JP2005104865A - 光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルまたはその塩 - Google Patents

光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルまたはその塩 Download PDF

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Abstract

【課題】2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルの(R)−体および(S)−体の両光学異性体を収率よく、工業的に有利に製造すること。
【解決手段】2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルまたはその塩に含まれる立体異性体を分離することを特徴とする光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルまたはその塩の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルまたはその塩およびそれらの製造方法に関する。
本発明により提供される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルまたはその塩のうち、(2R)−2−[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリルは、μ−選択的オピオイド受容体作用薬の合成中間体として有用な(D)−ホモフェニルアラニンに誘導可能であり(参考例3および参考例4参照)、また(2S)−2−[(S)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリルは、鎮痛薬の合成中間体として有用な(L)−ホモフェニルアラニンに誘導可能である[ジャーナル オブ メディシナル ケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry)、第45巻、1395頁(2002年)および国際出願WO98/05421参照]。
従来、光学活性2−アミノ−4−アリールブチロニトリルの製造方法としては、(1)ラセミ体の2−アミノ−4−アリールブチロニトリルに微生物を接触させて、(S)体を選択的に加水分解し、(R)体をそのまま残存させることにより取得する方法(例えば、特許文献1参照)、または、(2)ラセミ体の2−アミノ−4−アリールブチロニトリルに酵素を接触させて、(S)体のアミノ基を選択的にアシル化し、(R)体をそのまま残存させることにより取得する方法(例えば、非特許文献1参照)が知られている。
特開平2−31694号公報(第5頁) テトラヘドロン:アシンメトリー(Tetrahederon:Asymmetry)、2001年、第12巻、p.222
上記の方法(1)は、2−アミノ−4−アリールブチロニトリルの(R)−体のみが得られる方法であり、しかも加水分解反応における基質濃度が極めて希薄(0.01%)であって生産性が低い。また、上記の方法(2)も、2−アミノ−4−アリールブチロニトリルの(R)−体のみが得られる方法であり、しかもその光学純度が46%e.e.と低い。これらの従来法は2−アミノ−4−アリールブチロニトリルの(R)−体および(S)−体の両異性体を工業的に有利に製造し得る方法ではない。
本発明の目的は、医薬の合成中間体として有用な新規物質である光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルまたはその塩を提供することにある。
本発明の他の目的は、2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルまたはその塩の(R)−体および(S)−体の両光学異性体を収率よく、工業的に有利に製造し得る方法を提供することにある。
本発明は、一般式(I−1)
Figure 2005104865
(式中、R は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、ニトロ基または保護されていてもよい水酸基を表し、R はアリール基を表す。)
で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル[以下、これを光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I−1)と称する]、一般式(I−2)
Figure 2005104865
(式中、R およびR は前記定義のとおりである。)
で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル[以下、これを光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I−2)と称する]、一般式(I−3
Figure 2005104865
(式中、R およびR は前記定義のとおりである。)
で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル[以下、これを光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I−3)と称する]または一般式(I−4)
Figure 2005104865
(式中、R およびR は前記定義のとおりである。)
で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル[以下、これを光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I−4)と称する]である。
本発明は、一般式(II−1)
Figure 2005104865
(式中、R およびR は前記定義のとおりであり、X はアニオンを表す。)
で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩[以下、これを光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II−1)と称する]、一般式(II−2)
Figure 2005104865
(式中、R 、R およびX は前記定義のとおりである。)
で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩[以下、これを光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II−2)と称する]、一般式(
II−3)
Figure 2005104865
(式中、R 、R およびX は前記定義のとおりである。)
で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩[以下、これを光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II−3)と称する]または一般式(II−4)
Figure 2005104865
(式中、R 、R およびX は前記定義のとおりである。)
