JP2005076719A - トルクコンバータにおける羽根車及びその製造方法並びに製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】シェル部材の剛性を確保しつつ低コストで製造することができるトルクコンバータにおける羽根車、及びその製造方法、並びにその製造装置を提供する。
【解決手段】ブレード支持型51の各支持溝52にブレード24を一枚ずつ挟入支持し、それら各ブレード24の支持溝52からの各突出端(即ち、各上端)に対してポンプシェル23を内面側の各凹溝33が係合するように載置する。そして、その状態から上型41と共に押圧型50を下動させると、押圧型50の押圧面が前記膨出部55の膨出量を減少させるようにポンプシェル23の外面側を押圧するため、膨出部55が形成された部位から凹溝33に向かう方向へポンプシェル23の材料の塑性流動が生じる。その結果、前記各凹溝33内に挿入状態で係合していた各ブレード24の上端部が前記塑性流動に基づく肉寄せにより凹溝33内にかしめ挟持された状態で止着される。
【選択図】 図11
【解決手段】ブレード支持型51の各支持溝52にブレード24を一枚ずつ挟入支持し、それら各ブレード24の支持溝52からの各突出端(即ち、各上端)に対してポンプシェル23を内面側の各凹溝33が係合するように載置する。そして、その状態から上型41と共に押圧型50を下動させると、押圧型50の押圧面が前記膨出部55の膨出量を減少させるようにポンプシェル23の外面側を押圧するため、膨出部55が形成された部位から凹溝33に向かう方向へポンプシェル23の材料の塑性流動が生じる。その結果、前記各凹溝33内に挿入状態で係合していた各ブレード24の上端部が前記塑性流動に基づく肉寄せにより凹溝33内にかしめ挟持された状態で止着される。
【選択図】 図11
Description
本発明は、トルクコンバータにおける羽根車、及びその製造方法、並びにその製造装置に関するものである。
従来から、車両等に搭載される自動変速機には、エンジンと変速機構の間に流体継手の一種であるトルクコンバータが介装されている。トルクコンバータは、エンジンの駆動軸に連結された入力要素としてのポンプインペラと、変速機構の主軸に連結された出力要素としてのタービンランナ、及びポンプインペラとタービンランナの間に介在されてトルク増大機能を有するステータとを備えている。そして、エンジンの駆動軸が回転することによりポンプインペラが回転すると、ポンプインペラとタービンランナ及びステータの間を作動流体が所定の速度エネルギーを持って循環し、その速度エネルギーをタービンランナが吸収して回転することにより、エンジン側からの回転トルクが変速機構側へ伝達されるようになっている。
前記ポンプインペラとタービンランナは、一般に羽根車とも呼ばれ、外側の環状シェルと、内側の環状コア、及び環状シェルと環状コアに跨って周方向へ一定間隔で配列される複数のブレードをそれぞれ備えた構成とされている。環状シェルと環状コアには、通常、前記各ブレードを配列状態にて止着するための位置決め孔(又は凹溝)が予め形成されており、それらの位置決め孔にブレードの側縁から突設された係止爪が挿入止着されることで、各ブレードは、前述したように、環状シェルと環状コアに跨って周方向へ一定間隔で配列されるようになっている。例えば、特許文献1に記載されたトルクコンバータでは、ブレードを環状シェルに止着する場合、環状シェルに形成された位置決め孔にブレードの係止爪を挿入した状態において、前記孔近傍にパンチを食い込ませて当該孔近傍の材料の塑性流動を促し、その塑性流動で位置決め孔の内側に生じた膨出部にて係止爪を挟持する構成としている。そして、この特許文献1のトルクコンバータでは、パンチの食い込みに基づく塑性流動で生じた膨出部により係止爪と孔との間の隙間を全て埋めるようにしたので、ロー付けをしなくてもトルクコンバータ内に貯留された作動油(潤滑油)が位置決め孔から漏れることもないとしている。
特開2003−106401号公報(段落番号[0016]、図8、図9)
ところが、特許文献1のトルクコンバータでは、環状シェルの位置決め孔にブレードの係止爪を止着する際、前記位置決め孔の近傍部位にパンチを食い込ませることで孔近傍の材料を塑性流動させていたため、そのパンチ工程を経た後の環状シェルの外面にはパンチの食い込み跡が必ずできていた。