JP2005089913A - 無機繊維およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐水性を維持しながらも、より優れた生体溶解性を発現させる。
【解決手段】加熱処理により分相しているアルカリ土類ケイ酸塩繊維からなる無機繊維。アルカリ土類ケイ酸塩繊維が、MgO、SrO、およびSiOの成分を含むことを特徴とする前述の無機繊維。アルカリ土類ケイ酸塩繊維が、さらにCaO成分を含むことを特徴とする前述の無機繊維。アルカリ土類ケイ酸塩繊維を600℃以上850℃以下で加熱処理して分相させることを特徴とする無機繊維の製造方法。アルカリ土類ケイ酸塩繊維が、MgO、SrO、およびSiOの成分を含むことを特徴とする前述の無機繊維の製造方法。アルカリ土類ケイ酸塩繊維が、さらにCaO成分を含むことを特徴とする前述の無機繊維の製造方法。
【選択図】図3

Description

本発明は、耐熱性および断熱性を有する無機繊維とその製造方法に関するものであり、特に、生体内において溶解性を有することによって、人体に吸入されても有害性が小さく、かつ優れた耐水性を有する無機繊維とその製造方法に関するものである。
無機繊維の用途は多岐にわたっている。無機繊維は、一般に、耐熱性や断熱性に優れることから、特に、耐熱、防火、断熱、保温などの特性が要求される材料の原料および素材として使用されることが多い。
無機繊維は、天然のものと人工のものとに大別される。天然の無機繊維の代表的なもののひとつとしては、アスベストを挙げることができる。アスベストは、体内に吸入されると、呼吸器疾患、さらには、がんを発生させることが知られており、国際がん研究機関(IARC)でも発癌性物質であるグループ1に分類されている。一方、人工の無機繊維に関しては、その空気力学的特性がアスベストに類似するものは、アスベストと同様に、その吸入による有害性の可能性が指摘されている。
無機繊維の有害性は、吸入される繊維の、1)量、2)径、長などの寸法、3)体内での耐久性、という3つの要因に大きく依存することが報告されている。近年、特に、上記3)の吸入繊維の体内での耐久性という要因が注目され、吸入繊維が体内で溶解し、その溶解した成分が有害でなければ、その繊維の有害性は小さいという認識がなされた。この認識は、無機繊維の産業界に溶解性無機繊維の開発を促す結果となった。
上記の溶解性無機繊維のひとつとして、例えば、特許文献1に開示される非晶質アルカリ土類ケイ酸塩繊維(AES繊維)が挙げられる。
特願2002−196906号明細書
無機繊維を原料のひとつとする材料等の製造方法には、湿式すなわち無機繊維を水中に分散させたスラリーを調製する工程を含む場合が数多く存在する。例えば、無機繊維質の成形品は、無機繊維と結合材等を水中で攪拌混合して調製したスラリーを型に吸引する方法(いわゆる湿式真空成形法)によって製造されている。また、無機繊維は、高温多湿地域での保管・貯蔵された後、使用されることもあり得る。これらのことを考慮すると、生体溶解性を有するAES繊維にも、耐水性が要求される。しかしながら、生体溶解性と耐水性は相反する特性であり、生体溶解性が増大すれば、必然的に耐水性が低下してしまう。したがって、上記のような耐水性が求められる用途においては、結果として、生体溶解性を有するとされている無機繊維の中から、比較的生体溶解性が低い種類のものを選択して、使用せざるを得ない場合がある。このような理由から、AES繊維には、耐水性を維持しながらも、より優れた生体溶解性を発現することが要求されている。
一般に、無機繊維の溶解性は、その熱履歴に大きく依存する。しかしながら、上記のAES繊維の熱履歴が、それ自身の溶解性に及ぼす影響については、ほとんど明らかになっていない。無機繊維が耐火断熱の用途に使用されることを考慮すれば、無機繊維の熱履歴の違いによる溶解性の変化を理解することは重要である。
そこで本発明は、耐水性を維持しながらも、より優れた生体溶解性を発現することができる、生体溶解性および耐水性を有する無機繊維およびその製造方法を提供することを目的としている。
本願発明者は、AES繊維の熱履歴と溶解性との関係を明らかにするという視点のもとに、鋭意検討を重ねた結果、アルカリ土類ケイ酸塩繊維を加熱処理により分相した状態にすると、繊維の生体溶解性は著しく増大するものの、単なる水への溶解性はほとんど変化しないことを見出した。本発明は、この知見によってなされたものである。
