JP2005105413A - エレクトリックスルーホールを形成するカチオン電着塗膜形成方法、及び、エレクトリックスルーホール形成性カチオン電着塗料 - Google Patents

エレクトリックスルーホールを形成するカチオン電着塗膜形成方法、及び、エレクトリックスルーホール形成性カチオン電着塗料 Download PDF

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Abstract

【課題】
低温硬化性や顔料分散安定性等が良好であって表面平滑性と経済性とをともに維持しつつ防食性や防錆性等の基本性能を保持する、という電着塗装の基本性能に悪影響を全く与えることなく、極めて精巧なつきまわり性を発揮するとともに、優れた耐ガスピン性を獲得しうるカチオン電着塗膜形成方法を提供する。
【解決手段】
基体樹脂を含むカチオン電着塗料液を浴槽内に満たし、亜鉛鋼板からなる被塗物を上記浴槽内に浸漬して通電することにより上記亜鉛鋼板表面に電着塗膜を形成させるカチオン電着塗膜形成方法であって、上記亜鉛鋼板表面の、上記通電により析出形成しつつ経時的に次第に膜厚を上げてゆく際に生じる塗膜の切れ目において、上記通電により発生する水素ガスが経時的に凝集して生じる水素バブルの存在を原因として発現する放電現象を払拭するために、上記塗膜中にエレクトリックスルーホールを形成せしめて上記塗膜の導電性を確保し、これにより、上記塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を抑制するカチオン電着塗膜形成方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、カチオン電着塗膜形成方法及び耐ガスピン性カチオン電着塗料組成物に関する。
カチオン電着塗料組成物は、自動車ボディ等の大型被塗物の下塗り塗膜を形成させるために、浴液の形態で提供されており、カチオン電着塗料組成物を用いたカチオン電着塗膜形成方法においては、通常は、このような浴液を浴槽中に満たし、被塗物を吊り下げたレーン等を移動させることによりラインを構成して、連続的に浴槽に浸漬させ、浴液中に差し込んだ電極(陰極)と被塗物(陽極)とを通電させることにより被塗物表面に塗料を順次析出させて、被塗物全体に下塗り塗膜を形成させ、浴槽から被塗物を引き上げたのちに、水洗、セッティング、加熱硬化させている。
このようなカチオン電着塗料組成物は、通常、アミン変性エポキシ樹脂等のカチオン性樹脂と、ブロックイソシアネート化合物等の架橋剤と、顔料分散樹脂及び顔料を含有する顔料分散ペーストと、その他の添加剤とを、水性媒体中に分散させて構成されている。
自動車ボディ等は高度の防錆性を要求され、近年、鋼板としては冷延鋼板等に代わり、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA板)や電気亜鉛めっき鋼板(EG材)等(これらを総称して「亜鉛鋼板」という)が汎用されるようになっている。特にここでは合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA材)について亜鉛鋼板と称する。
電着塗装は、画一的な機械装置を用いて機能的、連続的かつ効率的に、大型被塗物の表面に均一な塗膜を形成しうるところから、自動車ボディの下塗り塗膜形成のために汎用されている。このような用途においては、できあがり塗膜について外観に悪影響を与えないような平滑性に加えて、防食性、防錆性が要求され、更に、後に詳述するつきまわり性がよいことが必須条件となっている。
ところで、電着塗装においては、電着塗膜の形成時に、被塗物表面において、浴液中の水(HO)と通電中に発生する電荷(e)とから水素ガス(H)が必ず発生する。この水素ガスが通電とともに析出した塗膜の平滑な形成を妨害するように働くが、析出した塗膜それ自体が有する電気抵抗によってジュール熱を発生して溶融して融着し、ある程度の均一性が維持できることとなる。しかしながら、鋼板を亜鉛鋼板とすると、放電するときの電圧が鋼板に比べて低くなり、発生した水素ガスが凝集して大きな泡状物となり(この泡状物を「水素バブル」ともいう)、通電によってこの水素バブル中で火花放電が起こり、通電開始から3〜4秒を経過する時点においては、放電エネルギーにより塗膜がプレキュア(後の加熱硬化を経ずに部分硬化してしまう現象)を起こしてしまう(図1)。
このようなプレキュア部分は、電着塗膜が形成されてゆくあいだに、熱フローによって覆われて痕跡が残らなくなる部分が多いが、それでも一部は残り、塗膜上にクレーター状の傷が生じる。このように生じるクレーターは、「ガスピンホール」、「ガスピン」、「GAクレタリング」と称されてよく知られており、これらを抑制できる性能は「耐ガスピン性」とも称され、また、「耐亜鉛ガスピン性」とも表現されて重要視されている。
ガスピンは、中塗り、上塗り等を経たあとであっても自動車ボディ塗装の命である美観を損ねて外観不良を招来するし、中塗りハジキの原因となったり防食性低下の原因ともなるから、耐ガスピン性(ガスピンの発生を抑制しうる性質)は、達成しなければならない課題として、「亜鉛鋼板適性」とも呼ばれて、これまで、亜鉛鋼板用のカチオン電着塗料組成物の解決必須課題となってきた。
簡便な手法として、例えば、浴液中に溶剤等を添加して柔軟な析出塗膜を形成するようにすればよいが(特許文献1、特許文献2)、このような方法では逆につきまわり性が低下するという問題が生じる。また、例えば、膜厚を上げれば、析出する塗料が熱フローによりプレキュア部分を覆うから、耐ガスピン性を達成しやすくなる。これらは、浴中の溶剤比率を高めることにより達成することができるが、VOC削減の環境問題に差し障るし、つきまわり性にも支障がある。
下塗り塗膜を形成させる本来的な目的は、防錆性を高めることのほか、鋼板下地の粗度(表面粗さ)を隠蔽して外観性を高めることであり、塗装技術が発達した今日においては、下塗り塗膜の膜厚は、最低でも10μm程度が適切とされており、従って、経済性を考慮して外板では最高でも15μm程度を維持させ内板では最低でも10μmを保つ要請があり、このためには、極めて高いつきまわり性が要求されている。
特許文献3には、カチオン電着塗料組成物に、耐ガスピン性発現成分として、HLB10.0〜13.5を有する2級アルコール/エチレンオキシド付加体を含んでいるものが開示されている。これにより、つきまわり性に悪影響を与えることなく高い耐ガスピン性を獲得できるとしている。しかしながら、この方法は、耐ガスピン性(ガスピンを防止する性質)を発現させようとしてガスピン発生防止剤を含ませようとする画期的なものではあったが、2級アルコール/エチレンオキシド付加体を耐ガスピン性発現のための添加剤として用いるものであって、添加物混入に起因する浴液の粘度上昇、それに伴う膜厚の不用意な上昇等の不利を完全にはぬぐいきれないものであった。
特許文献4には、耐ガスピン性を発現させる目的とともに、顔料分散安定性と、160℃以下のいわゆる低温焼付け時の耐食性、高つきまわり性の維持のために、顔料分散用樹脂を工夫して顔料分散ペーストを改善し、顔料と全樹脂の含有量比(質量比)が1/3〜1/7となるようなカチオン電着塗料組成物が開示されている。しかしながら、この方法は、主として、低溶剤、高耐食性、高耐候性、作業性等に着目してこれらの維持を目的として顔料分散ペーストを改善したものであって、水素ガス発生に伴う水素バブルによる放電現象に対して影響を与えるものではなかったため、本質的な課題解決には至らなかった。
特許文献5には、希釈塗料の電導度が1000〜1300μS/cm、3分間電着塗装時のクーロン効率が40mg/クーロン以上であるカチオン電着塗料組成物により、亜鉛鋼板への耐ガスピン性を得ることができる旨が開示されている。特許文献5には、ガスピンが水素ガスの火花放電とその際の熱による塗膜樹脂の硬化が原因していることが段落番号〔0003〕に記載され、また、電着塗装時に電圧を印加すると、印加直後に大きな電流が流れた後に急減し、その後は漸減して定常電流となるが、印加直後の電流量が大きいほど水素ガス放電が起こり易いことが記載されていて(段落番号〔0017〕)、従って、希釈塗料の電導度を一定範囲に調節することにより印加直後の電流量を低めて水素ガスの火花放電を抑制しようとするのが、特許文献5記載の技術の要旨である。
特許文献5においては、電導度の調節のみではつきまわり性に支障が生じるので、同時に3分間電着塗装時のクーロン効率を高めてつきまわり性減退の副作用を抑えようとするものである(特許文献5の段落番号〔0019〕)。従って、特許文献5に記載の技術は、電導度を低めるとともにクーロン効率を高め、その両方の良い面のみを発現させようとするものである。従って、充分の効果が期待できるものではあるが、安全性を損なう不利を完全にぬぐいきれないものであり、亜鉛鋼板におけるガスピン発生に対する根本的治療が実現できない間のいわば対症療法的な対応策であった。
特許文献6には、耐ガスピン性をよくするために電着塗膜形成時に発生する水素ガスを抜け易くするため、最低造膜温度を電着塗装設定温度の±5℃以内に、塗装時電導度を1000〜1500μS/cmに調整する技術が開示されている。最低造膜温度とは、膜厚が最低値となる電着塗料浴液の温度を意味し、電着塗装設定温度とは、ラインにおいて設定される電着浴槽の液温度を意味し、即ち、カチオン性基体樹脂の分子量を高くしたり硬化剤の成分を芳香族系又は脂環族系にしたり、高沸点溶剤量を削減する方法により、浴液温度を調節することにより、また、塗装時電導度を特定のものとすることにより、水素ガス起因の放電を抑制しようとするものである。
しかしながら、特許文献6に記載の技術では、耐ガスピン性は獲得することができるものの、浴液の温度調節と塗装時電導度の調整とを同時にしなければならないことから、作業の厳格さが要求される不利があった。
特開昭60−60169号公報 特開昭63−107786号公報 特開平10−36717号公報 特開平11−323211号公報 特開2000−204299号公報 特開2001−19878号公報
