JP2005062074A - Dnaチップおよび標的dnaの検出方法。 - Google Patents

Dnaチップおよび標的dnaの検出方法。 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、優れたハイブリダイゼーション選択性を有するDNAチップを提供することを課題とする。しかもプローブとなるDNA鎖の選択、準備が簡便で、DNA鎖の導入密度の制御が可能なDNA用チップ用基板を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係るDNAチップは、基板表面に、ポリマーを介してDNA鎖が固定されたDNAチップであって、該DNA鎖は1本鎖のプローブDNA部分と2本鎖のリンカーDNA部分とからなり、前記DNA鎖は前記リンカーDNA部分側で前記ポリマーと結合し、前記ポリマーは基板結合基を介して前記基板の少なくとも1つの表面に固定されていることを特徴としている。
【選択図】なし


Description

本発明は、DNAチップおよび該DNAチップを用いる標的DNAの検出方法に関する。
生物の遺伝子機能を効率的に解析する手段としてDNAチップが開発されている。DNAチップは基板上にDNAを固定化しハイブリダイゼーションを利用して様々な遺伝子の発現情報を得ることが可能なデバイスである。DNAチップの製造においては、基板にプローブとなるDNAを固定化する必要がある。しかし、DNAの基板表面への固定化は非常に難しくこれまでも様々な方法が提案されているが、基板表面で機能するDNAを効率よく導入することができず、ハイブリダイゼーションの選択性、効率の低下が課題となっている。また、固定化技術が煩雑で、コスト面の問題もあった。
たとえば、DNAの固定化法として、チオールを一本鎖DNAに結合させ、チオール化した一本鎖DNAを、金属基板に固定化する方法が試みられている。しかし、この方法では、固定化したDNA鎖が基板との親和性のため倒れてしまい、選択性が低く、ハイブリダイゼーションの効率も高くないという問題があった。
一方、チオール化一本鎖DNAを固定化した後に、アルカンチオールを用いて非特異的吸着を起こして表面に存在している一本鎖DNAを除去して表面被覆率、活性度を高めるという試みもなされている(非特許文献1)。しかし、アルキル基の導入には多大な手間がかかるという問題があった。
また、基板表面に2重鎖部分と1重鎖部分とを有するDNA鎖を二重鎖部分側で基板に固定化する試みもなされている(特許文献1)。この方法は、2重鎖部分を密にすることでDNA鎖の横倒れを防止するとともに、二重鎖のみを有するDNA鎖を含有させて、基板から離れた場所では一重鎖部分の周囲に空間を生じさせてハイブリダイズ用に利用しやすくするものである。しかしこの方法では、二重鎖のみのDNAと一重鎖および二重鎖を有するDNAとをあらかじめ区別して調製し固定する必要があるなど工程が煩雑であるという問題がある。また、2段階目の固定化に用いるアルカンチオール系の試薬は表面における固定化力がチオール化DNAよりも強いために基板表面に固定化されたチオール化DNAと交換反応をおこしやすい。
このような問題を解決すべく、本件発明者らは、プローブDNAをポリマーに結合し、該ポリマーが金基板に固定化されたDNAチップを開発している(非特許文献2)。この方法によれば、ポリマーが疎水性を有し、DNA鎖が親水性となっているため、DNA鎖は基板表面に倒れずに溶液側に露出させることができる。また、ポリマーへのDNAの導入を容易に制御できるため、DNA鎖の基板への導入密度を容易に制御できるという利点がある。
しかし、この方法の場合、プローブの種類に応じた数のポリマーを準備する必要があり、プローブの配列の種類の選択が容易に行えないという問題があった。また、ポリマーとDNA鎖とを結ぶリンカーが短く、プローブの自由度が制限されるという課題もあり、さらなるハイブリダイゼーションの選択性の向上が望まれていた。
特開2003−43037号公報 J.Am.Chem.Soc.1998,120,9787−9792 Analytical Sciences,January 2003,vol.19,177−179
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、優れたハイブリダイゼーション選択性、効率を有するDNAチップを提供することを課題とする。また、プローブとなるDNA鎖の導入が簡便で、しかもDNA鎖の導入密度の制御が容易なDNAチップを提供することを課題とする。
本件発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究し、ポリマーを介してDNA鎖を基板に結合させるとともに、ポリマーとプローブDNAとの間に、親水的なDNAリンカーを介在させることにより、ハイブリダイゼーションの選択性、効率を飛躍的に向上させることができることを見いだした。しかも、DNA鎖の導入密度の制御が可能となるとともに、1つのポリマー主鎖に少なくとも1種類のリンカーDNAを用いるだけで、無限の種類のプローブDNA配列を備えさせることができることを見いだし本件発明を完成するに至った。
すなわち、本件発明は以下を含む。
〔1〕基板表面に、ポリマーを介してDNA鎖が固定されたDNAチップであって、該DNA鎖は1本鎖のプローブDNA部分と2本鎖のリンカーDNA部分とからなり、
前記DNA鎖は前記リンカーDNA部分側で前記ポリマーと結合し、前記ポリマーは基板結合基を介して前記基板の少なくとも1つの表面に固定されていることを特徴とするDNAチップ。
〔2〕前記リンカーDNA部分が、共有結合によりポリマーに結合していることを特徴とする〔1〕に記載のDNAチップ。
〔3〕前記リンカーDNA部分の塩基対数が、10以上150以下であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のDNAチップ。
〔4〕前記ポリマーが、疎水性の構成単位からなるポリマー主鎖を有することを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のDNAチップ。
〔5〕前記ポリマーが、官能基を有することを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のDNAチップ。
〔6〕前記官能基が、アニオン性官能基を含むことを特徴とする〔5〕に記載のDNAチップ。
〔7〕官能基の合計数に対して、アニオン性官能基が50%以上含まれることを特徴とする〔6〕に記載のDNAチップ。
〔8〕前記ポリマーが、前記基板結合基中の硫黄原子を介して基板に被覆されていることを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のDNAチップ。
〔9〕下記の工程からなる、標的DNAの検出方法:
(1)請求項1〜8のいずれかに記載のDNAチップ表面のポリマーが結合されている表面に、標的DNAを接触させる工程(工程1)、
(2)プローブDNA部分にハイブリダイズした標的DNAを検出する工程(工程2)。
〔10〕前記工程1において、DNAチップ中のポリマーがアニオン性官能基を有し、標的DNAの接触を塩基性水溶液下で行うことを特徴とする〔9〕に記載の方法。
〔11〕前記工程1を、塩強度が1M以下で行うことを特徴とする〔9〕または〔10〕に記載の方法。
〔12〕前記工程1を、25〜50℃の温度範囲で行うことを特徴とする〔9〕〜〔11〕のいずれかに記載の方法。
本発明によれば、ポリマーを介してDNA鎖を基板に結合させるとともに、ポリマーとプローブDNAとの間に、親水的なDNAリンカーを介在させることにより、ハイブリダイゼーションの選択性、効率を向上させることができる。また、DNA鎖の導入密度の制御が可能となる。さらに、1つのポリマー主鎖に少なくとも1種類のリンカーDNAを用いるだけで、無限の種類のプローブDNA配列を備えさせることができる。また、本発明によれば、DNAチップを使用後、脱ハイブリダイゼーションすることで、基板を使用前の状態に簡便に戻すことができるのでDNAチップの再利用が可能である。
