JP2005077916A - 多層膜およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 信頼性が高く、光損失の低い光学装置を提供する。
【解決手段】 基板上に形成されてなるジルコニウム成分およびチタニウム成分を含むカップリング膜と、前記カップリング膜上に形成されてなるフッ素含有ポリイミド膜と、を有する多層膜により、上記課題は解決される。
【選択図】 なし

Description

本発明は、光導波路などの光学装置に適用可能なフッ素含有ポリイミド膜を含む多層膜およびその製造方法に関する。
近年、情報通信ネットワークの発達による情報伝送が高速化・大容量化するに伴い、ネットワークに接続し大量の情報を高速に伝送することのできる光ファイバ・光部品などの光通信技術の実用化が進められている。なかでも、光損失の低い光ファイバの開発による光通信システムの実用化に伴い、種々の光通信用部品として用いられる光学装置に適用可能な光導波路の研究開発が活発になされている。
光導波路には、光損失が小さい、製造が容易、耐熱性に優れている等の条件が要求されている。そこで、光損失の低い光導波路とするために、石英ガラスや多成分ガラス等の無機系材料が広く用いられてきた。しかし、これらの材料では、光導波路作製時において、長時間を要する、高温が必要、大面積化が必要である等の問題があった。
このような無機系材料に対し、高分子系材料は加工性や価格の点で優れていることから注目されており、なかでも、高い耐熱性、ハンダに対する耐性、膜の柔軟性や膜の強度等に優れるポリイミド系樹脂が注目されている。特に、フッ素含有ポリイミド系樹脂は、フッ素を含むため光透過性が高く、屈折率が低い等の特徴を有し、光導波路材料に適している。
かようなフッ素含有ポリイミド系樹脂を用いた光導波路の構造としては、基板表面上に屈折率の異なる2種類のフッ素含有ポリイミド膜を、コア層およびクラッド層としてパターニングした多層構造がある(例えば、特許文献1参照)。かような多層構造を有することにより、光損失の低い光導波路が得られる。しかし、フッ素含有ポリイミド系樹脂は、基板表面への密着性が低いため、長時間の使用に対して信頼性に問題があった。
そこで、基板表面とフッ素含有ポリイミド膜との間に、有機ジルコニウム化合物またはジルコニウムアルコキシド化合物から形成されるカップリング膜を有する多層膜を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献2および3参照。)。かような方法により、基板表面に対するフッ素含有ポリイミド膜の密着性を向上させることが可能となり得る。
特開平4−235506号公報 特開平7−174930号公報 特開平11−337753号公報
上記特許文献2および3の方法を用いることにより、基板表面に対するフッ素含有ポリイミド膜の密着性は向上するものの、多層膜化した際、特にフッ素含有ポリイミド膜の下部にクラックが発生し、信頼性の高い多層膜を得るには問題があった。
そこで、本発明が目的とするところは、信頼性が高く、光損失の低い光学装置を提供することである。
本発明は、カップリング膜にチタニウム成分をさらに含めることにより、多層膜の耐クラック性が改善することを見出した。すなわち、本発明は、基板上に形成されてなるジルコニウム成分およびチタニウム成分を含むカップリング膜と、前記カップリング膜上に形成されてなるフッ素含有ポリイミド膜と、を有する多層膜である。
本発明によれば、カップリング膜にチタニウム成分をさらに含めることにより、フッ素含有ポリイミド膜の密着性を維持しつつ、多層膜の耐クラック性を改善させることができる。従って、本発明の多層膜を用いることにより、信頼性が高く、光損失の低い光学装置を提供することが可能となる。
本発明により、信頼性が高く、光損失の低い光学装置を提供することが可能となる。
本発明の第1は、基板上に形成されてなるジルコニウム成分およびチタニウム成分を含むカップリング膜と、前記カップリング膜上に形成されてなるフッ素含有ポリイミド膜と、を有する多層膜である。
光導波路、多層プリント基板等の光学装置は、屈折率の異なる物質の界面に光が当たると全反射することを応用して、基板上に形成した回路により光信号を導くものである。従って、かような光学装置の構造は、屈折率の高いフッ素含有ポリイミド樹脂の回路と、屈折率の低いフッ素含有ポリイミド樹脂の回路とを有するフッ素含有ポリイミド膜の多層構造を基板上に形成する必要がある。
従来の多層膜では、かようなフッ素含有ポリイミド膜と基板との密着性を向上させるため、フッ素含有ポリイミド膜と基板との間にジルコニウム成分のみからなるカップリング膜を有していた。しかし、かようなカップリング膜上にフッ素含有ポリイミド膜を形成させると、特にフッ素含有ポリイミド膜の下部にクラックが発生する恐れがあった。