本発明の解決手段を例示すると、以下に示す無機繊維とその製造方法である。
(1)加熱処理により分相しているアルカリ土類ケイ酸塩繊維からなる無機繊維。
(2)前記アルカリ土類ケイ酸塩繊維が、MgO、SrO、およびSiOの成分を含むことを特徴とする前述の無機繊維。
(3)アルカリ土類ケイ酸塩繊維が、CaO成分を含むことを特徴とする前述の無機繊維。
(4)アルカリ土類ケイ酸塩繊維が、600℃以上850℃以下の範囲の温度において加熱処理されていることを特徴とする前述の無機繊維。
(5)2%グリシン水溶液への溶解率が300μg/ml以上であり、かつ、水への溶解率が200μg/ml以下であることを特徴とする前述の無機繊維。
(6)アルカリ土類ケイ酸塩繊維を600℃以上850℃以下で加熱処理して分相させることを特徴とする無機繊維の製造方法。
(7)アルカリ土類ケイ酸塩繊維が、MgO、SrO、およびSiOの成分を含むことを特徴とする前述の無機繊維の製造方法。
(8)アルカリ土類ケイ酸塩繊維が、CaO成分を含むことを特徴とする前述の無機繊維の製造方法。
(9)650℃以上750℃未満で1時間以上30時間未満加熱処理することを特徴とする前述の無機繊維の製造方法。
(10)600℃以上650℃未満で30時間以上加熱処理することを特徴とする前述の無機繊維の製造方法。
(11)750℃以上850℃以下で1時間未満加熱処理することを特徴とする前述の無機繊維製造方法。
上述のように、本発明の無機繊維は、生体溶解性と耐水性という本来的には相反する2つの特性を兼ね備えている。すなわち、本発明の無機繊維は、より優れた生体溶解性を発現しながらも、耐水性を維持しているため、水中での処理工程を経る場合や、高温多湿地域で保管・貯蔵しても、その後の使用に何ら問題を生じることがない。
以下に、本発明の最良の形態を、更に詳細に説明する。
本発明の無機繊維は、加熱処理により分相しているアルカリ土類ケイ酸塩繊維(AES繊維)であり、好適には、MgO、SrO、及びSiOの成分及び必要に応じてCaO成分を含有する組成のAES繊維である。
本願発明者は、まず、AES繊維の加熱処理温度が前記繊維の溶解性に及ぼす影響を調査するために、表1に示す化学組成および繊維径分布を有する2種類のAES繊維(#01および#02)に110〜1260℃の範囲の温度で24時間の加熱処理を行い、表2の結果を得た。即ち、表1に示すAES繊維について表2に示す加熱処理を行い、それぞれの温度で加熱処理されたAES繊維について、生体溶解性と耐水性の評価を行った。また、前記加熱処理されたAES繊維については、粉末X線回折分析を行い、相の同定を行った。
Figure 2005089913
Figure 2005089913
次に、繊維の生体溶解性および耐水性の評価方法について説明する。
一般に、繊維に限らず、人体に吸入された粉じんの体内での溶解性は、単なる水への溶解性とは異なることが多い。ある種の物質は、呼吸器内においてアミノ酸やタンパク質の存在下で、その溶解性が著しく変化することが知られている。したがって、溶解性の変化は、個々の物質についてそれぞれ検討するより他はなく、AES繊維も例外ではない。このような理由から、生体溶解性の評価は、前記AES繊維のアミノ酸水溶液に対する溶解率を測定することにより行った。アミノ酸水溶液としては、最も単純なアミノ酸であるグリシンの2重量%水溶液を使用した。
耐水性の評価は、前記AES繊維の蒸留水に対する溶解率を測定することにより行った。
さらに、前記の生体溶解性および耐水性の評価のための、繊維の溶解率の測定に使用する液体(2重量%グリシン水溶液または蒸留水)には、pH4を示すフタル酸塩:C(COOK)(COOH)の0.05mol/l溶液を添加した。このフタル酸塩溶液の添加は次の理由による。一般に、肺胞内に沈着した粉じんのクリアランスはマクロファージと呼ばれる食細胞によって行われると考えられている。粉じんを貪食したマクロファージは活性化され、活性酸素やタンパク分解酵素などを放出するため、マクロファージに取り込まれた粉じんはpH4付近の酸性環境に曝されると言われている。そこで、本発明の溶解性の評価では、溶解実験の初期条件として、液体を上記の酸性環境に設定するため、pH4を示すフタル酸溶液の添加を行ったのである。フタル酸イオン自身は、一般に、ガラスの溶解にはほとんど影響を及ぼさないことが知られている。