本発明に係るDNAチップは、基板表面に、ポリマーを介してDNA鎖が固定されたDNAチップであって、該DNA鎖は1本鎖のプローブDNA部分と2本鎖のリンカーDNA部分とからなり、前記DNA鎖は前記リンカーDNA部分側で前記ポリマーと結合し、前記ポリマーは基板結合基を介して前記基板の少なくとも1つの表面に固定されている。
DNA鎖
本発明のDNAチップのDNA鎖は、長鎖DNAと、長鎖DNAの配列中のリンカー部分の配列と相補的な配列を有する短鎖DNAとが結合してなる。1本鎖のプローブDNA部分は標的DNAとハイブリダイゼーションする部位であり、2本鎖のリンカーDNA部分はリンカーとしてポリマーに結合している。前記リンカーDNA部分は、共有結合によりポリマーに結合していることが好ましい。
リンカーDNA部分の塩基対の数は、たとえば、下限値が、好ましくは10塩基(mer)以上、さらに好ましくは12塩基(mer)以上、より好ましくは15塩基(mer)以上であることが望ましい。また、塩基対の数の上限値は、好ましくは150塩基(mer)以下、さらに好ましくは100塩基(mer)以下、より好ましくは40塩基(mer)以下の範囲にあることが望ましい。
リンカーDNA部分が上記範囲の長さを有すると、プローブDNA部分の空間的な自由度を確保することができ、ハイブリダイゼーションを効率的に行うことができる。また、塩基対数が上記範囲にあると、常温(たとえば、20℃程度)において使用時に塩基対の融解を起こすことがない。なお、T/Aのみで構成される塩基対の数が、10merの場合、融解温度(Tm)は27℃、12merの場合38℃、15merの場合50℃である(ただし、塩強度が0.3Mの場合)。また、G/Cに置き換えることでTmは上昇する。
さらに、上記範囲の長さを有すると、リンカー部分に一定量以上の負電荷を保持させることができる。DNAは通常負の電荷を有するが、本件発明では、リンカーDNA部分が二本鎖となっているため、電荷が、理論上、通常の一本鎖DNAの2倍存在している。このため、ポリマーがアニオン性官能基を有する場合、リンカーDNAが上記範囲の塩基対数を有することにより、電荷の反発が一層増大し、基板上におけるDNA鎖の転倒をより有為に防止することができる。しかも、非特異的吸着をより排除し、ハイブリダイゼーションの選択性を向上させることができる。
リンカーDNA部分の塩基配列は特に限定されないが、長鎖DNAと短鎖DNAとが結合する配列中のG/C含有量が、好ましくは13%以上、さらに好ましくは13%以上26%以下であることが好ましい。G/C含有量が上記範囲にあると長鎖DNAと短鎖DNAとのハイブリダイゼーションを特異的に行うことができる。
また、長鎖DNAと短鎖DNAとが結合する配列の両末端の塩基対はG/CまたはC/Gであることが好ましい。このような配列とすることにより、長鎖DNAと短鎖DNAとの結合のズレを防止できる。
プローブDNA部分の塩基対の数は、標的DNAの長さにもより、限定されないが、通常、たとえば6塩基(mer)〜100塩基(mer)の範囲にあることが好ましい。
ポリマー
本発明で用いるポリマーは、ポリマー主鎖にDNA鎖および基板結合基が結合している。また、ポリマー主鎖に官能基が結合していてもよい。ポリマー主鎖および官能基について具体的に示す。
<ポリマー主鎖>
本発明で用いられるポリマーにおいて、主鎖は疎水性であることが好ましい。疎水性のポリマー主鎖としては、たとえば、炭素−炭素結合による構成単位を有するものであることが好ましい。このような炭素−炭素結合からなる構成単位としては、下記式(I)で表されるものが挙げられる。
Figure 2005062074
式(I)中、R1、R2、R3、R4はそれぞれ同一又は異なってもよく、水素原子、官能基、DNA鎖または基板結合基を表す。該構成単位は、同一または異なる単位が連続して、ポリマーを形成することができる。
本発明では、ポリマーは、上記炭素−炭素結合による構成単位以外のその他の構成単位を有していてもよい。
主鎖のその他の構成単位としては、たとえば、エチレンオキシ基−(C2O)n−(nは整数)などのアルキレンオキシ基〔−(CmO)−、mは1〜10の整数を表す。〕などが挙げられる。なお、その他の構成単位においても、側鎖として上記R1、R2、R3、R4と同様のものが結合しうる。
ポリマー主鎖中の前記炭素−炭素結合による構成単位と、その他の構成単位との含有割合(炭素−炭素結合による構成単位:その他の構成単位)は、ポリマー主鎖中、好ましくは50:50〜100:0(モル/g−ポリマー)、さらに好ましくは80:20〜100:0(モル/g−ポリマー)以上、より好ましくは90:10〜100:0(モル/g−ポリマー)以上、特に好ましくは100:0(モル/g−ポリマー)であることが望ましい。
炭素−炭素結合による構成単位が上記の範囲にある場合、ポリマー主鎖が疎水性を有しDNAが親水性を有することとなるため、水溶液中でハイブリダイゼーションを行う際、基板表面でDNAのみを水溶液側に露出させることができる。このため、ハイブリダイゼーションを高効率で実施することができる。
<官能基>
本発明で用いられるポリマーは、DNA鎖との結合、基板結合基との結合に用いられた官能基以外に、これらと結合せずに残存した官能基(単に「官能基」という場合がある。)を有していてもよい。該官能基が存在すると、ポリマー主鎖とDNA鎖との反発などにより、標的DNAとのハイブリダイゼーション選択性等を向上させることができる。
ポリマー上の官能基の種類は、該官能基が、DNA鎖、基板結合基を誘導する化合物とポリマーとを結合させる役割を有するため、DNA鎖側の結合基、基板結合基側の結合基の種類にも依存する。たとえば官能基としてはアニオン性官能基、ノニオン性官能基、カチオン性官能基が挙げられる。これらのうちでは選択性の向上の観点からは、アニオン性官能基またはノニオン性官能基が含まれることが好ましく、アニオン性官能基がさらに好ましい。また、ハイブリダイゼーション効率の観点からはカチオン性官能基またはノニオン性官能基が含まれることが好ましく、カチオン性官能基がより好ましい。SNPs等の一塩基置換配列の検出には、アニオン性官能基またはノニオン性官能基が含まれることが好ましく、アニオン性官能基がさらに好ましい。
アニオン性官能基
前記アニオン性官能基としては、pHが中性付近およびアルカリ性で負に帯電するような官能基であればいかなるものも使用しうる。
このようなアニオン性官能基としては、具体的には、たとえば、カルボキシル基(-COOH基)、スルホン酸基(-SO3H基)、スルフィン酸基(-SO2H基)、リン酸基(-OPO32基(またはそのモノアルキルエステル基、そのジアルキルエステル基))、硫酸基(-OSO3H基)、フェノール性水酸基などが挙げられる。
これらのうちでは、カルボキシル基が好ましい。特に、DNA鎖との結合には、DNA鎖の末端がアミノ基である場合、カルボキシル基を用いることが好ましい。
これらのアニオン性官能基は、pHが中性付近およびアルカリ性で負に帯電するのであれば、それぞれその塩、たとえばアルカリ金属塩(たとえばNa、K塩)、アンモニウム塩(たとえば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン等との塩)の形をとっていてもよい。
ノニオン性官能基
前記ノニオン性官能基としてはアルキル基、水酸基、アルキルオキシ基など、中性又はアルカリ性の水溶液中でイオン性を示さない基が挙げられる。
カチオン性官能基
前記カチオン性官能基としては、−NH3 、−NH2(CH3、−NH(CH32 、−N(CH33 など、pHが中性付近およびアルカリ性で正に帯電する基が挙げられる。
前記ポリマーが残存する官能基を含む場合、残存する全官能基のモル数に対して、アニオン性官能基が、好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは、官能基がすべてアニオン性官能基であることが望ましい。
