JP2005065346A - 電動機コイル形成方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】共通の巻枠により適宜周長変化率の異なるコイルを形成可能とする。
【解決手段】電動機コイル形成装置は、巻付け周面と実質上平行な任意の軸線回りに回転駆動され、コイルを形成するワイヤM/Wが周面に巻付けられる巻枠5を備える。巻枠は、その周長変化率を巻枠の開閉により変更自在とされた。これにより、単一の電動機における各相のコイルの形成や、仕様の異なる複数種類の電動機用コイルを共通の巻枠により形成する電動機コイル形成装置の汎用化が可能となる。
【選択図】 図16
【解決手段】電動機コイル形成装置は、巻付け周面と実質上平行な任意の軸線回りに回転駆動され、コイルを形成するワイヤM/Wが周面に巻付けられる巻枠5を備える。巻枠は、その周長変化率を巻枠の開閉により変更自在とされた。これにより、単一の電動機における各相のコイルの形成や、仕様の異なる複数種類の電動機用コイルを共通の巻枠により形成する電動機コイル形成装置の汎用化が可能となる。
【選択図】 図16
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータ、ジェネレータ等の電動機に用いるコイルの形成装置に関し、特に、車両に駆動源として搭載する電動機のステータコイルの形成に適した巻枠を備えるコイル形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動機のコアのスロットに挿入されるコイルは、一般に、予めコイル形成装置により所定の予備形状(挿入状態とは異なる形状)に巻回され、該形成装置から所定の受け具(インサータ)に巻回部を吊下げ状態として排出させ、該治具から最終形状に変形させながらコアのスロットに挿入される。前記予備形状の一形態として、互いに平行な軸線回りに複数の巻回部分を持つ形態のものがある。こうした形態のコイルを形成する装置としては、巻枠に対してワイヤを供給する側(フライヤ)を回転させる方式のものが一般的である。こうした方式の装置を開示する特許文献として、特許文献1がある。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−253631号公報
【0004】
上記方式のものは、巻枠よりフライヤが大径でなければならないため、装置が大型のものとならざるを得ない。また、フライヤの回転によりワイヤが捩れるため、多数のワイヤを平行な束とする巻回を行う場合、ワイヤの束を縒り線状態としないための工夫も必要となる。そこで、こうした問題を避ける他の方式の装置として、ワイヤを供給する側(ノズル)を固定として、巻枠を回転させる方式のものがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、各相ごとのコイルは、コイル形成装置により個々に形成された後に、コアの異なるスロットに跨がせ、かつ順次周方向位置をずらせて挿入される。このようにスロットに挿入されたコイルがスロット間を跨ぐ部分(コアの両端に突き出て周回するコイルエンド部分)では、異なる相のコイルの周回部分が相互にコアの径方向及び軸線方向に重なり合う配置関係となるため、異なる相のコイルの周回部分の周長が全て同一であると、各相のコイルの周回部分を他の相のコイルの周回部分に対して径方向に逃がすことが困難となるため、重なり合いが極端又は困難になり、コイルエンド部分の軸線方向占有スペースも大きくなる。こうしたコイルエンドの重なり合いは、電動機の小型化の妨げとなる。
【0006】
そこで、こうした事態を避ける意味から、コイルの周回部分の周長は全てについて一様ではなく、周回ごとに若干異なる周長とされる。詳しくは、最初にコアのスロットに挿入される相のコイルについては、挿入後にコイルエンド部分を最も大きくコアの外径方向に押し曲げられ、次に挿入される相のコイルのコイルエンド部分は、最初に挿入された相のコイルのコイルエンド部分に押し付けるようにコアの外径方向に押し曲げられ、最後に挿入される相のコイルのコイルエンド部分は、特に押し曲げられることなく定置される。こうしたコアへの挿入後の処理のために、最も大きく変形する相のコイルについては、コアの内径側に位置する周回部分と外径側に位置する周回部分の変形差が大きくなることから、周回ごとの周長変化の割合(本明細書において、これを周長変化率と略記する)を最も大きくし、以下順次周長変化率を小さくする設定がなされる。こうした周長変化率の異なるコイルを形成するには、一般には、1つの巻枠ユニットに対して各周長変化率に合わせた着脱式の巻枠を複数準備するか、それぞれに巻枠の周長変化率が異なる複数の巻枠ユニットを準備する必要がある。しかしながら、このように各周長変化率が異なる巻枠を複数準備し、各相のコイルごとに巻枠又は巻枠ユニットを交換して巻付けを行うことは、工程管理が複雑化し、作業能率上望ましくない。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑み案出されたものであり、共通の巻枠により適宜周長変化率が異なるコイルを形成可能とすることを主たる目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、ワイヤを巻回して電動機コイルを形成する方法において、コイル巻回部の周回ごとの周長変化の割合を開閉により変更可能な巻枠と、巻上げ後のコイルを載置する受け具とを用い、前記巻枠を特定の周長変化の割合が得られる開閉度に設定してワイヤを巻付ける巻付け工程と、該巻付け工程により巻き上がったコイルを前記受け具に移載する移載工程と、前記巻枠を前記特定の周長変化の割合とは異なる周長変化の割合が得られる開閉度に設定してワイヤを巻付ける次の巻付け工程と、巻き上がったコイルを前記受け具に移載する次の移載工程とを適宜繰り返して、所要相数のコイルを形成すことを特徴とする。
【0009】
上記の方法において、前記特定の周長変化の割合が得られる開閉度は、異なる周長変化の割合が得られる開閉度より常に大きく設定されるのが有効である。また、前記巻枠は、共通の巻枠ユニットに複数配置されたものであり、前記巻付け工程は、複数の巻枠の1つごとにワイヤを巻付ける工程の繰り返しよりなることが望ましい。
【0010】
次に本発明は、任意の軸線回りに回転駆動され、コイルを形成するワイヤが周面に複数周回並べて巻付けられる巻枠を備える電動機コイル形成装置において、前記巻枠は、その周面の少なくとも一部に、前記任意の軸線に対する傾斜角度を変更自在な周面を備え、各周回ごとの周長変化の割合を前記傾斜角度の変更により変更自在とされたことを特徴とする。
【0011】
上記の構成において、前記巻枠の内部に、巻枠の傾斜角度を変更する傾斜角度変更手段が内蔵された構成とするのが望ましい。また、前記巻枠は、固定枠と、該固定枠に対して開閉可能な可動枠と、該可動枠を固定枠に対して開閉動させる開閉機構とを備え、巻枠の傾斜角度の変更は、開閉機構による固定枠に対する可動枠の開閉によりなされるのが有効である。また、前記固定枠と可動枠は、それら相互の枢着点回りの回転により開閉可能とされ、相互に引張手段により閉鎖方向に付勢され、固定枠と可動枠との間に配置されたカムの引張手段による閉鎖方向への付勢力に抗する回転により開閉されることが望ましい。また、前記カムは、回転角を増大させる歯車対を介してレバーに連結され、該レバーの回転により開閉されるのが有効である。また、前記巻枠は、巻き上がったコイルを受け具に移載すべく、コイルの周長より短い周長まで受け具と結合される側を閉じ状態に閉鎖可能とされるのが有効である。また、前記巻枠は、共通の巻枠ユニットに複数配置され、各巻枠は、巻枠ユニットの旋回軸を含むその近傍に、前記任意の軸線を設定可能とされるのが有効である。
【0012】
【発明の作用及び効果】
上記請求項1に記載の構成では、複数の相に適した周長変化率のコイルを順次形成して受け具に移載する作業を、一連の工程として実施することができる。
【0013】
また、請求項2に記載の構成では、先に形成されるコイルの周長変化率が、常に後に形成されるコイルの周長変化率より大きくなるため、電動機コアのスロットに挿入する順序でコイルを形成することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の構成では、共通の巻枠ユニットを用いて、複数の巻回部を持つ連極コイルを、複数の相に対応する周長変化率を持つものとして形成することができる。
【0015】
上記請求項4に記載の構成では、周長変化率の異なるコイルを共通の巻枠により形成することができる。したがって、この構成によれば、単一の電動機における各相のコイルの形成や、仕様の異なる複数種類の電動機用コイルを共通の巻枠により形成する電動機コイル形成装置の汎用化が可能となる。
【0016】
次に、請求項5に記載の構成では、巻枠の傾斜角度を変更する傾斜角度変更手段を巻枠外に配置する必要がなくなるため、装置のコンパクト化が可能となる。また、巻枠の外側に傾斜角度変更手段のための余分なスペースを必要としないため、多数の巻枠の共通の巻枠ユニットへの接近配置も可能となる。
【0017】
次に、請求項6に記載の構成では、巻枠を実質的に2部材で構成することができるため、傾斜角度変更のための巻枠の複雑化を防ぐことができる。
【0018】
また、請求項7に記載の構成では、巻枠の枢着点を中心とする開閉により、巻枠に巻付けられるコイル周回部分ごとの周長が異なるようになるため、単一の巻枠により周長変化率が異なる巻回が可能となる。このようなコイルの巻回部分における周長変化率の違いは、コイルを電動機コアのスロットに挿入した後のコイルエンド部分のワイヤの径方向への押し退けに有効である。
【0019】
また、請求項8に記載の構成では、レバーに与えられるストロークに対してカムの回転角を大きくすることができるため、小さなカムにより巻枠の大きな開閉ストロークを得ることができる。
【0020】
また、請求項9に記載の構成では、巻枠とコイルとの間に緩みを持たせる状態まで閉鎖可能となり、このとき巻枠の下方側が閉じ状態となるため、巻上げ後のコイルの巻枠からの排出が容易に可能となる。
【0021】
また、請求項10に記載の構成では、共通の巻枠ユニットを用いた各周長変化率の異なるコイルの形成が容易に可能となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明における巻枠は、共通の縦軸周りに回転可能な巻枠ユニットに複数個配置する形態で電動機コイル形成装置に組込まれるのが望ましく、これにより複数の巻回部分を持つ各相に対応する周長変化率の異なるコイルを、単一の電動機コイル形成装置により形成することができる。また、巻枠の周面の少なくとも一部は、階段状の周面とするのが望ましく、これにより、多数のワイヤを平行状態の束として巻回する場合に、階段状の周面で各巻回部のずれを防いで、巻乱れをなくすことができる。そして、こうした巻乱れの防止は、電動機コアへの挿入時の配線密度の向上につながる。
