以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の演奏用パラメータ入力装置の第1実施形態が組み込まれた電子楽器のブロック図である。
図1に示す表示器11には、後述する種々のパラメータや鍵盤等のアイコンが表示される。
タッチパネル12は、表示器11上に配設されたアナログ式の透明なパネルであり、タッチした位置を示す位置情報をアナログ信号として出力する。
ROM13には、この図1に示す電子楽器全体の制御を行なうためのプログラムが格納されている。
CPU14は、ROM13に格納されたプログラムに基づいて必要な処理を行なう。またCPU14には、A/D変換器(図示せず)が備えられており、CPU14はこのA/D変換器でタッチパネル12からの位置情報、押圧情報をA/D変換する。
RAM15には、CPU14でA/D変換された位置情報、押圧情報や、CPU14がROM13のプログラムを実行する際に必要なデータが一時的に格納される。
音源16は、タッチパネル12の各情報に基づいた楽音を生成する。
図2は、図1に示す表示器とタッチパネルから構成された操作パネルを示す図である。
図2に示す操作パネル20は、表示器11と、表示器11上に配置された透明なタッチパネル12から構成されている。この操作パネル20は、タッチパネル12が透明のため、表示器11の表示画面11aに表示されるパラメータやアイコンを見ながらタッチパネル12にタッチすることにより、直感的に、パラメータの設定操作やアイコンの変更操作等を行なうことができる。
図3は、図2に示すタッチパネルの位置検出原理を説明するための図、図4は、タッチパネルとCPUとの間に介在するインターフェース部の回路図である。
図3には、タッチパネル12の位置情報のうちのx方向の位置を検出するための説明図(a)と、y方向の位置を検出するための説明図(b)とが示されている。
先ず、x方向の位置の検出原理について、図3(a)、図4を参照して説明する。
図3(a)に示すタッチパネル12は、抵抗体が均一に塗布され、互いに所定の距離を隔てて上下に重ねられた2枚のシート12x,12yから構成されている。
シート12xには、そのシート12xの、互いに向き合う図3(a)の左右2辺に端子12x1 ,12x2 が備えられており、またシート12yには、そのシート12yの、互いに向き合う図3(a)の上下2辺に端子12y1 ,12y2 が備えられている。
一方、図4に示すCPU14のポート1,2双方から‘H’レベルの信号が出力され、これによりインターフェース部36を構成するトリステートバッファ36a、トランジスタ36b双方が導通状態になり、端子12x1 が接地され、端子12x2 には電圧Vが印加される。一方、CPU14のポート3,4双方から‘L’レベルの信号が出力され、これによりトリステートバッファ34c、トランジスタ34d双方が遮断状態になる。ここで、タッチパネル12の図3(a)に示すx点がタッチペン31で押されると、シート12xとシート12yが接触し、シート12xの、タッチペン31で押されたx点のx方向の位置に応じた電圧降下が生じその降下した電圧が端子12y2 から出力される。端子12y2 から出力された電圧は、抵抗32、キャパシタ33からなる回路を経由してCPU14のA/D1に入力され、A/D変換される。このようにしてx方向の位置が検出される。
また、y方向の位置を検出するためには、図4に示すCPU14のポート3,4双方から‘H’レベルの信号が出力され、これによりトリステートバッファ36c、トランジスタ36d双方が導通状態になり、端子12y1 が接地され、端子12y2 に電圧Vが印加される。またCPU14のポート1,2双方から‘L’レベルの信号が出力され、これによりトリステートバッファ34a,トランジスタ34b双方が遮断状態になる。ここで、タッチパネル12の、図3(b)に示すx点がタッチペン31で押されると、シート12yの、タッチペン31で押されたx点のy方向の位置に応じた電圧降下が生じ、その電圧降下により降下した電圧が端子12x2 に出力される。このy方向の電圧は、抵抗34、キャパシタ35による回路を経由してA/D2に入力されA/D変換される。このようにしてy方向の位置が検出される。
CPU14によって上述したx方向、y方向の位置を交互に検出してタッチパネル上の押圧位置を検出する動作について説明する。