また、一般に、アルカリ土類成分の液体への溶出は、pHを上昇させるが、pHが11〜13になると、溶出したMgイオンは水酸化物となって沈殿してしまう。このような溶出成分の沈殿は、溶解率の測定に支障を来すことがあり得る。したがって、フタル酸塩溶液の添加によって、実験の初期条件を酸性側に設定しておくことは、上記の溶出成分の沈殿を防ぐ効果をも有する。
AES繊維の溶解率の測定方法の詳細は以下の通りである。まず、200メッシュ(目開き0.075mm)のふるいを通過するまで解砕した繊維試料を1g精秤する。それを300mlのコニカルビーカーにとり、2重量%グリシン水溶液あるいは蒸留水を150ml加え、さらに、前述の0.05mol/lフタル酸塩水溶液を5ml添加した後、コニカルビーカーに栓をする。前記の繊維試料および液体が入ったコニカルビーカーを40℃に制御された恒温水槽に設置して、120rpmの速度で50時間の水平振とうを行う。その後、ガラスろ過器によるろ過および乾燥を行い、不溶解繊維を精秤して、溶解による繊維の減量を求める。溶解による繊維の減量から、液体の単位体積当たりの繊維の溶解重量を算出し、これを繊維の溶解率とした。また、ろ過により不溶解繊維から分離された液体のpHの測定を行った。
粉末X線回折分析(XRD)によって得られた、表1に示すAES繊維試料#01および#02の加熱処理による相の変化を図1に示す。
図1に示されているデータは、試料を各温度で24時間加熱処理した後、粉末X線回折分析によって相の同定を行った結果であるため、相変化が生じる厳密な温度を求めることが困難である。この点を補うという意味もあって、時間とともに試料の加熱温度を上昇させていくという動的な分析方法である示差熱分析を行っている。図1に示す温度や、以下の説明で使う温度は、厳密なものでなく、たとえば、「700℃」は700℃前後の温度を意味する。
図1に示すように、繊維試料#01及び#02は、どちらも、加熱処理温度が700℃までの場合は、非晶質(ガラス質)である。加熱処理温度が800℃以上になると、AES繊維の結晶化が生じ、AES繊維の化学組成の系に応じた結晶質アルカリ土類ケイ酸塩の相が生成する。すなわち、MgO−SrO−SiO系組成の#01では、800℃でエンスタタイト(理想式:MgSiO)が生成する。このエンスタタイトは1100℃でプロトエンスタタイトに転移する。さらに、1100℃で結晶質シリカ相であるクリストバライトが生成する。一方、MgO−CaO−SrO−SiO系組成の#02では、800℃でオージャイト(理想式:(Ca,Mg)SiO)が生成し、さらに、1260℃で結晶質シリカ相であるクリストバライトが生成する。
すなわち、繊維試料#01および#02は、800℃で、エンスタタイト、オージャイト等の結晶質アルカリ土類ケイ酸塩と、該結晶質アルカリ土類ケイ酸塩の生成に関与しなかった余剰のシリカに変化し、該余剰のシリカは、1000℃以下では非晶質であるが、1100℃以上になると、結晶質シリカであるクリストバライトに変化すると見なすことができる。
次に、表1に示す繊維試料#01(MgO−SrO−SiO系組成)の加熱処理温度と溶解率との関係を図2に、また、繊維試料#02(MgO−CaO−SrO−SiO系組成)の加熱処理温度と溶解率との関係を図3に示す。
2%グリシン水溶液に対する場合は、#01および#02どちらの場合も、繊維の加熱処理温度が高くなるにしたがって溶解率が急激に上昇し、加熱処理温度が700℃であるときに極大になり、その後、加熱処理温度が800℃になると急激に減少する。一方、蒸留水に対する場合は、#01および#02どちらも、グリシン水溶液の場合のような繊維の溶解率の急激な変化は認められない。また、繊維の加熱処理温度が800℃以上では、グリシン水溶液に対する場合と蒸留水に対する場合とで、溶解率には、ほとんど差が認められない(図2および3)。
繊維試料#01および#02どちらも、2%グリシン水溶液に対して、700℃で24時間加熱処理されたものは、他の温度で処理されたものに比べ、著しく高い溶解率を示した(図2および3)。このような繊維の溶解率の増大は、700℃付近での加熱処理によって繊維に分相が生じ、アルカリ土類成分に富むガラス相が生成することによるものと考えることができる。このアルカリ土類成分に富むガラス相は、グリシン水溶液に対して、もとの組成よりも溶解しやすいと考えられる。
