JP2005089887A - ポケットを有する編地の製造方法およびポケットを有する筒状編地 - Google Patents
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Abstract
【課題】横編機を用いて、サイドポケット付の筒状編地を、ポケット部を筒状本体編地部に縫合することなく、製作することができるようにする。
【解決手段】ポケットを有する編地の製造方法は、少なくとも前後一対の針床を有し、前後の針床間で編目の目移しが可能な横編機を使用して、筒状の本体編地部と袋状のポケット部を編成し、本体編地部に縦方向(ウェール方向)に延びる開口部を形成して、目移し動作により本体編地部の開口部とポケット部の開口部とを接合することにより、ポケット挿入口が縦方向に延びるサイドポケット付の本体編地部を得る。さらに、編地編成終了後にポケット部を本体編地部の内方に押し込むこともできる。
【選択図】図2
【解決手段】ポケットを有する編地の製造方法は、少なくとも前後一対の針床を有し、前後の針床間で編目の目移しが可能な横編機を使用して、筒状の本体編地部と袋状のポケット部を編成し、本体編地部に縦方向(ウェール方向)に延びる開口部を形成して、目移し動作により本体編地部の開口部とポケット部の開口部とを接合することにより、ポケット挿入口が縦方向に延びるサイドポケット付の本体編地部を得る。さらに、編地編成終了後にポケット部を本体編地部の内方に押し込むこともできる。
【選択図】図2
Description
本発明は、横編機を用いて編まれる筒状編地にポケットの挿入口が縦方向(ウェール方向)に延びる袋状のポケットを形成するようにしたポケットを有する編地の製造方法およびポケットを有する筒状編地に関する。
ポケットを有するニット製品としては、貼付ポケットタイプと切りポケットタイプとがある。貼付ポケットタイプとは、例えば特許文献1に示すように、一枚の編地からなるポケット部を身頃部の編地の上面に貼付けるようにしてポケット部の縁の一部を身頃部に接合することによりポケットが形成されているものをいい、身頃部とポケット部の二層構造となる。この貼付ポケットタイプのポケットは、通常は、上方が開口したものが多い。
また、切りポケットタイプとは、予め袋状にポケット部分を編成しておき、身頃部にポケットの挿入口となる開口部を形成し、この身頃部の開口部にポケット部分の開口部を縫製により繋いでポケットが形成されたものをいう。切りポケットタイプのニット製品は、例えば前後の身頃部で挟まれるように袋状のポケットが形成されるので、前後身頃とポケットによる四層構造となる。
通常、この切りポケットタイプでは、筒状の身頃部と袋状のポケット部分とを別々に編成しておいて、身頃部に手の挿入口となる開口部を切断により形成した後、ポケット部分を前後の身頃の間に挟んだ状態でポケット部分の開口部を身頃部の開口部に縫合するようにしている。
前記したポケットを有する筒状編地であって切りポケットタイプのものは、身頃部とポケット部分とを縫合する作業を有するため手間が掛かり生産性が悪い。さらに、接合部分をミシン等により縫い合わせるので縫製箇所における伸縮性が損なわれる問題もある。
本発明は、切りポケットタイプ、即ち、ポケットの挿入口が縦方向に延びるサイドポケットを有する筒状編地における上記問題を解決するものであり、横編機を使用して筒状の本体編地部と袋状のポケット部とを縫合することなく接合できるサイドポケットを有する編地の製造方法を提供することを一つの目的とする。さらに、横編機で編成された本体編地部とポケット部とが無縫製で接合されているサイドポケットを有する筒状編地を提供することも目的とする。
本発明のポケットを有する編地の製造方法は、少なくとも前後一対の針床を有し、前後の針床間で編目の目移しが可能な横編機を使用して、筒状の本体編地部と袋状のポケット部を編成し、本体編地部に縦方向(ウェール方向)に延びる開口部を形成して、目移し動作により本体編地部の開口部とポケット部の開口部とを無縫製で接合することにより、ポケット挿入口が縦方向に延びるサイドポケット付の本体編地部を得ることを特徴とする。