説明の便宜を図り、仮にx方向の位置を検出するための端子12x1 を接地し、端子12x2 に電圧Vを印加しており、端子12y2 から出力している電圧でx方向の位置を検出しているものとする。この時、電圧Vを印加している端子12x2 に接続しているキャパシタ35もチャージされている。次にy方向の位置を検出する際には、先ず端子12x2 に印加されている電圧Vを遮断する。するとチャージされていたキャパシタ35の電荷は抵抗34、端子12x2 、シート12xおよび端子12x1 を介してグランドに放電し、キャパシタ35はディスチャージされる。次に、端子12y1 を接地し、キャパシタが十分ディスチャージされる所定時間後に、x方向の位置を検出する際に接地されていた端子12x1 を接地状態から切り放しハイインピーダンス状態にする。次に端子12y2 に電圧Vを印加し、端子12x2 から出力される電圧でy方向の位置を検出する。
次にx方向の位置を検出する場合は上述したスイッチング動作のxとyを入れ替え、キャパシタを33とし、抵抗を32としたスイッチング動作が行われ、これらのスイッチング動作を交互に行うことによってタッチパネル上の押圧位置を検出する。
ここで押圧されていない状態では検出する側のキャパシタ33或いは35は常にディスチャージされているので接地レベルの電圧を検出している。CPUは接地レベルの電圧或いはその近傍の電圧と検出した電圧を比較することによって押圧されたか否か、押圧された位置がタッチパネル上の操作領域か否かをも検出している。これらの走査は、CPU14の、図示しないタイマーの周期的な割り込みの発生ごとに処理される。
このように、タッチパネル12から出力される電圧をA/D変換してデジタル符号としてCPU14に読み込んで処理することにより、「タッチパネル12が押圧された(変化)」、「タッチパネル12が押圧されている(状態)」、「押圧された、あるいは押圧されている状態でのタッチパネル12上の押圧位置」、「押圧された状態での押圧位置の変化(摺動操作)」、「タッチパネル12が押圧から開放された(変化)」、「タッチパネル12が押圧されていない(状態)」などの情報を得ることが可能である。
これらの情報を得るための処理については、RAM15上に一定時間内の押圧および押圧位置情報等を逐次記憶していくことで、簡単に判定できる。
ただし、タッチパネル12が押圧されていない状態から押圧された場合、直ちには正しい押圧位置をあらわす電圧は出力されないため、一般には若干のタイムラグを見込んでおく必要がある。また、このタイムラグは、押圧面積の大きなもの(たとえば、指)で押圧するほど大きくなり、押圧に対する位置判定に時間を要する。したがって、主としてタッチペン等の、押圧面積の小さいもので操作する領域と、主として指などの押圧面積の大きなもので操作する領域では、押圧操作に対する位置判定の方法を変更することが望ましい。
ところで、タッチパネル12からCPU14に読み込まれたデジタル値からタッチパネル12上の実際の押圧位置(座標)を判定するためには、まずデジタル値と実際の位置とのキャリブレーションを行なうことが必要がある。
図5は、タッチパネルにおけるキャリブレーションの説明図である。
キャリブレーション操作は、たとえば、図5に示すようにタッチパネル12の検出領域の1組の対角にある点を用いて行うことができる。図5において、まずA点をタッチペン等で押圧して、A点の電圧データ(XA,YA)をとる。次に、B点についても同様に押圧して、B点の電圧データ(XB,YB)をとる。ここで、タッチパネル12上の、A点とB点とにより定まるx方向の距離をLX、y方向の距離をLYとすると、これらx方向の距離LX,y方向の距離LYにより、前述した表示器11の表示可能領域が定まり、この領域は実用上変化しないので、タッチパネル12上の、この領域における任意の点Cを押圧したときの電圧データが(XC,YC)であるとすれば、タッチパネル12の、B点を基準点とした押圧点の絶対位置(LXc,LYc)は、
LXc=(LX/(XA−XB))×(XC−XB)
LYc=(LY/(YA−YB))×(YC−YB)
となる。
ただし、ここでは、B点の方が、A点に比べて押圧時に低い電圧値を生じるものとし、タッチパネル12上の、位置による抵抗値変化が充分な直線性を持っているものとする。
このように、本実施形態の操作パネル20では、表示器11とタッチパネル12の位置を相互に合わせておくことにより、タッチパネル12上の押圧操作、摺動操作を、表示器11上の表示要素の位置と対応付けることができる。
図6は、図2に示す操作パネルにおける表示例を示した図である。
図6に示す、鍵盤を模擬した「鍵盤」アイコン61は、選択されているパートの鍵盤を表わしており、この鍵盤をタッチすることにより、その鍵盤の発音域および選択されているパートの音色で演奏することができ、また摺動操作により、発音中の楽音に対するさまざまな楽音制御が可能である。