しかし、本発明の多層膜はカップリング膜にさらにチタニウム成分を含むことにより、フッ素含有ポリイミド膜と基板表面との密着性を維持しつつ、フッ素含有ポリイミド膜の下部に発生し得るクラックを抑制することが可能となった。
以下、本発明の多層膜について、順に説明する。
本発明の多層膜が形成される基板としては、フッ素含有ポリイミド膜を硬化させるための熱処理に耐えるものであれば特に限定されない。基板の材料としては、例えば、ガラス、石英等の無機材料、シリコン、ガリウムヒ素、アルミニウム、チタン等の半導体や金属材料、ポリイミド、ポリアミド等の高分子材料、またはこれらの材料を複合化した材料などが挙げられる。
基板上に形成されてなるカップリング膜には、ジルコニウム成分およびチタニウム成分が含まれる。
カップリング膜に含まれるジルコニウム成分は、原料として用いた有機ジルコニウム化合物から得られ、カップリング膜を製造する段階において膜を固化させた時に残存する成分に含まれる。かようなジルコニウム成分としては、主として酸化ジルコニウムが挙げられる。有機ジルコニウム化合物としては、特に限定されないが、ジルコニウムエステルおよびジルコニウムキレート化合物が用いられ得る。ジルコニウムエステルとしては、テトラプロピルジルコネート、テトラブチルジルコネートなどが挙げられる。ジルコニウムキレート化合物としては、テトラキス(アセチルアセトネート)ジルコニウム、モノブトキシトリス(アセチルアセトネート)ジルコニウム、ジブトキシビス(アセチルアセトネート)ジルコニウム、トリブトキシアセチルアセトネートジルコニウム、テトラ(エチルアセチルアセテート)ジルコニウム、モノブトキシトリス(エチルアセチルアセテート)ジルコニウム、ジブトキシビス(エチルアセチルアセテート)ジルコニウム、トリブトキシエチルアセチルアセテート、テトラキス(エチルラクトネート)ジルコニウム、ビス(ビスアセチルアセトネート)ビス(エチルアセチルアセトネート)ジルコニウム、モノアセチルアセトネートトリス(エチルアセチルアセトネート)ジルコニウム、モノブトキシモノアセチルアセトネートビス(エチルアセチルアセトネート)ジルコニウムなどが挙げられ、好ましくはジブトキシビス(アセチルアセトネート)ジルコニウムが挙げられる。ジルコニウムエステルおよびジルコニウムキレート化合物のいずれの場合でも、膜形成時に酸化ジルコニウムを含むものであれば、これらの例示したものに限られるものではない。また、これらの有機ジルコニウム化合物は、単独でまたは2種以上の混合物の形態で使用されてよい。
カップリング膜に含まれるジルコニウム成分は、カップリング膜全質量に対して20質量%以上100質量%未満、好ましくは50質量%以上100質量%未満、より好ましくは70質量%以上100質量%未満である。カップリング膜全質量に対して、ジルコニウム成分が20質量%未満であると、密着性が低下する恐れがある。
カップリング膜に含まれるチタニウム成分は、原料として用いた有機チタニウム化合物から得られ、カップリング膜を製造する段階において膜を固化させた時に残存する成分に含まれる。かようなチタニウム成分としては、主として酸化チタニウムが挙げられる。有機チタニウム化合物としては、特に限定されないが、チタンアルコキシドおよびチタンキレート化合物が挙げられる。チタンアルコキシド化合物としては、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラキスステアリルオキシチタンなどが挙げられる。チタンキレート化合物としては、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタンなどが挙げられる。チタンアルコキシドおよびチタンキレート化合物のいずれの場合でも、膜形成時に酸化チタニウムを含むものであれば、これらの例示したものに限られないが、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタンが好適に用いられる。また、これらの有機チタニウム化合物は、単独でまたは2種以上の混合物の形態で使用されてよい。
カップリング膜に含まれるチタニウム成分は、カップリング膜全質量に対して0質量%を超え80質量%以下、好ましくは0質量%を超え50質量%以下、より好ましくは0質量%を超え30質量%以下である。カップリング膜全質量に対して、チタニウム成分が80質量%を超えると、密着性が低下する恐れがある。
基板上に形成されてなるカップリング膜の厚さは、好ましくは0.005〜0.3μm、より好ましくは0.01〜0.15μm、特に好ましくは0.015〜0.1μmである。カップリング膜の厚さが0.005μm未満だと、密着性が低下する恐れがある。また、カップリング膜の厚さが0.3μmを超えると、膜自体が脆くなる恐れがある。