そして、そのようなパンチの食い込み跡は、止着されるブレードの枚数分に応じて存在する多数の位置決め孔毎に、環状シェルの肉厚を薄くする脆弱部分となって残存することになるため、環状シェルの剛性を低下させてしまうという問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、シェル部材の剛性を確保しつつ低コストで製造することができるトルクコンバータにおける羽根車、及びその製造方法、並びにその製造装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、トルクコンバータにおける羽根車に関する請求項1に記載の発明は、円環状をなすシェル部材の内面側に複数のブレードが周方向へ所定間隔をおいて配列止着されたトルクコンバータにおける羽根車において、前記各ブレードは、当該ブレードの所定縁部を前記シェル部材の内面側に各ブレードと個別対応するように凹設又は穿設された止着部に係合させた状態において、当該止着部の近傍部位にエンボス加工により予め膨出形成された膨出部が当該膨出部の膨出量を減少させるように押圧されたことに基づき、前記止着部の近傍部位から前記止着部に向かう方向へ生じた材料の塑性流動によって前記所定縁部がかしめ挟持された状態で止着されていることを要旨とする。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のトルクコンバータにおける羽根車において、前記膨出部は、前記シェル部材の内面側にエンボス加工により凹み部が形成されたことにより当該凹み部と位置対応するようにシェル部材の外面側に膨出形成されたものであることを要旨とする。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のトルクコンバータにおける羽根車において、前記止着部は、前記ブレードの所定縁部を挟入可能に前記シェル部材の内面側に凹設された凹溝であることを要旨とする。
また、トルクコンバータにおける羽根車の製造方法に関する請求項4に記載の発明は、円環状をなすシェル部材の内面側に複数のブレードが周方向へ所定間隔をおいて配列止着されたトルクコンバータにおける羽根車の製造方法において、前記シェル部材の内面側における複数位置に前記各ブレードを配列止着するための複数の止着部を凹設又は穿設する止着部形成工程と、前記シェル部材における前記止着部の近傍部位にエンボス加工により膨出部を膨出形成する膨出部形成工程と、前記シェル部材の内面側から前記各ブレードの所定縁部を各々対応する止着部に係合させた状態において、前記膨出部を当該膨出部の膨出量が減少するように押圧し、前記止着部の近傍部位から前記止着部に向かう方向へ生じる材料の塑性流動によって前記各ブレードの所定縁部をかしめ挟持するかしめ工程とを備えたことを要旨とする。
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のトルクコンバータにおける羽根車の製造方法において、前記膨出部形成工程においては、エンボス加工によって前記シェル部材の内面側に前記凹み部を形成することにより前記凹み部と位置対応した前記シェル部材の外面側に膨出部を膨出形成することを要旨とする。
また、請求項6に記載の発明は、請求項4又は請求項5に記載のトルクコンバータにおける羽根車の製造方法において、前記止着部形成工程では、前記シェル部材の内面側に前記各ブレードの所定縁部を挟入可能な凹溝をエンボス加工によって凹設することを要旨とする。
また、トルクコンバータにおける羽根車の製造装置に関する請求項7に記載の発明は、円環状をなすシェル部材の内面側に複数のブレードが周方向へ所定間隔をおいて配列止着されたトルクコンバータにおける羽根車の製造装置において、前記シェル部材の内面側における前記各ブレードの止着予定箇所に止着部を凹設又は穿孔可能な止着部形成具と、前記シェル部材の内面側における前記各ブレードの止着予定箇所の近傍部位にエンボス加工を施して膨出部を膨出形成可能なエンボスパンチと、前記各ブレードを前記シェル部材への配列止着態様においては前記止着部にかしめ挟持されることになる所定縁部が上方となるようにして支持するブレード支持型と、前記ブレード支持型に支持された各ブレードの所定縁部に前記止着部及び膨出部が形成された後のシェル部材における前記止着部を係合させた状態において、当該シェル部材における前記膨出部を押圧する押圧型とを備えたことを要旨とする。
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のトルクコンバータにおける羽根車の製造装置において、前記止着部形成具は、前記シェル部材の内面側における前記各ブレードの止着予定箇所に各ブレードの所定縁部を挟入可能な凹溝をエンボス加工により凹設するものであることを要旨とする。
また、請求項9に記載の発明は、請求項7又は請求項8に記載のトルクコンバータにおける羽根車の製造装置において、前記押圧型は、その押圧面が前記シェル部材の外面形状に沿った面形状をなしていることを要旨とする。
本発明によれば、シェル部材の剛性を確保しつつ低コストで製造することができるトルクコンバータにおける羽根車を提供できる。