「<」「>」アイコン62は、「鍵盤」アイコン61で示される鍵盤の発音域をオクターブ単位でシフトするためのものである。
「OCT」アイコン63は、「鍵盤」アイコン61で示される鍵盤の発音域を、現在の発音域に関係なく基準域に戻す役割りを成す。
「V.PARA」アイコン64は、選択されているパートの鍵盤の縦方向への摺動動作により制御される楽音パラメータの設定画面に切り換えるアイコンである。
「H.PARA」アイコン65は、選択されているパートの鍵盤の横方向への摺動動作により制御される楽音パラメータの設定画面に切り換えるアイコンである。
「INST」アイコン66は、選択されているパートの鍵盤に、発音する音色を割当てる画面に切り換えるアイコンである。
「+」「−」アイコン67は、変更可能な表示要素をタッチぺンでタッチすると表示が点滅するが、その表示が点滅しているときに、これらの「+」「−」アイコン67をタッチすることで、値を変更するためのアイコンである。尚、不用意に値を変更してしまわないように、表示要素が点滅していないときは、これらの「+」「−」アイコン67を押しても、値は変化しない。
メッセージ表示領域68は、16文字×1行の大きさの表示領域を有しており、タッチされることにより、例えば音色名が表示される。
ここで、「鍵盤」アイコン61、「<」「>」アイコン62、「OCT」アイコン63、メッセージ表示領域68は、主としてタッチペンで操作される領域である。一方、「V.PARA」アイコン64、「H.PARA」アイコン65、「INST」アイコン66、「+」「−」アイコン67は、主として指で操作される領域である。これら指で操作される領域は、タッチペンで操作される領域と比較し、操作位置の判定に時間をかけるようにしている。
すなわち、タッチペンで操作される領域では2回の走査を行い、2回目の値でタッチされた位置を判定しており、指で操作される領域では3回の走査を行い、3回目の値でタッチされた位置を判定している。この場合、走査回数の決定方法は、1回目の走査による値でタッチパネル上の大凡の位置を検出し、その値がタッチペンで操作される領域に対応する2回目の走査の値で、その値が指で操作される領域に対応するならば3回目の値で位置を判定するようになっている。
また上述のように走査回数が予め決められているのではなく、走査により出力された値を順次バッファに記憶しておき、その値が一定範囲内に収束した場合にその値で位置を判定するようにしてもよい。
さらに、走査回数を1回目の走査の値で決定するのではなく、予め走査回数に応じて2分割したタッチパネルを用い、分割した一方のタッチパネルでは2回目の走査で位置を判定し、他方のタッチパネルでは3回目の走査で判定を検出するようにしてもよい。
このように、タッチパネル上に、主に指などで操作する領域と主にペンで操作する領域とが混在している場合に、タッチパネル上の押圧位置の判定に関して、判定すべき領域に応じて異なる位置判定方式を採用することで、たとえば一律に指の操作用に合わせ込んで、タッチペンで操作すべきところまで位置判定が遅くなることや、逆に、一律にタッチペンの操作用に合わせ込んで、指で操作すべきところの領域の位置判定を誤るといった可能性を防止することができる。従って判定方式を領域によって分けることで、タッチパネル全体で最も効率的な判定が可能となり、快適な操作系を実現できる。
本実施形態では、操作パネル20上の「鍵盤」アイコン61にタッチすることで、16パートの内蔵マルチティンバー音源を発音させ、「鍵盤」アイコン61近傍での、後述する摺動動作によって、発音中の楽音パラメータを制御することができる。また、発音中の楽音の制御以外に、マルチティンバーの各パートへの音色の割当てや、「鍵盤」アイコン61で、発音時に制御する楽音パラメータの設定等を行うことができる。これらについても後述する。
図7は、操作パネルにおける、各パートへの音色(インスト)の割当て操作を説明するための図(表示例)である。
操作パネル20上の「INST」アイコン66にタッチすると、メッセージ表示領域68に、図7(a)に示す“part08=A.Piano2”が表示される。この表示は、マルチティンバーのパート08に“A.Piano2”という名称の音色(インスト)が割当てられていることを表わしている。次に、メッセージ表示領域68のうちの“A.Piano2”が表示されている表示領域部68aをタッチペン31でタッチすると、“A.Piano2”の文字列が点滅する。