分相は、融点以下の温度で、均一な多成分ガラスが、異なる2種類以上の組成のガラス相に分かれる現象である。分相で生じる、組成の異なる複数の相は、顕微鏡やX線でも内部に結晶構造は確認されず、いずれも完全なガラス相である。従って分相は、失透、結晶化とは別の現象であると理解されている。しかしながら、ある種の非晶質材料では、加熱された場合に、結晶化が起こる前に分相が起こることが知られており、分相構造は、結晶化ガラスの製造のための結晶核形成の前段階として望ましい構造であると考えられている。
グリシン水溶液中で高い溶解率を示す、700℃で24時間加熱された繊維は、いずれも非晶質である。そして、さらに100℃高い温度である800℃で加熱処理されると、繊維に結晶化が起こり、繊維の組成系に対応した結晶質アルカリ土類ケイ酸塩が生成する(図1)。すなわち、700℃という加熱処理温度は、前記AES繊維にとって、結晶核形成の前段階となる温度に相当する。したがって、本発明におけるAES繊維も、700℃、24時間での加熱処理によって分相が生じたと考えることができる。
分相では、より低い融点をもつ低温成分と、シリカ成分に富む高温成分との2相に分離することがある。したがって、本発明におけるAES繊維も、700℃、24時間での加熱処理によって分相が生じ、低温成分であるアルカリ土類成分に富むガラス相と、高温成分であるシリカに富むガラス相とに分離したと考えることが可能である。低温成分は、一般に、化学的耐久性の低い相である。したがって、本発明のAES繊維の分相によって生成した低温成分であるアルカリ土類成分に富むガラス相は、2%グリシン水溶液に対して、もとの組成のものよりも溶解しやすいと言える。それ故に、700℃付近での加熱処理が、繊維のグリシン水溶液に対する溶解率を著しく増大させたものと考えることができる。
上述した、グリシン水溶液中での繊維の溶解率の増大が、加熱処理によって繊維に生じる分相によるものであるという考え方は、液体(2%グリシン水溶液または蒸留水)と反応する前後の、繊維試料の示差熱分析(DTA)の結果からも支持することができる。
液体と反応する前の、繊維試料のDTA曲線の代表的なものを図5に示す。なお、DTAにおける昇温速度は10℃/分である。110℃〜700℃の範囲で24時間加熱処理された繊維試料#01および#02のDTA曲線は、790℃付近(#01)または760℃付近(#02)の小さい吸熱ピークと、900〜960℃(#01および#02)の鋭い発熱ピークと、1120〜1210℃(#01)または1210〜1230℃(#02)の発熱ピークを示す。しかしながら、800℃で24時間の加熱処理をされた繊維試料#01および#02は、どちらも上記の900〜960℃の鋭い発熱ピークが消滅している。
図1に示すように、加熱処理された繊維試料のX線回折分析による相の同定結果によれば、繊維試料は700℃までの加熱処理では非晶質であるが、800℃で24時間加熱処理された繊維試料には、結晶質アルカリ土類ケイ酸塩であるエンスタタイト(#01)またはオージャイト(#02)が生成する。したがって、図5のDTA曲線の900〜960℃の鋭い発熱ピークは、前記の結晶質アルカリ土類ケイ酸塩の生成によるものと見なすことができる。
DTA曲線上の900〜960℃の鋭い発熱ピークが結晶質アルカリ土類ケイ酸塩の生成によるものとするならば、DTA曲線は、結晶質アルカリ土類ケイ酸塩の生成速度が、前記発熱ピークの頂点で最大になることを示すことになる。しかしながら、図1に示すように、一定温度で24時間の加熱処理では、結晶質アルカリ土類ケイ酸塩は、800℃で生成する。このような結晶質アルカリ土類ケイ酸塩の生成温度の不一致は、加熱処理が、一定の温度で一定の時間保持されるという静的な熱履歴であるのに対して、DTAは、時間とともに試料の加熱温度が上昇するという動的な熱履歴であることに起因するのであろう。
また、790℃付近(#01)または760℃付近(#02)の小さい吸熱ピークは、繊維試料がガラス転移して比熱が増大することによるものであり、また、1120〜1210℃(#01)または1210〜1230℃(#02)の発熱ピークは、図1より明らかなように、結晶質シリカであるクリストバライトの生成に関与するものであろう。