以下、本発明を、自動変速機に介装されたトルクコンバータのポンプインペラに具体化した一実施形態を図1〜図11に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の自動変速機11は、コンバータハウジング12とトランスミッションケース13とからなる本体ケース14を備えており、本体ケース14内にトルクコンバータ15及び変速機構16が収納されている。トルクコンバータ15は、図示しないエンジン出力軸(クランクシャフト)からの回転トルクを変速機構16のメインシャフト17へ伝達する流体継手として機能するものであり、主として、フロントカバー18、ポンプインペラ19、タービンランナ20、ステータ21、及び、ロックアップクラッチ22とを備えた構成とされている。
図1に示すように、本実施形態の自動変速機11は、コンバータハウジング12とトランスミッションケース13とからなる本体ケース14を備えており、本体ケース14内にトルクコンバータ15及び変速機構16が収納されている。トルクコンバータ15は、図示しないエンジン出力軸(クランクシャフト)からの回転トルクを変速機構16のメインシャフト17へ伝達する流体継手として機能するものであり、主として、フロントカバー18、ポンプインペラ19、タービンランナ20、ステータ21、及び、ロックアップクラッチ22とを備えた構成とされている。
前記フロントカバー18は、略円環状をなす形態とされ、前記エンジン出力軸(クランクシャフト)にドライブプレート(図示略)を介して連結され、当該エンジン出力軸(クランクシャフト)の回転駆動に伴い同期回転するようになっている。前記ポンプインペラ19は、円環状をなすシェル部材としてのポンプシェル23と、ポンプシェル23の内面側に周方向へ所定間隔をおいて配列止着される複数のブレード24、前記各ブレード24の内側縁に固定される環状コア25、及び前記ポンプシェル23の内周縁に固定されるハブ26とを備えた構成とされている。そして、前記フロントカバー18の外周縁部と前記ポンプシェル23の外周縁部とが接合されることにより、当該フロントカバー18とポンプシェル23との間に作動油室27が形成されている。本実施形態では、前記ポンプインペラ19が、シェル部材(ポンプシェル23)の剛性を確保しつつ低コストで製造できるトルクコンバータ15における羽根車として構成されている。
前記タービンランナ20は、前記作動油室27内にポンプシェル23と対向するように配設された羽根車であり、ポンプシェル23の場合と略同様の部材要素にて構成されている。即ち、タービンランナ20は、円環状をなすタービンシェル28と、タービンシェル28の内面側に周方向へ所定間隔をおいて配列止着される複数のブレード29、前記各ブレード29の内側縁に固定される環状コア30、及び前記タービンシェル28の内周縁に固定されるハブ31とを備えた構成とされている。そして、前記ハブ31の内周面に形成されたスプライン機構を介してタービンランナ20は前記変速機構16のメインシャフト17に動力伝達可能に連結されている。なお、前記ステータ21は、ポンプインペラ19とタービンランナ20との間に配置され、作動油の整流機能を果たすようになっている。また、前記ロックアップクラッチ22は、フロントカバー18とタービンランナ20との間に配置され、必要に応じてフロントカバー18とタービンランナ20とを機械的に接続(ロックアップ)可能になっている。
次に、前記ポンプインペラ(羽根車)19の具体的構造について詳述すると、図1及び図3から理解されるように、ポンプインペラ19のポンプシェル(シェル部材)23は、断面略C字状の円環状部32を備えている。そして、その円環状部32の内面側には図2に示す各ブレード24の配列止着態様と対応するように径方向に沿って延びる複数の凹溝33が止着部として凹設されている(図3参照)。なお、図2では、前記各ブレード24がポンプシェル23の径方向に沿う直線的な羽根形状をしているが、これはブレード形状の一例を示したものであり、ブレード形状は湾曲した羽根形状であってもよく、その場合には当該湾曲した羽根形状と対応するように前記凹溝33も平面視形状が湾曲した形状に凹設される。また、本実施形態では、理解を容易ならしめるため、図2において、前記各ブレード24は実際よりも枚数が少なく図示されている。
