JP2005088178A - ダイヤモンド焼結体工具およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】非鉄金属の切り屑は長く伸びやすくダイヤモンド焼結体工具の逃げ面に当たりダイヤモンド焼結体を欠損させることがあった。逃げ面の切り屑排出性に優れ、欠損しにくいダイヤモンド焼結体が必要とされていた。
【解決手段】ダイヤモンド焼結体と超硬合金台金を直接接合したダイヤモンド焼結体素材を工具支持台にロウ付けしたダイヤモンド焼結体工具であって、該ダイヤモンド焼結体工具の逃げ面にグラファイトが検出されることを特徴とするダイヤモンド焼結体工具は、切り屑排出性に優れ欠損しにくい。特にダイヤモンド焼結体工具の逃げ面のラマンスペクトルにおいて、ダイヤモンドのピーク強度をId、グラファイトのピーク強度をIgと表した場合、ダイヤモンドのピーク強度Idに対するグラファイトのピーク強度Igの割合を示すピーク強度比(Ig/Id)が0.01〜0.1であると切り屑排出性に優れる。
【選択図】図1

Description

本発明は、ダイヤモンド焼結体工具に関し、具体的には、例えばアルミニウム合金や銅合金などの非鉄金属などの加工に適するダイヤモンド焼結体工具に関するものである。
ダイヤモンド焼結体を工具支持台にロウ付けした後、逃げ面を研削加工する切削用複合工具が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、切削工具のすくい面の先端部を中心とした弧状部がダイヤモンド膜で被覆され、該ダイヤモンド膜に続くすくい面の部分がダイヤモンドとグラファイトより構成される硬質炭素膜で被覆されたダイヤモンドコーティング切削工具が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
特開昭54−44293号公報 特開平5−277807号公報
ダイヤモンド焼結体工具は、アルミニウム合金や銅合金などの非鉄金属などの切削加工用には優れた性能を有している。しかしながら非鉄金属の切り屑は長く伸びやすいため、ダイヤモンド焼結体の研削加工された逃げ面に当たり切れ刃を欠損させることがある。ダイヤモンド膜の表面に硬質炭素膜を被覆したダイヤモンドコーティング切削工具は、硬質炭素膜がすくい面のみに被覆されているため、逃げ面の切り屑排出性を向上させる効果は見られない。またダイヤモンドコーティングは密着性が低く高価なコーティング設備が必要になるという問題がある。本発明は安価で切り屑排出性に優れたダイヤモンド焼結体工具とその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者はダイヤモンドを放電加工することで生じるグラファイトに着目した。放電加工によってダイヤモンド焼結体の逃げ面にグラファイトを析出させると、逃げ面の潤滑性を高くすることができ、工具寿命が向上する。
すなわち、本発明ダイヤモンド焼結体工具は、ダイヤモンド焼結体と超硬合金台金を直接接合したダイヤモンド焼結体素材を工具支持台にロウ付けしたダイヤモンド焼結体工具であって、該ダイヤモンド焼結体工具の逃げ面にグラファイトが検出されることを特徴とする。
従来ダイヤモンド焼結体の研削加工された逃げ面にはグラファイトは存在しないが、本発明ダイヤモンド焼結体工具の逃げ面にはグラファイトが存在する。本発明ダイヤモンド焼結体工具の逃げ面のグラファイトは切り屑による工具損傷を減少させる作用があり、工具寿命を向上させる効果を奏する。逃げ面にグラファイトを直接塗布してもよいが、放電加工によりダイヤモンドを相変態させてグラファイトを析出させることは特に好ましい。この理由は、ダイヤモンド粒子から相変態したグラファイトはダイヤモンド粒子に対して十分な付着強度を持つためである。なお、工具のコーナは切削加工そのものに寄与する部分であるためコーナの加工品位は重要である。そのため逃げ面を放電加工した後にコーナのみを研削加工することは非常に好ましいことである。