また、官能基を含む場合、ポリマー中の前記アニオン性官能基と前記DNA鎖との存在割合〔アニオン性官能基:DNA鎖(モル/g−ポリマー)〕は、好ましくは50:1〜500:1、さらに好ましくは100:1〜300:1の範囲にあることが望ましい。DNA鎖の存在割合を疎にすることで、プローブDNAの空間的自由度を確保できるので、ハイブリダイゼーション効率的を向上させることができる。
官能基としてアニオン性官能基以外の官能基を含む場合、ノニオン性官能基、カチオン性官能基が挙げられるが、DNA鎖との反発を維持するためにはノニオン性官能基であることがより好ましい。
DNAは通常アニオン性を有するが、DNA鎖のリンカーDNA部分は二本鎖構造を採っているため、一本鎖構造の2倍のアニオンチャージを有している。ポリマー部分がアニオン性官能基を有していると、リンカーDNA部分とポリマーのアニオン性官能基との反発が相乗的に大きくなり、DNA鎖の転倒を実質的に防止できる。また、特異的吸着と非特異的吸着において、静電反発による非特異的吸着の排除能がより高まる。
すなわち、ポリマーにアニオン性を付与することで、ハイブリダイゼーションの選択性を著しく向上させることができる。
本発明で用いるポリマーの重量平均分子量は、用いるDNAチップのサイズ、密度などにより異なり限定されないが、通常、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定した重量平均分子量(Mw)が、5万〜150万の範囲にあることが好ましい。
<ポリマーの製造方法>
本発明で用いることのできるポリマーは、市販品又は公知の方法によってモノマーの(共)重合により製造することができる。モノマーに存在する官能基は、DNA鎖、基板結合基を誘導する化合物との結合に用いられるとともに、結合に用いられずに残存して、ポリマーの官能基となってもよい。
アニオン性モノマー
たとえば、アニオン性官能基を有するポリマーについては、アニオン性モノマーを含むモノマーの重合により得ることができる。
このようなアニオン性モノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、イタコン酸モノアルキル(例えばイタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチルなど)、マレイン酸モノアルキル(例えばマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなど)、シトラコン酸などのカルボキシル基を有するモノマー;
ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルベンジルスルホン酸、アクリロイルオキシアルキルスルホン酸(例えば、アクリロイルオキシメチルスルホン酸、アクリロイルオキシエチルスルホン酸、アクリロイルオキシプロピルスルホン酸など)、メタクリロイルオキシアルキルスルホン酸(例えば、メタクリロイルオキシメチルスルホン酸、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸など)、アクリルアミドアルキルスルホン酸(例えば、2-アクリルアミド-2-メチルエタンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルブタンスルホン酸など)、メタクリルアミドアルキルスルホン酸(例えば、2-メタクリルアミド-2-メチルエタンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクリルアミド-2-メチルブタンスルホン酸など)などのスルホン酸基を有するモノマー;
ビニルスルフィン酸、ビニル硫酸、ビニルリン酸、スチレンリン酸、ビニルフェノール、グルタミン酸、アスパラギン酸などが挙げられる。
これらのうちでは、カルボキシル基を有するモノマーであることが望ましい。
DNA鎖、基板結合基の、ポリマーとの結合部位がアミノ基である場合、該アミノ基との結合のためには、ポリマー中にカルボキシル基、アルデヒド基、イソシアナート基(−NCO)、イソチオシアナート基(−NCS)が存在することが好ましい。
このため、アニオン性モノマーとしては、カルボキシル基を有するモノマーを用いることが好ましい。また、スルホン酸基、スルフィン酸基、硫酸基、リン酸基等を有するモノマーを用いる場合は、カルボキシル基、アルデヒド基、イソシアナート基(−NCO)またはイソチオシアナート基(−NCS)を有するモノマー(結合用モノマー)を共重合させることが好ましい。
アルデヒド基を有するモノマーとしては、前記カルボキシル基を有するモノマーのカルボキシル基がアルデヒド基であるモノマーが挙げられる。
イソシアナート基を有するモノマーとしては、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらの結合用モノマーをアニオン性モノマーと共重合する場合、結合用モノマーの含有割合は、後述するように、結合させるDNA鎖、基板結合基の数に対応する割合を用いればよい。
アニオン性官能基を有するポリマー
このようなアニオン性モノマーを重合させて得られるアニオン性官能基を有するポリマーのうち、カルボキシル基を有するポリマーの具体例を示す。ポリマー中のカルボキシル基に前記DNA鎖および基板結合基を結合させることができる。
本発明に用いることのできるカルボキシル基を有するポリマーとしては、たとえば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリクロトン酸、ポリイタコン酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸モノメチル、ポリイタコン酸モノエチル、ポリマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、ポリシトラコン酸などのカルボキシル基を有するポリマーが挙げられる。
これらの酸は、たとえばNa、Kなどのアルカリ金属またはアンモニウムイオンの塩であってもよい。
本発明では、さらに、アニオン性官能基を有するモノマーと、下記のノニオン性官能基を有するモノマー、カチオン性官能基を有するモノマーとを共重合させてもよい。
ノニオン性モノマー
ノニオン性モノマーとしては、たとえば、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド類;
アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、酢酸アリル、アセト酢酸アリル、トリメチル酢酸ビニル、ビニル蟻酸、ヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、メタクリル酸ビニル、オクタン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ピバル酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ヘキサヒドロフタル酸モノ2-(メタクリロイルオキシ)エチル、フタル酸モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチル、安息香酸ビニル、p-ビニル安息香酸、酪酸ビニル、カプリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、クロトン酸ビニル、デカン酸ビニル、けい皮酸ビニル、アリルブチレート安息香酸アリル、n-酪酸アリル、n-カプリン酸アリル、n-カプロン酸アリル、エナント酸アリル、ヘプタン酸アリル、イソフタル酸アリル、イソチオシアン酸アリル、イソ吉草酸アリル、n-吉草酸アリルなどのエステル類;
ビニルメチルケトンなどのケトン類;
ビニルブチルエーテル、アリルエーテル、アリルエチルエーテル、アリルブチルエーテル、ビニルエチルエーテル、n-デカン酸アリルなどのエーテル類;
ビニルアルコール、アリルアルコールなどのアルコール類;
塩化ビニル、塩化アリル、塩化メタクリロイル、クロロ酢酸ビニル、塩化アクリロイル、臭化アリル、よう化アリル、クロロ酢酸アリル、クロロぎ酸アリル、アリルクロロホルメートなどのハロゲン化物;