前記各ブレード24は、図3に示すように、略扇形状をなす板片であり、その内周側縁には複数(本実施形態では2つ)の係合爪34,35が突設される一方、その外周側縁にも複数(本実施形態では3つ)の係合爪36,37,38が所定縁部として突出形成されている。そして、各ブレード24は、内周側縁の2つの係合爪34,35が前記環状コア25に形成された孔39に挿入された後に折り曲げられることにより、その内周側縁が環状コア25に止着されている。一方、各ブレード24は、外周側縁の3つの係合爪36,37,38が前記ポンプシェル23の円環状部32に形成された凹溝33にかしめ挟持されている。即ち、前記凹溝33は、前記3つの係合爪36,37,38を全て同時に挟入することが可能な長溝状に形成されており、当該凹溝33の長さ方向両端部の各内面に3つの係合爪36,37,38のうち周方向両端の2つの係合爪36,38が当接した状態にて挟入されている。
そこで次に、前記ポンプインペラ(羽根車)19を製造する際に使用する製造装置40について、その製造工程に言及しながら図4〜図11を参照して説明する。
さて、本実施形態におけるポンプインペラ19の製造装置40は、汎用のプレス装置にて構成されており、図示しない油圧シリンダの駆動力に基づき上下動する上型41の下面には、板状素材23A(図8参照)からポンプシェル23をプレス成形するための平面視円形状をなすプレス型42が固定されている(図4参照)。このプレス型42は、その押圧面がポンプシェル23の内面形状に対応したものであり、図4に示すように、その押圧面のうち前記円環状部32をプレス成形することになる部分には、前記各ブレード24の配列止着態様と対応するように複数の板状パンチ(止着部形成具)43が径方向に沿って延びるように固定されている。即ち、これらの各板状パンチ43は、前記板状素材23Aからポンプシェル23がプレス型42によりプレス成形される際に、その板状素材23Aの内面側(即ち、ポンプシェル23の円環状部32の内面側における各ブレード24の止着予定箇所)に各凹溝33を同時に凹設するものであり、板状素材23Aよりも高硬度の炭素鋼で構成されている。
さて、本実施形態におけるポンプインペラ19の製造装置40は、汎用のプレス装置にて構成されており、図示しない油圧シリンダの駆動力に基づき上下動する上型41の下面には、板状素材23A(図8参照)からポンプシェル23をプレス成形するための平面視円形状をなすプレス型42が固定されている(図4参照)。このプレス型42は、その押圧面がポンプシェル23の内面形状に対応したものであり、図4に示すように、その押圧面のうち前記円環状部32をプレス成形することになる部分には、前記各ブレード24の配列止着態様と対応するように複数の板状パンチ(止着部形成具)43が径方向に沿って延びるように固定されている。即ち、これらの各板状パンチ43は、前記板状素材23Aからポンプシェル23がプレス型42によりプレス成形される際に、その板状素材23Aの内面側(即ち、ポンプシェル23の円環状部32の内面側における各ブレード24の止着予定箇所)に各凹溝33を同時に凹設するものであり、板状素材23Aよりも高硬度の炭素鋼で構成されている。
また、図4に示すように、前記プレス型42の押圧面のうち前記円環状部32をプレス成形することになる部分における前記各板状パンチ43の間には、複数のエンボスパンチ44が径方向に沿って延びるように固定されている。即ち、これら各エンボスパンチ44は、前記板状パンチ43により板状素材23Aの内面側(即ち、ポンプシェル23の円環状部32の内面側)に前記凹溝33が凹設される際に、各凹溝33の中間位置(凹溝33の近傍部位)に凹み部(図9参照)45を同時に凹み形成するものであり、前記板状素材よりも高硬度の炭素鋼で構成されている。なお、図4及び図9からも理解されるように、各エンボスパンチ44は、板状パンチ43よりも周方向へ肉厚のブロック形状をなしており、その先端部は前記凹み部45の内面形状に対応した円弧凸形状をなしている。
また、前記製造装置40は、前記上型41の下方に固定型としての下型46を備えており、その下型46の上面には前記プレス型42に対応する平面視円形状の下ダイ47が固定されている。この下ダイ47は、その上面(即ち、プレス型42の押圧面との対向面)がポンプシェル23の外面形状に対応した形状とされ、その上面のうち前記プレス型42の板状パンチ43及びエンボスパンチ44と対応する位置には、図5に示すように、幅狭凹部48と幅広凹部49が径方向に沿って延びるように凹設されている。即ち、これらの幅狭凹部48と幅広凹部49とは、図9に示すように、ポンプシェル23の内面側が板状パンチ43及びエンボスパンチ44により押圧された際に、その押圧された部位(具体的には、凹溝33及び凹み部45)の材料がポンプシェル23の外面側に塑性流動で逃げる部分となる。
