JP2005097026A - 吹付け用混和剤、吹付け材料、及びそれを用いた吹付け工法 - Google Patents

吹付け用混和剤、吹付け材料、及びそれを用いた吹付け工法 Download PDF

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【課題】 吹付けセメントコンクリート硬化体の耐凍結融解性が向上し、吹付け後のセメントコンクリートの斜面からのずり落ちを防止できる、吹付け用混和剤、吹付け材料、及びそれを用いた吹付け工法を提供すること。
【解決手段】 有機中空微粒子と促進剤を含有してなる吹付け用混和剤、有機中空微粒子の組成が、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、メチルメタクリレート、及びメタクリロニトリルの一種又は二種以上の共重合体を主成分とする該吹付け用混和剤、該吹付け用混和剤、セメント、及び骨材を含有する吹付け材料、並びに、該吹付け材料を圧送し、吹き付ける吹付け工法を構成とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、吹付け用混和剤、吹付け材料、及びそれを用いた吹付け工法、特に、吹付けセメントコンクリートの耐凍結融解性を向上するための吹付け用混和剤、吹付け材料、及びこれらの材料を使用して、崩れやすい法面や美観を有する法面に格子状に配置したフレームに吹き付けるセメントコンクリートの吹付け工法に関する。
セメントコンクリートの吹付け工法は、その施工の簡便さや進行の速さを理由に広く使用されている工法の1つである。
この工法の採用箇所は、トンネルの掘削によって生じた地山や、高速道路、ダム、及び急傾斜地を中心に、切り土や盛土によってできた傾斜面である法面が中心である。
とりわけ法面はそのままでは、自然風化や強雨等により、浸食や地滑りなどの法面崩壊が起こるので、法面を保護する必要がある。
従来、法面の崩壊を防止するため、法面に直接セメントコンクリートを吹き付ける方法が主流であり、法面の補強効果を増すために、法面に型枠を配置する方法が用いられている(特許文献1参照)。
法面に型枠を配置する方法としては、金網や複数本の鉄筋を法面に格子状(井桁状)に配置して法面型枠を作成し、格子状の法面型枠の各交点部にアンカーを打ち込んだ後に、法面型枠にコンクリートを吹き付けて鉄筋コンクリート構造物たるコンクリート枠を作って法面の安定を図る方法が用いられている。
これらの中では、法面を整形・カットすることなく、法面に直接配置できるフリーフレーム工法が用いられている。
このフリーフレーム工法は、変形可能な金網や鉄筋を法面に直に配置するものであり、形成されたフレームにセメントコンクリートを吹き付けて施工されている。
耐久性を向上させたフリーフレーム工法においても、吹付けでセメントコンクリート躯体を構築した場合、冬期の凍結融解による破壊が深刻化している。
耐凍結融解性を向上させるには、微細なエアをセメントコンクリート躯体に導入し、セメントコンクリート内部の水が凍結した際に、膨張した水の体積分をエアスペースに導入させることが有効となる。
しかしながら、吹付け施工した場合、AE剤等を使用してセメントコンクリート混練時に導入したエアは、圧送ホース中で消滅する傾向にあり、耐凍結融解性に必要なエア量を確保できない場合が多い。
法面の施工は冷え込みの激しい山間部が多いことから、冬期では凍結融解による劣化が顕著となる。そして、フリーフレーム工法はもとより、広く吹き付けたものは耐用年数が著しく低下し、数年で崩壊する場合もある。
また、吹付けにおいては、単位時間あたり吹き付ける量を高めるためにコンクリートのスランプを大きくする必要があるが、スランプが大きいと厚吹きに対応できず、一度吹き付けてから再度同じ面に吹き付ける場合に時間を要するという課題があった。
このため吹き付け直後にコンクリートの凝結を促進させ、コンクリートのずり落ちを防止する必要があった。
特公昭58−058493号公報
本発明は、冬期でも劣化が顕著となる凍結融解に対する耐凍結融解性を向上すること、吹き付け直後にセメントコンクリートの凝結を促進し、セメントコンクリートのずり落ちを防止することを目的とする。
本発明は、有機中空微粒子と促進剤を含有してなる吹付け用混和剤であり、有機中空微粒子の組成が、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、メチルメタクリレート、及びメタクリロニトリルの一種又は二種以上の共重合体を主成分とする該吹付け用混和剤であり、さらに、該吹付け用混和剤、セメント、及び骨材を含有する吹付け材料であり、該吹付け材料を圧送し、吹き付ける吹付け工法である。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明でいう(部)は特に規定のないかぎり質量基準である。