で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩[以下、これを光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II−4)と称する]である。
本発明は、一般式(I)
Figure 2005104865
(式中、R およびR は前記定義のとおりであり、*は不斉炭素を表す。)
で示される2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル[以下、これを2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I)と称する]に含まれる立体異性体を分離することを特徴とする光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I−1)、光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I−2)、光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I−3)または光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I−4)の製造方法である。
本発明は、光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I−1)、光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I−2)、光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I−3)および光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I−4)から選ばれる少なくとも1種の光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルを溶媒中でルイス酸の存在下または不存在下に、該光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルの置換アミノ基が有する立体構造を保持したままで異性化することを特徴とする2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I)の製造方法である。
本発明は、一般式(II)
Figure 2005104865
(式中、R 、R 、X および*は前記定義のとおりである。)
で示される2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩[以下、これを2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II)と称する]に含まれる立体異性体を分離することを特徴とする光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II−1)、光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II−2)、光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II−3)または光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II−4)の製造方法である。
本発明は、光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II−1)、光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II−2)、光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II−3)および光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II−4)から選ばれる少なくとも1種の光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩を溶媒中でルイス酸の存在下または不存在下に、該光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩の置換アミノ基が有する立体構造を保持したままで異性化することを特徴とする2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II)の製造方法である。
本発明によれば、医薬の合成中間体として有用な新規物質である光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルまたはその塩が提供される。
本発明によれば、2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルまたはその塩の(R)−体および(S)−体の両光学異性体を収率よく、工業的に有利に製造することができる。
上記一般式中、X が表すアニオンとしては、例えば、F 、Cl 、Br 、I などのハロゲン原子のアニオン;HSO 、SO 2− 、NO 、PO 3− などの鉱酸のアニオン;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、カンファースルホン酸などの有機スルホン酸のアニオン;酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、酒石酸、安息香酸、2−フェニルプロピオン酸、マンデル酸などのカルボン酸のアニオンなどが挙げられる。
が表すハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
が表すアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基などが挙げられる。
が表す保護されていてもよい水酸基の保護基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、メトキシメチル基などの置換基を有していてもよいアルキル基;ベンジル基、2,6−ジメチルベンジル基、4−メトキシベンジル基などの置換基を有していてもよいアラルキル基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基などの三置換シリル基;アセチル基、トリクロロアセチル基、ベンゾイル基などのアシル基などが挙げられる。
が表すアリール基としては、例えばフェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、3−メトキシフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられる。
次に、本発明の製造方法における各工程について順を追って説明する。
2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I)の立体異性体の分離工程