また、前記製造装置40には、図6に示す押圧型50と図7に示すブレード支持型51が装備されている。押圧型50は前記プレス型42の場合と同様に上型41の下面に固定されるものであり、ブレード支持型51は前記下ダイ47の場合と同様に下型46の上面に固定される構成になっている。即ち、これらの押圧型50及びブレード支持型51は、ポンプシェル23における円環状部32の内面側に凹設された前記各凹溝33に対し、各ブレード24の係合爪36,37,38をかしめ挟持(止着)する際に使用されるものであり、必要に応じて前記プレス型42及び下ダイ47と交換作業が行われる。なお、前記上型41と下型46にプレス型42と下ダイ47とを組み合わせたポンプシェル成形セクションと、前記上型41と下型46に押圧型50とブレード支持型51とを組み合わせたブレードかしめ止着セクションとが連続した製造ラインを構築するようにすれば、前述したような交換作業は不要となる。この場合には、ポンプシェル成形セクションにて板状素材23Aからプレス成形されたポンプシェル23がロボットアーム等により製造ラインに沿ってブレードかしめ止着セクションへと搬送されることになる。
さて、前記押圧型50とブレード支持型51とは、図10に示すように、それぞれ上型41と下型46とに固定された場合にポンプシェル23を挟んで対向するものであって、ブレード支持型51の上面には前記各ブレード24を一枚ずつ挟入支持可能な複数の支持溝52が前記下ダイ47における幅狭凹部48と同様の配列態様で形成されている。これらの各支持溝52は、各ブレード24において環状コア25に止着される側縁(つまり、係合爪34,35が突出形成された側縁)を下方にし、ポンプシェル23の凹溝33に止着される側縁(つまり、所定縁部たる係合爪36,37,38が突出形成された側縁)を上方にした支持態様で各ブレード24を挟入支持する構成とされている。そして、このようなブレード支持型51の上面と対向する押圧型50における押圧面(下面)のうち前記ブレード支持型51の各支持溝52と対向する部位には長溝状の凹部53が前記プレス型42における板状パンチ43と同様の配列態様で形成されている。
そこで次に、上記のように構成された製造装置40を用いてポンプインペラ19を製造する方法を説明する。なお、図8及び図9は、図4におけるA−A線矢視断面によるプレス型42等と図5におけるB−B線矢視断面による下ダイ47等とを組み合わせた場合の製造装置40の概略断面を示している。また、図10及び図11は、図6におけるC−C線矢視断面による押圧型50等と図7におけるD−D線矢視断面によるブレード支持型51等とを組み合わせた場合の製造装置40の概略断面を示している。
まず、図8に示すように、板状素材23Aを下ダイ47上に載置した状態において上方からプレス型42が下方へ移動される。すると、図9に示すように、プレス型42の押圧面(下面)と下ダイ47の上面とに挟圧されて、ポンプシェル23がプレス成形される。そして、その際には、プレス型42から突出する板状パンチ43が各ブレード24の止着予定箇所に凹溝33を凹設する。即ち、ポンプシェル23のプレス成型工程と止着部(凹溝33)形成工程が同時に行われる。また、その際には、同じくプレス型42から突出するエンボスパンチ44が前記各凹溝33の近傍部位(互いに隣り合う2つの凹溝33の中間位置)に凹み部45を凹み形成する。
そして、この場合において、前記板状パンチ43及びエンボスパンチ44に各々位置対応するように、下ダイ47の上面には幅狭凹部48及び幅広凹部49が形成されているため、前記各パンチ43,44による押圧力を受けて塑性流動した板状素材23A(ポンプシェル23)の材料は、前記各幅狭凹部48及び幅広凹部49に入り込むように逃げる。従って、ポンプシェル23の内面側における凹溝33と位置対応するようにポンプシェル23の外面側には凸条54が膨出形成されると共に、ポンプシェル23の内面側における凹み部45と位置対応するようにポンプシェル23の外面側には膨出部55が膨出形成される。即ち、ポンプシェル23のプレス成型工程と止着部(凹溝33)形成工程及び膨出部55形成工程が同時に行われる。
このように、成形されたポンプシェル23には、板状パンチ43により凹溝33と凸条54が、また、エンボスパンチ44により凹み部45と膨出部55が、それぞれポンプシェル23の内面側と外面側で位置対応するようにエンボス加工される。そして、その際において、前記板状パンチ43によりポンプシェル23の内面側に形成される凹溝33は、図9に示すように、当該凹溝33の開口縁が拡開した形状になる。その理由は、前記凹溝33が形成される際に当該凹溝33の近傍部位では前記エンボスパンチ44が凹み部45と膨出部55を形成するため、その際にエンボスパンチ44の押圧力で前記膨出部55の方向へ生じた材料の塑性流動によって、前記凹溝33の開口縁が拡開するように引っ張られるからである。なお、図9において示す小さな矢印は前記エンボス加工時における材料の塑性流動方向を参考までに示したものである。