本発明は、上記現状に鑑み、低温硬化性や顔料分散安定性等が良好であって表面平滑性と経済性とをともに維持しつつ防食性や防錆性等の基本性能を保持する、という電着塗装の基本性能に悪影響を全く与えることなく、極めて精巧なつきまわり性を発揮するとともに、優れた耐ガスピン性を獲得しうるカチオン電着塗膜形成方法を提供することを目的とするものである。
本発明は、基体樹脂を含むカチオン電着塗料液を浴槽内に満たし、亜鉛鋼板からなる被塗物を上記浴槽内に浸漬して通電することにより上記亜鉛鋼板表面に電着塗膜を形成させるカチオン電着塗膜形成方法であって、上記亜鉛鋼板表面の、上記通電により析出形成しつつ経時的に次第に膜厚を上げてゆく際に生じる塗膜の切れ目において、上記通電により発生する水素ガスが経時的に凝集して生じる水素バブルの存在を原因として発現する放電現象を払拭するために、上記塗膜中にエレクトリックスルーホールを形成せしめて上記塗膜の導電性を確保し、これにより、上記塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を抑制することを特徴とするカチオン電着塗膜形成方法である。
上記カチオン電着塗膜形成方法において、上記塗膜を構成する成分が上記基体樹脂からなり、上記基体樹脂がアミン変性エポキシ樹脂であり、上記エレクトリックスルーホールは、上記アミン変性エポキシ樹脂の末端アミノ基近傍に酸基(−COO)を存在せしめたものであることが好ましい。
上記カチオン電着塗膜形成方法において、上記酸基(−COO)は、酸無水物とアミノ基との反応により生じたものであることが好ましい。
上記カチオン電着塗膜形成方法において、上記エレクトリックスルーホールは、酸基を含有する水難溶性樹脂に由来する酸基を存在せしめたものであることが好ましい。
上記カチオン電着塗膜形成方法において、上記エレクトリックスルーホールは、両性イオン基含有樹脂に由来する酸基を存在せしめたものであることが好ましい。
本発明は、基体樹脂を含むカチオン電着塗料液を浴槽内に満たし、亜鉛鋼板からなる被塗物を上記浴槽内に浸漬して通電することにより上記亜鉛鋼板表面に電着塗膜を形成させるカチオン電着塗膜形成方法であって、上記通電により析出形成する塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を制御することにより上記亜鉛鋼板表面での水素バブルにおける放電現象を阻止することを特徴とするカチオン電着塗膜形成方法である。
本発明は、基体樹脂を含むカチオン電着塗料液を浴槽内に満たし、亜鉛鋼板からなる被塗物を上記浴槽内に浸漬して通電することにより上記亜鉛鋼板表面に電着塗膜を形成させるカチオン電着塗膜形成方法であって、上記通電により析出形成する塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)は、上記通電の開始から4秒以内においては1.0以下であり、上記通電の開始から10秒を経過した後においては2.0以上であることを特徴とするカチオン電着塗膜形成方法である。
本発明は、基体樹脂を含むカチオン電着塗料液を浴槽内に満たし、亜鉛鋼板からなる被塗物を上記浴槽内に浸漬して通電することにより上記亜鉛鋼板表面に電着塗膜を形成させるカチオン電着塗膜形成方法であって、上記亜鉛鋼板表面の、上記通電により析出形成しつつ経時的に次第に膜厚を上げてゆく際に生じる塗膜の切れ目において、上記通電により発生する水素ガスが経時的に凝集して生じる水素バブルの存在を原因として発現する放電現象を払拭するために、上記塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を、通電開始から4秒間抑制することを特徴とするカチオン電着塗膜形成方法である。
上記カチオン電着塗膜形成方法において、上記通電条件は、予め設定した印加電圧に到達せしめるまでの時間を5秒とした条件において、等速度で電圧を上昇させるものであり、塗装時の浴液の温度は、20〜40℃であり、塗装時の浴液の不揮発分濃度は、15〜25質量%であり、被塗物と極板との面積比は1/1〜2/1、極間距離は15cmであることが好ましい。
本発明はまた、基体樹脂を含むカチオン電着塗料であって、上記カチオン電着塗料は、カチオン電着塗装中の通電により析出形成する塗膜中にエレクトリックスルーホールを形成せしめて上記塗膜の導電性を確保することができるものであり、かつ、上記塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を抑制することができることを特徴とするカチオン電着塗料である。
上記カチオン電着塗料において、上記塗膜を構成する成分が上記基体樹脂からなり、上記基体樹脂がアミン変性エポキシ樹脂であり、上記エレクトリックスルーホールは、上記アミン変性エポキシ樹脂の末端アミノ基近傍に酸基(−COO)を存在せしめたものであることが好ましい。
上記カチオン電着塗料において、上記酸基(−COO)は、酸無水物とアミノ基との反応により生じたものであることが好ましい。
上記カチオン電着塗料において、上記エレクトリックスルーホールは、酸基を含有する水難溶性樹脂に由来する酸基を存在せしめたものであることが好ましい。
上記カチオン電着塗料において、上記エレクトリックスルーホールは、両性イオン基含有樹脂に由来する酸基を存在せしめたものであることが好ましい。
本発明はまた、カチオン電着塗装中の通電により析出形成する塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を制御することができるものであることを特徴とするカチオン電着塗料である。
本発明はまた、カチオン電着塗装中の通電により析出形成する塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)が上記通電の開始から4秒以内においては1.0以下とすることができ、上記通電の開始から10秒を経過した後においては2.0以上とすることができるものであることを特徴とするカチオン電着塗料である。
本発明はまた、カチオン電着塗装中の通電により析出形成しつつ経時的に次第に膜厚を上げてゆく際に生じる塗膜の切れ目において、上記通電により発生する水素ガスが経時的に凝集して生じる水素バブルの存在を原因として発現する放電現象を払拭するために、上記塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を、通電開始から4秒間抑制することができるものであることを特徴とするカチオン電着塗料である。
上記カチオン電着塗料において、上記通電条件は、予め設定した印加電圧に到達せしめるまでの時間を5秒とした条件において、等速度で電圧を上昇させるものであり、塗装時の浴液の温度は、20〜40℃であり、塗装時の浴液の不揮発分濃度は、15〜25質量%であり、被塗物と極板との面積比は1/1〜2/1、極間距離は15cmであることが好ましい。
以下に本発明を詳述する。
第一の本発明は、基体樹脂を含むカチオン電着塗料液を浴槽内に満たし、亜鉛鋼板からなる被塗物を上記浴槽内に浸漬して通電することにより上記亜鉛鋼板表面に電着塗膜を形成させるカチオン電着塗膜形成方法であって、上記亜鉛鋼板表面の、上記通電により析出形成しつつ経時的に次第に膜厚を上げてゆく際に生じる塗膜の切れ目において、上記通電により発生する水素ガスが経時的に凝集して生じる水素バブルの存在を原因として発現する放電現象を払拭するために、上記塗膜中にエレクトリックスルーホールを形成せしめて上記塗膜の導電性を確保し、これにより、上記塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を抑制することを特徴とするカチオン電着塗膜形成方法である。
上記第一の本発明の特徴は、塗膜中にエレクトリックスルーホールを形成せしめることである。上記エレクトリックスルーホールとは、上記カチオン電着塗膜形成方法によって形成された電着塗膜中の電気的な道筋である。
上記エレクトリックスルーホールを形成せしめることによって、カチオン電着塗装によって形成される電着塗膜中に電気的な道筋を存在させることができるため、塗膜の導電性を確保することができる。このため、カチオン電着塗装において、上記エレクトリックスルーホールに電気が流れさせることができるので、形成される電着塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を抑制することができる。
従来のカチオン電着塗装では、通電により析出形成しつつ経時的に次第に膜厚を上げてゆく際に生じる塗膜の切れ目において、上記通電により発生する水素ガスが経時的に凝集して生じる水素バブルによって放電現象が発現していた。しかし、本発明のカチオン電着塗膜形成方法では、経時的に次第に膜厚を上げてゆく際に生じる塗膜中に上記エレクトリックスルーホールが形成されているため、電着塗装においてエレクトリックスルーホールに電気が流れさせることができ、その結果、水素バブルによる放電現象の発現を防止することができる。これにより、塗膜の部分的なプレキュアが防止されるため、ガスピンの発生が防止され、塗膜の外観不良を抑制することができる。なお、上記水素バブルとは、亜鉛鋼板表面に発生した水素ガスが経時的に凝集して大きな泡状物となったものである。
上記エレクトリックスルーホールは、上記カチオン電着塗膜形成方法によって電着初期に形成された電着塗膜中の電気的な道筋であると同時に、電着初期における塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を抑制するものである。しかしながら、電着塗装による塗膜の増膜が進行すると、電気的な道筋としての、電気抵抗を抑制するという機能を充分に発揮することができなくなり、その結果として電気的な道筋の抵抗値を上昇させることとなる。このため、増膜が進行すると、増膜された部分の抵抗値が上昇し、塗膜が薄膜であっても比較的高い抵抗値を示すものとなる。そして、その結果、未だ塗膜が形成されていない部分(例えば、自動車ボディーであれば内板部等)への電着が可能となり、つきまわり性を向上させることもできる。