本発明の製造方法では、ポケット部を完全に本体編地部と接合させる開口部まで編成しておいて、本体編地部を筒状に編成しながら、ポケット部の開口部を本体編地部に接合させるようにしてもよい。この場合、本体編地部は、前編地と後編地にそれぞれ異なる給糸口から糸を給糸して編成する。
また、ポケット部と本体編地部とを同時に編成しながら、開口部同士を接合していくようにしてもよい。この場合は、本体編地部の開口部が形成され始めたら、ポケット部と本体編地部とを編成しながら開口部同士を接合していくようにする。
また、本体編地部は、編地の縦方向(ウェール方向)に延びるようにポケットの挿入口となる開口部が形成される。このように縦方向に延びるように開口部を形成することにより、例えば、セーターなどのニットウェアにおいて、手を横方向からポケット挿入口に挿入することができる。
ポケット部の本体編地部への接合は、例えば、本体編地部を前身頃となる前編地部と後身頃となる後編地部とにより構成する場合、本体編地部とポケット部とを編成しながら、本体編地部の前編地部および後編地部の編み幅端部の編目に、ポケット部の開口部における前後針床に係止されている本体編地部側端部の編目を順次重ね合わせて接合していく。編目の重ね合わせは、一方の針床に係止される編目を対向する他方の針床に目移しして、一方の針床を左右にラッキングさせた後、編目を元の針床に戻すことにより容易に行える。このようにして本体編地部とポケット部とを接合していく場合、前編地部と後編地部との境界部分の一部がコース方向に不連続となる部分が形成され、この不連続部分が本体編地部の開口部となる。
そして、ポケット部の開口部と本体編地部の開口部との接合が完了すると、ポケット部が本体編地部の筒側面から突出した状態になる。例えば、本体編地部の表面を裏目使いとしてセーターやベストを編成する場合には、身頃をひっくり返して完成品とする。また、本体編地部の表面を表目使いとしてセーターなどを編成する場合には、編成終了後にポケット部を本体編地部の内方(身頃内側)へ押し込んで製品を完成させる。即ち、ポケット部を開口部において、本体編地部の筒内部に押し込むことにより、ポケット部を本体編地部内に引っ込ませて、本体編地部にポケットが形成される。
さらに、本発明のポケットを有する編地の製造方法は、以下のステップを含むように製造することが好ましい。
即ち、本体編地部をポケット部との接合開始位置まで筒状に編成するとともに、ポケット部を本体編地部との接合開始位置まで有底筒状に別途編成する第1ステップ。
本体編地部における前編地部の編み幅端部の編目とポケット部における前編地部の編み幅端部の編目とを重ね合わせ、本体編地部における後編地部の編み幅端部の編目とポケット部における後編地部の編み幅端部の編目とを重ね合わせながら、本体編地部の前編地部、ポケット部の前編地部、ポケット部の後編地部、本体編地部の後編地部が連続編成される第2ステップ。
この場合、第2ステップの後の本体編地部とポケット部との接合が完了した後は、必要に応じて本体編地部の外側に張り出したポケット部を接合部分から本体編地部の内側に押し込んでポケット部を本体編地部の筒内部に位置させる第3ステップを含むようにしてもよい。
例えば、横ポケットを有する長袖セーターを作る場合、まず、前後の針床において、身頃となる筒状の本体編地部を中央として、この本体編地部の両側に右ポケット部と左ポケットとを、さらに、右ポケット部の本体編地部と反対側に右袖を、左ポケット部の本体編地部と反対側に左袖を、それぞれ個別に筒状に編成していく。なお、両ポケット部は、編始め端部は閉じた状態で編み始める。
次に、本体編地部とポケット部とを接合していく。このとき、右袖と左袖はそのまま筒状に編成していくか、または、ポケット部と本体編地部との接合が完了するまでその編成を中断しておく。ポケット部と本体編地部との接合が完了した後は、右袖、左袖、本体編地部の筒状編成を行う。袖と本体編地部との接合は、本体編地部と袖を筒状に編成しながら、袖ぐり部から本体編地部と袖とを接合していくようにしてもよいし、袖を先に編成した後に、袖を身頃に接合するようにしてもよい。本体編地部と袖の接合が完了したら、本体編地部に、肩と首を形成して編成を終了する。
