接触する内輪41と、ステータ部に固定される外輪42と、内輪41と外輪42との円形軌道の間に配設された複数のボール43から構成されている。そして、ボール43の転がり運動の作用によって内輪41に接触したシャフト11を回転自在に支持している。
保護用ベアリング50は、シャフト11をラジアル方向およびアキシャル方向の両方向に支持するアンギュラ玉軸受からなる転がり軸受である。保護用ベアリング50は、シャフト11と接触する内輪51と、ステータ部に固定される外輪52と、内輪51と外輪52との円形軌道の間に配設された複数のボール53から構成された軸受をアキシャル方向にに2列配列した複列軸受である。
保護用ベアリング50は、内輪51および外輪52とボール53との接触点を結ぶ直線が軸線方向に対して所定の角度(接触角)をなしている。保護用ベアリング50は、他列の外輪52同士が向かい合うように配設された正面組合せ(DF)と呼ばれる構成をとっている。
これらの保護用ベアリング40、50は、ターボ分子ポンプ1の起動時、停止時や、停電等により磁気軸受8、12が正常に動作しない非常時(タッチダウン時)にシャフト11を支持するたの軸受である。従って、保護用ベアリング40、50は、シャフト11が磁気軸受8、12、20によって支持されている間にシャフト11と接触しないように、内輪41、51は、シャフト11の外径よりも大きくなるように形成されている。
さらにターボ分子ポンプ1には、A部(波線○部)に回転抑止機構60が設けられている。回転抑止機構60は、保護用ベアリング40の固定機構を兼ね備えたストッパ61と、ストッパ61との接触部を形成する、シャフト11に設けられた回転側突起部81から構成されている。
ターボ分子ポンプ1には、B部(波線○部)に回転抑止機構70が設けられている。回転抑止機構70は、保護用ベアリング50の固定機構を兼ね備えたストッパ71と、ストッパ71との接触部を形成する、シャフト11に設けられた固定側突起部73から構成されている。
なお、回転抑止機構60、70の詳細については後述する。
次に、回転抑止機構60、70について詳細に説明する。
図2(a)は、図1に示すA部の詳細図であり、(b)は、図1に示すB部の詳細図である。
図2(a)を参照しながらして回転抑止機構60について説明する。
回転抑止機構60は、回転側突起部81とストッパ61とから構成されている。
回転側突起部81は、シャフト11とロータ部24との排気口側に形成される接合部に、フランジ状に設けらている。なお、回転側突起部81を形成する側面のうち、排気口19方向つまり保護用ベアリング40と対向する面を面81aとし、外周側面を面81bとする。ターボ分子ポンプ1の定常運転時において、面81aおよび面81bはステータ部とは接触しないようになっている。
ストッパ61は、保護用ベアリング40の固定機構として機能するストッパ部62と、回転側突起部81との接触部を形成する固定側突起部63とから構成されている。ストッパ61は、ステータコラム18の吸気口6側の端部に複数のボルト82により取り付けられている。なお、ボルト82のヘッド部は、取付後ストッパ部62から突起しないようにストッパ部62の内部に収められている。
ストッパ部62は、保護用ベアリング40を支持する支持部材であり、円環状の部材で構成されている。ストッパ部62とステータコラム18とによって外輪42を挟持することで、保護用ベアリング40が固定されるようになっている。
ストッパ部62の内周側端部には、保護用ベアリング40のボール43方向に突起した突起部64が形成されいる。
突起部64は、保護用ベアリング40の内輪41と外輪42との円形軌道に沿うように周方向に渡って連続して形成されている。突起部64は、保護用ベアリング40がストッパ61から外れてしまうことを抑制すると共に、ボール43の抜け落ちを防止している。
なお、ストッパ部62において、面81aと対向する面を面62aとする。
固定側突起部63は、ストッパ部62の中程から、ストッパ部62に対して垂直方向に、吸気口6側へ延びるように形成されている。この固定側突起部63は、振れ規制部として機能する。