ここでタッチしたままの状態で、図7(b)の上矢印(↑)に示すように表示領域68aの上方にタッチペンを摺動すると、音色が図7(c)の“A.Piano2”の上方にかかれている矢印順に一定時間毎に切り替わる。また図7(b)の下矢印(↓)に示すように表示領域68aの下方にタッチペンを摺動すると、音色が図7(c)の“A.Piano2”の下方に書かれている矢印順に一定時間毎に切り替わる。摺動操作をやめてもタッチしている限り、音色を設定するパラメータは一定時間毎に切り替えられ、(以下、パラメータが一定時間毎に切り替えられる状態を「早送り」という。)早送りの時間間隔、または変化量(たとえば、テーブル状に記憶している音色の順番の上で2づつ増減するか、3づつ増減するかなど)は摺動距離に応じて変化する。
例えば256段階などの値の設定を、一定の摺動距離毎に一定の変化量で変更しようとすると無理があるが、上記のように、摺動操作の距離に応じてパラメータまたはパラメータの設定値の変更速度(早送り速度)を変化させることにより、すなわち、押圧している限り常に早送り状態とし、その送りスピード(または変化の度合い=例えば、1つずつ増えるか3つずつ増えるか等)を摺動距離によって変化させることにより、限定された領域でも、さまざまなレンジの値を容易に設定することができる。
この操作で設定(値)の変更は、表示領域部68aの図7(b)に示す破線で囲まれた範囲の上端または下端を越えて摺動されたときに行われる。
初期押圧位置から一定の距離摺動操作したときに設定を変更することも考えられるが、その方法だと、タッチペン31によって表示が見にくくなってしまう場合があるという問題がある。そこで摺動操作がタッチパネル上の所定範囲内にとどまっているときは、パラメータまたはパラメータの設定値が変更されないような不感帯を設けることにより、設定すべきパラメータの表示領域を押圧した後一定領域(不感帯)の外に摺動したときに設定が変更されるため、表示が見えやすく快適に操作できる。
また、メッセージ表示領域68に“part08=A.Piano2”が表示されている時点で“A.Piano2”の表示領域部68aをタッチペン31でタッチして、“A.Piano2”の文字列を点滅させ、
タッチしたままの状態で左方向又は右方向に摺動することによって、その摺動距離に応じたパートに切り替えることができ、パートの切り替えに連動してそのパートに割り当てられている音色名が表示される。例えば、図7(b)の左矢印(←)の方向に一定距離摺動した場合は、図7(d)に示すように“part08=A.Piano2”から“part07=A.Bass”に切り替えられる。同様に右矢印(→)の方向に摺動した場合は、“part08=A.Piano2”から“part09=T.Sax”に切り替えられる。
この操作で設定(値)の変更は、表示領域68aの左端または右端を越えて摺動されたときに行われる。
ここで以下の説明に必要なセットという観念について説明する。セットとはある相関関係をもったパラメータの集合のことをいい、ここではパートに相当する。
このようにして、上下の摺動距離に応じて楽音パラメータ(ここでは音色を設定するパラメータ)を加減し、右方向へ一定の距離摺動すると次のセット(Part09)の同じパラメータ(音色を設定するパラメータ)の設定ができるようになり、押したままさらに上下に摺動するとそのセット(Part09)の同じパラメータ値(ここではT.Sax)を変更することができる。
また押したまま左方向へ一定の距離摺動すると前のセット(ここではPart07)の同じパラメータ(音色を設定するパラメータ)の設定ができるようになり、押したままさらに上下に摺動するとそのセット(Part07)のパラメータ値(ここではA.Bass)を変更することができる。
従来の電子楽器では、複数のセットで同じパラメータの設定ができる場合、セットの変更操作とパラメータの設定操作を別々に行う必要があるが、このようにすると、セットの変更操作とパラメータ変更操作が統一的に行えるので快適である。たとえば、マルチティンバー音源の各パートごとの楽音パラメータの設定などが簡単にできる。
本実施形態では、詳細は後述するが、「鍵盤」アイコン61上をタッチペンで縦方向、横方向に摺動して、あらかじめ設定された楽音パラメータを変化させ発音中の楽音を制御することできる。
図8は、楽音発音中に「鍵盤」アイコン上を縦方向に摺動した場合に変化する楽音パラメータを、前もって設定する操作の説明図(表示例)である。
操作パネル20上の「V.PARA」アイコン64に、タッチペン31もしくは指でタッチすると、図8(a)に示すように、メッセージ表示領域68に、“V.Para1=CUTOF”の表示が行われ、これにより「鍵盤」アイコン61での縦方向の摺動操作によって制御される楽音パラメータの設定画面になる。