カップリング膜上に形成されてなるフッ素含有ポリイミド膜は、フッ素含有ポリイミド前駆体を熱処理することにより得られる。本発明で使用するフッ素含有ポリイミド前駆体は、特に制限はないが、耐熱性、耐薬品性、撥水性、誘電特性、電気特性、光学特性に優れる点で、下記式(1)で示すフッ素含有ポリアミド酸(以下、単に「ポリアミド酸」とも称する。)を好ましく使用することができる。
Figure 2005077916
(式中、Xは4価の有機基、Yは2価の有機基であり、Xおよび/またはYのいずれかに少なくとも1個のフッ素原子を含む。)
Xは4価の有機基であり、該4価の有機基としては、環状アルキル、鎖状アルキル、オレフィン、グリコールなど由来の、4価の脂肪族有機基;ベンゼンビフェニル、ビフェニルエーテル、ビスフェニルベンゼン、ビスフェノキシベンゼンなど由来の、4価の芳香族有機基;ならびにこれらの含ハロゲン脂肪族および芳香族有機基などが挙げられる。これらのうち、4価の芳香族有機基、より好ましくは4価の含ハロゲン芳香族有機基が、上記(1)における「X」として好ましい。これらのうち、上記(1)における「X」として特に好ましい4価の有機基の例としては、下記式:
Figure 2005077916
で示される4価の基が挙げられる。
上記式(1)におけるXの好ましい構造を示す式において、R及びRは、ハロゲン原子、即ち、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表わし、好ましくはフッ素または塩素原子、最も好ましくはフッ素原子を表わす。この際、R及びRは、同一であってもまたは異なるものであってもよく、また、R及びRがそれぞれの相当するベンゼン環中で複数個存在する(即ち、m及びm’が2または3である)場合には、R及びRは、それぞれ、各ベンゼン環中で同一であってもまたは異なるものであってもよい。また、m及びm’は、それぞれ、相当するベンゼン環へのR及びRの結合数を表わし、0〜3の整数であり、耐熱性、耐薬品性、撥水性及び低誘電性を考慮すると、C−H結合が存在しないことが好ましいため、好ましくは3である。この際、m及びm’は、同一の数であってもまたは異なる数であってもよい。
また、上記式において、Zは結合子または下記式:
Figure 2005077916
で示される2価の基である。これらのうち、Zは、結合子または下記式:
Figure 2005077916
で示される2価の基であることが好ましい。
上記「Z」を表わす式において、Y’及びY”は、ハロゲン原子、即ち、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を表わし、好ましくはフッ素または塩素原子、最も好ましくはフッ素原子を表わす。上記「Z」を表わす式において、Y’及びY”双方が存在する際には、Y’及びY”は、同一であってもまたは異なるものであってもよく、また、Y’及びY”がそれぞれの相当するベンゼン環中で複数個存在する(即ち、r及びr’が2〜4の整数である)場合には、Y’及びY”は、それぞれ、各ベンゼン環中で同一であってもまたは異なるものであってもよい。また、r及びr’は、それぞれ、相当するベンゼン環へのY’及びY”の結合数を表わし、0〜4、好ましくは2〜4の整数であり、耐熱性、耐薬品性、撥水性及び低誘電性を考慮すると、C−H結合が存在しないことが好ましいため、最も好ましくは4である。この際、r及びr’は、同一の数であってもまたは異なる数であってもよい。
上記式(1)において、Yは2価の有機基であり、1)炭素−水素結合のみからなる直鎖または分岐、環を含んでいてもよい2価の脂肪族基、芳香族機、2以上の該脂肪族基や芳香族基が酸素原子、窒素原子、硫黄原子などの炭素原子以外の異種原子で結合した2価のハロゲン不含有機基のほか、2)上記1)の有機基に含まれる炭素−水素結合の一部の水素原子がハロゲン原子で置換された2価の部分ハロゲン有機基、3)上記1)の有機基に含まれる炭素−水素結合の全の水素原子がハロゲン原子で置換された2価の全ハロゲン有機基であることが好ましい。なお、部分ハロゲン有機基や全ハロゲン有機基に含まれるハロゲン原子としては、全て同一である必要はなく、「Y」中に異なるハロゲン原子を含んでいてもよい。上記1)のハロゲン不含有機基としては、環状アルキル、鎖状アルキル、オレフィン、グリコールなど由来の2価の脂肪族有機基;ベンゼンビフェニル、ビフェニルエーテル、ビスフェニルベンゼン、ビスフェノキシベンゼンなど由来の2価の芳香族有機基、芳香族有機基がある。また、2)の部分ハロゲン有機基や3)の全ハロゲン有機基としては、1)のハロゲン不含有機基の一部または全部の水素原子がハロゲン原子で置換されたものが例示できる。
上記(1)における「Y」としてより好ましい2価の有機基の例としては、下記に示す1)〜3)のいずれかの2価の有機基であることが好ましく、耐熱性、耐薬品性、撥水性及び低誘電性を考慮すると、最も好ましいのは3)である。