なお、固定側突起部63を形成する側面のうち、吸気口6と対向する面を面63aとし、シャフト11と対向する面63bとする。
ストッパ61は、固定側突起部63の面63aとロータ部24との間に形成される空隙の間隔が所定のクリアランスαとなり、かつ、面63bと回転側突起部81の面81bとの間に形成される空隙の間隔が所定のクリアランスβとなる位置に配設されている。
なお、ストッパ61のアキシャル方向に位置は、ストッパ部62の面62aと回転側突起部81の面81aとの間に形成される空隙の間隔が所定のクリアランスαとなる位置であってもよい。この場合には、固定側突起部63の面63aとロータ部24との間に形成される空隙の間隔がクリアランスαより十分に大きくなるようにする。
クリアランスαおよびクリアランスβの詳細については後述する。
次に、図2(b)を参照しながらして回転抑止機構70について説明する。
回転抑止機構70は、固定側突起部73とストッパ71とから構成されている。
固定側突起部73は、シャフト11の径を変えることによって形成された2つの肩部(段部)から構成されている。この固定側突起部73は、振れ規制部として機能する。
固定側突起部73を構成する肩部のうち、排気口19側(図面下側)に設けられたものを第1段部92とし、吸気口6側(図面上側)に設けられたものを第2段部93とする。
第1段部92におけるシャフト11の径は、第2段部93におけるシャフトの径よりも小さくなるように形成されている。
なお、第1段部92を形成の外周側面を面92bとする。また、第2段部93を形成する側面のうち、排気口19方向つまり保護用ベアリング50と対向する面を面93aとする。
ターボ分子ポンプ1の定常運転時において、面92bおよび93aはステータ部と接触しないようになっている。
保護用ベアリング50は、第1段部92の面92bと保護用ベアリング50の内輪51との接触時において、シャフト11をアキシャル方向に支持するようになっている。
ストッパ71は、保護用ベアリング50の固定機構として機能するストッパ部72と、固定側突起部73との接触部を形成する固定側突起部73とから構成されている。ストッパ71は、磁気軸受20の吸気口6側の端部に複数のボルト94により取り付けられている。なお、ボルト94のヘッド部は、取付後ストッパ部72から突起しないようにストッパ部72の内部に収められている。
ストッパ部72は、保護用ベアリング50を支持する支持部材であり、円環状の部材で構成されている。ストッパ部72と磁気軸受20とによって外輪52を挟持することで、保護用ベアリング50が固定されるようになっている。
なお、ストッパ部72において、面93aと対向する面を面72aとする。
固定側突起部73は、ストッパ部72内周における吸気口6側(図面上方側)端部に、中心方向へ突出するように形成されている。なお、固定側突起部73を形成する側面のうち、面92bと対向する面を面73bとする。
また、固定側突起部73は、第2段部93と対向する面がストッパ部72の面72aと同一平面上に存在するように形成されている。
ストッパ71は、ストッパ部72の面72aと第2段部93の面93aとの間に形成される空隙の間隔が所定のクリアランスαとなり、かつ、固定側突起部73の面73bと第1段部92の面92bとの間に形成される空隙の間隔が所定のクリアランスβとなる位置に配設されている。
なお、本実施の形態では、ストッパ部72から突起するように固定側突起部73を形成している。しかし、ストッパ部72のシャフト11との対向面の位置を、固定側突起部73の面73bと同位置になるまで内周の径を小さくして、固定側突起部73を設けないようにしてもよい。
クリアランスαおよびクリアランスβの詳細については後述する。
ところで、保護用ベアリング40、50は、シャフト11を接触させることによって支持するため摩耗してしまう。保護用ベアリング40、50の摩耗が進行するに従い内輪61、71の内径が増大する。内輪61、71の内径が増大してしまうと、内輪61、71とシャフト11との間に設けられている遊びの間隔が増大する。内輪61、71とシャフト11との間に設けられている遊びの間隔が増大してしまうと、支持対象であるシャフト11の振れ量(振動量)が増大する。
