JP2005082853A - 軟磁性合金粉末とそれを用いた圧粉磁心 - Google Patents

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Abstract

【課題】 Feが50wt%程度を占めかつ添加元素が極めて少ないFe−Ni系軟磁性合金において、圧粉磁芯におけるコア損失の低減を図った組成からなる軟磁性合金粉末とそれを用いた圧粉磁心の提供。
【解決手段】 Feが50wt%程度を占めるFe−Ni系軟磁性合金において、Cr、Mnを各0.4wt%以下の微量添加、総量最大で0.8wt以下の添加により、水アトマイズ法による粉末化に適しており、溶湯は粘度が比較的低くなりアトマイズ時の粒度分布を効果的に細かくでき、かつ粉末粒子形態は球状が生成され易くなり、当該合金を用いた圧粉磁芯の高周波領域におけるコア損失を低減でき、かつ高い電気抵抗値が得られる。
【選択図】 なし

Description

この発明は、トランスやチョークコイル、ノイズフィルターに用いられるFe-Ni系軟磁性粉末に関し、Fe-Ni合金にCr、Mnを特定量、微量添加した水アトマイズ粉末とすることで、圧粉磁心となした際の高周波領域でのコア損失を低減した軟磁性合金粉末とそれを用いた圧粉磁心に関する。
近年、電子機器の小型化が進み、それに伴って電子部品に用いられる材料においても小型化が可能で高効率を有するものが要求されている。金属磁性粉を用いて作製される圧粉磁心は、従来から使用されていたフェライト磁心よりも高い飽和磁束密度を有しているため電子部品の小型化には有利である。
しかし、金属磁性粉による圧粉磁心は、一方でコア損失が大きいため、チョークコイルなどに使用するにはコアの発熱による温度上昇の問題もあり、小型化が困難であった。
コア損失は、通常ヒステリシス損失と渦電流損失に分離される。ヒステリシス損失は、成型時に生じた歪みに起因するものであり、渦電流損失は周波数および渦電流が流れるサイズ、つまり渦電流経路長の二乗に比例して増大する。
また、チョークコイル、ノイズフィルター、DC/DCコンバータの昇圧/降圧用コイルといった用途においては、高周波の印加状態で使用されるため、圧粉磁心は渦電流損失の発生を抑えるために電気抵抗が高いこと、つまり電気絶縁性に優れていることが要求される。
そこで圧粉磁心の製造に際し、軟磁性合金粉未に水ガラス、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂のような電気絶緑性を有するバインダーを混合し、粉末粒子表面が絶縁性バインダーで被覆された状態の粉末を圧縮成形することで粉末間の絶縁の確保された成型体を作製している。さらに、得られた成型体に対して適宜熱処理を行うことにより、圧縮成型時の歪みを除去してヒステリシス損失の低減を図っていた。
しかし、圧粉磁心の成形には高圧を要するため、成型時には原料粉末の表面を覆っていた絶縁皮膜が破損し、粉未が相互に接触する結果、原料粉末間の電気絶縁が破壊される。また、成型体の熱処理による絶縁膜の収縮及び合金粉末の膨張といった要因から、絶縁被膜が破損し粉末が相互に接蝕する結果、原料粉未間の電気絶縁が破壊される。
このような問題を解決するため、軟磁性合金粉末の電気抵抗率を高めるため、軟磁性合金粉末にAl,Cr,Mo,Ti,Zr,Nb,Y,Cs,希土類元素の群から選ばれる1種または2種以上の易酸化性元素(0.5〜4wt%)を添加することにより、例えば、Fe-80Ni-2〜4Zr合金粉末は、その表面に易酸化性元素(Zr)を主成分とする酸化被膜(ZrO2)を形成させ、電気抵抗率を高めた磁性粉末が提案されている。
特開2002-231518
また、圧粉磁芯のコア損失を低減するため、Fe-45〜68wt%Ni系軟磁性合金粉末にSi、Ge、Snのうち少なくとも一つを0.1〜6.5wt%加えた粉末を用いた圧粉磁芯が提案されている。これは、Si、Ge、Snを添加することで、同じ熱処理条件下で歪み解放量がより大きくヒステリシス損失が小さくなることと、電気抵抗が増加することに着目したものである。