次に、メッセージ表示領域68の、“CUTOF”が表示された表示領域部68aにタッチペン31でタッチすると、“CUTOF”の文字列表示が点滅する。ここで表示部68aをタッチペン31でタッチしたままの状態で上方に摺動していくと、図8(b)に示すように「MODUL」,「BEND」と変化する。一方、タッチしたままの状態で下方に摺動していくと、図8(b)に示すように「RESON」,「AFTER」と変化する。
設定できる楽音パラメータは以下のとおりである。(各楽音パラメータが制御する内容の説明は省略する。)
BEND:ピッチベンド
MODUL:モジュレーション
CUTOF:カットオフ周波数
RESON:レゾナンス
AFTER:アフタータッチ
VOL:ボリューム
EXP:エクスプレッション
PAN:パン
WAH:ワウ効果
VIB:ビブラート・レイト
LFO:LFOレイト
REV:リバーブセンド
CHO:コーラスセンド
DEL:ディレイセンド
OFF:設定なし
楽音パラメータを「OFF」に設定すると、後述するように、楽音発音中に、「鍵盤」アイコン61上を縦方向に摺動操作しても、楽音パラメータの制御は行なわれない。
図8(c)はタッチしたままの状態で左右に摺動された時の切り替え表示図である。即ち、押圧したままの状態で右に摺動すると、所定摺動距離毎にV.Para2、V.Para3の順に、押圧したままの状態で左に摺動すると、図面中矢印で表示していないが、所定摺動距離毎にV.Para3、V.Para2の順に設定したいパラメータに切り替えることができる。このように、「鍵盤」アイコン61を縦方向に摺動した場合に変化する楽音パラメータの設定は“V.Para1〜V.Para3”で指定する。
ここでは、後述する楽音発音中の「鍵盤」アイコン61の縦方向の摺動操作により、“V.Para1”から“V.Para3”に設定された、3つまでの楽音パラメータを同時に制御することができる。
尚、摺動操作と設定の変化の仕方(早送り等)は、前述のパートへの音色割当ての場合と同様である。
図9は、楽音発音中「鍵盤」アイコン上を横方向に摺動した場合に変化する楽音パラメータを、前もって設定する操作の説明図(表示例)である。
操作パネル20上の「H.PARA」アイコン65に、タッチペン31もしくは指でタッチすると、メッセージ表示領域68には、図9(a)に示すように、“H.Mode=PORTA”が表示され、これにより「鍵盤」アイコン61での横方向の摺動操作によって制御される楽音パラメータの設定画面になる。
ここでメッセージ表示領域68の、“PORTA”が表示されている表示領域部68aをタッチペン31でタッチすると、“PORTA”の文字列表示が点滅する。タッチしたままの状態でタッチペン31を上下に摺動すると、図9(b)に示すように、「GLIS」や「OFF」に変化する。
一方、メッセージ表示領域68の“PORTA”が表示されている表示領域部68aをタッチペン31でタッチすると、“PORTA”の文字列表示が点滅する。ここで、タッチしたままの状態でタッチペン31を右に摺動すると、図9(c)に示すように、順次“H.Mode”から“H.Para1”,H.Para2”,さらに図示しない”“H.Para3”に切り換えることができる。
また、タッチしたままの状態でタッチペンを左に摺動すると、一定摺動距離毎に図示しないH.Para3、H.Para2、H.Para1の順に切り替えることができる。
“H.Para1”,“H.Para2”,“H.Para3”に設定される楽音パラメータは、前述した“V.Para1”,“V.Para2”,“V.Para3”に設定される楽音パラメータと同じものである。ここでは“H.Para1”から“H.Para3”に設定された、3つまでの楽音パラメータを同時に制御することができる。
横方向の制御では、前述した縦方向の制御とは異なり、“H.Mode”というモード設定が存在する。“H.Mode”が「OFF」以外に設定されている場合は、“H.Para1”〜“H.Para3”の設定は「OFF」として扱われる。
ここで、“H.Mode”に設定される楽音パラメータ(図9(b)参照)について説明する。
「GLIS」では、タッチペンで任意の鍵盤領域を押圧することによってその鍵盤、領域に対応する楽音を発生し、発音している鍵盤領域から横方向の摺動により別の鍵盤領域に入る毎にその鍵盤領域に対応する楽音信号を発音指示することによって、グリッサンド演奏を可能にしている。“H.Para1”〜“H.Para3”はすべて「OFF」として扱われる。
