JP2005060404A - 皮膚細胞生育促進性を有する乳化剤及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract


【課題】 本発明の目的は、乳化力や使用感を改善するのみならず、乳化剤自体が皮膚細胞生育促進性を有する化粧用乳化剤を提供すること。
【解決手段】 非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液が、繭糸、生糸、絹糸、絹糸織編物、それらの残糸もしくはそれらの未精練物、半精練物、精練物、並びにそれらを原料とした繊維、粉末およびフィルムから選ばれる絹タンパクの原料物質を中性塩で溶解し、次いで透析して得られる絹タンパクの水溶液である化粧料用乳化剤。
【効果】 非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液又は水性ゲルからなる化粧料用乳化剤は、単に乳化力や使用感を改善するのみならず、乳化剤自体が皮膚細胞生育促進性を有している。そのために、この乳化剤を用いて油性分を乳化させて得られる乳化物は、広範囲の油─水組成の乳化化粧料に使用することができると共に、皮膚ケアの上で極めて優れている。
【選択図】 図2

Description

本発明は、蛋白質系乳化剤および該乳化剤を用いて乳化化粧料を製造する方法に関する。
従来、水と油性物質を乳化させて乳化化粧料を製造する際には、一般に乳化剤として陰イオン性、陽イオン性、両イオン性、非イオン性などの界面活性剤が用いられてきた。
しかし、合成界面活性剤は皮膚の表面組織を破壊し、体内に入って肝臓障害を起こす原因になることが指摘されて以来、研究開発の方向はより安全な天然由来の原料を用いた乳化剤を志向する方向に進んできている。
特に、天然由来の蛋白質系乳化剤は、安全性が高く、一般に皮膚の表面組織との親和性にも優れていることから、数多くの提案がなされている。
概して、蛋白質系乳化剤は合成界面活性剤に比べると乳化力が劣るために、その研究は、化学修飾(化学的変性処理)によってその乳化力を高める方向に傾注しており、その例として、以下のような開発例が挙げられる。
・炭素鎖長14〜24のアルキル基を有するアミノ酸アルキルエステル化タンパクからなる乳化剤(特許文献1参照)。
・親水性蛋白質分解物のカルボキシル末端にアミノ酸エステルのアミノ基がアミド結合してなる蛋白質系乳化剤(特許文献2参照)。
・レシチン−グルテン複合体またはレシチン−グロビン複合体からなる乳化剤(特許文献3参照)。
・活性化した分枝状多糖類と蛋白質とを結合してなる機能性蛋白質を主成分とする乳化剤(特許文献4参照)
・蛋白質または該加水分解物とリン脂質との複合体からなる乳化剤(特許文献5参照)。
・リゾリン脂質、遊離脂肪酸および蛋白質とが、結合した蛋白複合体からなる乳化剤(特許文献6参照)。
・牛などの動物項靭帯に存在するエラスチンを蛋白分解酵素で処理して得られる加水分解物または該加水分解物の水溶液と、多価アルコールを混合して得られる界面活性剤相を乳化剤として用いる方法(特許文献7参照)。
・豆類の蛋白質中のIISグロブリン塩基性サブユニットを40%以上含有する乳化剤(特許文献8参照)。
・蛋白質とサポニンまたは胆汁酸との結合物からなる乳化剤(特許文献9参照)。
これらの開発例において使用されている原料蛋白質は、例えば大豆蛋白、小麦蛋白、などの植物性蛋白質、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、卵白アルブミン、血清アルブミン、卵黄レシチン、ミルクカゼイン、ミオシン、フィブリノーゲン等の動物性蛋白質が主なものである。
ところで最近、絹蛋白質が生体適合性に優れた物質であることから、その化粧品への利用が注目されるようになり、各種の絹蛋白質からなる化粧用素材が提案されている。
例えば、アミノ酸単位が2〜50(平均分子量200〜5000)からなる水溶性シルクペプタイド(絹フィブロイン由来)をアミドカルボン酸型界面活性剤に配合して使用感等を改善した洗剤(特許文献10参照)、フィブロイン加水分解物を保湿剤として配合した液状化粧料(特許文献11参照)、水溶性の絹フィブロイン加水分解物を配合して湯上がり感を改善した浴用剤(特許文献12参照)、コンディショニング剤として卵黄油とともに分子量1000程度の水溶性の絹フィブロイン加水分解物を配合したシャンプー(特許文献13参照)、フィブロイン水溶液に二酸化炭素を添加し、その後にフィブロイン水溶液のpHを酸を添加して等電点付近にすることにより得た微小構造体を分散媒体中に分散してなるゲル化したクリーム状の保湿剤(特許文献14参照)(この場合はフィブロイン水溶液のpHを酸で等電点付近にして、ゲル化することが目的で、フィブロイン水溶液を乳化剤として利用するものではない。)等の開発例が挙げられる。
しかし、これらはいずれも絹蛋白質を化粧料用の乳化剤として使用するものではない。
極最近になって、絹蛋白質を界面活性剤として利用する発明が提案されている(特許文献15、16参照)。
この発明は、繭や生糸から抽出したセリシンまたはセリシン分解物を有効成分とする界面活性剤であって、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、家庭用洗剤など広範囲の分野において利用することができるとされている。
ところで、一般に、蛋白質系乳化剤を用いて得られる乳化化粧料は、潤いのあるしっとりとした使用感を有するものの、手に取って実際に使用したときに、ボロボロ感があったり、延展性に乏しいなどの使用上での問題がある場合がしばしば見受けられる。
化粧品に使用する乳化剤としては、単に安全性や乳化力のみでなく、使用時の感触も重要な要素であるから、乳化化粧料の処方設計する際には、これらの点を十分に考慮して行う必要がある。
一方、本発明者らは、長年絹に関する研究を行ってきた中で、絹フィブロインにはヒトの細胞を生育促進する作用があることをつきとめ、これを創傷被覆材等に利用することを提案した(特許文献17、18参照)。
その作用は、絹フィブロインを構成するフィブロインのH鎖とL鎖にあることを明らかにした(特許文献19、20参照)。