スチレン、アリルベンゼン、4-メタアクリルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、ビニルトルエン、アリルベンジルエーテル、4-アリル-2,6-ジメトキシフェノール、アリルアリソール、4-アリル-1,2-ジメトキシベンゼンなどのベンゼン環を有する芳香族化合物;
3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、アリルクロロジメチルシラン、アリルクロロメチルジメチルシランなどのシラン類;
メタクリロニトリル、ビニルアセトニトリル、アクリロニトリル、シアノ酢酸アリル、シアン化アリルなどのシアン類;
2-アリルシクロヘキサノン、1-アリルシクロヘキサノール、アリルシクロペンタンなどのシクロアルカン誘導体;
その他、ビニルアントラセン、ビニルスルホン、アリルアルコールプロポキシレート、アリル-L-システイン、アリルエチレン、アリルグリシジルエーテル、アリルトリフルオロ酢酸、アリルシクロペンタジエニルニッケル、ジエチルホスホノ酢酸アリル、アリルジフェニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィンオキシド、アリルジスルフィドなどが挙げられる。
これらのうち、疎水性のノニオン性ポリマーを与えるモノマーとして、スチレンやアリルベンゼンなどを好ましく用いることができる。
カチオン性モノマー
カチオン性モノマーとしては、たとえば、アリルアミン、3-アクリルアミド-N,N- ジメチルプロピルアミン、アリルシクロヘキシルアミン、3-メタクリルアミド-N-ジメチルプロピルアミンなどの第一級アミン;
メチルアリルアミンなどの第二級アミン;
N-アリルジエチルアミン、N-アリルジメチルアミンなどの第三級アミン;
アリルトリエチルアンモニウム、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、ビニルトリメチルアンモニウムブロミド、3-(メタクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド、メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムなどの第四級アンモニウムが挙げられる。
前記ポリマーが官能基を有する場合、モノマーの合計モル数に対して、アニオン性モノマーの使用量を、好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、特に好ましくは、全モノマーがアニオン性モノマーであることが望ましい。また、アニオン性モノマー以外のモノマーを含む場合、ノニオン性モノマーであることが好ましい。
モノマーの重合は、公知の方法により行うことができ、たとえば、溶媒の存在下又は非存在下で、必要に応じ重合開始剤を添加して、モノマーを重合させて行うことができる。重合反応は、たとえば、ランダム(共)重合、ブロック(共)重合、グラフト(共)重合などの方法を採用できる。
溶媒としては、モノマーが溶解するものであればよく、限定されない。たとえばTHF、メタノール、DMF、DMSOなどを用いることができる。
重合開始剤としては、たとえば2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)などを用いることができる。また、このようなアゾ化合物の他に、過酸化物、有機金属化合物などを用いることもできる
重合は、モノマーの種類により異なり限定されないが、通常、たとえば、室温〜100℃程度の温度範囲で、1〜72時間程度の時間で実施することができる。
基板
本発明で用いることのできる基板に限定はなく、たとえば、金属、無機材料、有機材料のいずれも用いることができる。これらのうちでは、金属基板を好ましく用いることができる。
金属基板としては、たとえば、金、銀、クロム、ガリウム、ニッケル等が挙げられる。これらのうちでは金を用いることが好ましい。
無機材料基板としては、たとえば、ガラス基板などが挙げられる。
有機材料基板としては、たとえば、シリコン基板、ポリ塩化ビニル、紙などが挙げられる。
基板の形状は限定されず、板状、管状、球状などの形状が挙げられる。このうちでは、板状の形状を好ましく用いることができる。
DNAチップの製造方法
本発明に係るDNAチップは、ポリマー主鎖にDNA鎖および基板結合基を導入し、該ポリマーを基板表面に接触、固定化して製造することができる。
このようなDNAチップの製造方法は限定されないが、たとえば、(1)まず、短鎖DNA(一本鎖)と基板結合基を誘導する化合物とをポリマーに結合し、次に得られた短鎖DNA結合ポリマーを基板に結合させ、さらに長鎖DNA(一本鎖)を短鎖DNAに結合(ハイブリダイズ)させて、DNAチップを得る方法が挙げられる。
また、(2)まず、長鎖DNAと標的DNAを混合した溶液中を調整し、短鎖DNAコンジュゲートポリマー固定化基板上に滴下する。長鎖DNAと短鎖DNAの融解温度よりも高温の(長鎖DNAの標的配列部分のハイブリダイゼーションのTm)状態にする。長鎖DNAの標的配列部分のハイブリダイゼーションを均一系で行ってから急激に温度を下げる(長鎖と短鎖DNAのTm付近)ことで長鎖DNAと短鎖DNAの表面ハイブリダイゼーションを行う。こうすることで、長鎖DNAの標的配列部分のハイブリダイゼーションを解離させることなく基板表面に標的DNAを存在させることができる。
さらに、プローブDNA部分と短鎖DNAと完全相補鎖配列とを有する長鎖DNAと標的DNAとをまずハイブリダイゼーションし、その後、ポリマーに結合している短鎖DNAと、該完全相補鎖配列部分とを位置特異的にハイブリダイゼーションすることもできることから、遺伝子発現解析への応用も可能となる。
以下に製造方法の具体例を示す。
短鎖DNA
前記短鎖DNAは、ポリマーと結合させる末端が、ポリマー中の官能基と反応して結合しうる基を有することが好ましい。たとえば、ポリマー中の官能基がアニオン性官能基であるカルボキシル基、あるいはアルデヒド基、イソシアナート基、イソチオシアナート基等の官能基を有する場合、短鎖DNAの末端はアミノ化(−NH2)されていることが好ましい。末端のアミノ基は、直接DNA鎖に結合していてもよいし、炭素原子数1〜20のアルキル基を介してDNA鎖に結合していてもよい。このような末端がアミノ化されたDNAは、市販品を用いることができる。
また、前記末端にアミノ基を有する短鎖DNAにおいて、さらに必要に応じスペーサーとなる基を付加してもよい。スペーサーを導入することにより、短鎖DNAのポリマーへの結合を収率よく行うことができる。たとえば、末端がアミノ化されたDNAに、N−(トリフルオロアセチルカプロイロキシ)スクシンイミドエステル(TFCS)を、中性(pH7.0)溶媒中で、−10〜10℃の温度で反応させ、さらに、TFCSのトリフルオロアセチル基の脱保護を行うため、溶液のpHを徐々にアルカリ性(pH8)にしながら室温で反応させることにより、ヒドラジノ基(末端にアミノ基)を有するスペーサーが導入された短鎖DNAを得ることができる。
基板結合基を誘導する化合物
基板結合基とは、ポリマーを基板に結合させる基であり、基板と結合するための官能基とポリマーと結合するための官能基を有する。前記基板と結合するための官能基としては、基板の種類により異なり限定されないが、たとえば、硫黄原子を有する基を好ましく用いることができる。硫黄原子を有する基としてはチオール基、ピリジルジチオ基、ジスルフィド基、ベンゼンチオール基、ピリジンチオール基、アルカンチオール基などが挙げられる。前記ポリマーは、基板結合基中の硫黄原子を介して基板に被覆されていることが好ましい。
ポリマー中の官能基がアニオン性官能基であるカルボキシル基、スルホン酸基等の酸性官能基である場合、前記短鎖DNAと同様に、基板結合基中の、前記ポリマーと結合させる基は、アミノ基(−NH2)、ヒドラジド基が好ましい。
このような基板結合基を誘導する化合物としては、たとえば、3(2−ピリジルジチオ)プロピオニオルヒドラジド(PDPH)、3−[(2−アミノエチル)ジチオ]プロピオン酸ヒドロクロリド(AEDP)などが挙げられる。
ポリマーと、短鎖DNA、基板結合基を誘導する化合物との結合