従って、上記第一の本発明の特徴は、上記エレクトリックスルーホールを形成せしめることによって、ガスピンの発生による塗膜の外観不良を防止するとともに、カチオン電着塗装におけるつきまわり性も確保することができる点である。また、本発明は、上記水素バブル中に生じる火花放電を阻止することにより、上記火花放電に起因するクレーター発生を阻止し、ガスピンの生じることを防止するものであるので、これまでのガスピン抑制技術とは、本質的にその発想を異にするものである。
上記第一の本発明の特徴を図1、2を用いて、説明する。
図2に示されているように、従来のカチオン電着塗料組成物を使用して電着塗装する場合には(抵抗上昇曲線11)、塗膜の電気抵抗値(KΩ・cm)の急激な上昇が比較的短時間(図2では塗装時間3秒程度)で生じるが、本発明を用いる場合には(抵抗上昇曲線12)、塗膜の電気抵抗値(KΩ・cm)の急激な上昇は、従来の電着塗装の場合に比べて、長時間で生じることになる(図2では塗装時間4秒程度)。
従来の電着塗装方法を用いる場合には、塗膜の電気抵抗値の急激な上昇が比較的短時間で生じるために、図1のBステージにおいて、水素バブルの火花放電(図1のBステージにおいて、大きくなった水素バブル(Aステージにおける「2」中に折れ線矢印「4」で示したものが火花放電の放電現象である。))が生じる(図2では、この放電現象が通電開始から4.75秒程度後における電気抵抗値の一時的な低下として現れている。)。そして、この放電現象による放電エネルギーにより部分的に塗膜がプレキュアし、得られる塗膜にガスピンが生じ、外観不良を起こしてしまう。
これに対して、本発明は、従来の電着塗装の場合に比べて、上記エレクトリックスルーホールを形成せしめることによって、塗膜の電気抵抗値の急激な上昇を遅らせた方法であるため、水素バブルにおける放電現象が生じず、4.75秒付近に生じていた電気抵抗値の一時的な低下も見られない。その結果、水素バブルにおける放電現象に起因する塗膜の部分的なプレキュアが抑止されてガスピンが生じず、得られる塗膜の外観不良を抑止することができる。「抑制」は、「抑止」も含む概念である。
また、本発明では(抵抗上昇曲線12)、増膜が進行し一定時間経過後には、塗膜の電気抵抗値の急激の上昇が見られる(図2では塗装時間4秒程度)。これは、増膜が進行すると、上記エレクトリックスルーホールによって形成されるネットワークが崩れ、電気的な道筋が崩れるため、結果として、電気抵抗値の急激の上昇が見られるものである。そして、このように、塗膜の電気抵抗値が上昇することによって、塗膜が薄膜であっても比較的高い抵抗値を示すものとなり、一定時間経過後において、未だ塗膜が形成されていない部分への電着が可能となり、つきまわり性を向上させることもできる。
即ち、本発明の特徴は、図2に示すような抵抗上昇曲線12が得られるような塗膜形成方法を提供することであり、これにより、優れた外観の塗膜を形成することができるとともに、電着塗装中のつきまわり性も確保することができる。
上記第一の本発明において、上記エレクトリックスルーホールを形成せしめることによって塗膜の導電性を確保し、塗膜の単位質量あたりの電気抵抗値の上昇を抑制する機構と、つきまわり性が確保される機構とを図3を用いて以下に詳細に説明する。
図3は、本発明のカチオン電着塗膜形成方法を用いることによって塗膜が析出形成する様子を示した模式図である。(I)は、カチオン電着塗装中に、導電性部(−NH 、−COO)を樹脂末端近傍に有するカチオン性樹脂(アミン変性樹脂)が浴中に存在している状態を示している。
(II)は、カチオン電着塗装によってカチオン性樹脂が被塗物に析出し、塗膜が形成する初期の状態を示している。ここでは、電着によってカチオン性樹脂が析出するとともに水素ガスが発生している様子を示しており、また、カチオン性樹脂が析出しても樹脂中の導電性部は依然として存在していることを示している。
(III)は、電着によるカチオン性樹脂の析出が徐々に進行している状態を示している。ここでは、塗膜の析出形成の進行に伴って、発生した水素ガスが肥大化する様子を示している。また、樹脂の析出の進行に伴って、樹脂中に存在する導電性部が連なってネットワークを形成し、エレクトリックスルーホールが形成される状態を示している。従来の塗装方法では、樹脂中に導電性部が存在していないため、塗膜の析出形成が進行すると、電気が流れる道筋が存在しない状態となり、結果として、肥大化した水素ガス(水素バブル)中に放電現象が起こってしまう。一方、本発明における(III)では、塗膜中で導電性部がネットワークを形成することによってエレクトリックスルーホールが形成され、塗膜の単位質量あたりの電気抵抗値の上昇が抑制される。そして、その結果、電着塗装中にエレクトリックスルーホールに電気が流れるため、肥大化した水素ガス中に放電現象が起こることが抑制される。従って、放電エネルギーにより部分的に塗膜がプレキュアすることが抑制されて耐ガスピン性が生じ、優れた外観を有する塗膜を得ることができる。
(IV)は、電着によるカチオン性樹脂の析出が(III)から更に進行している状態を示している。(IV)で示されているように、増膜によってエレクトリックスルーホールが崩れ、ネットワークの抵抗値が上昇する。このため、増膜した塗膜全体の電流値が抑制されるため、増膜した部分における塗膜の単位質量あたりの電気抵抗値が上昇する。その結果、未だ増膜していない部分での樹脂の析出が効率的に起こり、つきまわり性を確保することができる。即ち、本発明においては、(III)の時点では、エレクトリックスルーホールによって水素バブルの放電現象を抑制することができるが、同時に電流が流れる道筋も存在するため、その部位での増膜が容易に進行してしまう。このため、未だ塗膜形成が進行していない箇所(例えば、被塗物が自動車ボディである場合には、内板部)へのつきまわり性が確保できない問題がある。しかし、(IV)における増膜によってエレクトリックスルーホールが崩れ、塗膜の単位質量あたりの電気抵抗値が上昇するため、薄膜であっても比較的高い抵抗値となり、その結果、塗膜の形成が進行していない箇所への電着が可能となるため、つきまわり性も向上させることができる。また、(IV)の時点では、肥大化した水素ガスによる放電現象も生じないため、塗膜がプレキュアすることも抑制されて耐ガスピン性が発揮され、外観不良となることも抑制されることとなる。
上記エレクトリックスルーホールは、上述したように、上記カチオン電着塗膜形成方法によって形成された電着塗膜中の電気的な道筋であり、例えば、導電性を有するもの(導電性部)によって形成されるものである。
上記導電性部としては、電着塗装により析出形成される塗膜中において、電着塗装によって流れる電流の道筋となり得るものであれば特に限定されず、例えば、塗膜の構成成分のカチオン性基及びアニオン性基を挙げることができる。本発明においては、カチオン性基及びアニオン性基のような電流の道筋となり得るものが塗膜中に存在すれば、この部分に電流が優先的に流れ、水素バブルに放電現象が生じることが抑制される。
上記カチオン性基としては、例えば、アミノ基、スルホニウム基、アンモニウム基等を挙げることができる。
上記アニオン性基としては、例えば、カルボキシル基、ホスホン酸基、スルホン酸基等を挙げることができる。
上記塗膜の構成成分中に、カチオン性基及びアニオン性基を存在せしめる方法としては、構成成分の全体中にカチオン性基及びアニオン性基が存在させることができる方法であれば特に限定されず、例えば、(方法1)カチオン電着塗料組成物中の基体樹脂(カチオン性樹脂)中に酸基を導入する方法、(方法2)カチオン電着塗料組成物中に、上記基体樹脂(カチオン性樹脂)の他に酸基を含有する水難溶性樹脂を構成成分として配合する方法、(方法3)カチオン電着塗料組成物中に、両性イオン基含有樹脂を配合する方法、(方法4)オキシ酸ブロック型硬化剤(例えば、オキシ酸でブロックしたブロックイソシアネート)を硬化剤として配合する方法、等を挙げることができる。
上記カチオン電着塗料組成物中の基体樹脂(カチオン性樹脂)中に酸基を導入する方法(方法1)を用いる場合には、カチオン電着塗料組成物の配合を大きく変化させることなく、導電性部を導入することができる。上記酸基としては、例えば、カルボキシル基、ホスホン酸基、スルホン酸基等を挙げることができる。
上記カチオン電着塗料組成物中の基体樹脂(カチオン性樹脂)中に酸基を導入する方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができるが、例えば、カチオン性樹脂中に存在するアミノ基と酸無水物との反応により生じさせることができる。
上記酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、無水コハク酸等を挙げることができる。なかでも、耐ガスピン性の観点から、無水マレイン酸が好ましい。
上記カチオン電着塗料組成物中に、上記基体樹脂(カチオン性樹脂)の他に酸基を含有する水難溶性樹脂を構成成分として配合する方法(方法2)を用いる場合には、上記構成成分中の導電性部は、酸基を含有する水難溶性樹脂に由来する酸基を含んでなるものとなる。また、方法2を用いる場合には、異なる種類の酸基を導入することができ、酸基を導入する樹脂の設計自由度が高くすることができる。
上記酸基を含有する水難溶性樹脂に用いる酸基は、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホニウム基等を挙げることができる。
上記酸基を含有する水難溶性樹脂は、上記酸基を含有する水難溶性の樹脂であれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂等のアニオン性樹脂を挙げることができる。上記酸基を含有する水難溶性樹脂の製造方法としては特に限定されず、例えば、上記水難溶性酸基を有する樹脂を得る従来公知の方法を用いることができる。
上記カチオン電着塗料組成物中に、両性イオン基含有樹脂を配合する方法(方法3)を用いる場合には、上記構成成分中の導電性部は、両性イオン基含有樹脂に由来する酸基を含んでなるものとなる。また、方法3を用いる場合には、異なる種類の酸基を導入することができ、酸基を導入する樹脂の設計自由度が高くすることができる。
