JP2005057704A - 光波長通信ネットワークシステムおよびシングルモード伝送用光ファイバ - Google Patents

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Abstract

【課題】 VCSELなどの経済的な短波長用光源が活用でき、従来は困難であったSMFの実効遮断波長以下へのWDM伝送波長域の広帯域化と長距離伝送を可能とすること。
【解決手段】 送信器301は異なる波長を出力するN個の光源と光合波器から構成され、合波されたN個の信号光は、実効遮断波長λのシングルモード光ファイバ311を伝搬する。これらの信号光は光波長フィルタ302で短波長領域の信号λ〜λと長波長領域の信号λk+1〜λに分岐され(kは1からN−1までの任意の数)、それぞれ短波長領域用の受信器304と長波長領域用の受信器305によって受信される。また、λ〜λにλ以下の信号が含まれる場合、光波長フィルタ302と受信器304との間の伝送路を、シングルモード光ファイバ312とモードフィルタ303によって構成する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、光波長通信ネットワークシステムおよびシングルモード伝送用光ファイバに関し、特に、経済的な短波長光源を活用する光波長通信ネットワークシステムおよびシングルモード伝送用光ファイバに関する。
現在、シングルモード光ファイバ(SMF)の広い伝送波長帯域中の複数の波長の異なる信号光を用いる経済的な光波長多重(WDM)通信方式について研究開発が進められている。また、垂直面発光レーザ(VCSEL)などの、1μm付近を発振波長とする経済的な短波長光源の研究開発が進められている。すなわち、市内中継系や加入者系への導入を目指してCoarse−WDM(CWDM)などのWDM通信方式の研究が進められている。
図1に従来技術である16波長CWDMシステムの構成例を示す(製品化されているシステムとしては、例えば、パナソニックモバイルコミュニケーションズ(株)の「波長多重伝送装置(CWDM)AD-F3000シリーズ」がある)。光源から出力される波長の異なる信号光は光合波器で合波され、SMFを介して伝送される。さらに光分波器で各波長に分波された後、受光回路で受光されて元の電気信号に変換される。CWDMでは、1波長あたりの伝送速度をギガビット毎秒(Gbit/s)程度、適用距離を10km程度と想定しており、光源として温度制御を取り除いた分布帰還型レーザ(DFB−LD)が主に用いられる。
伝送に用いられる波長グリッドはITU−Tによって1.27〜1.61μmの間に20nm(0.02μm)の間隔で定められている(G.694.2参照)。特に伝送波長の下限は伝送路に用いられるITU−T規定の1.3μm零分散シングルモード光ファイバ(SMF(G.652))ケーブルの実効遮断波長カットオフ波長:λによって制限される。つまり、多モード分散が伝送の制限要因となってシングルモード伝送が保証されないため、SMFのλの上限規格値である1.26μmよりも短い波長の信号光を伝送に使うことはできない。なお、λの測定方法に関しては、非特許文献1に記載されている。
一方、1μm付近の波長を発振波長とする経済的な光源の開発が進められている。特にVCSEL光源に関しては、1.1〜1.2μm帯を発振波長とするタイプがあり(例えば、非特許文献2参照)、0.8μm帯や0.98μm帯を発振波長とするタイプもある。0.8μm帯VCSEL光源はイーサネット(登録商標)などの高速LAN(ローカルエリアネットワーク)への適用が進められており、0.98μm帯VCSEL光源については、例えば非特許文献3で詳細に説明されている。
0.8μm帯VCSEL光源はイーサネット(登録商標)などの高速LAN(ローカルエリアネットワーク)への適用が進められているが、伝送路として大口径のマルチモード光ファイバ(MMF(G.651))を用いるので、Gbit/sオーダの高速伝送を行う場合、多モード分散によって伝送距離が短距離に限定されてしまう。例えば10Gbit/sイーサネット(登録商標)の0.85μmでの伝送を既存のマルチモード光ファイバで行う場合、伝送可能距離は50m程度となる。図2に従来技術として、0.8μm帯VCSEL光源とMMFを使った単一チャネル通信システムの構成例を示す。