そして、本体編地部の表面を表目とする場合には、本体編地部から突出された状態のポケット部を開口部から本体編地部の筒内部に押し込むことにより、正規の横ポケットが形成される。また、本体編地部の表面を裏目とする場合には、身頃をひっくり返すことにより正規の横ポケットが形成される。ポケット部が本体編地部の筒内部に位置されると、本体編地部とポケット部とにより計4枚の編地が重なった状態になる。
また、前記第2ステップにおける編目の重ね合わせは、一方の編地部(例えば身頃側)の編み幅最端の編目と他方の編地部(例えばポケット部)の編み幅最端から一目内側の編目とを重ね合わせ、一方の編地部の編み幅最端から一目内側の編目と他方の編地部の編み幅最端の編目とを重ね合わせて接合しながら編成していくことが好ましい。
本体編地部に形成する開口部(挿入口)は、例えば身頃にポケットを形成する場合、本体編地部の編目を増減することなく、本体編地部とポケット部とを編成しながらポケット部の編み幅端部の編目を本体編地部に重ね合わせていくようにして、前後の身頃の境界線上に挿入口が形成されるようにすることができる。
また、本体編地部に形成する挿入口は、例えば身頃にポケットを形成する場合、手を入れ易くするために、縦方向に延びる挿入口の上側が下側に比べて前身頃中央寄りに形成するようにしてもよい。
例えば挿入口の上部を少しだけ前身頃中央寄りとする場合には、まず、本体編地部の編み幅両端部の編目に、ポケット部の編み幅端部の編目を重ね合わせた後に、本体編地部における前編地部の編み幅両端部の編目を例えば2目ずつ減らした後、ポケット部の編み幅端部の編目を本体編地部に重ね合わせていく。ポケット部における前編地部の編み幅最端の編目が、ポケット部接合前における本体編地部の編み幅最端の編目と同じウェール位置になったときに、ポケット部の編目とウェール方向に連続するように本体編地部の編成を行う。
また、挿入口の上部を大きく前身頃中央寄りとする場合には、まず、本体編地部の編み幅両端部の編目に、ポケット部の編み幅端部の編目を重ね合わせた後に、本体編地部における前編地部の編み幅両端部の編目を例えば2目ずつ減らす編成を少なくとも2回行う。さらに、ポケット部の編み幅端部の編目を本体編地部に重ね合わせていき、ポケット部における前編地部の編み幅最端の編目が、ポケット部接合前における本体編地部の編み幅最端の編目と同じウェール位置になったときに、ポケット部の編目とウェール方向に連続するように本体編地部の編成を行う。
さらに、ポケット部の形状は、ポケットの袋の幅・深さを任意に設定することにより様々な形状に形成できるし、本体編地部の挿入口に対するポケット部の取り付け位置角度は、ポケット部上部に形成される部分(図1のポケット部6の三角形部分)の高さ、即ち、コース数を変えることで任意に設定できる。さらに、ポケット部と本体編地部とは、糸の太さ・色、ゲージ、編柄(表目、裏目、柄入れなど)を任意のものにすることができる。
また、本発明の縦方向(ウェール方向)に延びて開口するサイドポケットを有する筒状編地は、筒状の本体編地部と袋状のポケット部とが筒状に編成されるとともに、本体編地部とポケット部とが無縫製で接合されていることを特徴とする。
本発明の編地の製造方法は、筒状の本体編地部と袋状のポケット部とを編成しつつ、これらを無縫製で接合するので、袋状で、ポケット挿入口が縦方向に延びるサイドポケット付の筒状編地を簡単に製造でき、しかも、ポケット部の縫合作業が不要となり、作業性を向上できる。
また、身頃をひっくり返すか、または、ポケット部を本体編地部の筒内部に押し込んでひっくり返すことにより、簡単にポケットを正規の形状にすることができる。
また、身頃をひっくり返すか、または、ポケット部を本体編地部の筒内部に押し込んでひっくり返すことにより、簡単にポケットを正規の形状にすることができる。
特に、請求項3に記載のステップを含むように、ポケットを有する編地を製造すれば、簡単に外観が良好なポケットを有する編地を製造できる。
さらに、請求項4に記載しているように本体編地部とポケット部の編目を重ね合わせて本体編地部とポケット部とを接合することにより、接合部分を美しくできる。