【0023】
【実施例】
図1は、本発明の電動機コイル形成装置の巻枠ユニットの一実施例を示す斜視図である。巻枠ユニットAは、図示しない装置本体のフレームに垂直軸線回りに旋回自在に支持され、かつ回転駆動装置にユニット旋回中心軸1を介して連結された板状の旋回アーム2と、旋回アーム2の旋回中心軸1に対して所定量偏心した位置にインデックス軸3回りに回転自在かつ所定角度位置の割出し及び位置保持可能に垂下されたインデックスホルダ4と、インデックスホルダ4に各々昇降自在に係合支持して、全体としてインデックスホルダ4の周囲を取巻くように配置され、外側周面が下方で開き方向に若干傾斜した開閉自在な蒲鉾状の複数(図示の例において4個)のコイル巻枠5A〜5Dと、各コイル巻枠5A〜5Dの間に配置された開閉自在な蒲鉾状の渡線巻枠(図示の例において3個)6A〜6Cと、渡線巻枠の配置位置に相当する位置の一箇所に渡線巻枠に代えて配置された円筒形のリード巻枠7とから構成されている。
【0024】
図2に下方からみた平面配置を示すように、各コイル巻枠5A〜5Dは、インデックスホルダ4を取巻く周方向における同じ径方向位置に均等な間隔(図示の例において90°間隔)で配置され、渡線巻枠6A〜6Cとリード巻枠7がそれらの間に配置されている。また、後記するインデックス操作のために、各巻枠5A〜5D,6A〜6C,7の中心軸線Za〜Zhとインデックスホルダ4の中心軸線Zoとの軸間距離は、旋回アーム2の旋回中心軸1に対するインデックスホルダ4の中心軸線Zoの偏心量に一致する配置とされている。
【0025】
こうした配列の各巻枠5A〜5D,6A〜6C,7に対して、コイル形成ワイヤM/Wは、図2に2点鎖線で示すように、図示しない供給ノズルから繰出されて、先ずリード巻枠7に反時計回り方向に多重に巻付けられ、リード巻枠7とコイル巻枠5Aの間を通してコイル巻枠5Aの裏側(巻枠ユニットAにおける径方向内側)から反時計回り方向に多重に巻付けられ、次にコイル巻枠5Aと渡線巻枠6Aの間を通して渡線巻枠6Aの表面側(巻枠ユニットAにおける径方向外側)のみ時計回りに巻付けられ、渡線巻枠6Aとコイル巻枠5Bの間を通してコイル巻枠5Bの裏側から反時計回り方向に多重に巻付けられて、2個の周回部分を持つコイルの巻付けが完了する。更に多くの周回部分を持つコイルとする場合は、これに続けて同様の巻付けを繰り返し、最終的にコイル巻枠5Dに多重に巻付けられて一巡の巻き掛けを終わる巻き順とされている。なお、図2において、各軸線Za〜Zh周りの矢印は、巻付けのための各巻枠5A〜5D,6A〜6C,7の回転方向を示し、各巻枠の周面に付した矢印は、ワイヤM/Wの供給方向を示す。したがって、この方向は、上記周回順序に対して逆向きとなる。
【0026】
次に示す図3〜図15は、巻付け手順を順を追って段階的に示す。先ず、図3を参照して、ワイヤM/Wのリード部分の処理のために、リード巻枠7だけを下降させ、他の巻枠が巻き付けの障害とならないようにする。この下降と併せてリード巻枠7をインデックスホルダ4のインデックス軸3回りに回転させて、リード巻枠7の中心軸線Zaを旋回アーム2の旋回軸1と整列させるインデックス操作を行う。そして、図示しない供給ノズルから供給されるワイヤM/Wのリードを適宜の手段でリード巻枠7に固定し、巻枠ユニットAを下方からみて反時計回り方向(以下に記す回転方向は、全て下方からみた方向とする。)に旋回させることで、リード巻枠7を旋回アーム2の旋回によりリード巻枠7の中心軸線Za回りに回転させて、リード巻枠7へのワイヤM/Wの巻付けを開始する。この巻枠ユニットAの多重旋回によりリード巻枠7にワイヤM/Wが多重に巻付けられた段階を次の図4に示す。
【0027】
次に、図5を参照して、リード巻枠7の下方視で右側に隣接するコイル巻枠5Aを下降させる。次いで、図6に示すようにインデックスホルダ4を反時計回り方向に45°回転させ、下降状態のコイル巻枠5Aをインデックスする。
【0028】
次に、図7を参照して、リード巻枠7を上昇させながら、ワイヤM/Wの繰出し側をコイル巻枠5Aの裏側に通す渡線処理を行う。こうしてリード巻枠7の上昇と渡線処理が終わったところで、巻枠ユニットAを時計回り方向に旋回させることで、ワイヤM/Wのコイル巻枠5Aへの巻付けを行う。この旋回を多重旋回とすることで、図8に示す途中段階を経て、図9に示す巻付け完了状態となる。
【0029】
次に、図10を参照して、コイル巻枠5Aの下方視で右側に隣接する渡線枠6Aを下降させる。更に、図11に示すようにインデックスホルダ4を反時計回り方向に45°回転させ、下降状態の渡線枠6Aをインデックスする。次に、図12に示すようにコイル巻枠5Aを上昇させながら、ワイヤM/Wの繰出し側を渡線枠6Aの表側に導く渡線処理を行う。こうしてコイル巻枠5Aの上昇と渡線処理が終わったところで、巻枠ユニットAを反時計回り方向に旋回させることで、図13に示すように、ワイヤM/Wの渡線枠6Aへの巻付けを行う。
【0030】
以下同様に、図14に示すように、渡線枠6Aの下方視で右側に隣接するコイル巻枠5Bを下降させる。次いで、図15に示すように、インデックスホルダ4を反時計回り方向に45°回転させ、下降状態のコイル巻枠5Bをインデックスする。以下同様の手順を繰り返してリード巻枠7の反対側に位置する最後のコイル巻枠5DへのワイヤM/Wの巻付けを完了することで、先の図2に示す巻枠ユニットAへのコイルの巻付けが完成する。
【0031】
本発明の主題に係る構成は、上記の巻枠ユニットの各コイル巻枠5A〜5Dに適用されている。次に示す図16〜図18は、各コイル巻枠5の構造を示す。コイル巻枠5の側面を示す図16を参照して、このコイル巻枠5は、基本的には、その周長変化率を変更自在とされている。そのために、コイル巻枠5の内部に、図17及び図18に示すように、巻枠周面の一部の傾斜角度を変更する傾斜角度変更手段50が内蔵されている。コイル巻枠5は、図示の例では、巻枠を巻枠ユニットAのインデックスホルダ4に対して昇降自在に支持するための支持部材51と、支持部材51に固定した固定枠52と、固定枠52に開閉可動に連結した可動枠53と、可動枠53を固定枠52に対して開閉動させる傾斜角度変更手段としての開閉機構50から構成されている。コイル巻枠5の周長変化率の変更は、開閉機構50による固定枠52に対する可動枠53の開閉によりなされる。
【0032】
固定枠52と可動枠53は、それら相互の枢着点54回りの回転により開閉可能とされ、相互に引張手段55により閉鎖方向に付勢され、固定枠52と可動枠53との間に配置されたカム56の引張手段55による閉鎖方向への付勢力に抗する回転により開閉される。カム56は、回転角を増大させる歯車対57,58を介してレバー59に連結され、レバー59の回転により開閉される。
【0033】
こうした構成からなるコイル巻枠5は、前記のように巻枠ユニットAに複数個配置され、各コイル巻枠5の開閉方向は、巻枠ユニットAの中心軸(インデックスホルダの中心軸)に対する放射方向とされている。
【0034】
以下、この実施例における各コイル巻枠5の細部構成を説明する。図16を参照して、固定枠52は、インデックスホルダに昇降自在に支持するためのL字形の支持部材51の下方に延びるコ字枠状の枠部52aと、枠部52aの背面に添設された背面枠材52bを備える構成とされている。背面枠材52bには内側平面と平行に形成され、下方が開いたインサータ挿入用のスリットSが設けられている。コ字枠状の枠部52aの内側は開閉機構50の配置空間とされている。また、枠部52aの上方両外側は切欠かれ、可動枠53との枢止嵌合部とされている。
【0035】
可動枠53は、固定枠52と同幅の板状で、その上方から水平方向に延出し、上記固定枠52の枠部52aの上方両外側の切欠に嵌る二又状のヒンジ部を備える枠部53aと、枠部52aの背面に添設された前面枠材53bを備える構成とされている。前面枠材53bの表面側は、下方に向かって段階状に広がり、両側面と大きな円弧面でつながる階段状斜面とされている。
【0036】
こうした構成からなる固定枠52と可動枠53は、ヒンジ部でピン54により回転自在に連結されて、固定枠52に対して可動枠53の下側が接近・離反する動作により開閉自在とされている。
【0037】
開閉機構50は、可動枠53を固定枠52に閉鎖方向に付勢にすべく両端を固定枠52と可動枠53に支持した引張コイルスプリングからなる引張手段55と、固定枠52に回転自在に支持され、カム面を可動枠53の背面に対峙させた偏心扇形のカム56と、カム56の回転角を増大させるべく、一方がカム56と一体回転するように固定され、他方が固定枠52に回転自在に支持された歯車対57,58と、歯車58に固定されたレバー59とから構成されている。
【0038】
こうした構成からなるコイル巻枠5は、巻付け後のコイルを排出すべくインデックスホルダ4に昇降自在に設けられたプッシャ41(図18参照)によりレバー59を操作することで開閉操作される。次に示す図19〜図22は、コイル巻枠5の開閉操作を順を追って示す。図19に示す全開状態は、プッシャ41を最も上昇させた状態で得られる。この状態では、カム56のカム面の最大径部が可動枠53の背面に当接することで、可動枠53の前面側が下方に最大に開いた姿勢となる。このため、図19の右側に示すように、コイル巻枠5に巻付けられるワイヤM/Wの巻回部の周長は、各段ごとに異なる周長となり、これら周回部の周長変化率は、他の開き状態に対して最も大きくなる。この周長は、電動機コアのスロットに最初に挿入される相、例えばU相のコイルに適合する。また、この場合、周長が大きい側は、ステータコアの径方向内側とされ、コイルエンド部においてより径方向外側に押し退けるのに適している。
【0039】
次の図20に示す状態は、中間閉じ状態を示す。この状態は、プッシャ41を若干下降させた状態で得られる。この状態では、カム56のカム面の最大径部より若干小径の部分が可動枠53の背面に当接することで、可動枠53の前面側の開きが少ない姿勢となる。このため、コイル巻枠5に巻付けられるワイヤM/Wの巻回部の周長変化率は、全開状態より小さくなり、他の閉じ状態に対しては大きくなる。この周長は、コアのスロットに最初の相のコイルの挿入後に挿入される相、例えばV相のコイルに適合する。
【0040】