このような短波長光源を用いて長距離・高速伝送を行う方法としては、(1)使用する光源波長よりも短波長側にλを持つシングルモード光ファイバを用いる、(2)シングルモード光ファイバを数cmの径にコイル巻きして作製したモードフィルタによって、1次の高次モードLP11を入射端あるいは出射端で取り除くという2つが提案されている。
例えば、(1)の方法を用いた1.2μm帯VCSELによる2Gbit/s−5km伝送が報告されており(例えば、非特許文献4参照)、(2)の方法を用いた0.8μm帯VCSELによる3Gbit/s−4.3km伝送が報告されている(例えば、非特許文献5)。これらの狭線幅なVCSEL光源を用いて数Gbit/sオーダの速度の伝送を行う場合、波長分散は問題にならず、損失が伝送距離を制限する要因となる。
川上彰二郎、白石和男、大橋正治共著、「光ファイバとファイバ型デバイス」培風館、1996年、p.36-43 「電子情報通信学会総合大会SC-6-4」、2003年 伊賀健一、小山二三夫編著、「面発光レーザの基礎と応用」、共立出版、1999年、p.97-114 「Photonics Technology Letters, Vol.1.2, No.2」2000年、p.1.25-11.27 「Photonics Technology Letters, Vol.10, No.1.2」1998年、p.1781-1783
しかしながら、このように、0.8μm帯、1〜1.2μm帯、1.26μm〜1.6μm帯のそれぞれにおいて高速光伝送技術は確立されつつあるが、これらの波長領域にまたがるWDM通信方式やネットワーク構成は実用化されておらず、研究開発レベルにおいても提案されていない。この主な理由として、(a)短波長領域では光ファイバ伝送路の損失が増大し、システムの送受間レベル差も短波長領域では小さくなる傾向がある。(b)短波長領域と長波長領域では使用する光ファイバ伝送路の多モード分散や損失などの特性が異なるという2点が考えられる。
上記の理由(a)について、光ファイバではRayleigh散乱によって短波長になるほど損失が増大する。例えば波長1μmでの損失は1.3μmでの値の2倍程度に達するため、システムの送受間レベル差を一定と仮定しても、波長1μmの信号は1.3μmの信号の半分程度の距離しか伝搬できない。従って、両波長の信号光のWDM伝送を行う場合は1μmの信号の伝搬可能距離によって伝送距離が制限される。
上記の理由(b)について、WDM伝送用にMMFを用いると、前述のように多モード分散によって高速伝送時の伝送距離が100m程度の距離に制限される。また、WDM伝送用に実効遮断波長λの短いシングルモード光ファイバあるいはモードフィルタを用いると、いずれの場合も1.5μm帯以上の波長帯で曲げによる損失が急激に増加するため、今度は長波長領域の信号の伝搬可能距離によって伝送距離が制限される。さらに、曲げによる損失増加は長波長側ほど著しく、ファイバ心線ごとに増加の度合いも大きく異なるため、長波長領域の信号についての伝送距離の設計が非常に困難になってしまう。
以上に述べたように、図1または2のような一地点から一地点(ポイントツーポイント)への伝送を前提とするネットワーク構成では、シングルモード光ファイバの伝送波長帯域が限られており波長によって信号光の伝搬距離が大きく異なるため、0.8μm、1〜1.2μm帯、1.26μm〜1.6μm帯に伝送波長域がまたがるWDM通信システムの導入は困難である。
本発明は、前記の従来方法の問題点を鑑み、伝送波長域が0.8μm、1〜1.2μm帯、1.26μm〜1.6μm帯のうちの二つまたは三つの領域にまたがり、1km以上の距離の伝送を可能とするWDMネットワークの構成、およびネットワーク中で用いる低損失な短波長シングルモード伝送用の光ファイバと光ファイバ部品を提供することを目的とする。
本発明では、前記目的を達成するために、実施例に対応する図3のネットワーク構成に示すように、送信器と受信器との間に設置された光波長フィルタで複数の波長の信号光を長波長領域と短波長領域に分岐し、分岐された短波長領域の信号光を短波長領域用の受信器で受信する。その際、光波長フィルタと短波長領域用の受信器との間にモードフィルタを用いる。
また、伝送路に用いるシングルモード光ファイバとして、SMFまたはλが1μm近傍にあり、コア径がSMFと同等な大きさであることを特徴とする短波長シングルモード伝送用光ファイバ(SSMF)を用いる。