このとき、請求項5または請求項6に記載の方法でポケット部を本体編地部に接合することにより、挿入口の形状を様々な形状にすることができる。
このとき、請求項5または請求項6に記載の方法でポケット部を本体編地部に接合することにより、挿入口の形状を様々な形状にすることができる。
また、本発明の挿入口が縦方向に延びるサイドポケットを有する筒状編地は、筒状の本体編地部と袋状のポケット部とが編成され、さらに、本体編地部とポケット部とが無縫製で接合されているので、ニットウェアなどの場合、接合部分の伸縮性にも問題が無くなる。
次に本発明の好適な実施の形態を図面と共に以下に詳細に説明する。まず、本発明の好適な実施の形態の一つとしての第1実施形態について図1から図6に基づいて説明する。
本実施形態は、左右方向に延び、かつ、前後方向に互いに対向する前後一対の針床を有し、後針床が左右にラッキング可能で、しかも、前後の針床間で編目の目移しが可能ないわゆる2枚ベッドの横編機を用いて横ポケット付のニットウェアを製作する。
2枚ベッドの横編機は、筒状のニットウェアを編成する場合、前後の各針床においてそれぞれ1本おきの針を用いて編成を行うようにしている。例えば、前針床の奇数番目の針を主として前身頃や袖の前編地部などのニットウェアの前側部分の編地を編成するために用い、後針床の偶数番目の針を主として後身頃や袖の後編地部などのニットウェアの後側部分を編成するために用いる。
本実施形態では、さらに、前針床の奇数番目の針を主として左右のポケット部の前編地部を編成するために用い、後針床の偶数番目の針を主として左右ポケットの後編地部を編成するために用いる。
そして、前後の針床は、一方の針床の編成用に用いられる針に対向する他方の針床の針を空針としており、この空針を目移しやリブ編み等をするために用いるようになっている。
これら空針を用いることにより、リンクス、ガーター、リブなどの表目と裏目が混在した組織柄を編成したり、袖や身頃の編目をコース方向に移動させて互いに接合することができるようになっている。
また、2枚ベッドの横編機を用いる場合、前後針床の一方または両方の上位にトランスファージャックを列設したトランスファージャックベッドを設けて編地を編成するようにしてもよい。
なお、本実施形態では、2枚ベッドの横編機を用いてニットウェアを編成するようにしているが、本発明は、上部前針床、下部前針床、上部後針床、そして下部後針床からなる4枚ベッドの横編機を用いて編成することもできる。
4枚ベッドの横編機を用いる場合には、例えば、下部前針床に編地の前側部分を付属させ、下部後針床に編地の後側部分を付属させる。そして、上部後針床を前側部分の編地を編成する際の空針として前側部分の編地の目移し等に用い、上部前針床を後側部分の編地を編成する際の空針として後側部分の編地の目移し等に用いる。
本実施形態は、上記2枚ベッドの横編機を用いて、ニットウェアを構成する身頃部、袖部、ポケット部を継ぎ目の無い連続した筒状となるように編成し、さらに、身頃部にポケット部を編成中に接合して、横ポケット付のニット製品を製造する方法およびこの方法で製作されたニットウェアを示す。
図1は、本発明の編成方法で編成されるニットウェアのセーター1について前身頃側から見た身頃部、左右ポケット部、袖部のパーツ平面図である。図2(a)は、セーターを構成する各パーツの横編機上の編成状態を示し、図2(b)は、(a)におけるX-X線、Y-Y線、Z-Z線における編地部の筒の状態を示す。
本実施形態で編成されるセーター1は、丸首の襟ぐりを有する長袖タイプのセーターで、縦方向に延びて開口した袋状のポケットを左右両脇に具え、本体編地部となる身頃部2、右袖部3、左袖部4、右ポケット部5、左ポケット部6を有している。
身頃部2は、図1に示すように、裾部21、脇部22、袖ぐり部23、肩ライン部24、襟ぐり部25を有している。
身頃部2は、脇部22における裾部21の近くに左右のポケット部5,6が接合される。そして、左右のポケット部5,6が身頃部2に接合された後、左右の袖部3,4が身頃部2に接合される。
本実施形態では、身頃部2は、前身頃と後身頃とが筒状に編成され、袖部3,4も筒状に編成される。さらに、左右のポケット部5,6は、底が閉じた状態で筒状に編成される。