すると次に、図10に示すように、ブレード支持型51の各支持溝52にブレード24が一枚ずつ係合爪36,37,38が突出形成された外周側縁が上方となる支持態様にて挟入支持される。そして、そのように支持された各ブレード24の支持溝52からの突出端(即ち、上端)に対してポンプシェル23を内面側の各凹溝33が係合するように載置する。そして、その状態において、上型41と共に押圧型50を下動させる。すると、図11に示すように、押圧型50の押圧面が前記ポンプシェル23の外面側における膨出部55の膨出量を減少させるようにポンプシェル23の外面側を押圧する。そのため、前記膨出部55が形成された部位、即ち、止着部たる凹溝33の近傍部位から当該凹溝33に向かう方向へポンプシェル23の材料の塑性流動が生じる。
その結果、前記各凹溝33内に挿入状態で係合していた各ブレード24の上端部(係合爪36,37,38の部分)が前記塑性流動に基づく肉寄せにより凹溝33内にかしめ挟持された状態で止着される。即ち、全てのブレード24を一斉にポンプシェル23の内面側(止着部たる凹凸溝33)へ所定間隔をおいた配列態様で止着するかしめ工程が行われる。なお、その際において、ポンプシェル23の外面側における凸条54は押圧型50の凹部53内に入り込むことになるため、押圧型50からの押圧力を受けることがない。そのため、前記凹溝33内に各ブレード24の上端部をかしめ挟持する際において当該各ブレード24を凹溝33内から抜け出る方向へ押し出す塑性流動が生じることもない。従って、その後は、前記各ブレード24を凹溝33に対してロー付けする必要もなく、また、ポンプシェル23の外面側に残存する凸条54はポンプシェル23の剛性を補強するリブとしての機能を果たすようになる。
従って、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)プレス型42から突設した板状パンチ43による押圧作用によってポンプシェル23の内面側に凹溝33を止着部として凹設し、その凹溝33に各ブレード24の外周側縁における所定縁部(係合爪36,37,38)が押圧型50の押圧作用に基づいて前記凹溝33の近傍部位から塑性流動する材料によってかしめ挟持されるようにした。また、その際においては、凹溝33の近傍部位に予め膨出形成しておいた膨出部55の膨出量を減少させるように押圧型50の押圧面が押圧することで塑性流動を促しているため、当該塑性流動を促す押圧をした後においてポンプシェル23の外面側にパンチ跡等の食い込み跡が残ることもない。従って、ポンプシェル23の剛性を低下させることなく、しかも、ブレード24は凹溝33に固くかしめ挟持された状態に止着されているため、その後においてロー付けすることも不要にできるので、ポンプインペラ19を低コストで製造することができる。
(1)プレス型42から突設した板状パンチ43による押圧作用によってポンプシェル23の内面側に凹溝33を止着部として凹設し、その凹溝33に各ブレード24の外周側縁における所定縁部(係合爪36,37,38)が押圧型50の押圧作用に基づいて前記凹溝33の近傍部位から塑性流動する材料によってかしめ挟持されるようにした。また、その際においては、凹溝33の近傍部位に予め膨出形成しておいた膨出部55の膨出量を減少させるように押圧型50の押圧面が押圧することで塑性流動を促しているため、当該塑性流動を促す押圧をした後においてポンプシェル23の外面側にパンチ跡等の食い込み跡が残ることもない。従って、ポンプシェル23の剛性を低下させることなく、しかも、ブレード24は凹溝33に固くかしめ挟持された状態に止着されているため、その後においてロー付けすることも不要にできるので、ポンプインペラ19を低コストで製造することができる。
(2)また、ブレード24をポンプシェル23の凹溝33にかしめ止着するかしめ工程では、押圧型50により押圧される膨出部55がポンプシェル23のブレード24が止着される内面側でなく、ポンプシェル23の外面側に膨出形成されているため、当該膨出部55を押圧する際にブレード24が邪魔にならない。従って、ポンプインペラ19を製造する際の作業効率を良好にできる。
(3)また、前記ポンプシェル23にブレード24をかしめ挟持状態で止着する止着部
が孔ではなく、ポンプシェル23の内面側に凹設された凹溝33により構成されているので、ポンプインペラ19とフロントカバー18との間に形成される作動油室27の油密性の万全を図ることができる。
が孔ではなく、ポンプシェル23の内面側に凹設された凹溝33により構成されているので、ポンプインペラ19とフロントカバー18との間に形成される作動油室27の油密性の万全を図ることができる。
(4)また、ポンプシェル23の内面側に凹設される凹溝33はブレード24の外周側縁から突設された複数(3つ)の係合爪36,37,38の同時挟入を可能とする長溝状に形成されているため、凹溝33内へブレード24を挟入させる際の位置合せ作業が煩雑になることがない。従って、かしめ工程でブレード支持型51に支持されたブレード24の上端にポンプシェル23を載置する際の位置合せ作業が簡単になり作業効率を向上することができる。