また、光波長フィルタとして、下記の特徴を持つWDM光ファイバ波長カプラを用いることができる。これは、2本のシングルモード光ファイバから作製され、入力ポートから入力される複数の波長の信号光を、伝送路に用いられる光ファイバのλ以上でシングルモード伝送となる長波長領域の信号光と、2モード伝送となる波長領域を含む短波長領域の信号光に分岐し、短波長領域の出力ポートは1次の高次モードを除去するため曲げを加え螺旋状とした螺旋形状の除去部を有するWDM光ファイバ波長カプラである。
送信器と受信器との間に設置された光波長フィルタでは複数の波長の信号光を長波長領域と短波長領域に分岐する。この光波長フィルタによって、一地点から多地点(ポイントツーマルチポイント)、多地点から多地点(マルチポイントツーマルチポイント)を結ぶネットワーク構成が可能となる。また、長波長領域と短波長領域の信号を別々に伝送するため、それぞれの波長領域の信号を、光波長フィルタを含むそれぞれの伝送路の損失に対応した距離まで伝送することが可能になる。
以上説明したように、本発明のネットワークシステムによれば、複数の波長領域の信号光を伝送する光ファイバ伝送路と、複数の波長領域の信号光を分岐させ、分岐された各波長領域の信号光を伝送する光ファイバである分岐光ファイバおよび光ファイバ伝送路に結合した光波長フィルタと、各波長領域に分岐された信号光のうち信号光の一次の高次モードLP11が含まれる信号光を伝送する分岐ファイバに結合した、一次の高次モードLP11を除去するモードフィルタとを備えているため、VCSELなどの経済的な短波長用光源が活用でき、従来は困難であったSMFの実効遮断波長以下へのWDM伝送波長域の広帯域化と長距離伝送が可能になる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態として、図3にWDMネットワークの構成例を示す。図3(a)において送信器301は異なる波長を出力するN個の光源と光合波器から構成され、合波されたN個の信号光は、実効遮断波長λのシングルモード光ファイバ311を伝搬する。これらの信号光は光波長フィルタ302で短波長領域の信号λ〜λと長波長領域の信号λk+1〜λに分岐され(kは1からN−1までの任意の数)、それぞれ短波長領域用の受信器304と長波長領域用の受信器305によって受信される。また、λ〜λにλ以下の信号が含まれる場合、光波長フィルタ302と受信器304との間の伝送路を、シングルモード光ファイバ312とモードフィルタ303によって構成する。
光波長フィルタ302としては、例えば「2002年電子情報通信学会総合大会B-13-26」に示されているような誘電体多層膜等の既存技術を用いて、低損失な光波長フィルタを実現できる。また、後述するWDM光ファイバ波長カプラを用いることも可能である。図3(a)には光波長フィルタ302を1個だけを用いた例を示したが、複数個用いて分岐数を増やすこともでき、ポイントツーマルチポイントの伝送が実現できる。なお、1km程度の短距離伝送の場合は、光波長フィルタ302とモードフィルタ303、異なる波長領域用の受信器304、305のすべてを同一のノード(例えばユーザ宅)に設置し、見かけ上のポイントツーポイントのネットワーク構成をとることも当然可能である。
図3(b)に送信器側にも光波長フィルタを用いたネットワーク構成例を示す。この構成ではマルチポイントツーマルチポイントの伝送が可能である。また、長波長領域用の送信器306、シングルモード光ファイバ311、光波長フィルタ308、光波長フィルタ302、長波長領域用の受信器305でシステムを構成しておき、需要やサービスの増加に応じて、短波長領域用のシステム(送信器307、シングルモード光ファイバ312、313、モードフィルタ303、受信器304)を追加することも可能である。また、リング状に並んだ各ノードに送信器と受信器を設置して再生中継を行い、リング状のネットワークを構成することもできる。この場合は、短波長領域用のシステムの伝送距離が短いので、長波長領域用のシステムはいくつかのノードを適宜スルーする構成にすれば良い。
上記のネットワーク構成においては、伝送路用シングルモード光ファイバ311の一部をすべての波長の信号が共有することで光ファイバ心線の節約が可能になる。また、長波長領域と短波長領域の信号を波長フィルタで分岐後は別々に伝送することによって、それぞれの波長領域の信号を、光波長フィルタを含むそれぞれの伝送路の損失に対応した距離だけ伝送できる。また、長波長領域では光ファイバが低損失であり、波長帯によっては光ファイバアンプの適用も可能である。従って、短波長領域用のシステムとは独立に長波長領域用のシステムの伝送距離や送受信器数を設定することができる。つまり、本発明によって需要に応じた柔軟で経済的なネットワーク構成が可能になる。