短鎖DNAまたは基板結合基を誘導する化合物と、ポリマーとの結合方法は、ポリマーの有する官能基と、短鎖DNAまたは基板結合基の有する官能基の種類により異なり限定されないが、たとえば、結合前のポリマーにアニオン性官能基であるカルボキシル基、あるいはアルデヒド基、イソシアナート基、イソチオシアナート基が存在し、短鎖DNA、基板結合基の有する官能基がアミノ基(−NH2)である場合、常法によるアミド化反応により結合させることができる。
具体的には、たとえば、溶媒中、塩の存在下に、ポリマーと短鎖DNAとを室温下に反応させることができる。
溶媒としては、公知のリン酸緩衝液、
3-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、
3-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]プロパンスルホン酸(EPPS)、
2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)、
2-モルホリノエタンスルホン酸 モノハイドレート(MES)、
3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、
2-ヒドロキシ-3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPSO)、
ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、
ピペラジン-1,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-プロパンスルホン酸) デハイドレート(POPSO)、
N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、
2-ヒドロキシ-N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPSO)、
N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(TES)などを用いることができる。塩としてはNaCl、KClなどが挙げられる。
短鎖DNAの使用量は、残存させる官能基の数にもよるが、ポリマー中の官能基の数に対して(官能基数:短鎖DNAのモル数)、好ましくは50:1〜500:1、さらに好ましくは100:1〜300:1の範囲にあることが望ましい。
また、たとえば、基板結合基を誘導する化合物とポリマーとを、溶媒中、塩基の存在下に、室温で反応させることができる。溶媒としては、上記と同様の緩衝液を用いることができ、塩としては、上記と同様の塩を用いることができる。
基板結合基を誘導する化合物の使用量は、残存させる官能基の数にもよるが、ポリマー中の官能基の数に対して(官能基数:基板結合基を誘導する化合物のモル数)、好ましくは5:1〜100:1、さらに好ましくは5:1〜50:1の範囲にあることが望ましい。
ポリマーの基板表面への結合
ポリマーの基板表面への結合方法は、基板の種類、基板結合基の有する官能基の種類により異なり限定されないが、たとえば、金属基板表面に、短鎖DNAと基板結合基を有するポリマーを、酸性の緩衝溶液に溶解させ、室温下、該緩衝溶液を金属基板の所望の位置に滴下し、一定時間静置すればポリマーを金属基板に固定化できる。
前記ポリマーの静置時間(固定化時間)は、好ましくは0.5〜48時間、さらに好ましくは1〜48時間であることが望ましい。固定化時間を増加させると、ポリマーの基板への固定化量を増加させることができ、ポリマーの固定化量の増加により、ハイブリダイゼーション量の向上及び選択性を向上させることができる。
チオール基を有する化合物の金属基板への結合は、より具体的には、たとえばJ.Am.Chem.Soc.1998,120,9787-9792に記載の方法に準じて行うことができる。また、たとえば、ピリジルジチオ基を有する化合物の金属基板への結合方法も同文献に記載の方法に準じて行うことができる。
本発明では、ポリマーに複数の基板結合基を誘導する化合物が結合しているため、基板表面への結合を自己組織化的に行うことができる。したがって、単分子のDNA鎖の結合に比較して、DNA鎖の配置の精度よく、しかも極めて簡便に、DNA鎖を基板に結合させることができる。
なお、「自己組織化的」とは、一定の配置が自動的に形成されることを意味する。
長鎖DNAのハイブリダイゼーション
短鎖DNAと相補的な配列を有し、所望の標的DNAと相補的な配列を有する長鎖DNAを、ポリマーに結合している短鎖DNA部分にハイブリダイゼーションさせることにより、本発明のDNAチップを得ることができる。ハイブリダイゼーションは、公知の方法により実施できる。たとえば、ハイブリダイゼーションの方法としては、下記の方法が挙げられる。
(I)固体表面ハイブリダイゼーション
(i)使用するDNAを下記の(1)または(2)のハイブリダイゼーションバッファーに溶解させて90〜100℃で10分〜15分アニールする(DNA自己相補鎖をアニールすることで解くため)。アニール後に氷水に浸漬して急冷する(再自己相補鎖の形成を抑制)。
(ii)プローブDNA固定化基板に、標的DNA溶液を滴下し、Tm以上(普通はTm付近)の温度で15分〜24時間インキュベートする。
(ハイブリダイゼーションバッファー)
(1) 10〜50 mM Tris-HCl/NaCl 0.1〜0.5 M /1 mM MgCl2, pH 8.0
(2) 10〜50 mM Tris-HCl/NaCl 0.1〜0.5 M /1 mM EDTA, pH 8.0
(II)基板洗浄
下記の(3)または(4)の洗浄用バッファーにて基板を5分〜20分程度洗浄する。
(洗浄用バッファー)
(3) 10〜50 mM Tris-HCl/NaCl 0.1〜0.5 M /1 mM MgCl2/ 0.1〜0.4 % SDS, pH 8.0
(4) 10〜50 mM Tris-HCl/NaCl 0.1〜0.5 M /1 mM EDTA/ 0.1〜0.4 % SDS, pH 8.0
上記のうちでは、(1)ハイブリダイゼーションバッファーと(3)洗浄用バッファーの組み合わせが好ましい。
本発明では、固定化された短鎖DNAに、標的DNAと相補的な配列を有する長鎖DNAを、所望の位置にハイブリダイゼーションにより結合させ、該長鎖DNAを標的DNAのハイブリダイゼーションに用いるので、多様な標的DNAの種類に応じたDNAチップを、極めて簡便に製造できる。
しかも、基板表面に、ポリマーを介してDNA鎖が固定されている、すなわち、ポリマーが被覆された形でそのポリマー表面にDNA鎖が結合しているため、DNA鎖と基板表面との直接のインターラクションが起こらない。このため、DNA鎖の転倒を抑制することができるので、ハイブリダイゼーションの選択性及び効率を向上できる。特に、金などの金属基板とDNA鎖とはインターラクションが大きくDNA鎖が転倒しやすいため、基板表面に金属基板を用いるときに有効である。
本発明に係るDNAチップでは、前記ポリマーにDNA鎖を結合させ、該ポリマーを基板に結合させるので、ポリマーへのDNA鎖の導入密度を制御することができる。このため、基板表面へのDNA鎖の導入密度を容易に制御することができる。なお、ポリマー中の官能基の導入量および該官能基とDNA鎖との反応量を調整することで、ポリマーへのDNA鎖の導入密度の制御を容易に実施できる。
また、本発明に係るDNAチップは、ハイブリダイゼーション終了後、基板を高温に保つ、またはアルカリ処理することで、長鎖DNAを基板から脱離させることが可能で、ポリマー固定化された短鎖DNAは、ポリマーに結合したままの状態で、基板表面に脱離せずに残存させることが可能である。このため、同じ基板を用いて再使用、または新たに長鎖DNAを結合させ配列を変更して別の標的DNAの配列決定などを行うことも可能である。
一方、本発明のDNAチップは、DNA鎖がポリマーに結合し、該ポリマーは、複数の基板結合基により基板に結合させることができるので、基板からのDNA鎖を含む剥離を有効に抑制することもできる。