Figure 2005077916
本発明において、上記式(1)で示すポリアミド酸はフッ素原子を含むことを必須とする。また、上記式(1)で示される繰り返し単位を有するポリアミド酸は、この繰り返し単位の存在によってこれから形成されるポリイミドの所望の屈折率(即ち、既存の全ハロゲン化ポリイミドに対する屈折率差Δn)が達成できる。該ポリアミド酸は、近赤外域光、特に光通信波長域(1.0〜1.7μm)における光透過損失を考慮すると、炭素−水素結合(C−H結合)が存在しないことが好ましい。この点から、上記式(1)を構成する炭素に結合する水素原子の全てがハロゲン原子に置換されたもの(以下、「全ハロゲン化ポリアミド酸」とも称する。)であることが好ましい。すなわちこれによって、耐熱性、耐薬品性、撥水性、誘電特性、電気特性及び光学特性に優れるフッ素含有ポリイミド膜の原料となり得る。
なお、上記式(1)で示すポリアミド酸の製造方法については以下に詳述するが、この記載から、該ポリアミド酸の末端は、ジアミン化合物及びテトラカルボン酸誘導体の添加量(モル比)によって異なるものの、アミン末端または酸誘導体末端のいずれかであると考えられる。なお、該ポリアミド酸は、同一の繰り返し単位からなるものであってもまたは異なる繰り返し単位からなるものであってもよく、後者の場合には、その繰り返し単位はブロック状であってもまたはランダム状であってもよい。
該ポリアミド酸は、公知の技術の組み合わせによって製造でき、その製造方法は、特に制限されるものではない。一般的には、有機溶媒中で、下記式(2)で示されるジアミン化合物を、下記式(3)で示すテトラカルボン酸、その酸無水物もしくは酸塩化物、またはそのエステル化物等と反応させる方法が好ましく使用される。なお、下記式(2)における「Y」、ならびに下記式(3)における「X」は、上記式(1)における定義と同様である。
Figure 2005077916
Figure 2005077916
上記(2)で示すジアミン化合物としては、上記(3)で示すテトラカルボン酸等と反応して上記(1)で示すポリアミド酸が製造できるような構造を有するものであれば、特に制限されるものではない。したがって好ましいポリアミド酸の構造から、
1):4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、
2):2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、
3):5−クロロ−1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロベンゼン、2,4,5,6−テトラクロロ−1,3−ジアミノベンゼン、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−ジアミノベンゼン、4,5,6−トリクロロ−1,3−ジアミノ−2―フルオロベンゼン、5−ブロモ−1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロベンゼン、2,4,5,6−テトラブロモ−1,3−ジアミノベンゼンが好ましく、5−クロロ−1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロベンゼンが好ましい。これらの中でも、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−ジアミノベンゼン、5−クロロ−1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロベンゼンが特に好ましい。なお、これらのジアミン化合物は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
一方、上記(3)で示すテトラカルボン酸、その酸無水物もしくは酸塩化物としては、特に制限されるものではなく、特開平11−147955号公報に記載の方法など、公知の技術またはその組み合わせによって製造できる。具体的には、ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ヘキサクロロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、ヘキサクロロ−3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェニル)スルフィド、ビス(3,4−ジカルボキシトリクロロフェニル)スルフィド、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリクロロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラクロロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリクロロフェノキシ)テトラクロロベンゼン、3,6−ジフルオロピロメリット酸、3,6−ジクロロピロメリット酸、3−クロロ−6−フルオロピロメリット酸等の、上記式(3)のハロゲン化テトラカルボン酸;対応する酸二無水物;対応する酸塩化物;メチルエステル、エチルエステル等の対応するエステル化物などが挙げられる。