また、本発明ではセメントペースト、モルタル、及びコンクリートを総称してセメントコンクリートという。
本発明における、有機中空微粒子(以下、中空粒子という)は、粒子中に内包された空洞を有するものであり、吹付け時においても、内包された空洞はセメントコンクリート硬化体中へ導入され、耐凍結融解性に寄与するものであり、AE剤等によって導入された、吹付け時に消失するエアとは効果を異にするものである。
中空粒子の組成としては、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、メチルメタクリレート、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、及び酢酸ビニルの共重合体を主成分とするものであり、そのうち、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、メチルメタクリレート、及びメタクリロニトリルを共重合体のベースとすることが好ましい。
中空粒子の平均粒子径としては、3〜100μmが好ましく、10〜60μmがより好ましい。3μm未満では充分な耐凍結融解性が得られない場合があり、100μmを超えると耐凍結融解性が低下する場合がある。
中空粒子中に内包された空洞の割合は特に限定されるものではないが、中空粒子の20容量%以上が好ましく、40容量%以上が耐凍結融解性の面から好ましい。
中空粒子の内部には、n-ブタン、イソブタン、イソペンタン、及びネオペンタンなどの液やガスを内包させることが可能である。
中空粒子の使用量は特に限定されるものではないが、セメントコンクリート100容量部中、0.3〜10容量部が好ましく、0.5〜7容量部がより好ましい。0.3容量部未満では優れた耐凍結融解性が得られない場合があり、10容量部を超えると長期強度が低下する場合がある。
本発明で使用する促進剤とは、セメントの凝結を促進するものであれば特に限定されるものでなく、例えば、カルシウムアルミネートを含有する自硬性を有する粉体急結剤、アルカリ金属を含有する物質、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、及びケイ酸塩等が挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。
カルシウムアルミネートを含有する急結剤としては、例えば、電気化学工業社製の「ナトミックT-5」や「ナトミックT-10」などが挙げられる。この急結剤の中には、急結性状を向上させるような物質、例えば、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、及びアルミン酸塩等を含有させることが可能である。
アルカリ金属を含有する物質としては、アルカリ金属を含有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムを含む化合物であればよく、フッ化物、ケイ酸塩、ケイフッ化塩、及び明礬等のようなアルカリ金属を含有する材料の他に、アルカリ金属の酸化物、塩化物、水酸化物、硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩、リン酸1水素塩、リン酸2水素塩、ケイ酸塩、アルミン酸塩、硫酸塩、チオ硫酸塩、硫化塩、炭酸塩、重炭酸塩、シュウ酸塩、及びホウ酸塩等が使用可能であり、これら化合物のうちの一種又は二種以上が使用可能である。これらのうち、入手が容易であるリチウム、ナトリウム、又はカリウムの化合物が好ましく、ナトリウム又はカリウムの化合物がより好ましい。
硝酸塩としては特に限定されるものではなく、具体的には、硝酸塩や亜硝酸塩のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が挙げられ、そのうち、ナトリウム塩、カリウム塩、及びカルシウム塩の使用が経済的に好ましく、特に、硝酸カルシウムを用いた場合が、最も良好な結果が認められる。
硫酸塩としては、アルカリ金属硫酸塩、硫酸アルミニウム、及びミョウバン類が好ましく、これらの原料を主成分とした公知のアルカリフリー急結剤を使用することが可能である。
ケイ酸塩としては、珪酸ソーダや珪酸カリウムなどが好ましく、安価に入手可能であることから、水ガラスを使用することが好ましい。