しかし、絹タンパクは、細胞生育促進作用があるものの、その水溶液またはそのゲル化物が乳化剤として利用できることは知られていなかった。
主な理由として、フィブロイン水溶液やそのゲル化物は攪拌などの強い剪断力のもとで繊維化しやすく、繊維化物(水不溶性の塊状物)が分離してくることによるものと考えられる。
特開昭60−112800号公報 特開昭60−175531号公報 特開昭63−283735号公報 特開平1−233300号公報 特開平5−70332号公報 特開平5−56751号公報 特開平6−279254号公報 特開平9−23837号公報 特開平11−215956号公報 特開平8−20792号公報 特開平6−157234号公報 特開平5−78232号公報 特開平5−25024号公報 特開平10−251299 特開平11−276876号公報 特開2000−73090号公報 特開平9−192210号公報 特開平11−253155号公報 特開2001−163899号公報 特願2001−180169号 特開平11−70160号 Tasiro Yutaka and Otsuki Eiichi,Journal of Cell Biology, Vol, 46, Pl(1970) 片岡紘三、日本蚕糸学会誌「家蚕の吐糸中における液状絹および繭糸の含水率」50巻、6号, P478〜483(1981)。
従来の蛋白質系乳化剤は、原料蛋白質を化学的処理(化学修飾)することにより、その乳化力等を改善して実用に供し得るものとしたものが主流であり、僅かに一定の成果を得ているものである。
しかし、化学修飾により原料蛋白質を改質する場合には、目的の蛋白質系乳化剤を得るために、種々の反応工程を経なければならず、特に、皮膚に影響を及ぼす未反応試薬を反応系から除去して不純物の含まれない純粋の乳化剤を得ることは非常に困難であるという問題点がある。
本発明は、このような課題を解決し、さらに、単に乳化力や使用感を改善するのみならず、乳化剤自体が皮膚細胞生育促進性を有する化粧用乳化剤を提供することを目的とする。
本発明は上記観点からなされたものであり、格別の化学修飾を行うことなく得ることができる絹タンパク水溶液が、化粧料等の乳化剤として優れた特性を有することを見出したものである。
すなわち、本発明は、(1)、非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液からなる乳化剤に存する。
そして、(2)、非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液からなる化粧料用乳化剤に存する。
そしてまた、(3)、非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液からなる乳化剤を用いて油性分を乳化させることからなる乳化化粧料の製造方法に存する。
そしてまた、(4)、非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液からなる乳化剤を用いて油性分を乳化させることにより得られる乳化化粧料に存する。
そしてまた、(5)、非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水性ゲルからなる化粧料用乳化剤に存する。
そしてまた、(6)、非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液が、蚕の吐糸した繊維(繭糸)の未精練物、半精練物、精練物等を中性塩で溶解し、次いで透析して得られる絹タンパクの水溶液である上記(2)記載の化粧料用乳化剤に存する。
そしてまた、(7)、非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液が、繭糸、生糸、絹糸、絹糸織編物、それらの残糸もしくはそれらの未精練物、半精練物、精練物、並びにそれらを原料とした繊維、粉末およびフィルムから選ばれる絹タンパクの原料物質を中性塩で溶解し、次いで透析して得られる絹タンパクの水溶液である上記(2)記載の化粧料用乳化剤に存する。
そしてまた、(8)、非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水性ゲルが、繭糸、生糸、絹糸、絹糸織編物、それらの残糸もしくはそれらの未精練物、半精練物、精練物、並びにそれらを原料とした繊維、粉末およびフィルムから選ばれる絹タンパクの原料物質を中性塩で溶解し、次いで透析して得られる絹タンパク水溶液をゲル化させてなる絹タンパクの水性ゲルである上記(5)記載の化粧用乳化剤に存する。
そしてまた、(9)、非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液からなる乳化剤を用いて油性分を乳化させる乳化化粧料の製造方法であって、絹タンパクの水溶液のタンパク濃度と油性分率とが図1の実線Aで囲まれる範囲内にあるようにしたことを特徴とする乳化化粧料の製造方法に存する。
そしてまた、(10)、非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液からなる乳化剤を用いて油性分を乳化させることにより得られる乳化化粧料であって、絹タンパクの水溶液のタンパク濃度と油性分率とが図1の実線Aで囲まれる範囲内にあるようにしたことを特徴とする乳化化粧料に存する。
そしてまた、(11)、非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水性ゲルを用いて油性分を乳化させることからなる乳化化粧料の製造方法であって、 絹タンパクの水性ゲルのタンパク濃度と油性分率とが図2の実線Aで囲まれる範囲内にあるようにした乳化化粧料の製造方法に存する。
そしてまた、(12)、非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水性ゲルを用いて油性分を乳化させることにより得られる乳化化粧料であって、絹タンパクの水性ゲルのタンパク濃度と油性分率とが図2の実線Aで囲まれる範囲内にあるようにした乳化化粧料に存する。