上記のネットワーク構成で用いるモードフィルタでは、シングルモード光ファイバのλ付近では、1次の高次モードLP11の損失が基本伝搬モードLP01の損失よりも顕著に大きくなることを利用して、LP11モードを除去する。例えば前述の非特許文献5では、シングルモード光ファイバを外径17mmで5回巻き付けたという単純な構成でモードフィルタ機能を実現している。本発明において、短波長領域の信号λ〜λの波長上限λを伝送路用の光ファイバのλ付近にすれば、モードフィルタの曲げによって生じる基本伝搬モードLP01モードへの損失増加は無視できる。従って、本発明においても、例えば伝送路に用いたシングルモード光ファイバを2cm程度の外径に数回巻き付けた構成のモードフィルタを用いることができる。なお、LP01とLP11のモード間結合(モード間での光パワーのやりとり)は、前述の非特許文献1に示されているように小さいので、図3のようにモードフィルタを送信器側か受信器側のどちらかだけに設置した構成とすることもできる。
一方、短波長領域の信号の下限波長λは、伝送路用の光ファイバが2モード伝送となる波長領域に含まれている必要がある。つまり、波長λにおいて光ファイバのV値が3.83以下でなくてはならない。V値は波長λ、コア半径をa、比屈折率差をΔ、コアの屈折率をnとすると、以下の(1)式で与えられる。Vは定数である。
V=2πa/λ・n(2Δ)0.5=Vλ/λ・・・(1)
本発明では、伝送路としてSMF、または、λを1μm近傍に持ちコア径がSMFと同等な短波長シングルモード伝送用光ファイバ(本発明では、これを「SSMF(Short wavelength single mode fiber)」と称する)のいずれかを使用する。(1)式において、コア径aとコアの屈折率nを一定と仮定すれば、実効遮断波長λはΔの0.5乗に比例する。SMFではΔの典型的な値は約0.3%でλの規格値が1.26μm以下である。従って(1)式より、図4の屈折率分布例のように、SSMFではΔを約0.2%にすれば、λを約1.0μmにすることができる。
図5はSMFとSSMFのV値の波長依存性の一例である。SMFでは波長0.9μmで、SSMFでは0.75μmでV値が3.5に達するので、光ファイバ製造の歩留まり等も考慮すると、下限波長λはSSMFで0.75μm、SMFで0.9μmとなる。図6に、SMFとSSMFのシングルモード伝送領域と2モード伝送領域を示す。SSMFはSMFよりも曲げに対して弱くなるが、使用波長上限を1.3μm帯とすれば、曲げ損失の増大は伝送上の問題にはならない。従って、図3に示したネットワーク構成例においてSSMFを伝送路に用いれば、0.8μm帯〜1.3μm帯の範囲にまたがるWDMシングルモード伝送が実現できる。また、SMFを伝送路に用いれば、1μm帯〜1.6μm帯の範囲にまたがるWDMシングルモード伝送が実現できる。
本発明の実施例として、SSMFの具体的な作製方法と特性について述べる。図4に示した構造のSSMFはSMFと同様に、GeO(酸化ゲルマニウム)ドープ石英ガラスをコア、純石英ガラスをクラッドとする母材を線引きして作製できる。SSMFの使用波長域0.8μm帯〜1.3μm帯においては、Rayleigh散乱が損失特性の支配要因になる。Rayleigh散乱の大きさはRayleigh散乱係数R(dB/km/μm)に比例し、「信学論B-1,Vol.J86-B,No.1,pp.1-1.2,2003.」に示されているように、GeOドープ石英ガラス光ファイバのRは、[GeO]を純石英ガラスとの比屈折率差で表したGeO濃度とすると、以下の(2)式で良く近似される。
R=0.75(1+0.62[GeO])・・・(2)
Δ=[GeO]=〜0.2より、SSMFのRとして0.85(dB/km/μm)程度の値が実現でき、これは既に布設されたSMFケーブルのRと比べて10%程度小さい値である。SSMFの構造として、純石英ガラスをコア、F(フッ素)ドープ石英ガラスをクラッドとする構成も可能であり、その場合は[GeO]=0より、Rとして0.75(dB/km/μm)程度の値が実現でき、これは布設されたSMFケーブルのRと比べて20%程度小さい値である。