その他の促進剤として、ギ酸塩、乳酸塩、チオシアン酸塩、及びアルカノールアミン等が使用可能である。
本発明で使用する促進剤の使用量は、セメント100部に対して、1〜20部が好ましく、2〜15部がより好ましい。1部未満ではセメントの凝結を促進する効果が薄い場合があり、20部を超えると長期強度発現性が阻害される場合がある。
さらに、本発明では、吹付けセメントコンクリートの硬化体の耐衝撃性や弾性の向上の面で、繊維を使用することが好ましい。
繊維としては、無機質や有機質いずれも使用可能である。無機質の繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、ロックウール、石綿、セラミック繊維、及び金属繊維等が挙げられ、有機質の繊維としては、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアクリル繊維、セルロース繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、パルプ、麻、木毛、及び木片等が挙げられ、これらの中では経済性の面で、金属繊維やビニロン繊維が好ましい。
繊維の長さは、圧送性や混合性等の面で、50mm以下が好ましく、5〜30mmがより好ましい。50mmを超えると圧送中に吹付けセメントコンクリートが閉塞する場合がある。また、繊維のアスペクト比は特に限定されるものではない。
繊維の使用量は、吹付けセメントコンクリート100容量部中、0.1〜3容量部が好ましく、0.4〜1.5容量部がより好ましい。0.1容量部未満だと耐衝撃性や弾性の向上の効果が小さい場合があり、3容量部を超えると圧送性が低下し、経済的でない場合がある。
本発明で使用するセメントとしては、JIS R 5210に規定される各種ポルトランドセメント、JIS R 5211、JIS R 5212、及びJIS R 5213に規定される各種混合セメント、JISに規定された以上の混和材混合率にて作製した高炉セメント、フライアッシュセメント、及びシリカセメント、並びに、石灰石粉末等を混合したフィラーセメントが挙げられる。
本発明では、前記各材料や、砂や砂利等の骨材の他に、減水剤や凝結遅延剤を本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で併用することが可能である。
減水剤としては、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、及びポリカルボン酸系高分子化合物等が使用可能である。
凝結遅延剤は、セメントコンクリートの凝結を調整するものであり、その具体例としては、オキシカルボン酸又はその塩類、リン酸塩、及び糖類等が挙げられる。
本発明で使用する骨材は、吸水率が低くて、骨材強度が高いものが好ましく、細骨材率や骨材の最大寸法は吹き付けできれば特に制限されるものではない。
細骨材としては、川砂、山砂、石灰砂、及び珪砂等が使用でき、粗骨材としては、川砂利、山砂利、及び石灰砂利等が使用できる。
本発明の吹付け工法においては、従来から使用されている吹付け設備等が使用可能である。
本発明の吹付け工法としては、要求される物性、経済性、及び施工性等に応じた種々の吹付け工法が可能である。例えば、湿式吹付け工法として、セメント、細骨材や粗骨材、及び水等を加えて混練したものを、空気で圧送し、その途中に設けたY字管の一方から、吹付け用混和剤供給装置により吹付け用混和剤を空気圧送し、セメントコンクリートと合流・混合したものを吹き付ける方法等が挙げられる。
吹付け用混和剤のセメントコンクリートへの混合は、吹付け用混和剤が均一に強制的に入るようなシャワーリングや吹付け圧送エアーと同時混合によりセメントコンクリートに混合して吹き付けることが好ましい。
圧送ホース中のY字管の取付け位置は、吐出口より手前に0.1〜100mが好ましく、3〜20mが混合性や圧送性等を考慮するとより好ましい。100m以上ではホースが閉塞するがある。
本発明で使用する吹付け材料を使用した法面吹付け工法としては、吹付け材料を直に法面へ吹き付けてもよいが、補強効果を増すために、鉄筋類等を配置してフレーム骨格を形成しその上に吹き付ける工法が好ましく、そのうち、フリーフレーム工法がより好ましい。
ここで、鉄筋類とは、金網や鉄筋等からなるもので、これらを組み合わせてフレーム骨格を形成して、それに、セメントコンクリートを吹き付け、鉄筋類含有セメントコンクリートフレームとするものである。