そしてまた、(13)、結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液が、蚕の吐糸した繊維(繭糸)の未精練物、半精練物、精練物等を中性塩で溶解し、次いで透析して得られる絹タンパクの水溶液である上記(3)記載の乳化化粧料の製造方法に存する。
そしてまた、(14)、非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液が、繭糸、生糸、絹糸、絹糸織編物、それらの残糸もしくはそれらの未精練物、半精練物、精練物、並びにそれらを原料とした繊維、粉末およびフィルムから選ばれる絹タンパクの原料物質を中性塩で溶解し、次いで透析して得られる絹タンパクの水溶液である上記(3)記載の乳化化粧料の製造方法に存する。
そしてまた、(15)、非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水性ゲルを用いて油性分を乳化させることからなる乳化化粧料の製造方法であって、前記水性ゲルが、繭糸、生糸、絹糸、絹糸織編物、それらの残糸もしくはそれらの未精練物、半精練物、精練物、並びにそれらを原料とした繊維、粉末およびフィルムから選ばれる絹タンパクの原料物質を中性塩で溶解し、次いで透析して得られる絹タンパク水溶液をゲル化させてなる絹タンパクの水性ゲルである乳化化粧料の製造方法に存する。
本発明の、非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液又は水性ゲルからなる化粧料用乳化剤は、単に乳化力や使用感を改善するのみならず、乳化剤自体が皮膚細胞生育促進性を有している。
そのために、この乳化剤を用いて油性分を乳化させて得られる乳化物は、広範囲の油─水組成の乳化化粧料に使用することができると共に、皮膚ケアの上で極めて優れている。
本発明の非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液または非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水性ゲルは、油性分と混合することにより、絹タンパクの水溶液またはその水性ゲル中の水と油性分とを均一に乳化させることができる。
しかも、絹フィブロインが、皮膚細胞成育促進作用を有することから、乳化力や使用感を改善するとともに、乳化剤自体が皮膚細胞生育促進性を有する化粧用乳化剤を得ることができる。
本発明は、
1)蚕の吐糸した繭糸および繭糸の加工物である生糸、絹糸、絹織編物等の未精練物、半精練物、精練物等を原料とし、
2)これら原料を中性塩で溶解し、次いで水で透析し、
3)得られた絹タンパク水溶液を、
(a)そのまま乳化剤として利用するか、もしくは
(b)絹タンパク水溶液を一旦、乾燥させて非結晶性絹物質を取得し、それを乳化剤として使用する際に、その乾燥非結晶性絹物質を水に溶解し、絹タンパク水溶液を再生して乳化剤として利用する、または
4)絹タンパク水溶液を40〜130℃、好ましくは50℃〜80℃の雰囲気内で静置してゲル化させ、水性ゲルの状態で乳化剤として利用する、という、実施の態様を含むものである。
このようにして調製された乳化剤を、化粧用油性分と、必要に応じて各種化粧用添加剤を添加し、混合攪拌する工程を経て、目的の乳液状ないしクリーム状の化粧用乳化物を得ることができるものである。
本発明の乳化剤を使用して製造することができる乳化化粧料または医薬部外品としては、例えば、清浄用化粧品(化粧石けん,洗顔料,シャンプー,リンス等)・頭髪化粧品(染毛料,頭髪用化粧品等)・基礎化粧品(一般クリーム・乳液,ひげそり用クリーム,化粧水・オーデコロン,ひげそり用ローション,化粧油,パック等)・メークアップ化粧品(ファンデーション,眉墨,アイクリーム・アイシャドウ・マスカラ等)・芳香化粧品(香水等)・日焼け・日焼け止め化粧品(日焼け・日焼け止めクリーム,日焼け・日焼け止めローション,日焼け・日焼け止めオイル等)・爪化粧品(爪クリーム等)・アイライナー化粧品(アイライナー等)・口唇化粧品(口紅・リップクリーム等)・口腔化粧品(歯みがき等)・入浴用化粧品(浴用化粧品等)等が挙げられる。
以下に本発明を実施する場合の詳細について説明する。
A.原料本発明の非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの原料物質は繭糸、生糸、絹糸織編物、絹糸(フィブロイン繊維)、それらの残糸またはそれらの未精練物、半精練物、精練物、およびそれらを原料とした繊維、粉末、フィルム等、家蚕および野蚕等の絹糸虫類が吐糸する蛋白質繊維物質すべてを対象とすることができる。
一般に蚕は体内の絹糸腺腔に絹を分泌し、この絹は液状絹と言われる。
液状絹はフィブロインとセリシンから成り(これらを絹タンパクという。)、液状フィブロインは分子量約37万である(非特許文献1参照)。
また分子量約37万のフィブロインは分子量約35万(H鎖)と約2.5万(L鎖)に分けられる。
蚕は営繭時に液状絹を吐糸して繭(繭糸と蛹で構成)を作る。
繭糸には中心部にフィブロイン、周囲にセリシンが存在し、存在比は(70〜80%フィブロイン):20〜30%(セリシン)であることが知られている。
生糸は繭糸を数本から数10本集合して作られる。
生糸で織った織物を生織という。
繭糸、生糸又は生織からセリシンを除去する工程を精練といい、精練後の繊維が絹糸又はフィブロイン繊維である。
絹糸は、まず、養蚕農家で生産された繭を乾繭、煮繭後に繰糸して生糸を作製し、次いで、生糸又は生織の精練を行い、絹糸また絹織物とする。
これらの工程で生じる屑が残糸である。
乾繭は繭を115〜120℃の温度から5〜6時間かけて80℃程度の温度に徐々に下げて行う。煮繭では100〜105℃の水蒸気及び熱水で10分間処理される。
B.精練方法としては、アルカリ性ナトリウム塩や石鹸を含む水溶液中で煮沸する場合(アルカリセッケン精練)が最も一般的な方法である。
その他、アルカリ性ナトリウム塩のみで精練する場合(アルカリ精練)、加圧熱水(例えば120℃の熱水)に浸漬して精練する場合(高圧精練)、酵素で精練する場合(酵素精練)等がある。水のみで煮沸精練する場合もあるが、セリシンの残留が多く一般的ではない。