また、光コネクタ等の接続損失(dB)は主に軸ずれに起因し、その大きさは光ファイバのモードフィールド径Wの2乗に反比例する。SSMFのWは同じ波長での比較でSMFよりも10%程度大きいので、SSMFのコネクタ接続損失はSMFよりも20%程度小さくなる。以上より、SSMFを用いれば、SMFを用いる場合よりも10%程度低損失な伝送路を構成することができる。なお前述の非特許文献1に示されているように、図4のようなステップ型の屈折率分布を持つSSMFの零分散波長はSMFと比べてほとんど変化しない。従って、SSMFではSMFと同等な高速伝送が可能であり、損失の低減によって伝送距離をSMFに比べて10〜20%程度延ばすことができる。また、SMFと同等のプロセスで安価に作製できる。
また図3のネットワーク構成中に用いる光波長フィルタとして、WDM光ファイバ波長カプラを用いることができる。WDM光ファイバ波長カプラには安価で低損失という利点があり、例えば「ブロードバンド光ファイバ応用技術(シーエムシー出版、2001年発行),pp-113-117」にその設計方法や種類が詳しく述べられている。WDM光ファイバ波長カプラは2本のシングルモード光ファイバを溶融延伸して作製され、通常は異なる2つの波長の信号光を合分岐するために使用される。分離する2つの波長の間隔は延伸する部分の長さによって調節し、既に0.98/1.55μm用、1.3/1.55μm用、1.48/1.55μm用が市販品として製品化されている。
例えば1.48/1.55μm用WDM光ファイバ波長カプラでは分離する波長の間隔Δλは70nm(0.07μm)となる。また、研究レベルにおいては「2000年電子情報通信学会総合大会B-13-26」でΔλとして30nmの間隔が実現されている。WDM光ファイバ波長カプラは周期性を持つので、出力ポート(X)からの複数の出力光の波長はそのうちの一つをλとすると、λ±2nΔλ、出力ポート(Y)から出力波長はλ±(2n−1)Δλで近似的に表される(nは正の整数)。
本発明の実施例として、WDM光ファイバ波長カプラの構造の模式図を図7示す。(a)はSMF同士で、(b)はSSMF同士で作製され、Δλは現状の技術で実現可能な40nmである。(c)はSMF同士で作製される1.1/1.55μm帯用(Δλ=450μm)、(d)はSSMF同士で作製される0.8/1.1μm帯用(Δ=300μm)の波長カプラである。これらのカプラではすべて、短波長領域用の出力ポート(X)に曲げを加え、光ファイバ伝送路の実効遮断波長以下で発生するLP11モードを除去するモードフィルタ機能を持たせている。この曲げは、前述のように波長カプラのXポート側のファイバの余長を20mm程度の外径に数回巻き付ければ良い。また(a),(c)のSMFから作製した波長カプラはSMF伝送路に、(b),(d)のSSMFから作製した波長カプラはSSMF伝送路に対して用いることで、伝送路と波長カプラの接続損失を低減できる。
図9に図7(a),(b)の構造のWDM光ファイバ波長カプラの(X)と(Y)のポートから出力可能な波長の例を示す。例えば図7(a)では、図9中に下線で示した8波を汎用光源の波長から選んで、信号を入力すれば、短波長領域用の(X)ポートからは1.15、1.23、1.31μmの3波が、長波長領域用の(Y)ポートからは1.27、1.35、1.43、1.51、1.59μmの5波が出力される。例えば図7(b)では、図9(b)中に下線で示した5波を光源波長に選べば、(X)ポートからは0.77、0.85μmの2波が、(Y)ポートからは1.13、1.21、1.29μmの3波が出力される。このように図7(a)、(b)の構造のカプラは、波長間隔の広いWDMシステムに対して使用できる。
また、図7(c),(d)の構造のWDM光ファイバ波長カプラではΔλが大きいため、図7(a),(b)の構造に比べ、0.8μm帯、1.1μm帯、1.55μm帯の各出力ポートについて低損失な波長帯域が広がっている。
図8は、2cmの外径に2回巻き付けたSMFの透過損失特性を白色光源を用いて測定した結果を示すグラフである。すなわち、WDM光ファイバ波長カプラのXポート側のファイバを2cmの外径に2回巻き付けると、図8に示すように、実効遮断波長以下の1mm付近では1次の高次モードLP11の損失が観測されるのでモードフィルタ機能が実現できる。従って、図7のWDM光ファイバ波長カプラのXポート側の曲げとしては、上記程度の曲げ条件を与えれば良い。
