JP2005090863A - 燃料電池自動車用の熱交換器 - Google Patents
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Abstract
【課題】 純水導電率を上昇させることなく軽量化を図ることができる燃料電池自動車用の熱交換器を提供する。
【解決手段】 冷媒として純水が導入されるチューブ2と冷却フィンとを交互に積層したコア部5の両端にタンク部材6をそれぞれ設けた燃料電池自動車用の熱交換器1であって、各タンク部材6を樹脂材にて形成し、この内面にイオン溶出防止層9を形成した。このイオン溶出防止層9をタンク部材6の内面に形成することによって、タンク部材6を構成するポリアミド樹脂自体からの溶出成分が純水に溶出するのを防止する。
【選択図】 図3
【解決手段】 冷媒として純水が導入されるチューブ2と冷却フィンとを交互に積層したコア部5の両端にタンク部材6をそれぞれ設けた燃料電池自動車用の熱交換器1であって、各タンク部材6を樹脂材にて形成し、この内面にイオン溶出防止層9を形成した。このイオン溶出防止層9をタンク部材6の内面に形成することによって、タンク部材6を構成するポリアミド樹脂自体からの溶出成分が純水に溶出するのを防止する。
【選択図】 図3
Description
本発明は、例えば燃料電池自動車用の熱交換器に関し、詳細には、樹脂タンクの純水への樹脂溶出を防止する技術に関する。
例えば、駆動源として燃料電池を搭載した燃料電池自動車であるFCEV車(fuel cell electric vehicle)の冷却系には、電極等の導電性部材が燃料電池内部に多く存在するため、感電防止の観点より冷媒の導電性を低レベルにする必要があり、冷媒として極めて導電性の小さい純水が使用されている。一方、冷却系システムを構成する部品としては、導電率を悪化させないようにするために極力ステンレスを使用し、熱交換器には、軽量小型化のためにアルミニウムを使用している。
しかしながら、熱交換器をアルミニウムで形成した場合には、チューブ内を流通する純水によってアルミ材が腐食し、金属イオンが純水に混入するため、当該純水の導電率が悪化する。これを防止するために、アルミニウムからなる熱交換器の内面に、フェノール系、アクリル系、エポキシ系の熱硬化型有機樹脂を塗布した熱交換器が提案されている(例えば、特許文献1など参照)。
特開2001−167782号公報(第4頁及び第5頁、図1及び図2)
ところが、アルミニウムで形成した熱交換器では、樹脂成型品に比べて重量が重く、製造に際してアルミ溶接などの工程を必要とすることから工数がかかる。そこで、これらの課題を解消すべく、内燃機関エンジン冷却系で使用されている熱交換器(ラジエータ)のように、タンク部材をポリアミド樹脂材(PA)で形成することが考えられる。
しかし、ポリアミド樹脂にてタンク部材を形成すると、ポリアミド樹脂自体からの溶出成分により、純水導電率が上昇する。このため、純水を冷媒とする燃料電池自動車用の熱交換器では、ポリアミド樹脂からなるタンクの採用は困難である。
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、純水導電率を上昇させることなく軽量化を図ることができる燃料電池自動車用の熱交換器を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための請求項1の発明は、冷媒として純水が導入されるチューブと冷却フィンとを交互に積層したコア部の両端にタンク部材をそれぞれ設けた燃料電池自動車用の熱交換器であって、各タンク部材を樹脂材にて形成し、且つ、その内面にイオン溶出防止層を形成したことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1記載の燃料電池自動車用の熱交換器であって、イオン溶出防止層は、熱硬化型樹脂を塗布して形成されたことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1記載の燃料電池自動車用の熱交換器であって、イオン溶出防止層は、低イオン溶出樹脂フィルムを貼着して形成されたことを特徴とする。
熱硬化型樹脂としては、例えばフェノール系、アクリル系、エポキシ系の熱硬化型有機コーティング材が使用できる。
ここで定義する低イオン溶出樹脂フィルムは、例えばポリプロピレン(PP)などのオレフィン系樹脂からなるフィルム、ポリエステル系またはエンジニアリングプラスチック系樹脂からなるフィルムである。
請求項1に記載の発明によれば、タンク部材を樹脂材で形成すると共にその内面にイオン溶出防止層を形成したので、樹脂によって熱交換器を軽量化できると共に、イオン溶出防止層によってタンク部材を構成する樹脂自体からのイオン溶出成分の純水中への溶出を防止することができ、結果として純水導電率の上昇を抑えることができる。
請求項2に記載の発明によれば、イオン溶出防止層を熱硬化型樹脂を塗布して形成したので、このイオン溶出防止層によりタンク部材を構成する樹脂自体からのイオン溶出成分の純水中への溶出を防止することができる。また、本発明によれば、イオン溶出防止層を塗布によって形成しているので、簡単にタンク内面にイオン溶出防止層を形成することができる。
請求項3に記載の発明によれば、イオン溶出防止層を低イオン溶出樹脂フィルムで形成したので、この低イオン溶出樹脂フィルムによりタンク部材を構成する樹脂自体からのイオン溶出成分の純水中への溶出を防止することができる。また、本発明によれば、イオン溶出防止層をフィルムの貼着によって形成しているので、簡単にタンク内面にイオン溶出防止層を形成することができる。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施の形態は、本発明を燃料電池自動車用の熱交換器に適用したものである。