次の図21に示す状態は、閉じ状態を示す。この状態は、プッシャ41を更に下降させた状態で得られる。この状態では、カム56のカム面の更に小径の部分が可動枠53の背面に当接することで、可動枠53の前面側が全体として概ね垂直な姿勢となる。このため、コイル巻枠5に巻付けられるワイヤM/Wの巻回部の周長変化率は、最小又は0となる。この周長は、コアのスロットに最後に挿入され、コイルエンドをステータコアの径方向外側に倒す必要のない相、例えばW相のコイルに適合する。
【0041】
次の図22に示す状態は、全閉状態を示す。この状態では、カム56のカム面の最小径の部分が可動枠53の背面に当接することで、可動枠53の前面側が下方で完全に閉じた姿勢となる。このため、コイル巻枠5の周長は、各段ごとに巻付けられたワイヤの巻回部の周長より短くなり、ワイヤの巻回部とコイル巻枠5の周面との間に緩みが生じる。したがって、コイルはプッシャ41によりコイル巻枠5から押出し可能となる。この全閉状態は、コイル巻枠5からのコイル排出のためのポジションであり、コイルの巻付けとの関係でプッシャの下降操作では得られないが、上記各状態でのワイヤ巻付け完了後に、排出のために取られる共通のポジションである。
【0042】
この排出時には、前記のスリットsに受け具を構成するインサータツールのブレード部を挿入した状態でコイル巻枠5からインサータツールへの受け渡しによるコイルの排出が行われ、コイルの巻回部は、インサータツールのブレード部に引っ掛けられた状態でインサータツールに渡される。
【0043】
次に、前記コイルの形成とインサータツールへの受け渡しの関係を説明する。この電動機コイル形成装置によるコイル形成方法においては、コイル巻枠5を特定の周長変化率が得られる状態に設定してワイヤを巻付ける巻付け工程後に、巻き上がったコイルをインサータツールに移載する移載工程を単数又は複数回実施し、次に傾斜角度を前記特定の変化率より小さな変化率が得られる状態に設定してワイヤを巻付ける次の巻付け工程を実施し、巻き上がったコイルをインサータツールに移載する次の移載工程を単数又は複数回実施する繰り返しを基本とする。
【0044】
例えば、3相のコイルを形成する場合、先ずU相のコイルをコイル巻枠全開の状態で巻回し、巻上げ後のU相のコイルをプッシャによる押し下げでインサータツールに移載する。ここでインサータツールはU相のコイルを電動機コアまで移送し、コアのスロットにコイルを挿入する。そして、挿入されたU相のコイルのコイルエンド部分が、拡張具によりコアの外径方向に押し曲げ処理される。次に、コイル形成装置側では、V相のコイルをコイル巻枠中間閉じ状態にして巻回し、巻上げ後のV相のコイルをプッシャによる押し下げでインサータツールに移載する。ここでインサータツールはV相のコイルを電動機コアまで移送し、コアのスロットにコイルを挿入する。そして、挿入されたV相のコイルのコイルエンド部分が、拡張具によりU相のコイルのコイルエンド部分に押し付けるようにコアの外径方向に押し曲げ処理される。更に、コイル形成装置側では、W相のコイルをコイル巻枠閉じ状態にして巻回し、巻上げ後のW相のコイルをプッシャによる押し下げでインサータツールに移載する。ここでインサータツールはW相のコイルをコアまで移送し、コアのスロットにコイルを挿入する。こうした一連の作業によりコイルの巻回と、コアへの挿入と、その後のコイルエンドの中間成形がなされる。
【0045】
次に、図23〜図28を参照して、上記の工程中の移載工程を説明する。この工程では、先ず図23に示すように、巻枠ユニットAと心合わせして下方に待機させてあるインサータツールBに向けて巻枠ユニットAを下降させる。この下降によりコイル巻枠5とインサータツールBが結合した状態が、次の図24に示されている。このとき、インサータツールのブレード8がコイルの巻線内に挿入される。
【0046】
ここで適宜の手段によりコイル巻枠5を閉鎖する。それにより図25に示すようにコイルのワイヤM/Wとコイル巻枠5との間に緩みが生じる。そして、コイルの各巻回部が積み重なってブレード8の上方部分に載置状態となる。この状態を図26に示す。
【0047】
こうしてコイルが排出可能となったところで、次の図27に示すようにプッシャ41を下降させる。この操作で、コイルはその各巻線の内側を押されて、ブレード8の下方部分まで押込まれ、コイル巻枠5からインサータツールBへの移送が完了する。
【0048】
最後に、巻枠ユニットAを上昇させることで一連の操作を完了する。このときの巻枠ユニットAとインサータツールBの引離し状態が図28に示されている。なお、各コイル巻枠5の全開位置への復帰は、適宜の手段によるレバー59の回転操作によりなされる。かくして巻枠ユニットAは、図29に示すように、当初状態に復帰する。一方、インサータツールB側では、各ブレード8にコイルのワイヤM/Wの巻回部分が引掛け支持された状態に保持される。この後、インサータツールBは、電動機コアのスロットへのコイルの挿入操作に使用される。
【0049】
電動機コアのスロットへのコイルの挿入は、本発明の主題とは直接関係がないが、図30〜図32を参照して略説する。この操作は、図30に示すように、電動機コアCとインサータツールBを心合わせした状態で、両者を結合させることにより行われる。図30は結合段階を示しており、インサータツールBのブレード8が電動機コアCの内部に押込まれた状態を示す。この状態では、図32に電動機コアCのスロットC1とインサータツールBのブレード8の位置関係を示すように、コイルが挿入されるべきスロットC1内の空間以外は塞がれた状態になっている。なお、図32において、符号8aで示すブレードは、ブレード8に引掛け支持されたコイルの巻回部分をブレード8と協働して挟むことで、各巻回部分を電動機コアCのスロットC1への挿入に備えて位置決め保持するブレードを示す。
【0050】
この状態からインサータツールBの挿入コアB1を押上げると、ブレード8に引掛け支持されたコイルの各巻回部の径方向内側の部分(ブレードより内側の部分)が、挿入コアB1の周面角部に押され、各巻回部における径方向外側の部分(ブレードより外側の部分)が径方向外側への逃げ場のない状態で引上げられるため、電動機コアCの各スロットC1に押込まれて行き、最終的に挿入コアB1がブレード8の先端まで達したところで、ブレード8による拘束がなくなったコイルの各巻回部のブレード8より内側の部分が外側に逃げて電動機コアCのスロットC1へのコイルの挿入が完了する。この状態が図31に示されている。この押込み過程での各巻回部は、図30を参照して、インサータツールBのブレード8の上側に位置する巻回部からスロットC1に挿入されていくため、挿入後は、この部分がスロットの奥側(径方向外側)となり、ブレード8の下側に位置する巻回部は、スロットの入口側(径方向内側)となる。したがって、挿入後のコイルエンドの部分においても、同様の位置関係となる。この結果、コイルエンド部分では、径方向内側の軸方向張出し長さが径方向外側の軸方向張出し長さより長くなる。
【0051】
上記の操作は、例えば3相コイルの場合、図32を参照して、当初の操作をU相用の4つの巻回部を持つ連極コイルに適用されるものとして、1つおきの他の4つのスロットにも同様の挿入操作が行われる。また、V相用及びW相用のコイルについてもスロットの位置を異ならせて同様に行われる。この2番目以降の相用のコイルを挿入する際、先に挿入されたコイルのコイルエンド部分を径方向外側に逃がす意味で、コイルエンド部分の径方向外側への押し曲げ操作が、最初に挿入されたU相用のコイルと、次に挿入されたV相用のコイルについて、インサータツールBとは別異の工具を用いて行われる。この操作の際、各相用のコイル間については、U相用のコイルの押し曲げ量が大きく、V相用のコイルの押し曲げ量がこれより小さくなる。また、これらの相用のコイルの各巻回部分について言えば、スロットの内側に位置するワイヤほど外側に位置するワイヤより押し曲げ量が大きくなる。しかも、U相用のコイルの内側と外側の押し曲げ量の差は、V相用のコイルの内側と外側の押し曲げ量の差より大きくなる。そこで、こうした押し曲げ量の違いに各巻回部分の周長を合わせるべく、各相用のコイル間については平均周長を異ならせ、1つの相用のコイルの巻回部分間については、各ターンごとに周長を異ならせる巻回が行われる。本実施例において、各巻枠を開閉自在としているのは、各ターンごとの周長の変化割合をU、V,W相用間で異ならせるためである。
【0052】
以上詳述したように、この実施例の装置によれば、周長変化率の異なるコイルを共通の巻枠により形成することができる。したがって、この構成によれば、単一の電動機における各相のコイルの形成や、仕様の異なる複数種類の電動機用コイルを共通の巻枠により形成する電動機コイル形成装置の汎用化が可能となる。また、巻枠5の傾斜角度を変更する傾斜角度変更手段50を巻枠外に配置する必要がなくなるため、装置のコンパクト化が可能となる。また、巻枠5の外側に傾斜角度変更手段50のための余分なスペースを必要としないため、多数の巻枠の共通の巻枠ユニットAへの接近配置も可能となる。
【0053】
次に、巻枠5を実質的に固定枠52と可動枠53の2部材で構成することができるため、傾斜角度変更のための巻枠の複雑化を防ぐことができる。更に、コイル巻枠5の枢着点を中心とする開閉により、コイル巻枠5に巻付けられるコイル周回部分ごとの周長が異なるようになるため、単一の巻枠により周長変化率が異なる巻回が可能となる。このようなコイルの巻回部分における周長変化率の違いは、コイルを電動機コアのスロットに挿入した後のコイルエンド部分のワイヤの径方向への押し退けに有効である。
【0054】
また、レバー59に与えられるストロークに対してカム56の回転角を大きくすることができるため、小さなカム56により巻枠5の大きな開閉ストロークを得ることができる。また、前記全閉状態では、コイル巻枠5とコイルとの間に緩みを持たせる状態まで閉鎖可能となり、このときコイル巻枠5の下方側が閉じ状態となるため、巻上げ後のコイルのコイル巻枠5からの排出が容易に可能となる。
【0055】
かくしてこの実施例によれば、共通の巻枠ユニットAを用いた各周長変化率の異なるコイルの形成が容易に可能となる。そして、U、V、Wの各相に適した周長変化率のコイルを順次形成してインサータに移載する作業を、一連の工程として実施することができる。
【0056】
ところで、前記の実施例は、プッシャの押し下げにより各コイル巻枠を閉じ方向に作動させるものであるが、このプッシャの作動とコイル巻枠の開閉の関係を逆にすることもできる。次に示す実施例は、プッシャの押し下げにより各コイル巻枠を開き方向に作動させる例である。
【0057】
次に示す図33は、巻枠ユニットAの下方部分の構造を断面で示す。この巻枠ユニットAにおけるコイル巻枠5は、基本的には、先の実施例と同様の構成のものであるので、相当する部材に同様の参照符号を付して説明に代え、以下、相違点のみ説明する。
【0058】