このような精練によって絹糸を得る。
ここで精練を行っていない場合は未精練、精練が完全でない場合は半精練といわれる。
半精練で得られた物も絹糸というが、フィブロイン繊維とはいわない。
ここでは99%以上フィブロインである場合をフィブロイン繊維という。
原料を精練する時に用いるアルカリ水溶液としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ性ナトリウム塩の水溶液が挙げられる。
アルカリ精練の場合、炭酸ナトリウム水溶液は適度なバッファー効果があるため、特に、好ましい。
精練によって原料は脱セリシンされる。
本発明の乳化剤としての絹タンパクを得るには、精練によって絹糸とするだけでなく、原料を精練しなくてもよく、精練を途中で終えた未精練物であってもよい。
また、家蚕の突然変異体であるセリシン蚕の繭糸(セリシンからできている)を、非結晶性フィブロインを主とする水溶液を作るときに添加してもよい。
セリシンは、構成単位が主にセリン(3−ヒドロキシアラニン)からなり、側鎖に親水性のメチロール基を有するセグメントから主として構成されている蛋白質であり、側鎖に非親水性基を多く含むフィブロインに比較し、保湿剤としての機能がより強いものと考えられる。
すなわち、フィブロインは、−Gly−Ser−Gly−Ala−Gly−Ala−の繰り返し単位から構成され、親水性基を有する−Ser−の単位当たりの非親水性基の構成が、−Gly−Ala−Gly−Ala−Gly−の5つの単位からなっていることから、親水親油バランス(HLB値)が中間的な範囲にあり、0/W型の乳化物からW/O型の乳化物まで広い範囲で乳化物をつくるのに対し、親水性基を有する構成単位から主として形成されているセリシンの場合は、フィブロインに比較して乳化力よりも保湿機能が勝っているものと考えられる。
因みに、セリシンは、フィブロインより常に15%だけ多くの吸湿性を有することが報告されている(非特許文献2参照)。
セリシンが多少含まれている場合には、いわゆるずり (shear)による繊維化が抑えられ、また保湿性を高めることから、皮膚ケア素材としては効果的である場合がある。
C.絹タンパク水溶液の作成精練のような加工工程で、絹はアルカリを含む高温高湿処理を受けるため、絹タンパクは分解して分子量が低下され易い。
絹タンパクは、酸、アルカリ、高温(特に湿熱)、光(特に紫外線、放射線)で分解し分子量を低下し易い。
中性塩による溶解の場合にも分子量を低下し易い。
絹タンパクの分子量低下は絹タンパクの細胞生育促進性の低下に関係しているので、極端な分子量低下は好ましくない。
本発明の乳化剤としての絹タンパクを得るには、上記の原料を以下のように溶解して得る。
非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液
;本発明において、絹タンパクのセリシン含量が約50%未満の場合において絹フィブロインを主成分とする絹タンパクという。
絹の溶解剤である中性塩としては、例えば塩化カルシウム、銅エチレンジアミン、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸リチウム、臭化リチウム、硝酸マグネシウム等の中性塩が挙げられる。
当該中性塩においても飽和水溶液又は50%〔重量(g)/容量(mL)〕飽和以上の濃度が好ましい。
絹を中性塩溶液に溶解する工程では、中性塩にメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコールを添加し、94℃以下の温度で、望ましくは75〜85℃程度の温度で行うとよい。
この場合、攪拌することにより溶解を促進することができる。
溶解温度が低いと溶解しにくい。
溶解温度が高いと溶解し易いが、分子量低下が激しく起きる。
絹を中性塩で溶解した溶解液には、フィブロインあるいはフィブロインとセリシンの混合物、中性塩、アルコール等が含まれている。
この溶解液から、まず不溶物を除去し、次いで透析膜や透析装置を用いて分子量約5,000以下の低分子物を除去する。
このような透析によって絹タンパク水溶液を得る。
この絹タンパク水溶液には、塩化カルシウムが0.001〜0.1M程度残されていてもよい。
一方、水溶液における絹タンパクは高分子量であるほど震動や攪拌時のずり(shear)により繊維化し易い。
繊維化物は水不溶性の塊状物となるので、化粧料としての使用感(手触り)を低下させる原因となる。
そのため、絹タンパクの分子量はある程度低下しているほうが好ましいが、乳化の方法や使用方法を緩やかにすることで繊維化が起こりにくくなることから、高分子量の絹タンパクが含まれていてもよい。
フィブロインは、平均分子量(重量平均)5,000以上で乳化剤として作用する。
しかし、5,000〜20,000では細胞生育作用はほとんど無い。
2万〜4万では細胞生育作用は少ないが、本発明の乳化剤として利用可能である。
細胞生育促進性の十分あるフィブロインの平均分子量としては、4万〜37万である。
したがって、皮膚ケア用素材としては平均分子量6〜30万の範囲のものが特に好ましい。
D.非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液から非結晶性粉末もしくはフィルムを作成し、これを再び水に溶解させ、再度絹タンパク水溶液とする。
;前述C. の水溶液を平滑な固体表面に流延し、乾燥させることにより製造される非結晶性絹フィルムを再度水に浸漬して絹水溶液を得ることもできる。
非結晶性絹タンパクはフィルムでなくても、粉末でもよい。
この場合は、絹タンパク水溶液をスプレードライ、凍結乾燥等によっても得られる。
本発明において、非結晶性絹フィブロインとは、結晶化度が10%未満のものをいう(特許文献21参照)。
絹セリシンが含まれていても、結晶化度10%未満のものをいう。
結晶化度が10%未満であれば、この絹タンパクを水に浸漬したとき、絹タンパクの一部が溶解し、一部が水を吸収して浮遊している状態でも、非常に軟らかく水性ゲルと同様であるため、乳化剤として作用する。