図1〜図5は、本発明の一実施形態を示し、図1は熱交換器の正面図、図2はタンク部材の組み付け箇所の分解斜視図、図3は図1のA−A線断面図、図4は各種の樹脂材を純水に浸漬し、一定時間経過後の純水の導電率を示す図、図5は熱交換器の製造方法の工程図である。
図1に示すように、燃料電池自動車用の熱交換器1は、チューブ2と冷却フィン3が交互に積層され、これら積層体の両端に一対の座板4が配置されたコア部5と、このコア部5の両端に固定された一対のタンク部材6とから主に構成されている。
コア部5は、チューブ2、冷却フィン3及び座板4の互いの接触箇所がろう付けによって固定されている。チューブ2は、アルミニウム材より偏平長尺形状を有し、内部に純水の流路が形成されている。冷却フィン3は、アルミニウム材より波形状を有し、チューブ2内の純水と周囲通過の空気との熱交換を促進させる。各座板4は、アルミニウム材より形成され、適当間隔に形成されたチューブ嵌合孔4a(図2、図3に示す)にチューブ2の端部を嵌合させている。
そして、チューブ2や座板4の少なくとも純水の流路になる内面には樹脂コーテング層7(図3に示す)が形成されている。具体的には、チューブ2の内部流路の内面、チューブ2の端部の外面、座板4の内面などである。樹脂コーテング層7は、純水中へのイオンの溶出が極めて少ない樹脂材より形成され、具体的には、フェノール系、アクリル系、エポキシ系等の熱硬化型有機樹脂からなる。
図2及び図3に詳しく示すように、各タンク部材6は、一面が開口された直方体形状を有し、この開口された端部側をパッキン8を介して座板4に突き当て、且つ、座板4の周縁部分を加締めることによって各座板4にそれぞれ固定されている。各タンク部材6には、パイプ10と車両取り付けナット11等の部品が一体成形によって付設されている。各タンク部材6は、ポリアミド樹脂を射出成形することによって形成されている。
タンク部材6をポリアミド樹脂で形成しただけでは、ポリアミド樹脂自体からの溶出成分が純水に混入するので、本実施の形態では、これらタンク部材6の内面にイオン溶出防止層9を形成している。イオン溶出防止層9は、前記樹脂コーテング層7と同様、純水中へのイオンの溶出が極めて少ない樹脂材より形成され、具体的には、フェノール系、アクリル系、エポキシフェノール系等の熱硬化型有機樹脂からなる。
また、パッキン8は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコンゴム、ブチルゴム(IIR)、フッ素ゴム等のイオン溶出しない素材で形成されている。
次に、上記した燃料電池自動車用の熱交換器1の製造工程を説明する。図5に示すように、熱交換器1は、第1組み付け工程(ステップS1)、フラックス塗布工程(ステップS2)、ろう付け工程(ステップS3)、洗浄工程(ステップS4)、コーテング工程(ステップS5)、第2組み付け工程(ステップS11)が順次行われると共に、第2組み付け工程(ステップS11)で使用するタンク部材6を作成するタンク樹脂成形工程(ステップS20)、タンク内面へのコーテング工程(ステップS21)が行われることによって製造される。
第1組み付け工程(ステップS1)では、アルミニウム材からなるチューブ2と、同じくアルミニウム材からなる冷却フィン3とを交互に積層し、この積層されたチューブ2の両端部にアルミニウム材からなる一対の座板4を組み付けてコア部5を仮組みする。各チューブ2の端部は、各座板4のチューブ嵌合孔4aから外面に貫通された状態とされる。
フラックス塗布工程(ステップS2)では、上記コア部5にフラックス水溶液を流しかけたり、シャワーする。そして、このコア部5に熱風を吹き付けてフラックス水溶液の水分を除去し、これでフラックスの塗布が完了する。
ろう付け工程(ステップS3)では、上記コア部5を加熱処理して各チューブ2と各冷却フィン3と各座板4の互いの接触箇所をろう付けしてコア部5を固定する。
洗浄工程(ステップS4)では、例えば、上記コア部5を100℃の純水中に24時間浸漬することによりフラックスを除去する。
コーテング工程(ステップS5)では、フラックス除去したコア部5に対し、少なくとも純水の流路になる内面に樹脂コーテング液を塗布して樹脂コーテング層7を形成する。具体的には、コーテング工程は、塗布工程(ステップS6)、乾燥工程(ステップS7)及び焼き付け工程(ステップS8)を有している。
塗布工程(ステップS6)では、コーテング剤を所定の濃度で溶剤に希釈したコーテング液をコア部5内に充填した後、充填したコーテング液をコア部5内より排出することによってコア部5の内面にコーテング液を塗布する。
乾燥工程(ステップS7)では、チューブ2が上下方向となる方向にコア部5を配置して常温で所定時間放置し、その後にチューブ2が水平方向となる方向にコア部5を配置して常温で所定時間放置することにより、コア部5の内面に塗布されたコーテング液を乾燥させる。
焼き付け工程(ステップS8)では、焼き付け炉内にコア部5を入れてコア部5を焼成することによりコート剤をコア部5の内面に焼き付ける。
一方、タンク樹脂成形工程(ステップS20)では、ポリアミド樹脂を射出成形してタンク部材6を成形する。
コーテング工程(ステップS21)では、タンク部材6に対し、少なくとも純水の流路になる内面に樹脂コーテング液を塗布してイオン溶出防止層9を形成する。具体的には、コーテング工程(ステップS21)は、塗布工程(ステップS22)、乾燥工程(ステップS23)及び焼き付け工程(ステップS24)を有し、これらの具体的内容は上述したステップS6〜S8と同様であるため、省略する。