本発明ダイヤモンド焼結体工具の逃げ面を波長514nmのアルゴンレーザーを用いてラマンスペクトルを測定したとき、1333cm-1に存在するダイヤモンドのピーク強度Idに対する1400〜1700cm-1に存在するグラファイトのピーク強度Igの割合を示すピーク強度比(Ig/Id)が0.01〜0.1であると好ましい。これはIg/Idが0.01未満であると潤滑性を向上させる効果は少なく、Ig/Idが0.1を超えるほどの放電加工を行うと、放電加工による変質層が深くなり欠損しやすいためである。
本発明ダイヤモンド焼結体工具において、ダイヤモンド焼結体は、ダイヤモンド100体積%の焼結体、または、ダイヤモンド:80体積%以上と、Fe、Co、Niの中の少なくとも1種類:残部と、からなる焼結体のことを示す。超硬合金台金は、機械的強度が高くダイヤモンド焼結に影響が少ないWC−Co系超硬合金が好ましい。工具支持台は、機械的強度が高いWC−Co系金超硬合金、WC−β−Co系超硬合金が好ましい。ここでβは周期律表4a,5a,6a族元素の炭化物、窒化部およびこれらの固溶体の中の少なくとも1種からなる立方晶化合物のことを示す。
本発明ダイヤモンド焼結体工具の用途としては、旋削加工、フライス加工などの切削加工を挙げることができる。その中でも特にアルミニウム、アルミニウム合金または銅などの非鉄金属の切削加工に適する。
本発明のダイヤモンド焼結体工具の製造方法は、ダイヤモンド焼結体工具の製造方法において、放電加工によりダイヤモンド焼結体ブランクスからダイヤモンド焼結体素材を切り出す工程と、切り出したダイヤモンド焼結体素材を工具支持台にロウ付け接合する工程と、ロウ付け後のダイヤモンド焼結体工具のコーナを研削加工する工程と、を含むことを特徴とする。
本発明ダイヤモンド焼結体工具の具体的な製造方法を以下に説明する。超高圧高温発生装置を用いてダイヤモンド焼結体と超硬合金台金とからなるダイヤモンド焼結体ブランクスを製造する工程1と、製造したダイヤモンド焼結体ブランクスのダイヤモンド焼結体表面をポリッシングする工程2と、ポリッシングしたダイヤモンド焼結体ブランクスをワイヤ放電加工によりダイヤモンド焼結体素材に切り出す工程3と、切り出したダイヤモンド焼結体素材を工具支持台にロウ付けしてダイヤモンド焼結体工具を得る工程4と、ロウ付け後のダイヤモンド焼結体工具のコーナのみを研削加工する工程5とを経ることで本発明のダイヤモンド焼結体工具を得る。
精度の高い工具を作製する場合には、ダイヤモンド焼結体素材をロウ付けする工程4の後に、工具支持台よりはみ出したダイヤモンド焼結体素材の逃げ面部分を放電加工で整形する工程を加えると好ましい。さらに精度の高い工具を作製する場合には、ロウ付けする工程4の後に、ダイヤモンド焼結体素材および工具支持台の逃げ面部分を研削加工する工程と、研削加工後にダイヤモンド焼結体素材の逃げ面部分を放電加工する工程とを加えると好ましい。
ダイヤモンド焼結体ブランクスをワイヤ放電加工する工程3において、放電加工によってダイヤモンド焼結体の加工表面に微細クラックや変質層などが生じる場合がある。微細クラックや変質層が深いと工具寿命と被削材仕上げ面精度の低下を招く。したがって、ダイヤモンド焼結体の微細クラックや変質層が深くならないように放電加工条件のコンデンサー容量を2000pF以下、無負荷電圧を100V以下に設定することが好ましい。
ダイヤモンド焼結体ブランクスをワイヤ放電加工する工程3において、ダイヤモンド焼結体工具のコーナに仕上げ代を残した形状とし、工程5においてダイヤモンド焼結体工具のコーナのみを研削加工すると好ましい。本発明の製造方法によりコーナは十分な加工品位を持つとともに、逃げ面は放電加工により得られたグラファイトが存在する本発明ダイヤモンド焼結体工具が得られる。
本発明ダイヤモンド焼結体工具は、逃げ面を研削加工する従来ダイヤモンド焼結体工具と比較して、加工時間の大幅な短縮が可能であり人件費および砥石代等の製造コストを低減できる。また、硬質炭素膜を被覆するダイヤモンドコーティング切削工具と比較すると高価なコーティング装置を必要としないため安価に製造することができる。