上記両性イオン基含有樹脂は、上記カチオン性基及び上記アニオン性基の両方を含有する樹脂をいう。上記両性イオン基含有樹脂の製造方法としては特に限定されず、例えば、カチオン性基及びアニオン性基を有する樹脂を得る従来公知の方法を用いることができる。
上記両性イオン基含有樹脂としては、例えば、アミノポリエーテルの無水酸導入体、アミノ酸含有樹脂等を挙げることができる。
上記オキシ酸ブロック型硬化剤を硬化剤として配合する方法を用いる場合には、他の成分の配合を変更することなく、酸基を導入することができる。上記オキシ酸としては、例えば、グリコール酸、クエン酸、酒石酸等を挙げることができる。
上記オキシ酸ブロック型硬化剤の製造方法としては、従来公知のブロック剤と反応させる方法と同様の方法により、オキシ酸と硬化剤とを反応させることによって得ることができる。
本発明におけるカチオン電着塗料組成物において、上記基体樹脂はカチオン性樹脂である。
上記カチオン性樹脂としては特に限定されず、例えば、アミン変性樹脂であることが好ましく、アミノ変性エポキシ樹脂であることがより好ましい。
上記アミノ変性エポキシ樹脂としては特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を2級アミンでアミノ化したものを挙げることができる。上記基体樹脂がアミノ変性エポキシ樹脂である場合、上記エレクトリックスルーホールは、上記アミン変性エポキシ樹脂の末端アミノ基近傍に酸基(−COO)を存在せしめたものであることがより好ましい。これにより、ガスピンの発生を抑制することができ、また、つきまわり性を充分に確保することもできる。
本発明で使用できるエポキシ樹脂は、一般にポリエポキシドである。
上記ポリエポキシドは、1分子中に平均1個以上の1,2−エポキシ基を有する。
上記ポリエポキシドは、エポキシ当量が、下限180、上限1200であることが好ましい。上記下限は、375であることがより好ましく、上記上限は、1000であることがより好ましい。
上記ポリエポキシドのなかでも、ポリフェノール(例えば、ビスフェノールA)のポリグリシジルエーテルが好ましい。上記ポリフェノールのポリグリシジルエーテルは、例えば、アルカリ存在下にて、ポリフェノールと、エピクロルヒドリン又はジクロルヒドリンとをエーテル化することにより調製される。上記ポリフェノールは、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン又はその類似物であり得る。
上記エポキシ樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールや単官能性のアルキルフェノール等の適当な樹脂で変性してもよい。変性に用いる樹脂としては、例えば、ポリカプロラクトンジオール、エチレンオキサイド付加重合物等を挙げることができる。
上記エポキシ樹脂のアミノ化に用いる2級アミンとしては、例えば、n−メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン;ジエチルアミン、ジブチルアミン等のアルキルアミン等を挙げることができる。また、ジエチレントリアミン、アミノエチルエタノールアミン等の少なくとも1個の1級アミノ基を有するポリアミンをメチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類で1級アミノ基をブロックしたケチミン化合物を用いてもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、上記方法1によってカチオン電着塗料組成物中の基体樹脂(カチオン性樹脂)中に酸基を導入する場合には、上記基体樹脂は、酸基が導入されたカチオン性樹脂である。
本発明におけるカチオン電着塗料組成物は、硬化剤を含有するものであってもよい。
上記硬化剤としては、ブロックポリイソシアネートが好ましい。なかでも、解離温度が100〜180℃のブロックポリイソシアネートがより好ましい。ブロックポリイソシアネートは別の成分として組成物中に存在してもよく、また他の成分と一体化してもよい。例えば、ハーフブロック化ポリイソシアネートをカチオン性樹脂と反応して、カチオン性樹脂に架橋能力を付与してもよい。ブロックポリイソシアネートを含有しない場合には、硬化性が不足するおそれがある。ブロックポリイソシアネートの解離温度が100℃未満であると、塗料の安定性が著しく劣り、実用性が得られない。180℃を超えると、現行の多くの塗装ラインにおける焼付け条件では硬化性が不足し、防食性が低下するおそれがある。
上記解離温度が100〜180℃のブロックポリイソシアネートとしては、従来電着塗料用ビヒクル成分として用いられているすべてのポリイソシアネート類を挙げることができる。
上記ポリイソシアネート類としては特に限定されず、例えば、トルエンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、エチリデンジイソシアネート、ブチリデンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族環式ジイソシアネート;m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トルエンジイソシアネート又はそれらの混合物、4,4′−トルイジンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート等の脂肪族−芳香族ジイソシアネート;ジアニシジンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、クロロジフェニルジイソシアネート等の核置換芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエン等のトリイソシアネート;4,4′−ジフェニル−ジメチルメタン−2,2′,5,5′−テトライソシアネート等のテトライソシアネート;トルエンジイソシアネートダイマー、トルエンジイソシアネートトリマー等の重合したポリイソシアネート等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
100〜180℃で解離するブロック剤は、触媒の存在下であってもよい。触媒の存在下で100〜180℃で解離するブロック剤としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、2−エチルヘキサノールのような低級及び高級アルコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ等のセロソルブ類;フリフリルアルコール、アルキル基置換フリフリルアルコール等の脂肪族又は複素環式アルコール類;フェノール、m−クレゾール、p−ニトロフェノール、p−クロロフェノール、ノニルフェノール等のフェノール類;メチルエチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、アセトンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム類;アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、マロン酸エチル等の活性メチレン化合物;その他、カプロラクタム等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ブロックポリイソシアネート硬化剤に解離触媒を用いる場合は、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫等の有機錫化合物や、N−メチルモルホリン等のアミン類、酢酸鉛やストロンチウム、コバルト、銅等の金属塩が使用できる。触媒の濃度は、通常カチオン電着塗料中の塗膜形成樹脂固形分に対し0.1〜6質量%である。
上記ブロックポリイソシアネート硬化剤のカチオン電着塗料組成物中への配合量は、塗料固形分100質量%に対して、下限10質量%、上限50質量%であることが好ましい。10質量%未満であると、硬化性不足の欠点を有し、50質量%を超えると、塗膜焼付け時の脱離物が大量に発生するため、塗膜の平滑性低下や大量のヤニ、煙による公害発生等の問題がある。上記下限は、15質量%であることがより好ましく、上記上限は、40質量%であることがより好ましい。
上記カチオン電着塗料組成物において、上記基体樹脂と上記硬化剤との質量比は、80:20〜60:40であることが好ましい。硬化剤の使用量が少な過ぎると、硬化性不足となり、多すぎると、塗膜焼付け時の脱離物が大量に発生し、塗膜の平滑性低下や大量のヤニ、煙による公害発生等の問題がある。
本発明におけるカチオン電着塗料組成物は、顔料分散ペーストを含有するものであってもよい。上記顔料分散ペーストは、顔料分散樹脂と適当な顔料との混合物である。
上記顔料分散樹脂としては特に限定されず、例えば、上記カチオン性樹脂等周知のものが含まれる。上記顔料としては特に限定されず、例えば、カーボンブラック、黒鉛、酸化チタン、亜鉛華等の着色顔料、ケイ酸アルミニウム、カオリン等の体質顔料、リンモリブデン酸アルミニウム等の合成顔料を挙げることができる。
上記顔料分散ペーストにおいて、上記顔料分散樹脂は、固形分として、下限1質量%(より好ましくは5質量%)、上限40質量%(より好ましくは30質量%)で含有されることが好ましい。また、上記顔料分散樹脂は、カチオン電着塗料組成物の全固形分に対して、下限1質量%、上限20質量%(より好ましくは15質量%)であることが好ましい。
上記顔料は、カチオン電着塗料組成物中の顔料と全樹脂の含有量比(質量比)が0/1〜1/3の範囲となるように含有される。1/3を超えると、耐ガスピン性及び耐食性が低下するおそれがある。
本発明におけるカチオン電着塗料組成物は、その他の添加剤を含有するものであってもよい。上記その他の添加剤は、従来からカチオン電着塗料組成物に配合されている公知の添加剤を挙げることができる。