特開2001-23811
前記の圧粉磁芯用の軟磁性合金粉末は、Niが主成分で大半を占めるFe-Ni系合金であり、圧粉磁芯のコア損失の低減に有利であるが、より安価に提供でき、飽和磁束密度が高いという特徴を有する、Feが50wt%程度を占めかつ添加元素が極めて少ないFe-Ni系軟磁性合金において、圧粉磁芯の高周波領域におけるコア損失の低減を図った組成が提案されていない。
この発明は、圧粉磁心となした際の高周波領域におけるコア損失を低減した軟磁性粉末の提供、特にFeが50wt%程度を占めかつ添加元素が極めて少ないFe-Ni系軟磁性合金において、圧粉磁芯におけるコア損失の低減を図った組成からなる軟磁性合金粉末とそれを用いた圧粉磁心の提供を目的としている。
発明者らは、Feが50wt%程度を占めるFe-Ni系軟磁性合金において、圧粉磁芯におけるコア損失の低減が可能な組成について、特に改善のための添加元素の添加量を微量にできる組成について、鋭意検討した結果、Cr、Mnを各0.4wt%以下の微量添加、総量最大で0.8wt%以下の添加により、その改善の機構は不明であるが、当該合金を用いた圧粉磁芯の高周波領域におけるコア損失を低減でき、かつ高い電気抵抗値が得られることを知見し、この発明を完成した。
すなわち、この発明は、Crを0.1wt%〜0.4wt%、Mnを0.01wt%〜0.4wt%含有し、Niが48wt%〜50wt%、残部が実質的にFeからなる軟磁性合金粉未である。
また、この発明は、上記組成からなるFe-Ni系軟磁性合金粉未を絶縁性バインダーとともに圧縮成形した圧粉磁芯である。
また、発明者らは、水アトマイズ法を用いて製造された水アトマイズ法により粉末化された上記組成からなるFe-Ni系軟磁性合金粉末と、該軟磁性合金粉末を用いた圧粉磁芯を併せて提案する。
この発明によると、Feが50wt%程度を占め、安価に提供可能なFe-Ni系軟磁性合金であり、当該合金を用いた圧粉磁芯は、その高周波領域におけるコア損失を低減でき、かつ高い電気抵抗値が得られるため、トランスやチョークコイル、ノイズフィルターなどの電子部品として小型化に寄与できる。
この発明による組成のFe-Ni系軟磁性合金は、水アトマイズ法による粉末化に適しており、溶湯は粘度が比較的低くなりアトマイズ時の粒度分布を効果的に細かくでき、かつ粉末粒子形態は球状が生成され易くなるため、粉末粒子形態が不規則形状粒子の突起や角などが取れて球状粒子をも含む形態を呈し、この粉末を圧縮成形した圧粉磁芯は、そのコア損失の低減効果が得られる。
この発明による軟磁性合金は、Fe-Ni-Cr-Mn系組成であり、以下に組成の限定理由を説明する。
Crは、Mnとの複合添加により、Fe-Ni系軟磁性合金の軟磁気特性を維持して、圧縮成形し圧粉磁芯として評価した際、そのコア損失が低減されるとともに高い電気抵抗値が得られる。かかる効果を得るには0.01wt%以上添加する必要があるが、0.4wt%を超えるとコア損失の改善効果が得られなくなる。好ましくは、0.1wt%〜0.4wt%である。
Mnは、上述のごとくCrと複合添加するが、0.01wt%以上の添加が必要であり、0.4wt%を超える添加は、Crとの複合添加効果が得られなくなり、かつ軟磁気特性を劣化させる。より好ましくは、0.1wt%〜0.4wt%である。
Niは、Feとともに主成分であるが、この発明では、48wt%〜50wt%の範囲が望ましい。
Feは、上述元素の残余を占め、49wt%〜51.2wt%の範囲である。なお、製造上で不可避の不純物としては、Co、Al、Si、Snがあるが、これらの存在は、この発明の作用効果に影響を与えない。
この発明において、上記組成の軟磁性合金粉末を作製するには、アトマイズ法が好ましく、得られる粉未の形状は問わないが、平均粒径は1〜100μmであることが好ましい。粒径を細かくすることで渦電流損失を低減させることが可能であるが、平均粒径をlμm以下にすると成型体の密度が小さくなり、軟磁気特性の劣化を招くため好ましくない。