また、本発明では、ポリマーが疎水性を有する場合、ポリマー主鎖が疎水性を示しDNAが親水性を示すため、水溶液中でハイブリダイゼーションを行う際、基板表面でDNAのみを水溶液側に露出させることができる。このため、ハイブリダイゼーションを高効率で実施することができる。
さらに、ポリマー部分がアニオン性官能基を有している場合、リンカーDNA部分とポリマーのアニオン性官能基との反発が相乗的に大きくなり、DNA鎖の転倒防止に寄与する。このため、特異的吸着と非特異的吸着において、静電反発による非特異的吸着の排除能がより高まる。すなわち、ポリマーにアニオン性を有する場合、ハイブリダイゼーションの選択性を著しく向上させることができる。
標的DNAの検出方法
本発明に係るDNAチップは、固体化されたDNA鎖のプローブ部分と相補性を有する標的DNAの検出に用いることができる。標的DNAとしては標識されたDNA断片、RNA断片などが挙げられる。標的DNAとのハイブリダイゼーションにより、遺伝子発現のモニタリング、塩基配列の決定、変異解析、多型解析等を行うことができる。特に、本発明に係るDNAチップは、ハイブリダイゼーションの選択性および効率に優れているので、SNPsなどの多型解析に極めて有効である。
本発明に係る標的DNAの検出方法は、下記の工程からなる:
(1)前記のDNAチップ表面のポリマーが結合されている表面に、標的DNAを接触させる工程(工程1)、
(2)プローブDNA部分にハイブリダイズした標的DNAを検出する工程(工程2)。
標的DNAの接触は、前記ハイブリダイゼーション方法などと同様に行うことができる。
前記工程1は、ポリマーがアニオン性官能基を有することが好ましく、この場合に塩基性下で行うことが好ましい。塩基性下でハイブリダイゼーションを行うと、ポリマーがアニオン性官能基を有する場合にアニオン性官能基の負電荷を向上させることができる。
また、前記工程1においては塩強度は、たとえば、リンカーDNAが12塩基〜40塩基の範囲にあり、プローブDNAが6塩基〜100塩基の範囲にある場合、好ましくは0.1〜1.0M、さらに好ましくは0.2〜0.4M、特に好ましくは0.25〜0.35Mの範囲にあることが望ましい。
塩強度の範囲が上記範囲にあると、ポリマーがアニオン性官能基を有する場合に特にアニオン性官能基の負電荷を向上させることができる。このため、ハイブリダイゼーションの選択性の向上、効率の向上を図ることができる。
さらに、前記工程1は好ましくは25〜50℃、さらに好ましくは35〜45℃の温度範囲で行うことが好ましい。上記温度範囲にあると、ハイブリダイゼーションの選択性を向上させることができる。
標的DNAの検出は、常法により行うことができ、たとえば、標的DNAに付した蛍光強度を測定する方法、インターカレーターを用いた電気化学測定(サイクリックボルタンメトリー、インピーダンス測定)などを採用できる。また、本発明のDNAチップは、水晶振動子法(QCM)、表面プラズモン法(SPR)などと連動させることにより、特定の標的DNAの結合量を迅速に測定することができる。QCMの場合、周波数変化から、SPRの場合共鳴角度の変化から標的DNAの結合量を求めることができる。
図1は、本発明のDNAチップ等を模式的に示した一例である。
図1−(1)に示すように、たとえば、短鎖DNA2、基板結合基5を有するポリマー4が、基板6に結合している。このような短鎖DNA結合基板に、長鎖DNA3をハイブリダイズさせることにより、図1−(2)に示すように本発明のDNAチップ1が得られる。すなわち、DNAチップ1は、プローブDNA部分7とリンカーDNA部分8を有するDNA鎖10が、ポリマー4に結合している。該ポリマー4は基板結合基5により基板6に結合している。図1−(3)に示すように、該DNAチップ1に標的DNA10をハイブリダイズさせて、標的DNA10の検出を行うことができる。
以下実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、明細書中、「室温」とは15〜25℃(好ましくは20℃)の範囲の温度を意味する。
〔実施例で用いたDNAおよび試薬〕
以下の合成DNAはグライナー社から購入した。
(1)短鎖DNA(以下、「P1-DNA」という。):3'-TA-ATT-CTT-TTT-TTT-TTT-TTG-5'(配列番号:1)
(3'末端アミノ化、20 mer)、
(2)長鎖DNA(以下、「P2-DNA」という。)
5'-GAA-AAA-AAA-AAA-AAC-TT-GAC-GAG-GGG-CGC-ACC-GG-3'(配列番号:2)
(3'末端FITC(フルオレッセインイソチオシアナート)化または未修飾、34 mer。p1-DNAと相補的な配列を組み込んだ。)
(3)標的DNA:
完全相補鎖(5'末端FITC化、17 mer):
(tG-DNA):3'-CTG-CTC-CCC-GCG-TGG-CC-5'(配列番号:3)
一塩基置換(SNPs)配列(5'末端FITC化、17 mer):
(tC-DNA):3'-CTG-CTC-CCC-CCG-TGG-CC-5'(配列番号:4)
(tT-DNA):3'-CTG-CTC-CCC-TCG-TGG-CC-5'(配列番号:5)
(tA-DNA):3'-CTG-CTC-CCC-ACG-TGG-CC-5'(配列番号:6)
非相補鎖
3'-GGC-ACG-GAG-CAC-ACT-GG -5'(配列番号:7)
(5'末端FITC化、GC含有率は完全相補鎖DNAと同じ。17 mer)。
(4)ポリアクリル酸(PAA)(Mw:1,080,000) (商品番号18,129-3、Aldrich社製)
(5) 1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)-carbodiimide hydrochloride (EDC) (商品番号[16,146-2]、アルドリッチ社製)
(6)3-(2-pyridyldithio)propionyl hydrazide (PDPH)(商品番号 [22301]、 Pierce社製)
(7)N-(ε-trifluoroacetylcaproyloxy)succinimide ester (TFCS)(商品番号 [22299]、Pierce社製)
〔実施例1〕
ヒドラジド化した短鎖DNAの調製
TFCSをジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、DMSO中の終濃度が10重量%になるようにP1-DNAを0.1 M−リン酸緩衝液/0.15 M−NaCl(pH7.0)に溶解させたものに5分間かけて滴下した。全容量は1mLとした。(モル比;TFCS:P1-DNA=10:1)
これをナスフラスコ中で2時間、4℃で反応させた。反応終了後、限外ろ過により未反応のTFCSを除去した。
次に、TFCSのトリフルオロアセチル基の脱保護を行うため、反応溶液を除々に0.1 M−リン酸緩衝液/0.15 M−NaCl(pH8.0)に置換し、反応溶液を1時間室温で攪拌した。その後、限外ろ過、凍結乾燥を行い、生成物(ヒドラジド化短鎖DNA)を得た。反応のスキームを図2に示す。
DNA(P-1)コンジュゲートポリアクリル酸(PAA)の調製と特性評価
ヒドラジド化短鎖DNA(0.21μモル)、PAA(42モル)、EDC(420モル) を0.1 M−リン酸緩衝液/1 M−NaCl(pH8.0)に溶解させたものに滴下した。全容量は10 mlとした。(モル比;PAAのカルボキシル基:ssDNA=200:1)
これをナスフラスコ中で3日間、室温で反応させた。反応後、限外ろ過により未反応のヒドラジド化短鎖DNA、EDCを除去し、凍結乾燥して、P1-DNA修飾ポリアクリル酸(以下「P1-DNA-PAA」という。)を得た。
P1-DNA-PAA、EDC、PDPHを0.1 M−リン酸緩衝液/1 M−NaCl(pH8.0)に溶解させ(モル比;PAAのカルボキシル基:PDPH=10:1)、これをナスフラスコ中で1日間、室温で反応させた。反応後、限外ろ過により未反応のPDPH、EDCを除去し凍結乾燥し、短鎖DNAとPDPHで修飾されたポリアクリル酸(P1-DNA-PDPH-PAA)を得た。反応のスキームを図3に示す。