2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I)から、例えば、その溶媒に対する溶解度の差を利用して立体異性体を分離することができる。また、クロマトグラフィーにより光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I−1)、光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I−2)、光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I−3)または光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I−4)を分離することも可能である。
溶媒に対する溶解度の差を利用して2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I)中に含有される立体異性体のうち、難溶性の立体異性体を分離する場合に用いることのできる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール;アセトン、2−ブタノンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチルなどのエステル;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類またはこれらの混合溶媒などが挙げられる。これらの中でも、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類を用いるのが好ましく、ジイソプロピルエーテルを用いるのが特に好ましい。溶媒の使用量は、2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I)の溶解度によって異なるが、2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I)に対して5重量倍〜20重量倍の範囲が好ましい。
本工程では、例えば、2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I)を溶媒に加え、用いる溶媒の沸点を超えない範囲の温度で加熱して溶解させた後、得られた溶液を冷却することにより、用いる溶媒に対して難溶性の立体異性体を析出させる。また、必要に応じ、この溶液に用いる溶媒に対して難溶性の立体異性体を種結晶として少量添加して、該難溶性の立体異性体を析出させることもできる。析出した立体異性体の分離方法としては、ろ過、遠心分離、デカンテーションなどの通常の分離方法を採用することができる。
このようにして得られた立体異性体は、そのまま次の工程に付してもよいが、例えば再結晶などの精製操作を行うことにより光学純度をさらに高めることが可能である。
なお、難溶性の立体異性体を析出させた後、濾液中に残存する易溶性の立体異性体と難溶性の立体異性体の混合物は、濾液を濃縮して該混合物を回収し、次いで後述する異性化工程でシアノ基のα−位の不斉炭素を置換アミノ基の立体構造を保持したままで異性化させた後、再度、本工程の方法で立体異性体の分離工程に付すことによって再使用することができる。
2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルの異性化工程
本工程では、例えば、シアノ基のα−位の不斉炭素の立体構造が所望の立体構造ではない2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル、または上記の立体異性体の分離工程で再結晶法によりジアステレオマーの分離を行って難溶性の立体異性体を分離した後、再結晶母液中に残留している析出しなかった難溶性の立体異性体と易溶性の立体異性体との混合物、すなわち光学的に純粋でない2−アミノ−4−アリールブチロニトリルを原料にして用いることができる。
本工程は、20〜40℃の範囲で実施するのが好ましい。
本工程は、溶媒の存在下で、ルイス酸の存在下または不存在下に行う。ルイス酸の不存在下において、溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール類などのプロトン性溶媒またはこれらの混合溶媒が用いられる。また、ルイス酸の存在下において、溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、イソプロピルベンゼンなどの芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族ハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類などの非プロトン性溶媒またはこれらの混合溶媒などが用いられる。溶媒の使用量は特に限定されないが、通常は光学活性な2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルまたは該光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルのシアノ基のα−位の不斉炭素が光学的に純粋でないジアステレオマー混合物に対して10〜100倍重量の範囲であるのが好ましい。
また、本工程において用いられるルイス酸としては、例えば塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムなどが挙げられる。ルイス酸の使用量は、経済性の観点から、2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルに対して0.01〜0.5倍モルの範囲であるのが好ましい。
本工程では、例えば、光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルまたは該光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルのシアノ基のα−位が光学的に純粋でない立体異性体の混合物を溶媒に溶解し、必要に応じてルイス酸を添加し、所定温度で撹拌して行うのが好ましい。得られた反応混合液をそのまま濃縮し、シアノ基のα−位の不斉炭素が異性化した結果として、2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I)を得ることができる。
本工程で得られた2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I)は、必要に応じて再結晶、カラムクロマトグラフィーなどでさらに精製した後、再び上記の立体異性体の分離工程に付すことにより、光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルに誘導することができる。このように、上記の立体異性体の分離工程と異性化工程を組み合わせることにより、光学的に純粋でない2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I)から、所望の立体構造を有する光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルを効果的に取得することができる。