上記添加剤としては特に限定されず、例えば、塗膜形成成分を水性媒体中に分散する際に中和剤として使用するギ酸、酢酸、乳酸、スルファミン酸等の酸類、界面活性剤等を挙げることができる。これらの添加剤の濃度は、通常、カチオン電着塗料組成物中の樹脂固形分100質量に対して、下限0.1質量%、上限15質量%であることが好ましい。上記上限は、5質量%であることがより好ましい。但し、酸類の添加量は、中和剤濃度として30mg当量/100g固形分以下とすることが好ましい。
本発明におけるカチオン電着塗料組成物中には、水の他に種々の有機溶剤を樹脂の溶解、粘度等の調整のために用いてもよい。
上記溶剤としては特に限定されず、例えば、炭化水素類(例えば、キシレン又はトルエン)、アルコール類(例えば、メチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール)、エーテル類(例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、ケトン類(例えば、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセチルアセトン)、エステル類(例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート)やそれらの混合物を挙げることができる。上記溶剤の使用量は、塗料全体に対して、下限0質量%、上限5質量%であることが好ましい。上記下限は、0.2質量%であることがより好ましく、上記上限は、2質量%であることがより好ましい。
上記第一の本発明のカチオン電着塗料組成物は、例えば、以下のようにして調製できる。先ず、基体樹脂と硬化剤とを混合し、その後無水マレイン酸等の酸無水物を添加して、導電性部を基体樹脂中に導入し、更に、中和剤を添加することによって水性媒体中に分散したメインエマルションを調製する。次いで、得られたエマルションと、上記顔料分散ペースト及び上記その他の添加剤と水とを混合することによってカチオン電着塗料組成物を調製することができる。
本発明において、カチオン電着塗料組成物を含む浴液を浴槽内に満たし、亜鉛鋼板からなる被塗物を上記浴槽内に浸漬して通電することにより上記亜鉛鋼板表面に電着塗膜を形成させる電着塗装は、塗料浴温20〜40℃、印加電圧50〜500V、通電時間は被塗物が塗料浴中に完全に浸漬している状態で30秒〜10分、等の従来から常用されている条件で行われる。必要な電着塗膜の厚さは、焼付け塗膜として、下限5μm(好ましくは10μm)、上限50μm(好ましくは35μm)である。
本発明における電着塗膜の焼付けは被塗物温度で、下限100℃(好ましくは130℃)、上限200℃(好ましくは160℃)であり、通常、5分〜50分間である。ただし、上記電着塗膜は、160℃以上の高温で焼付けた場合でも、耐食性が低下するものではない。
本発明のカチオン電着塗膜形成方法において、上記通電条件は、予め設定した印加電圧に到達せしめるまでの時間を5秒とした条件において、等速度で電圧を上昇させるものであり、塗装時の浴液の温度は、20〜40℃であり、塗装時の浴液の不揮発分濃度は、15〜25質量%であり、被塗物と極板との面積比は1/1〜2/1、極間距離は15cmである。これにより、つきまわり性及び耐ガスピン性をより精密に評価することができる。
第二の本発明は、基体樹脂を含むカチオン電着塗料液を浴槽内に満たし、亜鉛鋼板からなる被塗物を上記浴槽内に浸漬して通電することにより上記亜鉛鋼板表面に電着塗膜を形成させるカチオン電着塗膜形成方法であって、上記通電により析出形成する塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を制御することにより上記亜鉛鋼板表面での水素バブルにおける放電現象を阻止することを特徴とするカチオン電着塗膜形成方法である。
上記第二の本発明は、通電により析出形成する塗膜の電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を制御することにより上記亜鉛鋼板表面での水素バブルにおける放電現象を阻止し、耐ガスピン性を発現させることができ、また、つきまわり性を向上させることもできるものである。
上記第二の本発明においては、通電が経時的に進行するのに従って析出形成され膜厚を上げてゆく塗膜の単位質量あたりの電気抵抗値の上昇を制御する。上記制御は、種々の方法で行うことができるが、例えば、塗膜の単位質量あたりの電気抵抗値の急激な上昇の発生時期を、通電開始から4秒以上後とすることにより、行うことができる。
上記第二の本発明において、カチオン電着塗装における通電により析出形成する塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を制御することにより上記亜鉛鋼板表面での水素バブルにおける放電現象を阻止し、つきまわり性を向上させる方法としては、例えば、上記第一の本発明で述べたエレクトリックスルーホールを形成せしめることによって実現することができる。
上記第二の本発明で使用するカチオン電着塗料としては、例えば、上記第一の本発明で使用するカチオン電着塗料と同一のもの等を挙げることができる。また、上記第二の本発明におけるカチオン電着塗装も上記第一の本発明でのカチオン電着塗装と同様の方法によって行うことができる。
第三の本発明は、基体樹脂を含むカチオン電着塗料液を浴槽内に満たし、亜鉛鋼板からなる被塗物を上記浴槽内に浸漬して通電することにより上記亜鉛鋼板表面に電着塗膜を形成させるカチオン電着塗膜形成方法であって、上記通電により析出形成する塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)は、上記通電の開始から4秒以内においては1.0以下であり、上記通電の開始から10秒を経過した後においては2.0以上であることを特徴とするカチオン電着塗膜形成方法である。
即ち、上記第三の本発明は、上記通電により析出形成する塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)を上記通電の開始から4秒以内においては1.0以下になるように制御し、かつ、上記通電の開始から10秒を経過した後においては2.0以上となるように制御するものである。
上記第三の本発明は、4秒以内においては1.0以下になるように制御するものであるため、亜鉛鋼板表面での水素バブルにおける放電現象を阻止することができる。また、それとともに、10秒を経過した後においては2.0以上となるように制御するものであるため、10秒を経過した後では塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)が上昇していることとなる。このため、たとえ、形成された塗膜が薄膜であっても、高い抵抗値を示すこととなり、その結果、自動車ボディーの内板部等のような部位に塗膜を形成することが可能となり、つきまわり性を向上させることができる。従って、上記第三の本発明において、電着塗装の通電初期で、塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)を制御することにより、耐ガスピン性とつきまわり性とを両立することができる。
上記第三の本発明において、カチオン電着塗装における通電により析出形成する塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)を上記通電の開始から4秒以内においては1.0以下になるように制御し、かつ、上記通電の開始から10秒を経過した後においては2.0以上となるように制御する方法としては、例えば、上記第一の本発明で述べたエレクトリックスルーホールを形成せしめることによって実現することができる。
上記第三の本発明で使用するカチオン電着塗料としては、例えば、上記第一の本発明で使用するカチオン電着塗料と同一のもの等を挙げることができる。また、上記第三の本発明におけるカチオン電着塗装も上記第一の本発明でのカチオン電着塗装と同様の方法によって行うことができる。
第四の本発明は、基体樹脂を含むカチオン電着塗料液を浴槽内に満たし、亜鉛鋼板からなる被塗物を上記浴槽内に浸漬して通電することにより上記亜鉛鋼板表面に電着塗膜を形成させるカチオン電着塗膜形成方法であって、上記亜鉛鋼板表面の、上記通電により析出形成しつつ経時的に次第に膜厚を上げてゆく際に生じる塗膜の切れ目において、上記通電により発生する水素ガスが経時的に凝集して生じる水素バブルの存在を原因として発現する放電現象を払拭するために、上記塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を、通電開始から4秒間抑制することを特徴とするカチオン電着塗膜形成方法である。
上記第四の本発明は、塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を、通電開始から4秒間抑制するものである。即ち、従来の塗装方法に比べて、塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇の発生時点を遅く制御するものである。これにより、水素バブルの存在を原因として発現する放電現象を防止して耐ガスピン性を発現させることができ、また、つきまわり性を向上させることもできる。
上記第四の本発明において、カチオン電着塗装における通電により析出形成しつつ経時的に次第に膜厚を上げてゆく際に生じる塗膜の切れ目において、上記通電により発生する水素ガスが経時的に凝集して生じる水素バブルの存在を原因として発現する放電現象を払拭するために、上記塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を、通電開始から4秒間抑制する方法としては、例えば、上記第一の本発明で述べたエレクトリックスルーホールを形成せしめることによって実現することができる。
上記第四の本発明で使用するカチオン電着塗料としては、例えば、上記第一の本発明で使用するカチオン電着塗料と同一のもの等を挙げることができる。また、上記第四の本発明におけるカチオン電着塗装も上記第一の本発明でのカチオン電着塗装と同様の方法によって行うことができる。