アトマイズ法は、特に水アトマイズ法が好ましく、公知のいずれの装置も採用でき、高圧ポンプで冷却媒である水を噴霧ノズルから噴出させて高速ジェット流を形成し、タンディッシュ内に保持された溶湯を高速ジェット流に導くことにより、溶湯は分解粒となって凝固し、噴霧チャンバ内の冷却水内に落下する。
特開昭57-207102
特に、この発明の組成からなる合金溶湯は粘性が低くなり、前記水アトマイズ法により、粉末粒子形態としては、不規則形状粒子の突起や角が取れて球状粒子も多い粉末が得られる。かかる球状粒子を含む粉末を圧縮成形すると、その成形性や成形密度の向上効果が得られる。
圧粉磁芯は、上記組成の軟磁性合金粉未を絶縁性バインダーと混練し、圧縮成形して製造する。混練は、公知のいずれの装置、方法であっても採用でき、適宜、ステアリン酸塩などの潤滑剤を添加することが可能である。また、圧縮成形は、500〜900MPaの圧力で行われることが好ましい。
圧縮成形後の熱処理は、適宜行うことができ、例えば、窒素等の不活性ガス中で、600℃〜800℃、1〜5時間の条件で実施することができる。
この発明において、電気絶縁性バインダーには、水ガラス、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、ブチラール樹脂、有機シリコン樹脂、イミド樹脂、などの電気絶縁性樹脂が適宜利用できる。添加量は、1wt%〜6wt%が好ましい。
実施例1
Ni、Fe、Cr、Mnを表1に示す種々組成となるように真空溶解炉で溶製し、各溶湯を水アトマイズ装置にて粉末化処理しアトマイズ粉を製造した。実施例No.1〜8、17、18は本発明の組成範囲を外れる比較例である。
得られた各アトマイズ粉末は、いずれも不規則形状粒子の突起が取れて球状粒子を多く含む1〜100μm程度の粉末からなるが、この発明の組成の場合は、粒子径が10〜50μm程度に良く揃っていた。
各粉末はいずれも100重量部に対し、バインダーとしてシリコン樹脂を2重量部添加し、これを攪拌、混合して成形用の混合物を調製した。なお、混合物には潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を1重量部添加した。
各粉末の混合物を圧力800MPaでプレス成形して、外径17mm、内径9mm、高さ5mmのリング状成形体を製造した。得られた各成形体に、N2中で温度650℃×1時間の熱処理を行って圧粉磁心にした。さらに、得られた圧粉磁心の電気抵抗率とコア損失を測定した。測定結果を表1に示す。
実施例2
表1の実施例No.9と同様組成でFeに不純物としてAlとSiを0.01wt%f含むアトマイズ粉末を用い、バインダーとしてシリコン樹脂を用いて成形用混合物を作製した。実施例1と同条件の圧力で成形、熱処理を施して圧粉磁心を作製した
得られた圧粉磁心の電気抵抗率とコア損失を測定した結果、表1に示す結果と同様特性であることを確認した。
Figure 2005082853
この発明は、Feが50wt%程度を占めかつ添加元素が極めて少ないFe-Ni系軟磁性合金であり、圧粉磁芯用として最適の軟磁性合金粉末を安価に提供できる。また、高周波領域におけるコア損失を低減した圧粉磁心を提供でき、トランスやチョークコイル、ノイズフィルターの小型化に適した電子部品を提供できる。

Claims (4)

  1. Crを0.1wt%〜0.4wt%、Mnを0.01wt%〜0.4wt%含有し、Niが48wt%〜50wt%、残部が実質的にFeからなる軟磁性合金粉未。
  2. 水アトマイズ法により粉末化された請求項1に記載の軟磁性合金粉未。
  3. Crを0.1wt%〜0.4wt%、Mnを0.01wt%〜0.4wt%含有し、Niが48wt%〜50wt%、残部が実質的にFeからなる軟磁性合金粉未が、絶縁性バインダーとともに圧縮成形された圧粉磁芯。
  4. 軟磁性合金粉未は、水アトマイズ法により粉末化された請求項3に記載の圧粉磁芯。
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