2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II)の立体異性体の分離および異性化は、2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I)の立体異性体の分離および異性化と同様にして行われる。
2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II)の立体異性体の分離工程
2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II)から、例えば、その溶媒に対する溶解度の差を利用して立体異性体を分離することができる。また、クロマトグラフィーにより光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II−1)、光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II−2)、光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II−3)または光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II−4)を分離することも可能である。
溶媒に対する溶解度の差を利用して2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II)中に含有される立体異性体のうち、難溶性の立体異性体を分離する場合に用いることのできる溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール;アセトン、2−ブタノンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチルなどのエステル;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類またはこれらの混合溶媒などが挙げられる。これらの中でも、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコールを用いるのが好ましく、メタノールを用いるのが特に好ましい。溶媒の使用量は、2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II)の溶解度によって異なるが、2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II)に対して10倍重量〜100倍重量の範囲が好ましい。
本工程では、例えば、2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II)を溶媒に加え、用いる溶媒の沸点を超えない範囲の温度で加熱して溶解させた後、得られた溶液を冷却することにより、用いる溶媒に対して難溶性の立体異性体を析出させる。また、必要に応じ、この溶液に用いる溶媒に対して難溶性の立体異性体を種結晶として少量添加して、該難溶性の立体異性体を析出させることもできる。析出した立体異性体の分離方法としては、ろ過、遠心分離、デカンテーションなどの通常の分離方法を採用することができる。
このようにして得られた立体異性体は、そのまま次の工程に付してもよいが、例えば再結晶などの精製操作を行うことにより光学純度をさらに高めることが可能である。
なお、難溶性の立体異性体を析出させた後、濾液中に残存する易溶性の立体異性体と難溶性の立体異性体の混合物は、濾液を濃縮して該混合物を回収し、次いで後述する異性化工程でシアノ基のα−位の不斉炭素を置換アミノ基の立体構造を保持したままで異性化させた後、再度、本工程の方法で立体異性体の分離工程に付すことによって再使用することができる。
2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩の異性化工程
本工程では、例えば、シアノ基のα−位の不斉炭素の立体構造が所望の立体構造ではない2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩、または上記の立体異性体の分離工程で再結晶法により立体異性体の分離を行って難溶性の立体異性体を分離した後、再結晶母液中に残留している析出しなかった難溶性の立体異性体と易溶性の立体異性体との混合物、すなわち光学的に純粋でない2−アミノ−4−アリールブチロニトリル塩を原料にして用いることができる。
本工程は、20〜40℃の範囲で実施するのが好ましい。
本工程は、溶媒の存在下に行う。通常、2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩は溶媒に溶解しただけでは異性化は極めて遅く、異性化に長時間を要して低効率であるが、ルイス酸の存在により異性化が促進される。溶媒としては、反応に悪影響を与えない限り特に限定されるものではなく、例えば、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール類などのプロトン性溶媒またはこれらの混合溶媒が用いられる。溶媒の使用量は特に限定されないが、通常は光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルまたは該光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルのシアノ基のα−位の不斉炭素が光学的に純粋でない光学異性体の混合物に対して10〜100倍重量の範囲であるのが好ましい。
また、本工程において用いられるルイス酸としては、例えば塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムなどが挙げられる。ルイス酸の使用量は、経済性の観点から、2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩対して0.01〜0.5倍モルの範囲であるのが好ましい。
本工程では、例えば、光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩または該光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩のシアノ基のα−位が光学的に純粋でない立体異性体の混合物を溶媒に溶解し、必要に応じてルイス酸を添加し、所定温度で撹拌して行うのが好ましい。得られた反応混合液をそのまま濃縮し、シアノ基のα−位の不斉炭素が異性化した結果として、2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II)を得ることができる。