第五の本発明は、基体樹脂を含むカチオン電着塗料であって、上記カチオン電着塗料は、カチオン電着塗装中の通電により析出形成する塗膜中にエレクトリックスルーホールを形成せしめて上記塗膜の導電性を確保することができるものであり、かつ、上記塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を抑制することができることを特徴とするカチオン電着塗料である。
上記第五の本発明のカチオン電着塗料は、カチオン電着塗装中の通電により析出形成する塗膜中にエレクトリックスルーホールを形成せしめて上記塗膜の導電性を確保することができるものであり、かつ、上記塗膜の単位質量あたりの電気抵抗値の上昇を抑制することができるものであることから、優れた耐ガスピン性及びつきまわり性を有するものである。
上記第五の本発明のカチオン電着塗料における基体樹脂は、上記第一の本発明における基体樹脂と同様のものを挙げることができる。なかでも、上記基体樹脂がアミン変性エポキシ樹脂であり、上記エレクトリックスルーホールは、上記アミン変性エポキシ樹脂の末端アミノ基近傍に酸基(−COO)を存在せしめたものであることが好ましい。これにより、よりガスピンの発生を抑制することができ、また、つきまわり性を充分に確保することもできる。
上記第五の本発明において、上記酸基(−COO)としては、例えば、酸無水物とアミノ基との反応により生じたものを挙げることができる。上記酸無水物としては、例えば、上記第一の本発明における酸無水物を挙げることができる。
上記第五の本発明のカチオン電着塗料におけるエレクトリックスルーホールは、上記第一の本発明におけるエレクトリックスルーホールと同様のものである。なかでも、酸基を含有する水難溶性樹脂に由来する酸基を存在せしめたもの、両性イオン基含有樹脂に由来する酸基を存在せしめたものが好ましい。これにより、よりガスピンの発生を抑制することができ、また、つきまわり性を充分に確保することもできる。
上記第五の本発明のカチオン電着塗料は、例えば、上記第一の本発明におけるカチオン電着塗料と同様のものを挙げることができる。
第六の本発明は、カチオン電着塗装中の通電により析出形成する塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を制御することができるものであることを特徴とするカチオン電着塗料である。
上記カチオン電着塗料を用いることにより、塗膜の電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を制御することができ、その結果、上記亜鉛鋼板表面での水素バブルにおける放電現象を阻止することができ、耐ガスピン性を向上させることができる。上記第六の本発明のカチオン電着塗料は、例えば、上記第二の本発明におけるカチオン電着塗料と同様のものを挙げることができる。
第七の本発明は、カチオン電着塗装中の通電により析出形成する塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)が上記通電の開始から4秒以内においては1.0以下とすることができ、上記通電の開始から10秒を経過した後においては2.0以上とすることができるものであることを特徴とするカチオン電着塗料である。
上記第七の本発明のカチオン電着塗料を用いることにより、耐ガスピン性とつきまわり性とを両立することができる。上記第七の本発明のカチオン電着塗料は、例えば、上記第三の本発明におけるカチオン電着塗料と同様のものを挙げることができる。
第八の本発明は、カチオン電着塗装中の通電により析出形成しつつ経時的に次第に膜厚を上げてゆく際に生じる塗膜の切れ目において、上記通電により発生する水素ガスが経時的に凝集して生じる水素バブルの存在を原因として発現する放電現象を払拭するために、上記塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を、通電開始から4秒間抑制することができるものであることを特徴とするカチオン電着塗料である。
上記第八の本発明のカチオン電着塗料を用いることにより、水素バブルの存在を原因として発現する放電現象を防止し、その結果、耐ガスピン性を発現させることができる。上記第八の本発明のカチオン電着塗料は、例えば、上記第四の本発明におけるカチオン電着塗料と同様のものを挙げることができる。
上記第七及び八の本発明のカチオン電着塗料において、上記通電条件は、予め設定した印加電圧に到達せしめるまでの時間を5秒とした条件において、等速度で電圧を上昇させるものであり、塗装時の浴液の温度は、20〜40℃であり、塗装時の浴液の不揮発分濃度は、15〜25質量%であり、被塗物と極板との面積比は1/1〜2/1、極間距離は15cmであることが好ましい。
本発明のカチオン電着塗膜形成方法は、通電により析出形成しつつ経時的に次第に膜厚を上げてゆく際に生じる塗膜の切れ目において、上記通電により発生する水素ガスが経時的に凝集して生じる水素バブルの存在を原因として発現する放電現象を払拭するために、上記塗膜中にエレクトリックスルーホールを形成せしめて上記塗膜の導電性を確保し、これにより、上記塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を抑制することができる方法である。即ち、上記エレクトリックスルーホールを形成せしめて塗膜の導電性を確保するものであるため、放電エネルギーによる塗膜の部分的なプレキュアを抑制することができる。その結果、電着塗膜の硬化後において、ピンホールが発生することを抑制することができ、ピンホールに起因する塗膜の外観不良を防止することができることから、優れた耐ガスピン性を有する方法である。また、上記エレクトリックスルーホールを形成せしめて塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を抑制するものであるため、形成される塗膜が薄膜であっても比較的高い抵抗値を示すものとなり、その結果、未だ増膜されていない箇所(例えば、自動車ボディーの内板部等)への電着が可能となり、つきまわり性も向上させることができる。また、防食性や防錆性等の基本性能を保持する、という電着塗装の基本性能に悪影響を全く与えることない方法でもある。従って、自動車ボディ等に用いられる亜鉛鋼板に対して好適に適用することができる方法である。
本発明のカチオン電着塗膜形成方法は、上述の構成よりなるので、耐ガスピン性及びつき回り性に優れた方法であり、かつ、電着塗装の基本性能に悪影響を全く与えることない方法である。
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味する。
製造例1 カチオン性基を有する変性エポキシ樹脂1の製造
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計及び滴下漏斗を装備したフラスコに、液状エポキシ940部、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKと略す)59.5部及びメタノール24.4部を仕込んだ。反応混合物は撹拌下室温から40℃まで昇温したあと、ジブチル錫ラウレート0.01部及びトリレンジイソシアネート(以下TDIと略す)21.8部を投入した。40〜45℃で30分間反応を継続した。反応はIRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失するまで継続した。
上記反応物にポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル82.0部、メチレンジイソシアネート(以下MDIと略す)125.0部を添加した。反応は55℃〜60℃で行い、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失するまで継続した。
続いて昇温し100℃でN,N−ジメチルベンジルアミン2.0部投入。130℃で保持、分留管を用いメタノールを分留すると共に反応させたところ、エポキシ当量は286となった。
その後、MIBKで不揮発分91.2%となるまで希釈し反応混合物を冷却、ビスフェノールA268.1部と2−エチルヘキサン酸93.6部を投入した。反応は120℃〜125℃で行いエポキシ当量が1490となったところでMIBKで不揮発分85.3%となるまで希釈し反応混合物を冷却した。
ジエチレントリアミンの1級アミンをMIBKブロックしたもの93.6部、N−メチルエタノールアミン53.8部を加え、120℃で1時間反応させた。その後、カチオン性基を有するエポキシ変性基体樹脂(樹脂固形分85.1%)を得た。
製造例2 カチオン性基を有する変性エポキシ樹脂2の製造
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計及び滴下漏斗を装備したフラスコに、液状エポキシ546.2部、MIBK36.7部及びメタノール19.3部を仕込んだ。反応混合物は撹拌下室温から50℃まで昇温したあと、ジブチル錫ラウレート0.07部及びTDI43.6部を投入した。40〜45℃で30分間反応を継続した。反応はIRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失するまで継続した。
続いて昇温し100℃でN,N−ジメチルベンジルアミン0.8部投入。130℃で保持、分留管を用いメタノールを分留すると共に反応させたところ、エポキシ当量は242となった。
その後、MIBKで不揮発分82.9%となるまで希釈し反応混合物を冷却、ビスフェノールA160.2部と2−エチルヘキサン酸52.6部を投入した。反応は120℃〜125℃で行いエポキシ当量が1200となったところでMIBKで不揮発分80.84%となるまで希釈し反応混合物を冷却した。
ジエチレントリアミンの1級アミンをMIBKブロックしたもの43.6部、N−メチルエタノールアミン36.3部を加え、120℃で1時間反応させた。その後、カチオン性基を有するエポキシ変性基体樹脂を得た。
製造例3 ブロックイソシアネート硬化剤の製造