なお、本実施形態および以下に示す第2・第3実施形態を含め、身頃部、袖部、ポケット部の左右を表す用語、例えば、左袖部4や右袖部3などの右と左は、セーター1を着用した状態の着用者を基準にしている。
次に、本実施形態のセーター1の製造手順について説明する。本実施形態では、身頃部2の後身頃、右袖部3および左袖部4の後編地部、右ポケット部5および左ポケット部6の後編地部は、主として後針床上の偶数番目の針を使用して編成される。身頃部2の前身頃、右袖部3および左袖部4の前編地部、右ポケット部5および左ポケット部6の前編地部は、主として前針床上の奇数番目の針を使用して編成される。
身頃部2は、図2に示すように、針床の長手方向中央部で編成され、身頃部2の両側において左右の袖部3,4を編成する。そして、身頃部2と袖部3,4の間において、左右のポケット部5,6を編成する。通常、袖部3,4を編成していく際、袖部3,4の袖口が袖付け部分よりも編み幅が狭い。そのため、身頃部2の裾部21と袖部3,4の袖口部分31,41とを編成する際は、裾部21の編み幅端部の編目を係止させる針と袖口部分31,41の編み幅端部の編目を係止させる針との間に、かなりの本数の針が空けられた状態となっている。本実施形態では、この空いている針を用いてポケット部5,6を編成する。
セーター1における身頃部2、袖部3,4、ポケット部5,6の編み組織は、説明の便宜上、平編みの無地とし、身頃部2の裾部21と袖部3,4の袖口部分31,41はリブ編としているが、身頃部2、袖部3,4は、ジャガードやリブ等の組織柄のものであってもよい。
まず、身頃部編成用と袖部編成用とポケット部編成用に5つの給糸口を用意し、各給糸口から針床の針に編糸を供給して、図2に示すように、右袖部3、右ポケット部5、身頃部2、左ポケット部6、左袖部4の順に5つの筒状体を編成していく。
具体的には、図1および図2に示すように身頃部2は、裾から各ポケット部5,6との接合開始位置(a,b)まで筒状に編成していく。右袖部3と左袖部4は、袖口から身頃との接合開始位置(E,F)まで筒状に編成していく。右ポケット部5と左ポケット部6は、ポケット底部から身頃との接合開始位置(A,B)まで筒状に編成していく。
セーター1は、身頃部2の各点a,bが、右ポケット部5と左ポケット部6の各点A,Bと接合される。身頃部2の各点e,fが、右袖部3と左袖部4の各点E,Fと接合される。身頃部2に右ポケット部5と左ポケット部6とが接合され始めると、編地は、身頃部2とポケット部5,6とが統合された一つの筒状体と、左右の袖部3,4の筒状体との合計3つの筒状体が形成された状態となる。各ポケット部5,6の点C,Dと身頃部2の点c,dとが接合されるまで、各ポケット部5,6と身頃部2との接合作業が行われる。
ポケット部5,6と身頃部2との接合について詳記すると、図3および図4に示すように、編目の目移しとラッキング動作により、身頃部2の編み幅端部の2目にポケット部5,6の編み幅端部の2目を重ね合わせていく。なお、図3は、左ポケット部6の前編地部を身頃部2の前身頃に接合していく際の、左ポケット部6の各コースの編目の状態を示す。
また、図3において数字1〜24はポケット部6を形成する各コースの編目を示し、英文字E,Fは身頃部2の編み幅端部の編目であって、ポケット部6との重ね目となる編目を示す。図3では、ポケット部6の編み幅端部の編目が1コースおきに身頃部2の編目E,Fに重ね合わされて小さい番号の数字から順に減っている状態を示している。
なお、左ポケット部6の後編地部と身頃部2の後身頃との接合は、前側の編地と前後対称となるように同じように接合される。
なお、左ポケット部6の後編地部と身頃部2の後身頃との接合は、前側の編地と前後対称となるように同じように接合される。
図4は、ポケット部と本体編地部とを接合する際の編成工程図(ステップ1〜ステップ7)を示し、図4のステップ1のX-X線は、左ポケット部6と身頃部2との境界線を示す。また、図4のポケット部と本体編地部のループ数は、説明の便宜上、実際よりも少なくしており、ポケット部については図3に示すループ数とは一致しておらず、右ポケット部5と、身頃部の右側半分は省略している。図4中、Bは後針床を、Fは前針床を示し、ステップ1の状態では、前後の針床の針A〜F,a〜fで身頃部2を、針G〜L,g〜lで左ポケット部6を編成している。