本工程で得られた2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II)は、必要に応じて再結晶、カラムクロマトグラフィーなどでさらに精製した後、再び上記の立体異性体の分離工程に付すことにより、光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩に誘導することができる。このように、上記の立体異性体の分離工程と異性化工程を組み合わせることにより、光学的に純粋でない2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II)から、所望の立体構造を有する光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩を効果的に取得することができる。
2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II)は、2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I)に酸性物質を作用させることにより得られる。酸性物質としては、例えば、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、硝酸、リン酸などの鉱酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、カンファースルホン酸などの有機スルホン酸;酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、酒石酸、安息香酸、2−フェニルプロピオン酸、マンデル酸などのカルボン酸などが挙げられる。酸性物質の使用量は、2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I)に対して0.5〜2.0倍モルの範囲であるのが好ましく、0.7〜1.0倍モルの範囲であるのがより好ましい。
本発明において出発原料として用いられる2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル(I)、例えば、[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリルは、3−フェニルプロパナールを(R)−(1−フェニルエチル)アミノの存在下にアセトンシアンヒドリンと反応することにより合成される。
また、2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩(II)、例えば[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリル硫酸塩は、[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリルに硫酸を作用させることにより得ることもできる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
参考例1
[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリルの合成
滴下ロート、温度計およびマグネチックスターラを備え、内部を窒素置換した容量50mlの3ツ口フラスコに、3−フェニルプロパナール3.35g(25.0mmol)およびメタノール50mlを入れ、氷浴で5℃以下に冷却した。得られた溶液に、(R)−1−フェニルエチルアミン3.02g(25.0mmol)を反応液の内温を0〜5℃に保ちながら滴下した。滴下終了後、反応混合液を5℃以下で1時間撹拌した。その後、アセトンシアンヒドリン2.13g(25.0mmol)を添加し、氷浴を外し、1時間撹拌した。得られた反応混合液から、溶媒などの揮発性成分を留去し、淡黄色油状物質として[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリル6.08g(純度99%、23.0mmol、収率92%)を得た。得られた[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリルは下記の物性を有していた。なお、光学純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で下記に示す条件で分析して決定した。
使用カラム:wakosil・5SIL(カラム径4.6mm、カラム長250mm)
検出波長:UV254nm
移動相:へキサン/酢酸エチル(容量比95/5)
流速:1.0ml/min
温度:25℃
光学純度:49.0%d.e.(上記分析条件における両異性体の保持時間:20.0分、22.9分)
参考例2
[(R)−(1−(4−メチルフェニル)エチル)アミノ]フェニルブチロニトリル硫酸塩の合成
滴下ロート、温度計およびマグネチックスターラを備え、内部を窒素置換した容量50mlの3ツ口フラスコに、3−フェニルプロパナール6.70g(50.0mmol)およびメタノール50mlを入れ、氷浴で5℃以下に冷却した。得られた溶液に、(R)−1−(1−(4−メチルフェニル)エチル)アミン6.75g(50.0mmol)を反応液の内温を0〜5℃に保ちながら滴下した。滴下終了後、反応混合液を5℃以下で1時間撹拌した。その後、アセトンシアンヒドリン4.26g(50.0mmol)を添加し、氷浴を外し、1時間撹拌した。その後、反応混合液に濃硫酸2.45g(25.0mmol)を添加したところ、結晶が析出した。さらに、同温度で1時間撹拌した後、5℃以下に冷却し、結晶をグラスフィルターにより吸引ろ過し、[(R)−(1−(4−メチルフェニル)エチル)アミノ]フェニルブチロニトリル硫酸塩13.1g(純度99%、40.0mmol、収率80%)を得た。得られた[(R)−(1−(4−メチルフェニル)エチル)アミノ]フェニルブチロニトリル硫酸塩は下記の物性を有していた。なお、光学純度は、得られた硫酸塩の100mgを5%炭酸水素ナトリウム水溶液1mlにより複分解し、酢酸エチル1mlで抽出し、酢酸エチル層を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で参考例1と同じ条件で分析して決定した。
光学純度:54%d.e.(本分析条件における両異性体の保持時間:19.8分、22.5分)
実施例1
[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリルのジアステレオマーの分離
ジムロート型冷却管、温度計およびマグネチックスターラを備え、内部を窒素置換した容量50mlの3ツ口フラスコに、[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリル(49%d.e.)5.67g(純度99%、21.5mmol)およびジイソプロピルエーテル50mlを入れ、60℃に昇温し、完全に溶解した。反応混合液を15分間で30℃まで冷却したところ、結晶が析出し、さらに10分かけて5℃まで冷却し、同温度で1時間保持した。析出した結晶をグラスフィルターにより吸引ろ過し、(2R)−2−[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリル2.94g(純度99%、11.1mmol、収率69%([(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリル中に含まれる(2R)−2−[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリル基準)を得た。得られた(2R)−2−[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリルは下記の物性を有していた。なお、光学純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で参考例1と同じ条件で分析して決定した。