この実施例のカム56は、回転角を増大させると共にカム56とレバー59の回転方向を合わせる歯車列57,57A, 58を介してレバー59に連結され、レバー59の回転により開閉される。この歯車列は、カム56と一体回転するように固定された歯車57と、固定枠52に回転自在に支持された歯車58と、それらの間に介挿されたアイドラ歯車57Aから構成されている。なお、図33において、左半分はコイル巻枠5の全閉状態、右半分は同じく全開状態を示す。
【0059】
図34はコイル巻枠5と、プッシャ41と、インサータツールのブレード8の関係を平面視で示す。図示するように、コイル巻枠5のスリットsにインサータツールのブレード8が挿入された状態で、プッシャ41の突起41aはブレード8のスリット81内に入り込む突出量とされており、レバー59は、その全回転領域で、ブレード8のスリット81を越えて先端がプッシャ41の突起41aと軸方向に重なる長さとされている。この関係から、レバー59は、プッシャ41の突起41aによっても、またインサータツールのブレード8によっても操作可能な関係にある。
【0060】
次に示す図35〜図42は、この実施例におけるコイル形成からインサータツールへのコイルの受渡しまでの一連の操作を順を追って示す。図35に示す段階は、作業当初の巻枠ユニットAの状態を示す。この状態は、コイル巻枠5の全閉状態であり、プッシャ41を最も上昇させた状態にある。この状態では、カム56のカム面の最小径部が可動枠53の背面に当接することで、可動枠53の前面側が下方で狭まった姿勢となる。
【0061】
上記の状態からプッシャ41を下降させ、図36に示すように、プッシャ41の周面から径方向に張出す突起部41a(図34参照)がレバー59の先端に当接する位置に達すると、それ以降のプッシャ41の下降量に応じてカム56のカム面の最小径部より大径の部分が可動枠53の背面に当接するようになり、それに応じて可動枠53の前面側が次第に下方開き状態の姿勢に変化する。このため、コイル巻枠5に巻付けられるワイヤの巻回部の周長変化率が、プッシャ41の下降量に応じて調整可能となる。
【0062】
こうしてコイル巻枠5の開閉度によりコイルの周長変化率の設定がなされたところで、図37に示すようにプッシャ41を巻線操作の障害とならない位置に退避させるべく上昇させ、図38に示すように巻線操作に入る。この操作の詳細は、図1〜図15を参照して先述したとおりである。
【0063】
巻線操作が完了したところで、今度は、巻枠ユニットAと心合わせして下方に待機させてあるインサータツールBに向けて巻枠ユニットAを下降させる。この下降によりコイル巻枠5とインサータツールBが結合した状態が、次の図39に示されている。この段階では、インサータツールBのブレード8の先端部分に形成したスリット81の底部がレバー59の先端に当接した状態となる。
【0064】
上記の状態から更に巻枠ユニットAを下降させると、次の図40に示すように、レバー59の先端がインサータツールのブレード8に押されて回転し、それに連れてカム56が可動枠閉鎖方向に回転する。このときの可動枠閉鎖方向への回転は、通常の開閉操作時より更に大きなものとする。この操作により、図の左半分に示すように、インサータツールのブレード8がコイルの巻線内に挿入されると共に、コイル巻枠5が閉鎖され、それによりコイルのワイヤM/Wとコイル巻枠5との間に緩みが生じる。
【0065】
こうしてコイルが排出可能となったところで、次の図41に示すようにプッシャ41を再度下降させる。このプッシャ41の下降時には、レバー59の先端がブレード8による押上げで、通常の開閉度調整のための閉鎖状態より大きく回転し、プッシャ41の突起の移動軌跡外に逃げているため、プッシャ41の下降によるコイルの押出しが可能となる。この操作で、コイルはその各巻線の内側を押されて、コイル巻枠5からインサータツールBに移送される。
【0066】
最後に、巻枠ユニットAを上昇させることで一連の操作を完了する。このときの巻枠ユニットAとインサータツールBの引離し状態が図42に示されている。この状態で巻枠ユニットAは当初状態に復帰している。一方、インサータツールB側では、各ブレード8にコイルのワイヤM/Wの巻回部分が引掛け支持された状態に保持される。この後、インサータツールBは、電動機コアのスリットへのコイルの挿入操作に使用される。
【0067】
なお、この実施例において、プッシャ41によるコイル押出しの際のレバー59との干渉を避ける具体的構成、すなわち、プッシャ41の突起部41aの下降軌跡の外側へレバー59を退避のための具体的構成を省略しているが、このための簡単な構成例を挙げると、図33を参照して、歯車58のアイドラ歯車57Aとの噛合い部の最後の部分を欠歯とし、巻枠閉鎖位置からのインサータツールBのブレード8の押上げによるレバーの更なる回転が、コイル巻枠5の開閉に関係のない無効回転(アイドラ歯車57Aを回転させない回転)となるようにする構成例がある。この場合、巻枠ユニットAとインサータツールBの引離し時に、レバー59をプッシャ41によるコイル巻枠の開閉度調整可能位置へ復帰させる手段としては、格別な手段なしで、歯車58がレバー59の重量等の偏荷重により重力で噛合い可能位置に戻る方式や、この位置に戻る捩りスプリングを歯車58の軸周に配する等の方式を採ることができ、これによりレバー59の先端位置は、プッシャ59の突起部59aの移動軌跡内に復帰する。
【0068】
この実施例によれば、先の実施例と異なり、巻枠ユニットAとインサータツールBの結合による移載工程において、インサータツールBのブレード8によるコイル巻枠5の完全閉鎖が可能となる利点が得られる。
【0069】
以上本発明を、実施例に基づき詳述したが、本発明は実施例に限るものではなく、特許請求の範囲に記載の事項の範囲内で、種々の具体的形態を変更して実施可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の適用に係る実施例の巻枠ユニットの斜視図である。
【図2】実施形態の巻枠ユニットの平面図である。
【図3】巻枠ユニットのリード巻付け段階の作動を示す斜視図である。
【図4】巻枠ユニットのリード巻付け完了段階の作動を示す斜視図である。
【図5】巻枠ユニットのコイル巻枠下降段階の作動を示す斜視図である。
【図6】巻枠ユニットのコイル巻枠インデックス段階の作動を示す斜視図である。
【図7】巻枠ユニットのリード巻枠からコイル巻枠への渡線段階の作動を示す斜視図である。
【図8】巻枠ユニットのコイル巻枠への巻付け途中段階の作動を示す斜視図である。
【図9】巻枠ユニットのコイル巻枠への巻付け完了段階の作動を示す斜視図である。
【図10】巻枠ユニットの渡線巻枠下降段階の作動を示す斜視図である。
【図11】巻枠ユニットのコイル巻枠からリード巻枠への渡線段階の作動を示す斜視図である。
【図12】巻枠ユニットのコイル巻枠上昇段階の作動を示す斜視図である。
【図13】巻枠ユニットの渡線巻枠への巻付け完了段階の作動を示す斜視図である。
【図14】巻枠ユニットの渡線巻枠からコイル巻枠への渡線段階の作動を示す斜視図である。
【図15】巻枠ユニットの渡線巻枠上昇段階の作動を示す斜視図である。
【図16】コイル巻枠の側面図である。
【図17】コイル巻枠の断面図である。
【図18】コイル巻枠の構造を示す部分断面斜視図である。
【図19】コイル巻枠の全開状態を示す断面及び側面図である。
【図20】コイル巻枠の中間閉じ状態を示す断面及び側面図である。
【図21】コイル巻枠の閉じ状態を示す断面及び側面図である。
【図22】コイル巻枠の全閉状態を示す断面及び側面図である。
【図23】巻枠ユニットとインサータツールの受渡し準備段階を示す説明図である。
【図24】巻枠ユニットとインサータツールの結合段階を示す説明図である。
【図25】巻枠ユニットの巻枠閉じ段階を示す説明図である。
【図26】巻枠ユニットからのコイル離脱段階を示す説明図である。
【図27】巻枠ユニットのプッシャ押し下げ段階を示す説明図である。
【図28】巻枠ユニットのインサータツールからの戻り段階を示す説明図である。
【図29】巻枠ユニットの巻枠開き段階を示す説明図である。
【図30】電動機コアへのインサータツールの結合状態を示す作動説明図である。
【図31】電動機コアへのコイル挿入状態を示す作動説明図である。
【図32】電動機コアのスロットとインサータツールのブレードの結合状態での位置関係を示す断面図である。
【図33】他の実施例の巻枠ユニットの断面図である。
【図34】コイル巻枠とプッシャとインサータツールのブレードとの関係を示す断面図である。
【図35】巻枠ユニットの原位置状態を示す作動説明図である。
【図36】巻枠ユニットの開度調整状態を示す作動説明図である。
【図37】巻枠ユニットの巻線待機状態を示す作動説明図である。
【図38】巻枠ユニットの巻線状態を示す作動説明図である。
【図39】巻枠ユニットとインサータツールの結合状態を示す作動説明図である。
【図40】巻枠ユニットの巻枠閉鎖状態を示す作動説明図である。
【図41】巻枠ユニットのコイル離脱開始状態を示す作動説明図である。
【図42】巻枠ユニットを上昇させた動作完了状態を示す作動説明図である。
【符号の説明】
M/W ワイヤ
A 巻枠ユニット
5 コイル巻枠(巻枠)
50 開閉機構(傾斜角度変更手段)
52 固定枠
53 可動枠
54 ピン(枢着点)
55 コイルスプリング(引張手段)
56 カム
57,58 歯車対
59 レバー
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータ、ジェネレータ等の電動機に用いるコイルの形成装置に関し、特に、車両に駆動源として搭載する電動機のステータコイルの形成に適した巻枠を備えるコイル形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動機のコアのスロットに挿入されるコイルは、一般に、予めコイル形成装置により所定の予備形状(挿入状態とは異なる形状)に巻回され、該形成装置から所定の受け具(インサータ)に巻回部を吊下げ状態として排出させ、該治具から最終形状に変形させながらコアのスロットに挿入される。前記予備形状の一形態として、互いに平行な軸線回りに複数の巻回部分を持つ形態のものがある。こうした形態のコイルを形成する装置としては、巻枠に対してワイヤを供給する側(フライヤ)を回転させる方式のものが一般的である。こうした方式の装置を開示する特許文献として、特許文献1がある。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−253631号公報
【0004】