フリーフレーム工法に使用する鉄筋類の配置方法としては特に制限されるものではないが、通常、幅30〜60cm、長さ1〜3m程度の金網(波形鉄筋φ1〜3mm)を2枚平行に金網の幅と同程度の間隔で、長手方向を法面に沿って配置し、継ぎ足してゆく。平行に立てた2枚の金網に鉄筋等のスペーサーを用いて、フレーム骨格を形成する。
このフレーム骨格を縦横に延長する際、この交点部にアンカーを打ち込むことが好ましい。また、このフレーム骨格の交点部に交点部用フレーム骨格を用いることも可能である。
このように配置したフレーム骨格に吹付け材料を用いて吹付けを行い、フレーム骨格の鉄筋類からはみ出した部分をコテ仕上げすることで、フレームの美観を保つ。
法面で使用する吹付け用のセメントコンクリートは、モルタルの場合には、単位セメント量270〜600kg/m3で、W/C35〜65%が好ましく、コンクリートの場合には、さらにs/a50〜100%が好ましく、材齢4週の圧縮強度が15N/mm2以上であることが好ましい。
本発明の吹付け用混和剤を用いると、吹付けセメントコンクリート硬化体の耐凍結融解性が向上し、吹付け後のセメントコンクリートの斜面からのずり落ちを防止できるなどの効果を奏する。
単位セメント量430kg/m3、W/C50%、及びs/a70%のコンクリート配合を用い、表1に示す中空粒子を混和し、スランプが20cm程度になるように減水剤の使用量を調整してベースコンクリートを調製した。
吐出量4m3/hのベースコンクリートと7m3/minの圧送空気を、2インチで40mの圧送ホースを介して送給した。
一方、吐出口から手前10mに取付けた分岐管に圧送空気とともに、セメント100部に対して、7部の促進剤イを圧送し、ベースコンクリートに合流混合してコンクリートとし、50×50×30cmの木枠の中へ吹き付けを行った。得られたコンクリート硬化体からサンプルを切り出して、耐凍結融解性を評価した。結果を表1に併記する
なお、比較のため、中空粒子を混和しないでAE剤でエアを5容量%含有させたベースコンクリートも同様に吹き付けた。結果を表1に併記する。
<使用材料>
中空粒子A:アクリロニトリル/メチルメタクリレート/塩化ビニリデンが55/36/9の共重合体、粒子の平均サイズ40μm
中空粒子B:メタアクリレート/アクリロニトリルが26/74の共重合体、粒子の平均サイズ40μm
促進剤イ :珪酸ソーダ水溶液、SiO2/Na2Oモル比3、成分濃度30%、密度1.30
セメント :普通ポルトランドセメント、比重3.16
砂 :新潟県姫川産、比重2.62、FM値2.86
砂利 :新潟県姫川産、比重2.63、12mm以下
減水剤 :ポリカルボン酸系高性能減水剤、市販品
<測定方法>
エア量:JIS A 1128 「フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法」に準じて測定
耐凍結融解性:JIS A 1148 「コンクリートの凍結融解試験方法」に準じてA法水中凍結水中融解試験方法に準じて凍結融解300サイクル後の相対動弾性係数を測定。なお、300サイクルに達する前に破壊したものは×とした。
Figure 2005097026
表2に示す促進剤を使用し、中空粒子Aをベースコンクリート100容量部中、3容量部使用して吹付け時の重ね吹き状態を確認し、耐凍結融解性を評価したこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
<使用材料>
促進剤ロ :カルシウムアルミネート系粉体急結剤、市販品、密度2.6
促進剤ハ :アルミン酸塩系液体急結剤、市販品、密度1.5
<測定方法>
重ね吹き状態:吹付けコンクリートを斜度70°の1m2の斜面に10cmの厚みで吹き付けた後、1時間放置し、再度同じ面に10cm吹き付けた時の崩落を観察した。吹き付けたものの半分以上がずり落ちした場合は×、少しずり落ちした場合は△、全くずり落ちしない場合は○。
Figure 2005097026

Claims (4)

  1. 有機中空微粒子と促進剤とを含有してなる吹付け用混和剤。
  2. 有機中空微粒子の組成が、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、メチルメタクリレート及びメタクリロニトリルの一種又は二種以上の共重合体を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の吹付け用混和剤。
  3. 請求項1又は2に記載の吹付け用混和剤と、セメントや骨材を含有する吹付け材料。
  4. 請求項3に記載の吹付け材料を圧送し、吹き付けることを特徴とする吹付け工法。
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