この場合は絹タンパク水溶液をそのまま乳化剤として使用する場合に比べ、更に乾燥・再溶解工程を経ることになり、工程数が多い点で不利ではある。
しかし、非結晶性絹は光を遮断した相対湿度約50%以下での室内には、数年の長期保存も可能であること、また乾燥しているため軽く、長距離輸送には効果的であること等の利点がある。
絹タンパク水溶液は液状絹からも得ることができる。
例えば、蚕の絹糸腺の中部及び後部腺からゲル状の内容物(液状絹)を取り出し、水に溶解させることにより絹タンパク水溶液を得ることができる。
しかし、この方法は蚕を解剖して蚕体内から絹糸腺を取り出し、さらに絹糸腺腔から液状絹を取りださなければならない。
蚕1頭から得られる絹は最大で0.4g程度であり、蚕体液や絹糸腺細胞等の不純物を含みやすいこと、及び絹を得るのに手間がかかること等により、工業的な生産方法にはならない。
本発明においては工業的に有利な生繭、乾繭もしくは煮繭した繭の繭層もしくは繭糸を、あるいは生糸、絹織物又はそれらの残糸等を材料として用いる。
E.絹タンパク水溶液による油性分の乳化油性分としてはオリーブ油、椿油、アボガド油、カカオ油,サンフラワー油、パーシック油、パーム油、ヒマシ油等の植物性油やその他動物性油、さらにホホバ油、ミツロウ等のロウ類等、化粧品原料基準に収載されている油やロウ等の油性分を使用する。
油性分の種類によって乳化物の性状に大差がない。
絹タンパク水溶液の濃度と絹タンパク水溶液量に対する油性分の割合を適宜調整することにより目的とする化粧料を作成する。
絹タンパク水溶液と油性分を混合し、乳化させる方法としては攪拌法、すりまぜ法等があるが、いずれでもよい。
乳化用の機械は絹の濃度や油の割合によって使い分けることが望ましい。
乳化物の粘性は絹水溶液の濃度によって変わり、絹水溶液の濃度が薄いと絹タンパクによる細胞生育性が低い。
したがって、濃度は0.1%以上、好ましくは0.5%以上である。
一方、絹タンパク水溶液の濃度が高いと皮膚上での伸びが低下し、使用感が低下する。
従って、その濃度は15%以下、好ましくは10%以下がよい。
セリシンの割合が50%を越えるとセリシンの性質が強くなり、ゲル化が起き易くなるために好ましくない。
より好ましくは30%以下である。乳化物は絹タンパク水溶液の濃度が低い(3%程度以下)場合は液状となるので、乳液として使える。
濃度が高くなる(3%程度以上)に従って、粘性を帯びクリームや軟膏として使える。
絹フィブロイン濃度が低いと細胞生育率が低いこと、絹タンパク水溶液の濃度が高いと伸びが低下することなどは、次に述べる水性ゲルの乳化の場合にも同様である。
F.絹タンパク水溶液のゲル化ゲル化は、絹タンパク水溶液をそのまま放置することにより達成される。
ゲル化は絹タンパク水溶液の濃度が高いほど速い。
濃度3%の場合、室温(25℃±5℃)ではゲル化に一週間程度必要であり、室温以下に温度を下げるとゲル化時間は急激に長くなる。
絹フィブロイン水溶液を室温以上、特に40℃以上に置くとゲル化は2日程度以内で起きる。
さらに、オートクレーブ(120℃)を用いるとゲル化は1〜2時間程度で起きる。
50〜80℃の温度で静置してゲル化させることが好ましい。
絹タンパクの水性ゲルは、フィブロイン濃度が一定以上になると、フィブロイン鎖中の−C=O−と−NH−とが、互いに近隣の他のフィブロイン分子との間で水素結合をつくり、緩く絡み合って三次元網目状を形成することにより現出するものと推定される。
この水性ゲルは、非常に脆い状態であるために、外力で容易にゲル状態は壊れる。
そこで、フィブロインを主成分とする含水率4.5%の絹タンパク水溶液の水性ゲルに油性分を入れないで攪拌し、遠心分離機で攪拌物を分離(8,000rpm、10分)したところ、その上澄み液の絹タンパク濃度は、0.1〜2.0%であった。
上澄み液を除いた沈殿物に、上澄み液の分の水を加え、再攪拌し(30秒)、遠心分離(8,000rpm、10分)したところ、上澄み液の絹タンパク水溶液の濃度は、同様に0.1〜2.0%であった。
このようなゲルの一部は攪拌によって、容易に水に溶解する性質があり、これを水性ゲルという。
このようにして得た絹タンパク水溶液またはその水性ゲルは油性分と混合するとき、乳化剤として作用する。
乳化剤として使用できる絹タンパクの水性ゲルは、本発明以外の方法、例えば等電点法等によっても得ることができる。
G.絹タンパク水性ゲルの乳化方法は、前記E.絹タンパク水溶液の場合と同じである。
ゲルにおける絹タンパクの濃度が6%程度以上になると、ゲルと油性分を混合し、これを攪拌しただけでは乳化しにくい。
濃度が濃くなるにつれて、攪拌時に水を添加すると乳化は容易となる。
水は絹タンパクと等量から2倍程度の量が必要である。
つまり、濃度10%のゲル100gには10〜20gの水を添加して攪拌するとよい。
絹タンパク水溶液による乳化の場合と比べて、絹タンパク水溶液をゲル化した後に乳化することは、ゲル化の工程が多く、工業的には不利である。
しかし、絹タンパクの水性ゲルにより乳化する場合には、絹タンパク水溶液の場合より油性分の割合が少なくても乳化することができるという利点がある。
すなわち、同じ含水率の場合、絹タンパク水溶液より水性ゲルを用いた方が油性分と絹フィブロインの割合を広範囲に変えることができるため、性質の違う乳化物を得ることができるという利点がある。
この理由は、絹タンパク水溶液のゲル化によって絹フィブロインは分子間でゆるく結合しているため、すべての絹フィブロイン鎖が油性分と結合しなくてもよいことによるものと推定される。
本発明の乳化化粧料には、本発明の作用・効果を損なわない範囲で、必要に応じて、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、保湿剤、殺菌剤、抗炎症剤、色素,香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ビタミン、有機もしくは無機の粉体、アルコール、糖類等の化粧料に通常に使用される成分を適宜配合することができるこというまでもない。
・絹タンパク水溶液による油性分の乳化平成13年春産の家蚕繭の繭層を、通常の方法で乾繭、煮繭、繰糸した生糸を原料とし、この生糸300gを12lの水と6gの炭酸ナトリウム中で40分煮沸して精練した。