上記方式のものは、巻枠よりフライヤが大径でなければならないため、装置が大型のものとならざるを得ない。また、フライヤの回転によりワイヤが捩れるため、多数のワイヤを平行な束とする巻回を行う場合、ワイヤの束を縒り線状態としないための工夫も必要となる。そこで、こうした問題を避ける他の方式の装置として、ワイヤを供給する側(ノズル)を固定として、巻枠を回転させる方式のものがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、各相ごとのコイルは、コイル形成装置により個々に形成された後に、コアの異なるスロットに跨がせ、かつ順次周方向位置をずらせて挿入される。このようにスロットに挿入されたコイルがスロット間を跨ぐ部分(コアの両端に突き出て周回するコイルエンド部分)では、異なる相のコイルの周回部分が相互にコアの径方向及び軸線方向に重なり合う配置関係となるため、異なる相のコイルの周回部分の周長が全て同一であると、各相のコイルの周回部分を他の相のコイルの周回部分に対して径方向に逃がすことが困難となるため、重なり合いが極端又は困難になり、コイルエンド部分の軸線方向占有スペースも大きくなる。こうしたコイルエンドの重なり合いは、電動機の小型化の妨げとなる。
【0006】
そこで、こうした事態を避ける意味から、コイルの周回部分の周長は全てについて一様ではなく、周回ごとに若干異なる周長とされる。詳しくは、最初にコアのスロットに挿入される相のコイルについては、挿入後にコイルエンド部分を最も大きくコアの外径方向に押し曲げられ、次に挿入される相のコイルのコイルエンド部分は、最初に挿入された相のコイルのコイルエンド部分に押し付けるようにコアの外径方向に押し曲げられ、最後に挿入される相のコイルのコイルエンド部分は、特に押し曲げられることなく定置される。こうしたコアへの挿入後の処理のために、最も大きく変形する相のコイルについては、コアの内径側に位置する周回部分と外径側に位置する周回部分の変形差が大きくなることから、周回ごとの周長変化の割合(本明細書において、これを周長変化率と略記する)を最も大きくし、以下順次周長変化率を小さくする設定がなされる。こうした周長変化率の異なるコイルを形成するには、一般には、1つの巻枠ユニットに対して各周長変化率に合わせた着脱式の巻枠を複数準備するか、それぞれに巻枠の周長変化率が異なる複数の巻枠ユニットを準備する必要がある。しかしながら、このように各周長変化率が異なる巻枠を複数準備し、各相のコイルごとに巻枠又は巻枠ユニットを交換して巻付けを行うことは、工程管理が複雑化し、作業能率上望ましくない。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑み案出されたものであり、共通の巻枠により適宜周長変化率が異なるコイルを形成可能とすることを主たる目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、ワイヤを巻回して電動機コイルを形成する方法において、コイル巻回部の周回ごとの周長変化の割合を開閉により変更可能な巻枠と、巻上げ後のコイルを載置する受け具とを用い、前記巻枠を特定の周長変化の割合が得られる開閉度に設定してワイヤを巻付ける巻付け工程と、該巻付け工程により巻き上がったコイルを前記受け具に移載する移載工程と、前記巻枠を前記特定の周長変化の割合とは異なる周長変化の割合が得られる開閉度に設定してワイヤを巻付ける次の巻付け工程と、巻き上がったコイルを前記受け具に移載する次の移載工程とを適宜繰り返して、所要相数のコイルを形成すことを特徴とする。
【0009】
上記の方法において、前記特定の周長変化の割合が得られる開閉度は、異なる周長変化の割合が得られる開閉度より常に大きく設定されるのが有効である。また、前記巻枠は、共通の巻枠ユニットに複数配置されたものであり、前記巻付け工程は、複数の巻枠の1つごとにワイヤを巻付ける工程の繰り返しよりなることが望ましい。
【0010】
次に本発明は、任意の軸線回りに回転駆動され、コイルを形成するワイヤが周面に複数周回並べて巻付けられる巻枠を備える電動機コイル形成装置において、前記巻枠は、その周面の少なくとも一部に、前記任意の軸線に対する傾斜角度を変更自在な周面を備え、各周回ごとの周長変化の割合を前記傾斜角度の変更により変更自在とされたことを特徴とする。
【0011】
上記の構成において、前記巻枠の内部に、巻枠の傾斜角度を変更する傾斜角度変更手段が内蔵された構成とするのが望ましい。また、前記巻枠は、固定枠と、該固定枠に対して開閉可能な可動枠と、該可動枠を固定枠に対して開閉動させる開閉機構とを備え、巻枠の傾斜角度の変更は、開閉機構による固定枠に対する可動枠の開閉によりなされるのが有効である。また、前記固定枠と可動枠は、それら相互の枢着点回りの回転により開閉可能とされ、相互に引張手段により閉鎖方向に付勢され、固定枠と可動枠との間に配置されたカムの引張手段による閉鎖方向への付勢力に抗する回転により開閉されることが望ましい。また、前記カムは、回転角を増大させる歯車対を介してレバーに連結され、該レバーの回転により開閉されるのが有効である。また、前記巻枠は、巻き上がったコイルを受け具に移載すべく、コイルの周長より短い周長まで受け具と結合される側を閉じ状態に閉鎖可能とされるのが有効である。また、前記巻枠は、共通の巻枠ユニットに複数配置され、各巻枠は、巻枠ユニットの旋回軸を含むその近傍に、前記任意の軸線を設定可能とされるのが有効である。
【0012】
【発明の作用及び効果】
上記請求項1に記載の構成では、複数の相に適した周長変化率のコイルを順次形成して受け具に移載する作業を、一連の工程として実施することができる。
【0013】
また、請求項2に記載の構成では、先に形成されるコイルの周長変化率が、常に後に形成されるコイルの周長変化率より大きくなるため、電動機コアのスロットに挿入する順序でコイルを形成することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の構成では、共通の巻枠ユニットを用いて、複数の巻回部を持つ連極コイルを、複数の相に対応する周長変化率を持つものとして形成することができる。
【0015】
上記請求項4に記載の構成では、周長変化率の異なるコイルを共通の巻枠により形成することができる。したがって、この構成によれば、単一の電動機における各相のコイルの形成や、仕様の異なる複数種類の電動機用コイルを共通の巻枠により形成する電動機コイル形成装置の汎用化が可能となる。
【0016】
次に、請求項5に記載の構成では、巻枠の傾斜角度を変更する傾斜角度変更手段を巻枠外に配置する必要がなくなるため、装置のコンパクト化が可能となる。また、巻枠の外側に傾斜角度変更手段のための余分なスペースを必要としないため、多数の巻枠の共通の巻枠ユニットへの接近配置も可能となる。
【0017】
次に、請求項6に記載の構成では、巻枠を実質的に2部材で構成することができるため、傾斜角度変更のための巻枠の複雑化を防ぐことができる。
【0018】
また、請求項7に記載の構成では、巻枠の枢着点を中心とする開閉により、巻枠に巻付けられるコイル周回部分ごとの周長が異なるようになるため、単一の巻枠により周長変化率が異なる巻回が可能となる。このようなコイルの巻回部分における周長変化率の違いは、コイルを電動機コアのスロットに挿入した後のコイルエンド部分のワイヤの径方向への押し退けに有効である。
【0019】
また、請求項8に記載の構成では、レバーに与えられるストロークに対してカムの回転角を大きくすることができるため、小さなカムにより巻枠の大きな開閉ストロークを得ることができる。
【0020】
また、請求項9に記載の構成では、巻枠とコイルとの間に緩みを持たせる状態まで閉鎖可能となり、このとき巻枠の下方側が閉じ状態となるため、巻上げ後のコイルの巻枠からの排出が容易に可能となる。
【0021】
また、請求項10に記載の構成では、共通の巻枠ユニットを用いた各周長変化率の異なるコイルの形成が容易に可能となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明における巻枠は、共通の縦軸周りに回転可能な巻枠ユニットに複数個配置する形態で電動機コイル形成装置に組込まれるのが望ましく、これにより複数の巻回部分を持つ各相に対応する周長変化率の異なるコイルを、単一の電動機コイル形成装置により形成することができる。また、巻枠の周面の少なくとも一部は、階段状の周面とするのが望ましく、これにより、多数のワイヤを平行状態の束として巻回する場合に、階段状の周面で各巻回部のずれを防いで、巻乱れをなくすことができる。そして、こうした巻乱れの防止は、電動機コアへの挿入時の配線密度の向上につながる。
【0023】
【実施例】
図1は、本発明の電動機コイル形成装置の巻枠ユニットの一実施例を示す斜視図である。巻枠ユニットAは、図示しない装置本体のフレームに垂直軸線回りに旋回自在に支持され、かつ回転駆動装置にユニット旋回中心軸1を介して連結された板状の旋回アーム2と、旋回アーム2の旋回中心軸1に対して所定量偏心した位置にインデックス軸3回りに回転自在かつ所定角度位置の割出し及び位置保持可能に垂下されたインデックスホルダ4と、インデックスホルダ4に各々昇降自在に係合支持して、全体としてインデックスホルダ4の周囲を取巻くように配置され、外側周面が下方で開き方向に若干傾斜した開閉自在な蒲鉾状の複数(図示の例において4個)のコイル巻枠5A〜5Dと、各コイル巻枠5A〜5Dの間に配置された開閉自在な蒲鉾状の渡線巻枠(図示の例において3個)6A〜6Cと、渡線巻枠の配置位置に相当する位置の一箇所に渡線巻枠に代えて配置された円筒形のリード巻枠7とから構成されている。
【0024】
図2に下方からみた平面配置を示すように、各コイル巻枠5A〜5Dは、インデックスホルダ4を取巻く周方向における同じ径方向位置に均等な間隔(図示の例において90°間隔)で配置され、渡線巻枠6A〜6Cとリード巻枠7がそれらの間に配置されている。また、後記するインデックス操作のために、各巻枠5A〜5D,6A〜6C,7の中心軸線Za〜Zhとインデックスホルダ4の中心軸線Zoとの軸間距離は、旋回アーム2の旋回中心軸1に対するインデックスホルダ4の中心軸線Zoの偏心量に一致する配置とされている。
【0025】
こうした配列の各巻枠5A〜5D,6A〜6C,7に対して、コイル形成ワイヤM/Wは、図2に2点鎖線で示すように、図示しない供給ノズルから繰出されて、先ずリード巻枠7に反時計回り方向に多重に巻付けられ、リード巻枠7とコイル巻枠5Aの間を通してコイル巻枠5Aの裏側(巻枠ユニットAにおける径方向内側)から反時計回り方向に多重に巻付けられ、次にコイル巻枠5Aと渡線巻枠6Aの間を通して渡線巻枠6Aの表面側(巻枠ユニットAにおける径方向外側)のみ時計回りに巻付けられ、渡線巻枠6Aとコイル巻枠5Bの間を通してコイル巻枠5Bの裏側から反時計回り方向に多重に巻付けられて、2個の周回部分を持つコイルの巻付けが完了する。更に多くの周回部分を持つコイルとする場合は、これに続けて同様の巻付けを繰り返し、最終的にコイル巻枠5Dに多重に巻付けられて一巡の巻き掛けを終わる巻き順とされている。なお、図2において、各軸線Za〜Zh周りの矢印は、巻付けのための各巻枠5A〜5D,6A〜6C,7の回転方向を示し、各巻枠の周面に付した矢印は、ワイヤM/Wの供給方向を示す。したがって、この方向は、上記周回順序に対して逆向きとなる。