MDI1333部及びMIBK276.1部とジブチル錫ラウレート2部を反応容器に仕込み、これを85〜95℃まで加熱した後、カプロラクタムのエチレングリコールモノブチルエーテル溶液(当量比20/80)1170部を2時間かけて滴下した。滴下終了後100℃に昇温し一時間保温した。IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認しその後MIBK347.6部を投入しブロックイソシアネート硬化剤を得た。
製造例4 顔料分散樹脂の製造
撹拌装置、冷却管、窒素導入管及び温度計を装備した反応容器にイソホロンジイソシアネート(以下IPDIと略す)2220部MIBK342.1部を仕込み、昇温し50℃でジブチル錫ラウレート2.2部を投入し60℃でメチルエチルケトンオキシム(以下MEKオキシムと略)878.7部を仕込んだ。その後、60℃で1時間保温し、NCO当量が348となっていることを確認し、ジメチルエタノールアミン890部を投入した。60℃で1時間保温しIRでNCOピークが消失していることを確認後MEKオキシム17.8部エチレングリコールモノエチルエーテル204.2部投入した。60℃を超えないよう冷却しながら50%乳酸1872.6部と脱イオン水273.8部を投入して4級化剤を得た。
撹拌装置、冷却管、窒素導入管及び温度計を装備した反応容器に、液状エポキシ940.0部メタノール38.5部で希釈した後、ここへジブチル錫ジラウレート0.1部を加えた。これを50℃に昇温した後、TDI87.1部投入更に昇温した。100℃でN,N−ジメチルベンジルアミン1.4部を加え130℃で2時間保温した。このとき分留管によりメタノールを分留した。
これを115℃まで冷却し、MIBKを固形分濃度90%になるまで仕込み、その後ビスフェノールA270.3部、2−エチルヘキサン酸39.2部を仕込み125℃で2時間加熱攪拌した後、製造例3のブロックイソシアネート硬化剤516.4部を30分間かけて滴下、その後30分間加熱攪拌した。
ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル1506部を徐々に加え溶解させた。90℃まで冷却後前述の四級化剤を加え、70〜80℃にキープして酸価2以下を確認して顔料分散樹脂を得た。(樹脂固形分30%)
製造例5 顔料分散ペーストの製造
サンドグラインドミルに製造例4で得た顔料分散用樹脂を106.9部、カーボンブラック1.6部、カオリン40部、二酸化チタン55.4部、リンモリブデン酸アルミニウム3部、ジブチル錫オキサイド11.7部及び脱イオン水11.9部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分60%)。
製造例6 アミノポリエーテル無水酸導入体の製造
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計及び滴下漏斗を装備したフラスコに、アミン価255のアミノポリエーテル(三洋化成社製のジエチレントリアミン・プロピレンオキサイド付加物、商品名:AP−10,分子量684)362部を90と無水マレイン酸49部を90℃で30分間混合しアミノポリエーテル無水酸導入体を得た。
製造例7 ヒドロキシ酸導入ブロックイソシアネートの製造
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計及び滴下漏斗を装備したフラスコに、イソホロンジイソシアネート226.6質量部,MIBK56.7質量部,ジブチル錫ラウレート0.2質量部を仕込みメチルエチルケトンオキシム(以下MEKオキシムと略)142.1質量部を40℃で攪拌しながら滴下した。その後、グリコール酸31.0部を仕込み70℃〜75℃で10時間攪拌し、ヒドロキシ酸導入ブロックイソシアネートを得た。
製造例8 4級アンモニウム樹脂の製造
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計及び滴下漏斗を装備したフラスコに、液状エポキシ941.1部、MIBK155.6部及びビスフェノールA355.2部、2−エチルヘキサン酸103.7部を投入した。100℃まで昇温したあと、2エチル4メチルイミダゾール2質量%のキシロール溶液を7.5質量部加え、更に145℃まで昇温し保持した。エポキシ当量が1296となったところでMIBKで不揮発分70%となるまで希釈し反応混合物を冷却して4級アンモニウム樹脂を得た。
実施例1 カチオン電着塗料組成物の製造
製造例1で得られたカチオン性基を有する変性エポキシ樹脂1と製造例3で得られたブロックイソシアネート硬化剤とを固形分比で70/30で均一になるよう混合した。その後、85℃〜90℃で脱イオン水を予め無水マレイン酸の1.5倍当量加え30分間攪拌した後、無水マレイン酸を樹脂固形分に対し酸価3.9となるように加えた。これに中和率が37.7%になるよう氷酢酸を、更に脱イオン水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が38%のエマルションを得た。このエマルション1758.2部及び製造例5で得られた顔料分散ペースト221部と、脱イオン水2020.7部を混合して、固形分20質量%のカチオン電着塗料組成物を得た。このカチオン電着塗料組成物における顔料と樹脂固形分との比率は1/7.0であった。
実施例2 カチオン電着塗料組成物の製造
製造例1で得られたカチオン性基を有する変性エポキシ樹脂1と製造例3で得られたブロックイソシアネート硬化剤とを固形分比で70/30で均一になるよう混合し、製造例6で得られたアミノポリエーテル無水酸導入体を樹脂固形分に対し酸価3.9となるように加えた。これに中和率が37.7%になるよう氷酢酸を、更に脱イオン水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が38%のエマルションを得た。このエマルション1758.2部及び製造例5で得られた顔料分散ペースト221部と、脱イオン水2020.7部を混合して、固形分20質量%のカチオン電着塗料組成物を得た。このカチオン電着塗料組成物における顔料と樹脂固形分との比率は1/7.0であった。
実施例3 カチオン電着塗料組成物の製造
製造例1で得られたカチオン性基を有する変性エポキシ樹脂1に製造例7で得られたヒドロキシ酸導入ブロックイソシアネートをMEQ(A)が塗料固形分中の3.9になるよう仕込み、更に変性エポキシ基体樹脂1と、ヒドロキシ酸導入ブロックイソシアネートと製造例3で得られたブロックイソシアネート硬化剤の合計量が70/30となるようブロックイソシアネート硬化剤を投入して90℃で30分間攪拌した後、これに中和率が37.7%になるよう氷酢酸を、更に脱イオン水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が38%のエマルションを得た。このエマルション1758.2部及び製造例5で得られた顔料分散ペースト221部と、脱イオン水2020.7部を混合して、固形分20質量%のカチオン電着塗料組成物を得た。このカチオン電着塗料組成物における顔料と樹脂固形分との比率は1/7.0であった。
実施例4 カチオン電着塗料組成物の製造
製造例1で得られたカチオン性基を有する変性エポキシ樹脂1と総樹脂量の5質量%に相当する製造例8の4級アンモニウム樹脂を混合し、更に基体樹脂とブロックイソシアネート硬化剤の比率が70/30となるよう製造例3のブロックイソシアネート硬化剤を投入して90℃で30分間攪拌した後、これに中和率が37.7%になるよう氷酢酸を、更に脱イオン水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が38%のエマルションを得た。このエマルション1758.2部及び製造例5で得られた顔料分散ペースト221部と、脱イオン水2020.7部を混合して、固形分20質量%のカチオン電着塗料組成物を得た。このカチオン電着塗料組成物における顔料と樹脂固形分との比率は1/7.0であった。
実施例5 カチオン電着塗料組成物の製造
製造例1で得られたカチオン性基を有する変性エポキシ樹脂1と製造例3で得られたブロックイソシアネート硬化剤とを固形分比で70/30で均一になるよう混合し、更に平均分子量2000のポリエチレングリコールを加えた。これに金属亜鉛として500ppmとなるよう酢酸亜鉛と中和率が37.7%になるよう氷酢酸を、更に脱イオン水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が38%のエマルションを得た。このエマルション1758.2部及び製造例5で得られた顔料分散ペースト221部と、脱イオン水2020.7部を混合して、固形分20質量%のカチオン電着塗料組成物を得た。このカチオン電着塗料組成物における顔料と樹脂固形分との比率は1/7.0であった。
比較例1
実施例1において、脱イオン水及び無水マレイン酸を混合しない以外は同様にして、カチオン電着塗料組成物を得た。
比較例2
製造例6で得られたアミノポリエーテル無水酸導入体を混合しない以外は実施例2と同様にして、カチオン電着塗料組成物を得た。
上記実施例1、2、3、4、5及び比較例1、2で得られたカチオン電着塗料組成物について下記の項目について評価を行った。その結果を表1に示した。
(つきまわり性)
つきまわり性は、いわゆる4枚ボックス法により評価した。すなわち、図4に示すように、4枚のリン酸亜鉛処理鋼板(JIS G 3141 SPCC−SDのサーフダインSD−5000(日本ペイント社製)処理)31〜34を、立てた状態で間隔20mmで平行に配置し、両側面下部及び底面を布粘着テープ等の絶縁体で密閉したボックス30を用いる。なお、鋼板34以外の鋼板31〜33には下部に8mmφの貫通穴35が設けられている。このボックス30を、図5に示すように各実施例又は比較例の電着塗料37を入れた電着塗装容器36内に浸漬し、各貫通穴35からのみ電着塗料37がボックス30内に侵入するようにする。そして、各鋼板を電気的に接続し、最も近い鋼板31との距離が150mmとなるように対極38を配置した。各鋼板31〜34を陰極、対極38を陽極として電圧を印加して鋼板にカチオン電着塗装を行った。塗装は、印加開始から5秒間で鋼板31のA面に形成される塗膜の膜厚が20μmに達する電圧まで昇圧し、その後175秒間その電圧を維持することにより行った。このときの電着塗装設定温度は28℃に調節した。塗装後の各鋼板は、水洗した後、160℃で20分間焼き付けし、空冷後、対極38に最も近い鋼板31のA面に形成された塗膜の膜厚と、対極38から最も遠い鋼板34のG面に形成された塗膜の膜厚とを測定し、膜厚(G面)/膜厚(A面)の比(G/A値)によりつきまわり性を評価した。この値が大きいほどつきまわり性が良いと評価できる。