短鎖DNAおよび基板結合基の導入量の決定
P1-DNA-PDPH-PAA中の短鎖DNAおよびPDPHの単位質量あたりのモル数の決定は、下記のように、紫外光吸収スペクトル測定の結果より算出した。分光光度計は、DU 7400 (Beckman社製) を使用した。
モル吸光計数をε[L / mol・cm]、モル濃度をCM[mol / L]、分光測定セルの長さをl[cm]とすると、これらの吸光度Aとの間には、次式の関係が成立する。
A=ε×CM×l ・・・(1)
モル吸光係数には、試料と濃度に次式の関係があるので
ε=(1 /CM l)log10(I0/I) ・・・(2)
ここでlは吸収層の厚さ、I0は入射光の強度、Iは吸収層を通過した後の光強度を示している。
PDPHのピリジルジスルフィド基を還元すると、ピリジン-2-チオンが脱離する。この物質の吸収波長である343 nmでの吸光度を測定することでPDPHの導入量を決定した(図4)。PDPHモル吸光係数は、ε=8.08×103 [M-1cm-1]である。
単位質量当たりのモル数をa [mol / mg-solid]、重量濃度をCw[ mg-solid / mL] とすると、今回用いた分光測定セルの長さはl=1cmであるので、 (1)は、次式のように簡略化することができる:A=8.08×106a×CW ・・・(3)
ポリアクリル酸側鎖の短鎖DNA、及びPDPHの吸収スペクトルの結果と式(3)の関係からaを決定した。短鎖DNAの定量については、短鎖DNAの吸収波長である260 nmの吸収スペクトルからPDPHと同様にaを決定した。*短鎖DNAは1 OD=33μgとしてAを決定した。
この結果、(3)式と、343 nmにおける吸収スペクトル測定の結果(0.31)から、PDPHは2.56 [A.U./mg-solid]となった。したがって、2.56=8.08×106 ×a の関係から、a=307 [nmol/mg-solid]と決定した。
短鎖DNAは1 O.D.=33μgであるので、260nmにおける吸収スペクトル測定の結果(0.29)より、2.32 [O.D/mg-solid]となる。短鎖DNAの分子量は6130であるので、a= 20 [nmol/ mg-solid]と決定した。
これらの結果より、P1-DNA-PDPH-PAAのPDPHおよび短鎖DNA含量が、それぞれ、307 [nmol/mg-solid]、20 [nmol/ mg-solid]であることを確認した。
金基板の作製
金基板はスパッター装置を用いて作製した。スライドガラスをメタノール中に浸漬し15分間超音波洗浄した後、十分に超純水で洗浄した。スライドガラスをスパッター装置内へ導入し、クロム2.5分間、金10分間の順でスライドガラス基板上に直径2 mmの円になるようにガラスをマスクしてスパッターした。
P1-DNA-PDPH-PAAの金基板への固定化(P1-DNA固定化基板の調製)
金基板は実験直前に5N硝酸を熱したものに1分間浸漬し、超純水で洗浄することを3回繰り返してから使用した。洗浄した基板の金部分へ、50mM MES(2−モルホリノエタンスルホン酸 モノハイドレート)緩衝液/1 M NaCl(pH5.5)に溶かしたP1-DNA-PDPH-PAA (0.4mg/ml)を、2μL滴下した。
2時間、室温で基板を静置した。固定化後、10 mM Tris-HCl/0.3 M NaCl/1 mM MgCl2/0.1 % SDS(pH8.0)(以下、「洗浄用緩衝液」という。)と超純水で基板を洗浄した。洗浄後基板は、エアロダスター(Futaba社製)を用いて水分を除去、乾燥し、P1-DNA固定化基板(P1-DNA-PDPH-PAA基板)を得た。
P1-DNA−P2-DNA間のハイブリダイゼーション(P2-DNA固定化基板の調製)
P1-DNAとP2-DNAの基板表面でのハイブリダイゼーションを行った。
10 mM Tris-HCl/0.3 M NaCl/1 mM MgCl2(pH8.0)に、5‘−末端をFITC化したP2-DNA(100 nM)を溶解させ、P1-DNA固定化基板に2μL滴下した。基板からの溶液の蒸発を防ぐため、基板は水分の十分ある容器内で30分間、35℃で静置してハイブリダイゼーションを行った。
ハイブリダイゼーション後、基板を洗浄用緩衝液で5分間、3回洗浄して非特異的な吸着物を除去して、P1-DNAにP2-DNAがハイブリダイズした、P2-DNA固定化基板(P1P2-DNA-PDPH-PAA基板)を得た。
コントロールとして、5‘−末端をFITC化した標的DNA(3'-CTG-CTC-CCC-GCG-TGG-CCC-CTG-CAC-CAG-CAG-CTC-C-5'(配列番号:8)(34mer):P1-DNAとの相補部分なし)(100 nM)を金基板へ滴下した。これらのハイブリダイゼーションの確認はScanArray(パーキンエルマー社製)を用いてスキャン速度50μm/min.で行った。
P2-DNA、コントロール配列DNAの蛍光強度は、図5に示すように、それぞれ、35℃の場合、224 A.U.、1.64 A.U.であった。
これらの値をP2-DNAの値を100%として規格化するとコントロール配列は0.73%であった。
〔実施例2〕
標的DNAとのハイブリダイゼーション(温度30℃)
実施例1で製造したP2-DNA固定化基板(P1P2-DNA-PDPH-PAA基板)に、完全相補鎖DNA、SNPs配列(tC-DNA)、非相補鎖DNAを各々2μL滴下した。すべて10 mM Tris-HCl/NaCl 0.3 M /1 mM MgCl2, pH 8.0の溶液で100nMの濃度とした。基板からの溶液の蒸発を防ぐため、基板は水分の十分ある容器内で30分間、30℃で静置してハイブリダイゼーションを行った。
ハイブリダイゼーション後、基板を洗浄用緩衝液で5分間、3回洗浄した。
それぞれの標的DNAの蛍光強度をScanArray(パーキンエルマー社製)を用いて実施例1と同様にして測定した。その結果を図6に示す。
〔実施例3〕
標的DNAとのハイブリダイゼーション(温度35℃)
実施例2において、ハイブリダイゼーションの温度を35℃にする以外は、実施例2と同様にしてハイブリダイゼーションを行った。
それぞれの標的DNAの蛍光強度をScanArray(パーキンエルマー社製)を用いて、実施例1と同様にして測定した。その結果を図7に示す。
図6および図7に示すように蛍光強度は、完全相補鎖DNA、一塩基置換(SNPs)配列(tC-DNA)、非相補鎖DNAに関し、ハイブリダイゼーション温度が30℃の場合、8.3A.U.、4.7A.U.、2.3A.U.であり、35℃の場合、145 A.U.、24.5A.U.、20A.U.であった。
コントロール実験として、実施例1で調製したP-1DNA固定化基板に、相補鎖DNAを同様の条件で滴下、インキュベート、洗浄した。この基板からは、蛍光が8.1 A.U.観察された。
これらの蛍光強度(F.I.)を完全相補鎖DNAのシグナルを用いて規格化すると、30℃、35℃の場合でそれぞれ、SNPs配列は56%、16.8%、非相補鎖は27.5%、13.7%、コントロール実験の値は5.5 %となった。
以上の結果より、ハイブリダイゼーション温度が30℃、35℃のいずれにおいても、ハイブリダイゼーションが選択的に起こっていることが確認され、さらに、これらの比較をすると、ハイブリダイゼーション温度が35℃の場合、より選択性が向上することが確認された。また、これらの結果から、一塩基の違いでも配列特異的に完全相補鎖DNAの検出が可能であることが確認された。
〔実施例4〕
塩強度0.4 M
前記完全相補鎖のtG-DNA(3'-CTG-CTC-CCC-GCG-TGG-CC-5')(配列番号:3)(図8中「A」)、
前記一塩基置換(SNPs)配列のtC-DNA(3'-CTG-CTC-CCC-CCG-TGG-CC-5')(配列番号:4)(図8中「B」)、tT-DNA(3'-CTG-CTC-CCC-TCG-TGG-CC-5')(配列番号:5)(図8中「C」)、tA-DNA(3'-CTG-CTC-CCC-ACG-TGG-CC-5')(配列番号:6)(図8中「D」)、および