【0026】
次に示す図3〜図15は、巻付け手順を順を追って段階的に示す。先ず、図3を参照して、ワイヤM/Wのリード部分の処理のために、リード巻枠7だけを下降させ、他の巻枠が巻き付けの障害とならないようにする。この下降と併せてリード巻枠7をインデックスホルダ4のインデックス軸3回りに回転させて、リード巻枠7の中心軸線Zaを旋回アーム2の旋回軸1と整列させるインデックス操作を行う。そして、図示しない供給ノズルから供給されるワイヤM/Wのリードを適宜の手段でリード巻枠7に固定し、巻枠ユニットAを下方からみて反時計回り方向(以下に記す回転方向は、全て下方からみた方向とする。)に旋回させることで、リード巻枠7を旋回アーム2の旋回によりリード巻枠7の中心軸線Za回りに回転させて、リード巻枠7へのワイヤM/Wの巻付けを開始する。この巻枠ユニットAの多重旋回によりリード巻枠7にワイヤM/Wが多重に巻付けられた段階を次の図4に示す。
【0027】
次に、図5を参照して、リード巻枠7の下方視で右側に隣接するコイル巻枠5Aを下降させる。次いで、図6に示すようにインデックスホルダ4を反時計回り方向に45°回転させ、下降状態のコイル巻枠5Aをインデックスする。
【0028】
次に、図7を参照して、リード巻枠7を上昇させながら、ワイヤM/Wの繰出し側をコイル巻枠5Aの裏側に通す渡線処理を行う。こうしてリード巻枠7の上昇と渡線処理が終わったところで、巻枠ユニットAを時計回り方向に旋回させることで、ワイヤM/Wのコイル巻枠5Aへの巻付けを行う。この旋回を多重旋回とすることで、図8に示す途中段階を経て、図9に示す巻付け完了状態となる。
【0029】
次に、図10を参照して、コイル巻枠5Aの下方視で右側に隣接する渡線枠6Aを下降させる。更に、図11に示すようにインデックスホルダ4を反時計回り方向に45°回転させ、下降状態の渡線枠6Aをインデックスする。次に、図12に示すようにコイル巻枠5Aを上昇させながら、ワイヤM/Wの繰出し側を渡線枠6Aの表側に導く渡線処理を行う。こうしてコイル巻枠5Aの上昇と渡線処理が終わったところで、巻枠ユニットAを反時計回り方向に旋回させることで、図13に示すように、ワイヤM/Wの渡線枠6Aへの巻付けを行う。
【0030】
以下同様に、図14に示すように、渡線枠6Aの下方視で右側に隣接するコイル巻枠5Bを下降させる。次いで、図15に示すように、インデックスホルダ4を反時計回り方向に45°回転させ、下降状態のコイル巻枠5Bをインデックスする。以下同様の手順を繰り返してリード巻枠7の反対側に位置する最後のコイル巻枠5DへのワイヤM/Wの巻付けを完了することで、先の図2に示す巻枠ユニットAへのコイルの巻付けが完成する。
【0031】
本発明の主題に係る構成は、上記の巻枠ユニットの各コイル巻枠5A〜5Dに適用されている。次に示す図16〜図18は、各コイル巻枠5の構造を示す。コイル巻枠5の側面を示す図16を参照して、このコイル巻枠5は、基本的には、その周長変化率を変更自在とされている。そのために、コイル巻枠5の内部に、図17及び図18に示すように、巻枠周面の一部の傾斜角度を変更する傾斜角度変更手段50が内蔵されている。コイル巻枠5は、図示の例では、巻枠を巻枠ユニットAのインデックスホルダ4に対して昇降自在に支持するための支持部材51と、支持部材51に固定した固定枠52と、固定枠52に開閉可動に連結した可動枠53と、可動枠53を固定枠52に対して開閉動させる傾斜角度変更手段としての開閉機構50から構成されている。コイル巻枠5の周長変化率の変更は、開閉機構50による固定枠52に対する可動枠53の開閉によりなされる。
【0032】
固定枠52と可動枠53は、それら相互の枢着点54回りの回転により開閉可能とされ、相互に引張手段55により閉鎖方向に付勢され、固定枠52と可動枠53との間に配置されたカム56の引張手段55による閉鎖方向への付勢力に抗する回転により開閉される。カム56は、回転角を増大させる歯車対57,58を介してレバー59に連結され、レバー59の回転により開閉される。
【0033】
こうした構成からなるコイル巻枠5は、前記のように巻枠ユニットAに複数個配置され、各コイル巻枠5の開閉方向は、巻枠ユニットAの中心軸(インデックスホルダの中心軸)に対する放射方向とされている。
【0034】
以下、この実施例における各コイル巻枠5の細部構成を説明する。図16を参照して、固定枠52は、インデックスホルダに昇降自在に支持するためのL字形の支持部材51の下方に延びるコ字枠状の枠部52aと、枠部52aの背面に添設された背面枠材52bを備える構成とされている。背面枠材52bには内側平面と平行に形成され、下方が開いたインサータ挿入用のスリットSが設けられている。コ字枠状の枠部52aの内側は開閉機構50の配置空間とされている。また、枠部52aの上方両外側は切欠かれ、可動枠53との枢止嵌合部とされている。
【0035】
可動枠53は、固定枠52と同幅の板状で、その上方から水平方向に延出し、上記固定枠52の枠部52aの上方両外側の切欠に嵌る二又状のヒンジ部を備える枠部53aと、枠部52aの背面に添設された前面枠材53bを備える構成とされている。前面枠材53bの表面側は、下方に向かって段階状に広がり、両側面と大きな円弧面でつながる階段状斜面とされている。
【0036】
こうした構成からなる固定枠52と可動枠53は、ヒンジ部でピン54により回転自在に連結されて、固定枠52に対して可動枠53の下側が接近・離反する動作により開閉自在とされている。
【0037】
開閉機構50は、可動枠53を固定枠52に閉鎖方向に付勢にすべく両端を固定枠52と可動枠53に支持した引張コイルスプリングからなる引張手段55と、固定枠52に回転自在に支持され、カム面を可動枠53の背面に対峙させた偏心扇形のカム56と、カム56の回転角を増大させるべく、一方がカム56と一体回転するように固定され、他方が固定枠52に回転自在に支持された歯車対57,58と、歯車58に固定されたレバー59とから構成されている。
【0038】
こうした構成からなるコイル巻枠5は、巻付け後のコイルを排出すべくインデックスホルダ4に昇降自在に設けられたプッシャ41(図18参照)によりレバー59を操作することで開閉操作される。次に示す図19〜図22は、コイル巻枠5の開閉操作を順を追って示す。図19に示す全開状態は、プッシャ41を最も上昇させた状態で得られる。この状態では、カム56のカム面の最大径部が可動枠53の背面に当接することで、可動枠53の前面側が下方に最大に開いた姿勢となる。このため、図19の右側に示すように、コイル巻枠5に巻付けられるワイヤM/Wの巻回部の周長は、各段ごとに異なる周長となり、これら周回部の周長変化率は、他の開き状態に対して最も大きくなる。この周長は、電動機コアのスロットに最初に挿入される相、例えばU相のコイルに適合する。また、この場合、周長が大きい側は、ステータコアの径方向内側とされ、コイルエンド部においてより径方向外側に押し退けるのに適している。
【0039】
次の図20に示す状態は、中間閉じ状態を示す。この状態は、プッシャ41を若干下降させた状態で得られる。この状態では、カム56のカム面の最大径部より若干小径の部分が可動枠53の背面に当接することで、可動枠53の前面側の開きが少ない姿勢となる。このため、コイル巻枠5に巻付けられるワイヤM/Wの巻回部の周長変化率は、全開状態より小さくなり、他の閉じ状態に対しては大きくなる。この周長は、コアのスロットに最初の相のコイルの挿入後に挿入される相、例えばV相のコイルに適合する。
【0040】
次の図21に示す状態は、閉じ状態を示す。この状態は、プッシャ41を更に下降させた状態で得られる。この状態では、カム56のカム面の更に小径の部分が可動枠53の背面に当接することで、可動枠53の前面側が全体として概ね垂直な姿勢となる。このため、コイル巻枠5に巻付けられるワイヤM/Wの巻回部の周長変化率は、最小又は0となる。この周長は、コアのスロットに最後に挿入され、コイルエンドをステータコアの径方向外側に倒す必要のない相、例えばW相のコイルに適合する。
【0041】
次の図22に示す状態は、全閉状態を示す。この状態では、カム56のカム面の最小径の部分が可動枠53の背面に当接することで、可動枠53の前面側が下方で完全に閉じた姿勢となる。このため、コイル巻枠5の周長は、各段ごとに巻付けられたワイヤの巻回部の周長より短くなり、ワイヤの巻回部とコイル巻枠5の周面との間に緩みが生じる。したがって、コイルはプッシャ41によりコイル巻枠5から押出し可能となる。この全閉状態は、コイル巻枠5からのコイル排出のためのポジションであり、コイルの巻付けとの関係でプッシャの下降操作では得られないが、上記各状態でのワイヤ巻付け完了後に、排出のために取られる共通のポジションである。
【0042】
この排出時には、前記のスリットsに受け具を構成するインサータツールのブレード部を挿入した状態でコイル巻枠5からインサータツールへの受け渡しによるコイルの排出が行われ、コイルの巻回部は、インサータツールのブレード部に引っ掛けられた状態でインサータツールに渡される。
【0043】
次に、前記コイルの形成とインサータツールへの受け渡しの関係を説明する。この電動機コイル形成装置によるコイル形成方法においては、コイル巻枠5を特定の周長変化率が得られる状態に設定してワイヤを巻付ける巻付け工程後に、巻き上がったコイルをインサータツールに移載する移載工程を単数又は複数回実施し、次に傾斜角度を前記特定の変化率より小さな変化率が得られる状態に設定してワイヤを巻付ける次の巻付け工程を実施し、巻き上がったコイルをインサータツールに移載する次の移載工程を単数又は複数回実施する繰り返しを基本とする。
【0044】