これらのうち、ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラクロロベンゼン、ならびにこれらの対応する酸二無水物及び酸塩化物が好ましく、ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラクロロベンゼン、およびこれらの酸二無水物が特に好ましい。なお、これらのハロゲン化テトラカルボン酸誘導体は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
有機溶媒中で、上記(2)で示されるジアミン化合物を上記式(3)のテトラカルボン酸等と反応させる方法によって、所望のポリアミド酸が製造できる。
該ジアミン化合物の添加量は、テトラカルボン酸等と効率よく反応できる量であればよく特に制限されない。具体的には、該ジアミン化合物の添加量は、化学量論的には、該テトラカルボン酸誘導体と等モルであるが、好ましくは該テトラカルボン酸等の全モル数を1モルとした場合に、0.8〜1.2モル、より好ましくは0.9〜1.1モルである。この際、ジアミン化合物の添加量が0.8モル未満であると、該テトラカルボン酸等が多量に残存してしまい精製工程が複雑になる恐れがあり、また、重合度が大きくならない恐れがあり、逆に1.2モルを超えると、該ジアミン化合物が多量に残存してしまい精製工程が複雑になる恐れがあり、また、重合度が大きくならない恐れがある。
反応は有機溶媒中で行なうことができ、該ジアミン化合物及び該テトラカルボン酸等との反応が効率よく進行でき、かつこれらの原料に対して不活性であれば、特に制限されるものではない。例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどの極性有機溶媒が挙げられる。なお、これらの有機溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、有機溶媒の量は、ジアミン化合物及びテトラカルボン酸等との反応が効率よく進行できる量であれば特に制限されないが、有機溶媒中のジアミン化合物の濃度が1〜80質量%、より好ましくは5〜50質量%となるような量であることが好ましい。
ジアミン化合物及びテトラカルボン酸等との反応条件は、これらの反応が十分進行できる条件であれば特に制限されるものではない。例えば、反応温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜50℃である。また、反応時間は、通常、1〜20072時間、好ましくは2〜19248時間である。また、反応は、加圧下、常圧下または減圧下のいずれの圧力下で行なってもよいが、好ましくは常圧下で行われる。また、ジアミン化合物及びテトラカルボン酸等との反応は、反応効率及び重合度などを考慮すると、乾燥した不活性ガス雰囲気下で行なわれることが好ましく、この際の反応雰囲気における相対湿度は、好ましくは10RH%以下、より好ましくは1RH%以下であり、不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどが使用できる。
フッ素含有ポリイミド膜の厚さは、所望する特性を有する多層膜が得られるように適宜決定すればよいが、好ましくは5〜40μm、より好ましくは10〜30μmである。
上述した通り、ポリアミド酸を熱処理して得た本発明のフッ素含有ポリイミド膜は、耐熱性、耐薬品性、撥水性、誘電特性、電気特性及び光学特性に優れる。従って、かようなフッ素含有ポリイミド膜を含む本発明の多層膜は、様々な光学装置に有用である。また、本発明の多層膜は、ジルコニウム成分およびチタニウム成分を含むカップリング膜を有するため、フッ素含有ポリイミド膜の密着性を維持しつつ、多層膜の耐クラック性を改善させることができ、信頼性が高く、光損失の低い光学装置を提供することが可能となり得る。
従って、本発明の第1の多層膜は、光学装置に適用可能である。光学装置とは、上記基板上に本発明の多層膜を用いて、光導波路、光合波器、光分波路、光減衰器、光回折器、光増幅器、光干渉器、光フィルタ、光スイッチ、波長変換器、発光素子、受光素子あるいはこれらが複合化されたものなどを形成したものを指す。上記の基板上には、発光ダイオード、フォトダイオード等の半導体装置や電極用の金属膜が形成されることもあり、更に基板の保護や屈折率調整などのために、基板上に酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化タンタルなどの被膜が形成されることもある。