「PORTA」では、タッチペンで任意の鍵盤領域を押圧することによってその鍵盤、領域に対応する楽音を発生し、発音している鍵盤領域から横方向の摺動により別の鍵盤領域に入る毎に、摺動動作によって別の鍵盤領域に入る前の音高から別の鍵盤領域に入った後の鍵盤領域に対応する音高に滑らかに変化するように楽音信号の音高を制御することによって、ポルタメント演奏を可能にしている。“H.Para1”〜“H.Para3”はすべて「OFF」として扱われる。
「OFF」は、1つの鍵で発音中は、横方向の摺動操作で異なる鍵領域に入っても、前記「GLIS」や「PORTA」の場合のように鍵盤領域に対応した楽音制御発音指示や音高制御)を行わず、“H.Para1”〜“H.Para3”の各設定が有効になり、横方向の摺動操作では発音中の音に関して楽音制御する。
再び図9(a)に戻って説明を続ける。
図9(a)に表示された状態において、“PORTA”の表示領域にタッチペン31でタッチすると“PORTA”が点滅する。そのまま右に摺動すると“H.Para*”(*は1〜3のいずれかを示す)の設定表示になる。ここでは“H.Para1=CUTOF”が表示されるものとする。次に「CUTOF」の表示領域にタッチペンでタッチすると「CUTOF」が点滅する。タッチしたままの状態で上方に摺動していくと「MODUL」、「BEND」・・・と変化する。一方、タッチしたままの状態で下方に摺動していくと、「RESON」、「AFTER」・・・と変化する。ここで、「OFF」に設定すると、楽音発音中に鍵盤を横方向に摺動しても、楽音パラメータ制御は行なわれない。
“H.Para*”で設定できる楽音パラメータは、本実施形態では、前述したように“V.Para*”と同じであるが、制御に方向性をもたせた方がよいパラメータについては、必ずしも縦、横方向の設定候補が同一である必要はなく、縦、横方向の設定候補の全部もしくは一部が互いに異なっていてもよい。
図10は、「鍵盤」アイコンによる発音と楽音制御の説明図である。
ただしここでは、
V.PARA1=「BEND」
V.PARA2=「PAN」
V.PARA3=「OFF」
H.MODE=「GLIS」
H.PARA1=「OFF」
H.PARA2=「OFF」
H.PARA3=「OFF」
に設定されているものとする。
図10(a)に示す鍵盤アイコン61のうちの鍵「E」の表示領域をタッチペン31でタッチすると、現在選択されているパートの音色の楽音が、「<」「>」アイコン62で設定されたオクターブ音域のEの音高で発音する。発音している間、鍵盤「E」の表示領域内に図10(b)や図10(c)に示すような“●”が点灯する。
尚発音時は、MIDI等を使って、発音メッセージを外部機器に送信してもよい。
タッチしたままで上方に摺動操作すると、図10(b)に示す1の位置を起点とした縦方向の摺動距離に応じて、ピッチが上がる(V.PARA1=「BEND」)とともにステレオ定位が右側にシフトし、(V.PARA2=「PAN」)下方に摺動操作すると、図10(b)に示す2の位置を起点としてピッチが下がるとともにステレオ定位が左側にシフトする。このとき、変化したパラメータとその値がメッセージ表示領域68に表示される(図11参照;後述する)。
またタッチしたままで横方向に摺動すると、図10(c)に示す3,4の位置である鍵領域ごとにリトリガー動作して、グリッサンドが行なわれる。
H.PARAは、ここに示す例では全て「OFF」(無効)であるが、有効な場合は、“H.PARA*”の設定に応じて横方向の摺動距離に応じた楽音制御が行なわれる。
このように、音高指領域である鍵「E」の表示領域を押圧したまま摺動操作することにより、楽音の発音指示および発音中の楽音を制御するための楽音パラメータの値を変更することができる。一般に鍵盤+ベンダー、鍵盤+リボンコントローラ、鍵盤+ホイールといった構成では、操作技術の習得に時間がかかるが、このように、鍵盤上で楽音を制御することにより、より直感的で簡単な操作が可能となる。
これら縦、横方向の摺動操作による楽音制御は、押圧点からの摺動距離に応じて制御することもできるが、押圧点は毎回微妙に異なるため、その場合、制御の効果は音で確認するしかない。したがって直感的な制御が困難になるため、本実施形態では、押圧を開始した鍵領域から外れて摺動されたときから効果が現れるようになっている。このように、摺動操作がタッチパネル上の所定範囲内にとどまっているときは、楽音パラメータが変更されないような不感帯を設けることにより、この不感帯領域が一種の操作用の「ガイド」的役目を果たし、制御効果があらわれ始める位置が固定されるため、押圧開始位置のばらつきに関係なく、直感的に操作することができる。
図11は、図10とは異なる、「鍵盤」アイコンによる発音と楽音制御の説明図である。