融点:97.0〜98.0℃
比旋光度:[α] =+114.7°(c1.0、メタノール、25℃)
光学純度:98.1%d.e.(本分析条件における両異性体の保持時間:20.0分、22.9分)
H−NMRスペクトル(270MHz,CDCl ,TMS,ppm)δ:1.38(d,3H,J=6.9Hz)、1.97−2.06(m,2H)、2.73−2.80(m,2H)、3.18(br,1H)、4.08(q,1H,J=6.9Hz)、7.08−7.33(m,10H)
13C−NMRスペクトル(67.5MHz,CDCl ,TMS,ppm)δ:24.8、31.7、35.5、47.7、56.6、120.4、126.3、126.9、127.6、128.3、128.5、128.7、140.1、143.1
実施例2
[(R)−(1−(4−メチルフェニル)エチル)アミノ]フェニルブチロニトリル硫酸塩のジアステレオマーの分離
ジムロート型冷却管、温度計およびマグネチックスターラを備え、内部を窒素置換した容量50mlの3ツ口フラスコに、[(R)−(1−(4−メチルフェニル)エチル)アミノ]フェニルブチロニトリル硫酸塩(54%d.e.)5.59g(純度99%、17.1mmol)およびメタノール50mlを入れ、60℃に昇温し、完全に溶解した。反応混合液を15分間で40℃まで冷却したところ、結晶が析出し、さらに15分かけて25℃まで冷却し、同温度で10時間保持した。析出した結晶をグラスフィルターにより吸引ろ過し、(2R)−2−[(R)−(1−(4−メチルフェニル)エチル)アミノ]フェニルブチロニトリル硫酸塩1.35g(純度99%、4.13mmol、収率31%([(R)−(1−(4−メチルフェニル)エチル)アミノ]フェニルブチロニトリル硫酸塩中に含まれる(2R)−2−[(R)−(1−(4−メチルフェニル)エチル)アミノ]フェニルブチロニトリル硫酸塩基準)を得た。得られた(2R)−2−[(R)−(1−(4−メチルフェニル)エチル)アミノ]フェニルブチロニトリル硫酸塩は下記の物性を有していた。なお、光学純度は、得られた硫酸塩の100mgを5%炭酸水素ナトリウム水溶液1mlにより複分解し、酢酸エチル1mlで抽出し、酢酸エチル層を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で参考例1と同じ条件で分析して決定した。
融点:138.5〜140.0℃
比旋光度:[α] =−67.1°(c0.5、メタノール、25℃)
光学純度:95.4%d.e.(本分析条件における両異性体の保持時間:19.8分、22.5分)
H−NMRスペクトル(270MHz,CD OD,ppm)δ:1.63(d,3H,J=6.9Hz)、2.20(q,2H,J=6.9Hz)、2.44(s,3H)、2.71−2.91(m,2H)、3.53(t,1H,J=6.9Hz)、4.37(q,1H,J=6.9Hz)、7.20−7.38(m,9H)
13C−NMRスペクトル(67.5MHz,CD OD,ppm)δ:21.2、32.5、34.8、35.6、53.4、58.6、105.5、113.5、126.9、127.5、128.3、129.3、129.4、129.7、130.8.1
実施例3
(2R)−[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリルの異性化
温度計およびマグネチックスターラを備え、内部を窒素置換した容量25mlの3ツ口フラスコに、(2R)−[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリル(99%d.e.)1.00g(純度99%、3.79mmol)およびメタノール15mlを入れ、25℃で完全に溶解し、反応混合液を同温度で、6時間攪拌した。得られた反応混合液から、溶媒などの揮発性成分を留去し、淡黄色油状物質として[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリル1.00g(純度99%、23.0mmol、収率100%)を得た。得られた[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリルは下記の物性を有していた。なお、光学純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で下記に示す条件で分析して決定した。
光学純度:60.0%d.e.(本分析条件における両異性体の保持時間:20.0分、22.9分)
実施例4
(2R)−2−[(R)−(1−(4−メチルフェニル)エチル)アミノ]フェニルブチロニトリル硫酸塩の異性化
温度計およびマグネチックスターラを備え、内部を窒素置換した容量25mlの3ツ口フラスコに、(2R)−2−[(R)−(1−(4−メチルフェニル)エチル)アミノ]フェニルブチロニトリル硫酸塩(97%d.e.)1.00g(純度99%、3.06mmol)およびメタノール15mlを入れ、40℃で完全に溶解し、反応混合液を同温度で、1時間攪拌した。得られた反応混合液から、溶媒などの揮発性成分を留去し、淡黄色油状物質として[(R)−(1−(4−メチルフェニル)エチル)アミノ]フェニルブチロニトリル硫酸塩1.00g(純度99%、3.06mmol、収率100%)を得た。得られた[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリル硫酸塩は下記の物性を有していた。なお、光学純度は、得られた硫酸塩の100mgを5%炭酸水素ナトリウム水溶液1mlにより複分解し、酢酸エチル1mlで抽出し、酢酸エチル層を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で参考例1と同じ条件で分析して決定した。
光学純度:55.0%d.e.(本分析条件における両異性体の保持時間:19.8分、22.5分)
実施例5
(2R)−[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリルの異性化
温度計およびマグネチックスターラを備え、内部を窒素置換した容量25mlの3ツ口フラスコに、(2R)−[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリル(99%d.e.)1.00g(純度99%、3.79mmol)および酢酸エチル15mlを入れ、25℃で完全に溶解し、塩化亜鉛10.3mg(0.08mmol)を加え、反応混合液を同温度で、6時間攪拌した。得られた反応混合液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により参考例1の分析条件で分析した。
光学純度:60.0%d.e.(本分析条件における両異性体の保持時間:20.0分、22.9分)