練減は25.7%であり、フィブロインが99%以上の絹糸を得たと考えられる。
この絹糸(150g)を塩化カルシウム、エタノール、水のモル比1対2対8の割合の液(絹糸の10倍量)で溶解した。
溶解は75〜80℃、60分で行い、透析した。
透析は溶解液を透析膜〔三光純薬(株)、UC36-32-100〕に入れ、これを純水に浸漬して透析した。
透析後のフィブロインの電気泳動像ではフィブロインのH鎖はわずかに確認でるが、L鎖は確認でき、クロマトグラフィーによる重量平均分子量は約24万であった。
また、透析後の絹タンパク水溶液の濃度は8.2%であった。
この濃度を純水で希釈し、8.2%の他に4.0%、2.0%、1.0%、0.2%の絹タンパク水溶液を作成した。
また、濃度8.2%の絹水溶液を透析膜に入れた状態で、5℃の室内で乾燥し、濃度13.2%の絹水溶液を得た。
これらの濃度の違う絹タンパク水溶液にオリーブ油を加えて攪拌し(コーヒーミキサー、約20秒)、乳化した。
攪拌後に乳化物を腕に0.1〜0.3g量をのせ、約100cm2 の広さに指を使ってよく伸ばし、塗布した。
皮膚に塗っているとき、乳化物の伸び易さ(展延性)および乳化物から小さな塊状物の出やすさ(ボロボロ感)から化粧料としての利用できる範囲を調べた。
その結果を図1に示す。
図1の横軸は絹タンパク水溶液のタンパク濃度(%)である。
縦軸は、油性分率=100×油性分(g)/{絹タンパク水溶液(g)+油性分(g)}を示す。
乳液またはクリームとして使える範囲は実線Aで囲まれる部分、好ましくはBで囲まれる部分である。
・乾燥非結晶性絹タンパク(フィルムまたは粉末)からの絹タンパク水溶液からの乳化物実施例1で作成した濃度4.0%の絹タンパク水溶液を25℃、40%RHの室内のプラスチック板上に流し、送風しながら乾燥して絹フィルムを作成した。
得られた非結晶性絹フィルムを、20℃の水に浸漬し、溶解させて濃度が6.0%、4.0%、2.0%、1.0%の絹タンパク水溶液を作成した。
これらを実施例1と同様にオリーブ油を加え攪拌し、乳化させた。
得られた乳化物の化粧料として利用できる絹タンパク水溶液の濃度と油性分率の関係は、図1に示される同様な結果となった。
・絹タンパクの水性ゲルによる油性分の乳化家蚕の繭層300gを炭酸ナトリウム6g、水12lの沸騰液に浸漬し、100分で精練した。
この絹糸195gを塩化カルシウム392g、水508g、エタノール325gの液に溶解した。
溶解の温度は75〜85℃、時間は3時間である。
透析は、はじめの2日間は水道水、その後は純水で2日間8回替えた。絹水溶液の電気泳動像からフィブロインのH鎖は確認できない。
L鎖は明確には確認できず、ゲルクロマトグラフィーからは平均分子量は約6.5万であった。
この絹水溶液の濃度は14.1%であった。他に、濃度6.0%、3.0%、1.0%、0.2%を作成し、これらを70℃に放置してゲル化させた。
得られた絹タンパクの水性ゲルにオリーブ油を加えて攪拌し(コーヒーミキサー、約30秒間攪拌)、乳化させた。
得られた乳化物を腕に0.1〜0.3gの量をのせ、約100cm2の広さに指を使ってよく伸ばし(20〜200cm/秒程度の速度、20〜200g程度の荷重)、皮膚に塗布した。
この時の乳化物の伸び易さ、および乳化物から小さな塊の出やすさ(ボロボロ感)を調べ、化粧料としての利用できる範囲を決定した。
その結果を図2に示す。
図2の横軸は絹タンパク水溶液のタンパク濃度(%)である。
縦軸は、油性分率=100×油性分(g)/{(絹タンパク水溶液(g)+油性分(g)+W(g)}を示す。
Wはゲル化物の濃度が濃いとき、攪拌時に加えた水の重量である。
乳液またはクリームとして使える範囲は実線Aで囲まれる部分、好ましくはBで囲まれる部分である。
・絹タンパクの水性ゲルの作成:家蚕の繭層300gを炭酸ナトリウム6g、水12lの沸騰液(約100℃)に浸漬し、70分で精練した。
この絹糸150gを塩化カルシウム392g、水508g、エタノール325gの液に溶解した。
溶解の温度は75〜85℃、時間は2時間である。
透析は始め2日間は水道水、その後に純水で2日間8回にわたり取り替えた。
絹タンパク水溶液の電気泳動像からフィブロインのH鎖は確認できないが、L鎖はわずかに確認できた。
ゲルクロマトグラフィーによる平均分子量は約13万であった。
得られた9.41%濃度の絹タンパク水溶液を水で希釈し、他に3.12%、0.20%の絹タンパク水溶液を作成した。
これらの絹タンパク水溶液をビーカーに入れ、恒温室に置いてゲル化時間を調べた。
120℃についてはオートクレーブを用いた。
ゲル化の確認は、絹タンパク水溶液が乳白色になるので分かるが、ビーカーを傾けた時に絹タンパク水溶液がビーカーからこぼれない場合を基準とした。
しかし、絹タンパク水溶液の濃度が3%程度以下では、ゲルの状態は、非常にもろく、傾けただけでこぼれ落ちるので、この場合は、ゲルに含まれている気泡に注目し、ゲルを水平に対し10〜30°傾けても気泡が動かない時をゲル化点とした。
その結果を図3に示す。
絹タンパク水溶液は、50〜80℃の温度では約2〜4日でゲル化する。
ゲル化時間は、熱や攪拌等の剪断力を受けることによって短時間の方に変化する。
なお、ゲル化しやすいように疎水性物質(例えば、 ポリエチレングリコール,グリセリン等)を添加してもよい。
比較例
・セリシン水溶液による油性分の乳化家蚕繭層(5.0g)を数枚に分離し、これを40倍量(200g)の8Mウレア水、80℃に15分浸漬し、よく攪拌した。
この精練による練減は21.2%であった。
この精練液を50倍量の純水で透析(2時間ごとに4回)した。
この液は透析終了後の濃度は0.25%で、すでにゲル化していた。
ゲル化しているセリシンは昇温すればセリシン水溶液となる。
この液を煮沸し、煮沸時間を変えた。
このようにして得たセリシン濃度1.85%、3.24%、5.48%の水溶液を作成した。
濃度3.24%、5.48%の水溶液は煮沸中でも沈澱物が浮遊している。
これらのセリシン水溶液にオリーブ油を加え攪拌した。
攪拌によって乳化した乳化物を手に伸ばして手触りや伸びやすさから化粧品としての判定を行った。