液体(2%グリシン水溶液または蒸留水)と反応した後の繊維試料のDTA曲線を図6および図7に示す。なお、DTAにおける昇温速度は10℃/分である。700℃で24時間加熱処理された後、2%グリシン水溶液と反応した繊維試料のDTA曲線においては、結晶質アルカリ土類ケイ酸塩の生成に関与していると考えられる900〜960℃の鋭い発熱ピークが弱くなり、ほとんど消滅している。このことは、分相によって生成したアルカリ土類成分に富むガラス相が選択的に、2%グリシン水溶液に溶解し、繊維試料中のアルカリ土類成分が減少したために、グリシン水溶液と反応した後の繊維試料のDTA曲線に、結晶質アルカリ土類ケイ酸塩の生成に関与する発熱ピークがほとんど消滅してしまったと考えることによって説明ができる。
一方、蒸留水中に対しては、グリシン水溶液中に対して見られるような、繊維試料の加熱処理による溶解率の増大は認められない(図2および3)。また、蒸留水と反応した後の繊維試料のDTA曲線は、110〜700℃の範囲での加熱処理温度によらず実質的に同一であり、700℃で加熱処理されたものであっても、結晶質アルカリ土類ケイ酸塩の生成に関与する発熱ピークは、前記グリシン水溶液と反応した場合のように消滅していない(図5および6)。このことは、分相によって生成したアルカリ土類成分に富むガラス相が、蒸留水中では、グリシン水溶液中に比べて、難溶であることを示している。
繊維試料と反応後の液体のpHと繊維試料の溶解率との関係を図4に示す。図4より、繊維との反応後の液体のpHの上昇とともに、繊維の溶解率が増大する傾向が認められる。特に、グリシン水溶液の場合においては、pHが7付近から、繊維の溶解率が急激に増大していることがわかる。一方、蒸留水の場合においては、このような溶解率の急激な上昇は見られない。
一般に、グリシンは、金属イオンとキレート錯体を形成することが知られており、アルカリ土類イオンともキレート錯体を形成する。グリシンに対しての、2価の陽イオンの配位数は最大で2であり、平均的な配位数はpHの上昇とともに増大することが知られている。このことから、反応初期におけるアルカリ土類成分の溶出によって液体のpHが上昇すると、グリシンはAES繊維のアルカリ土類成分を、より可溶化させるであろう。このとき、AES繊維に、分相によってアルカリ土類成分に富むガラス相が生成していれば、グリシンによるAES繊維の可溶化は、より顕著になると考えることができる。
以上のことから、700℃付近での加熱処理は、前記AES繊維を分相させ、アミノ酸溶液には可溶でありながら、水には比較的難溶であるアルカリ土類成分に富むガラス相を繊維中に生成させるのに適している。繊維中に生成した前記アルカリ土類成分に富むガラス相が、繊維に優れた生体溶解性と耐水性を付与するのである。
AES繊維の加熱処理温度は600℃以上850℃以下が好ましい。図2および図3から、加熱処理温度は700℃付近が最適であることがわかる。しかしながら、図2および図3に示した結果は、所定の温度で24時間加熱した場合の結果である。したがって、加熱処理温度が、650℃以上750℃未満である場合には、加熱処理時間は1時間以上30時間未満が好適である。加熱処理温度が650℃よりも低い温度の場合には、加熱処理時間をより長く(好適には30時間以上に)、750℃よりも高い温度の場合には、加熱処理時間をより短く(好適には1時間未満に)すれば、好ましい加熱処理を行うことができると言える。したがって、前記組成の非晶質アルカリ土類ケイ酸塩繊維の加熱処理温度は600℃以上850℃以下が好適である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
原料として、珪石と、マグネシアクリンカーと、炭酸ストロンチウムと、必要に応じてウォラストナイトを使用した。これらの原料を所定量混合する。それを電気炉で溶融した後、溶融物を常法に従って繊維化し、集綿して、表3に示す化学組成の非晶質無機繊維を得た。
Figure 2005089913
得られた非晶質無機繊維を、表3に示す加熱処理条件で加熱処理を行った。次に、加熱処理された無機繊維の生体溶解性および耐水性の評価を行った。前記2つの溶解性の評価は、前述した条件での繊維の溶解率を測定することによって行った。グリシン水溶液中においては、溶解率が大きいほど、その繊維は生体溶解性に優れている。また、蒸留水中においては、溶解率が小さいほど、その繊維は耐水性に優れている。