前記非相補鎖DNA(3'-GGC-ACG-GAG-CAC-ACT-GG -5')(配列番号:7)(図8中「E」)(以上、すべて5'末端FITC化)を、それぞれ10 mM Tris-HCl/NaCl 0.3 M /1 mM MgCl2, pH 8.0に溶解(濃度100nM)し、NaClを含有する塩強度0.4Mの溶液をそれぞれ調製した。
これらを、実施例1で調製したP2-DNA固定化基板(P1P2-DNA-PDPH-PAA基板)に滴下し30分間、35℃でインキュベートして、ハイブリダイゼーションを行った。洗浄後、実施例1と同様のスキャンアレイにてFITCの蛍光を観察した。
図8に蛍光強度のグラフを示す。
この結果、tG-DNA(完全相補鎖DNA)、tC-DNA、tT-DNA、tA-DNA、非相補鎖DNAのそれぞれついて、蛍光強度はそれぞれ65.6 A.U.、36 A.U.、28.1 A.U.、29.9 A.U.、6 A.U.であった。これらをtG-DNAの蛍光強度を用いて規格化すると、それぞれ、100、54.8、42.8、45.5、9.1%となった。
完全相補鎖DNA配列の蛍光強度が最も大きく、他の標的DNAは最大でも54%と定性的に診断するには十分な蛍光強度の差がみられることから、SNPs配列認識能が確認された。
〔実施例5〕
塩強度0.3 M
実施例4において、塩強度を0.3Mにした以外は、実施例4と同様にして、ハイブリダイゼーション、洗浄を行った。さらに、実施例4と同様にして蛍光強度を測定した。
図9に蛍光強度のグラフを示す。
その結果、tG-DNA(完全相補鎖(図9中「A」))、tC-DNA(図9中「B」)、tT-DNA(図9中「C」)、tA-DNA(図9中「D」)、非相補鎖DNA(図9中「E」)の蛍光強度は、それぞれ、61.3 A.U.、9.4 A.U.、5.8 A.U.、3.6 A.U.、7.1 A.U.であった。これらをtG-DNAの蛍光強度を用いて規格化すると、それぞれ、100、15.3、9.4、5.9、11.5 %となった。
完全相補鎖DNA配列の蛍光強度が最も大きいこと、他の標的DNAは最大でも9.4%と定性的に診断するには十分な蛍光強度の差がみられる。
塩強度を下げたことでポリマー上のアニオン性官能基のマイナス電荷が上がることで、より厳密にSNPs配列の差異を認識、排除したものと推察される。
図1は、本発明のDNAチップの一例を示す模式図であり、図1−(1)は短鎖DNAが固定化されたポリマーが基板に固定化された短鎖DNA固定化基板の例を示し、図1−(2)は本発明のDNAチップを示し、図1−(3)は本発明のDNAチップに標的DNAをハイブリダイズした例を示す。 図2は、DNA末端をヒドラジド化する反応スキームの例を示す図である。 図3は、短鎖DNAおよび基板結合基を誘導する化合物をポリマーに導入する反応スキームの例を示す図である。 図4は、短鎖DNAおよび基板結合基を有するポリマーにおける吸光度と吸光波長との関係を示す図である。溶媒としてMES/NaCl(0.5M)/ジチオセレイトール(DTT)(0.7mg/ml)を用い、短鎖DNAおよび基板結合基が結合したポリマーの濃度は0.125mg/mlであった。 図5は、短鎖DNAおよび基板結合基を有するポリマーに、長鎖DNAをハイブリダイゼーションしたときの蛍光強度(F.I.(A.U.))と、コントロール(ハイブリダイゼーションしていない前記ポリマー)の蛍光強度(F.I.(A.U.))とを示す図である。規格化F.I.(%)は長鎖DNAをハイブリダイゼーションしたときの蛍光強度を用いて規格化した場合の、蛍光強度の割合である。 図6は、標的DNAとして、完全相補鎖DNA、一塩基置換(SNP)配列DNAおよび非相補鎖DNAを、30℃の温度で長鎖DNA固定化基板に接触させてハイブリダイゼーションしたときの蛍光強度(F.I.(A.U.))を示す図である。規格化F.I.(%)は完全相補鎖DNAをハイブリダイゼーションしたときの蛍光強度を用いて規格化した場合の、蛍光強度の割合である。 図7は、標的DNAとして、完全相補鎖DNA、一塩基置換(SNP)配列DNAおよび非相補鎖DNAを、35℃の温度で長鎖DNA固定化基板に接触させてハイブリダイゼーションしたときの蛍光強度(F.I.(A.U.))を示す図である。規格化F.I.(%)は完全相補鎖DNAをハイブリダイゼーションしたときの蛍光強度を用いて規格化した場合の、蛍光強度の割合である。 図8は、標的DNAとして、完全相補鎖DNA(A)、一塩基置換(SNP)配列DNA(tC-DNA、tT-DNA、tA-DNA)(B,C,D)および非相補鎖DNA(E)を、塩強度0.4Mの濃度で長鎖DNA固定化基板に接触させてハイブリダイゼーションしたときの蛍光強度(F.I.(A.U.))を示す図である。規格化F.I.(%)は完全相補鎖DNAをハイブリダイゼーションしたときの蛍光強度を用いて規格化した場合の、蛍光強度の割合である。 図9は、標的DNAとして、完全相補鎖DNA(A)、一塩基置換(SNP)配列DNA(tC-DNA、tT-DNA、tA-DNA)(B,C,D)および非相補鎖DNA(E)を、塩強度0.3Mの濃度で長鎖DNA固定化基板に接触させてハイブリダイゼーションしたときの蛍光強度(F.I.(A.U.))を示す図である。規格化F.I.(%)は完全相補鎖DNAをハイブリダイゼーションしたときの蛍光強度を用いて規格化した場合の、蛍光強度の割合である。
符号の説明
1 DNAチップ
2 短鎖DNA
3 長鎖DNA
4 ポリマー
5 基板結合基
6 基板
7 プローブDNA
8 リンカーDNA
9 DNA鎖
10 標的DNA

Claims (12)

  1. 基板表面に、ポリマーを介してDNA鎖が固定されたDNAチップであって、該DNA鎖は1本鎖のプローブDNA部分と2本鎖のリンカーDNA部分とからなり、
    前記DNA鎖は前記リンカーDNA部分側で前記ポリマーと結合し、前記ポリマーは基板結合基を介して前記基板の少なくとも1つの表面に固定されていることを特徴とするDNAチップ。
  2. 前記リンカーDNA部分が、共有結合によりポリマーに結合していることを特徴とする請求項1に記載のDNAチップ。
  3. 前記リンカーDNA部分の塩基対数が、10以上150以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のDNAチップ。
  4. 前記ポリマーが、疎水性の構成単位からなるポリマー主鎖を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のDNAチップ。
  5. 前記ポリマーが、官能基を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のDNAチップ。
  6. 前記官能基が、アニオン性官能基を含むことを特徴とする請求項5に記載のDNAチップ。
  7. 官能基の合計数に対して、アニオン性官能基が50%以上含まれることを特徴とする請求項6に記載のDNAチップ。
  8. 前記ポリマーが、前記基板結合基中の硫黄原子を介して基板に被覆されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のDNAチップ。
  9. 下記の工程からなる、標的DNAの検出方法:
    (1)請求項1〜8のいずれかに記載のDNAチップ表面のポリマーが結合されている表面に、標的DNAを接触させる工程(工程1)、
    (2)プローブDNA部分にハイブリダイズした標的DNAを検出する工程(工程2)。
  10. 前記工程1において、DNAチップ中のポリマーがアニオン性官能基を有し、標的DNAの接触を塩基性水溶液下で行うことを特徴とする請求項9に記載の方法。
  11. 前記工程1を、塩強度が1M以下で行うことを特徴とする請求項9または10に記載の方法。
  12. 前記工程1を、25〜50℃の温度範囲で行うことを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の方法。
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