例えば、3相のコイルを形成する場合、先ずU相のコイルをコイル巻枠全開の状態で巻回し、巻上げ後のU相のコイルをプッシャによる押し下げでインサータツールに移載する。ここでインサータツールはU相のコイルを電動機コアまで移送し、コアのスロットにコイルを挿入する。そして、挿入されたU相のコイルのコイルエンド部分が、拡張具によりコアの外径方向に押し曲げ処理される。次に、コイル形成装置側では、V相のコイルをコイル巻枠中間閉じ状態にして巻回し、巻上げ後のV相のコイルをプッシャによる押し下げでインサータツールに移載する。ここでインサータツールはV相のコイルを電動機コアまで移送し、コアのスロットにコイルを挿入する。そして、挿入されたV相のコイルのコイルエンド部分が、拡張具によりU相のコイルのコイルエンド部分に押し付けるようにコアの外径方向に押し曲げ処理される。更に、コイル形成装置側では、W相のコイルをコイル巻枠閉じ状態にして巻回し、巻上げ後のW相のコイルをプッシャによる押し下げでインサータツールに移載する。ここでインサータツールはW相のコイルをコアまで移送し、コアのスロットにコイルを挿入する。こうした一連の作業によりコイルの巻回と、コアへの挿入と、その後のコイルエンドの中間成形がなされる。
【0045】
次に、図23〜図28を参照して、上記の工程中の移載工程を説明する。この工程では、先ず図23に示すように、巻枠ユニットAと心合わせして下方に待機させてあるインサータツールBに向けて巻枠ユニットAを下降させる。この下降によりコイル巻枠5とインサータツールBが結合した状態が、次の図24に示されている。このとき、インサータツールのブレード8がコイルの巻線内に挿入される。
【0046】
ここで適宜の手段によりコイル巻枠5を閉鎖する。それにより図25に示すようにコイルのワイヤM/Wとコイル巻枠5との間に緩みが生じる。そして、コイルの各巻回部が積み重なってブレード8の上方部分に載置状態となる。この状態を図26に示す。
【0047】
こうしてコイルが排出可能となったところで、次の図27に示すようにプッシャ41を下降させる。この操作で、コイルはその各巻線の内側を押されて、ブレード8の下方部分まで押込まれ、コイル巻枠5からインサータツールBへの移送が完了する。
【0048】
最後に、巻枠ユニットAを上昇させることで一連の操作を完了する。このときの巻枠ユニットAとインサータツールBの引離し状態が図28に示されている。なお、各コイル巻枠5の全開位置への復帰は、適宜の手段によるレバー59の回転操作によりなされる。かくして巻枠ユニットAは、図29に示すように、当初状態に復帰する。一方、インサータツールB側では、各ブレード8にコイルのワイヤM/Wの巻回部分が引掛け支持された状態に保持される。この後、インサータツールBは、電動機コアのスロットへのコイルの挿入操作に使用される。
【0049】
電動機コアのスロットへのコイルの挿入は、本発明の主題とは直接関係がないが、図30〜図32を参照して略説する。この操作は、図30に示すように、電動機コアCとインサータツールBを心合わせした状態で、両者を結合させることにより行われる。図30は結合段階を示しており、インサータツールBのブレード8が電動機コアCの内部に押込まれた状態を示す。この状態では、図32に電動機コアCのスロットC1とインサータツールBのブレード8の位置関係を示すように、コイルが挿入されるべきスロットC1内の空間以外は塞がれた状態になっている。なお、図32において、符号8aで示すブレードは、ブレード8に引掛け支持されたコイルの巻回部分をブレード8と協働して挟むことで、各巻回部分を電動機コアCのスロットC1への挿入に備えて位置決め保持するブレードを示す。
【0050】
この状態からインサータツールBの挿入コアB1を押上げると、ブレード8に引掛け支持されたコイルの各巻回部の径方向内側の部分(ブレードより内側の部分)が、挿入コアB1の周面角部に押され、各巻回部における径方向外側の部分(ブレードより外側の部分)が径方向外側への逃げ場のない状態で引上げられるため、電動機コアCの各スロットC1に押込まれて行き、最終的に挿入コアB1がブレード8の先端まで達したところで、ブレード8による拘束がなくなったコイルの各巻回部のブレード8より内側の部分が外側に逃げて電動機コアCのスロットC1へのコイルの挿入が完了する。この状態が図31に示されている。この押込み過程での各巻回部は、図30を参照して、インサータツールBのブレード8の上側に位置する巻回部からスロットC1に挿入されていくため、挿入後は、この部分がスロットの奥側(径方向外側)となり、ブレード8の下側に位置する巻回部は、スロットの入口側(径方向内側)となる。したがって、挿入後のコイルエンドの部分においても、同様の位置関係となる。この結果、コイルエンド部分では、径方向内側の軸方向張出し長さが径方向外側の軸方向張出し長さより長くなる。
【0051】
上記の操作は、例えば3相コイルの場合、図32を参照して、当初の操作をU相用の4つの巻回部を持つ連極コイルに適用されるものとして、1つおきの他の4つのスロットにも同様の挿入操作が行われる。また、V相用及びW相用のコイルについてもスロットの位置を異ならせて同様に行われる。この2番目以降の相用のコイルを挿入する際、先に挿入されたコイルのコイルエンド部分を径方向外側に逃がす意味で、コイルエンド部分の径方向外側への押し曲げ操作が、最初に挿入されたU相用のコイルと、次に挿入されたV相用のコイルについて、インサータツールBとは別異の工具を用いて行われる。この操作の際、各相用のコイル間については、U相用のコイルの押し曲げ量が大きく、V相用のコイルの押し曲げ量がこれより小さくなる。また、これらの相用のコイルの各巻回部分について言えば、スロットの内側に位置するワイヤほど外側に位置するワイヤより押し曲げ量が大きくなる。しかも、U相用のコイルの内側と外側の押し曲げ量の差は、V相用のコイルの内側と外側の押し曲げ量の差より大きくなる。そこで、こうした押し曲げ量の違いに各巻回部分の周長を合わせるべく、各相用のコイル間については平均周長を異ならせ、1つの相用のコイルの巻回部分間については、各ターンごとに周長を異ならせる巻回が行われる。本実施例において、各巻枠を開閉自在としているのは、各ターンごとの周長の変化割合をU、V,W相用間で異ならせるためである。
【0052】
以上詳述したように、この実施例の装置によれば、周長変化率の異なるコイルを共通の巻枠により形成することができる。したがって、この構成によれば、単一の電動機における各相のコイルの形成や、仕様の異なる複数種類の電動機用コイルを共通の巻枠により形成する電動機コイル形成装置の汎用化が可能となる。また、巻枠5の傾斜角度を変更する傾斜角度変更手段50を巻枠外に配置する必要がなくなるため、装置のコンパクト化が可能となる。また、巻枠5の外側に傾斜角度変更手段50のための余分なスペースを必要としないため、多数の巻枠の共通の巻枠ユニットAへの接近配置も可能となる。
【0053】
次に、巻枠5を実質的に固定枠52と可動枠53の2部材で構成することができるため、傾斜角度変更のための巻枠の複雑化を防ぐことができる。更に、コイル巻枠5の枢着点を中心とする開閉により、コイル巻枠5に巻付けられるコイル周回部分ごとの周長が異なるようになるため、単一の巻枠により周長変化率が異なる巻回が可能となる。このようなコイルの巻回部分における周長変化率の違いは、コイルを電動機コアのスロットに挿入した後のコイルエンド部分のワイヤの径方向への押し退けに有効である。
【0054】
また、レバー59に与えられるストロークに対してカム56の回転角を大きくすることができるため、小さなカム56により巻枠5の大きな開閉ストロークを得ることができる。また、前記全閉状態では、コイル巻枠5とコイルとの間に緩みを持たせる状態まで閉鎖可能となり、このときコイル巻枠5の下方側が閉じ状態となるため、巻上げ後のコイルのコイル巻枠5からの排出が容易に可能となる。
【0055】
かくしてこの実施例によれば、共通の巻枠ユニットAを用いた各周長変化率の異なるコイルの形成が容易に可能となる。そして、U、V、Wの各相に適した周長変化率のコイルを順次形成してインサータに移載する作業を、一連の工程として実施することができる。
【0056】
ところで、前記の実施例は、プッシャの押し下げにより各コイル巻枠を閉じ方向に作動させるものであるが、このプッシャの作動とコイル巻枠の開閉の関係を逆にすることもできる。次に示す実施例は、プッシャの押し下げにより各コイル巻枠を開き方向に作動させる例である。
【0057】
次に示す図33は、巻枠ユニットAの下方部分の構造を断面で示す。この巻枠ユニットAにおけるコイル巻枠5は、基本的には、先の実施例と同様の構成のものであるので、相当する部材に同様の参照符号を付して説明に代え、以下、相違点のみ説明する。
【0058】
この実施例のカム56は、回転角を増大させると共にカム56とレバー59の回転方向を合わせる歯車列57,57A, 58を介してレバー59に連結され、レバー59の回転により開閉される。この歯車列は、カム56と一体回転するように固定された歯車57と、固定枠52に回転自在に支持された歯車58と、それらの間に介挿されたアイドラ歯車57Aから構成されている。なお、図33において、左半分はコイル巻枠5の全閉状態、右半分は同じく全開状態を示す。
【0059】
図34はコイル巻枠5と、プッシャ41と、インサータツールのブレード8の関係を平面視で示す。図示するように、コイル巻枠5のスリットsにインサータツールのブレード8が挿入された状態で、プッシャ41の突起41aはブレード8のスリット81内に入り込む突出量とされており、レバー59は、その全回転領域で、ブレード8のスリット81を越えて先端がプッシャ41の突起41aと軸方向に重なる長さとされている。この関係から、レバー59は、プッシャ41の突起41aによっても、またインサータツールのブレード8によっても操作可能な関係にある。
【0060】
次に示す図35〜図42は、この実施例におけるコイル形成からインサータツールへのコイルの受渡しまでの一連の操作を順を追って示す。図35に示す段階は、作業当初の巻枠ユニットAの状態を示す。この状態は、コイル巻枠5の全閉状態であり、プッシャ41を最も上昇させた状態にある。この状態では、カム56のカム面の最小径部が可動枠53の背面に当接することで、可動枠53の前面側が下方で狭まった姿勢となる。
【0061】
上記の状態からプッシャ41を下降させ、図36に示すように、プッシャ41の周面から径方向に張出す突起部41a(図34参照)がレバー59の先端に当接する位置に達すると、それ以降のプッシャ41の下降量に応じてカム56のカム面の最小径部より大径の部分が可動枠53の背面に当接するようになり、それに応じて可動枠53の前面側が次第に下方開き状態の姿勢に変化する。このため、コイル巻枠5に巻付けられるワイヤの巻回部の周長変化率が、プッシャ41の下降量に応じて調整可能となる。
【0062】
こうしてコイル巻枠5の開閉度によりコイルの周長変化率の設定がなされたところで、図37に示すようにプッシャ41を巻線操作の障害とならない位置に退避させるべく上昇させ、図38に示すように巻線操作に入る。この操作の詳細は、図1〜図15を参照して先述したとおりである。
【0063】