まず、ステップ1に示すように、ポケット部5,6と身頃部2とにより一つの筒状体が形成されると、身頃部2の編み幅端部の2目を除いた編目を前針床の空針(a〜d)に目移しする(ステップ2)。次に、左ポケット部6の編目の全てを後針床の空針(G〜L)に目移しする(ステップ3)。後針床を図4において、左に4針分ラッキングさせる(ステップ4)。後針床の針(G〜l)に係止されている編目を前針床の針(E〜j)に目移しする(ステップ5)。ステップ5の状態で、身頃部2と左ポケット部6の前編地部における編み幅端部の編目2目が重ね合わされた状態となる。次に、後針床を図4において、右に4針分ラッキングさせる(ステップ6)。そして、前針床に係止されている身頃部2の後編地部の編目と左ポケット部6の後編地部の編目を後針床に目移しする(ステップ7)。ステップ7の状態で、身頃部2と左ポケット部6の後編地部における編み幅端部の編目2目が重ね合わされた状態となる。
このポケット部5,6の目移しの動作の際には、右袖部3と左袖部4は、前後の編地部の全てを一方の針床に付属させておいて、ラッキングが行えるようにしておく。そして、ポケット部5,6と身頃部2との編み幅端部2目の重ね合わせが終わると右袖部3と左袖部4の目移しされていた編目を元の針床の針に目移しし、筒状編成が可能な状態にする。
本実施形態では、編目の重ね合わせは、例えば図3に示すように、身頃部2の編み幅最端の編目(F)に左ポケット部6の編み幅最端から一目内側の編目(2)を重ね合わせ、身頃部2の編み幅最端から一目内側の編目(E)に左ポケット部6の編み幅最端の編目(1)を重ね合わせるようにしている
次に、針床の3つの筒状体に対して3つの給糸口からそれぞれ編み糸を給糸し、筒状に2コース編成した後、前記したステップ1〜ステップ7に示す編目の重ね合わせを再度行って、さらに2コース編成を行う。この動作をポケット部5,6の編目が完全に身頃部2に重ね合わされるまで(C-cとD-dが接合されるまで)続ける。
次に、針床の3つの筒状体に対して3つの給糸口からそれぞれ編み糸を給糸し、筒状に2コース編成した後、前記したステップ1〜ステップ7に示す編目の重ね合わせを再度行って、さらに2コース編成を行う。この動作をポケット部5,6の編目が完全に身頃部2に重ね合わされるまで(C-cとD-dが接合されるまで)続ける。
ポケット部5,6が身頃部2に接合された後、さらに、身頃部2に左袖部4と右袖部3とが接合され始めると、ポケット部5,6は、針から払われた状態となっているので、身頃部2と左袖部4と右袖部3とが統合された1つの筒状体が形成される。
右袖部3と身頃部2の袖ぐり部23は、点E-eからG-g,I-i,K-kの順に接合されていき、左袖部4と身頃部2の袖ぐり部23は、点F-fからH-h,J-j,L-lの順に接合されていく。K-kとL-lが肩ライン部24の端部となる。このとき、身頃部2には、襟ぐり部25も同時に形成される。袖部3,4と身頃部2との接合が完了すると、身頃部2の前後の編地部を接合して肩ライン部24が形成される。前後の針床には、身頃部2の襟ぐり部25を形成する編目のみが係止され、この状態で、ゴム編みの襟ぐりを編成していく。
次に、セーター1を針床から取り外して、筒状の身頃部2から外部に突出された状態にある両ポケット部5,6をポケット部5,6と身頃部2との接合部分で形成される開口部から、身頃部2の筒内部に押し込みポケット部5,6を正規な形状にして、ポケットが完成する。
上記したように身頃部2にポケット部5,6を接合していくことにより、前身頃の編地部と後身頃の編地部の編目とが不連続な部分が生ずることになる。この不連続部分が、図5に示すように、身頃部2のポケット挿入口7となる開口部となり、この開口部にポケット部5,6の開口部が無縫製で接合された状態となる。そして、ポケット部5,6を身頃部2の内部に押し込むだけで、図5に示すようにポケットを完成することができ、図6に示すようなポケットを有するセーターが完成する。なお、図5はポケットが完成した状態のポケット部分の部分平面図を示し、図6は、製品として完成したセーター全体の平面図を示している。