その結果、濃度が6%未満の範囲においては、乳化物を得ることができたものの、フィブロインを主成分とする絹タンパク水溶液を用いた場合に比較し、使用時の温度が高いと軟らかく、温度が低いと硬くなり易い。
セリシン水溶液を乳化剤として使用する場合、その濃度は0.1%〜6%の範囲で使用可能であるが、好ましくは数0.1%〜4%、さらに好ましくは0.1%から2%である。
セリシン水溶液にフィブロインが混合される割合が大きくなるに従ってその濃度を高くすることができる。
〔試験例〕
・(試験例1)皮膚刺激性本発明の乳化クリームと絹タンパク水溶液を使用していない他2社の化粧クリーム(各1点)について、皮膚刺激性に関するパッチテストを行った。
本発明の乳化クリームとして、実施例4の方法で得た絹タンパク濃度が4.5%の絹タンパクの水性ゲル(絹ゲル)を用いて、表1に示す化粧用素材および量割合で混合し、攪拌して絹クリームとした。
これら3点について、女子10名(アレルギーを持つ10代1人、20代4人、30代3人、40代2人)を対象としたパッチテストを行なった。
パッチテストではFinn-Chamberを用いて、腕の内側部に絹クリーム、A社とB社のクリームを貼付し、48時間後と72時間後に皮膚反応を判定基準に従って判定(中川昌次郎:接触性皮膚炎の診寮・臨床免疫)した。
貼付後の48時間後と72時間後に、貼付した部分の肉眼観察で、刺激の程度を表2のように判定して、評点し、各試料の評点の合計を被験者数で割って100倍に算出し、刺激指数として表3に示した。
表3から絹クリームには皮膚刺激性はみられないが、絹タンパクの入っていない他社のクリームには皮膚刺激性が見られた。
・(試験例2)非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの細胞生育促進性家蚕の繭層5.0gを200mlの80℃、8Mウレア水に浸漬、攪拌して精練した。
精練時間は(1)20分と(2)10分で、それぞれの練減は(1)25.8%、(2)21.2%であった。
また、繭層5.0gを200mlの水で(3)30分、(4)15分煮沸精練した。
それぞれの練減は(3)16.0%、(4)8.7%であった。
精練していない繭層を(5)とした。
(1)はほとんどのセリシンが除かれ、99%以上がフィブロインと考えられる。
(1)〜(5)の絹タンパクにおけるセリシン含有量の値を得るため、これらを水100mlに炭酸ナトリウム0.05g入れた煮沸液に90分浸漬し、充分に攪拌し、精練した。
精練後の重量減をセリシン量として計算した。
また、セリシン蚕繭層〔セリシン100%とする(8)〕を家蚕繭層に添加して、セリシン割合50.0%(6)、75.0%(7)を作った。
絹の細胞培養容器へのコートは次のように行った。
これら(1)〜(8)の絹タンパク各0.01gを9MLiSCN1.0mlに溶解し、各溶解液を50倍量の水で5回透析し、透析後の各絹タンパク0.0025%溶液1mlを細胞培養用のシャーレ(35mmφ、ファルコン)に入れ、風乾し、PBS2mlで3回洗ったのち再度風乾し、70%エタノールで滅菌した。
細胞はクラボウ(株)から購入したヒト皮膚線維芽細胞を使用した。
培地はクラボウから購入した皮膚線維芽細胞増殖用低血清培地を使用した。
培養は絹タンパクをコートしたシャーレ1枚につき培地2mlを入れ〜7万の細胞を接種して3日間培養した。
細胞数の測定はシャーレ1枚につきアラマブルー(IWAKI)0.1mlを入れ、37℃で2時間後に570nm、600nmの吸光度から計算した色素の還元量を生育細胞数とした。
絹タンパクをコートしなかったシャーレを対照区(100%)とし、絹タンパクをコートしたシャーレの細胞生育数を表4示した。
絹タンパクをコートした場合、セリシンの含有率の違いにかかわらず、いずれも対照区に対して細胞生育が優れていた。
・(試験例3) フィブロインの分子量と細胞生育促進性水1, 000cc中に炭酸ソーダ0.5gを入れ、煮沸(100℃)し、煮沸中に家蚕の繭層10.0gを浸漬、攪拌して精練した。
精練時間は(1)5分、(2)20分、(3)60分、(4)130分、(5)180分とした。
それぞれの練減は(1)22.3%、(2)24.5%、(3)25.1%、(4)25.5%、(5)26.2%であった。
(4)と(5)は99%以上がフィブロインと考えられる。
これらの絹タンパクについて分子量(重量平均)と細胞生育性との関係を調べた。
平均分子量測定はゲルクロマトグラフィーカラムを用い、試料を8Mウレア/40mM Tris-H2SO4(pH8)で溶出し(0.6ml/min)、275nmでモニターした。
分子量測定用のカラムはSuperdex 200 Prep grade(ファルマシア)を使用した。
次に、(1)〜(5)の細胞生育性については次のように測定した。
まず、絹の細胞培養容器へのコートは次のように行った。
(1)〜(5)の絹タンパク各0.01gを9M LiSCN1mlに溶解し、各溶解液を50倍量の水で4回透析し、絹タンパク水溶液とした。
これら各絹タンパクの0.0025%溶液1mlを細胞培養用のシャーレ(35mmφ、ファルコン)に入れ、風乾し、PBS2mlで3回洗ったのち再度風乾し、70%エタノールで浸漬して滅菌した。
細胞はクラボウ(株)から購入したヒト皮膚線維芽細胞を使用した、培地はクラボウから購入した皮膚線維芽細胞増殖用低血清培地を使用した。
培養は絹タンパクをコートしたシャーレ1枚につき培地2mlを入れ〜7万の細胞を接種して3日間培養した。
細胞数の測定はシャーレ1枚につき培地2ml、アラマブルー(IWAKI)0.1mlを入れ、37℃で2時間後に570nm、600nmの吸光度から計算した色素の還元量を生育細胞数とした。
絹タンパクをコートしなかったシャーレを対照区(100%)とし、絹タンパクをコートしたシャーレの細胞生育数を図4に示した。
フィブロインの分子量が低下するにしたがって、細胞生育性も低下したが、フィブロインの分子量約4万以上では細胞生育促進性を有している。
以上、本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではなく、明細書記載の作用効果を得られる限り種々の変更例が可能である。