(5)また、止着部形成工程における板状パンチ43でのエンボス加工によってポンプシェル23の内面側に凹設された凹溝33と位置対応するようにポンプシェル23の外面側に膨出形成された凸条54は、かしめ工程での押圧型50の押圧作用が当該押圧型50に形成された凹部53により回避される構成となっている。そのため、かしめ工程で凹溝33内からブレード24が抜け出る方向への塑性流動を生じさせない効果と共に、ポンプシェル23の剛性を補強するリブとして前記凸条54が残存することになり、より一層、ポンプインペラ19におけるポンプシェル23の剛性を確保することができる。
なお、前記実施形態は以下のような別の実施形態(別例)に変更してもよい。
○ 前記実施形態においてポンプシェル23の内面側にブレード24をかしめ止着するための止着部は凹溝33に限らず、ポンプシェル23の円環状部32に穿設された孔でもよい。このような孔により止着部を構成した場合も、当該孔(止着部)の近傍部位に予め膨出部55を形成しておき、当該膨出部55を押圧型50で押圧することによって材料の塑性流動を生じさせれば、当該孔の部分で肉寄せが起こるのでブレード24をかしめ挟持状態で止着できる。
○ 前記実施形態においてポンプシェル23の内面側にブレード24をかしめ止着するための止着部は凹溝33に限らず、ポンプシェル23の円環状部32に穿設された孔でもよい。このような孔により止着部を構成した場合も、当該孔(止着部)の近傍部位に予め膨出部55を形成しておき、当該膨出部55を押圧型50で押圧することによって材料の塑性流動を生じさせれば、当該孔の部分で肉寄せが起こるのでブレード24をかしめ挟持状態で止着できる。
○ 前記実施形態において膨出部55は凹溝33(止着部)の近傍部位に膨出形成されるならば、ポンプシェル23の外面側でなく内面側に膨出形成されたものでもよい。
○ 前記実施形態においてポンプシェル23の凹溝33内にかしめ挟持されるブレード24の所定縁部は、当該ブレード24の外周側縁に係合爪36,37,38が形成されていない場合、その外周側縁全体がかしめ挟持される構成としてもよい。また、前記所定縁部を係合爪にて構成する場合、その係合爪の数は1つ以上あればよく、3つに限定されるものではない。
○ 前記実施形態においてポンプシェル23の凹溝33内にかしめ挟持されるブレード24の所定縁部は、当該ブレード24の外周側縁に係合爪36,37,38が形成されていない場合、その外周側縁全体がかしめ挟持される構成としてもよい。また、前記所定縁部を係合爪にて構成する場合、その係合爪の数は1つ以上あればよく、3つに限定されるものではない。
○ 前記実施形態ではトルクコンバータ15における羽根車の一つであるポンプインペラ19を製造する場合を例にして説明したが、トルクコンバータ15における他の羽根車であるタービンランナ20を製造する場合に具体化してもよい。
次に、前記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記ブレードの所定縁部は当該ブレードの側縁から突出形成された複数の係合爪であり、前記凹溝は前記各係合爪の同時挟入を可能とする長さに形成されている請求項3に記載のトルクコンバータにおける羽根車。この場合、汎用のブレードを止着する際にも位置決めが簡単になる。
(イ)前記ブレードの所定縁部は当該ブレードの側縁から突出形成された複数の係合爪であり、前記凹溝は前記各係合爪の同時挟入を可能とする長さに形成されている請求項3に記載のトルクコンバータにおける羽根車。この場合、汎用のブレードを止着する際にも位置決めが簡単になる。
(ロ)前記押圧型は、その押圧面のうち前記シェル部材の内面側に形成された止着部と位置対応するシェル部材の外面側部位と対向する部分に凹部が形成されている請求項7〜請求項9のうち何れか一項に記載のトルクコンバータにおける羽根車の製造装置。この場合、かしめ工程でシェル部材の外面側を押圧した際にブレードが止着部から抜け出る方向への塑性流動が生じることを回避できる。
15…トルクコンバータ、19…羽根車としてのポンプインペラ、23…シェル部材としてのポンプシェル、24…ブレード、33…止着部としての凹溝、36,37,38…所定縁部としての係合爪、40…製造装置、43…止着部形成具としての板状パンチ、44…エンボスパンチ、45…凹み部、50…押圧型、51…ブレード支持型、54…凹部、55…膨出部。
Claims (9)
- 円環状をなすシェル部材の内面側に複数のブレードが周方向へ所定間隔をおいて配列止着されたトルクコンバータにおける羽根車において、