また、前記第1実施形態では、ポケット挿入口7となる開口部を身頃部2における前身頃と後身頃との境界部分に上下直線状に形成するようにしたが、図7〜図9に示す第2実施形態のように、縦方向に延びる挿入口の上側が下側に比べてやや前身頃中央よりにポケットの挿入口71が形成されるようにしてもよいし、図10〜図12に示す第3実施形態のように、大きく前身頃中央よりに挿入口72が形成されるようにしてもよい。
なお、図7および図10は左ポケット部と身頃部との接合についてのみ示し、図8および図11はポケットが完成した状態のポケット部分の部分平面図を示し、図9および図12は、製品として完成したセーター全体の平面図を示している。図7および図10も、数字1〜24はポケット部6を形成する各コースの編目を示し、英文字E,F,C,D,W,Xは身頃部2の各コースにおける編み幅端部の編目であって、ポケット部6との重ね目となる編目を示す。図7および図10においても、ポケット部6の編み幅端部の編目が1コースおきに身頃部2の編み幅端部の編目に重ね合わされて小さい番号の数字から順に減らしている。
第2実施形態では、身頃部2の前身頃とポケット部6の前編地部との接合は図7に示すように行い、身頃部2の後身頃とポケット部6の後編地部との接合は第1実施形態と同様に行う。前側編地の接合については図7に示すように、まず、ポケット部6の端部(1,2)と身頃部2の端部(E,F)の2目を重ねた後に数コースそのまま編成する。その後、身頃部2の端部を2目だけ減らし、ポケット部6の端部(3,4)と身頃部2の端部(C,D)との2目の重ね目を行う。そして、前記した第1実施形態と同じようにして単にポケット部6の端部(5,6・・・)を身頃部2の端部(C,D)に2目ずつ重ね合わせていく。ポケット部6と身頃部2との接合が完了した後、ポケット部6の最後の2目(23,24)に身頃がウェール方向に続くように身頃を筒状に編成する。
第2実施形態では、身頃部2の編み幅両端部を2目ずつ減らした状態でポケット部6を身頃部2に接合していくので、図8に示すように、縦方向に延びる挿入口71の上側が下側に比べてやや前身頃中央よりに形成された状態となる。このとき、図8および図9に示すように、ポケット挿入口71近くにおいて、ポケット部6の後編地部61が正面から見える状態となる。
第3実施形態の編成は、身頃部2の前身頃とポケット部6の前編地部との接合は図10に示すように行い、身頃部2の後身頃とポケット部6の後編地部との接合は第1実施形態と同様に行う。前側編地の接合については図10に示すように、ポケット部6の端部(1,2)を身頃部2の端部(E,F)に2目重ねた後に数コースそのまま編成する。次に、ポケット部6と身頃部2との重ね目を行わずに、身頃部2の端部を2目ずつ目減らす動作を数コース(身頃部2の端部が(W,X)になるまで)行う。その後は、前記した第1実施形態と同じようにして単にポケット部6の端部(3,4・・・)を身頃部2の端部(W,X)に2目ずつ重ね合わせていく。そして、ポケット部6と身頃部2との接合が完了した後、ポケット部6の編目(17〜24)に身頃がウェール方向にくように身頃を筒状に編成する。
第3実施形態では、身頃部2の編み幅両端部を段階的に複数目減らした状態でポケット部6を身頃部2に接合していくので、縦方向に延びる挿入口72の上側が下側に比べて目を減らした分だけ前身頃中央よりに形成された状態となる。第3実施形態では、図11および図12に示すように、ポケット挿入口72近くにおいて、ポケット部6の後編地部61が正面から見える状態となり、さらに、この後編地部が前身頃の一部となる。
本発明の編地の製造方法は、横編機を用いて横ポケット付のニットウェアを製作するのに適している。
1 セーター
2 身頃部(本体編地部)
21 裾部
22 脇部
23 袖ぐり部
24 肩ライン部
25 襟ぐり部
3 右袖部
31 袖口部分
4 左袖部
41 袖口部分
5 右ポケット部
6 左ポケット部
7 ポケット挿入口
71 ポケット挿入口