本発明の多層膜に含まれるフッ素含有ポリイミド膜の構造は、用いる光学装置の用途に併せて適宜決定すればよく、埋込み型、リッジ型、装荷型など従来公知のいずれの構造であってもよい。例えば、フッ素含有ポリイミド膜の構造を埋込み型とする方法としては、上記特許文献1、および、特開2002−90559号公報に記載の方法などが挙げられる。
本発明の第2は、本発明の第1の多層膜の製造方法である。すなわち、a)基板に有機ジルコニウム化合物および有機チタニウム化合物を含むカップリング剤を塗布してカップリング膜を形成する段階と、b)前記カップリング膜上にフッ素含有ポリイミド膜を形成する段階と、を含む多層膜の製造方法である。
上記a)の段階において、カップリング剤は、メタノール、エタノール、ブタノール、ベンゼン、トルエン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン等の有機溶剤、水などに、カップリング剤全質量に対して、有機ジルコニウム化合物および有機チタニウム化合物の総量が0.1〜5質量%、好ましくは0.25〜4質量%、より好ましくは0.31.0〜2質量%となるように溶解させて得られる。5質量%を超えるとカップリング膜が脆くなる恐れがあるため、カップリング剤に含まれる有機ジルコニウム化合物および有機チタニウム化合物の含有量は、上記範囲内であることが好ましい。また、有機ジルコニウム化合物の含有量をAおよび有機チタニウム化合物の含有量をBとした場合、これらは質量比で、0.25≦A/B≦1000、好ましくは1≦A/B≦1000、より好ましくは4≦A/B≦1000となるように添加する。
カップリング剤は、0.5μm以上の粒子がを3000個/g以下含むのであるのが好ましい。これは、0.5μm以上の大きさの粗大粒子が多く含まれるカップリング剤により形成されたカップリング膜上に、フッ素含有ポリイミド膜を形成すると、前記粗大粒子が起因するスポット、クラックが発生する恐れがあり、さらには、膜の平滑性をも損なう恐れがあるためである。
カップリング剤に含まれる0.5μm以上の粒子の数を、3000個/g以下とする手段は、特に限定されないが、保留粒子径が、0.5μm以下、好ましくは0.1〜0.3μm以下のフィルターでろ過することにより、粗大粒子数を制御する手段がある。カップリング剤に含まれる粒子数は、例えば、リキッド液体パーティクルカウンター(PMS社製 APSS−200)を用いて測定できる。
上述の通り調整されたカップリング剤は、スピンコート法などにより基板表面上に塗布し、100〜350℃、好ましくは150〜320℃、より好ましくは200〜300℃で、1〜30分程度、乾燥してカップリング膜の形成が行われる。なお、有機ジルコニウム化合物、有機チタニウム化合物、および、カップリング膜の厚さなどは、上述した通りであるため、ここではこれらの説明を省略する。
次に、上記b)の段階においては、フッ素含有ポリアミド酸をスピンコート、スピナ、または、印刷などによる方法によりカップリング膜上に塗布し、熱処理を行なうことにより、硬化させてフッ素含有ポリイミド膜を形成する。
フッ素含有ポリアミド酸は上述した通りであり、ここではその説明を省略する。カップリング膜上に塗布するフッ素含有ポリアミド酸は、溶媒中に溶解したものであってもよい。このような溶媒として、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロベンゼン、ニトロメタン、ジメチルスルフォキシド、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトンおよびメタノール等の極性溶媒やトルエンやキシレン等の非極性溶媒などが挙げられる。これらのうち好ましくは、N−メチル−2−ピロリジノン及びN,N−ジメチルアセトアミドが使用される。また、これらの溶媒は、単独でまたは2種類以上の混合物の形態で使用されてよい。なお、該溶媒中のフッ素含有ポリアミド酸濃度は、10〜50質量%であることが好ましい。また、膜形成にはフッ素含有ポリアミド酸の粘度にも関連し、10ポイズ〜1000ポイズであることが好ましく、より好ましくは25ポイズ〜150ポイズである。
フッ素含有ポリアミド酸を塗布する膜厚は、溶媒量などに応じて、熱処理後のフッ素含有ポリイミド膜が所望する膜厚を有するように適宜決定すればよい。