図11に示すメッセージ表示領域68には、タッチペンを鍵「E」の領域にタッチした後の上方向への摺動操作による楽音パラメータの変化が概略表示されている。ここではV.Para1,V.Para2に設定されたピッチベンド(BEND)、パン(PAN)の各制御状態を表示記号111,112と、V.Para3に設定された「OFF」を示す*が表示されている。
図11中、上向きの三角印(▲)はパラメータが増加方向に制御されたことを意味し、図示しないが下向きの三角印(▼)はパラメータが減少方向に制御されたことを意味する。
さらにH.Para1,H.Para2,H.Para3に設定された3つの「OFF」を示す*も表示されている。
このように、摺動操作による楽音パラメータを変化が表示することにより、音だけでなく、目視によっても効果を確認することができる。本実施形態では、メッセ−ジ表示領域68の寸法の都合で、概略表示となっているが、表示領域に余裕のあるときは、これに限らず、パラメータ値そのものや、楽音制御の効果をグラフィックに表現してもよい。
一般に、楽音パラメータの中には、それぞれ独立に制御せずに、互いに相関を持たせて一緒に制御しても実用上十分な場合も多い。したがって例えば縦方向の摺動操作で1種類の楽音パラメータ、横方向の摺動操作で1種類の楽音パラメータといった、縦横の2次元的に組み合わせた2種類の楽音パラメータを制御するだけではなく、縦方向、横方向それぞれの摺動操作でそれぞれ複数種類の楽音パラメータを同時に制御してもよい。本実施形態はこのような制御が実現できるよう構成されており、多くの楽音パラメータを、縦方向、横方向の摺動動作によって自在にミックスすることができる。従って、従来の電子楽器にはない豊かで斬新な演奏表現が可能となる。
このように、本実施形態では、縦方向、横方向の摺動動作によって制御される複数の楽音パラメータを選択することができるため、操作者の好みによって自由に制御効果を選んで組合せると、従来の楽器にない楽音制御が可能になる。また、操作の方向性についても自由に選べるので、たとえば、ピッチ変化の場合、キーボード操作では横方向(つまりベンダーレバーやグリッサンド)を選択し、ギタリストでは、縦方向(たとえばチョーキング)を選択するといった、操作者にとって最も適した操作方向を選択することができる。
なお、本実施形態では、音源が内蔵されているが、MIDIを介して外部音源を接続してもよい。その場合、ピッチベンド、モジュレーションといったMIDIメッセージが定義されているものは、それらを用いて音源を制御してもよいし、また音源の認識可能なシステムエクスクルーシブ・メッセージ等を用いて音源を制御してもよい。また、RS−422等のMIDI規格以外のインターフェースを介して音源と接続し、MIDI以外のプロトコルで音源を制御してもよい。
また、本実施形態の構成に、自動演奏装置を内蔵し、もしくは外部に接続し、摺動操作による楽音制御情報を、記録・再生できるようにしてもよい。摺動操作で制御する楽音制御パラメータは、本実施形態で挙げた以外のものでもよい。また本実施形態における表示器では、「鍵盤」アイコンは1オクターブ+1音であったが、もっと多くの鍵を有していてもよい。表示器は、液晶、CRT、蛍光表示管、LED等、何を用いてもよい。
さらに本実施形態では、アナログ方式のタッチパネルを使用したが、充分に分解能の大きなマトリックス方式(デジタル方式)の透明タッチパネルを用いてもよい。この場合、検出可能な位置のすべてに、スイッチが配置されているものとして、通常のメカスイッチと同様な処理により位置検出すればよい。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図12は、本発明の演奏用パラメータ入力装置の第2実施形態が組み込まれた自動演奏装置に備えられた操作パネルを示す図である。
この自動演奏装置は自動演奏を行なうことができ、その基本構成は、図1に示すブロック図と同様である。また操作パネルを構成するタッチパネルの位置検出技術についても前述した第1実施形態と同様である。
図12に示す操作パネル120は、表示器121と、その表示器121上に配置された透明なタッチパネル122とから構成されている。
先ず、操作パネル120に表示された画面について説明する。
「TEMPO」123には、現在の演奏テンポが表示される。図12ではテンポ値として120が表示されている。
「PATTERN」124には、現在選択されているパターンが表示される。ここでは、ROCK_24/ORGが表示されている。
「DRUM SET」125には、現在選択されているパターンに割当てられているドラムセット名が表示される。ここでは“ROOM”が表示されている。
リセットアイコン126は、演奏がストップしているときに押すことにより、選択されているパターンの先頭に戻るためのものである。