第2組み付け工程(ステップS11)では、一対の座板4の外面にタンク部材6をパッキン8を介して組み付け、各座板4の周縁箇所を加締め加工してタンク部材6を固定する。以上により、熱交換器1の製造が完了する。
このように製造された熱交換器1は、一対のタンク部材6が樹脂材にて形成されているため、軽量化される。また、コア部5の内面には樹脂コーテング層7が形成されているため、腐食が防止されると共に金属イオンの溶出がない。また、タンク部材6の内面に形成したイオン溶出防止層9によって、タンク部材6を構成するポリアミド樹脂自体からの溶出成分の純水中へ溶出を防止できる。以上より、本実施の形態の熱交換器1によれば、純水導電率を上昇させることなく軽量化を図ることができる。
上記実施の形態では、タンク部材6をポリアミド樹脂にて形成したので、従来のタンク部材6の成形設備及び成形マニュアルによって作成できる。尚、タンク部材6をポリアミド樹脂以外の樹脂で成形しても良いことはもちろんであり、選択樹脂材の要件としてイオン溶出性を考慮する必要がない。従って、樹脂製のタンク部材6とする場合に、樹脂選択の自由度が広がる。
上記実施の形態では、タンク部材6のイオン溶出防止層9は、純水中へのイオンの溶出が極めて少ないフェノール系、アクリル系、エポキシ系等の熱硬化型樹脂を塗布して形成したが、低イオン溶出樹脂からなるフィルムをタンク部材6の内面に貼着して形成した、低イオン溶出樹脂フィルムをイオン溶出防止層9としても良い。
低イオン溶出樹脂フィルム材としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド樹脂(PI)等のエンジニアリングプラスチック系のフィルムが使用できる。また、低イオン溶出樹脂フィルム材としては、ポリ沸化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、パーフロロアルキルビニルエーテル樹脂(PFA)等があり、これらを適宜使用しても良い。これらイオン溶出防止層を内面に形成することによっては、図4に示すように、一定時間経過後の純水の導電率がポリアミド樹脂(PA)に対し数分の一以下を示し、純水中にほとんどイオン溶出しない。
上記実施の形態では、パッキン8をエチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコンゴム、ブチルゴム(IIR)、フッ素ゴム等のイオン溶出しない材料で形成したので、パッキン8から純水へのイオン溶出もないため、パッキン8による純水導電率の上昇も確実に抑制される。
1 熱交換器
2 チューブ
3 冷却フィン
5 コア部
6 タンク部材
9 イオン溶出防止層
2 チューブ
3 冷却フィン
5 コア部
6 タンク部材
9 イオン溶出防止層
Claims (3)
- 冷媒として純水が導入されるチューブ(2)と冷却フィン(3)とを交互に積層したコア部(5)の両端にタンク部材(6)をそれぞれ設けた燃料電池自動車用の熱交換器(1)であって、
前記各タンク部材(6)を樹脂材にて形成し、且つ、その内面にイオン溶出防止層(9)を形成した
ことを特徴とする燃料電池自動車用の熱交換器(1)。 - 請求項1記載の燃料電池自動車用の熱交換器(1)であって、
前記イオン溶出防止層(9)は、熱硬化型樹脂を塗布して形成された
ことを特徴とする燃料電池自動車用の熱交換器(1)。 - 請求項1記載の燃料電池自動車用の熱交換器(1)であって、
前記イオン溶出防止層(9)は、低イオン溶出樹脂フィルムを貼着して形成された
ことを特徴とする燃料電池自動車用の熱交換器(1)。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003324743A JP2005090863A (ja) | 2003-09-17 | 2003-09-17 | 燃料電池自動車用の熱交換器 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003324743A JP2005090863A (ja) | 2003-09-17 | 2003-09-17 | 燃料電池自動車用の熱交換器 |
Publications (1)
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JP2003324743A Pending JP2005090863A (ja) | 2003-09-17 | 2003-09-17 | 燃料電池自動車用の熱交換器 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US8474518B2 (en) | 2007-03-19 | 2013-07-02 | Denso Corporation | Automobile cooling system component |
KR101471396B1 (ko) * | 2008-12-10 | 2014-12-10 | 한라비스테온공조 주식회사 | 금속재 보강층 구비 라디에이터 탱크 |
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2003
- 2003-09-17 JP JP2003324743A patent/JP2005090863A/ja active Pending
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