熱処理条件は特に制限されるものではなく、該フッ素含有ポリアミド酸が効率良く閉環されて硬化し、所望のフッ素含有ポリイミド膜が製造できる条件であればよい。具体的には、加熱処理は、通常、空気中、好ましくは、窒素、ヘリウム、アルゴンなどによる不活性ガス雰囲気中で、70〜350℃程度で2〜5時間程度行なわれ、該熱処理は、段階的に行なってもあるいは連続的に行なってもよい。好ましい実施態様によれば、フッ素含有ポリアミド酸は、70℃で2時間、160℃で1時間、250℃で30分、及び350℃で1時間、段階的に加熱処理が行なわれることが好ましい。
該フッ素含有ポリアミド酸を熱処理すると対応するフッ素含有ポリイミドが得られる。この際、ポリアミド酸の熱処理は、溶剤中で行なわれても、あるいは溶剤の不存在下で行なわれてもよいが、反応効率などを考慮すると、溶剤中で行なわれることが好ましい。この際、フッ素含有ポリアミド酸は、上述したフッ素含有ポリアミド酸の製造工程によりジアミン化合物とテトラカルボン酸等との反応で得られた溶液の形態で加熱処理されても、またはこれからフッ素含有ポリアミド酸を固体として分離した後、溶剤に再溶解して加熱処理されてもよい。
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。
<合成例1>
50ml容の三ツ口フラスコに、1,3−ジアミノ−2,4,5,6−テトラフルオロベンゼン 1.80g(10ミリモル)、下記式:
Figure 2005077916
で示される4,4’−[(2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)]ビス(3,5,6−トリフルオロフタル酸無水物)5.82g(10ミリモル)、及びN,N−ジメチルアセトアミド 14.15gを仕込んだ。この混合液を、窒素雰囲気中で、室温で、8日間、撹拌することによって、ポリアミド酸溶液(ポリアミド酸 35.0質量%溶液)を得た。
<合成例2>
50ml容の三ツ口フラスコに、5−クロロ−1,3−ジアミノ−2,4,6−トリフルオロベンゼン 1.97g(10ミリモル)、合成例1で使用した4,4’−[(2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)]ビス(3,5,6−トリフルオロフタル酸無水物) 5.82g(10ミリモル)、及びN,N−ジメチルアセトアミド 15.82gを仕込んだ。この混合液を、窒素雰囲気中で、室温で、8日間、攪拌することによって、ポリアミド酸溶液(ポリアミド酸33.0質量%溶液)を得た。
<合成例3>
50ml容の三ツ口フラスコに、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン3.49g(10ミリモル)、合成例1で使用した4,4’−[(2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)]ビス(3,5,6−トリフルオロフタル酸無水物) 5.82g(10ミリモル)、及びN,N−ジメチルアセトアミド 21.7gを仕込んだ。この混合液を、窒素雰囲気中で、室温で、2日間、攪拌することによって、ポリアミド酸溶液(ポリアミド酸30.0質量%溶液)を得た。
<合成例4>
50ml容の三ツ口フラスコに、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4−ジアミノビフェニル 3.2g(10ミリモル)、合成例1で使用した4,4’−[(2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン)ビス(オキシ)]ビス(3,5,6−トリフルオロフタル酸無水物) 5.82g(10ミリモル)、及びN,N−ジメチルアセトアミド 21.0gを仕込んだ。この混合液を、窒素雰囲気中で、室温で、2日間、攪拌することによって、ポリアミド酸溶液(ポリアミド酸30.0質量%溶液)を得た。
<実施例1>
有機ジルコニウム化合物としてジブトキシビス(アセチルアセトネート)ジルコニウム、および、有機チタニウム化合物としてジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタンをトルエンに溶解し、有機ジルコニウム化合物および有機チタニウム化合物を1質量%含むカップリング剤(有機ジルコニウム化合物:有機チタニウム化合物=9:1(質量比))を調合した。前記カップリング剤には、0.5μm以上の粒子が50個/g含まれていた。
まず、シリコンウェハ(厚さ525μm)の基板上に、前記カップリング剤を滴下し、スピンコート(4000rpm/60秒)を行った後に、空気雰囲気のオーブン(300℃/2分)中で加熱乾燥し、カップリング膜(膜厚0.02μm)を形成した。
次に、前記カップリング膜上に合成例1で得たポリアミド酸溶液を滴下し、スピンコート(1000rpm/60秒)を行った後に、窒素雰囲気中70℃で2時間、160℃で1時間、250℃で30分、330℃で1時間、で熱処理を行い下部層としてフッ素含有ポリイミド膜(厚さ18μm)を形成した。