[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリルの残存率:>99%
参考例3
(2R)−2−[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブタン酸の合成
冷却管、温度計およびマグネチックスターラを備え、内部を窒素置換した容量25mlの3ツ口フラスコに、(2R)−2−[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリル1.00g(3.79mmol)、濃塩酸7.5mlおよび酢酸5mlを入れ、95℃で5時間加熱した。25℃まで冷却した後、4N水酸化カリウム水溶液25mlを30℃以下に保ちながら滴下した。滴下終了後、反応混合液を5℃以下で1時間撹拌した。析出した結晶をグラスフィルターにより吸引ろ過し、(2R)−2−[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブタン酸0.88g(純度99%、3.11mmol、収率82%)を得た。得られた(2R)−2−[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブタン酸は下記の物性を有していた。なお、光学純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で実施例1と同じ条件で分析して決定した。
融点:>250℃
比旋光度:[α] =−17.9°(c0.5、AcOH、25℃)
H−NMRスペクトル(270MHz,DMSO−d +DCl,ppm)δ:1.64(d,3H,J=6.3Hz)、2.04−2.17(m,2H)、2.40−2.55(m,1H)、2.66−2.74(m,1H)、3.20(br,1H)、4.41(q,1H,J=6.3Hz)、7.07−7.24(m,5H)、7.38−7.40(m,3H)、7.53−7.55(m,2H)
13C−NMRスペクトル(67.5MHz,CDCl ,TMS,ppm)δ:20.6、30.8、31.6、56.7、57.6、126.8、128.6、128.7、129.0、129.7、129.8、169.8
参考例4
(D)−ホモフェニルアラニン塩酸塩の合成
温度計、水素ガス導入用キャピラリー、オフガス排出用バブラーおよびマグネチックスターラを備え、内部を窒素置換した容量25mlの3ツ口フラスコに、(2R)−2−[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブタン酸0.30g(1.06mmol)、メタノール10mlおよび濃塩酸0.11g(1.10mmol)を入れ、室温で溶解させた。次いで、10%活性炭担持パラジウム(エヌイーケムキャット社製、NCA−19)30mgを仕込み、水素ガス導入用キャピラリーから水素ガスをバブリングしながら48時間撹拌した。その後、反応器を窒素ガスで置換し、触媒を膜ろ過により除去した。ろ液を濃縮し、(D)−ホモフェニルアラニン塩酸塩0.22g(純度98%、1.02mmol、収率96%)を得た。得られた(D)−ホモフェニルアラニン塩酸塩は下記の物性を有していた。なお、光学純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で下記に示す条件で分析して決定した。
使用カラム:CrownPack CR(+)(カラム径4.6mm、カラム長150mm)
検出波長:UV254nm
移動相:過塩素酸水溶液(pH=1.7)/メタノール(容量比85/15)
流速:0.8ml/min
温度:45℃
融点:>250℃
比旋光度:[α] =−47.2°(c1.0、1N HCl、25℃)
光学純度:99.0%d.e.(上記分析条件における両異性体の保持時間:13.9分、29.9分)
H−NMRスペクトル(270MHz,D O+TFA,ppm)δ:1.81−2.00(m,2H)、2.39−2.45(m,2H)、3.71(t,1H、J=6.3Hz)、6.91−7.01(m,5H)
本発明により提供される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルまたはその塩のうち、(2R)−2−[(R)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリルは、μ−選択的オピオイド受容体作用薬の合成中間体として有用な(D)−ホモフェニルアラニンに誘導可能であり、また(2S)−2−[(S)−(1−フェニルエチル)アミノ]フェニルブチロニトリルは、鎮痛薬の合成中間体として有用な(L)−ホモフェニルアラニンに誘導可能である。

Claims (6)

  1. 一般式(I−1)
    Figure 2005104865
    (式中、R は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、ニトロ基または保護されていてもよい水酸基を表し、R はアリール基を表す。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル、一般式(I−2)
    Figure 2005104865
    (式中、R およびR は前記定義のとおりである。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル、一般式(I−3)
    Figure 2005104865
    (式中、R およびR は前記定義のとおりである。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルまたは一般式(I−4

    Figure 2005104865
    (式中、R およびR は前記定義のとおりである。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル。
  2. 一般式(II−1)
    Figure 2005104865
    (式中、R は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、ニトロ基または保護されていてもよい水酸基を表し、R はアリール基を表し、X はアニオンを表す。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩、一般式(II−2

    Figure 2005104865
    (式中、R 、R およびX は前記定義のとおりである。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩、一般式(II−3

    Figure 2005104865
    (式中、R 、R およびX は前記定義のとおりである。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩または一般式(II−4)
    Figure 2005104865
    (式中、R 、R およびX は前記定義のとおりである。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩。
  3. 一般式(I)