これらの各波長域ではDFB−LDやVCSELなどの狭線幅光源の技術が発達しているので、狭い波長間隔で複数の光源をWDM伝送に用いることが可能である。例えば、1.55μm帯では0.4〜0.8nm間隔で波長の異なる複数の光源からの信号光を伝送するDWDM技術が確立されており、1.1μm帯では「2003年電子情報通信学会総合大会SC-6-4」において、0.7nm間隔で8波長を集積したVCSEL光源が報告されている。従って、図7(c),(d)のWDM光ファイバ波長カプラの波長帯域幅に応じて波長数を決定し、複数の光源を用いたWDMネットワークを構成できる。例えば、波長帯域幅を20nm、光源波長間隔を4nm程度に設定すると、出力ポートの各波長帯で4波程度(計8波程度)の使用が可能になる。このように図7(c),(d)の構造のカプラは、0.8μm帯、1.1μm帯、1.55μm帯の光源を用いたWDMシステムに対して使用できる。
本発明の実施例として、図3(a)のネットワーク構成に対して図7(a)の波長カプラとSMFを用いた場合を図10(a)に、図7(b)の波長カプラとSSMF1011、1012を用いた場合を図10(b)に示す。図10においては、図3に示す実施例で用いられた光波長フィルタ302およびモードフィルタ303に代えて、WDM光ファイバ波長カプラ1001、1002が用いられている。したがって、図10(a)および(b)に示すネットワーク構成においては、WDM光ファイバカプラ1001、1002がモードフィルタの機能もあわせ持つので、図3中のモードフィルタは省略することができる。
また、図3(b)のネットワーク構成に対して図7(c)の波長カプラとSMF311〜313を用いた場合を図11(a)に、図7(d)の波長カプラとSSMF1011、1012、1111を用いた場合を図11(b)に示す。ここでは、各波長帯で4波ずつを使用する場合を示している。また、図3(b)に示す実施例では光波長フィルタ302、308が用いられていたが、図11においてはこれに代えて、WDM光ファイバ波長カプラ1101または1103、1102または1104が用いられる。これらのネットワーク構成においても、WDM光ファイバカプラがモードフィルタの機能を持つので、図3中のモードフィルタは省略することができる。
図10、11に示したネットワーク構成においては、送信器と受信器の間の伝送路区間は経済的かつ低損失な光ファイバと光ファイバ部品で構成され、WDM光ファイバカプラで長波長領域の信号と短波長領域の信号を分岐後は別々に伝送するため、それぞれの波長領域の信号をそれぞれの伝送路の損失に対応した距離だけ伝送できる。また、短波長領域用には安価で狭線幅なVCSEL光源を用いるため、Gbit/sオーダの高速WDM伝送が可能である。こうした伝送速度では波長分散の影響はほとんど問題にならず、主に損失によって伝送距離は制限される。光ファイバの損失は0.8μm帯で最も大きくなるが、使用するSSMFでは接続損失を含めても2.5dB/km程度に抑えることができる。従って、0.8μm帯のシステムの送受間レベル差を15dB、光波長フィルタ(WDM光ファイバカプラ)の損失分を1dB程度と想定すると、最も伝搬可能距離の短くなる0.8μm帯の信号についても5km以上の伝送が可能である。これは、従来のマルチモード光ファイバによる伝送距離を大きく凌ぐ値である。また1μm帯〜1.6μm帯では光ファイバ(SMF)の損失が小さくなるため、同様な条件下で10km以上の伝送が可能である。
以上説明したように、低損失な短波長シングルモード伝送用光ファイバとWDM光ファイバ波長カプラをネットワーク中に用いることで、伝送路損失を低減し、WDM伝送距離をさらに拡大することが可能になる。
さらに本発明のWDM通信ネットワークは、経済的な光源と光部品とファイバ伝送路から構成され、広い波長帯域を活用するので、需要やサービスの増加に応じた波長数の増加などの柔軟な対応が可能になる。
従来技術であるCWDMシステムの構成例を示す図である。 従来技術である0.8μm帯VCSEL光源とマルチモード光ファイバを使った単一チャネル通信システムの構成例を示す図である。 本発明のWDMネットワークの構成例を示す図であり、(a)は光波長フィルタを1個だけ使用する場合を示し、(b)は送信器側にも光波長フィルタを使用する場合を示す。 シングルモード伝送用光ファイバ(SMF)の屈折率分布例を示す図であり、(a)は通常のSMFの場合を示し、(b)はSSMFの場合を示す。 SMFとSSMFのV値の波長依存性の一例を示す図である。 SMFとSSMFのシングルモード伝送領域と2モード伝送領域を示す。 