さらに、得られたフッ素含有ポリイミド膜上に合成例2で得たポリアミド酸溶液を滴下し、スピンコートおよび熱処理を上記と同様にして行い上部層としてフッ素含有ポリイミド膜(厚さ9μm)を形成した。
<実施例2>
有機ジルコニウム化合物としてジブトキシビス(アセチルアセトネート)ジルコニウム、および、有機チタニウム化合物としてジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタンをトルエンに溶解し、有機ジルコニウム化合物および有機チタニウム化合物を1質量%含むカップリング剤(有機ジルコニウム化合物:有機チタニウム化合物=1:4(質量比))を調合した。前記カップリング剤には、0.5μm以上の粒子が10050個/g含まれていた。
まず、シリコンウェハ(厚さ525μm)の基板上に、前記カップリング剤を滴下し、スピンコート(4000rpm/60秒)を行った後に、空気雰囲気のオーブン(300℃/2分)中で加熱乾燥し、カップリング膜(膜厚0.02μm)を形成した。
次に、前記カップリング膜上に合成例1で得たポリアミド酸溶液を滴下し、スピンコート(1000rpm/60秒)を行った後に、窒素雰囲気中70℃で2時間、160℃で1時間、250℃で30分、330℃で1時間、で熱処理を行い下部層としてフッ素含有ポリイミド膜(厚さ18μm)を形成した。
さらに、得られたフッ素含有ポリイミド膜上に合成例2で得たポリアミド酸溶液を滴下し、スピンコートおよび熱処理を上記と同様にして行い上部層としてフッ素含有ポリイミド膜(厚さ9μm)を形成した。
<実施例3>
合成例4で得たポリイミド酸溶液を用いて下部層(膜厚18μm)を形成し、合成例3で得たポリアミド酸溶液を用いて上部層(膜厚9μm)を形成した以外は、実施例2と同様に行った。
<比較例1>
有機ジルコニウム化合物としてジブトキシビス(アセチルアセトネート)ジルコニウムのみをブタノールに溶解し、有機ジルコニウム化合物を1質量%含むカップリング剤を調合した。前記カップリング剤には、0.5μm以上の粒子が5080個/g含まれていた。
まず、シリコンウェハ(厚さ525μm)の基板上に、前記カップリング剤を滴下し、スピンコート(4000rpm/60秒)を行った後に、空気雰囲気のオーブン(300℃/2分)中で加熱乾燥し、カップリング膜(膜厚0.02μm)を形成した。
次に、前記カップリング膜上に合成例1で得たポリアミド酸溶液を滴下し、スピンコート(1000rpm/60秒)を行った後に、窒素雰囲気中70℃で2時間、160℃で1時間、250℃で30分、330℃で1時間、で熱処理を行い下部層としてフッ素含有ポリイミド膜(厚さ18μm)を形成した。
さらに、得られたフッ素含有ポリイミド膜上に合成例2で得たポリアミド酸溶液を滴下し、スピンコートおよび熱処理を上記と同様にして行い上部層としてフッ素含有ポリイミド膜(厚さ9μm)を形成した。
<評価>
実施例および比較例で形成した上部層および下部層を以下の手順により評価を行い、その結果を表1に示した。
まず、実施例および比較例で形成した上部層および下部層の外観を目視により、クラックの発生の有無を確認した。
さらに、密着性を評価するため、上部層および下部層に碁盤目状に傷を付けた後、これを室温の水に24時間浸漬した後の剥離状態を目視により観察した。
Figure 2005077916
表1に示した実施例および比較例の結果から、カップリング膜成分としてジルコニウム成分を単独で含む比較例1では、下部層にクラックの発生が見られた。これに対し、カップリング膜成分としてジルコニウム成分およびチタニウム成分を含む実施例1〜3および2では、下部層にクラックの発生は見られなかった。これにより、チタニウム成分が混合されたことによりクラックの発生が抑制されることが示される。

Claims (4)

  1. 基板上に形成されてなるジルコニウム成分およびチタニウム成分を含むカップリング膜と、前記カップリング膜上に形成されてなるフッ素含有ポリイミド膜と、を有する多層膜。
  2. 前記カップリング膜は、前記カップリング膜全質量に対して、ジルコニウム成分を20質量%以上100質量%未満含み、チタニウム成分を0質量%を超え80質量%以下含む、請求項1に記載の多層膜。
  3. a)基板に有機ジルコニウム化合物および有機チタニウム化合物を含むカップリング剤を塗布してカップリング膜を形成する段階と、
    b)前記カップリング膜上にフッ素含有ポリイミド膜を形成する段階と、を含む多層膜の製造方法。
  4. 前記カップリング剤は、前記カップリング剤全質量に対して有機ジルコニウム化合物および有機チタニウム化合物を0.1〜5質量%含む、請求項3に記載の多層膜の製造方法。
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