    Figure 2005104865
    (式中、R は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、ニトロ基または保護されていてもよい水酸基を表し、R はアリール基を表し、*は不斉炭素を表す。)
    で示される2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルに含まれる立体異性体を分離することを特徴とする一般式(I−1)
    Figure 2005104865
    (式中、R およびR は前記定義のとおりである。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル、一般式(I−2)
    Figure 2005104865
    (式中、R およびR は前記定義のとおりである。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル、一般式(I−3)
    Figure 2005104865
    (式中、R およびR は前記定義のとおりである。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルまたは一般式(I−4

    Figure 2005104865
    (式中、R およびR は前記定義のとおりである。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルの製造方法。
  4. 一般式(I−1)
    Figure 2005104865
    (式中、R は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、ニトロ基または保護されていてもよい水酸基を表し、R はアリール基を表す。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル、一般式(I−2)
    Figure 2005104865
    (式中、R およびR は前記定義のとおりである。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル、一般式(I−3)
    Figure 2005104865
    (式中、R およびR は前記定義のとおりである。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルおよび一般式(I−4

    Figure 2005104865
    (式中、R およびR は前記定義のとおりである。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルから選ばれる少なくとも1種の光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルを溶媒中でルイス酸の存在下または不存在下に、該光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルの置換アミノ基が有する立体構造を保持したままで異性化することを特徴とする一般式(I)
    Figure 2005104865
    (式中、R およびR は前記定義のとおりであり、*は不斉炭素を表す。)
    で示される2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリルの製造方法。
  5. 一般式(II)
    Figure 2005104865
    (式中、R は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、ニトロ基または保護されていてもよい水酸基を表し、R はアリール基を表し、X はアニオンを表し、*は不斉炭素を表す。)
    で示される2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩に含まれる立体異性体を分離することを特徴とする一般式(II−1)
    Figure 2005104865
    (式中、R 、R およびX は前記定義のとおりである。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩、一般式(II−2

    Figure 2005104865
    (式中、R 、R およびX は前記定義のとおりである。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩、一般式(II−3

    Figure 2005104865
    (式中、R 、R およびX は前記定義のとおりである。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩または一般式(II−4)
    Figure 2005104865
    (式中、R 、R およびX は前記定義のとおりである。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩の製造方法。
  6. 一般式(II−1)
    Figure 2005104865
    (式中、R は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、ニトロ基または保護されていてもよい水酸基を表し、R はアリール基を表し、X はアニオンを表す。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩、一般式(II−2

    Figure 2005104865
    (式中、R 、R およびX は前記定義のとおりである。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩、一般式(II−3

    Figure 2005104865
    (式中、R 、R およびX は前記定義のとおりである。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩および一般式(II−4)
    Figure 2005104865
    (式中、R 、R およびX は前記定義のとおりである。)
    で示される光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩から選ばれる少なくとも1種の光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩を溶媒中でルイス酸の存在下または不存在下に、該光学活性2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩の置換アミノ基が有する立体構造を保持したままで異性化することを特徴とする一般式(II)
    Figure 2005104865
    (式中、R 、R およびX は前記定義のとおりである。)
    で示される2−置換アミノ−4−アリールブチロニトリル塩の製造方法。
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