保護用ベアリング40、50の内輪41、51の内径は、経時的に摩耗する摩耗量を考慮した値となっている。そして、通常は、例えば定期的に保護用ベアリング40、50、の交換を行うなどのメンテナンスを実行し、保護用ベアリング40、50の摩耗により発生する不具合を防止している。
しかしながら、長期間メンテナンスが行われない場合などには、保護用ベアリング40、50の摩耗量が設計時に考慮されていた値を超えるおそれがある。そして、過度に摩耗が進行してしまうと次のような不具合が生じるおそれがある。
磁気軸受8、12において、電磁石とシャフト11との間のギャップが保てなくなり、シャフト11と電磁石とが接触してしまう。
また、モータ10においては、電磁石とシャフト11側に設けられた永久磁石との間のギャップが保てなくなり、永久磁石と電磁石とが接触してしまう。
ターボ分子ポンプ部Tにおいては、ロータ翼21とステータ翼との空間距離が保てなくなり、ロータ翼21とステータ翼とが接触してしまう。
このように、シャフト11の振れ量が増大してしまうとターボ分子ポンプ1内部のステータ部と回転部が接触してしまうおそれがある。
また、保護用ベアリング40、50の摩耗だけでなく、ターボ分子ポンプ1の外部から衝撃が加えられた場合においても、シャフト11およびロータ部24に衝撃的な振動が生じ、シャフト11の振れ量が増加するおそれがある。
上述した回転抑止機構60、70は、このような異常時に、磁気軸受8、12におけるシャフト11と電磁石との接触、モータ10における永久磁石と電磁石との接触、ターボ分子ポンプ部Tにおけるロータ翼21とステータ翼との接触等を抑制する働きをする。
クリアランスαおよびクリアランスβは、磁気軸受8、12におけるシャフト11と電磁石とのギャップ長、モータ10における永久磁石と電磁石とのギャップ長、ターボ分子ポンプ部Tにおけるロータ翼21とステータ翼との空間距離等を考慮して設定されている。
クリアランスαおよびクリアランスβは、回転抑止機構60、70おいてクリアランスαまたはクリアランスβを保つことができなくなり、ストッパ61、71が回転部の一部に接触した時に、シャフト11と電磁石とのギャップ、永久磁石と電磁石とのギャップ、ロータ翼21とステータ翼との空間距離を保持できる範囲に設定されている。
従って、クリアランスαおよびクリアランスβは、シャフト11と電磁石とのギャップ、永久磁石と電磁石とのギャップ、ロータ翼21とステータ翼との空間距離の間隔よりも小さく、保護用ベアリング40、50の内輪41、51とシャフト11との間に形成される隙間の間隔より大きい値となっている。
つまり、シャフト11の振れ量が増大してしまう異常時に、磁気軸受8、12、モータ10、ターボ分子ポンプ部Tにおいて、ステータ側とロータ側とが接触する前に、ストッパ61、71が回転部の一部に接触するようになっている。
次に、このように構成されたターボ分子ポンプ1の動作について説明する。
図3は、ターボ分子ポンプ1における異常検出動作の処理手順を示したフローチャートである。
ターボ分子ポンプ1が起動されると、制御装置48は、モータ10を駆動する電流を検出する(ステップ11)。詳しくは、モータ10の電磁石に流す励磁電流を検出(測定)する。電流の検出(測定)方法としては、検出抵抗(低抵抗)に発生する電圧を検出する方法や、CT(カレントトランス)を用いて磁束の変化を検出する方法などがある。
次に、制御装置48は、検出されたモータ10の駆動電流と、予め設定されている基準電流値との比較を行う(ステップ12)。基準電流値は、ターボ分子ポンプ1の定常運転時(仕様範囲内運転)に流れるモータ10の駆動電流値に、装置の個体間の誤差を考慮したマージンを加算した値となっている。
基準電流値との比較の結果、検出されたモータ10の駆動電流が基準電流値以下であると判断された場合(ステップ12;N)、制御装置48は、モータ10の駆動状態は正常であるとみなし、ステップ11の処理を再度行う。