巻線操作が完了したところで、今度は、巻枠ユニットAと心合わせして下方に待機させてあるインサータツールBに向けて巻枠ユニットAを下降させる。この下降によりコイル巻枠5とインサータツールBが結合した状態が、次の図39に示されている。この段階では、インサータツールBのブレード8の先端部分に形成したスリット81の底部がレバー59の先端に当接した状態となる。
【0064】
上記の状態から更に巻枠ユニットAを下降させると、次の図40に示すように、レバー59の先端がインサータツールのブレード8に押されて回転し、それに連れてカム56が可動枠閉鎖方向に回転する。このときの可動枠閉鎖方向への回転は、通常の開閉操作時より更に大きなものとする。この操作により、図の左半分に示すように、インサータツールのブレード8がコイルの巻線内に挿入されると共に、コイル巻枠5が閉鎖され、それによりコイルのワイヤM/Wとコイル巻枠5との間に緩みが生じる。
【0065】
こうしてコイルが排出可能となったところで、次の図41に示すようにプッシャ41を再度下降させる。このプッシャ41の下降時には、レバー59の先端がブレード8による押上げで、通常の開閉度調整のための閉鎖状態より大きく回転し、プッシャ41の突起の移動軌跡外に逃げているため、プッシャ41の下降によるコイルの押出しが可能となる。この操作で、コイルはその各巻線の内側を押されて、コイル巻枠5からインサータツールBに移送される。
【0066】
最後に、巻枠ユニットAを上昇させることで一連の操作を完了する。このときの巻枠ユニットAとインサータツールBの引離し状態が図42に示されている。この状態で巻枠ユニットAは当初状態に復帰している。一方、インサータツールB側では、各ブレード8にコイルのワイヤM/Wの巻回部分が引掛け支持された状態に保持される。この後、インサータツールBは、電動機コアのスリットへのコイルの挿入操作に使用される。
【0067】
なお、この実施例において、プッシャ41によるコイル押出しの際のレバー59との干渉を避ける具体的構成、すなわち、プッシャ41の突起部41aの下降軌跡の外側へレバー59を退避のための具体的構成を省略しているが、このための簡単な構成例を挙げると、図33を参照して、歯車58のアイドラ歯車57Aとの噛合い部の最後の部分を欠歯とし、巻枠閉鎖位置からのインサータツールBのブレード8の押上げによるレバーの更なる回転が、コイル巻枠5の開閉に関係のない無効回転(アイドラ歯車57Aを回転させない回転)となるようにする構成例がある。この場合、巻枠ユニットAとインサータツールBの引離し時に、レバー59をプッシャ41によるコイル巻枠の開閉度調整可能位置へ復帰させる手段としては、格別な手段なしで、歯車58がレバー59の重量等の偏荷重により重力で噛合い可能位置に戻る方式や、この位置に戻る捩りスプリングを歯車58の軸周に配する等の方式を採ることができ、これによりレバー59の先端位置は、プッシャ59の突起部59aの移動軌跡内に復帰する。
【0068】
この実施例によれば、先の実施例と異なり、巻枠ユニットAとインサータツールBの結合による移載工程において、インサータツールBのブレード8によるコイル巻枠5の完全閉鎖が可能となる利点が得られる。
【0069】
以上本発明を、実施例に基づき詳述したが、本発明は実施例に限るものではなく、特許請求の範囲に記載の事項の範囲内で、種々の具体的形態を変更して実施可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の適用に係る実施例の巻枠ユニットの斜視図である。
【図2】実施形態の巻枠ユニットの平面図である。
【図3】巻枠ユニットのリード巻付け段階の作動を示す斜視図である。
【図4】巻枠ユニットのリード巻付け完了段階の作動を示す斜視図である。
【図5】巻枠ユニットのコイル巻枠下降段階の作動を示す斜視図である。
【図6】巻枠ユニットのコイル巻枠インデックス段階の作動を示す斜視図である。
【図7】巻枠ユニットのリード巻枠からコイル巻枠への渡線段階の作動を示す斜視図である。
【図8】巻枠ユニットのコイル巻枠への巻付け途中段階の作動を示す斜視図である。
【図9】巻枠ユニットのコイル巻枠への巻付け完了段階の作動を示す斜視図である。
【図10】巻枠ユニットの渡線巻枠下降段階の作動を示す斜視図である。
【図11】巻枠ユニットのコイル巻枠からリード巻枠への渡線段階の作動を示す斜視図である。
【図12】巻枠ユニットのコイル巻枠上昇段階の作動を示す斜視図である。
【図13】巻枠ユニットの渡線巻枠への巻付け完了段階の作動を示す斜視図である。
【図14】巻枠ユニットの渡線巻枠からコイル巻枠への渡線段階の作動を示す斜視図である。
【図15】巻枠ユニットの渡線巻枠上昇段階の作動を示す斜視図である。
【図16】コイル巻枠の側面図である。
【図17】コイル巻枠の断面図である。
【図18】コイル巻枠の構造を示す部分断面斜視図である。
【図19】コイル巻枠の全開状態を示す断面及び側面図である。
【図20】コイル巻枠の中間閉じ状態を示す断面及び側面図である。
【図21】コイル巻枠の閉じ状態を示す断面及び側面図である。
【図22】コイル巻枠の全閉状態を示す断面及び側面図である。
【図23】巻枠ユニットとインサータツールの受渡し準備段階を示す説明図である。
【図24】巻枠ユニットとインサータツールの結合段階を示す説明図である。
【図25】巻枠ユニットの巻枠閉じ段階を示す説明図である。
【図26】巻枠ユニットからのコイル離脱段階を示す説明図である。
【図27】巻枠ユニットのプッシャ押し下げ段階を示す説明図である。
【図28】巻枠ユニットのインサータツールからの戻り段階を示す説明図である。
【図29】巻枠ユニットの巻枠開き段階を示す説明図である。
【図30】電動機コアへのインサータツールの結合状態を示す作動説明図である。
【図31】電動機コアへのコイル挿入状態を示す作動説明図である。
【図32】電動機コアのスロットとインサータツールのブレードの結合状態での位置関係を示す断面図である。
【図33】他の実施例の巻枠ユニットの断面図である。
【図34】コイル巻枠とプッシャとインサータツールのブレードとの関係を示す断面図である。
【図35】巻枠ユニットの原位置状態を示す作動説明図である。
【図36】巻枠ユニットの開度調整状態を示す作動説明図である。
【図37】巻枠ユニットの巻線待機状態を示す作動説明図である。
【図38】巻枠ユニットの巻線状態を示す作動説明図である。
【図39】巻枠ユニットとインサータツールの結合状態を示す作動説明図である。
【図40】巻枠ユニットの巻枠閉鎖状態を示す作動説明図である。
【図41】巻枠ユニットのコイル離脱開始状態を示す作動説明図である。
【図42】巻枠ユニットを上昇させた動作完了状態を示す作動説明図である。
【符号の説明】
M/W ワイヤ
A 巻枠ユニット
5 コイル巻枠(巻枠)
50 開閉機構(傾斜角度変更手段)
52 固定枠
53 可動枠
54 ピン(枢着点)
55 コイルスプリング(引張手段)
56 カム
57,58 歯車対
59 レバー
Claims (10)
- ワイヤを巻回して電動機コイルを形成する方法において、
コイル巻回部の周回ごとの周長変化の割合を開閉により変更可能な巻枠と、巻上げ後のコイルを載置する受け具とを用い、前記巻枠を特定の周長変化の割合が得られる開閉度に設定してワイヤを巻付ける巻付け工程と、該巻付け工程により巻き上がったコイルを前記受け具に移載する移載工程と、前記巻枠を前記特定の周長変化の割合とは異なる周長変化の割合が得られる開閉度に設定してワイヤを巻付ける次の巻付け工程と、巻き上がったコイルを前記受け具に移載する次の移載工程とを適宜繰り返して、所要相数のコイルを形成することを特徴とする電動機コイル形成方法。 - 前記特定の周長変化の割合が得られる開閉度は、異なる周長変化の割合が得られる開閉度より常に大きく設定される、請求項1記載の電動機コイル形成方法。
- 前記巻枠は、共通の巻枠ユニットに複数配置されたものであり、前記巻付け工程は、複数の巻枠の1つごとにワイヤを巻付ける工程の繰り返しよりなる、請求項1又は2記載の電動機コイル形成方法。
- 任意の軸線回りに回転駆動され、コイルを形成するワイヤが周面に複数周回並べて巻付けられる巻枠を備える電動機コイル形成装置において、
前記巻枠は、その周面の少なくとも一部に、前記任意の軸線に対する傾斜角度を変更自在な周面を備え、各周回ごとの周長変化の割合を前記傾斜角度の変更により変更自在とされたことを特徴とする電動機コイル形成装置。 - 前記巻枠の内部に、巻枠の傾斜角度を変更する傾斜角度変更手段が内蔵された、請求項4記載の電動機コイル形成装置。
- 前記巻枠は、固定枠と、該固定枠に対して開閉可能な可動枠と、該可動枠を固定枠に対して開閉動させる開閉機構とを備え、巻枠の傾斜角度の変更は、開閉機構による固定枠に対する可動枠の開閉によりなされる、請求項4又は5記載の電動機コイル形成装置。
- 前記固定枠と可動枠は、それら相互の枢着点回りの回転により開閉可能とされ、相互に引張手段により閉鎖方向に付勢され、固定枠と可動枠との間に配置されたカムの引張手段による閉鎖方向への付勢力に抗する回転により開閉される、請求項6記載の電動機コイル形成装置。
- 前記カムは、回転角を増大させる歯車対を介してレバーに連結され、該レバーの回転により開閉される、請求項7記載の電動機コイル形成装置。
- 前記巻枠は、巻き上がったコイルを受け具に移載すべく、コイルの周長より短い周長まで受け具と結合される側を閉じ状態に閉鎖可能とされた、請求項6、7又は8記載の電動機コイル形成装置。
- 前記巻枠は、共通の巻枠ユニットに複数配置され、各巻枠は、巻枠ユニットの旋回軸を含むその近傍に、前記任意の軸線を設定可能とされた、請求項4〜9のいずれか1項記載の電動機コイル形成装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003206929A JP2005065346A (ja) | 2003-08-08 | 2003-08-08 | 電動機コイル形成方法及び装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN105071611A (zh) * | 2015-08-25 | 2015-11-18 | 安徽皖新电机有限公司 | 电机绕线成套装置 |
CN117595596A (zh) * | 2024-01-19 | 2024-02-23 | 骏日科技(深圳)有限公司 | 一种三联串线圈的生产装置及方法 |
-
2003
- 2003-08-08 JP JP2003206929A patent/JP2005065346A/ja active Pending
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