前記各ブレードは、当該ブレードの所定縁部を前記シェル部材の内面側に各ブレードと個別対応するように凹設又は穿設された止着部に係合させた状態において、当該止着部の近傍部位にエンボス加工により予め膨出形成された膨出部が当該膨出部の膨出量を減少させるように押圧されたことに基づき、前記止着部の近傍部位から前記止着部に向かう方向へ生じた材料の塑性流動によって前記所定縁部がかしめ挟持された状態で止着されているトルクコンバータにおける羽根車。 - 前記膨出部は、前記シェル部材の内面側にエンボス加工により凹み部が形成されたことにより当該凹み部と位置対応するようにシェル部材の外面側に膨出形成されたものである請求項1に記載のトルクコンバータにおける羽根車。
- 前記止着部は、前記ブレードの所定縁部を挟入可能に前記シェル部材の内面側に凹設された凹溝である請求項1又は請求項2に記載のトルクコンバータにおける羽根車。
- 円環状をなすシェル部材の内面側に複数のブレードが周方向へ所定間隔をおいて配列止着されたトルクコンバータにおける羽根車の製造方法において、
前記シェル部材の内面側における複数位置に前記各ブレードを配列止着するための複数の止着部を凹設又は穿設する止着部形成工程と、
前記シェル部材における前記止着部の近傍部位にエンボス加工により膨出部を膨出形成する膨出部形成工程と、
前記シェル部材の内面側から前記各ブレードの所定縁部を各々対応する止着部に係合させた状態において、前記膨出部を当該膨出部の膨出量が減少するように押圧し、前記止着部の近傍部位から前記止着部に向かう方向へ生じる材料の塑性流動によって前記各ブレードの所定縁部をかしめ挟持するかしめ工程とを備えたトルクコンバータにおける羽根車の製造方法。 - 前記膨出部形成工程においては、エンボス加工によって前記シェル部材の内面側に前記凹み部を形成することにより前記凹み部と位置対応した前記シェル部材の外面側に膨出部を膨出形成する請求項4に記載のトルクコンバータにおける羽根車の製造方法。
- 前記止着部形成工程では、前記シェル部材の内面側に前記各ブレードの所定縁部を挟入可能な凹溝をエンボス加工によって凹設する請求項4又は請求項5に記載のトルクコンバータにおける羽根車の製造方法。
- 円環状をなすシェル部材の内面側に複数のブレードが周方向へ所定間隔をおいて配列止着されたトルクコンバータにおける羽根車の製造装置において、
前記シェル部材の内面側における前記各ブレードの止着予定箇所に止着部を凹設又は穿孔可能な止着部形成具と、
前記シェル部材の内面側における前記各ブレードの止着予定箇所の近傍部位にエンボス加工を施して膨出部を膨出形成可能なエンボスパンチと、
前記各ブレードを前記シェル部材への配列止着態様においては前記止着部にかしめ挟持されることになる所定縁部が上方となるようにして支持するブレード支持型と、
前記ブレード支持型に支持された各ブレードの所定縁部に前記止着部及び膨出部が形成された後のシェル部材における前記止着部を係合させた状態において、当該シェル部材における前記膨出部を押圧する押圧型とを備えたトルクコンバータにおける羽根車の製造装置。 - 前記止着部形成具は、前記シェル部材の内面側における前記各ブレードの止着予定箇所に各ブレードの所定縁部を挟入可能な凹溝をエンボス加工により凹設するものである請求項7に記載のトルクコンバータにおける羽根車の製造装置。
- 前記押圧型は、その押圧面が前記シェル部材の外面形状に沿った面形状をなしている請求項7又は請求項8に記載のトルクコンバータにおける羽根車の製造装置。
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JP2003306766A JP2005076719A (ja) | 2003-08-29 | 2003-08-29 | トルクコンバータにおける羽根車及びその製造方法並びに製造装置 |
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JP2003306766A Pending JP2005076719A (ja) | 2003-08-29 | 2003-08-29 | トルクコンバータにおける羽根車及びその製造方法並びに製造装置 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2005076719A (ja) |
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- 2003-08-29 JP JP2003306766A patent/JP2005076719A/ja active Pending
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