本発明のWDMネットワーク中で用いるWDM光ファイバ波長カプラの概略構造を示す図であり、(a)〜(d)は光ファイバの種類およびΔλの値をそれぞれ変化させた場合を示す。 所定の曲げを加えたSMFの透過損失特性を白色光源を用いて測定した結果を示すグラフである。 図7(a)、(b)の構造のWDM光ファイバ波長カプラの(X)と(Y)のポートから出力可能な波長の例をそれぞれ示す。 図3(a)のWDMネットワーク中にSMFまたはSSMFおよびWDM光ファイバ波長カプラを用いた構成例を示す図であり、(a)は通常のSMFを使用する場合を示し、(b)はSSMFを使用する場合を示す。 図3(b)のWDMネットワーク中にSMFまたはSSMFおよびWDM光ファイバ波長カプラを用いた構成例を示す図であり、(a)は通常のSMFを使用する場合を示し、(b)はSSMFを使用する場合を示す。
符号の説明
301 送信器
302、30.8 光波長フィルタ
303 モードフィルタ
304 短波長領域用受信器
305 長波長領域用受信器
306 長波長領域用送信器
307 短波長領域用送信器
311〜313 シングルモード光ファイバ
1001、1002、1101〜1104 WDM光ファイバ波長カプラ
1011、1012、1111 短波長シングルモード光ファイバ

Claims (7)

  1. 複数の波長領域の信号光を伝送する光ファイバ伝送路と、
    前記複数の波長領域の信号光を分岐させ、当該分岐された各波長領域の信号光を伝送する光ファイバである分岐光ファイバおよび前記光ファイバ伝送路に結合した光波長フィルタと、
    当該各波長領域に分岐された信号光のうち該信号光の一次の高次モードLP11が含まれる信号光を伝送する分岐ファイバに結合した、該一次の高次モードLP11を除去するモードフィルタと
    を備えたことを特徴とする光通信ネットワークシステム。
  2. 前記複数の波長領域の信号光は、実効遮断波長以上でシングルモード伝送が保証される長波長領域の光信号および2モード伝送となる短波長領域の光信号を含み、
    該短波長領域の信号が伝送する前記分岐光ファイバにのみ前記モードフィルタが結合することを特徴とする請求項1に記載の光通信ネットワークシステム。
  3. 前記光ファイバ伝送路として、1.3μm零分散シングルモード光ファイバを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の光通信ネットワークシステム。
  4. 前記光ファイバ伝送路として、0.9μm〜1.1μmの範囲の実効遮断波長を有する光ファイバであって、コア径が1.3μm零分散シングルモード光ファイバのコア径と同一であり、およびステップ型の屈折率分布を有するシングルモード伝送用光ファイバを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の光通信ネットワークシステム。
  5. 前記光波長フィルタは、1つの入力ポートから入力する複数の波長領域の信号光を分岐して、該複数の波長領域の信号光の各々を複数の出力ポートの各々に出力するWDM光ファイバ波長カプラの分岐部であり、
    前記モードフィルタは、前記複数の出力ポートのうち少なくとも1つの出力ポートに結合し、該出力ポートから出力された各波長領域の信号光の一次の高次モードLP11を除去する所定の曲げ形状を有する前記WDM光ファイバ波長カプラの除去部であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の光通信ネットワークシステム。
  6. 0.9μm〜1.1μmの範囲の実効遮断波長を有する複数の波長領域の信号光を伝送する光ファイバであって、コア径が1.3μm零分散シングルモード光ファイバのコア径と同一であり、およびステップ型の屈折率分布を有することを特徴とするシングルモード伝送用光ファイバ。
  7. 1つの入力ポートから入力する複数の波長領域の信号光を分岐して、該複数の波長領域の信号光の各々を複数の出力ポートの各々に出力する分岐部と、
    該複数の出力ポートのうち少なくとも1つの出力ポートに結合し、該出力ポートから出力された各波長領域の信号光の一次の高次モードLP11を除去する所定の曲げ形状を有する除去部と
    を備えたことを特徴とするWDM光ファイバ波長カプラ。
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