ストップアイコン127は、演奏中に押すことにより、パターン演奏を停止するためのものである。
プレイアイコン128は、演奏停止中に押すことにより、選択されているパターンの演奏を開始するためのものである。
本実施形態では、プリセット・リズム・パターンを選択して自動演奏することができる。リズム・パターンは、6パターンで1組になっており、イントロ(INT)、エンディング(END)、オリジナル(ORG)、バリエーション(VAR)、フィルイン1(FL1)、フィルイン2(FL2)の6パターンから構成されている。これらの区分を「ディビジョン」と呼ぶ。
プレイアイコン128、ストップアイコン127を押すことで、選択されているパターンを繰り返して演奏することができる。
ここで、パターンの演奏テンポを変更するには、図12のテンポ値の表示領域をタッチペンでタッチしてから摺動操作する。
また、パターンの種類/ディビジョンを変更するには、図12のパターン名の表示領域124aをタッチペンでタッチしてから摺動操作する。
各パターン(ディビジョンも含む)には、リズム演奏に使用するリズム楽器をセット単位で割当てることができ、このセットを「ドラムセット」と呼ぶ。このドラムセットは、パターンごとに予め最適なものが割当てられている(プリセットセット)が、操作によって割当てを一時的に変更して演奏させることができるようになっている。
ドラムセットの割当てを変更するには、図12のドラムセット名の表示領域125aをタッチペンでタッチしてから摺動操作する。
図13は図12に示す操作パネルにおけるテンポ変更操作の説明図である。
図13のように、テンポ値の表示領域123aをタッチペンで上下方向に摺動すると一定摺動距離毎に10ずつ値を変更することができ、左右方向に摺動すると一定摺動距離毎に各1ずつ値を変更することができる。
したがって、大きく変更したいときは上下に、微調整したいときは左右に摺動すればよいので、シンプルな操作で簡単にテンポ調整ができる。
このように、上下の摺動距離に応じて大まかにパラメータを加減し、左右の摺動距離に応じて細かく加減すると、広い設定レンジを持つパラメータを設定するときに、早送り操作を行なう必要もなく、限定された領域でも、簡単かつ正確に設定を行なうことができる。
この操作手法はこの例に捕らわれることなく、粗調整、微調整を要するパラメータすべてに適用することが可能である。
図14は、図12に示す操作パネルにおけるリズム・パターンの変更操作の説明図である。
図14のようにパターン名の表示領域124aをタッチペンで上下方向に摺動すると、パターン種類を変更することができ、左右方向に摺動すると、ディビジョンを変更することができる。
したがって、リズムスタイルの異なるものを選択したいときは上下に、リズムスタイルは固定しておいて曲中での役割ごとに選択したいときは左右に摺動すればよいので、シンプルな操作で簡単に目的のパターンが選択できる。
この操作手法も、この例に捕らわれることなく、概念的に独立性の強い要素と、概念的に関連性の強い選択要素をもつすべてのパラメータの設定に適用することが可能である。
たとえば、縦方向で、パターンの音楽ジャンルを選択し、横方向で選択されている音楽ジャンルの中でのパターンバリエーションを選択するなどといった適用を行なってもよい。
図15は、図12に示す操作パネルにおける、リズム・パターンで使用するドラムセットの割当て変更操作の説明図である。
図15のように、ドラムセット名の表示領域125aを上下方向に摺動すれば、ドラムセットを仮選択することができる、これはパターンの演奏中などに、目的のセットを選択する途中で、他のドラムセットで演奏してしまわないためである。
そして、仮選択したのち、右方向に摺動すると、変更すべきドラムセットが確定して、セットが実際に切り換わる。
もしあやまって仮選択した場合には、仮選択した状態でタッチペンをタッチパネルから離すことによって直前のセットに戻すことができる。
またプリセット(デフォルト値)に戻す場合には仮選択してから左に摺動操作することによってプリセット(デフォルト値)に戻すことができる。
また、何回か確定操作を行って演奏したあとで、プリセットセット(デフォルト値)に戻したくなったら、仮選択してから左に摺動操作すれば、プリセットセットに割当てを戻すことができる。
したがって、この方式によれば、不用意に演奏状態を変えずにリズムセットの設定を変更し、さらに、変更後もいつでも初期設定に戻すことが、統一的にしかも簡単な操作で実現できる。この操作手法も、この例に捕らわれることなく、確定操作を要するパラメータすべてに適用することが可能である。