一方、基準電流値との比較の結果、検出されたモータ10の駆動電流が基準電流値より大きいと判断された場合(ステップ12;Y)、制御装置48は、モータ10の駆動状態が異常であると判断し、この異常状態の発生期間(時間)を積算する(ステップ13)。詳しくは、制御装置48に備えられた記憶装置内の所定の領域に、異常状態の発生期間(時間)情報を記憶(保存)し、処理を行う毎に期間値(時間値)が加算されるようになっている。
続いて、制御装置48は、異常状態の発生期間の積算値(積算時間)と、予め設定されている設定時間との比較を行う(ステップ14)。設定時間は、モータ10の駆動を停止させる条件を決定付ける要素であり、例えば、10分、20分、30分など、任意に設定することができる。
設定時間との比較の結果、異常状態の発生期間の積算値(積算時間)が設定時間以下であると判断された場合(ステップ14;N)、制御装置48はステップ11の処理を再度行う。
一方、設定時間との比較の結果、異常状態の発生期間の積算値(積算時間)が設定時間を超えていると判断された場合(ステップ14;Y)、制御装置48は、モータ10の駆動を停止させる処理を行い(ステップ13)、ターボ分子ポンプ1の動作を終了する。
モータ10の駆動を停止する処理は、モータ10を制動(ブレーキ)運転させることによって行われる。モータ10の制動運転とは、負荷側からのエネルギーを吸収しながら運転する状態を示し、制動運転にはいろいろな種類がある。例えば、制動運転には、発電制動、単相制動、逆相制動、回生制動などがある。
発電制動とは、モータ10を発電機として動作させることによって、モータ10に負荷をかけて制動する方法である。単相制動とは、三相交流機として動作しているモータ10における単相運転時の負荷トルクを用いて制動する方法である。逆相制動とは、モータ10の回転方向を逆転方向に切り換えて制動する方法である。回生制動とは、モータ10を発電機として動作させ、発生した電力を電源へ帰還させて制動する方法である。
このような処理手順により、ターボ分子ポンプ1における異常を検出してモータ10の駆動を停止させ、ターボ分子ポンプ1の動作を停止させている。
ここで、本実施の形態に示すターボ分子ポンプ1にいて、前述したような保護用ベアリング40、50の摩耗が過度に進行しまった場合や、ターボ分子ポンプ1の外部から衝撃が加えられた場合について説明する。
このような場合、つまり異常時には、シャフト11の振れ量が増大してストッパ61またはストッパ71が回転部の一部に接触する。この接触する箇所の組合せパターンは、数通り存在する。例えば、図2(a)に示す、固定側突起部63の面63aとロータ部24、固定側突起部63の面63bと回転側突起部81の面81b、ストッパ部62の面62aと回転側突起部81の面81aがある。さらに、図2(b)に示す、ストッパ部72の面72aと第2段部93の面93a、固定側突起部73の面73bと第1段部92の面92bがある。
ストッパ61またはストッパ71が回転の一部に接触すると摩擦による抵抗力が、シャフト11およびロータ部24等の回転部に対して作用する。すると、摩擦による抵抗力の作用によってモータ10の負荷電流つまり駆動電流が増大する。この増大した駆動電流が基準電流値を超えると、ステップ12の処理において制御装置48は、モータ10の駆動状態が異常であると判断する。即ち、摩擦による抵抗力が発生したことを、モータ10の駆動電流が基準電流値を超えたこと、つまり、モータ10が過負荷状態に移行したことを検出することによって判断することができるようになっている。
従って、ターボ分子ポンプ1では、保護用ベアリング40、50の摩耗が過度に進行しまった場合や、ターボ分子ポンプ1の外部から衝撃が加えられた場合などの異常時が発生したタイミング(時期)を、ストッパ61またはストッパ71を回転部の一部に接触させることによって検出することが可能となる。