72 ポケット挿入口
2 身頃部(本体編地部)
21 裾部
22 脇部
23 袖ぐり部
24 肩ライン部
25 襟ぐり部
3 右袖部
31 袖口部分
4 左袖部
41 袖口部分
5 右ポケット部
6 左ポケット部
7 ポケット挿入口
71 ポケット挿入口
72 ポケット挿入口
Claims (8)
- 少なくとも前後一対の針床を有し、前後の針床間で編目の目移しが可能な横編機を使用して、筒状の本体編地部と袋状のポケット部を編成し、本体編地部に縦方向(ウェール方向)に延びる開口部を形成して、目移し動作により本体編地部の開口部とポケット部の開口部とを接合することにより、ポケット挿入口が縦方向に延びるサイドポケット付の本体編地部を得ることを特徴とするポケットを有する編地の製造方法。
- 編地編成終了後にポケット部を本体編地部の内方に押し込むことを特徴とする請求項1に記載のポケットを有する編地の製造方法。
- 請求項1に記載のポケットを有する編地の製造方法は、以下のステップを含む
本体編地部をポケット部との接合開始位置まで筒状に編成するとともに、ポケット部を本体編地部との接合開始位置まで有底筒状に別途編成する第1ステップ、
本体編地部における前編地部の編み幅端部の編目とポケット部における前編地部の編み幅端部の編目とを重ね合わせ、本体編地部における後編地部の編み幅端部の編目とポケット部における後編地部の編み幅端部の編目とを重ねあわせながら、本体編地部の前編地部、ポケット部の前編地部、ポケット部の後編地部、本体編地部の後編地部が連続編成される第2ステップ。 - 第2ステップにおける編目の重ね合わせは、一方の編地部の編み幅最端の編目を他方の編地部の編み幅最端から一目内側の編目に重ね合わせ、一方の編地部の編み幅最端から一目内側の編目を他方の編地部の編み幅最端の編目に重ね合わせるようにしている請求項3に記載のポケットを有する編地の製造方法。
- 本体編地部の編目を増減することなく、本体編地部とポケット部とを編成しながらポケット部の編み幅端部の編目を本体編地部に重ね合わせていくことを特徴とする請求項3に記載のポケットを有する編地の製造方法。
- 本体編地部の編み幅両端部の編目に、ポケット部の編み幅端部の編目を重ね合わせた後に、本体編地部における前編地部の編み幅両端部の編目を減らす編成を少なくとも1回行った後、ポケット部の編み幅端部の編目を本体編地部に重ね合わせていき、ポケット部における前編地部の編み幅最端の編目が、ポケット部接合前における本体編地部の編み幅最端の編目と同じウェール位置になったときに、ポケット部の編目とウェール方向に連続するように本体編地部の編成を行うことを特徴とする請求項3に記載のポケットを有する編地の製造方法。
- 請求項3に記載のポケットを有する編地の製造方法は、第2ステップの後のステップとして、本体編地部とポケット部との接合が完了した後に、本体編地部の外側に張り出したポケット部を接合部分から本体編地部の内側に押し込んでポケット部を本体編地部の筒内部に位置させる第3ステップを含むことを特徴とする。
- 少なくとも前後一対の針床を有し、前後の針床間で編目の目移しが可能な横編機を使用して編成された縦方向(ウェール方向)に延びて開口するサイドポケットを有する筒状編地であって、筒状の本体編地部と袋状のポケット部とが筒状に編成されるとともに、本体編地部とポケット部とが無縫製で接合されていることを特徴とするポケットを有する筒状編地。
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JP2003322184A JP2005089887A (ja) | 2003-09-12 | 2003-09-12 | ポケットを有する編地の製造方法およびポケットを有する筒状編地 |
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- 2003-09-12 JP JP2003322184A patent/JP2005089887A/ja active Pending
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