(ガスピンホール性)
化成処理を行った合金化溶融亜鉛めっき鋼板に、200V、220V、240Vへそれぞれ5秒で昇圧後、175秒で各実施例又は比較例の塗料を電着した後、水洗し、160℃で10分間焼き付けし、塗面状態を観察した。なお図5の容器36を用い、極間距離は15cm、液深は10cm、対面となるアノード/カソード比が1/1となるような電極面積とした。クレーターが発生した電圧が高いほどガスピンホール性が良いと評価できる。評価基準は、以下のとおりである。
◎;ピンホールが0.1個/cm未満
〇;ピンホールが0.1個/cm以上〜1.0個/cm未満
△;ピンホールが1.0個/cm以上〜5.0個/cm未満
×;ピンホールが5.0個/cm以上
(単位質量当りの電気抵抗値)
図5の容器を用い、被塗物面積140cm、極/被塗物=1/2の面積比とし、極間距離15cmとなるように、化成処理を行った合金化溶融亜鉛メッキ鋼板を浸漬し塗装した。塗装電圧は所定の電圧までは5秒管で等速に上昇しその後所定電圧を保持するようにした。鋼板の質量を予め秤量し、通電時間は2秒から3秒まで1秒毎の水準とし、塗装終了時の残余電流値を記録後、水洗し、160℃で20分間焼き付けて、空冷後塗膜の質量を測定した。なお、所定の電圧は3分間で15μmの膜厚を得られる電圧とした。
Figure 2005105413
V:塗装電圧(V)
S:被塗物面積(cm
I:残余電流(A)
W:塗膜質量(mg)
Figure 2005105413
表1から、実施例ではつきまわり性を損なうことなく耐ガスピン性が向上していた。一方、比較例1では耐ガスピン性に劣り、比較例2ではつきまわり性に劣っていた。
この結果から、実施例においてつきまわり性を損なうことなく耐ガスピン性が向上していることがわかる。また、実施例では、単位質量当たりの膜抵抗値は、4秒後では抑制され、10秒後では上昇していた。
本発明のカチオン電着塗膜形成方法及びカチオン電着塗料は、自動車ボディ等の大型被塗物の下塗り塗膜の形成に好適に適用できるものである。
カチオン電着塗装の概念図である。 カチオン電着塗装における塗膜の電気抵抗値(KΩ・cm)(縦軸)と通電開始からの経過時間(秒)(横軸)との関係を示す図である。 本発明のカチオン電着塗膜形成方法によって塗膜が析出形成する様子を示した模式図である。 つきまわり性を評価する際に用いるボックスの一例を示す斜視図である。 つきまわり性の評価方法を示す説明図である。
符号の説明
1 析出塗膜
2 水素バブル
3 電流
4 火花放電
5 水素ガスの抜け穴
11 従来の塗膜の抵抗上昇曲線
12 本発明の抵抗上昇曲線
21 電流
22 導電性部
23 被塗物
24 水素バブル
25 エレクトリックスルーホール
26 肥大化した水素バブル
30 ボックス
31 亜鉛鋼板
32 亜鉛鋼板
33 亜鉛鋼板
34 亜鉛鋼板
35 貫通穴
36 電着塗装容器
37 電着塗料
38 対極

Claims (18)

  1. 基体樹脂を含むカチオン電着塗料液を浴槽内に満たし、亜鉛鋼板からなる被塗物を前記浴槽内に浸漬して通電することにより前記亜鉛鋼板表面に電着塗膜を形成させるカチオン電着塗膜形成方法であって、
    前記亜鉛鋼板表面の、前記通電により析出形成しつつ経時的に次第に膜厚を上げてゆく際に生じる塗膜の切れ目において、前記通電により発生する水素ガスが経時的に凝集して生じる水素バブルの存在を原因として発現する放電現象を払拭するために、前記塗膜中にエレクトリックスルーホールを形成せしめて前記塗膜の導電性を確保し、
    これにより、前記塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を抑制する
    ことを特徴とするカチオン電着塗膜形成方法。
  2. 前記塗膜を構成する成分が前記基体樹脂からなり、前記基体樹脂がアミン変性エポキシ樹脂であり、前記エレクトリックスルーホールは、前記アミン変性エポキシ樹脂の末端アミノ基近傍に酸基(−COO)を存在せしめたものである請求項1記載のカチオン電着塗膜形成方法。
  3. 酸基(−COO)は、酸無水物とアミノ基との反応により生じたものである請求項2記載のカチオン電着塗膜形成方法。
  4. 前記エレクトリックスルーホールは、酸基を含有する水難溶性樹脂に由来する酸基を存在せしめたものである請求項1記載のカチオン電着塗膜形成方法。
  5. 前記エレクトリックスルーホールは、両性イオン基含有樹脂に由来する酸基を存在せしめたものである請求項1記載のカチオン電着塗膜形成方法。
  6. 基体樹脂を含むカチオン電着塗料液を浴槽内に満たし、亜鉛鋼板からなる被塗物を前記浴槽内に浸漬して通電することにより前記亜鉛鋼板表面に電着塗膜を形成させるカチオン電着塗膜形成方法であって、
    前記通電により析出形成する塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を制御することにより前記亜鉛鋼板表面での水素バブルにおける放電現象を阻止する
    ことを特徴とするカチオン電着塗膜形成方法。
  7. 基体樹脂を含むカチオン電着塗料液を浴槽内に満たし、亜鉛鋼板からなる被塗物を前記浴槽内に浸漬して通電することにより前記亜鉛鋼板表面に電着塗膜を形成させるカチオン電着塗膜形成方法であって、
    前記通電により析出形成する塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)は、前記通電の開始から4秒以内においては1.0以下であり、前記通電の開始から10秒を経過した後においては2.0以上である
    ことを特徴とするカチオン電着塗膜形成方法。
  8. 基体樹脂を含むカチオン電着塗料液を浴槽内に満たし、亜鉛鋼板からなる被塗物を前記浴槽内に浸漬して通電することにより前記亜鉛鋼板表面に電着塗膜を形成させるカチオン電着塗膜形成方法であって、
    前記亜鉛鋼板表面の、前記通電により析出形成しつつ経時的に次第に膜厚を上げてゆく際に生じる塗膜の切れ目において、前記通電により発生する水素ガスが経時的に凝集して生じる水素バブルの存在を原因として発現する放電現象を払拭するために、前記塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を、通電開始から4秒間抑制する
    ことを特徴とするカチオン電着塗膜形成方法。
  9. 前記通電条件は、予め設定した印加電圧に到達せしめるまでの時間を5秒とした条件において、等速度で電圧を上昇させるものであり、
    塗装時の浴液の温度は、20〜40℃であり、
    塗装時の浴液の不揮発分濃度は、15〜25質量%であり、
    被塗物と極板との面積比は1/1〜2/1、極間距離は15cmである
    請求項7又は8記載のカチオン電着塗膜形成方法。
  10. 基体樹脂を含むカチオン電着塗料であって、
    前記カチオン電着塗料は、カチオン電着塗装中の通電により析出形成する塗膜中にエレクトリックスルーホールを形成せしめて前記塗膜の導電性を確保することができるものであり、かつ、前記塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を抑制することができることを特徴とするカチオン電着塗料。
  11. 前記塗膜を構成する成分が前記基体樹脂からなり、前記基体樹脂がアミン変性エポキシ樹脂であり、前記エレクトリックスルーホールは、前記アミン変性エポキシ樹脂の末端アミノ基近傍に酸基(−COO)を存在せしめたものである請求項10記載のカチオン電着塗料。
  12. 酸基(−COO)は、酸無水物とアミノ基との反応により生じたものである請求項11記載のカチオン電着塗料。
  13. 前記エレクトリックスルーホールは、酸基を含有する水難溶性樹脂に由来する酸基を存在せしめたものである請求項10記載のカチオン電着塗料。
  14. 前記エレクトリックスルーホールは、両性イオン基含有樹脂に由来する酸基を存在せしめたものである請求項10記載のカチオン電着塗料。
  15. カチオン電着塗装中の通電により析出形成する塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を制御することができるものである
    ことを特徴とするカチオン電着塗料。
  16. カチオン電着塗装中の通電により析出形成する塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)が前記通電の開始から4秒以内においては1.0以下とすることができ、前記通電の開始から10秒を経過した後においては2.0以上とすることができるものである
    ことを特徴とするカチオン電着塗料。
  17. カチオン電着塗装中の通電により析出形成しつつ経時的に次第に膜厚を上げてゆく際に生じる塗膜の切れ目において、前記通電により発生する水素ガスが経時的に凝集して生じる水素バブルの存在を原因として発現する放電現象を払拭するために、前記塗膜の単位質量(mg)あたりの電気抵抗値(KΩ・cm)の上昇を、通電開始から4秒間抑制することができるものである
    ことを特徴とするカチオン電着塗料。
  18. 前記通電条件は、予め設定した印加電圧に到達せしめるまでの時間を5秒とした条件において、等速度で電圧を上昇させるものであり、
    塗装時の浴液の温度は、20〜40℃であり、
    塗装時の浴液の不揮発分濃度は、15〜25質量%であり、
    被塗物と極板との面積比は1/1〜2/1、極間距離は15cmである
    請求項16又は17記載のカチオン電着塗料。
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