実施例1〜4は、MgO、SrO、SiOを主要成分として含む組成であり、加熱処理条件の温度は600℃以上850℃以下である。いずれの場合も、蒸留水中での溶解率が小さく耐水性に優れており、かつ単純アミノ酸であるグリシン水溶液中での溶解率が大きく生体溶解性に優れている。
実施例5〜8は、MgO、SrO、CaO、SiOを主要成分として含む組成であり、加熱処理条件の温度は600℃以上850℃以下である。いずれの場合も、蒸留水中での溶解率が小さく耐水性に優れており、かつ単純アミノ酸であるグリシン水溶液中での溶解率が大きく生体溶解性に優れている。
比較例1は、実施例1〜4と同じ化学組成であり、比較例2は実施例5〜8と同じ化学組成であるが、いずれも加熱処理がなされていない繊維である。比較例1は、蒸留水中での溶解率が小さく耐水性に優れているものの、グリシン水溶液中での溶解率も小さく、生体溶解性が十分ではない。比較例2は生体溶解性および耐水性ともに十分ではない。
比較例3は、実施例1〜4と同じ化学組成であり、比較例4は実施例5〜8と同じ化学組成であるが、加熱処理条件の温度が1000℃である。どちらの場合も、蒸留水中での溶解率が小さく耐水性に優れているものの、グリシン水溶液中での溶解率も小さく、生体溶解性に劣っている。
粉末X線回折分析(XRD)によって示される、加熱処理に伴う繊維の相の変化を示す図である。 繊維試料#01(MgO−SrO−SiO系組成)の加熱処理温度と、繊維のグリシン水溶液および蒸留水中での溶解率との関係を示すグラフである。 繊維試料#02(MgO−SrO−CaO−SiO系組成)の加熱処理温度と、繊維のグリシン水溶液および蒸留水中での溶解率との関係を示すグラフである。 繊維試料と反応した後の液体(グリシン水溶液および蒸留水)のpHと、繊維の溶解率との関係を示す図である。 加熱処理された繊維試料の示差熱分析曲線を示すグラフである。 液体(グリシン水溶液または蒸留水)と反応した後の、繊維試料#01(MgO−SrO−SiO系組成)の示差熱分析曲線を示すグラフである。 液体(グリシン水溶液または蒸留水)と反応した後の、繊維試料#02(MgO−SrO−CaO−SiO系組成)の示差熱分析曲線を示すグラフである。

Claims (11)

  1. 加熱処理により分相しているアルカリ土類ケイ酸塩繊維からなる無機繊維。
  2. アルカリ土類ケイ酸塩繊維が、MgO、SrO、およびSiOの成分を含むことを特徴とする請求項1に記載の無機繊維。
  3. アルカリ土類ケイ酸塩繊維が、CaO成分を含むことを特徴とする請求項2に記載の無機繊維。
  4. アルカリ土類ケイ酸塩繊維が、600℃以上850℃以下の範囲の温度において加熱処理されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無機繊維。
  5. 2%グリシン水溶液への溶解率が300μg/ml以上であり、かつ、水への溶解率が200μg/ml以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の無機繊維。
  6. アルカリ土類ケイ酸塩繊維を600℃以上850℃以下で加熱処理して分相させることを特徴とする無機繊維の製造方法。
  7. アルカリ土類ケイ酸塩繊維が、MgO、SrO、およびSiOの成分を含むことを特徴とする請求項6に記載の無機繊維の製造方法。
  8. アルカリ土類ケイ酸塩繊維が、CaO成分を含むことを特徴とする請求項7に記載の無機繊維の製造方法。
  9. 650℃以上750℃未満で1時間以上30時間未満加熱処理することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の無機繊維の製造方法。
  10. 600℃以上650℃未満で30時間以上加熱処理することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の無機繊維の製造方法。
  11. 750℃以上850℃以下で1時間未満加熱処理することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の無機繊維の製造方法。

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