このように本実施形態では、ストッパ61またはストッパ71と回転部の一部との接触を、ステップ12の処理に示したように、モータ10の駆動電流に基づいて検出するようにしている。しかし、ストッパ61またはストッパ71と回転部の一部との接触を検出する方法、つまり接触検出手段は、これに限られるものではない。例えば、接触センサ、振動センサ、AE(アコースティックエミッション)センサ等を用いて検出するようにしてもよい。
接触センサは、接触部に働く押圧力を検知したり、空隙(ギャップ)の幅を測定することなどによってたりすることによって接触状態を検出するセンサである。振動センサは、接触時に固体間に生じる特有の周波数帯域の振動を検出することによって接触状態を検出するセンサである。AEセンサは、固体が変形する時などに発生する音(弾性波)を検出するすることによって固体間の接触状態を検出するセンサである。
本実施の形態によれば、シャフト11やロータ部24等の回転部に、おける振れ量が増大してしまうような場合であっても、主要部品(モータ10、磁気軸受8、12、20、ロータ翼21等)を損傷することなく強制的にターボ分子ポンプ1を停止させることができる。従って、主要部品の損傷を抑制することができることにより、ターボ分子ポンプ1の部品の交換等に費やされるランニングコストを低減させることができる。
本実施形態のターボ分子ポンプの軸線方向の断面を示した図である。 (a)は図1に示すA部の詳細図であり、(b)は図1に示すB部の詳細図である。 ターボ分子ポンプにおける異常検出動作の処理手順を示したフローチャートである。 発振状態におけるロータの振れ量の検出方法を模式的に示した図である。
符号の説明
1 ターボ分子ポンプ
5 溝スペーサ
6 吸気口
8、12、20 磁気軸受
9、13、17 変位センサ
10 モータ
11 シャフト
16 ケーシング
18 ステータコラム
19 排気口
21 ロータ翼
22 ステータ翼
23 スペーサ
24 ロータ部
27 ベース
40 保護用ベアリング
48 制御装置
50 保護用ベアリング
60、70 回転抑止機構

Claims (3)

  1. 吸気口と排気口を備えた外装体と、
    前記外装体内に設けられた固定部と、
    前記外装体内に回転自在に支持されたシャフトと、前記シャフトに配設され、前記吸気口から前記排気口へ気体を移送する気体移送機構が設けられたロータと、からなり、前記固定部との間に所定の空隙を介して配置された回転部と、
    前記シャフトを回転させるモータと、
    前記シャフトを磁気浮上させて非接触で支持する磁気軸受と、
    前記シャフトを支持し、内輪の内径が前記シャフトの外径よりも大きく形成された保護用軸受と、
    前記所定の空隙よりも小さく、且つ前記シャフトと前記保護用軸受との間に設けられた隙間より大きいクリアランスが、前記固定部と前記回転部との間に形成されるように、前記固定部および前記回転部の少なくとも一方に形成された振れ規制部と、
    前記固定部又は前記回転部と前記振れ規制部との接触が検出された場合に、前記モータの駆動を停止させる駆動停止手段と、
    を具備したことを特徴とする真空ポンプ。
  2. 前記保護用軸受を支持する支持部材を具備し、
    前記振れ規制部は、前記支持部材に形成されていることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプ。
  3. 前記駆動停止手段は、
    前記モータの負荷電流を検出するモータ電流検出手段と、
    前記モータ電流検出手段により検出された前記負荷電流と所定の基準値とを比較する比較手段と、を具備し、
    前記駆動停止手段は、前記比較手段による比較の結果、前記負荷電流が前記所定の基準値を超えた場合に、前記固定部と前記回転部とが接触していると判断し、前記モータの駆動を停止させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の真空ポンプ。
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