例えば、食品用(チョコレート乳化剤等)、医療用(軟膏等)、洗浄用(洗剤等)及びその他の分野への利用も可能なことはいうまでもない。
優れている。
本発明は、蛋白質系乳化剤および該乳化剤を用いて乳化化粧料を製造する方法に関する者であるが、その原理を逸脱しない限り、いかなる化粧用に対しても採用可能であり、同様な効果を期待できる分野であれば、例えば、食品分野、医療分野、洗浄分野等の分野に提要可能である。
〔表1〕
Figure 2005060404
〔表2〕
Figure 2005060404
〔表3〕
Figure 2005060404
〔表4〕
Figure 2005060404
図1は、絹クリームにおける油性分と絹水溶液の濃度との関係を示す図である。 図2は、絹クリームにおける油性分と絹ゲルの濃度との関係を示す図である。 図3は、絹水溶液のゲル化に関する濃度(%),温度(℃),時間(日)の関係を示す図である。 図4は、絹タンパク(重量)平均分子量と細胞生育率(%)を示す図である。

Claims (15)

  1. 非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液からなる乳化剤。
  2. 非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液からなる化粧料用乳化剤。
  3. 非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液からなる乳化剤を用いて油性分を乳化させることからなる乳化化粧料の製造方法。
  4. 非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液からなる乳化剤を用いて油性分を乳化させることにより得られる乳化化粧料。
  5. 非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水性ゲルからなる化粧料用乳化剤。
  6. 非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液が、蚕の吐糸した繊維(繭糸)の未精練物、半精練物、精練物等を中性塩で溶解し、次いで透析して得られる絹タンパクの水溶液である請求項2記載の化粧料用乳化剤。
  7. 非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液が、繭糸、生糸、絹糸、絹糸織編物、それらの残糸もしくはそれらの未精練物、半精練物、精練物、並びにそれらを原料とした繊維、粉末およびフィルムから選ばれる絹タンパクの原料物質を中性塩で溶解し、次いで透析して得られる絹タンパクの水溶液である請求項2記載の化粧料用乳化剤。
  8. 非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水性ゲルが、繭糸、生糸、絹糸、絹糸織編物、それらの残糸もしくはそれらの未精練物、半精練物、精練物、並びにそれらを原料とした繊維、粉末およびフィルムから選ばれる絹タンパクの原料物質を中性塩で溶解し、次いで透析して得られる絹タンパク水溶液をゲル化させてなる絹タンパクの水性ゲルである請求項5記載の化粧用乳化剤。
  9. 非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液からなる乳化剤を用いて油性分を乳化させる乳化化粧料の製造方法であって、絹タンパクの水溶液のタンパク濃度と油性分率とが図1の実線Aで囲まれる範囲内にあるようにしたことを特徴とする乳化化粧料の製造方法。
  10. 非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液からなる乳化剤を用いて油性分を乳化させることにより得られる乳化化粧料であって、絹タンパクの水溶液のタンパク濃度と油性分率とが図1の実線Aで囲まれる範囲内にあるようにしたことを特徴とする乳化化粧料。
  11. 非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水性ゲルを用いて油性分を乳化させることからなる乳化化粧料の製造方法であって、 絹タンパクの水性ゲルのタンパク濃度と油性分率とが図2の実線Aで囲まれる範囲内にあるようにしたことを特徴とする乳化化粧料の製造方法。
  12. 非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水性ゲルを用いて油性分を乳化させることにより得られる乳化化粧料であって、絹タンパクの水性ゲルのタンパク濃度と油性分率とが図2の実線Aで囲まれる範囲内にあるようにしたことを特徴とする乳化化粧料。
  13. 非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液が、蚕の吐糸した繊維(繭糸)の未精練物、半精練物、精練物等を中性塩で溶解し、次いで透析して得られる絹タンパクの水溶液であることを特徴とする請求項3記載の乳化化粧料の製造方法。
  14. 非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水溶液が、繭糸、生糸、絹糸、絹糸織編物、それらの残糸もしくはそれらの未精練物、半精練物、精練物、並びにそれらを原料とした繊維、粉末およびフィルムから選ばれる絹タンパクの原料物質を中性塩で溶解し、次いで透析して得られる絹タンパクの水溶液であることを特徴とする請求項3記載の乳化化粧料の製造方法。
  15. 非結晶性絹フィブロインを主成分とする絹タンパクの水性ゲルを用いて油性分を乳化させることからなる乳化化粧料の製造方法であって、前記水性ゲルが、繭糸、生糸、絹糸、絹糸織編物、それらの残糸もしくはそれらの未精練物、半精練物、精練物、並びにそれらを原料とした繊維、粉末およびフィルムから選ばれる絹タンパクの原料物質を中性塩で溶解し、次いで透析して得られる絹タンパク水溶液をゲル化させてなる絹タンパクの水性ゲルであることを特徴とする乳化化粧料の製造方法。
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