本発明ダイヤモンド焼結体工具は工具寿命の向上させる。逃げ面に存在するグラファイトが切り屑排出性を向上させる作用を奏し、切り屑による工具損傷を減少させ工具寿命の向上をもたらすものである。本発明ダイヤモンド焼結体工具の製造方法により工具寿命に優れるダイヤモンド焼結体工具を提供することが可能である。
従来のダイヤモンド焼結体ブランクスの製造方法によって、ダイヤモンド焼結体ブランクスを製造した。次にダイヤモンド焼結体ブランクスのダイヤモンド表面側をポリッシングする。ポリッシングしたダイヤモンド焼結体ブランクスから表1に示す放電加工条件で、試料番号1〜6はコーナの研削取り代を考慮した一辺3mm×厚さ3mmの略正三角板状にダイヤモンド焼結体素材を切り出し、試料番号7、8は一辺3mm×厚さ3mmの正三角板状にダイヤモンド焼結体素材を切り出した。次いで、試料番号1〜8のダイヤモンド焼結体素材をJIS規格TNGA160408用の工具支持台にロウ付けした。ロウ付け後、試料番号1〜6についてはコーナのみを研削加工して、試料番号7、8については逃げ面全体を研削加工して、ダイヤモンド焼結体工具を得た。
Figure 2005088178
※切削の困難さ 小 正常摩耗<微小チッピング<欠損<大欠損 大
ダイヤモンド焼結体工具についてアルゴンレーザによるラマンスペクトルを測定したところ、試料番号1〜6については、1333cm-1付近にダイヤモンドのピーク、1400〜1700cm-1にグラファイトのピークが見られた。このとき測定したダイヤモンドのピーク強度Idに対するグラファイトのピーク強度Igのピーク強度比(Ig/Id)を表1に併記する。試料番号7、8については、グラファイトのピークは検出されなかった。
試料番号1〜8のダイヤモンド焼結体工具について、切削速度:200m/min、切込み:0.5mm、送り:0.1mm/回転の条件で被削材:Al-20%Si合金(重量%)を切削した場合、切削開始から20分後の摩耗量と損傷状態を比較した。切削試験の結果、発明品の試料番号1〜4は正常な摩耗を示し欠損も見られなかった。発明品の試料番号5、6は切れ刃に微小チッピングが観察されたものの切削可能であった。比較品の試料番号7、8は切り屑詰まりによる欠損を生じ、切削困難となった。すなわち、発明品の試料番号1〜6は、比較品の試料番号7、8に比較して工具寿命が向上した。
本発明の一実施例を示すダイヤモンド焼結体工具の斜視拡大図
符号の説明
1…ダイヤモンド焼結体
2…工具支持台
3…超硬合金台金
4…放電加工した逃げ面
5…切れ刃
6…研削加工したコーナ

Claims (4)

  1. ダイヤモンド焼結体と超硬合金台金を直接接合したダイヤモンド焼結体素材を工具支持台にロウ付けしたダイヤモンド焼結体工具であって、該ダイヤモンド焼結体工具の逃げ面にグラファイトが検出されることを特徴とするダイヤモンド焼結体工具。
  2. 該ダイヤモンド焼結体工具の逃げ面に検出されるグラファイトは放電加工により得られることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド焼結体工具。
  3. 該ダイヤモンド焼結体工具の逃げ面のラマンスペクトルにおいて、ダイヤモンドのピーク強度をId、グラファイトのピーク強度をIgと表した場合、ダイヤモンドのピーク強度Idに対するグラファイトのピーク強度Igの割合を示すピーク強度比(Ig/Id)が0.01〜0.1であることを特徴とする請求項1または2に記載のダイヤモンド焼結体工具。
  4. ダイヤモンド焼結体工具の製造方法において、放電加工によりダイヤモンド焼結体ブランクスからダイヤモンド焼結体素材を切り出す工程と、切り出したダイヤモンド焼結体素材を工具支持台にロウ付け接合する工程と、ロウ付け後のダイヤモンド焼結体工具のコーナを研削加工する工程と、を含むダイヤモンド焼結体工具の製造方法。
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